(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
区画された複数の住居域は、住居床を隔てて住居の床下空間の上に並んでいるものの、その形状や占有容積は一律ではない。よって、送気能力がほぼ同じ送気口を、住居域の占有容積に応じた個数ずつ各住居域に配置すれば、床下空間を各住居域への空調済み空気の送気領域として利用できる。しかしながら、住居域の占有容積に応じた個数の送気口の設置を図りつつ床下空間を送気領域として利用しても、各住居域における空調の様子に差が生じることが判明した。このため、一台の空調機で複数の住居域の空調を行う空調システムにおいては、住居域の特性を考慮した新たな空調手法が要請されるに到った。この他、空調システムの低コスト化、設置工法の簡便化も要請されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題の少なくとも一部を達成するために、本発明は、以下の形態として実施することができる。
区画された複数の住居域を有する住居の空調システムであって、
住居外からの外気の送気と、前記複数の住居域に送気済み空気のリターンとを受ける空調機室と、
該空調機室に設置され、空調室内の空調を行う空調機と、
前記空調機にて空調済みの空調室内空気を、前記住居の1階の床下の床下空間と連通する床下空間連通箇所まで前記空調機室から延びる送気用区画部を経て、前記空調機室から前記床下空間に送り出す空調空気送出機構とを備え、
前記複数の住居域のうち、住居域の占有容積が他の前記住居域より大きい大容積住居域は、前記床下空間に前記空調空気送出機構により送り出された前記空調室内空気を、前記床下空間連通箇所から前記大容積住居域の住居床に設けた複数の送気口までの前記床下空間を流路として利用して、前記複数の送気口から導き入れ、該導き入れた前記空調室内空気を前記空調機室にリターンさせ、
前記複数の住居域のうち、前記大容積住居域より前記占有容積が小さく前記大容積住居域と区画された他の住居域は、前記空調空気送出機構により送り出される前記空調室内空気を、前記床下空間連通箇所から前記他の住居域の住居床に設けた送気口まで延びて該送気口に接続されたダクトと該ダクト内での送気を図る送風機とを介して前記送気口から導き入れ、該導き入れた前記空調室内空気を前記大容積住居域に流出させる。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、空調システムが提供される。この空調システムは、区画された複数の住居域を有する住居の空調システムであって、住居外からの外気の送気と、前記複数の住居域に送気済み空気のリターンとを受ける空調機室と、該空調機室に設置され、空調室内の空調を行う空調機と、前記空調機にて空調済みの空調室内空気を、前記空調機室から前記住居の床下まで延びる送気用区画部を経て、前記空調機室から床下空間に送り出す空調空気送出機構とを備える。前記複数の住居域のうち、住居域の占有容積が他の前記住居域より大きい大容積住居域は、前記床下空間に前記空調空気送出機構により送り出された前記空調室内空気を、前記大容積住居域の住居床に設けた複数の送気口から導き入れ、該導き入れた前記空調室内空気を前記空調機室にリターンさせ、前記複数の住居域のうち、前記大容積住居域より前記占有容積が小さく前記大容積住居域と区画された他の住居域は、前記空調空気送出機構により送り出される前記空調室内空気を、前記他の住居域に設けた送気口まで延びるダクトと該ダクト内での送気を図る送風機とを介して前記送気口から導き入れ、該導き入れた前記空調室内空気を前記大容積住居域に流出させる。上記形態の空調システムでは、住居域の占有容積が大きい大容積住居域と、当該住居域より占有容積が小さく且つ大容積住居域と区画された他の住居域とで、空調空気送出機構から送り出される空調室内空気の住居域内への導き方を異なるものとした。よって、次の利点がある。
【0007】
