特許第5870400号(P5870400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5870400標的化ピロロベンゾジアゼピンコンジュゲート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5870400
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】標的化ピロロベンゾジアゼピンコンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/00 20060101AFI20160216BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20160216BHJP
   A61K 31/5517 20060101ALI20160216BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160216BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20160216BHJP
   C07D 519/00 20060101ALN20160216BHJP
【FI】
   C07K16/00
   A61K39/395 C
   A61K39/395 L
   A61K31/5517
   A61P35/00
   A61P37/06
   !C07D519/00 311
【請求項の数】32
【全頁数】125
(21)【出願番号】特願2013-505171(P2013-505171)
(86)(22)【出願日】2011年4月15日
(65)【公表番号】特表2013-523896(P2013-523896A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】US2011032664
(87)【国際公開番号】WO2011130613
(87)【国際公開日】20111020
【審査請求日】2014年4月11日
(31)【優先権主張番号】61/324,623
(32)【優先日】2010年4月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503188759
【氏名又は名称】シアトル ジェネティクス,インコーポレーテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】506042265
【氏名又は名称】メディミューン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(72)【発明者】
【氏名】ハワード,フィリップ,ウィルソン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー,スコット
(72)【発明者】
【氏名】バーク,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】センター,ピーター
【審査官】 伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−536905(JP,A)
【文献】 特表2007−525535(JP,A)
【文献】 JEFFREY S C,DESIGN, SYNTHESIS, AND IN VITRO EVALUATION OF DIPEPTIDE-BASED ANTIBODY MINOR 以下備考,JOURNAL OF MEDICINAL CHEMISTRY,米国,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2005年 5月 2日,VOL. 48, NO. 5,PAGES 1344-1358,GROOVE BINDER CONJUGATES
【文献】 BURKE P J,NOVEL IMMUNOCONJUGATES COMPRISED OF STREPTONIGRIN AND 17-AMINO-GELDANAMYCIN 以下備考,BIOORGANIC & MEDICINAL CHEMISTRY LETTERS,英国,ELSEVIER SCIENCE,2009年 4月 5日,VOL. 19. NO. 10,PAGES 2650-2653,ATTACHED VIA A DIPEPTIDE-P-AMINOBENZYL-AMINE LINKER SYSTEM
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 39/395
C07D 519/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
L-(LU-D)p (I)
を有するコンジュゲート、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物
{式中、
Lは、完全長抗体、完全長抗体の抗原結合性フラグメント、標的分子に特異的に結合する抗体重鎖及び/又は軽鎖可変領域を含む薬剤から選択されるリガンド単位であり、
LUは、式1a:
-A1-L1- (1a)
又は
式X:
【化1】
[式中、
Eはグルクロン酸残基であり、星印は薬物単位への結合箇所を示し、波線はリガンド単位への結合箇所を示す]
リンカー単位であり
[式中、
-A1-は
【化2】
(式中、nは0〜6である)、
【化3】
(式中、nは0又は1であり、mは0〜30である)、
【化4】
(式中、nは0又は1であり、mは0〜30である)、及び
【化5】
(式中、星印はL1への結合箇所を示し、波線はリガンド単位への結合箇所を示す)
から選択され、
L1は標的細胞での酵素の作用によって開裂可能なアミノ酸配列である]
pは、1〜20であり、
Dは、次式II:
【化6】
[式中、
R2は、式III:
【化7】
(ここで、AはC5〜7アリール基であり、Xはリンカー単位への結合のための活性化可能な基であって、-O-、-S-、-C(O)O-、-C(O)-、-NH(C=O)-、-N(RN)-を含む群から選択され、ここで、RNはH、C1〜4アルキル及び(C2H4O)mCH3(ここで、mは1〜3である)を含む群から選択され、且つ
(i)Q1は単結合であり、Q2は単結合及び-Z-(CH2)n-(ここで、Zは、単結合、O、S、及びNHから選択され、nは1〜3である)から選択されるか、又は
(ii)Q1は-CH=CH-であり、Q2は単結合であるか、
のいずれかである)
であり、
R12は、ハロ、ニトロ、シアノ、エーテル、C1〜7アルキル、C3〜7ヘテロシクリル、ジメチルアミノプロピルオキシ、ピペラジニル、及びビス-オキシ-C1〜3アルキレンを含む群から選択される一つ又は複数の置換基で置換されていてもよいC5〜10アリール基であり、
R6及びR9は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH2、NHR、NRR'、ニトロ、Me3Sn、及びハロから独立に選択され、
R7は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH2、NHR、NHRR'、ニトロ、Me3Sn、及びハロから選択され、
ここで、R及びR'は、置換されていてもよいC1〜12アルキル、C3〜20ヘテロシクリル、及びC5〜20アリール基から独立に選択され、
(a)R10はHであり、R11はOH又はORA(ここで、RAはC1〜4アルキルである)であるか、
(b)R10及びR11は、それらが結合している窒素及び炭素原子の間で窒素-炭素二重結合を形成しているか、又は
(c)R10はHであり、R11はSOzM(ここで、zは2又は3であり、Mは薬学的に許容される一価カチオンである)であるか、
のいずれかであり、
R''は、C3〜12アルキレン基(その鎖は、O、S、及びNHからなる群から選択される一つ又は複数のヘテロ原子、及び/又は芳香族環によって中断されていてもよい)であり、
Y及びY’は、O、S、又はNHから選択され、
R6'、R7'、R9'は、それぞれR6、R7、及びR9と同じ群から選択され、R10'及びR11'は、R10及びR11と同一であり、ここで、R11及びR11'がSOzMである場合は、Mは薬学的に許容される一価カチオン、又は一緒になって薬学的に許容される二価カチオンを表してもよい]
を有するPBD二量体である薬物単位である}。
【請求項2】
R7が、H、OH、及びORから選択される、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
R7が、C1〜4アルキルオキシ基である、請求項2に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
YがOである、請求項1から3のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
R''が、C3〜7アルキレンである、請求項1から4のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
R9がHである、請求項1から5のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
R6が、H及びハロから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
Aがフェニルである、請求項1から7のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
Xが、-O-、-S-、及び-NH-から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
Q1が単結合である、請求項1から9のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
Q2が単結合である、請求項10に記載のコンジュゲート。
【請求項12】
Q2が-Z-(CH2)n-であり、ZがO又はSであり、nが1又は2である、請求項10に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
Q1が-CH=CH-である、請求項1から9のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項14】
R12がC5〜7アリール基である、請求項1から13のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項15】
R12がフェニルである、請求項14に記載のコンジュゲート。
【請求項16】
R12がC8〜10アリール基である、請求項1から13のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項17】
R12が、1〜3個の置換基を有する、請求項1から16のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項18】
R10及びR11が、窒素-炭素二重結合を形成している、請求項1から17のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項19】
R6'、R7'、R9'、R10'、R11'及びY'が、それぞれ、R6、R7、R9、R10、R11、及びYと同一である、請求項1から18のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項20】
A1が、
【化8】
(ここで、星印は、L1への結合箇所を示し、波線は、リガンド単位への結合箇所を示し、nは0〜6である)
である、請求項1から19のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項21】
nが5である、請求項20に記載のコンジュゲート。
【請求項22】
L1が、ジペプチドである、請求項1から21のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項23】
L1が、バリン-アラニン、バリン-シトルリン、及びフェニルアラニン-リシンからなる群から選択される、請求項22に記載のコンジュゲート。
【請求項24】
Dが、
【化9】
【化10】
【化11】
、及び
【化12】
[式中、波線はリンカー単位への共有結合を示す]
から選択される、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項25】
LU-Dが、
【化13】
[式中、波線はリガンド単位への共有結合を示す]
である、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項26】
LU-Dが、
【化14】
【化15】
、又は
【化16】
[式中、波線はリガンド単位への共有結合を示す]
である、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項27】
pが2である、請求項1から26のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項28】
請求項1から27のいずれか一項に記載のコンジュゲートおよび薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、又は安定剤を含む医薬組成物
【請求項29】
組成物中のコンジュゲートの平均薬物負荷量が2である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
増殖性疾患又は自己免疫疾患を治療するための医薬の製造における、請求項1から29のいずれか一項に記載のコンジュゲート又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の使用。
【請求項31】
式:
G1-L1-D
を有する薬物リンカー又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物
{式中、G1は、
【化17】
[式中、nは0〜6である]、
【化18】
[式中、nは0又は1であり、mは0〜30である]、
【化19】
[式中、nは0又は1であり、mは0〜30である]、
【化20】
[式中、星印はL1への結合箇所を示す]
から選択され
L1よびDは、請求項1〜30のいずれか一項に定義される}。
【請求項32】
式:
【化21】
【化22】
;又は
【化23】
を有する請求項31に記載の薬物リンカー又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的化ピロロベンゾジアゼピン(PBD)コンジュゲートに関し、特には一方の単量体のC2位を介してターゲティング剤に結合しているピロロベンゾジアゼピン二量体に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種のピロロベンゾジアゼピン(PBD)は、DNAの特定の配列を認識してそれに結合するという能力を有している。その好ましい配列はPuGPuである。最初のPBD抗腫瘍抗生物質であるアントラマイシン(anthramycin)は、1965年に発見された(非特許文献1;非特許文献2)。それ以来、多くの天然に存在するPBDが報告されており、10を超える合成経路がさまざまな類似体に対して開発されている(非特許文献3)。ファミリー構成員としては、アッベイマイシン(abbeymycin)(非特許文献4)、キカマイシン(chicamycin)(非特許文献5)、DC−81(特許文献1;非特許文献6;非特許文献7)、マゼトラマイシン(mazethramycin)(非特許文献8)、ネオトラマイシン(neothramycin)A及びB(非特許文献9)、ポロトラマイシン(porothramycin)(非特許文献10)、プロトラカルシン(prothracarcin)(非特許文献11;非特許文献12)、シバノミシン(sibanomicin)(DC−102)(非特許文献13;非特許文献14)、シビロマイシン(sibiromycin)(非特許文献15)及びトママイシン(tomamycin)(非特許文献16)が挙げられる。PBDは、一般構造:
【化1】
【0003】
で表される化合物群である。
【0004】
これらは、芳香族A環及びピロロC環の双方において、置換基の数、種類及び位置、並びに、C環の飽和度が異なっている。B環には、N10−C11位のところに、DNAのアルキル化に関与する求電子中心であるイミン(N=C)か、カルビノールアミン(NH−CH(OH))か、又はカルビノールアミンメチルエーテル(NH−CH(OMe))がある。知られている天然の生成物はすべて、キラルなC11a位のところで(S)配置を有しており、この配置はC環からA環の方を見たときに右手回りのねじれをもたらす。これは、B型DNAの副溝との等螺旋性を得るのに適切な三次元形状を与えるものであり、その結合部位のところにぴったりと嵌合することになる(非特許文献17;非特許文献18)。この副溝中で付加物を生成するというPBDの能力は、DNAプロセシングと干渉することを可能にするものであり、したがって、抗腫瘍剤としてそれらを用いることが可能になる。
【0005】
2つのPBD単位を、その各C8/C’−ヒドロキシル官能から柔軟アルキレンリンカーを介して一緒に合わせることによって、これらの分子の生物学的活性が高められ得る(非特許文献19;非特許文献20)。このPBD二量体は、配列選択的DNA損傷、例えば、パリンドローム性5’−Pu−GATC−Py−3’鎖間架橋を形成すると考えられており(非特許文献21;非特許文献22)、これが生物学的活性に主に関与していると考えられている。PBD二量体の一つの例は、SG2000(SJG−136):
【化2】
【0006】
である(非特許文献23;非特許文献24;非特許文献25)。
【0007】
これらの極めて強力な化合物はDNAの架橋において作用するため、PBD二量体は、対称的に作られ、換言すれば、二量体の双方のモノマーは同一である。この合成経路は、二量体結合が既に形成されたPBD二量体部分を同時に構築することによる、又は既に構築されているPBDモノマー部分を二量体結合形成基と反応させることによる、単純な合成を提供する。これらの合成法は、PBDを含む標的化コンジュゲートを調製するための選択肢を制約していた。しかし、PBD二量体の有効性が観察されるので、標的化療法で使用するための、ターゲティング剤に結合できるPBD二量体が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭58−180487号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Leimgruber, et al., J. Am. Chem. Soc., 87, 5793-5795 (1965)
【非特許文献2】Leimgruber, et al., J. Am. Chem. Soc., 87, 5791-5793 (1965)
【非特許文献3】Thurston, et al., Chem. Rev. 1994, 433-465 (1994)
【非特許文献4】Hochlowski, et al., J. Antibiotics, 40, 145-148 (1987)
【非特許文献5】Konishi, et al., J. Antibiotics, 37, 200-206 (1984)
【非特許文献6】Thurston, et al., Chem. Brit., 26, 767-772 (1990)
【非特許文献7】Bose, et al., Tetrahedron, 48, 751-758 (1992)
【非特許文献8】Kuminoto, et al., J. Antibiotics, 33, 665-667 (1980)
【非特許文献9】Takeuchi, et al., J. Antibiotics, 29, 93-96(1976)
【非特許文献10】Tsunakawa, et al., J. Antibiotics, 41, 1366-1373 (1988)
【非特許文献11】Shimizu, et al, J. Antibiotics, 29, 2492-2503 (1982)
【非特許文献12】Langley and Thurston, J. Org. Chem., 52, 91-97 (1987)
【非特許文献13】Hara, et al., J. Antibiotics, 41, 702-704 (1988)
【非特許文献14】Itoh, et al., J. Antibiotics, 41, 1281-1284 (1988)
【非特許文献15】Leber, et al., J. Am. Chem. Soc., 110, 2992-2993 (1988)
【非特許文献16】Arima, et al., J. Antibiotics, 25, 437-444 (1972)
【非特許文献17】Kohn, in Antibiotics III. Springer-Verlag, New York, pp. 3-11 (1975)
【非特許文献18】Hurley and Needham-VanDevanter, Acc. Chem. Res., 19, 230-237 (1986)
【非特許文献19】Bose, D.S., et al., J. Am. Chem. Soc., 114, 4939-4941 (1992)
【非特許文献20】Thurston, D.E., et al., J. Org. Chem., 61, 8141-8147 (1996)
【非特許文献21】Smellie, M., et al., Biochemistry, 42, 8232-8239(2003)
【非特許文献22】Martin, C., et al., Biochemistry, 44, 4135-4147
【非特許文献23】Gregson, S., et al., J. Med. Chem., 44, 737-748 (2001)
【非特許文献24】Alley, M.C., et al., Cancer Research, 64, 6700-6706 (2004)
【非特許文献25】Hartley, J.A., et al., Cancer Research, 64, 6693-6699 (2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ターゲティング剤に連結されたPBD二量体を含むコンジュゲートに関するものであり、ここで、PBD単量体は、C2位に、化合物をターゲティング剤に連結するためのアンカーを提供する置換基を有する。本発明は、また、ターゲティング剤に結合されたPBD二量体を含むコンジュゲートに関するものであり、ここで、二量体中のPBD単量体は同一でない。一方のPBD単量体は、C2位に、化合物をターゲティング剤に連結するためのアンカーを提供する置換基を有する。本明細書に記載のコンジュゲートは、がん細胞又は免疫細胞などの、標的分子を発現している細胞に対して強力な細胞障害活性及び/又は細胞増殖抑制活性を有する。これらのコンジュゲートは、対応する遊離のPBD二量体薬物化合物と比較して、毒性の低下した優れた有効性を提示する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一部の実施形態において、該コンジュゲートは、次式I:
L-(LU-D)p (I)
を有し、式中、Lはリガンド単位(すなわち、ターゲティング剤)であり、LUはリンカー単位であり、DはPBD二量体を含む薬物単位である。下付文字pは1〜20の整数である。したがって、該コンジュゲートは、リンカー単位によって少なくとも一つの薬物単位に共有結合で連結されたリガンド単位を含む。リガンド単位は、後でより完全に説明するが、標的部分に結合するターゲティング剤である。リガンド単位は、例えば、細胞成分(細胞結合剤)に、又は他の注目の標的分子に特異的に結合することができる。したがって、本発明は、また、例えば、種々のがん及び自己免疫疾患の治療方法を提供する。これらの方法は、リガンド単位が標的分子に特異的に結合するターゲティング剤であるコンジュゲートの使用を包含する。該リガンド単位は、例えば、抗体、抗体の抗原結合性フラグメントなどのタンパク質、ポリペプチド若しくはペプチド、又はFc融合タンパク質などの他の結合剤でよい。
【0012】
第1の態様において、コンジュゲートは、式I(前記)のコンジュゲートを含み、ここで、薬物単位は次式IIのPBD二量体を含む:
【化3】
【0013】
[式中、
は、式III:
【化4】
【0014】
(ここで、Aは、C5〜7アリール基であり、Xはリンカー単位への結合のための活性化可能な基であって、−O−、−S−、−C(O)O−、−C(O)−、−NHC(O)−及び−N(R)−(ここで、Rは、H、C1〜4アルキル、及び(CO)CH(ここで、mは、1〜3である)からなる群から選択され、且つ:
(i)Qは、一重結合であり、Qは、一重結合及び−Z−(CH−(ここで、Zは、一重結合、O、S及びNHから選択され、nは、1〜3である)から選択されるか;又は
(ii)Qは、−CH=CH−であり、Qは、一重結合である;
のいずれかである)
で表されるものであり;
12は、C5〜10アリール基であって、ハロ、ニトロ、シアノ、エーテル、C1〜7アルキル、C3〜7ヘテロシクリル及びビス−オキシ−C1〜3アルキレンからなる群から選択される1個又はそれ以上の置換基によって場合により置換されており;
及びRは、H、R、OH、OR、SH、SR、NH、NHR、NRR’、ニトロ、MeSn及びハロから独立に選択され;
(ここで、R及びR’は、置換されていてもよいC1〜12アルキル、置換されていてもよいC3〜20ヘテロシクリル及び置換されていてもよいC5〜20アリール基から独立に選択される);
は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH、NHR、NHRR’、ニトロ、MeSn及びハロから選択され;
且つ:
(a)R10はHであり、R11はOH又はOR(ここで、Rは、C1〜4アルキルである)であるか;
(b)R10及びR11は、それらが結合されている窒素原子及び炭素原子との間に窒素−炭素二重結合を形成しているか;又は
(c)R10はHであり、R11はSOM(ここで、zは2又は3であり、Mは薬学的に許容される一価カチオンである)であるか;
のいずれかであり、
R’’は、C3〜12アルキレン基であって、この鎖は、1個又はそれ以上のへテロ原子(例えばO、S、NRN2(ここで、RN2は、H又はC1〜4アルキルである)及び/又は芳香族環(例えばベンゼン又はピリジン)によって中断されていてよく;
Y及びY’は、O、S、又はNHから選択され;
6’、R7’、R9’は、それぞれ、R、R及びRのと同じ群から選択され、R10’及びR11’は、R10及びR11と同一であり、R11及びR11’がSOMである場合は、Mは薬学的に許容される二価カチオンを表し得る]
を有する化合物が含まれている。
【0015】
第2の態様において、増殖性疾患又は自己免疫疾患を治療するための医薬を製造するための、式Iのコンジュゲートの使用が提供される。関連する第3の態様において、増殖性疾患又は自己免疫疾患の治療のための、式Iのコンジュゲートの使用が提供される。
【0016】
別の態様において、標的箇所でPBD二量体又はその塩若しくは溶媒和物を提供するための、式Iのコンジュゲートの使用を提供する。
【0017】
当業者であれば、特定の細胞種の増殖性病態が、ある候補の共役体によって治療されるか否かを容易に測定することができる。例えば、ある特定の化合物によってもたらされる活性を評価するのに簡便に用いられ得るアッセイが、後にある実施例に説明されている。
【0018】
用語「増殖性疾患」は、インビトロであれ、インビボであれ、腫瘍性増殖又は増殖性増殖のような、望まれていない過剰細胞又は異常細胞の望まれていない、つまり制御されていない細胞増殖に対して使われている。
【0019】
増殖性病態の例としては、限定するものではないが、新生物及び腫瘍(例えば組織球増殖、神経膠腫、星状細胞増殖、骨腫)、ガン(例えば肺ガン、小細胞肺ガン、胃腸ガン、大腸ガン、結腸ガン、乳癌、卵巣癌、前立腺ガン、精巣ガン、腎臓ガン、膀胱ガン、膵臓ガン、脳腫瘍、肉腫、骨肉腫、カポージ肉腫、黒色腫)、白血病、乾癬、骨疾患、線維増殖障害(例えば結合組織の)、及びアテローム性動脈硬化症を含めた、限定するものではないが良性、前悪性、及び悪性の、細胞増殖が挙げられる。対象となる他のガンとしては、限定するものではないが、血液学的なもの:悪性腫瘍、例えば白血病、及びリンパ腫、例えば非ホジキンリンパ腫、及びサブタイプ、例えばDLBCL、辺縁帯、外套帯、及び濾胞、ホジキンリンパ腫、AML、及びB又はT細胞由来の他のガンが挙げられる。
【0020】
自己免疫疾患の例には、次のものが含まれる:リウマチ様関節炎、自己免疫性脱髄疾患(例えば、多発性硬化症、アレルギー性脳脊髄炎)、乾癬性関節炎、内分泌性眼疾患、網膜ぶどう膜炎、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、グレーブス病、糸球体腎炎、自己免疫性肝臓病学的障害、炎症性腸疾患(例えばクローン病)、アナフィラキシー、アレルギー反応、シェーグレン症候群、I型糖尿病、原発性胆汁性肝硬変、ウェゲナー肉芽腫症、線維筋痛症、多発性筋炎、皮膚筋炎、多発性内分泌不全、シュミット症候群、自己免疫性ぶどう膜炎、アジソン病、副腎炎、甲状腺炎、橋本甲状腺炎、自己免疫性甲状腺疾患、悪性貧血、胃萎縮症、慢性肝炎、ルポイド肝炎、アテローム性動脈硬化症、亜急性皮膚エリテマトーデス、副甲状腺機能低下症、ドレスラー症候群、自己免疫性血小板減少症、特発性血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、尋常性天疱瘡、天疱瘡、ヘルペス状皮膚炎、円形脱毛症、類天疱瘡、強皮症、進行性全身性硬化症、CREST症候群(石灰沈着症、レイノー現象、食道蠕動低下、強指症、及び毛細血管拡張症)、男性及び女性の自己免疫性不妊症、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎、混合性結合組織病、結節性多発性動脈炎、全身性壊死性血管炎、アトピー性皮膚炎、アトピー性鼻炎、グッドパスチャー症候群、シャーガス病、サルコイドーシス、リウマチ熱、喘息、反復流産、抗リン脂質症候群、農夫肺、多形性紅疹、心臓切開後症候群、クッシング症候群、自己免疫性慢性活動性肝炎、トリ愛好者肺、中毒性表皮壊死剥離症、アルポート症候群、肺胞炎、アレルギー性肺胞炎、線維性肺胞炎、間質性肺疾患、結節性紅斑、化膿性皮膚炎、輸血反応、高安動脈炎、リウマチ性多発筋痛、側頭動脈炎、住血吸虫症、巨細胞性動脈炎、回虫症、アスペルギルス症、サンプター症候群、湿疹、肉芽腫性リンパ腫症、ベーチェット病、カプラン症候群、川崎病、デング熱、脳脊髄炎、心内膜炎、心内膜心筋線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、乾癬、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎、シュルマン症候群、フェルティ症候群、フィラリア症、毛様体炎、慢性毛様体炎、異色性毛様体炎、フックス毛様体炎、IgA腎症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、移植片対宿主病、移植拒絶、心筋症、イートン・ランバート症候群、再発性多発性軟骨炎、寒冷グロブリン血症、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、エバンス症候群、及び自己免疫性性腺不全。
【0021】
一部の実施形態において、自己免疫疾患は、Bリンパ球の障害(例えば、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、リウマチ様関節炎、及びI型糖尿病)、Th1-リンパ球の障害(例えば、リウマチ様関節炎、多発性硬化症、乾癬、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、グレーブス病、原発性胆汁性肝硬変、ウェゲナー肉芽腫症、結核症、又は移植片対宿主病)、又はTh2-リンパ球の障害(例えば、アトピー性皮膚炎、全身性エリテマトーデス、アトピー性喘息、鼻結膜炎、アレルギー性鼻炎、オーメン症候群、全身性硬化症、又は慢性移植片対宿主病)である。一般に、樹状細胞に関連する障害は、Th1-リンパ球又はTh2-リンパ球の障害を含む。一部の実施形態において、自己免疫障害は、T細胞の介在する免疫学的障害である。
【0022】
本発明の第4の態様は、式Iのコンジュゲートの調製方法を含む。
【0023】
本発明で使用するための二量体PBD化合物は、以前に対称的な二量体PBD化合物を製造するのに採用されたものと異なる戦略で製造される。詳細には、本発明者らは、別個の方法ステップにおいて対称的なPBD二量体のコアにそれぞれC2アリール置換基を付加することを含む方法を開発した。したがって、本発明の第6の態様は、本明細書に記載の方法ステップの少なくとも一つを含む、式Iのコンジュゲートの製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明のコンジュゲートの腫瘍での効果を示す図である。
図2】本発明のコンジュゲートの腫瘍での効果を示す図である。
図3】本発明のコンジュゲートの腫瘍での効果を示す図である。
図4】本発明のコンジュゲートの腫瘍での効果を示す図である。
図5】本発明のコンジュゲートの腫瘍での効果を示す図である。
図6】本発明のコンジュゲートの腫瘍での効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
定義
本明細書中で商品名が使用される場合、商品名への言及は、文脈がそうでないことを指摘しない限り、該商品名の製品の製品製剤、ジェネリック薬、及び活性医薬成分をも指す。
【0026】
結合剤及びターゲティング剤
用語「結合剤」及び「ターゲティング剤」は、本明細書中で使用される場合、標的分子に特異的に結合する分子、例えば、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドを指す。例としては、完全長抗体、完全長抗体の抗原結合性フラグメント、標的分子に特異的に結合する抗体重鎖及び/又は軽鎖可変領域を含む他の薬剤(タンパク質、ポリペプチド又はペプチド)、又は標的分子に結合し、且つ抗体のFc領域、そのドメイン若しくは部分につながれているタンパク質、ペプチド、ポリペプチドの細胞外ドメインを含むFc融合タンパク質を挙げることができる。
【0027】
特異的結合
用語「特異的に結合する」及び「特異的結合」は、抗体又は他のタンパク質、ポリペプチド又はペプチドの所定分子(例えば、抗原)への結合を指す。典型的には、抗体又は他の分子は、少なくとも約1×107M-1の親和性で結合し、所定分子又は密接に関連した分子以外の非特異的分子(例えば、BSA、カゼイン)に結合する場合のその親和性に比べて少なくとも2倍を超える親和性で所定分子に結合する。
【0028】
薬学的に許容されるカチオン
薬学的に許容される一価並びに二価カチオンの各例は、Berge, et al., J. Pharm. Sci., 66, 1-19 (1977)に議論されている(この文献は参照により本明細書に組み込む)。
【0029】
この薬学的に許容されるカチオンは無機又は有機であり得る。
【0030】
薬学的に許容される一価無機カチオンの例としては、限定するものではないが、アルカリ金属イオン、例えばNa及びKが挙げられる。薬学的に許容される二価無機カチオンの例としては、限定するものではないが、アルカリ土類のカチオン、例えばCa2+及びMg2+が挙げられる。薬学的に許容される有機カチオンの例としては、限定するものではないが、アンモニウムイオン(すなわちNH)及び置換されたアンモニウムイオン(例えばNH、NH、NHR、NR)が挙げられる。いくつかの適する置換されたアンモニウムイオンの例は、エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、及びトロメタミン、並びにアミノ酸、例えばリシン及びアルギニンから誘導されるイオンである。一般的な四級アンモニウムイオンの例はN(CHである。
【0031】
置換基
本明細書で使われている用語「場合により置換された」は、置換されていなくてよいしまた置換されていてもよい親基に対して使われている。
【0032】
特に断らない限り、本明細書で使われている用語「置換された」は、1個又はそれ以上の置換基を有している親基に対して使われている。この用語「置換基」とは、本明細書では、通常の意味で使われており、親基に共有結合されている、又は適切であれば、親基に縮合されている化学部分構造のことを言う。さまざまな置換基が周知であって、その生成方法及びさまざまな親基への導入方法も周知である。
【0033】
以下に各置換基の例をより詳細に述べる。
【0034】
1〜12アルキル:本明細書で使われているこの用語「C1〜12アルキル」は、1〜12炭素原子を有している炭化水素化合物の1つの炭素原子から1個の水素原子を除去することによって得られる一価部分構造に対して使われており、これは脂肪族又は脂環式であり得、また飽和又は不飽和(例えば、部分不飽和、完全不飽和)でもあり得る。つまり、この用語「アルキル」には、以下で議論される、下位群であるアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、他が含まれる。
【0035】
飽和アルキル基の例としては、限定するものではないが、メチル(C)、エチル(C)、プロピル(C)、ブチル(C)、ペンチル(C)、へキシル(C)及びヘプチル(C)が挙げられる。
【0036】
飽和線状アルキル基の例としては、限定するものではないが、メチル(C)、エチル(C)、n−プロピル(C)、n−ブチル(C)、n−ペンチル(アミル)(C)、n−へキシル(C)及びn−ヘプチル(C)が挙げられる。
【0037】
飽和分岐アルキル基の例としては、イソ−プロピル(C)、イソ−ブチル(C)、sec−ブチル(C)、tert−ブチル(C)、イソ−ペンチル(C)、及びネオ−ペンチル(C)が挙げられる。
【0038】
2〜12アルケニル:本明細書で使われているこの用語「C2〜12アルケニル」は、1つ又はそれ以上の炭素−炭素二重結合を有しているアルキル基に対して使われている。
【0039】
不飽和アルケニル基の例としては、限定するものではないが、エテニル(ビニル、−CH=CH)、1−プロペニル(−CH=CH−CH)、2−プロペニル(アリル、−CH−CH=CH)、イソプロペニル(1−メチルビニル、−C(CH)=CH)、ブテニル(C)、ペンテニル(C)、及びヘキセニル(C)が挙げられる。
【0040】
2〜12アルキニル:本明細書で使われているこの用語「C2〜12アルキニル」は、1つ又はそれ以上の炭素−炭素三重結合を有しているアルキル基に対して使われている。
【0041】
不飽和アルキニル基の例としては、限定するものではないが、エチニル(−C≡CH)及び2−プロピニル(プロパルギル、−CH−C≡CH)が挙げられる。
【0042】
3〜12シクロアルキル:本明細書で使われているこの用語「C3〜12シクロアルキル」は、シクリル基でもあるアルキル基に対して使われている;すなわち、3〜7環原子を含んでいる環状炭化水素(炭環式)化合物(この部分構造は3〜7炭素原子を有する)の1つの脂環式環原子から1個の水素原子を除去することによって得られる一価部分構造に対して使われている。
【0043】
シクロアルキル基の例としては、限定するものではないが、
飽和単環式炭化水素化合物:
シクロプロパン(C)、シクロブタン(C)、シクロペンタン(C)、シクロヘキサン(C)、シクロヘプタン(C)、メチルシクロプロパン(C)、ジメチルシクロプロパン(C)、メチルシクロブタン(C)、ジメチルシクロブタン(C)、メチルシクロペンタン(C)、ジメチルシクロペンタン(C)及びメチルシクロヘキサン(C);
不飽和単環式炭化水素化合物:
シクロプロペン(C)、シクロブテン(C)、シクロペンテン(C)、シクロヘキセン(C)、メチルシクロプロペン(C)、ジメチルシクロプロペン(C)、メチルシクロブテン(C)、ジメチルシクロブテン(C)、メチルシクロペンテン(C)、ジメチルシクロペンテン(C)及びメチルシクロヘキセン(C);及び
飽和多環式炭化水素化合物:
ノルカラン(C)、ノルピナン(C)、ノルボルナン(C);
から誘導されるものが挙げられる。
【0044】
3〜20ヘテロシクリル:本明細書で使われているこの用語「C3〜20ヘテロシクリル」は、ヘテロ環式化合物の1つの環原子から1個の水素原子を除去することによって得られる一価部分構造に対して使われており、この部分構造は3〜20環原子を有しており、そのうちの1〜10が環へテロ原子である。好ましくは、それぞれの環は、3〜7環原子を有しており、そのうちの1〜4が環へテロ原子である。
【0045】
本発明の文脈では、添え字(例えばC3〜20、C3〜7、C5〜6、他)は、炭素原子であれへテロ原子であれ、その環原子の数、又は環原子の数の範囲を表している。例えば、本明細書で使われている、用語「C5〜6ヘテロシクリル」は、5又は6環原子を有しているヘテロシクリル基に対して使われている。
【0046】
単環式ヘテロシクリル基の例としては、限定するものではないが、
:アジリジン(C)、アゼチジン(C)、ピロリジン(テトラヒドロピロール)(C)、ピロリン(例えば、3−ピロリン、2,5−ジヒドロピロール)(C)、2H−ピロール又は3H−ピロール(イソピロール、イソアゾール)(C)、ピペリジン(C)、ジヒドロピリジン(C)、テトラヒドロピリジン(C)、アゼピン(C);
:オキシラン(C)、オキセタン(C)、オキソラン(テトラヒドロフラン)(C)、オキソール(ジヒドロフラン)(C)、オキサン(テトラヒドロピラン)(C)、ジヒドロピラン(C)、ピラン(C)、オキセピン(C);
:チイラン(C)、チエタン(C)、チオラン(テトラヒドロチオフェン)(C)、チアン(テトラヒドロチオピラン)(C)、チエパン(C);
:ジオキソラン(C)、ジオキサン(C)、及びジオキセパン(C);
:トリオキサン(C);
:イミダゾリジン(C)、ピラゾリジン(ジアゾリジン)(C)、イミダゾリン(C)、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)(C)、ピペラジン(C);
:テトラヒドロオキサゾール(C)、ジヒドロオキサゾール(C)、テトラヒドロイソオキサゾール(C)、ジヒドロイソオキサゾール(C)、モルホリン(C)、テトラヒドロオキサジン(C)、ジヒドロオキサジン(C)、オキサジン(C);
:チアゾリン(C)、チアゾリジン(C)、チオモルホリン(C);
:オキサジアジン(C);
:オキサチオール(C)及びオキサチアン(チオキサン)(C);及び、
:オキサチアジン(C);
から誘導されるものが挙げられる。
【0047】
置換された単環式ヘテロシクリル基の例としては、サッカリド(環状形態にある)、例えば、フラノース(C)(例えばアラビノフラノース、リキソフラノース、リボフラノース、及びキシロフランス)及びピラノース(C)(例えばアロピラノース、アルトロピラノース、グルコピラノース、マンノピラノース、グロピラノース、イドピラノース、ガラクトピラノース、及びタロピラノース)から誘導されるものが挙げられる。
【0048】
5〜20アリール:本明細書で使われている、この用語「C5〜20アリール」は、芳香族化合物の1つの芳香族環原子から1個の水素原子を除去することによって得られる一価部分構造に対して使われており、この部分構造は3〜20環原子を有している。好ましくは、それぞれの環は、5〜7環原子を有している。
【0049】
本発明の文脈では、添え字(例えばC3〜20、C5〜7、C5〜6、他)は、炭素原子であれへテロ原子であれ、その環原子の数、又は環原子の数の範囲を表している。例えば、用語「C5〜6アリール」は、5又は6環原子を有しているアリール基に対して使われている。
【0050】
この環原子は、「カルボアリール基」におけるように、すべて、炭素原子であり得る。
【0051】
カルボアリール基の例としては、限定するものではないが、ベンゼン(すなわちフェニル)(C)、ナフタレン(C10)、アズレン(C10)、アントラセン(C14)、フェナントレン(C14)、ナフタセン(C18)、及びピレン(C16)から誘導されるものが挙げられる。
【0052】
縮合環を含み、その縮合環の少なくとも1つが芳香族環であるアリール基の例としては、限定するものではないが、インダン(例えば2,3−ジヒドロ−1H−インデン)(C)、インデン(C)、イソインデン(C)、テトラリン(1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン)(C10)、アセナフテン(C12)、フルオレン(C13)、フェナレン(C13)、アセフェナントレン(C15)、及びアセアントレン(C16)から誘導される基が挙げられる。
【0053】
別形態として、この環原子は、「ヘテロアリール基」におけるように、1個又はそれ以上のへテロ原子を含み得る。単環式へテロアリール基の例としては、限定するものではないが、
:ピロール(アゾール)(C)、ピリジン(アジン)(C);
:フラン(オキソール)(C);
:チオフェン(チオール)(C);
:オキサゾール(C)、イソオキサゾール(C)、イソキサジン(C);
:オキサジアゾール(フラザン)(C);
:オキサトリアゾール(C);
:チアゾール(C)、イソチアゾール(C);
:イミダゾール(1,3−ジアゾール)(C)、ピラゾール(1,2−ジアゾール)(C)、ピリダジン(1,2−ジアジン)(C)、ピリミジン(1,3−ジアジン)(C)(例えば、シトシン、チミン、ウラシル)、ピラジン(1,4−ジアジン)(C);
:トリアゾール(C)、トリアジン(C);及び、
:テトラゾール(C);
から誘導されるものが挙げられる。
【0054】
縮合環を含むヘテロアリールの例としては、限定するものではないが、
ベンゾフラン(O)、イソベンゾフラン(O)、インドール(N)、イソインドール(N)、インドリジン(N)、インドリン(N)、イソインドリン(N)、プリン(N)(例えば、アデニン、グアニン)、ベンゾイミダゾール(N)、インダゾール(N)、ベンゾオキサゾール(N)、ベンゾイソオキサゾール(N)、ベンゾジオキソール(O)、ベンゾフラザン(N)、ベンゾトリアゾール(N)、ベンゾチオフラン(S)、ベンゾチアゾール(N)、ベンゾチアジアゾール(NS)から誘導されるC(2縮合環を有する);
クロメン(O)、イソクロメン(O)、クロマン(O)、イソクロマン(O)、ベンゾジオキサン(O)、キノリン(N)、イソキノリン(N)、キノリジン(N)、ベンゾオキサジン(N)、ベンゾジアジン(N)、ピリドピリジン(N)、キノキサリン(N)、キナゾリン(N)、シンノリン(N)、フタラジン(N)、ナフチリジン(N)、プテリジン(N)から誘導されるC10(2縮合環を有する);
ベンゾジアゼピン(N)から誘導されるC11(2縮合環を有する);
カルバゾール(N)、ジベンゾフラン(O)、ジベンゾチオフェン(S)、カルボリン(N)、ペリミジン(N)、ピリドインドール(N)から誘導されるC13(3縮合環を有する);及び、
アクリジン(N)、キサンテン(O)、チオキサンテン(S)、オキサントレン(O)、フェノキサチイン(O)、フェナジン(N)、フェノキサジン(N)、フェノチアジン(N)、チアントレン(S)、フェナントリジン(N)、フェナントロリン(N)、フェナジン(N)から誘導されるC14(3縮合環を有する);
が挙げられる。
【0055】
上記各群のものは、それら自体及び以下に掲載するさらなる置換基から選択される1個又はそれ以上の基でそれら自体が場合により置換されていてもよい。
【0056】
ハロ:−F、−Cl、−Br、及び−I。
【0057】
ヒドロキシ:−OH。
【0058】
エーテル:−OR[式中、Rは、エーテル置換基、例えば、C1〜7アルキル基(C1〜7アルコキシ基とも呼ばれる、以下で議論される)、C3〜20ヘテロシクリル基(C3〜20ヘテロシクリルオキシ基とも呼ばれる)、又はC5〜20アリール基(C5〜20アリールオキシ基とも呼ばれる)、好ましくはC1〜7アルキル基である]。
【0059】
アルコキシ:−OR[式中、Rは、アルキル基、例えば、C1〜7アルキル基である。C1〜7アルコキシ基の例としては、限定するものではないが、−OMe(メトキシ)、−OEt(エトキシ)、−O(nPr)(n−プロポキシ)、−O(iPr)(イソプロポキシ)、−O(nBu)(n−ブトキシ)、−O(sBu)(sec−ブトキシ)、−O(iBu)(イソブトキシ)、及び−O(tBu)(tert−ブトキシ)が挙げられる]。
【0060】
アセタール:−CH(OR)(OR)[式中、R及びRは、独立して、アセタール置換基、例えば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である、又は、「環状」アセタール基のケースでは、R及びRは、それらが結合されている2つの酸素原子、及び、それらが結合されている炭素原子と一緒になって、4〜8環原子を有しているヘテロ環式環を形成している。アセタール基の例としては、限定するものではないが、−CH(OMe)、−CH(OEt)、及び−CH(OMe)(OEt)が挙げられる]。
【0061】
ヘミアセタール:−CH(OH)(OR)[式中、Rは、ヘミアセタール置換基、例えば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である。ヘミアセタール基の例としては、限定するものではないが、−CH(OH)(OMe)及び−CH(OH)(OEt)が挙げられる]。
【0062】
ケタール:−CR(OR)(OR)[ここで、R及びRはアセタールに対して定義されている通りであって、Rは水素以外のケタール置換基、例えば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である。ケタール基の例としては、限定するものではないが、−C(Me)(OMe)、−C(Me)(OEt)、−C(Me)(OMe)(OEt)、−C(Et)(OMe)、−C(Et)(OEt)、及び−C(Et)(OMe)(OEt)が挙げられる]。
【0063】
ヘミケタール:−CR(OH)(OR)[ここで、Rはヘミアセタールに対して定義されている通りであって、Rは水素以外のヘミケタール置換基、例えば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である。ヘミアセタール基の例としては、限定するものではないが、−C(Me)(OH)(OMe)、−C(Et)(OH)(OMe)、−C(Me)(OH)(OEt)、及び−C(Et)(OH)(OEt)が挙げられる]。
【0064】
オキソ(ケト、−オン):=O。
【0065】
チオン(チオケトン):=S。
【0066】
イミノ(イミン):=NR[式中、Rは、イミノ置換基、例えば、水素、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくは水素又はC1〜7アルキル基である。エステル基の例としては、限定するものではないが、=NH、=NMe、=NEt、及び=NPhが挙げられる]。
【0067】
ホルミル(カルバルデヒド、カルボキサルデヒド):−C(=O)H。
【0068】
アシル(ケト):−C(=O)R[式中、Rは、アシル置換基、例えば、C1〜7アルキル基(C1〜7アルキルアシル又はC1〜7アルカノイルとも呼ばれる)、C3〜20ヘテロシクリル基(C3〜20ヘテロシクリルアシルとも呼ばれる)、又はC5〜20アリール基(C5〜20アリールアシルとも呼ばれる)、好ましくはC1〜7アルキル基である。アシル基の例としては、限定するものではないが、−C(=O)CH(アセチル)、−C(=O)CHCH(プロピオニル)、−C(=O)C(CH(t−ブチリル)、及び−C(=O)Ph(ベンゾイル、フェノン)が挙げられる]。
【0069】
カルボキシ(カルボン酸):−C(=O)OH。
【0070】
チオカルボキシ(チオカルボン酸):−C(=S)SH。
【0071】
チオロカルボキシ(チオロカルボン酸):−C(=O)SH。
【0072】
チオノカルボキシ(チオノカルボン酸):−C(=S)OH。
【0073】
イミド酸:−C(=NH)OH。
【0074】
ヒドロキサム酸:−C(=NOH)OH。
【0075】
エステル(カルボキシラート、カルボン酸エステル、オキシカルボニル):−C(=O)OR[式中、Rは、エステル置換基、例えば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である。エステル基の例としては、限定するものではないが、−C(=O)OCH、−C(=O)OCHCH、−C(=O)OC(CH、及び−C(=O)OPhが挙げられる]。
【0076】
アシルオキシ(逆エステル):−OC(=O)R[式中、Rは、アシルオキシ置換基、例えば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である。アシルオキシ基の例としては、限定するものではないが、−OC(=O)CH(アセトキシ)、−OC(=O)CHCH、−OC(=O)C(CH、−OC(=O)Ph、及び−OC(=O)CHPhが挙げられる]。
【0077】
オキシカルボイルオキシ:−OC(=O)OR[式中、Rは、エステル置換基、例えば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である。エステル基の例としては、限定するものではないが、−OC(=O)OCH、−OC(=O)OCHCH、−OC(=O)OC(CH、及び−OC(=O)OPhが挙げられる]。