大容積住居域には、床下空間に送り出された空調室内空気を、住居床に設けた複数の送気口から導き入れる。つまり、空調室内空気は、床下空間そのものが流路として利用されて、複数の送気口から大容積住居域に導入される。この大容積住居域は、導き入れた空調室内空気を空調機室にリターンさせているので、住居域内における空気の流れが促進され、床下空間に送り出された空調室内空気は、住居床に設けた複数の送気口から特段の抵抗を受けることなく円滑に大容積住居域に導入される。このことは、床下空間そのものを流路として利用した大容積住居域への空調室内空気の導入が進むことを意味する。その一方、仮に、占有容積が小さい住居域(以下、小容量住居域と称する)への空調室内空気の導入を床下空間そのものを流路として利用して行うと、床下空間そのものを流路として利用した大容積住居域への空調室内空気の導入が進む分だけ、小容量住居域への空調室内空気の導入に支障が起きる。また、小容量住居域に床下空間そのものを経て送気口から導入した空調室内空気を大容積住居域に流出させる場合、吸気口からの空気導入と大容積住居域への空気流出とには抵抗が掛かる。こうしたことから、小容量住居域への空調室内空気の導入が進まず、小容量住居域での空調に支障が起き得る。
【0008】
ところが、上記形態の空調システムは、小容量住居域には、小容量住居域の送気口まで延びるダクトにて、空調室内空気を独立して導くと共に、該ダクト内での送気を図る送風機にてダクトでの通気を促進させる。このため、小容量住居域への送気口からの空調室内空気の導入を、大容積住居域への空調室内空気の導入の影響や空気導入・流出に伴う抵抗を受けないようにして実行できる。よって、上記形態の空調システムによれば、住居域の特性を考慮して各住居域への空調室内空気の導入を図るので、占有容積の大小に拘わらず、各住居域を1台の空調機で支障なく空調できる。また、大容積住居域への空調室内空気の導入については、床下空間そのものを流路として利用するので、ダクトや送風機が不要となり、低コスト化、或いはダクト設置の省略を経た工法の簡略化を図ることも可能となる。
【0009】
(2)上記した形態の空調システムにおいて、前記他の住居域(小容量住居域)は、前記送気口を前記他の住居域の住居床に備え、前記送気用区画部と前記床下空間との繋ぎ箇所から前記送気口まで延びる前記ダクトを介して前記前記空調室内空気を前記送気口から導き入れるようにできる。こうすれば、小容量住居域への空調室内空気の導入を図るダクトを床下空間に設置できるので、床下空間の有効利用を図ることができる。
【0010】
(3)上記したいずれかの形態の空調システムにおいて、大容積住居域は、住居域天井が前記空調機室の近傍に位置して、前記床下空間と隔てる住居床から前記天井までの住居域高さが高くされているようにできる。一般に、住居高さが高い住居域は、高天井故に住居域の占有容積が大きくなり、床下空間そのものを流路として利用した住居域(大容積住居域)への空調室内空気の導入がより進むが、この影響を受けることなく、小容量住居域にも空調室内空気を支障なく導入できるので、住居高さの高低に拘わらず、各住居域を1台の空調機で支障なく空調できる。
【0011】
(4)上記したいずれかの形態の空調システムにおいて、前記送気用区画部は、前記大容積住居域に隣接して前記空調機室から前記住居の床下まで延びるようにできる。こうすれば、大容積住居域と住居床を隔てた床下空間が送気用区画部に隣接することから、大容積住居域の下方の床下空間を有効に流路として利用でき、大容積住居域に空調室内空気を高い効率で導入できる。
【0012】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、空調システムを有する住居等の態様で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき説明する。
図1は本発明の実施形態としての住居100の概略構成を模式的に縦断面視して示す説明図、
図2は住居100における1階と2階の部屋割りの概要を平面視しつつ空気導出入と合わせて示す説明図である。
【0015】
図示するように、本実施例の住居100は、基礎101に建てられた高気密・高断熱の2階建て住居であって、各階に複数の住居域を区画して有し、各住居域を後述の空調システム120にて空調する。住居域の割り当ては、各住居ごとに個別に設定でき、本実施形態では、例えば次のようにした。住居100は、1階に住居域210〜214を備え、2階に住居域221〜223を備える。1階の住居域210〜214は、基礎101に形成される床下空間111と住居床112を隔てて、当該床下空間の上に並んでいる。住居域210は、