【0078】
アミノ:−NR[式中、R及びRは、独立して、アミノ置換基、例えば、水素、C1〜7アルキル基(C1〜7アルキルアミノ又はジ−C1〜7アルキルアミノとも呼ばれる)、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくはH又はC1〜7アルキル基である、又は、「環状」アミノ基のケースでは、R及びRは、それらが結合されている窒素原子と一緒になって、4〜8環原子を有しているヘテロ環式環を形成している。アミノ基は、一級(−NH)、二級(−NHR)、又は三級(−NHR)であり得るものであって、カチオン形態では、四級(−NR)であり得る。アミノ基の例としては、限定するものではないが、−NH、−NHCH、−NHC(CH、−N(CH、−N(CHCH、及び−NHPhが挙げられる。環状アミノ基の例としては、限定するものではないが、アジリジノ、アゼチジノ、ピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジノ、モルホリノ、及びチオモルホリノが挙げられる]。
【0079】
アミド(カルバモイル、カルバミル、アミノカルボニル、カルボキサミド):−C(=O)NR[式中、R及びRは、独立して、アミノ基に対して定義されている、アミノ置換基である。アミド基の例としては、限定するものではないが、−C(=O)NH、−C(=O)NHCH、−C(=O)N(CH、−C(=O)NHCHCH、及び−C(=O)N(CHCH、並びにR及びRが、それらが結合されている窒素原子と一緒になって、例えば、ピペリジノカルボニル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニル、及びピペラジノカルボニルにおけるようなヘテロ環式構造を形成しているアミド基が挙げられる]。
【0080】
チオアミド(チオカルバミル):−C(=S)NR[式中、R及びRは、独立して、アミノ基に対して定義されている、アミノ置換基である。アミド基の例としては、限定するものではないが、−C(=S)NH、−C(=S)NHCH、−C(=S)N(CH、及び−C(=S)NHCHCHが挙げられる]。
【0081】
アシルアミド(アシルアミノ):−NRC(=O)R[式中、Rは、アミド置換基、例えば、水素、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくは水素又はC1〜7アルキル基であって、Rは、アシル置換基、例えば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくは水素又はC1〜7アルキル基である。アシルアミド基の例としては、限定するものではないが、−NHC(=O)CH、−NHC(=O)CHCH、及び−NHC(=O)Phが挙げられる。R及びRは、例えば、スクシンイミジル、マレイミジル、及びフタルイミジル:
【化5】
【0082】
のように、一緒に環状構造を形成し得る]。
【0083】
アミノカルボニルオキシ:−OC(=O)NR[式中、R及びRは、独立して、アミノ基に対して定義されている、アミノ置換基である。アミノカルボニルオキシ基の例としては、限定するものではないが、−OC(=O)NH、−OC(=O)NHMe、−OC(=O)NMe、及び−OC(=O)NEtが挙げられる]。
【0084】
ウレイド:−N(R)CONR[式中、R及びRは、独立して、アミノ基に対して定義されている、アミノ置換基であって、Rは、ウレイド置換基、例えば、水素、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくは水素又はC1〜7アルキル基である。ウレイド基の例としては、限定するものではないが、−NHCONH、−NHCONHMe、−NHCONHEt、−NHCONMe、−NHCONEt、−NMeCONH、−NMeCONHMe、−NMeCONHEt、−NMeCONMe、及び−NMeCONEtが挙げられる]。
【0085】
グアニジノ:−NH−C(=NH)NH
【0086】
テトラゾリル:4窒素原子及び1炭素原子を有している5員芳香族環、
【化6】
【0087】
イミノ:=NR[式中、Rは、イミノ置換基、例えば、水素、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくはH又はC1〜7アルキル基である。イミノ基の例としては、限定するものではないが、=NH、=NMe、及び=NEtが挙げられる]。
【0088】
アミジン(アミジノ):−C(=NR)NR[式中、それぞれのRは、アミジン置換基、例えば、水素、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくはH又はC1〜7アルキル基である。アミジン基の例としては、限定するものではないが、−C(=NH)NH、−C(=NH)NMe、及び−C(=NMe)NMeが挙げられる]。
【0089】
ニトロ:−NO
【0090】
ニトロソ:−NO。
【0091】
アジド:−N
【0092】
シアノ(ニトリル、カルボニトリル):−CN。
【0093】
イソシアノ:−NC。
【0094】
シアナト:−OCN。
【0095】
イソシアナト:−NCO。
【0096】
チオシアノ(チオシアナト):−SCN。
【0097】
イソチオシアノ(イソチオシアナト):−NCS。
【0098】
スルフヒドリル(チオール、メルカプト):−SH。
【0099】
チオエーテル(スルフィド):−SR[式中、Rは、チオエーテル置換基、例えば、C1〜7アルキル基(C1〜7アルキルチオ基とも呼ばれる)、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である。C1〜7アルキルチオ基の例としては、限定するものではないが、−SCH及び−SCHCHが挙げられる]。
【0100】
ジスルフィド:−SS−R[式中、Rは、ジスルフィド置換基、例えば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基(本明細書ではC1〜7アルキルジスルフィドとも呼ばれる)である。C1〜7アルキルジスルフィド基の例としては、限定するものではないが、−SSCH及び−SSCHCHが挙げられる]。
【0101】
スルフィン(スルフィニル、スルホキシド):−S(=O)R[式中、Rは、スルフィン置換基、例えば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である。スルフィン基の例としては、限定するものではないが、−S(=O)CH及び−S(=O)CHCHが挙げられる]。
【0102】
スルホン(スルホニル):−S(=O)R[式中、Rは、スルホン置換基、例えば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基であり、例えば、フッ素化又は過フッ素化C1〜7アルキル基も含まれる。スルホン基の例としては、限定するものではないが、−S(=O)CH(メタンスルホニル、メシル)、−S(=O)CF(トリフリル)、−S(=O)CHCH(エシル)、−S(=O)(ノナフリル)、−S(=O)CHCF(トレシル)、−S(=O)CHCHNH(タウリル)、−S(=O)Ph(フェニルスルホニル、ベシル)、4−メチルフェニルスルホニル(トシル)、4−クロロフェニルスルホニル(クロシル)、4−ブロモフェニルスルホニル(ブロシル)、4−ニトロフェニル(ノシル)、2−ナフタレンスルホナート(ナプシル)、及び5−ジメチルアミノ−ナフタレン−1−イルスルホナート(ダンシル)が挙げられる]。
【0103】
スルフィン酸(スルフィノ):−S(=O)OH、−SOH。
【0104】
スルホン酸(スルホ):−S(=O)OH、−SOH。
【0105】
スルフィナート(スルフィン酸エステル):−S(=O)OR[式中、Rは、スルフィナート置換基、例えば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である。スルフィナート基の例としては、限定するものではないが、−S(=O)OCH(メトキシスルフィニル;メチルスルフィナート)及び−S(=O)OCHCH(エトキシスルフィニル;エチルスルフィナート)が挙げられる]。
【0106】
スルホナート(スルホン酸エステル):−S(=O)OR[式中、Rは、スルホナート置換基、例えば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である。スルホナート基の例としては、限定するものではないが、−S(=O)OCH(メトキシスルホニル;メチルスルホナート)及び−S(=O)OCHCH(エトキシスルホニル;エチルスルホナート)が挙げられる]。
【0107】
スルフィニルオキシ:−OS(=O)R[式中、Rは、スルフィニルオキシ置換基、例えば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である。スルフィニルオキシ基の例としては、限定するものではないが、−OS(=O)CH及び−OS(=O)CHCHが挙げられる]。
【0108】
スルホニルオキシ:−OS(=O)R[式中、Rは、スルホニルオキシ置換基、例えば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である。スルホニルオキシ基の例としては、限定するものではないが、−OS(=O)CH(メシラート)及び−OS(=O)CHCH(エシラート)が挙げられる]。
【0109】
スルファート:−OS(=O)OR[式中、Rは、スルファート置換基、例えば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である。スルファート基の例としては、限定するものではないが、−OS(=O)OCH及び−SO(=O)OCHCHが挙げられる]。
【0110】
スルファミル(スルファモイル;スルフィン酸アミド;スルフィンアミド):−S(=O)NR[式中、R及びRは、独立して、アミノ基に対して定義されている、アミノ置換基である。スルファミル基の例としては、限定するものではないが、−S(=O)NH、−S(=O)NH(CH)、−S(=O)N(CH、−S(=O)NH(CHCH)、−S(=O)N(CHCH、及び−S(=O)NHPhが挙げられる]。
【0111】
スルホンアミド(スルフィナモイル;スルホン酸アミド;スルホンアミド):−S(=O)NR[式中、R及びRは、独立して、アミノ基に対して定義されている、アミノ置換基である。スルホンアミド基の例としては、限定するものではないが、−S(=O)NH、−S(=O)NH(CH)、−S(=O)N(CH、−S(=O)NH(CHCH)、−S(=O)N(CHCH、及び−S(=O)NHPhが挙げられる]。
【0112】
スルファミノ:−NRS(=O)OH[式中、Rは、アミノ基に対して定義されている、アミノ置換基である。スルファミノ基の例としては、限定するものではないが、−NHS(=O)OH及び−N(CH)S(=O)OHが挙げられる]。
【0113】
スルホンアミノ:−NRS(=O)R[式中、Rは,アミノ基に対して定義されている、アミノ置換基であって、Rは、スルホンアミノ置換基、例えば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である。スルホンアミノ基の例としては、限定するものではないが、−NHS(=O)CH及び−N(CH)S(=O)が挙げられる]。
【0114】
スルフィンアミノ:−NRS(=O)R[式中、Rは,アミノ基に対して定義されている、アミノ置換基であって、Rは、スルフィンアミノ置換基、例えば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である。スルフィンアミノ基の例としては、限定するものではないが、−NHS(=O)CH及び−N(CH)S(=O)Cが挙げられる]。
【0115】
ホスフィノ(ホスフィン):−PR[式中、Rは、ホスフィノ置換基、例えば、−H、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくは−H、C1〜7アルキル基、又はC5〜20アリール基である。ホスフィノ基の例としては、限定するものではないが、−PH、−P(CH、−P(CHCH、−P(t−Bu)、及び−P(Ph)が挙げられる]。
【0116】
ホスホ:−P(=O)
【0117】
ホスフィニル(ホスフィンオキシド):−P(=O)R[式中、Rは、ホスフィニル置換基、例えば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基又はC5〜20アリール基である。ホスフィニル基の例としては、限定するものではないが、−P(=O)(CH、−P(=O)(CHCH、−P(=O)(t−Bu)、及び−P(=O)(Ph)が挙げられる]。
【0118】
ホスホン酸(ホスホノ):−P(=O)(OH)
【0119】
ホスホナート(ホスホノエステル):−P(=O)(OR)[ここで、Rは、ホスホナート置換基、例えば、−H、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくは−H、C1〜7アルキル基、又はC5〜20アリール基である。ホスホナート基の例としては、限定するものではないが、−P(=O)(OCH、−P(=O)(OCHCH、−P(=O)(O−t−Bu)、及び−P(=O)(OPh)が挙げられる]。
【0120】
リン酸(ホスホノオキシ):−OP(=O)(OH)
【0121】
ホスファート(ホスホノオキシエステル):−OP(=O)(OR)[ここで、Rは、ホスファート置換基、例えば、−H、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくは−H、C1〜7アルキル基、又はC5〜20アリール基である。ホスファート基の例としては、限定するものではないが、−OP(=O)(OCH、−OP(=O)(OCHCH、−OP(=O)(O−t−Bu)、及び−OP(=O)(OPh)が挙げられる]。
【0122】
亜リン酸:−OP(OH)
【0123】
ホスファイト:−OP(OR)[ここで、Rは、ホスファイト置換基、例えば、−H、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくは−H、C1〜7アルキル基、又はC5〜20アリール基である。ホスファイト基の例としては、限定するものではないが、−OP(OCH、−OP(OCHCH、−OP(O−t−Bu)、及び−OP(OPh)が挙げられる]。
【0124】
ホスホロアミダイト:−OP(OR)−NR[ここで、R及びRは、ホスホロアミダイト置換基、例えば、−H、(置換されていてもよい)C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくは−H、C1〜7アルキル基、又はC5〜20アリール基である。ホスホロアミダイト基の例としては、限定するものではないが、−OP(OCHCH)−N(CH、−OP(OCHCH)−N(i−Pr)、及び−OP(OCHCHCN)−N(i−Pr)が挙げられる]。
【0125】
ホスホロアミダイト:−OP(=O)(OR)−NR[ここで、R及びRは、ホスホロアミダイト置換基、例えば、−H、(置換されていてもよい)C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、又はC5〜20アリール基、好ましくは−H、C1〜7アルキル基、又はC5〜20アリール基である。ホスホロアミダイト基の例としては、限定するものではないが、−OP(=O)(OCHCH)−N(CH、−OP(=O)(OCHCH)−N(i−Pr)、及び−OP(=O)(OCHCHCN)−N(i−Pr)が挙げられる]。
【0126】
アルキレン
3〜12アルキレン:本明細書で使われている、この用語「C3〜12アルキレン」は、(特に断らない限り)3〜12炭素原子を有している炭化水素化合物の2個の水素原子を除去する(同じ炭素原子から2つ、又は2つの別の炭素原子のそれぞれから1つずつ)ことによって得られる二座部分構造に対して使われていて、脂肪族又は脂環式であり得、また飽和、部分不飽和、又は完全不飽和でもあり得る。つまり、この用語「アルキレン」には、以下で議論される、下位群であるアルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、他も含まれる。
【0127】
線状飽和C3〜12アルキレン基の例としては、限定するものではないが、−(CH−(ここで、nは、3〜12の整数である)、例えば、−CHCHCH−(プロピレン)、−CHCHCHCH−(ブチレン)、−CHCHCHCHCH−(ペンチレン)及び−CHCHCHCHCHCHCH−(ヘプチレン)が挙げられる。
【0128】
分岐飽和C3〜12アルキレン基の例としては、限定するものではないが、−CH(CH)CH−、−CH(CH)CHCH−、−CH(CH)CHCHCH−、−CHCH(CH)CH−、−CHCH(CH)CHCH−、−CH(CHCH)−、−CH(CHCH)CH−、及び−CHCH(CHCH)CH−が挙げられる。
【0129】
線状部分不飽和C3〜12アルキレン基(C3〜12アルケニレン、及びアルキニレン基)の例としては、限定するものではないが、−CH=CH−CH−、−CH−CH=CH−、−CH=CH−CH−CH−、−CH=CH−CH−CH−CH−、−CH=CH−CH=CH−、−CH=CH−CH=CH−CH−、−CH=CH−CH=CH−CH−CH−、−CH=CH−CH−CH=CH−、−CH=CH−CH−CH−CH=CH−、及び−CH−C≡C−CH−が挙げられる。
【0130】
分岐部分不飽和C3〜12アルキレン基(C3〜12アルケニレン及びアルキニレン基)の例としては、限定するものではないが、−C(CH)=CH−、−C(CH)=CH−CH−、−CH=CH−CH(CH)−及び−C≡C−CH(CH)−が挙げられる。
【0131】
脂環式飽和C3〜12アルキレン基(C3〜12シクロアルキレン)の例としては、限定するものではないが、シクロペンチレン(例えばシクロペンタ−1,3−イレン)、及びシクロへキシレン(例えばシクロヘキサ−1,4−イレン)が挙げられる。
【0132】
脂環式部分不飽和C3〜12アルキレン基(C3〜12シクロアルキレン)の例としては、限定するものではないが、シクロペンテニレン(例えば4−シクロペンテン−1,3−イレン)、シクロヘキセニレン(例えば2−シクロヘキセン−1,4−イレン;3−シクロヘキセン−1,2−イレン;2,5−シクロヘキサジエン−1,4−イレン)が挙げられる。
【0133】
酸素保護基:用語「酸素保護基」とは、ヒドロキシ基をマスクする部分構造のことを言い、当技術分野では周知のものである。多数の適する基がGreene, T.W. and Wuts, G.M., Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Edition, John Wiley & Sons, Inc., 1999の23〜200頁に記載されている(これは参照により本明細書に組み込まれる)。特に対象となる群としては、シリルエーテル(例えばTMS、TBDMS)、置換されたメチルエーテル(例えばTHP)及びエステル(例えばアセタート)が挙げられる。
【0134】
カルバマート窒素保護基:用語「カルバマート窒素保護基」は、イミン結合中の窒素をマスクする部分構造に対して使われていて、当技術分野では周知のものである。これらの基は、以下の構造:
【化7】
【0135】
[式中、R’10は、先に定義されているRである]を有している。多数の適する基がGreene, T.W. and Wuts, G.M., Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Edition, John Wiley & Sons, Inc., 1999の503〜549頁に記載されている(これは参照により本明細書に組み込まれる)。
【0136】
ヘミ−アミナール窒素保護基:用語「ヘミ−アミナール窒素保護基」は、以下の構造:
【化8】
【0137】
[式中、R’10は、先に定義されているRである]を有している基に対して使われている。多数の適する基がGreene, T.W. and Wuts, G.M., Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Edition, John Wiley & Sons, Inc., 1999の633〜647頁にアミド保護基として記載されている(これは参照により本明細書に組み込まれる)。
【0138】
発明の詳細な説明
本発明は、リンカー単位を介してリガンド単位に連結されたPBD二量体を含むコンジュゲートを提供する。一実施形態において、リンカー単位は、ストレッチ単位(Stretcher unit)(A)、特異性単位(Specificity unit)(L1)、及びスペーサー単位(L2)を含む。リンカー単位は、一端でリガンド単位に、他端でPBD二量体化合物に連結される。
【0139】
一態様において、このようなコンジュゲートは以下に式Ia:
L-(A1a-L1s-L2y-D)p (Ia)
で示され、式中、
Lはリガンド単位であり、
-A1a-L1s-L2y-はリンカー単位(LU)(ここで、
-A1-はストレッチ単位であり、
aは1又は2であり、
-L1-は特異性単位であり、
sは1〜12の範囲の整数であり、
-L2-はスペーサー単位であり、
yは0、1又は2である)であり、
-DはPBD二量体であり、
pは1〜20である。
【0140】
薬物負荷量は、リガンド単位(例えば、抗体)当たりの薬物分子の数であるpで表される。薬物負荷量は、リガンド単位(例えば、Ab又はmAb)当たり1〜20個の範囲の薬物単位(D)でよい。組成物の場合、pは、組成物中のコンジュゲートの平均薬物負荷量を表し、pは1〜20の範囲にある。
【0141】
一部の実施形態において、pは、リガンド単位当たり約1〜約8の薬物単位である。一部の実施形態において、pは1である。一部の実施形態において、pは2である。一部の実施形態において、pはリガンド単位当たり約2〜約8個の薬物単位である。一部の実施形態において、pは、リガンド単位当たり約2〜約6、2〜約5、又は2〜約4個の薬物単位である。一部の実施形態において、pは、リガンド単位当たり約2、約4、約6又は約8個の薬物単位である。
【0142】
コンジュゲーション反応による調製において、リガンド単位当たりの平均薬物単位数は、質量分光法、ELISAアッセイ、及びHPLCなどの通常の手段によって特徴付けることができる。コンジュゲート中のpに関する定量的分布も測定することができる。一部の例で、pがある特定の値である均一コンジュゲートの、異なる薬物負荷量を有するコンジュゲートからの分離、精製、及び特徴付けは、逆相HPLC又は電気泳動などの手段を用いて達成することができる。
【0143】
別の態様において、このようなコンジュゲートは、以下に式Ibで示される:
【化9】
【0144】
また、
L-(A1a-L2y(-L1s)-D)p (Ib)
とも表され、
式中、
Lはリガンド単位であり、
-A1a-L1s(L2y)-はリンカー単位(LU)(ここで、
-A1-はストレッチ単位(L2)に連結されたストレッチ単位であり、
aは1又は2であり、
-L1-はストレッチ単位(L2)に連結された特異性単位であり、
sは0〜12の範囲の整数であり、
-L2-はスペーサー単位であり、
yは0、1又は2である)であり、
-DはPBD二量体であり、
pは1〜20である。
【0145】
好ましい形態
次の好ましい形態は、前記のような本発明のすべての態様に適用されてよく、又は単一の態様に関してもよい。好ましい形態は、任意の組合せにおいて一緒に組み合わせることができる。
【0146】
一実施形態において、コンジュゲートは、次式:
L-(A1a-L1s-L2y-D)p
を有し、式中、L、A1、a、L1、s、L2、D及びpは前に説明した通りである。
【0147】
一実施形態において、リガンド単位(L)は、標的細胞の表面上の標的分子に特異的に結合する細胞結合剤(CBA)である。典型的な式を下に例示する:
【化10】
【0148】
ここで、星印は薬物単位(D)への結合箇所を示し、CBAは細胞結合剤であり、L1は特異性単位であり、A1は、L1を細胞結合剤へ連結するストレッチ単位であり、L2はスペーサー単位であり、これは、共有結合、自壊性基であるか、又は-OC(=O)と一緒になって自壊性基を形成し、L2は任意である。
【0149】
別の実施形態において、リガンド単位(L)は、標的細胞の表面上の標的分子に特異的に結合する細胞結合剤(CBA)である。典型的な式を下に例示する:
CBA-A1a-L1s-L2y-*
ここで、星印は薬物単位(D)への結合箇所を示し、CBAは細胞結合剤であり、L1は特異性単位であり、A1は、L1を細胞結合剤へ連結するストレッチ単位であり、L2はスペーサー単位であり、これは、共有結合又は自壊性基であり、aは1又は2であり、sは0、1又は2であり、yは0、1又は2である。
【0150】
上に例示した実施形態において、L1は、開裂可能な特異性単位でよく、自壊性基(複数可)が存在する場合、開裂すると自壊性基(又は複数の自壊性基)L2を活性化する「トリガー」と呼ばれることもある。特異性単位L1が開裂するか、又はL1とL2との間の連結(すなわち、共有結合)が開裂すると、自壊性基は薬物単位(D)を放出する。
【0151】
別の実施形態において、リガンド単位(L)は、標的細胞の表面上の標的分子に特異的に結合する細胞結合剤(CBA)である。典型的な式を下に例示する:
【化11】
【0152】
ここで、星印は薬物(D)への結合箇所を示し、CBAは細胞結合剤であり、L1はL2に連結された特異性単位であり、A1は、L2を細胞結合剤へ連結するストレッチ単位であり、L2は自壊性基であり、aは1又は2であり、sは1又は2であり、yは1又は2である。
【0153】
本明細書中で考察される種々の実施形態において、L1及びL2の性質は広範に異なることができる。これらの基は、コンジュゲートが送達される部位の状態によって部分的には規定され得るそれらの特性に基づいて選択される。特異性単位L1が開裂可能なら、L1の構造及び/又は配列は、それが標的部位(例えば、標的細胞)に存在する酵素の作用によって開裂するように選択される。pH(例えば、酸又は塩基に不安定)、温度の変化、又は照射(例えば、光に不安定)によって開裂可能であるL1単位を使用することもできる。還元又は酸化条件下で開裂可能であるL1単位も、コンジュゲート中で使用できる可能性がある。
【0154】
一部の実施形態において、L1は、一つのアミノ酸又はアミノ酸の連続的配列を含むことができる。アミノ酸配列は、酵素にとっての標的基質であり得る。
【0155】