図2(B)に示すように、玄関領域210a、1階廊下領域210bと階段ステップSが配列済みの階段領域210sを含み、1階廊下領域210bと階段領域210sの一部領域において、天井が2階天井まで届くいわゆる吹き抜け形態を採る。よって、住居域210は、住居床112から天井までの住居域高さが1階の他の住居域211〜214より高く、その天井108を隔てて空調機室121の下方まで延びる高天井住居域となっている。こうした高天井住居域の住居域210を、1階部分にリビングやキッチンを階段領域210sと共に有するいわゆる共有住居域とするようにしてもよい。住居域211〜213は、居間や客間等として利用可能であり、住居域214は、その平面視位置の関係から、浴室や洗面所等を含むものとしてもよい。これら住居域210〜214は、住居構成基材としての住居内外壁および各住居域の天井にて区画されている。住居域211〜213は居間や客間等として利用され、住居域210は上記の各領域を含んだ上で吹き抜け形態を採ることから、住居域210は、その占有容積が他の住居域である住居域211〜213より大きくされている。
【0016】
2階の住居域221〜223は、子供部屋や寝室等として利用可能であり、階段領域210sと2階廊下領域220bを含む2階部分の住居域210と並んでいる(
図2(A)参照)。これら住居域221〜223にあっても、住居構成基材としての住居内外壁および各住居域の天井にて区画されている。なお、例えば、1階廊下領域210bの奥側(紙面右側)を、トイレや浴室としたり、2階廊下領域220bの奥側をトイレとしたりできる。
【0017】
住居100は、屋根109と2階の天井108の間の屋根裏110に、空調システム120を有する。この空調システム120は、空調機室121と、空調機140と、外気導入系150とを有する。空調機室121は、既述した住居域210等の各住居域とは別に形成され、その内壁を断熱材にて被覆し、後述の空調機140にて空調された空気の熱を外部に漏らさないようにしている。空調機室121は、室内に仕切プレート122を有する。この仕切プレート122は、空調機室121の内部空間を、吸気側と空調側に区分する。また、空調システム120は、空調機室121から床下空間111まで延びる送気用区画部113を備える。この送気用区画部113は、その上端側で空調機140が設置された空調機室121の空調側域に連通し、下端側では、床下空間連通箇所114にて床下空間111と連通し、住居域210に隣接して空調機室121から床下空間111まで延びる。そして、空調システム120は、空調機室121にて空調機140により空調済みの空調室内空気CAを、送気用区画部113の上端側の複数台のモーター駆動の空気送風機123aと、送気用区画部113の下端側の複数台のモーター駆動の空気送風機123bとにより、送気用区画部113を経て空調機室121から床下空間111に送風する。つまり、送気用区画部113は、その上下端の複数台の空気送風機123aと空気送風機123bと協働して、本発明における空調空気送出機構を構成する。なお、空調システム120のメンテナンスは、屋根裏110に続く収納タイプの階段が用いられる。この場合、空調システム120の空調機室121は、屋根裏110に限らず、送気用区画部113を確保できる住居100の適宜な箇所に設置できる。
【0018】
空調機室121は、後述の外気導入系150による住居外からの外気の送気と、住居域210に後述するように送気済み空気(空調済み空調室内空気CA)のリターンとを、仕切プレート122で仕切られた吸気側に受ける。空調機140は、空調機室121の仕切プレート122を乗り越えてきた空気、即ち外気導入系150から導入されて除塵済みの外気と後述するようにリターンした空調済み空調室内空気CAとの混合気を目標温度に空調する市販のエアコンであり、空調した空気(空調済み空調室内空気CA)を吹き出す。空調機140の室外機(図示略)は、住居100の外に設置されている。外気導入系150は、住居外壁に設置済みの外気吸入部151から空調機室121の接続部153までの外気導入管154に、熱交換器155と、エアフィルター156を有する。熱交換器155は、後述の排気管157を流れる空気と外気導入管154を通過する空気の熱交換を行い、空調機140による空調のエネルギーロスの低減を図る。ここで、空調の目標温度と、総風量について、簡単に説明する。
【0019】
空調システム120は、特開2011−174674号公報で提案された空調システムとほぼ同じスペックとできる。つまり、空調機140は、空調機室121の室内の目標温度と、空調対象である上記した住居空間の目標温度とが、冷房空調の際には、摂氏5℃以内の温度差、暖房空調の際には摂氏10℃以内の温度差で、空調機室121の室内の空気を空調する。そして、空調システム120は、空気送風機123aにより、空調済み空調室内空気CAを100〜5,000m
3/hの流量で送気用区画部113に送り出し、ほぼ同流量のまま、空気送風機123bにより床下空間連通箇所114から床下空間111に送り出す。このように大流量での空調済み空気の送風により、各住居域の温度を適度に維持して快適性を確保している。
【0020】
次に、各階の住居域への空調済み空調室内空気CAの導入構成と空調機室121へのリターン構成、並びに各住居域での空気導入・排出の様子について説明する。
【0021】
1階の住居域210は、住居床112に、送気口115とモーター駆動の吸引送風機116とを備え、その天井108に、リターン口117とモーター駆動の吸引送風機118とを備える。送気口115と吸引送風機116とは対となって住居床112に複数対設置され、送気口115は、吸引送風機116が床下空間111から吸引した空気、即ち、送気用区画部113を経て空調機室121から床下空間111(詳しくは、住居域210の下方を占める床下空間111a)に送り出された空調済み空調室内空気CAを、住居域210の内部に導き入れる。リターン口117は、住居域210の天井108を貫いて空調機室121の内部、詳しくは仕切プレート122で区分された空調機室121の吸気側まで延び、吸引送風機118が住居域210から吸引した空気、即ち、送気口115から住居域210に導入された空調室内空気CAを、空調機室121の吸気側に強制的にリターンさせる。こうしてリターンされたリターン空気RAは、外気導入系150からの外気と共に、既述したように空調機140による空調に処される。本実施形態では、住居域210の占有容積が大きいことを考慮して、住居域210に送気口115と吸引送風機116とを4対設置したが、送気口115の送風能力によっては、住居域210の占有容積を考慮して、5対以上としたり、2〜3対としてもよい。また、床下空間111aには空気送風機123bにて空調済み空調室内空気CAが送り出されるので、この空調済み空調室内空気CAは、それぞれの送気口115から住居域210に流入可能となる。よって、複数の送気口115のうちのいくつかについて、或いは全部について吸引送風機116を省略してもよい。
【0022】
1階の住居域211〜214の各住居域は、各住居域が占める住居床112に、送気口115を備え、住居域210との区画箇所である住居内壁に、流出口130とこれに対となるモーター駆動の吸引送風機131とを備える。住居域211〜214の各住居域は住居域210に比べて占有容積が小さいことから、送気口115については、一つとされている。この他、住居域211〜214の各住居域は、住居床112の下方の床下空間111に、ダクト211d〜214dとモーター駆動のダクト内送風機119を備える。ダクト211d〜214dは、断熱性を備え、送気用区画部113と住居域210の下方を占める床下空間111aとの床下空間連通箇所114を基点とし、当該連通箇所から住居域211〜214の各住居域の下方を占める床下空間111b〜111eまで延び、床下空間連通箇所114において、空気送風機123bと接続され、各住居域では、送気口115に接続される。本実施形態では、ダクト213dをダクト212dから分岐して住居域212の送気口115まで延ばしたが、このダクト213dについても、独立に床下空間連通箇所114から送気口115まで延ばすようにしてもよい。
【0023】