一実施形態において、L1は、酵素の作用によって開裂可能である。一実施形態において、酵素はエステラーゼ又はペプチダーゼである。例えば、L1は、カテプシンなど、リソソームのプロテアーゼによって開裂され得る。
【0156】
一実施形態において、L2は、存在し、-C(=O)O-と一緒になって一つ又は複数の自壊性基を形成する。一部の実施形態において、-C(=O)O-も自壊性基である。
【0157】
一実施形態において、L1が酵素の作用によって開裂可能であり、且つL2が存在する場合、酵素は、L1とL2との間の結合を開裂し、それによって、自壊性基(複数可)は薬物単位を放出する。
【0158】
L1及びL2は、存在する場合、
-C(=O)NH-、
-C(=O)O-、
-NHC(=O)-、
-OC(=O)-、
-OC(=O)O-、
-NHC(=O)O-、
-OC(=O)NH-、
-NHC(=O)NH、及び
-O-(グリコシド結合)
から選択される結合によって連結され得る。
【0159】
L2に連結しているL1のアミノ基は、アミノ酸のN-末端でよく、又はアミノ酸側鎖、例えば、リシンアミノ酸側鎖のアミノ基から誘導することができる。
【0160】
L2に連結しているL1のカルボキシル基は、アミノ酸のC-末端でよく、又はアミノ酸側鎖、例えば、グルタミン酸アミノ酸側鎖のカルボキシル基から誘導することができる。
【0161】
L2に連結しているL1のヒドロキシ基は、アミノ酸側鎖、例えば、セリンアミノ酸側鎖のヒドロキシ基から誘導することができる。
【0162】
一実施形態において、-C(=O)O-及びL2は、一緒になって、基:
【化12】
【0163】
を形成し、ここで、星印は薬物単位への結合箇所を示し、波線はL1への結合箇所を示し、Yは、-N(H)-、-O-、-C(=O)N(H)-、又は-C(=O)O-であり、nは0〜3である。フェニレン環は、本明細書に記載のような一つ、二つ又は三つの置換基で置換されていてもよい。
【0164】
一実施形態において、YはNHである。
【0165】
一実施形態において、nは0又は1である。好ましくは、nは0である。
【0166】
YがNHであり、且つnが0である場合には、自壊性基を、p-アミノベンジルカルボニル(PABC)リンカーと呼ぶこともある。
【0167】
自壊性基は、リンカー中の遠隔部位が活性化されると、(n=0の場合には)下記に示す道筋に沿って進行して、薬物単位(すなわち、非対称PBD)の放出を可能にする:
【化13】
【0168】
ここで、星印は、薬物への結合を表し、L*は、リンカーの残存部分の活性化された形態であり、放出された薬物単位は示されていない。これらの基は、活性化部位を薬物から分離する利点を有する。
【0169】
別の実施形態において、-C(=O)O-及びL2は、一緒になって、次式から選択される基を形成する:
【化14】
【0170】
ここで、星印、波線、Y、及びnは前に定義した通りである。各フェニレン環は、本明細書に記載のような一つ、二つ又は三つの置換基で置換されていてもよい。一実施形態において、Y置換基を有するフェニレン環は、置換されていてもよく、Y置換基を有さないフェニレン環は非置換である。
【0171】
別の実施形態において、-C(=O)O-及びL2は、一緒になって、次式から選択される基を形成する:
【化15】
【0172】
ここで、星印、波線、Y、及びnは前に定義した通りであり、Eは、O、S又はNRであり、Dは、N、CH又はCRであり、Fは、N、CH又はCRである。
【0173】
一実施形態において、DはNである。
【0174】
一実施形態において、DはCHである。
【0175】
一実施形態において、EはO又はSである。
【0176】
一実施形態において、FはCHである。
【0177】
好ましい実施形態において、L1とL2との間の共有結合は、カテプシンに不安定(例えば、開裂可能)な結合である。
【0178】
一実施形態において、L1はジペプチドを含む。ジペプチド中のアミノ酸は、天然アミノ酸と非天然アミノ酸との任意の組合せでよい。一部の実施形態において、ジペプチドは、天然アミノ酸を含む。リンカーがカテプシンに不安定なリンカーである場合、ジペプチドは、カテプシン介在性開裂の作用部位である。それゆえ、ジペプチドは、カテプシンにとっての認識部位である。
【0179】
一実施形態において、ジペプチド-NH-X1-X2-CO-中の基-X1-X2-は、
-Phe-Lys-、
-Val-Ala-、
-Val-Lys-、
-Ala-Lys-、
-Val-Cit-、
-Phe-Cit-、
-Leu-Cit-、
-Ile-Cit-、
-Phe-Arg-、及び
-Trp-Cit-
から選択され、ここで、Citはシトルリンである。このようなジペプチドにおいて、-NH-はX1のアミノ基であり、COはX2のカルボニル基である。
【0180】
好ましくは、ジペプチド-NH-X1-X2-CO-中の基-X1-X2-は、
-Phe-Lys-、
-Val-Ala-、
-Val-Lys-、
-Ala-Lys-、及び
-Val-Cit-
から選択される。
【0181】
最も好ましくは、ジペプチド-NH-X1-X2-CO-中の基-X1-X2-は、-Phe-Lys-、-Val-Cit-、又は-Val-Ala-である。
【0182】
注目される他のジペプチドの組合せとしては、
-Gly-Gly-、
-Pro-Pro-、及び
-Val-Glu-
が挙げられる。
【0183】
参照により本明細書に組み込まれる、Dubowchikらによって発表されているものを含め、他のジペプチドの組合せを使用することもできる。
【0184】
一実施形態において、アミノ酸側鎖は、適切なら、化学的に保護される。側鎖保護基は、後で考察されるような基でよい。保護されたアミノ酸配列は、酵素によって開裂可能である。例えば、Boc側鎖で保護されたLys残基を含むジペプチド配列はカテプシンによって開裂できる。
【0185】
アミノ酸の側鎖のための保護基は、当技術分野で周知であり、Novabiochemカタログ中に記載されている。さらなる保護基戦略は、Greene及びWutsの著作、「Protective groups in Organic Synthesis」中で詳説されている。
【0186】
反応性側鎖官能基を有するそれらのアミノ酸に対して考え得る側鎖保護基を、下記に示す:
Arg: Z、Mtr、Tos;
Asn: Trt、Xan;
Asp: Bzl、t-Bu;
Cys: Acm、Bzl、Bzl-OMe、Bzl-Me、Trt;
Glu: Bzl、t-Bu;
Gln: Trt、Xan;
His: Boc、Dnp、Tos、Trt;
Lys: Boc、Z-Cl、Fmoc、Z;
Ser: Bzl、TBDMS、TBDPS;
Thr: Bz;
Trp: Boc;
Tyr: Bzl、Z、Z-Br。
【0187】
一実施形態において、-X2-は、薬物単位に間接的に連結される。このような実施形態では、スペーサー単位L2が存在する。
【0188】
一実施形態において、ジペプチドは、自壊性基(複数可)(スペーサー単位)と組み合わせて使用される。自壊性基(複数可)は、-X2-に連結されていてもよい。
【0189】
自壊性基が存在する場合、-X2-は、該自壊性基に直接的に連結される。一実施形態において、-X2-は、自壊性基の基Yに連結される。好ましくは、基-X2-CO-は、Y(ここで、YはNHである)に連結される。
【0190】
-X1-は、A1に直接的に連結される。一実施形態において、-X1-はA1に直接的に連結される。好ましくは、基NH-X1-(X1のアミノ末端)は、A1に連結される。A1は、官能基-CO-を含むことができ、それによって-X1-とアミド結合を形成することができる。
【0191】
一実施形態において、L1及びL2は、-OC(=O)-と一緒になって、基-X1-X2-PABC-を構成する。PABC基は、薬物単位に直接的に連結される、一実施形態において、自壊性基及びジペプチドは、一緒になって、下記に示す基-Phe-Lys-PABC-を形成する:
【化16】
【0192】
ここで、星印は薬物単位への結合箇所を示し、波線は、L1の残存部分への結合箇所、又はA1への結合箇所を示す。好ましくは、波線はA1への結合箇所を示す。
【0193】
別法として、自壊性基及びジペプチドは、一緒になって、下に示す基-Val-Ala-PABC-を形成する:
【化17】
【0194】
ここで、星印及び波線は前に定義した通りである。
【0195】
別の実施形態において、L1及びL2は、-OC(=O)-と一緒になって、
【化18】
【0196】
を表し、ここで、星印は薬物単位への結合箇所を示し、波線はA1への結合箇所を示し、Yは共有結合又は官能基であり、Eは、開裂されやすく、それによって自壊性基を活性化する基である。
【0197】
Eは、基が、例えば、光によって、又は酵素の作用によって開裂されやすいように選択される。Eは、-NO2又はグルクロン酸(例えば、β-グルクロン酸)でよい。前者は、ニトロレダクターゼの作用に、後者はβ-グルクロニダーゼの作用に敏感である可能性がある。
【0198】
基Yは共有結合でよい。
【0199】
基Yは、
-C(=O)-
-NH-
-O-
-C(=O)NH-、
-C(=O)O-、
-NHC(=O)-、
-OC(=O)-、
-OC(=O)O-、
-NHC(=O)O-、
-OC(=O)NH-、
-NHC(=O)NH-、
-NHC(=O)NH、
C(=O)NHC(=O)-、
SO2、及び
-S-
から選択される官能基でよい。
【0200】
基Yは、好ましくは、-NH-、-CH2-、-O-、及び-S-である。
【0201】
一部の実施形態において、L1及びL2は、-OC(=O)-と一緒になって、
【化19】
【0202】
を表し:ここで、星印は薬物単位への結合箇所を示し、波線はAへの結合箇所を示し、Yは共有結合又は官能基であり、Eはグルクロン酸(例えば、β-グルクロン酸)である。Yは、好ましくは-NH-から選択される官能基である。
【0203】
一部の実施形態において、L1及びL2は、一緒になって、
【化20】
【0204】
を表し、ここで、星印は、L2の残部又は薬物単位への結合箇所を示し、波線はA1への結合箇所を示し、Yは共有結合又は官能基であり、Eはグルクロン酸(例えば、β-グルクロン酸)である。Yは、好ましくは-NH-、-CH2-、-O-及び-S-から選択される官能基である。
【0205】
一部のさらなる実施形態において、Yは前に示したような官能基であり、該官能基はアミノ酸に連結されており、該アミノ酸はストレッチ単位A1に連結されている。一部の実施形態において、アミノ酸はβ-アラニンである。このような実施形態において、アミノ酸はストレッチ単位の一部と等価と考えられる。
【0206】
特異性単位L1とリガンド単位とは、ストレッチ単位を介して間接的に連結されている。
【0207】
L1及びL2は、
-C(=O)NH-、
-C(=O)O-、
-NHC(=O)-、
-OC(=O)-、
-OC(=O)O-、
-NHC(=O)O-、
-OC(=O)NH-、及び
-NHC(=O)NH-
から選択される結合によって連結されていてもよい。
【0208】
一実施形態において、基A1は、
【化21】
【0209】
であり、ここで、星印はL1への結合箇所を示し、波線はリガンド単位への結合箇所を示し、nは0〜6である。一実施形態において、nは5である。
【0210】
一実施形態において、基A1は、
【化22】
【0211】
であり、ここで、星印はL1への結合箇所を示し、波線はリガンド単位への結合箇所を示し、nは0〜6である。一実施形態において、nは5である。
【0212】
一実施形態において、基A1は、
【化23】
【0213】
であり、ここで、星印はL1への結合箇所を示し、波線はリガンド単位への結合箇所を示し、nは0又は1であり、mは0〜30である。好ましい実施形態において、nは1であり、mは0〜10、1〜8、好ましくは4〜8、最も好ましくは4又は8である。
【0214】
一実施形態において、基A1は、
【化24】
【0215】
であり、ここで、星印はL1への結合箇所を示し、波線はリガンド単位への結合箇所を示し、nは0又は1であり、mは0〜30である。好ましい実施形態において、nは1であり、mは0〜10、1〜8、好ましくは4〜8、最も好ましくは4又は8である。
【0216】
一実施形態において、基A1は、
【化25】
【0217】
であり、ここで、星印はL1への結合箇所を示し、波線はリガンド単位への結合箇所を示し、nは0〜6である。一実施形態において、nは5である。
【0218】
一実施形態において、基A1は、
【化26】
【0219】
であり、ここで、星印はL1への結合箇所を示し、波線はリガンド単位への結合箇所を示し、nは0〜6である。一実施形態において、nは5である。
【0220】
一実施形態において、基A1は、
【化27】
【0221】
であり、ここで、星印はL1への結合箇所を示し、波線はリガンド単位への結合箇所を示し、nは0又は1であり、mは0〜30である。好ましい実施形態において、nは1であり、mは0〜10、1〜8、好ましくは4〜8、最も好ましくは4又は8である。
【0222】
一実施形態において、基A1は、
【化28】
【0223】
であり、ここで、星印はL1への結合箇所を示し、波線はリガンド単位への結合箇所を示し、nは0又は1であり、mは0〜30である。好ましい実施形態において、nは1であり、mは0〜10、1〜8、好ましくは4〜8、最も好ましくは4又は8である。
【0224】
一実施形態において、リガンド単位とA1との間の連結は、リガンド単位のチオール残基及びA1のマレイミド基を介して存在する。
【0225】
一実施形態において、リガンド単位とA1との間の連結は、
【化29】
【0226】
であり、ここで、星印は、A1の残存部分、L1、L2又はDへの結合箇所を示し、波線はリガンド単位の残存部分への結合箇所を示す。この実施形態において、S原子は、典型的には、リガンド単位に由来する。
【0227】
上記実施形態のそれぞれにおいて、下記で示されるマレイミドに由来する基:
【化30】
【0228】
(ここで、波線は、前記のようにリガンド単位への結合箇所を示し、星印は、A1基の残存部分への、又はL1、L2若しくはDへの結合を示す)の代わりに、別の官能基を使用することができる。
【0229】
一実施形態において、マレイミドに由来する基は、基
【化31】
【0230】
(ここで、波線はリガンド単位への結合箇所を示し、星印は、A1基の残存部分への、又はL1、L2若しくはDへの結合を示す)で置き換えられる。
【0231】
一実施形態において、マレイミドに由来する基は、リガンド単位(例えば、細胞結合剤)と場合によっては一緒になって、
-C(=O)NH-、
-C(=O)O-、
-NHC(=O)-、
-OC(=O)-、
-OC(=O)O-、
-NHC(=O)O-、
-OC(=O)NH-、
-NHC(=O)NH-、
-NHC(=O)NH、
-C(=O)NHC(=O)-、
-S-、
-S-S-、
-CH2C(=O)-、
-C(=O)CH2-、
=N-NH-、及び
-NH-N=
から選択される基で置き換えられる。
【0232】
一実施形態において、マレイミドに由来する基は、リガンド単位と場合によっては一緒になって、
【化32】
【0233】
(ここで、波線は、リガンド単位への結合箇所、又はA1基の残存部分への結合を示し、星印は、リガンド単位への他方の結合箇所、又はA1基の残存部分への結合を示す)から選択される基で置き換えられる。
【0234】
L1を細胞結合剤に連結するのに適した他の基は、国際公開第2005/082023号に記載されている。
【0235】
一実施形態では、ストレッチ単位A1が存在し、特異性単位L1が存在し、且つスペーサー単位L2が存在しない。したがって、L1及び薬物単位は、結合を介して直接的に連結されている。すなわち、この実施形態で、L2は結合である。
【0236】
L1及びDは、
-C(=O)NH-、
-C(=O)O-、
-NHC(=O)-、
-OC(=O)-、
-OC(=O)O-、
-NHC(=O)O-、
-OC(=O)NH-、及び
-NHC(=O)NH-
から選択される結合によって連結されていてもよい。
【0237】
一実施形態において、L1及びDは、
-C(=O)NH-、及び
-NHC(=O)-
から選択される結合によって好ましくは連結されている。
【0238】
一実施形態において、L1はジペプチドを含み、該ジペプチドの一端はDに連結されている。前に説明したように、ジペプチド中のアミノ酸は、天然アミノ酸と非天然アミノ酸との任意の組合せでよい。一部の実施形態において、ジペプチドは、天然アミノ酸を含む。リンカーがカテプシンに不安定なリンカーである場合、ジペプチドは、カテプシン介在性開裂の作用部位である。それゆえ、ジペプチドは、カテプシンにとっての認識部位である。
【0239】
一実施形態において、ジペプチド-NH-X1-X2-CO-中の基-X1-X2-は、
-Phe-Lys-、
-Val-Ala-、
-Val-Lys-、
-Ala-Lys-、
-Val-Cit-、
-Phe-Cit-、
-Leu-Cit-、
-Ile-Cit-、
-Phe-Arg-、及び
-Trp-Cit-
から選択され、ここで、Citはシトルリンである。このようなジペプチドにおいて、-NH-はX1のアミノ基であり、COはX2のカルボニル基である。
【0240】
好ましくは、ジペプチド-NH-X1-X2-CO-中の基-X1-X2-は、
-Phe-Lys-、
-Val-Ala-、
-Val-Lys-、
-Ala-Lys-、及び
-Val-Cit-
から選択される。
【0241】
最も好ましくは、ジペプチド-NH-X1-X2-CO-中の基-X1-X2-は、-Phe-Lys-又は-Val-Ala-である。
【0242】
ジペプチドの他の注目の組合せとしては、
-Gly-Gly-、
-Pro-Pro-、及び
-Val-Glu-
が挙げられる。
【0243】
上記の組合せを含め、他のジペプチドの組合せを使用することができる。
【0244】
一実施形態において、L1-Dは、
【化33】
【0245】
であり、ここで、-NH-X1-X2-COはジペプチドであり、-NH-は薬物単位の一部であり、星印は、薬物単位の残部への結合箇所を示し、波線は、L1の残部への結合箇所、又はA1への結合箇所を示す。好ましくは、波線はA1への結合箇所を示す。
【0246】
一実施形態において、ジペプチドはバリン-アラニンであり、L1-Dは、
【化34】
【0247】
であり、ここで、星印、-NH-及び波線は、前に定義した通りである。
【0248】
一実施形態において、ジペプチドはフェニルアラニン-リシンであり、L1-Dは、
【化35】
【0249】
であり、ここで、星印、-NH-及び波線は、前に定義した通りである。
【0250】
一実施形態において、ジペプチドはバリン-シトルリンである。
【0251】
一実施形態において、基A1-L1は、
【化36】
【0252】
であり、ここで、星印はL2又はDへの結合箇所を示し、波線はリガンド単位への結合箇所を示し、nは0〜6である。一実施形態において、nは5である。
【0253】
一実施形態において、基A1-L1は、
【化37】
【0254】
であり、ここで、星印はDへの結合箇所を示し、波線はリガンド単位への結合箇所を示し、nは0〜6である。一実施形態において、nは5である。
【0255】
一実施形態において、基A1-L1は、
【化38】
【0256】
であり、ここで、星印はDへの結合箇所を示し、波線はリガンド単位への結合箇所を示し、nは0又は1であり、mは0〜30である。好ましい実施形態において、nは1であり、mは0〜10、1〜8、好ましくは4〜8、最も好ましくは4又は8である。
【0257】
一実施形態において、基A1-L1は、
【化39】
【0258】
であり、ここで、星印はDへの結合箇所を示し、波線はリガンド単位への結合箇所を示し、nは0又は1であり、mは0〜30である。好ましい実施形態において、nは1であり、mは0〜10、1〜7、好ましくは3〜7、最も好ましくは3又は7である。
【0259】
一実施形態において、基A1-L1は、
【化40】
【0260】
であり、ここで、星印はL2又はDへの結合箇所を示し、波線はリガンド単位への結合箇所を示し、nは0〜6である。一実施形態において、nは5である。
【0261】
一実施形態において、基A1-L1は、
【化41】
【0262】
であり、ここで、星印はL2又はDへの結合箇所を示し、波線はリガンド単位への結合箇所を示し、nは0〜6である。一実施形態において、nは5である。
【0263】
一実施形態において、基A1-L1は、
【化42】
【0264】
であり、ここで、星印はL2又はDへの結合箇所を示し、波線はリガンド単位への結合箇所を示し、nは0又は1であり、mは0〜30である。好ましい実施形態において、nは1であり、mは0〜10、1〜8、好ましくは4〜8、最も好ましくは4又は8である。
【0265】
一実施形態において、基A1-L1は、
【化43】
【0266】
であり、ここで、星印はL2又はDへの結合箇所を示し、波線はリガンド単位への結合箇所を示し、nは0又は1であり、mは0〜30である。好ましい実施形態において、nは1であり、mは0〜10、1〜8、好ましくは4〜8、最も好ましくは4又は8である。
【0267】
一実施形態において、基L-A1-L1-は、
【化44】
【0268】
であり、ここで、星印はDへの結合箇所を示し、Sはリガンド単位の硫黄基であり、波線は、リガンド単位の残部への結合箇所を示し、nは0〜6である。一実施形態においてnは5である。
【0269】
一実施形態において、基L-A1-L1は、
【化45】
【0270】
であり、ここで、星印はDへの結合箇所を示し、Sはリガンド単位の硫黄基であり、波線は、リガンド単位の残部への結合箇所を示し、nは0〜6である。一実施形態においてnは5である。
【0271】
一実施形態において、基L-A1-L1は、
【化46】
【0272】
であり、ここで、星印はDへの結合箇所を示し、Sはリガンド単位の硫黄基であり、波線は、リガンド単位の残部への結合箇所を示し、nは0又は1であり、mは0〜30である。好ましい実施形態において、nは1であり、mは0〜10、1〜8、好ましくは4〜8、最も好ましくは4又は8である。
【0273】
一実施形態において、基L-A1-L1は、
【化47】
【0274】
であり、ここで、星印はDへの結合箇所を示し、波線は、リガンド単位の結合箇所を示し、nは0又は1であり、mは0〜30である。好ましい実施形態において、nは1であり、mは0〜10、1〜7、好ましくは4〜8、最も好ましくは4又は8である。
【0275】
一実施形態において、基L-A1-L1は、
【化48】
【0276】
であり、ここで、星印はL2又はDへの結合箇所を示し、波線は、リガンド単位の残部への結合箇所を示し、nは0〜6である。一実施形態においてnは5である。
【0277】
一実施形態において、基L-A1-L1は、
【化49】
【0278】
であり、ここで、星印はL2又はDへの結合箇所を示し、波線は、リガンド単位の残部への結合箇所を示し、nは0〜6である。一実施形態においてnは5である。
【0279】
一実施形態において、基L-A1-L1は、
【化50】
【0280】
であり、ここで、星印はL2又はDへの結合箇所を示し、波線は、リガンド単位の残部への結合箇所を示し、nは0又は1であり、mは0〜30である。好ましい実施形態において、nは1であり、mは0〜10、1〜8、好ましくは4〜8、最も好ましくは4又は8である。
【0281】
一実施形態において、基L-A1-L1は、
【化51】
【0282】
であり、ここで、星印はL2又はDへの結合箇所を示し、波線は、リガンド単位の残部への結合箇所を示し、nは0又は1であり、mは0〜30である。好ましい実施形態において、nは1であり、mは0〜10、1〜8、好ましくは4〜8、最も好ましくは4又は8である。
【0283】
一実施形態において、ストレッチ単位は、次式:
【化52】
【0284】
を有するアセトアミド単位であり、ここで、星印は、ストレッチ単位の残部、L1又はDへの結合箇所を示し、波線はリガンド単位への結合箇所を示す。
【0285】
他の実施形態において、リンカー-薬物化合物は、リガンド単位へのコンジュゲートのために提供される。一実施形態において、リンカー-薬物化合物は、細胞結合剤への連結のために設計される。
【0286】
一実施形態において、薬物-リンカー化合物は、次式:
【化53】
【0287】
を有し、ここで、星印は薬物単位への結合箇所を示し、G1は、リガンド単位への連結を形成するためのストレッチ基(A1)であり、L1は特異性単位であり、L2(スペーサー単位)は、共有結合であるか、又は-OC(=O)-と一緒になって、自壊性基(複数可)を形成している。
【0288】
別の実施形態において、薬物-リンカー化合物は、次式:
G1-L1-L2-*
を有し、ここで、星印は薬物単位への結合箇所を示し、G1は、リガンド単位への連結を形成するためのストレッチ基(A1)であり、L1は特異性単位であり、L2(スペーサー単位)は、共有結合又は自壊性基(複数可)である。
【0289】
L1及びL2は前に定義した通りである。A1への連結に対する言及は、G1への連結を指すとここでは解釈することができる。
【0290】
一実施形態において、L1がアミノ酸を含む場合、そのアミノ酸の側鎖を保護することができる。任意の適切な保護基を使用することができる。一実施形態において、側鎖保護基は、化合物中の(存在する場合)他の保護基と共に除去可能である。他の実施形態において、保護基は、分子中の(存在する場合)他の保護基に対して直交している可能性がある。
【0291】
アミノ酸側鎖に適した保護基としては、Novabiochemカタログ2006/2007中に記載の基が挙げられる。カテプシンに不安定なリンカー中で使用するための保護基は、Dubowchikらの著作中でも考察されている。
【0292】
本発明の特定の実施形態において、基L1は、Lysアミノ酸残基を含む。このアミノ酸の側鎖は、Boc又はAlloc保護基で保護することができる。Boc保護基が最も好ましい。
【0293】
官能基G1は、リガンド単位(例えば、細胞結合剤)との反応で連結形成基を形成する。
【0294】
一実施形態において、官能基G1は、リガンド単位上の適切な基との反応のための、アミノ、カルボン酸、ヒドロキシ、チオール、又はマレイミド基であるか、又はそれらを含む。好ましい実施形態において、G1はマレイミド基を含む。
【0295】
一実施形態において、基G1はアルキルマレイミド基である。この基は、細胞結合剤中に存在する、例えば、抗体中に存在する、チオール基、特にシステインのチオール基との反応に適している。
【0296】
一実施形態において、基G1は、
【化54】
【0297】
であり、ここで、星印はL1、L2又はDへの結合箇所を示し、nは0〜6である。一実施形態において、nは5である。
【0298】
一実施形態において、基G1は、
【化55】
【0299】
であり、ここで、星印はL1、L2又はDへの結合箇所を示し、nは0〜6である。一実施形態において、nは5である。
【0300】
一実施形態において、基G1は、
【化56】
【0301】
であり、ここで、星印はL1への結合箇所を示し、nは0又は1であり、mは0〜30である。好ましい実施形態において、nは1であり、mは0〜10、1〜2、好ましくは4〜8、及び最も好ましくは4又は8である。
【0302】
一実施形態において、基G1は、
【化57】
【0303】
であり、ここで、星印はL1への結合箇所を示し、nは0又は1であり、mは0〜30である。好ましい実施形態において、nは1であり、mは0〜10、1〜8、好ましくは4〜8、及び最も好ましくは4又は8である。
【0304】
一実施形態において、基G1は、
【化58】
【0305】
であり、ここで、星印はL1、L2又はDへの結合箇所を示し、nは0〜6である。一実施形態において、nは5である。
【0306】
一実施形態において、基G1は、
【化59】
【0307】
であり、ここで、星印はL1、L2又はDへの結合箇所を示し、nは0〜6である。一実施形態において、nは5である。
【0308】
一実施形態において、基G1は、
【化60】
【0309】
であり、ここで、星印はL1への結合箇所を示し、nは0又は1であり、mは0〜30である。好ましい実施形態において、nは1であり、mは0〜10、1〜2、好ましくは4〜8、及び最も好ましくは4又は8である。
【0310】
一実施形態において、基G1は、
【化61】
【0311】
であり、ここで、星印はL1への結合箇所を示し、nは0又は1であり、mは0〜30である。好ましい実施形態において、nは1であり、mは0〜10、1〜8、好ましくは4〜8、及び最も好ましくは4又は8である。
【0312】
前記実施形態のそれぞれにおいて、下記に示すマレイミド基:
【化62】
【0313】
(ここで、星印はG基の残部への結合を示す)に代わって、別の官能基を使用することができる。
【0314】
一実施形態において、マレイミドに由来する基は、基:
【化63】
【0315】
(ここで、星印はG基の残部への結合を示す)で置き換えられる。
【0316】
一実施形態において、マレイミド基は、
-C(=O)OH、
-OH、
-NH2
-SH、
-C(=O)CH2X(ここで、XはCl、Br又はIである)、
-CHO、
-NHNH2
-C≡CH、及び
-N3(アジド)
から選択される基で置き換えられる。
【0317】
一実施形態では、L1が存在し、G1は、-NH2、-NHMe、-COOH、-OH又は-SHである。
【0318】
一実施形態で、L1が存在する場合、G1は、-NH2又は-NHMeである。どちらかの基は、L1アミノ酸配列のN-末端でよい。
【0319】
一実施形態では、L1が存在し、G1は-NH2であり、L1は前に定義したようなアミノ酸配列-X1-X2-である。
【0320】
一実施形態では、L1が存在し、G1はCOOHである。この基は、L1アミノ酸配列のC-末端でよい。
【0321】
一実施形態では、L1が存在し、G1はOHである。
【0322】
一実施形態では、L1が存在し、G1はSHである。
【0323】
基G1は、一つの官能基から別のものに変換することができる。一実施形態では、L1が存在し、G1は-NH2である。この基は、マレイミド基を含む別の基G1へ変換することができる。例えば、基-NH2を、前の示したマレイミドを含むG1基の酸又は活性化された酸(例えば、N-スクシンイミド形態)と反応させることができる。
【0324】
したがって、基G1を、リガンド単位との反応により適している官能基に変換することができる。
【0325】
前に示したように、一実施形態では、L1が存在し、G1は、-NH2、-NHMe、-COOH、-OH又は-SHである。さらなる実施形態において、これらの基は、化学的に保護された形態で提供される。したがって、化学的に保護された形態は、官能基を伴って提供されるリンカーに対する前駆体である。
【0326】
一実施形態において、G1は、化学的に保護された形態の-NH2である。該基はカーバメート保護基で保護することができる。カーバメート保護基は、
Alloc、Fmoc、Boc、Troc、Teoc、Cbz及びPNZ
からなる群から選択することができる。
【0327】
好ましくは、G1が-NH2である場合は、それは、Alloc又はFmoc基で保護される。
【0328】
一実施形態において、G1が-NH2である場合は、それはFmoc基で保護される。
【0329】
一実施形態において、保護基は、キャッピング基のカーバメート保護基と同一である。
【0330】
一実施形態において、保護基は、キャッピング基のカーバメート保護基と同一でない。この実施形態では、キャッピング基のカーバメート保護基を除去しない条件下で、保護基を除去できることが好ましい。
【0331】
化学保護基を除去して、リガンド単位への連結を形成するための官能基を提供することができる。任意で、次いで、この官能基を前記のように別の官能基に変換することができる。
【0332】
一実施形態において、活性基はアミンである。このアミンは、好ましくは、ペプチドのN-末端アミンであり、本発明の好ましいジペプチドのN-末端アミンでよい。
【0333】
活性基を反応させて、リガンド単位への連結を形成することを意図した官能基をもたらすことができる。
【0334】
他の実施形態において、リンカー単位は、活性基を有するリンカー単位の前駆体である。この実施形態において、該リンカー単位は、保護基を用いて保護される活性基を含む。該保護基を除去して、活性基を有するリンカー単位を提供することができる。
【0335】
活性基がアミンである場合は、保護基は、Green及びWutsの著作中に記載のようなアミン保護基でよい。
【0336】
保護基は、好ましくは、リンカー単位中の(存在する場合)他の保護基に対して直交している。
【0337】
一実施形態において、保護基は、キャッピング基に対して直交している。したがって、キャッピング基を維持しながら、活性基の保護基を除去することができる。他の実施形態では、保護基及びキャッピング基を、キャッピング基を除去するのに使用されるものと同一条件下で、除去することができる。
【0338】
一実施形態において、リンカー単位は、
【化64】
【0339】
であり、ここで、星印は薬物単位への結合箇所を示し、波線は、適用可能な場合のリンカー単位の残部への結合箇所、又はG1への結合箇所を示す。好ましくは、波線はG1への結合箇所を示す。
【0340】
一実施形態において、リンカー単位は、
【化65】
【0341】
であり、ここで、星印及び波線は前に定義した通りである。
【0342】
L1と細胞結合剤との間の連結を形成するのに使用するのに適した他の官能基は、国際公開第2005/082023号中に記載されている。
【0343】
リガンド単位
リガンド単位は、任意の種類でよく、標的分子に特異的に結合するタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、及び非ペプチド系薬剤が挙げられる。一部の実施形態において、リガンド単位は、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドでよい、一部の実施形態において、リガンド単位は環状ポリペプチドでよい。これらのリガンド単位は、抗体、又は少なくとも一つの標的分子結合性部位を含む抗体のフラグメント、リンフォカイン、ホルモン、増殖因子、又は標的に特異的に結合できる任意の他の細胞結合性分子若しくは物質を含むことができる。
【0344】
リガンド単位の例には、本明細書に組み込まれる、国際公開第2007/085930号中で使用に関して記載されている薬剤が含まれる。
【0345】
一部の実施形態において、リガンド単位は、細胞上の細胞外標的に結合する細胞結合剤である。このような細胞結合剤は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド及び非ペプチド系薬剤でよい。一部の実施形態において、細胞結合剤は、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドでよい。一部の実施形態において、細胞結合剤は、環状ポリペプチドでよい。細胞結合剤は、また、抗体又は抗体の抗原結合性フラグメントでよい。したがって、一実施形態において、本発明は、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を提供する。
【0346】
一実施形態において、抗体は、モノクロナール抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、又は単鎖抗体である。一実施形態において、抗体は、生物学的活性を有するこれらの抗体の一つのフラグメントである。このようなフラグメントの例には、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFvフラグメントが含まれる。
【0347】
抗体は、二重特異性抗体、ドメイン抗体(DAB)、又は単鎖抗体でよい。
【0348】
一実施形態において、抗体は、モノクロナール抗体である。
【0349】
本発明で使用するための抗体としては、本明細書に組み込まれる国際公開第2005/082023号中に記載の抗体が挙げられる。とりわけ好ましいのは、腫瘍関連抗原に対する抗体である。当技術分野で公知のそれらの抗原の例には、限定はされないが、国際公開第2005/082023号中に示されたそれらの腫瘍関連抗原が含まれる。例えば、41〜55頁を参照されたい。
【0350】
一部の実施形態において、コンジュゲートは、それらの細胞表面抗原を介して腫瘍細胞を標的にするように設計される。該抗原は、過剰に発現している、又は異常な時期又は細胞型に発現している細胞表面抗原でよい。好ましくは、標的抗原は、増殖性細胞(好ましくは腫瘍細胞)上のみに発現されるが、実際に観察されるのはまれである。結果として、標的抗原は、通常、増殖性組織と健常組織との間での示差的発現に基づいて選択される。
【0351】
抗体は、
Cripto、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、糖タンパク質NMB、CanAg、Her2(ErbB2/Neu)、CD56(NCAM)、CD70、CD79、CD138、PSCA、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、BCMA、E-セレクチン、EphB2、メラノトランスフェリン、Muc16、及びTMEFF2
を含む特定の腫瘍関連抗原を標的にするよう育成された。
【0352】
リガンド単位はリンカー単位に連結される。一実施形態において、リガンド単位は、リンカー単位の(存在する場合)Aに連結される。
【0353】
一実施形態において、リガンド単位とリンカー単位との間の連結は、チオエーテル結合を介する。
【0354】
一実施形態において、リガンド単位とリンカー単位との間の連結は、ジスルフィド結合を介する。
【0355】
一実施形態において、リガンド単位とリンカー単位との間の連結は、アミド結合を介する。
【0356】
一実施形態において、リガンド単位とリンカー単位との間の連結は、エステル結合を介する。
【0357】
一実施形態において、リガンド単位とリンカーとの間の連結は、リガンド単位のシステイン残基のチオール基とリンカー単位のマレイミド基との間で形成される。
【0358】
リガンド単位のシステイン残基は、連結を形成するための、リンカー単位の官能基との反応に利用できる。他の実施形態において、例えば、リガンド単位が抗体である場合は、抗体のチオール基は、鎖間ジスルフィド結合に参加することができる。これらの鎖間結合は、例えば、抗体を、リンカー単位の官能基との反応に先立ってDTTで処理することによって、遊離チオール基に変換することができる。
【0359】
一部の実施形態において、システイン残基は、抗体の重鎖又は軽鎖中に導入されている。抗体の重鎖又は軽鎖中での置換によるシステイン挿入の位置には、本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2007/0092940号及び国際公開第2008/070593号に記載のものが含まれる。
【0360】
治療の方法
本発明のコンジュゲートは、治療の方法で、用いられ得る。治療を必要としている対象に式Iで表されるコンジュゲートの治療有効量を投与することを含む、治療の方法も提供される。用語「治療有効量」とは、患者に恩恵が見られるのに十分な量である。そのような恩恵は、少なくとも1つの症状が少なくとも改善することであり得る。投与されるコンジュゲートの実際の量、及び投与の頻度と時間過程は、何が治療されているかの実体と深刻度によって決まるものである。治療の処方箋(例えば投薬量に関する決定)は、医師及び他の医療専門家の責任の範囲内にある。
【0361】
一部の実施形態において、コンジュゲートの投与量は、1回の投与当たり約0.01〜約10mg/kgの範囲にある。一部の実施形態において、コンジュゲートの投与量は、1回の投与当たり約0.01〜約5mg/kgの範囲にある。一部の実施形態において、コンジュゲートの投与量は、1回の投与当たり約0.05〜約5mg/kgの範囲にある。一部の実施形態において、コンジュゲートの投与量は、1回の投与当たり約0.1〜約5mg/kgの範囲にある。一部の実施形態において、コンジュゲートの投与量は、1回の投与当たり約0.1〜約4mg/kgの範囲にある。一部の実施形態において、コンジュゲートの投与量は、1回の投与当たり約0.05〜約3mg/kgの範囲にある。一部の実施形態において、コンジュゲートの投与量は、1回の投与当たり約0.1〜約3mg/kgの範囲にある。一部の実施形態において、コンジュゲートの投与量は、1回の投与当たり約0.1〜約2mg/kgの範囲にある。一部の実施形態において、コンジュゲートの投与量は、1回の投与当たり約0.01〜約1mg/kgの範囲にある。
【0362】
治療されるべき病態に応じて、コンジュゲートは単独で投与され得るし、また、他の処置との組み合わせで、同時か順次に投与され得る。処置及び療法の例としては、限定するものではないが、化学療法(例えば薬物を含めた、活性剤を投与すること);手術;及び放射線療法;が挙げられる。
【0363】
本発明による(及び本発明に従って使用されるための)医薬組成物は、活性成分(すなわち式Iで表されるコンジュゲート)に加えて、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤他、当業者にはよく知られている他の物質を含み得る。そのような物質は、非毒性であるべきであって、この活性成分の有効性を妨害するものであってはならない。この担体又は他の物質の正確な中身は、投与の経路によって決まるものであり、この投与経路は、経口、あるいは注射によるもの、例えば皮膚、皮下、又は静脈内であり得る。
【0364】
経口投与用の医薬組成物は、タブレット、カプセル、粉末又は液体形態であり得る。タブレットは、固体担体又はアジュバントを含み得る。液体医薬組成物は、一般的には、液体担体、例えば、水、鉱油、動物油、植物油、ミネラルオイル又は合成油を含んでいる。生理食塩水溶液、デキストロース又は他のサッカリド溶液あるいはグリコール例えばエチレングリコール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールも含まれ得る。カプセル剤は、ゼラチンのような固体担体を含み得る。
【0365】
静脈内、皮膚又は皮下注射(又は患っている部位における注射)には、この活性成分は、パイロジェンを含まない、適するpH、等張性及び安定性を有している、非経口として許容される水溶液の形態にあるものである。当業者なら、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸加リンゲル注射液のような等張性ビヒクルを用いて、適する溶液を調製することが十分できるものである。必要に応じて、防腐剤、安定剤、緩衝剤、酸化防止剤及び/又は他の添加剤が含まれ得る。
【0366】
他の形態も含まれる
特に断らない限り、上記には、そのような各置換基のよく知られているイオン、塩、溶媒和、及びプロトン化形態も含まれる。例えば、カルボン酸(−COOH)への言及には、そのアニオン(カルボキシラート)形態(−COO)、これの塩又は溶媒和物、並びに通常の保護形態も含まれる。同様に、アミノ基への言及には、その保護形態(−NHR)、そのアミノ基の塩又は溶媒和物(例えば、塩酸塩)並びにアミノ基の通常の保護形態が含まれる。同様に、ヒドロキシル基への言及には、そのアニオン形態(−O)、この塩又は溶媒和物、並びに通常の保護形態も含まれる。
【0367】

この活性化合物(コンジュゲート)の対応する塩、例えば、薬学的に許容される塩を調製、精製、及び/又は取り扱うのが都合よい又は望ましいことであり得る。薬学的に許容される塩の例は、Berge, et al., J. Pharm. Sci., 66, 1-19 (1977)に論じられている。
【0368】
例えば、この化合物がアニオンである場合、又はアニオンになり得る官能基を有している(例えば−COOHは−COOになり得る)場合は、適するカチオンと塩が形成され得る。適する無機カチオンの例としては、限定するものではないが、アルカリ金属イオン例えばNa及びK、アルカリ土類カチオン、例えばCa2+及びMg2+、及び他のカチオン、例えばAl+3が挙げられる。適する有機カチオンの例としては、限定するものではないが、アンモニウムイオン(すなわちNH)及び置換されたアンモニウムイオン(例えばNH、NH、NHR、NR)が挙げられる。いくつかの適する置換されたアンモニウムイオンの例は、エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロへキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、及びトロメタミン、並びにアミノ酸(例えばリシン及びアルギニン)から誘導されるアンモニウムイオンである。一般的な四級アンモニウムイオンの例は、N(CHである。
【0369】
このコンジュゲートがカチオンである場合、又はカチオンになり得る官能基を有している(例えば−NHは、−NHになり得る)場合は、適するアニオンと塩が形成され得る。適する無機アニオンの例としては、限定するものではないが、以下の無機酸:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、及び亜リン酸から誘導されるアニオンが挙げられる。
【0370】
適する有機アニオンの例としては、限定するものではないが、以下の有機酸:2−アセチオキシ安息香酸、酢酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、ケイ皮酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルケプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフタレンカルボン酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、粘液酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、フェニルスルホン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、及び吉草酸から誘導されるアニオンが挙げられる。適する高分子有機アニオンの例としては、限定するものではないが、以下の高分子酸:タンニン酸、カルボキシメチルセルロース、から誘導されるアニオンが挙げられる。
【0371】
溶媒和物
このコンジュゲートの対応する溶媒和物を調製、精製、及び/又は取り扱うのが都合よい又は望ましいことであり得る。用語「溶媒和物」は、本明細書では、溶質(例えば活性コンジュゲート、活性コンジュゲートの塩)と溶媒の複合体を言うのに通常の意味で使われている。溶媒が水である場合は、溶媒和物は、簡便に、水和物、例えば、一水和物、二水和物、三水和物、他、と呼ばれる。
【0372】
カルビノールアミン
本発明には、このPBD部分構造のイミン結合に沿って溶媒が付加しているコンジュゲートが含まれ、これはPBD単量体について以下に図説されており、この場合、溶媒は水又はアルコール(ROH、ここでRは、C1〜4アルキルである)である:
【化66】
【0373】
これらの形態は、このPBDのカルビノールアミン形態及びカルビノールアミンエーテル形態と呼ばれ得る。これらの平衡の均衡は、化合物が存在している条件、並びにその部分構造それ自体の特質によって左右される。
【0374】
このような特定の化合物は、例えば、凍結乾燥により、固体形態で単離され得る。
【0375】
異性体
一部の化合物は、限定するものではないが、シス形及びトランス形;E形及びZ形;c形、t形、及びr形;エンド形及びエキソ形;R形、S形、及びメソ形;D形及びL形;d形及びl形;(+)形及び(−)形;ケト形、エノール形、及びエノラート形;シン形及びアンチ形;シンクリナル形及びアンチクリナル形;α形及びβ形;アキシアル形及びエクアトリアル形;船形、椅子形、ねじれ形、封筒形、及び半椅子形;並びにこれらのものの組み合わせ;を含めた、1つ又はそれ以上の特定の幾何異性形、光学異性形、鏡像異性形、ジアステレオ異性形、エピ異性形、アトロプ異性形、立体異性形、互変異性形、配座異性形、又はアノマー異性形の形態で存在し得る(本明細書以下では、集合的に、「異性体」(又は「異性形」)と呼ぶ)。
【0376】
注記すべきこととして、互変異性形に対して以下に論述されるのを除いて、本明細書中で使われている、この用語「異性体」から特別に除外されるのが、構造(又は構成)異性体(すなわち、空間における各原子の位置が単に異なっているのではなく、原子と原子との間の連結が異なっている異性体)である。例えば、メトキシ基(−OCH)への言及は、その構造異性体であるヒドロキシメチル基(−CHOH)への言及ととるべきでない。同様に、オルト−クロロフェニルへの言及は、その構造異性体であるメタ−クロロフェニルへの言及ととるべきでない。しかしながら、構造体の族への言及には、その族の範疇に入る構造異性形が十分含まれ得る(例えば、C1〜7アルキルには、n−プロピル及びイソ−プロピルが含まれ;ブチルには、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、及びtert−ブチルが含まれ;メトキシフェニルには、オルト−メトキシフェニル、メタ−メトキシフェニル、及びパラ−メトキシフェニルが含まれる)。
【0377】
上記除外は、例えば、次のような互変体:ケト/エノール(以下に図説されている)、イミン/エナミン、アミド/イミノアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エンチオール、N−ニトロソ/ヒドロキシアゾ、及びニトロ/アシニトロにおけるような、互変異性形(例えば、ケト形、エノール形、及びエノラート形)には関係しない。
【化67】
【0378】
注記すべきこととして、用語「異性体」に特別に含まれるのが、1つ又はそれ以上の同位体置換を有する化合物である。例えば、Hは、H、H(D)、及びH(T)を含めた、任意の同位体形態であり得;Cは、12C、13C、及び14Cを含めた、任意の同位体形態であり得;Oは、16O及び18Oを含めた、任意の同位体形態であり得る;等である。
【0379】
特に断らない限り、特定の化合物又はコンジュゲートへの言及には、このような各異性体の、その(完全又は部分)ラセミ混合物及び他の混合物も含めた、すべてが含まれる。このような異性体の調製方法(例えば不斉合成)及び分離方法(例えば分別結晶化及びクロマトグラフィー法)は、当技術分野では、知られているものであり、又は、本明細書に教示されている方法(つまり公知の方法)を、公知のやり方で、適応させることによって、容易に得られるものである。
【0380】
一般的合成経路
このPBD二量体化合物の合成は、以下の参考文献に、詳細に論述されている(その論旨は参照により本明細書に組み込む):
a)国際公開第00/12508(14〜30頁);
b)国際公開第2005/023814号パンフレット(3〜10頁);
c)国際公開第2004/043963号パンフレット(28〜29頁);及び
d)国際公開第2005/085251号パンフレット(30〜39頁)。
【0381】
合成経路
10及びR11が、それらが結合されている窒素原子及び炭素原子との間に窒素−炭素二重結合を形成している、本発明のコンジュゲートは、化合物式2:
【化68】
【0382】
[ここで、R、R、R、R、R6’、R7’、R9’、R12、X、X’及びR’’は、式IIの化合物に対して定義されている通りであり、Protは、合成のための窒素保護基であり、Protは、合成のための保護された酸素基又はオキソ基である]で表される化合物から、イミン結合を標準的な方法により脱保護することによって合成され得る。
【0383】
この生成された化合物は、用いた溶媒に応じて、カルビノールアミン又はカルビノールアミンエーテル形態であり得る。例えば、ProtがAllocであり、Protが合成のための酸素保護基である場合は、脱保護は、このN10保護基を除去するためのパラジウムを用い、そのあと合成のためのこの酸素保護基を脱離させて行われる。ProtがTrocであり、Protが合成のための酸素保護基である場合は、脱保護は、この式(I)で表される化合物を得るためのCd/Pb組を用いて行われる。ProtがSEM(又は同じような基)であり、Protがオキソ基である場合は、このオキソ基は還元によって除去され得、これによって保護されたカルビノールアミン中間体がもたらされ、これはこのあとSEM保護基を除去するために処理され、そのあと水が脱離され得る。この化合物式2の化合物の還元は、例えば、リチウムテトラボロヒドリドで達成され得るものであり、SEM保護基を除去するための適する手段は、シリカゲルによる処理である。
【0384】
化合物式2の化合物は、化合物式3a:
【化69】
【0385】
[ここで、R、R、R、R、R6’、R7’、R9’、X、X’及びR’’は、化合物式2の化合物に対して定義されている通りである]で表される化合物から、R12を含んでいる有機金属誘導体(例えば有機ホウ素誘導体)をカップリングさせることによって合成され得る。この有機ホウ素誘導体は、ボロナート又はボロン酸であり得る。
【0386】
化合物式2の化合物は、化合物式3b:
【化70】
【0387】
[式中、R12、R、R、R、R6’、R7’、R9’、X、X’及びR’’は、化合物式2の化合物に対して定義されている通りである]で表される化合物から、Rを含んでいる有機金属誘導体(例えば有機ホウ素誘導体)をカップリングさせることによって合成され得る。この有機ホウ素誘導体は、ボロナート又はボロン酸であり得る。
【0388】
化合物式3a及び3bの化合物は、式4:
【化71】
【0389】