ダクト内送風機119は、送気口115の下方側においてダクト内に配設され、空気送風機123bと相まってダクト211d〜214d内での送気を図る。従って、住居域211〜214の各住居域は、住居域210の下方を占める床下空間111aに送気用区画部113を経て送り出された空調済み空調室内空気CAを、各住居域に該当するダクト211d〜214dと各ダクトのダクト内送風機119とを介して送気口115から導き入れ、導き入れた空調済み空調室内空気CAを、吸引送風機131にて流出口130から住居域210に流出する。なお、ダクト211d〜214dとダクト内送風機119とを介した空調済み空調室内空気CAの導入に際しては、床下空間連通箇所114における空気送風機123bも駆動するが、ダクト内送風機119にて空調済み空調室内空気CAの導入が支障なく行われれば、ダクト211d〜214dの基点側の空気送風機123bを省略してもよい。この逆に、ダクト211d〜214dの基点側の空気送風機123bにて空調済み空調室内空気CAの導入が支障なく行われれば、送気口115の側のダクト内送風機119を省略してもよい。また、ダクト内送風機119により送気口115から住居域211〜214の各住居域に空調済み空調室内空気CAが導入されていることから、住居域210への空気流出を図る吸引送風機131については、省略してもよい。
【0024】
2階の住居域221〜223の各住居域は、各住居域が占める2階床231に、送気口115とこれに対となる吸引送風機116とを備え、2階床下空間232に導入された空調済み空調室内空気CAを、吸引送風機116にて送気口115から導き入れる。住居域221は、その天井108に排気口170とこれに対となるモーター駆動の吸引送風機172とを備え、住居域221に導入された空調済み空調室内空気CAを、吸引送風機172にて排気口170から外気導入系150の排気管157に排気する。住居域222〜223にあっては、2階部分における住居域210との区画箇所である住居内壁に、流出口130とこれに対となるモーター駆動の吸引送風機131とを備え、上記の各住居域に導入された空調済み空調室内空気CAを、住居域210に流出させる。2階床下空間232への空調済み空調室内空気CAの導入は種々の手法で達成でき、例えば、空調機室121が有する一つの空気送風機123aから2階床下空間232まで、或いは、送気用区画部113から2階床下空間232までダクトを延ばし、このダクトを介して2階床下空間232に空調済み空調室内空気CAを導き、その空調済み空調室内空気CAを送気口115から住居域221〜223に導入できる。また、空調機室121が有する一つの空気送風機123a或いは送気用区画部113から2階床下空間232までダクトを延ばし、ダクトをそれぞれの住居域の送気口115に繋いでも良い。この他、1階の住居域211にも、その天井に流出口130と吸引送風機131とを設け、住居域211から2階床下空間232に空調済み空調室内空気CAを導入してもよい。
【0025】
以上説明したように、本実施例の住居100が備える空調システム120では、住居仕様によって吹き抜け形態とされたために住居床112から天井108までの住居域高さが高く占有容積も大きい住居域210と、この住居域210に並んで区画された1階の住居域であって住居域210より占有容積の小さい住居域211〜214とで、床下空間111に送り出された空調室内空気CAの住居域内への導き方を異なるものとした。まず、住居域210については、空調機室121から送気用区画部113を経て床下空間111aに送り出された空調済み空調室内空気CAを、住居域210の下方の床下空間111aそのものを流路として利用して、住居床112の複数の送気口115から導き入れる。住居域210は、吹き抜け形態故に住居域高さが高く占有容積も大きいものの、導き入れた空調室内空気CAを天井108のリターン口117から吸引送風機118にて強制的に空調機室121にリターンさせている。このため、吹き抜け形態の住居域210では、住居床112の側から天井108の側への空気の流れが促進されるので、床下空間111aに送り出された空調済み空調室内空気CAは、それぞれの送気口115から特段の抵抗を受けることなく円滑に高天井住居域に導入される。つまり、床下空間111aそのものを流路として利用した住居域210への空調室内空気CAの導入が進む。しかも、送気口115と対となる吸引送風機116により、住居域210への空調室内空気CAの導入はより一層進むことになる。
【0026】
これに対し、住居域210に並んで区画された占有容積の小さい住居域211〜214については、床下空間111と送気用区画部113との床下空間連通箇所114から住居域211〜214の各住居域の送気口115まで延びるダクト211d〜214dにて、空調室内空気CAを独立して導くと共に、ダクト内送風機119と空気送風機123bとにより、或いは一方の空気送風機により、ダクト通気を促進させる。よって、本実施形態の空調システム120によれば、次の利点がある。
【0027】
仮に、住居域210に並んで区画された占有容積の小さい住居域211〜214への空調室内空気CAの導入を、住居域211〜214の下方の床下空間111b〜111eを流路として利用して行うと、床下空間111aそのものを流路として利用した住居域210への空調室内空気CAの導入が送気用区画部113の側で先に進む分だけ、住居域211〜214への空調室内空気CAの導入に支障が起きる。また、住居域211〜214にその下方の床下空間111b〜111eそのものを経て送気口から導入した空調室内空気CAを住居域210に流出口130から流出させる場合、送気口115からの空気導入とアンダーカットなどの流出口130から住居域210への空気流出とには抵抗が掛かる。こうしたことから、住居域211〜214への空調室内空気CAの導入が進まず、住居域211〜214での空調に支障が起き得る。ところが、本実施形態の空調システム120は、既述したように住居域211〜214への空調室内空気CAの導入にダクト211d〜214dとダクト内送風機119とを用いるので、住居域211〜214への送気口115からの空調室内空気CAの導入を、住居域210への空調室内空気CAの導入の影響や空気導入・流出に伴う抵抗を受けないで実行できる。よって、本実施形態の空調システム120によれば、住居域の特性を考慮して各住居域への空調室内空気CAの導入に支障を来さないので、占有容積の大小に拘わらず、各住居域を1台の空調機140で支障なく空調できる。また、住居域210への空調室内空気CAの導入については、床下空間111aそのものを流路として利用するので、ダクトや送風機が不要となり、低コスト化、或いはダクト設置の省略を経た工法の簡略化を図ることができる。
【0028】
本実施形態の住居100では、住居域210を吹き抜け形態としたために、住居域210の天井108が空調機室121の近傍に位置するので、リターン口117と吸引送風機118により空調機室121へのリターン空気RAの流入は進み、住居域210における住居床112の側から天井108の側への空気の流れはより促進される。このため、床下空間111aそのものを流路として利用した住居域210への空調室内空気CAの導入がより進むが、この影響を受けることなく、住居域211〜214には、ダクト211d〜214dとダクト内送風機119とにより支障なく空調室内空気CAを導入できる。よって、本実施形態の空調システム120によれば、住居高さの高低に拘わらず、各住居域を1台の空調機140で支障なく空調できる。
【0029】
ここで、本実施形態の空調システム120による空気導入の様子を、換気回路網計算手法を用いた解析結果と関連付けて説明する。換気回路網計算手法は、空気送気の際の圧力抵抗を電気回路の抵抗とし、風量を電流値と置き換えて計算算出する手法として確立されている。この換気回路網計算手法にて、
図2の住居域210における送気口115から空気吹出量と住居域211における送気口115からの空気吹出量を計算した。換気回路網計算を行うに当たり、送気口115→住居域210→リターン口117の順に空気が流れる際の抵抗と、送気口115→住居域211→流出口130→住居域210→リターン口117の順に空気が流れる際の抵抗とを換気回路網計算に組み込んだ。そして、住居域211に、ダクト211dを用いないで床下空間111bを経て送気口115から送気を行った場合と、ダクト211dを用いて送気口115から送気を行った場合とについて、換気回路網計算を行って空気吹出量を計算した。住居域210については、四つの送気口115のそれぞれからの空気吹出量を計算した。その結果、住居域211にダクト211dを用いないで床下空間111bを経て送気口115から送気を行った場合の住居域211の送気口115からの空気吹出量は、38.30m