[ここで、R、R、R、R、R6’、R7’、R9’、X、X’及びR’’は、化合物式2の化合物に対して定義されている通りである]で表される化合物から、R又はR12を含んでいる有機金属誘導体(例えば有機ホウ素誘導体)の約1当量(例えば0.9又は1〜1.1又は1.2)をカップリングさせることによって合成され得る。
【0390】
上記で述べたこのカップリングは、通常、パラジウム触媒、例えばPd(PPh、Pd(OCOCH、PdCl、又はPd(dba)の存在下に行われる。このカップリングは、標準的な条件下で行われ得るし、あるいはマイクロ波条件下でも行われ得る。
【0391】
この2つのカップリングステップは、通常、順次的に行われる。これらは、2つのステップ間に精製を行うことなく行われ得る。精製が行われない場合は、この2つのステップは、同じ反応容器中で行われ得る。この2つ目のカップリングステップの後は精製が通常必要とされる。望まれていない副生成物からのこの化合物の精製は、カラムクロマトグラフィー分離又はイオン交換分離によって行われ得る。
【0392】
Protがオキソ基であり、ProtがSEMである化合物式4で表される化合物の合成は、国際公開第00/12508号パンフレットに詳細に述べられている(この文献は参照により本明細書に組み込む)。特には、24頁のスキーム7が参照され、そこでは上記化合物は中間体Pと表されている。この合成の方法は、国際公開第2004/043963号パンフレットにも記載されている。
【0393】
Protが合成のために保護された酸素基である化合物式4で表される化合物の合成は、国際公開第2005/085251号パンフレットに記載されている(この合成は参照により本明細書に組み込む)。
【0394】
10及びR10’がHであり、R11及びR11’がSOMである式Iで表される化合物は、R10及びR11が、それらが結合されている窒素原子及び炭素原子との間に窒素−炭素二重結合を形成している式Iで表される化合物から、適切な重亜硫酸水素塩又はスルフィン酸塩を加え、そのあと適切な精製工程によって、合成され得る。さらなる方法がGB2053894に記載されている(これは本明細書に参照により組み込む)。
【0395】
合成のための窒素保護基
合成のための窒素保護基は当技術分野ではよく知られている。本発明では、この特定の対象の保護基はカルバマート窒素保護基及びヘミ−アミナール窒素保護基である。
【0396】
カルバマート窒素保護基は、以下の構造:
【化72】
【0397】
[式中、R’10は、先に定義されているRと同じである]を有している。多数の適する基がGreene, T.W. and Wuts, G.M., Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Edition, John Wiley & Sons, Inc., 1999の503〜549頁に記載されている(これは参照により本明細書に組み込む)。
【0398】
特に好ましい保護基としては、Troc、Teoc、Fmoc、BOC、Doc、Hoc、TcBOC、1−Adoc及び2−Adocが挙げられる。
【0399】
他の可能性のある基は、ニトロベンジルオキシカルボニル(例えば4−ニトロベンジルオキシカルボニル)及び2−(フェニルスルホニル)エトキシカルボニルである。
【0400】
パラジウム触媒で除去され得るような保護基は好ましくない(例えばAlloc)。
【0401】
ヘミ−アミナール窒素保護基は、以下の構造:
【化73】
【0402】
[式中、R’10は、先に定義されているRと同じである]を有している。多数の適する基がGreene, T.W. and Wuts, G.M., Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Edition, John Wiley & Sons, Inc., 1999の633〜647頁に記載されている(これは参照により本明細書に組み込む)。本明細書に開示されている各基は本発明に使用するための化合物に適用され得る。そのような基の例としては、限定するものではないが、SEM、MOM、MTM、MEM、BOM、ニトロ又はメトキシ置換BOM、及びClCCHOCH−が挙げられる。
【0403】
合成のために保護された酸素基
合成のために保護された酸素基は当技術分野ではよく知られている。多数の適する酸素保護基がGreene, T.W. and Wuts, G.M., Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Edition, John Wiley & Sons, Inc., 1999の23〜200頁に記載されている(これは参照により本明細書に組み込む)。
【0404】
特に対象となる群には、シリルエーテル、メチルエーテル、アルキルエーテル、ベンジルエーテル、エステル、アセタート、ベンゾアート、カルボナート、及びスルホナートが含まれる。
【0405】
好ましい酸素保護基としては、アセタート、TBS及びTHPが挙げられる。
【0406】
さらに好ましい形態
以下の好ましい形態は、先に記載されている本発明のすべての態様に当てはまり得る、又は、1つの態様に関し得る。この各態様は、任意の組み合わせで一緒に組み合わせられ得る。
【0407】
いくつかの実施形態では、R6’、R7’、R9’、R10’、R11’及びY’は、好ましくは、それぞれ、R、R、R、R10、R11及びYと同じである。
【0408】
二量体連結
Y及びY’は、好ましくは、Oである。
【0409】
R’’は、好ましくは、置換基をまったく有さないC3〜7アルキレン基である。より好ましくは、R’’は、C、C又はCアルキレンである。
【0410】
〜R
は、好ましくは、Hである。
【0411】
は、好ましくは、H、OH、OR、SH、NH、ニトロ及びハロから選択されるものであって、より好ましくはH又はハロであって、最も好ましくはHである。
【0412】
は、好ましくは、H、OH、OR、SH、SR、NH、NHR、NRR’、及びハロから選択され、より好ましくはH、OH及びOR(ここで、Rは、好ましくは置換されていてもよいC1〜7アルキル、C3〜10ヘテロシクリル及びC5〜10アリール基から選択される)から独立に選択される。Rは、より好ましくは、C1〜4アルキル基であり得、これは置換されていてもよいしあるいは置換されていなくてもよい。対象となる置換基は、C5〜6アリール基(例えばフェニル)である。7位における特に好ましい置換基は、OMe及びOCHPhである。
【0413】
これらの好ましい形態は、それぞれ、R9’、R6’及びR7’にも当てはまる。
【0414】

中のAは、フェニル基又はC5〜7ヘテロアリール基(例えばフラニル、チオフェニル及びピリジル)であり得る。いくつかの実施形態では、Aは、好ましくは、フェニルである。他の実施形態では、Aは、好ましくは、チオフェニル(例えば、チオフェン−2−イル及びチオフェン−3−イル)である。
【0415】
Xは、−O−、−S−、−C(O)O−、−C(O)−、−NHC(=O)−及び−N(R)−[式中、Rは、H及びC1〜4アルキルを含む群から選択される]を含んでいるリストから選択される基である。Xは、好ましくは、−O−、−S−、−C(O)O−、−NHC(=O)−又は−NH−であり得、より好ましくは−O−、−S−、又は−NH−であり得、最も好ましくは−NH−である。
【0416】
−Xは、このC5〜7アリール基の利用可能な各環原子上のいずれにあってもよいが、好ましくは化合物の残りの部分への結合に隣接していない環原子上にある(すなわち、それは、好ましくは、化合物の残りの部分への結合に対してβ又はγである)。したがって、このC5〜7アリール基(A)がフェニルである場合、置換基(Q−X)は、好ましくは、メタ又はパラ位にあって、より好ましくはパラ位にある。
【0417】
いくつかの実施形態では、Qは、一重結合である。そのような実施形態では、Qは、一重結合及び−Z−(CH−[ここで、Zは、一重結合、O、S及びNHから選択され、nは、1〜3である]から選択される。このような実施形態のいくつかでは、Qは、一重結合である。他の実施形態では、Qは、−Z−(CH−である。そのような実施形態では、Zは、O又はSであり得、nは、1であり得る、又は、2であり得る。そのような実施形態の他では、Zは、一重結合であり得、nは、1であり得る。
【0418】
別の実施形態では、Qは、−CH=CH−である。
【0419】
いくつかの実施形態では、Rは、−A−CH−X及び−A−Xであり得る。そのような実施形態では、Xは、−O−、−S−、−C(O)O−、−C(O)−及び−NH−であり得る。特に好ましい実施形態では、Xは、−NH−であり得る。
【0420】
12
12は、C5〜7アリール基であり得る。C5〜7アリール基は、フェニル基又はC5〜7ヘテロアリール基(例えばフラニル、チオフェニル及びピリジル)であり得る。いくつかの実施形態では、R12は、好ましくは、フェニルである。他の実施形態では、R12は、好ましくは、チオフェニル(例えば、チオフェン−2−イル及びチオフェン−3−イル)である。
【0421】
12は、C8〜10アリール、例えばキノリニル又はイソキノリニル基であり得る。このキノリニル又はイソキノリニル基は、PBDコアに、任意の利用可能な環位から結合され得る。例えば、このキノリニルは、キノリン−2−イル、キノリン−3−イル、キノリン−4イル、キノリン−5−イル、キノリン−6−イル、キノリン−7−イル及びキノリン−8−イルであり得る。これらのうちではキノリン−3−イル及びキノリン−6−イルが好ましいものであり得る。このイソキノリニルは、イソキノリン−1−イル、イソキノリン−3−イル、イソキノリン−4イル、イソキノリン−5−イル、イソキノリン−6−イル、イソキノリン−7−イル及びイソキノリン−8−イルであり得る。これらのうちではイソキノリン−3−イル及びイソキノリン−6−イルが好ましいものであり得る。
【0422】
12は、任意の数の置換基を有し得る。好ましくはそれは1〜3置換基を有し、1及び2がより好ましくて、1つだけの置換された基が最も好ましい。この各置換基は、任意の位置にあり得る。
【0423】
12がC5〜7アリール基である場合、1個の置換基が、好ましくは、化合物の残りの部分への結合に隣接していない環原子上にある(すなわち、それは、好ましくは、化合物の残りの部分への結合に対してβ又はγである)。したがって、このC5〜7アリール基がフェニルである場合は、この置換基は、好ましくは、メタ位又はパラ位にあって、より好ましくはパラ位にある。
【0424】
12がC8〜10アリール基(例えばキノリニル又はイソキノリニル)である場合、それは、キノリン又はイソキノリン環の任意の位置に任意の数の置換基を有し得る。いくつかの実施形態では、それは、1個、2個又は3個の置換基を有していて、それらは、近位か遠位の環上又はそのどちらにも(1個の置換基より多い場合)あり得る。
【0425】
12置換基
12上の置換基がハロである場合、それは、好ましくは、F又はClであり、より好ましくはClである。
【0426】
12上の置換基がエーテルである場合、それは、いくつかの実施形態では、アルコキシ基、例えば、C1〜7アルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ)であり得る、又は、いくつかの実施形態では、C5〜7アリールオキシ基(例えばフェノキシ、ピリジルオキシ、フラニルオキシ)であり得る。このアルコキシ基は、それ自体が、例えばアミノ基(例えばジメチルアミノ)によって、さらに置換されていてよい。
【0427】
12上の置換基がC1〜7アルキルである場合、それは、好ましくは、C1〜4アルキル基(例えばメチル、エチル、プロプリル、ブチル)であり得る。
【0428】
12上の置換基がC3〜7ヘテロシクリルである場合、それは、いくつかの実施形態では、C窒素含有ヘテロシクリル基(例えばモルホリノ、チオモルホリノ、ピペリジニル、ピペラジニル)であり得る。PBD部分構造の残りの部分には、これらの基は、窒素原子を介して結合されていてよい。これらの基は、例えば、C1〜4アルキル基によって、さらに置換されていてよい。このC窒素含有ヘテロシクリル基がピペラジニルである場合、そのようなさらなる置換基は、第2の窒素環原子上にあり得る。
【0429】
12上の置換基がビス−オキシ−C1〜3アルキレンである場合、これは、好ましくは、ビス−オキシ−メチレン又はビス−オキシ−エチレンである。
【0430】
12のための特に好ましい置換基としては、メトキシ、エトキシ、フルオロ、クロロ、シアノ、ビス−オキシ−メチレン、メチル−ピペラジニル、モルホリノ及びメチル−チオフェニルが挙げられる。R12のためのもう1つの特に好ましい置換基は、ジメチルアミノプロピルオキシである。
【0431】
12
特に好ましい置換されたR12基としては、限定するものではないが、4−メトキシ−フェニル、3−メトキシフェニル、4−エトキシ−フェニル、3−エトキシ−フェニル、4−フルオロ−フェニル、4−クロロ−フェニル、3,4−ビスオキシメチレン−フェニル、4−メチルチオフェニル、4−シアノフェニル、4−フェノキシフェニル、キノリン−3−イル及びキノリン−6−イル、イソキノリン−3−イル及びイソキノリン−6−イル、2−チエニル、2−フラニル、メトキシナフチル、及びナフチルが挙げられる。もう1つの考えられる置換されたR12基は、4−ニトロフェニルである。
【0432】
M及びz
M及びM’は薬学的に許容される一価カチオンであることが好ましく、より好ましくはNaである。
【0433】
zは、好ましくは、3である。
【実施例】
【0434】
(一般実験法)
光学旋光度は、ADP 220偏光計(Bellingham Stanley Ltd.)で測定した(濃度(c)はg/100mLで書かれている)。融点は、ディジタル融点装置(Electrothermal)を用いて測定した。IRスペクトルは、Perkin−Elmer Spectrum 1000 FT IR Spectrometerで記録した。H及び13C NMRスペクトルは、それぞれ、400及び100MHzのBruker AvanceNMR分光計を用いて300Kで獲得した。ケミカルシフトはTMS(δ=0.0ppm)に対比して報告されていて、シグナルは、s(シングレット)、d(ダブレット)、t(トリプレット)、dt(ダブルトリプレット)、dd(ダブレットのダブル)、ddd(ダブレットのダブルダブレット)又はm(マルチプレット)として表されており、カップリング定数はヘルツ(Hz)で与えられている。質量分光分析(MS)データは、Waters 2996 PDAを有するWaters 2695 HPLCに連結されたWaters Micromass ZQ装置を用いて採集された。用いたWaters Micromass ZQの各パラメーターは:Capillary(kV)、3.38;Cone(V)、35;Extractor(V)、3.0;Source temperature(℃)、100;Desolvation Temperature(℃)、200;Cone流量(L/h)、50;De−solvation流量(L/h)、250;であった。高分解能質量分光(HRMS)データは、各サンプルを機器に導入するための金属コート・ボロシリケート・ガラスチップを用いるポジティブWモードのWaters Micromass QTOF Globalで記録した。薄層クロマトグラフィー(TLC)はシリカゲルアルミニウムプレート(Merck 60、F254)で行い、フラッシュクロマトグラフィーにはシリカゲル(Merck 60、230−400メッシュASTM)を用いた。HOBt(NovaBiochem)及び固体担持試薬(Argonaut)を除いて、他の化学薬品及び溶媒は、すべて、Sigma−Aldrichから購入し、さらに精製することなく供給された通りで用いた。無水溶媒は、適切な乾燥剤の存在下での乾燥窒素雰囲気下の蒸留によって調製し、4Åモレキュラーシーブ又はナトリウムワイヤーを入れて保存した。石油エーテルとは、蒸留沸点が40〜60℃にあるものを言う。
【0435】
化合物1bは、国際公開第00/012508号パンフレット(化合物210)に記載されているようにして合成した(この文献は本明細書に参照により組み込む)。
【0436】
LC/MS一般条件:HPLC(Waters Alliance 2695)は、水(A)(ギ酸0.1%)及びアセトニトリル(B)(ギ酸0.1%)の移動相を用いて流した。勾配:初期組成5%B(1.0min)そのあと5%B→95%B(3分以内)。その組成は95%Bに0.5分間保持され、そのあと5%Bに0.3分で戻された。全体勾配ランタイムは5分に等しい。流量3.0mL/min、400μLをゼロ・デッドボリューム・ティー・ピース(zero dead volume tee piece)を介させて分けた(これは質量分光計に入っていった)。波長検出範囲:220〜400nm。ファンクションタイプ:ダイオードアレイ(535スキャン)。カラム:Phenomenex(登録商標)Onyx Monolithic C18 50×4.60mm。
【0437】
Troc及びTBDMS基の双方によって保護された化合物に特異的なLC/MS条件:Troc及びTBDMS保護化合物のクロマトグラフィー分離は、Phenomenex Corp製Onyx Monolitic逆相カラム(3μm粒子、50×4.6mm)を用いるWaters Alliance 2695 HPLC装置で行った。移動相Aは5%アセトニトリル−95%水(0.1%ギ酸含有)から構成されており、移動相Bは95%アセトニトリル−5%水(0.1%ギ酸含有)から構成されていた。5%Bで1分後、Bの割合を次の2.5分で95%Bに上げ、95%Bにさらに1分間保持し、そのあと95%Aに10秒で戻し、さらに50秒間再平衡化させた(全体ランタイムは5.0分となる)。流量は3.0mL/minに維持した。
【0438】
化合物33に特異的なLC/MS条件:LCは、Waters 2996フォトダイオードアレイ検出器及びWaters ZQシングル四重極質量分光計が連結されたWaters 276 Sample Managerで流した。用いたカラムは、Luna Phenyl−Hexyl 50×4.60mm、5μm、Part no.00F−4257−E0(Phenomenex)であった。用いた移動相は:
移動相A:100%のHPLC等級水(0.05%トリエチルアミン)、pH=7;
移動相B:20%のHPLC等級水及び80%のHPLC等級アセトニトリル(0.05%トリエチルアミン)、pH=7;
であった。
【0439】
用いた勾配は:
時間 流量 %A %B
(min) (ml/min)

最初 1.50 90 10
1.0 1.50 90 10
16.0 1.50 64 36
30.0 1.50 5 95
31.0 1.50 90 10
32.0 1.50 90 10
であった。
【0440】
質量分光法はポジティブ・イオンモード及びSIR(選択イオン検出)で行われ、検出されたイオンはm/z=727.2であった。
【0441】
(主な中間体の合成)
【化74】
【0442】
(a)1,1’−[[(プロパン−1,3−ジイル)ジオキシ]ビス[(5−メトキシ−2−ニトロ−1,4−フェニレン)カルボニル]]ビス[(2S,4R)−メチル−4−ヒドロキシピロリジン−2−カルボキシラート](2a)
方法A:触媒量のDMF(2滴)を撹拌溶液ニトロ−酸1a(1.0g、2.15mmol)+塩化オキサリル(0.95mL、1.36g、10.7mmol)/乾燥THF(20mL)に加えた。この反応混合物を16時間室温で撹拌し、溶媒を真空で蒸発させることにより除去した。この得られた残留物を乾燥THF(20mL)に再溶解させ、この酸塩化物溶液を窒素雰囲気下の−30℃(ドライアイス/エチレングリコール)にある撹拌混合物(2S,4R)−メチル−4−ヒドロキシピロリジン−2−カルボキシラートヒドロクロリド(859mg、4.73mmol)+TEA(6.6mL、4.79g、47.3mmol)/THF(10mL)に滴下で加えた。この反応混合物を室温まで昇温させてさらに3時間撹拌したが、この時点でTLC(95:5v/vCHCl/MeOH)及びLC/MS(2.45min(ES)m/z(相対強度)721([M+H]、20))により生成物の生成が明らかにされた。ロータリーエバポレーターにより過剰THFを除去し、得られた残留物をDCM(50mL)に溶解させた。有機層を1N HCl(2×15mL)、飽和NaHCO(2×15mL)、HO(20mL)、ブライン(30mL)で洗浄し、乾燥させた(MgSO)。溶媒を濾過・蒸発させて、この粗製生成物を黒い色をした油状物として得た。フラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離:100%CHCl→96:4v/vCHCl/MeOH)による精製により等質なアミド2aがオレンジ色をしたガラス状物(840mg、54%)として単離された。
【0443】
方法B:塩化オキサリル(9.75mL、14.2g、111mmol)を撹拌懸濁液ニトロ−酸1a(17.3g、37.1mmol)+DMF(2mL)/無水DCM(200mL)に加えた。最初泡立った後この反応懸濁液は溶液となり、この混合物を室温で16時間撹拌した。この反応混合物のサンプルをMeOHで処理し得られたビス−メチルエステルがLC/MSにより観測されたことによりこの酸塩化物への変換が確認された。溶媒の大半を真空で蒸発させることにより除去し、得られた濃縮溶液を最少量の乾燥DCMに再溶解させ、ジエチルエーテルで粉砕した。この得られた黄色の沈殿物を濾過により回収し、冷ジエチルエーテルで洗浄し、40℃の真空オーブン中で1時間乾燥させた。この固体酸塩化物を25分の時間をかけて−40℃(ドライアイス/CHCN)の撹拌懸濁液(2S,4R)−メチル−4−ヒドロキシピロリジン−2−カルボキシラートヒドロクロリド(15.2g、84.0mmol)+TEA(25.7mL、18.7g、185mmol)/DCM(150mL)に滴下で加えた。LC/MS(2.47min(ES)m/z(相対強度)721([M+H]、100))により判定したところ、この反応は、直ぐ、完了していた。この混合物をDCM(150mL)で希釈し、1N HCl(300mL)、飽和NaHCO(300mL)、ブライン(300mL)で洗浄し、濾過し(相分離器に通して)、溶媒を真空で蒸発させて、等質な生成物2aをオレンジ色の固形物(21.8g、82%)として得た。
【0444】
分析データ:[α]22=−46.1°(c=0.47,CHCl);H NMR(400MHz,CDCl)(回転異性体)δ 7.63(s,2H),6.82(s,2H),4.79−4.72(m,2H),4.49−4.28(m,6H),3.96(s,6H),3.79(s,6H),3.46−3.38(m,2H),3.02(d,2H,J=11.1Hz),2.48−2.30(m,4H),2.29−2.04(m,4H);13C NMR(100MHz,CDCl)(回転異性体)δ 172.4,166.7,154.6,148.4,137.2,127.0,109.7,108.2,69.7,65.1,57.4,57.0,56.7,52.4,37.8,29.0;IR(ATR,CHCl)3410(br),3010,2953,1741,1622,1577,1519,1455,1429,1334,1274,1211,1177,1072,1050,1008,871cm−1;MS(ES)m/z(相対強度)721([M+H],47),388(80);HRMS [M+H]理論C313616 m/z 721.2199,実測(ES)m/z 721.2227。
【0445】
(a)1,1’−[[(ペンタン−1,5−ジイル)ジオキシ]ビス[(5−メトキシ−2−ニトロ−1,4−フェニレン)カルボニル]]ビス[(2S,4R)−メチル−4−ヒドロキシピロリジン−2−カルボキシラート](2b)
方法Bに従って1bから調製することにより等質な生成物をオレンジ色の泡状物(75.5g、82%)として得た。
【0446】
分析データ:(ES)m/z(相対強度)749([M+H]、100)。
【0447】
(b)1,1’−[[(プロパン−1,3−ジイル)ジオキシ]ビス(11aS,2R)−2−(ヒドロキシ)−7−メトキシ−1,2,3,10,11,11a−ヘキサヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]−ベンゾジアゼピン−5,11−ジオン](3a)
方法A:懸濁液10%Pd/C(7.5g、10%w/w)/DMF(40mL)を溶液ニトロ−エステル2a(75g、104mmol)/DMF(360mL)に加えた。この懸濁液をParr水素化装置で8時間かけて水素化した。この反応の進行をLC/MS(2.12min(ES)m/z(相対強度)597([M+H]、100)、(ES)m/z(相対強度)595([M+H]、100)により追跡したところ水素取り込みは既に停止していた。固形物Pd/Cを濾過により除去し、濾液を40℃の真空(10mbar以下)下にあるロータリーエバポレーターにより濃縮して、微量のDMF及び残留炭を含有している黒色の油状物を得た。この残留物をウォーターバス(ロータリーエバポレーターバス)上の40℃のEtOH(500mL)で温浸し、得られた懸濁液をセライトに通して濾過し、エタノール(500mL)で洗浄して、透明な濾液を得た。この溶液にヒドラジン水和物(10mL、321mmol)を加え、この反応混合物を還流で加熱した。20分後には白色の沈殿物の生成が観測され、還流はさらに30分間続けさせた。この混合物を室温まで冷却させ、沈殿物を濾過により回収し、ジエチルエーテル(沈殿物の21体積)で洗浄し、真空デシケーター中で乾燥させて3a(50g、81%)を得た。
【0448】
方法B:溶液ニトロ−エステル2a(6.80g、9.44mmol)/MeOH(300mL)を三頸丸底フラスコ中のRaney(商標)ニッケル(大ヘラ4サジ分の約50%スラリー/HO)+突沸防止顆粒に加えた。この混合物を還流で加熱し、そのあと溶液ヒドラジン水和物(5.88mL、6.05g、188mmol)/MeOH(50mL)で滴下処理した(このとき激しい泡立ちが観測された)。この添加が完了したとき(約30分)さらなるRaney(商標)ニッケルを泡立ちが止むまで注意して加え、最初の黄色の色の反応混合物を排出した。この混合物をさらに30分間還流で加熱した。TLC(90:10v/vCHCl/MeOH)及びLC/MS(2.12min(ES)m/z(相対強度)597([M+H]、100))によりこの時点でこの反応は完了しているとみなされた。この反応混合物をおよそ40℃まで冷却させ、そのあと過剰ニッケルを真空吸引なしの焼結漏斗に通す濾過により除去した。この濾液を真空で蒸発させることにより量を減らすと無色の沈殿物が生成し、これを濾過により捕集し、真空デシケーター中で乾燥させて3a(5.40g、96%)を得た。
【0449】