3/hであり、この場合の住居域210のそれぞれの送気口115からの空気吹出量は、240.3m
3/hであった。その一方、住居域211にダクト211dを用いて送気口115から送気を行った場合の住居域211の送気口115からの空気吹出量は、200m
3/hであり、この場合の住居域210のそれぞれの送気口115からの空気吹出量についても、200m
3/hであった。この結果から、本実施形態の空調システム120によれば、住居高さの高低や容積の大小に拘わらず、各住居域を1台の空調機140で支障なく空調できることに加え、住居高さの高低や容積の大小に拘わらず、各住居域に1台の空調機140で均一な吹出風量で空調室内空気CA導き入れることができると言える。このことは、住居高さの高低や容積の大小に拘わらず、各住居域に1台の空調機140で意図した吹出風量で空調室内空気CA導き入れることができることを意味する。
【0030】
本実施形態の空調システム120では、送気用区画部113を、住居域210に隣接して空調機室121から床下空間111まで延びるようにしたので、住居域210と住居床112を隔てた床下空間111aと送気用区画部113とを隣接させる。よって、本実施形態の空調システム120によれば、送気用区画部113から住居域210の下方の床下空間111aに速やかに空調室内空気CAを送り出して、この床下空間111aを有効且つ即座に流路として利用することで、住居域210に空調室内空気CAを高い効率で導入できる。
【0031】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、或いは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0032】
本実施形態では、住居域210に並んで区画された占有容積の小さい住居域211〜214への空調室内空気CAの導入をダクト211d〜214dにて図るに当たり、ダクト211d〜214dを送気用区画部113の床下空間連通箇所114から延ばしたが、次のようにしてもよい。ダクト211d〜214dを住居域211〜214の送気口115まで延ばすに当たり、ダクトの基点を空調機室121の空気送風機123aとする。その上で、ダクト211d〜214dを、空調機室121から送気用区画部113の内部を経て住居域211〜214の送気口115まで延ばしてもよい。また、住居域211〜214の送気口115を天井に設け、ダクトを、空調機室121から2階床下空間232を経て天井の送気口115に延ばしたり、送気用区画部113から2階床下空間232を経て天井の送気口115に延ばしてもよい。住居域211〜214の送気口115を壁に設け、ダクトを、空調機室121或いは送気用区画部113から壁内空間を経て壁の送気口115に延ばしてもよい。
【0033】
本実施形態では、1階の住居域211〜214の全てについて、ダクト211d〜214dにて空調室内空気CAの導入を図ったが、床下空間連通箇所114に近い住居域214にあっては、ダクト214dを用いないで、床下空間111eを流路として利用して空調済み空調室内空気CAを導入するようにしてもよい。この場合には、送気口115から住居域214への空調済み空調室内空気CAの導入と、住居域210への空調済み空調室内空気CAの流出を進めるべく、ダクト内送風機119と吸引送風機131の送風能力を高めることが望ましい。この他、1階の住居域211〜214のいずれかの住居域から、ダクトとダクト内送風機等を介して強制的に空調機室121に空調済み空調室内空気CAをリターンするようにしてもよく、こうすれば、空調済み空調室内空気CAの強制リターンを図る住居域については、対応する床下空間を流路として利用できる。
【0034】
上記の実施形態では、2階建ての住居100について説明したが、1階建ての住居や、事業所、事務所等の業務用住居にも適用できる。