分析データ:[α]27=+404°(c=0.10,DMF);H NMR(400MHz,DMSO−d)δ 10.2(s,2H,NH),7.26(s,2H),6.73(s,2H),5.11(d,2H,J=3.98Hz,OH),4.32 4.27(m,2H),4.19−4.07(m,6H),3.78(s,6H),3.62(dd,2H,J=12.1,3.60Hz),3.43(dd,2H,J=12.0,4.72Hz),2.67−2.57(m,2H),2.26(p,2H,J=5.90Hz),1.99 1.89(m,2H);13C NMR(100MHz,DMSO−d)δ 169.1,164.0,149.9,144.5,129.8,117.1,111.3,104.5,54.8,54.4,53.1,33.5,27.5;IR(ATR,ニート)3438,1680,1654,1610,1605,1516,1490,1434,1379,1263,1234,1216,1177,1156,1115,1089,1038,1018,952,870cm−1;MS(ES)m/z(相対強度)619([M+Na],10),597([M+H],52),445(12),326(11);HRMS [M+H]理論C293210 m/z 597.2191,実測(ES)m/z 597.2205。
【0450】
(b)1,1’−[[(ペンタン−1,5−ジイル)ジオキシ]ビス(11aS,2R)−2−(ヒドロキシ)−7−メトキシ−1,2,3,10,11,11a−ヘキサヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]−ベンゾジアゼピン−5,11−ジオン](3b)
方法Aに従って2bから調製することによりこの生成物を白色の固形物(22.1g、86%)として得た。
【0451】
分析データ:MS(ES)m/z(相対強度)623.3([M−H]、100)。
【0452】
(c)1,1’−[[(プロパン−1,3−ジイル)ジオキシ]ビス(11aS,2R)−2−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−7−メトキシ−1,2,3,10,11,11a−ヘキサヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]−ベンゾジアゼピン−5,11−ジオン](4a)
TBSCl(317mg、2.1mmol)及びイミダゾール(342mg、5.03mmol)を濁った溶液テトララクタム3a(250mg、0.42mmol)/無水DMF(6mL)に加えた。この混合物を窒素雰囲気下で3時間撹拌した。LC/MS(3.90min(ES)m/z(相対強度)825([M+H]、100))により判定したところこの時既にこの反応は完了していたとみなされた。この反応混合物を氷(約25mL)に注ぎ、撹拌しながら室温まで昇温させた。この得られた白色の沈殿物を真空濾過により捕集し、HO、ジエチルエーテルで洗浄し、真空デシケーター中で乾燥させて等質な4a(252mg、73%)を得た。
【0453】
分析データ:[α]23=+234°(c=0.41,CHCl);H NMR(400MHz,CDCl)δ 8.65(s,2H,NH),7.44(s,2H),6.54(s,2H),4.50(p,2H,J=5.38Hz),4.21−4.10(m,6H),3.87(s,6H),3.73−3.63(m,4H),2.85−2.79(m,2H),2.36−2.29(m,2H),2.07−1.99(m,2H),0.86(s,18H),0.08(s,12H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ 170.4,165.7,151.4,146.6,129.7,118.9,112.8,105.3,69.2,65.4,56.3,55.7,54.2,35.2,28.7,25.7,18.0,−4.82及び−4.86;IR(ATR,CHCl)3235,2955,2926,2855,1698,1695,1603,1518,1491,1446,1380,1356,1251,1220,1120,1099,1033cm−1;MS(ES)m/z(相対強度)825([M+H],62),721(14),440(38);HRMS [M+H]理論C416010Si m/z 825.3921,実測(ES)m/z 825.3948。
【0454】
(c)1,1’−[[(ペンタン−1,5−ジイル)ジオキシ]ビス(11aS,2R)−2−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−7−メトキシ−1,2,3,10,11,11a−ヘキサヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]−ベンゾジアゼピン−5,11−ジオン](4b)
上記方法に従って3bから調製することによりこの生成物を白色の固形物(27.3g、93%)として得た。
【0455】
分析データ:MS(ES)m/z(相対強度)853.8([M+H]、100)、(ES)m/z(相対強度)851.6([M−H]、100。
【0456】
(d)1,1’−[[(プロパン−1,3−ジイル)ジオキシ]ビス(11aS,2R)−2−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−7−メトキシ−10−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−1,2,3,10,11,11a−ヘキサヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]−ベンゾジアゼピン−5,11−ジオン](5a)
溶液n−BuLi(4.17mLの1.6M溶液/ヘキサン、6.67mmol)/無水THF(10mL)を窒素雰囲気下の−30℃(ドライアイス/エチレングリコール)にある撹拌懸濁液テトララクタム4a(2.20g、2.67mmol)/無水THF(30mL)に滴下で加えた。この反応混合物をこの温度で1時間撹拌し(今度は赤色を帯びたオレンジ色)、この時点で溶液SEMCl(1.18mL、1.11g、6.67mmol)/無水THF(10mL)を滴下で加えた。この反応混合物を室温までゆっくり昇温させ、窒素雰囲気下で16時間撹拌した。TLC(EtOAc)及びLC/MS(4.77min(ES)m/z(相対強度)1085([M+H]、100))により判定したところこの反応は完了しているとみなされた。THFを真空で蒸発させることにより除去し、得られた残留物をEtOAc(60mL)に溶解させ、HO(20mL)、ブライン(20mL)で洗浄し、乾燥(MgSO)濾過し、真空で蒸発させて粗製生成物を得た。フラッシュクロマトグラフィー(80:20v/vヘキサン/EtOAc)により精製して、等質なN10−SEM−保護テトララクタム5aを油状物(2.37g、82%)として得た。
【0457】
分析データ:[α]23=+163°(c=0.41,CHCl);H NMR(400MHz,CDCl)δ 7.33(s,2H),7.22(s,2H),5.47(d,2H,J=9.98Hz),4.68(d,2H,J=9.99Hz),4.57(p,2H,J=5.77Hz),4.29−4.19(m,6H),3.89(s,6H),3.79−3.51(m,8H),2.87−2.81(m,2H),2.41(p,2H,J=5.81Hz),2.03−1.90(m,2H),1.02−0.81(m,22H),0.09(s,12H),0.01(s,18H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ 170.0,165.7,151.2,147.5,133.8,121.8,111.6,106.9,78.1,69.6,67.1,65.5,56.6,56.3,53.7,35.6,30.0,25.8,18.4,18.1, 1.24,−4.73;IR(ATR,CHCl)2951,1685,1640,1606,1517,1462,1433,1360,1247,1127,1065cm−1;MS(ES)m/z(相対強度)1113([M+Na],48),1085([M+H],100),1009(5),813(6);HRMS [M+H]理論C538812Si m/z 1085.5548,実測(ES)m/z 1085.5542。
【0458】
(d)1,1’−[[(ペンタン1,5−ジイル)ジオキシ]ビス(11aS,2R)−2−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−7−メトキシ−10−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−1,2,3,10,11,11a−ヘキサヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]−ベンゾジアゼピン−5,11−ジオン](5b)
上記方法に従って4bから調製することによりこの生成物を淡いオレンジ色の泡状物(46.9g、100%)として得た(さらに精製することなく用いた)。
【0459】
分析データ:MS(ES)m/z(相対強度)1114([M+H]、90)、(ES)m/z(相対強度)1158([M+2Na]、100)。
【0460】
(e)1,1’−[[(プロパン−1,3−ジイル)ジオキシ]ビス(11aS,2R)−2−ヒドロキシ−7−メトキシ−10−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−1,2,3,10,11,11a−ヘキサヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]−ベンゾジアゼピン−5,11−ジオン](6a)
溶液TBAF(5.24mLの1.0M溶液/THF、5.24mmol)を室温にある撹拌溶液ビス−シリルエーテル5(2.58g、2.38mmol)/THF(40mL)に加えた。3.5時間撹拌した後、TLC(95:5v/vCHCl/MeOH)によりこの反応混合物を分析したところ反応の完了が明らかにされた。この反応混合物を飽和NHCl溶液(100mL)に注ぎ入れ、EtOAc(3×30mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(60mL)で洗浄し、乾燥(MgSO)、濾過、真空蒸発させて、粗製生成物を得た。フラッシュクロマトグラフィー(勾配溶離:100%CHCl→96:4v/vCHCl/MeOH)による精製により等質なテトララクタム6aを白色の泡状物(1.78g、87%)として得た。
【0461】
分析データ:[α]23=+202°(c=0.34,CHCl);H NMR(400MHz,CDCl)δ 7.28(s,2H),7.20(s,2H),5.44(d,2H,J=10.0Hz),4.72(d,2H,J=10.0Hz),4.61 4.58(m,2H),4.25(t,4H,J=5.83Hz),4.20−4.16(m,2H),3.91−3.85(m,8H),3.77−3.54(m,6H),3.01(br s,2H,OH),2.96−2.90(m,2H),2.38(p,2H,J=5.77Hz),2.11−2.05(m,2H),1.00−0.91(m,4H),0.00(s,18H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ 169.5,165.9,151.3,147.4,133.7,121.5,111.6,106.9,79.4,69.3,67.2,65.2,56.5,56.2,54.1,35.2,29.1,18.4,−1.23;IR(ATR,CHCl)2956,1684,1625,1604,1518,1464,1434,1361,1238,1058,1021cm−1;MS(ES)m/z(相対強度)885([M+29],70),857([M+H],100),711(8),448(17);HRMS [M+H]理論C416012Si m/z 857.3819,実測(ES)m/z 857.3826。
【0462】
(e)1,1’−[[(ペンタン−1,5−ジイル)ジオキシ]ビス(11aS,2R)−2−ヒドロキシ−7−メトキシ−10−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−1,2,3,10,11,11a−ヘキサヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]−ベンゾジアゼピン−5,11−ジオン](6b)
上記方法に従って5bから調製することによりこの生成物を白色の泡状物(15.02g)として得た。
【0463】
分析データ:MS(ES)m/z(相対強度)886([M+H],10),739.6(100),(ES)m/z(相対強度)884([M−H],40)。
【0464】
(f)1,1’−[[(プロパン−1,3−ジイル)ジオキシ]ビス[(11aS)−11−スルホ−7−メトキシ−2−オキソ−10−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)1,2,3,10,11,11a−ヘキサヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5,11−ジオン]](7a)
方法A:0.37M次亜塩素酸ナトリウム溶液(142.5mL、52.71mmol、2.4eq)を0℃にある強撹拌混合物ジオール6(18.8g、21.96mmol、1eq)+TEMPO(0.069g、0.44mmol、0.02eq)+0.5M臭化カリウム溶液(8.9mL、4.4mmol、0.2eq)/DCM(115mL)に滴下で加えた。添加の速度を調節することにより温度を0℃〜5℃の間に維持した。この得られた黄色のエマルジョンを0℃〜5℃で1時間撹拌した。TLC(EtOAc)及びLC/MS[3.53min(ES)m/z(相対強度)875([M+Na]、50)、(ES)m/z(相対強度)852([M−H]、100)]により反応は完了していることが示された。
【0465】
この反応混合物を濾過し、有機層を分離させ、水層をDCM(×2)で逆洗浄した。合わせた有機部分をブライン(×1)で洗浄し、乾燥(MgSO)、蒸発させて、黄色の泡状物を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(勾配溶離35/65v/vn−ヘキサン/EtOAC、30/70→25/75v/vn−ヘキサン/EtOAC)による精製によりこのビス−ケトン7aを白色の泡状物(14.1g、75%)として得た。
【0466】
塩素10〜13%で売られている、試薬等級の、次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いた。これは10%(10g NaClO/100g)であると仮定し、NaClOが1.34Mであると計算された。これからそれを水で0.37Mに希釈することによってストック溶液を調製した。これによりpHおよそ14の溶液が得られた。固体NaHCOを加えることにより、このpHは、9.3〜9.4に調整された。その反応には、2.4モル当量が得られるように、このストックのアリコートがこのあと用いられた。
【0467】
このブリーチ溶液を加えると、最初温度が上がるのが観測された。温度を0℃〜5℃に維持するために、添加の速度が調節された。この反応混合物は、濃厚な、レモンイエロー色をした、エマルジョンを形成した。
【0468】
この酸化はThomas Fey et al,J. Org. Chem.,2001,66,8154-8159に記載されている手順を適応したものである。
【0469】
方法B:固体TCCA(10.6g、45.6mmol)を0℃(氷/アセトン)にある撹拌溶液アルコール6(18.05g、21.1mmol)+TEMPO(123mg、0.78mmol)/無水DCM(700mL)に滴下で加えた。この反応混合物を窒素雰囲気下の0℃で15分間撹拌した。この時点でTLC(EtOAc)及びLC/MS[3.57min(ES)m/z(相対強度)875([M+Na]、50)]により反応は完了していることが明らかにされた。この反応混合物をセライトに通して濾過し、濾液を飽和NaHCO水溶液(400mL)、ブライン(400mL)で洗浄し、乾燥(MgSO)、濾過、真空蒸発させて、粗製生成物を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(80:20v/vEtOAc/ヘキサン)による精製によりこのビス−ケトン7aを泡状物(11.7g、65%)として得た。
【0470】
方法C:溶液無水DMSO(0.72mL、0.84g、10.5mmol)/乾燥DCM(18mL)を−60℃(液体N/CHCl)の窒素雰囲気下の塩化オキサリル撹拌溶液(2.63mLの2.0M溶液/DCM、5.26mmol)に25minの時間をかけて滴下で加えた。−55℃で20分間撹拌した後、スラリー基質6a(1.5g、1.75mmol)/乾燥DCM(36mL)をこの反応混合物に30minの時間をかけて滴下で加えた。−55℃でさらに50分間撹拌した後、溶液TEA(3.42mL、2.49g;24.6mmol)/乾燥DCM(18mL)をこの反応混合物に20minの時間をかけて滴下で加えた。この撹拌反応混合物を室温まで昇温させ(約1.5h)、そのあとDCM(50mL)で希釈した。この有機溶液を1N HCl(2×25mL)、HO(30mL)、ブライン(30mL)で洗浄し、乾燥させた(MgSO)。溶媒を真空で濾過・蒸発させることにより粗製生成物を得、これをフラッシュカラムクロマトグラフィー(80:20v/vEtOAc/ヘキサン)により精製して、ビス−ケトン7aを泡状物(835mg、56%)として得た。
【0471】
分析データ:[α]20=+291°(c=0.26,CHCl);H NMR(400MHz,CDCl)δ 7.32(s,2H),7.25(s,2H),5.50(d,2H,J=10.1Hz),4.75(d,2H,J=10.1Hz),4.60(dd,2H,J=9.85,3.07Hz),4.31−4.18(m,6H),3.89−3.84(m,8H),3.78−3.62(m,4H),3.55(dd,2H,J=19.2,2.85Hz),2.76(dd,2H,J=19.2,9.90Hz),2.42(p,2H,J=5.77Hz),0.98−0.91(m,4H),0.00(s,18H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ 206.8,168.8,165.9,151.8,148.0,133.9,120.9,111.6,107.2,78.2,67.3,65.6,56.3,54.9,52.4,37.4,29.0,18.4,−1.24;IR(ATR,CHCl)2957,1763,1685,1644,1606,1516,1457,1434,1360,1247,1209,1098,1066,1023cm−1;MS(ES)m/z(相対強度)881([M+29],38),853([M+H],100),707(8),542(12);HRMS [M+H]理論C415612Si m/z 853.3506,実測(ES)m/z 853.3502。
【0472】
(f)1,1’−[[(ペンタン−1,5−ジイル)ジオキシ]ビス[(11aS)−11−スルホ−7−メトキシ−2−オキソ−10−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)1,2,3,10,11,11a−ヘキサヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5,11−ジオン]](7b)
方法Cに従って6bから調製することによりこの生成物を白色の泡状物(10.5g、76%)として得た。
【0473】
分析データ:MS(ES)m/z(相対強度)882([M+H],30),735(100),(ES)m/z(相対強度)925([M+45],100),880([M−H],70)。
【0474】
(g)1,1’−[[(プロパン−1,3−ジイル)ジオキシ]ビス(11aS)−7−メトキシ−2−[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−10−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−1,10,11,11a−テトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]−ベンゾジアゼピン−5,11−ジオン](8a)
無水2,6−ルチジン(5.15mL、4.74g、44.2mmol)を窒素雰囲気下の−45℃(ドライアイス/アセトニトリル冷却バス)にある強撹拌溶液ビス−ケトン7(6.08g、7.1mmol)/乾燥DCM(180mL)に1回で注入した。新しく開けられたアンプル(7.2mL、12.08g、42.8mmol)からとった、無水トリフル酸無水物を、温度を−40℃又はそれ以下に維持しながら、素早く、滴下で注入した。この反応混合物を−45℃で1時間撹拌した。この時点で、TLC(50/50v/vn−ヘキサン/EtOAc)により、出発物質が完全に消費されていることが明らかにされた。この冷反応混合物を、直ちに、激しく震盪しながら、DCM(200mL)で希釈し、水(1×100mL)、5%クエン酸溶液(1×200mL)、飽和NaHCO溶液(200mL)、ブライン(100mL)で洗浄し、乾燥させた(MgSO)。溶媒を真空で濾過・蒸発させることにより粗製生成物を得、これをフラッシュカラムクロマトグラフィー(勾配溶離:90:10v/vn−ヘキサン/EtOAc→70:30v/vn−ヘキサン/EtOAc)により精製して、ビス−エノールトリフラート8aを黄色の泡状物(5.5g、70%)として得た。
【0475】
分析データ:[α]24=+271°(c=0.18,CHCl);H NMR(400MHz,CDCl)δ 7.33(s,2H),7.26(s,2H),7.14(t,2H,J=1.97Hz),5.51(d,2H,J=10.1Hz),4.76(d,2H,J=10.1Hz),4.62(dd,2H,J=11.0,3.69Hz),4.32−4.23(m,4H),3.94−3.90(m,8H),3.81−3.64(m,4H),3.16(ddd,2H,J=16.3,11.0,2.36Hz),2.43(p,2H,J=5.85Hz),1.23−0.92(m,4H),0.02(s,18H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ 167.1,162.7,151.9,148.0,138.4,133.6,120.2,118.8,111.9,107.4,78.6,67.5,65.6,56.7,56.3,30.8,29.0,18.4, 1.25;IR(ATR,CHCl)2958,1690,1646,1605,1517,1456,1428,1360,1327,1207,1136,1096,1060,1022,938,913cm−1;MS(ES)m/z(相対強度)1144([M+28],100),1117([M+H],48),1041(40),578(8);HRMS [M+H]理論C435416Si m/z 1117.2491,実測(ES)m/z 1117.2465。
【0476】
(g)1,1’−[[(ペンタン−1,5−ジイル)ジオキシ]ビス(11aS)−7−メトキシ−2−[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]−10−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−1,10,11,11a−テトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]−ベンゾジアゼピン−5,11−ジオン](8b)
上記方法に従って7bから調製することによりこのビス−エノールトリフラートを淡黄色の泡状物(6.14g、82%)として得た。
【0477】
分析データ:(ES)m/z(相対強度)1146([M+H]、85)。
【0478】
(実施例1)
【化75】
【0479】
(a)(S)−2−(4−アミノフェニル)−7−メトキシ−8−(3−((S)−7−メトキシ−2−(トリフルオロメチルスルホニル)−5,11−ジオキソ−10−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−5,10,11,11a−テトラヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ)プロポキシ)−10−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5,11(10H,11aH)−ジオン(9)
固体Pd(PPh(20.18mg、17.46mmol)を撹拌溶液トリフラート8(975mg、0.87mmol)+4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボララン−2−イル)アニリン(172mg、0.79mmol)+NaCO(138mg、3.98mol)/トルエン(13mL)+EtOH(6.5mL)+HO(6.5mL)に加えた。この暗色の溶液を窒素雰囲気下で24時間撹拌した。この時点で、TLC(EtOAc)及びLC/MSによる分析により、所望の一連結生成物が生成していること並びに未反応出発物質が存在していることが明らかにされた。溶媒を減圧下のロータリーエバポレーターにより除去し、得られた残留物をHO(100mL)とEtOAc(100mL)とに分配させ、各層がそのうち分離した後水相をもう一度EtOAc(2×25mL)で抽出した。合わせた有機層をHO(50mL)、ブライン(60mL)で洗浄し、乾燥(MgSO)、濾過、真空蒸発させて、粗製Suzuki生成物を得た。この粗製Suzuki生成物をフラッシュクロマトグラフィー(40%EtOAc/60%ヘキサン→70%EtOAc、30%ヘキサン)に付した。過剰溶離液を減圧下のロータリーエバポレーターにより除去して、所望生成物9(399mg)を43%収率で得た。
【0480】
1H−NMR:(CDCl,400MHz)δ 7.40(s,1H),7.33(s,1H),7.27(bs,3H),7.24(d,2H,J=8.5Hz),7.15(t,1H,J=2.0Hz),6.66(d,2H,J=8.5Hz),5.52(d,2H,J=10.0Hz),4.77(d,1H,J=10.0Hz),4.76(d,1H,J=10.0Hz),4.62(dd,1H,J=3.7,11.0Hz),4.58(dd,1H,J=3.4,10.6Hz),4.29(t,4H,J=5.6Hz),4.00−3.85(m,8H),3.80−3.60(m,4H),3.16(ddd,1H,J=2.4,11.0,16.3Hz),3.11(ddd,1H,J=2.2,10.5,16.1Hz),2.43(p,2H,J=5.9Hz),1.1−0.9(m,4H),0.2(s,18H)。13C−NMR:(CDCl,100MHz)δ 169.8,168.3,164.0,162.7,153.3,152.6,149.28,149.0,147.6,139.6,134.8,134.5,127.9(メチン),127.5,125.1,123.21,121.5,120.5(メチン),120.1(メチン),116.4(メチン),113.2(メチン),108.7(メチン),79.8(メチレン),79.6(メチレン),68.7(メチレン),68.5(メチレン),67.0(メチレン),66.8(メチレン),58.8(メチン),58.0(メチン),57.6(メトキシ),32.8(メチレン),32.0(メチレン),30.3(メチレン),19.7(メチレン),0.25(メチル)。
【0481】
(b)(S)−2−(4−アミノフェニル)−7−メトキシ−8−(3−((S)−7−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−5,11−ジオキソ−10−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−5,10,11,11a−テトラヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ)プロポキシ)−10−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5,11(10H,11aH)−ジオン(10)
固体Pd(PPh(10mg、8.69μmol)を、室温にあるHO(1.5mL)中、4−メトキシフェニルボロン酸(43mg、0.28mmol)、NaCO(37mg、0.35mmol)と共に、撹拌溶液モノ−トリフラート9(230mg、0.22mmol)/トルエン(3mL)+EtOH(10mL)に加えた。この反応混合物を窒素雰囲気下で20時間撹拌した(LC/MS及びTLC(EtOAc)により判定したところこの時点で反応は完了とみなされた)。溶媒を真空の減圧下にあるロータリーエバポレーターにより除去し、得られた残留物をEtOAc(75mL)とHO(75mL)とに分配させた。水相をEtOAc(3×30mL)で抽出し、合わせた有機層をHO(30mL)、ブライン(40mL)で洗浄、乾燥(MgSO)、濾過、蒸発させて、粗製生成物を得た。この粗製生成物をフラッシュクロマトグラフィー(60%ヘキサン:40%EtOAc→80%EtOAc:20%ヘキサン)により精製して、等質な二量体をオレンジ色の泡状物として得た。減圧下で過剰溶離液を除去して所望生成物10(434mg)を74%収率で得た。
【0482】
1H−NMR:(CDCl,400MHz)δ 7.38(s,2H),7.34(d,2H,J=8.8Hz),7.30(bs,1H),7.26−7.24(m,3H),7.22(d,2H,J=8.5Hz),6.86(d,2H,J=8.8Hz),6.63(d,2H,J=8.5Hz),5.50(d,2H,J=10.0Hz),4.75(d,1H,J=10.0Hz),4.74(d,1H,J=10.0Hz),4.56(td,2H,J=3.3,10.1Hz),4.27(t,2H,J=5.7Hz),4.00−3.85(m,8H),3.80(s,3H),3.77−3.60(m,4H),3.20−3.00(m,2H),2.42(p,2H,J=5.7Hz),0.96(t,4H,J=8.3Hz),0.00(s,18H)。13C−NMR:(CDCl,100MHz)δ 169.8,169.7,162.9,162.7,160.6,152.7,152.6,149.0,147.5,134.8,127.8(メチン),127.4,126.8,125.1,123.1,123.0,121.5(メチン),120.4(メチン),116.4(メチン),115.5(メチン),113.1(メチン),108.6(メチン),79.6(メチレン),68.5(メチレン),66.9(メチレン),58.8(メチン),57.6(メトキシ),56.7(メトキシ),32.8(メチレン),30.3(メチレン),19.7(メチレン),0.0(メチル)。
【0483】
(c)(S)−2−(4−アミノフェニル)−7−メトキシ−8−(3−((S)−7−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−5−オキソ−5,11a−ジヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ)プロポキシ)−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5(11aH)−オン(11)
新鮮LiBH(183mg、8.42mmol)を撹拌溶液SEM−ジラクタム10(428mg、0.42mmol)/THF(5mL)+EtOH(5mL)(室温)に加えた。10分後、遅れた激しい泡立ちが観測され、反応容器をアイスバスに入れなければならなかった。このアイスバスを取り除いた後この混合物を室温で1時間撹拌した。この時点でのLC/MS分析により出発物質は完全に消費されてごく僅かのモノ還元生成物があることが明らかにされた。この反応混合物を氷(100mL)に注ぎ、撹拌しながら室温まで昇温させた。この水性混合物をDCM(3×30mL)で抽出し、合わせた有機層をHO(20mL)、ブライン(30mL)で洗浄し、真空で濃縮した。この得られた残留物をDCM(5mL)、EtOH(14mL)、HO(7mL)及びシリカゲル(10g)で処理した。この粘稠な混合物を室温で3日間撹拌した。この混合物を焼結漏斗にゆっくり通して濾過し、シリカ残留物を90%CHCl:10%MeOH(約250mL)で溶離液からUV活性が完全に消えるまで洗浄した。この有機相をHO(50mL)、ブライン(60mL)で洗浄、乾燥(MgSO)濾過し、真空で蒸発させて、粗製の物質を得た。この粗製生成物をフラッシュクロマトグラフィー(97%CHCl:3%MeOH)により精製して、等質なC2/C2’アリールPBD二量体11(185mg)を61%収率で得た。
【0484】
1H−NMR:(CDCl,400MHz)δ 7.88(d,1H,J=4.0Hz),7.87(d,1H,J=4.0Hz),7.52(s,2H),7.39(bs,1H),7.37−7.28(m,3H),7.20(d,2H,J=8.5Hz),6.89(d,2H,J=8.8Hz),6.87(s,1H),6.86(s,1H),6.67(d,2H,J=8.5Hz),4.40−4.20(m,6H),3.94(s,6H),3.82(s,3H),3.61−3.50(m,2H),3.40−3.30(m,2H),2.47−2.40(m,2H)。13C−NMR:(CDCl,100MHz)δ 162.5(イミンメチン),161.3,161.1,159.3,156.0,151.1,148.1,146.2,140.3,126.2(メチン),123.2,122.0,120.5(メチン),119.4,115.2(メチン),114.3(メチン),111.9(メチン),111.2(メチン),65.5(メチレン),56.2(メトキシ),55.4(メトキシ),53.9(メチン),35.6(メチレン),28.9(メチレン)。
【0485】
(実施例2)
【化76】
【0486】
(a)(S)−2−(4−アミノフェニル)−7−メトキシ−8−(5−((S)−7−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−5,11−ジオキソ−10−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−5,10,11,11a−テトラヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ)ペンチルオキシ)−10−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5,11(10H,11aH)−ジオン(12)
固体Pd(PPh(32mg、27.7μmol)を、30℃にあるHO(5mL)中、4−メトキシフェニルボロン酸(0.202g、1.32mmol)、NaCO(0.169g、1.6mmol)と共に、撹拌溶液ビス−トリフラート8b(1.04g、0.91mmol)/トルエン(10mL)+EtOH(5mL)に加えた。この反応混合物を窒素雰囲気下で20時間撹拌した。さらなる固体4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボララン−2−イル)アニリン(0.203g、0.93mmol)及びNaCO(0.056g、0.53mmol)を加え、そのあと固体Pd(PPh(10mg、8.6μmol)を加えた。この反応混合物を窒素雰囲気下でさらに20時間撹拌した。LC/MSにより所望生成物が生成したことが示された。EtOAc(100mL)及びHO(100mL)を加え、水相を分離させ、EtOAc(3×30mL)で抽出した。合わせた有機層をHO(100mL)、ブライン(100mL)で洗浄、乾燥(MgSO)、濾過、蒸発させて黒茶色の油状物を得た。この油状物をDCMに溶解させ、DCM(1vol)で予め平衡化させてある10g SCX−2カートリッジに負荷した。このカートリッジをDCM(3vol)、MeOH(3vol)で洗浄し、この粗製生成物を2MNH/MeOH(2vol)で溶離させた。フラッシュクロマトグラフィー(50%n−ヘキサン:50%EtOAc→20%n−ヘキサン:80%EtOAc)により等質な二量体12を黄色の泡状物(0.16g、34%)として得た。
【0487】
分析データ:[α]23=+388°(c=0.22,CHCl);1H−NMR:(CDCl,400MHz)δ 7.39(s,2H),7.35(d,2H,J=12.8Hz),7.32(bs,1H),7.26−7.23(m,5H),6.89(d,2H,J=8.8Hz),6.66(d,2H,J=8.5Hz),5.55(d,2H,J=10.0Hz),4.73(d,1H,J=10.0Hz),4.72(d,1H,J=10.0Hz),4.62(td,2H,J=3.2,10.4Hz),4.15−4.05(m,4H),4.00−3.85(m,8H),3.82(s,3H),3.77−3.63(m,4H),3.20−3.05(m,2H),2.05−1.95(m,4H),1.75−1.67(m,2H)1.01−0.95(m,4H),0.03(s,18H);MS(ES)m/z(相対強度)1047([M+H],45)。
【0488】
(b)(S)−2−(4−アミノフェニル)−7−メトキシ−8−(5−((S)−7−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−5−オキソ−5,11a−ジヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ)ペンチルオキシ)−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5(11aH)−オン(13)
新鮮LiBH(66mg、3.04mmol)を撹拌溶液SEM−ジラクタム12(428mg、0.42mmol)/THF(3mL)+EtOH(3mL)(0℃(アイスバス))に加えた。アイスバスを取り除き、この反応混合物を室温まで到達せしめた(激しい泡立ち)。2時間後、LC/MS分析により、出発物質は完全に消費されていることが示された。この反応混合物を氷(50mL)に注ぎ、撹拌しながら室温まで昇温させた。この水性混合物をDCM(3×50mL)で抽出し、合わせた有機層をHO(50mL)、ブライン(50mL)で洗浄、乾燥(MgSO)真空濃縮した。この得られた残留物をDCM(2mL)、EtOH(5mL)、HO(2.5mL)及びシリカゲル(3.7g)で処理した。この粘稠混合物を室温で3日間撹拌した。この混合物を焼結漏斗に通して濾過し、シリカ残留物を90%CHCl:10%MeOH(約250mL)で溶離液からUV活性が完全に消えるまで洗浄した。この有機相を乾燥(MgSO)濾過、真空蒸発させて、粗製の物質を得た。この粗製生成物をフラッシュクロマトグラフィー(99.5%CHCl:0.5%MeOH→97.5%CHCl:2.5%MeOH/0.5%インクレメント)により精製して、等質なC2/C2’アリールPBD二量体13(59mg、52%)を得た。
【0489】
分析データ:[α]28=+760°(c=0.14,CHCl);H NMR(400MHz,CDCl)δ 7.89(d,1H,J=4.0Hz),7.87(d,1H,J=4.0Hz),7.52(s,2H),7.39(bs,1H),7.37−7.28(m,3H),7.22(d,2H,J=8.4Hz),6.91(d,2H,J=8.8Hz),6.815(s,1H),6.81(s,1H),6.68(d,2H,J=8.4Hz),4.45−4.35(m,2H),4.2−4.0(m,4H),3.94(s,6H),3.85−3.7(s,3H),3.65−3.50(m,2H),3.45−3.3(m,2H),2.05−1.9(m,4H),1.75−1.65(m,2H);MS(ES)(相対強度)754.6([M+H],100),(ES)(相対強度)752.5([M−H],100)。
【0490】
(実施例3)
【化77】
【0491】
(a)(S)−2−(チエン−2−イル)−7−メトキシ−8−(3−((S)−7−メトキシ−2−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−5,11−ジオキソ−10−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−5,10,11,11a−テトラヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ)プロピルオキシ)−10−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5,11(10H,11aH)−ジオン(14)
固体Pd(PPh(41mg、0.036mmol)を、HO(5mL)中、チエン−2−イルボロン酸(149mg、1.16mmol)、NaCO(152mg、1.43mmol)と共に、撹拌溶液ビス−トリフラート8(1g、0.9mmol)/トルエン(10mL)+EtOH(5mL)に加えた。この反応混合物を窒素雰囲気下で一晩室温にて撹拌した。溶媒を真空で蒸発させることにより除去し、得られた残留物をHO(100mL)とEtOAc(100mL)とに分配させた。水層をEtOAc(2×30mL)で抽出し、合わせた有機層をHO(50mL)、ブライン(50mL)で洗浄、乾燥(MgSO)、濾過、真空蒸発させて、粗製生成物を得、これをフラッシュクロマトグラフィー(80ヘキサン:20EtOAc→50ヘキサン:50EtOAc)により精製して、二量体14(188mg、20%収率)を得た。
【0492】
分析データ:LC−MS RT 4.27min、1051(M+H);1H−NMR(400MHZ,CDCl)δ 7.36(s,1H),7.31(bs,1H),7.27(bs,1H),7.26−7.23(m,2H),7.22−7.17(m,1H),7.12(bs,1H),7.02−6.96(m,2H),5.50(d,J=10.0Hz,2H),7.75(d,J=10.0Hz,2H),4.65−4.55(m,2H),4.37−4.13(m,4H),4.00−3.85(m,8H),3.8−3.6(m,4H),3.20−3.10(m,2H),2.50−2.35(m,2H),1.0−0.9(m,4H),0(s,18H)。
【0493】
(b)(S)−2−(チエン−2−イル)−7−メトキシ−8−(3−((S)−7−メトキシ−2−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−5,11−ジオキソ−10−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−5,10,11,11a−テトラヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ)ペンチルオキシ)−10−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5,11(10H,11aH)−ジオン(15)
固体Pd(PPh(7.66mg、6.63μmol)を、白濁、撹拌溶液14(174mg、0.17mmol)+NaCO(28mg、0.22mmol)+4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボララン−2−イル)アニリン(47mg、0.22mmol)/トルエン(2−5mL)+EtOH(1.25mL)+HO(125mL)(室温)に加えた。この反応混合物をN雰囲気下で24時間撹拌した。この時点で、LC/MS主ピーク(@3.97min、FW=1016、M+Na)及びTLC(EtOAc)により、この反応は完了とみなされた。溶媒を真空で蒸発させることにより除去し、得られた残留物をEtOAc(60mL)とHO(30mL)とに分配させた。各層を分離させ、有機相をHO(20mL)、ブライン(30mL)で洗浄、乾燥(MgSO)濾過し、真空で蒸発させて、粗製の生成物(123mg、75%収率)を得た。
【0494】
分析データ:LC−MS RT 3.98min、100%面積,994(M+H);1H−NMR(400MHZ,CDCl)δ 7.40(d,J=5.3Hz,2H),7.30(t,J =1.70Hz,1H),7.29−7.27(m,3H),7.25(d,J=8.5Hz,2H),7.21(dd,J=1.4,4.73Hz,1H),7.03−6.97(m,2H),6.66(d,J=8.5Hz,2H),5.52(d,J=10.0Hz,2H),4.78(d,J=10.0Hz,1H),4.77(d,J=10.0Hz,1H),4.62(dd,J=3.4,10.5Hz,1H),4.59(dd,J=3.40,10.6Hz,1H),4.30(t,J=5.85Hz,4H),3.85−4.03(m,8H),3.84−3.64(m,6H),3.18(ddd,J=2.2,10.5,16.0Hz,1H),3.11(ddd,J=2.2,10.5,16.0Hz,1H),2.44(p,J=5.85Hz,2H),0.98(t,J=1.5Hz,4H),0(s,18H)。
【0495】
(c)(S)−2−(チエン−2−イル)−7−メトキシ−8−(3−((S)−7−メトキシ−2−(4−アミノフェニル)−5−オキソ−5,11a−ジヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ)プロピルオキシ)−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5(11aH)−オン(16)
新鮮LiBH(47mg、2,22mmol)を撹拌溶液SEM−ジラクタム15(110mg、0.11mmol)/乾燥THF(3mL)+EtOH(3mL)(0℃(アイスバス)に加えた。アイスバスを取り除き、この反応混合物をN雰囲気下で1時間撹拌した。LC/MS分析によるこの反応の分析により、所望生成物(Pk@2.57min(I=69.32)、FW=702、M+H)及び半イミンが相当量生成していることが明らかにされた。この反応混合物をさらに1時間撹拌した。さらなる反応の進行はないことがLC/MSによりこの時点で観測された。この反応混合物を氷に注ぎ、撹拌し、室温まで昇温させた。DCM(50mL)と水(50mL)とに分配させた後、水相をDCM(3×20mL)で抽出した。合わせた有機層をHO(50mL)、ブライン(50mL)で洗浄し、溶媒を減圧下の真空で蒸発させることにより除去した。
【0496】
この得られた残留物をDCM(5mL)、EtOH(15mL)及びHO(7mL)に溶解させ、そのあとシリカゲル(5g)で処理した。この反応物を室温で48時間撹拌した。シリカを焼結漏斗に通して濾過することにより除去し、残留物を90:10CHCl:MeOH(100mL)で濯ぎ洗いした。この濾液にHO(50mL)を加え、各層を分離させた(震盪の後)。水層をCHCl(2×30mL)で抽出し、HO(50mL)、ブライン(50mL)、乾燥(MgSO)濾過、真空で蒸発させて、粗製の生成物を得た。フラッシュクロマトグラフィー(CHCl→98%CHCl:2%MeOH)により生成物(41mg、53%)を得た。
【0497】
分析データ:LC−MS RT 2.55min、702(M+H)。
【0498】
(実施例4)
【化78】
【0499】
(a)(S)−2−(4−メトキシフェニル)−7−メトキシ−8−(3−((S)−7−メトキシ−2−(トリフルオロメチルスルホニル)−5,11−ジオキソ−10−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−5,10,11,11a−テトラヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ)プロピルオキシ)−10−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5,11(10H,11aH)−ジオン(17)
固体4−メトキシベンゼンボロン酸(0.388g、2.55mmol)を溶液SEM保護ビストリフラート(8a)(3.0g、2.69mmol)+炭酸ナトリウム(426mg、4.02mmol)+パラジウムテトラキストリフェニルホスフィン(0.08mmol)/トルエン(54.8mL)+エタノール(27mL)+水(27mL)に加えた。この反応混合物を室温で3時間撹拌した。この反応混合物を酢酸エチルと水とに分配させた。有機層を水及びブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム入れて乾燥させた。減圧下のロータリーエバポレーターにより過剰溶媒を除去し、得られた残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;勾配溶離EtOAc/ヘキサン30/70→35/65→40/60→45/55)に付して、未反応ビス−トリフラート(0.6g)を除去した。選択されたフラクションから過剰溶離液を除去して、この4−メトキシフェニル連結生成物(1.27g、1.18mmol、41%)を得た。
【0500】
LC−MS RT 4.30min、1076(M+H);1H−NMR(400MHZ,CDCl)δ 7.41(s,1H),7.39(d,J=8.8Hz,2H),7.35(s,1H),7.34(bs,1H),7.29(s,1H),7.16(t,J=1.9Hz,1H),6.90(d,J=8.8Hz,2H),5.53(d,J=10.0Hz,2H),4.79(d,J=10.0Hz,1H),4.78(d,J=10.0Hz,1H),4.66−4.60(m,2H),4.30(t,J=5.7Hz,4H),4.0−3.94(m,2H),3.93(s,3H),3.92(s,3H),3.84(s,3H),3.83−3.60(m,4H),3.22−3.10(m,2H),2.45(t,J=5.9Hz,2H),1.05−0.94(m,4H),0(s,18H)。
【0501】
(b)(S)−2−(3−アミノフェニル)−7−メトキシ−8−(3−((S)−7−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−5,11−ジオキソ−10−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−5,10,11,11a−テトラヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ)プロピルオキシ)−10−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5,11(10H,11aH)−ジオン(18)
固体3−アミノベンゼンボロン酸(0.143g、0.92mmol)を溶液モノトリフラート(17)(0.619g、0.58mmol)+炭酸ナトリウム(195mg、1.84mmol)+パラジウムテトラキストリフェニルホスフィン(26.6mg、0.023mmol)/トルエン(10mL)+エタノール(5mL)+水(5mL)に加えた。この反応混合物を30℃の室温で一晩撹拌した。この反応混合物をこのあと酢酸エチルと水とに分配させた。有機層を水及びブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムを入れて乾燥させた。減圧下のロータリーエバポレーターにより過剰溶媒を除去し、得られた残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;勾配溶離EtOAc/ヘキサン70/30→85/15)に付した。選択されたフラクションから過剰溶離液を除去して、所望生成物(0.502g、0.49mmol、85%)を得た。
【0502】
LC−MS RT 4.02min、1019(M+H);1H−NMR(400MHZ,CDCl)δ 7.38−7.35(m,4H),7.33(bs,1H),7.30(bs,1H),7.25(s,2H),7.10(t,J=7.8Hz,1H),6.88−6.80(m,3H),6.72(bs,1H),6.57(dd,J=7.9,1.8Hz,1H),5.50(d,J=10.0Hz,2H),4.75(d,10.0Hz,2H),4.58(dd,J=10.6,3.3Hz,2H),4.27(t,J=5.8Hz,4H),3.95−3.91(m,2H),3.90(s,6H),3.80(s,3H),3.77−3.60(m,6H),3.15−3.05(m,2H),2.41(p,J=5.8Hz,2H),0.95(t,=8.25Hz,4H),0(s,18H)。
【0503】
(c)(S)−2−(3−アミノフェニル)−7−メトキシ−8−(3−((S)−7−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−5−オキソ−5,11a−ジヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ)プロピルオキシ)−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5(11aH)−オン(19)
スーパーヒドリド(superhydride)の溶液(0.56mL、0.56mmol、1.0M/THF)を溶液SEMジラクタム(18)(0.271g、0.27mmol)/乾燥THF(10mL)(窒素雰囲気下−78℃)に滴下で加えた。1時間後さらなるアリコートのスーパーヒドリド溶液(0.13ml、0.13mmol)を加え、この反応混合物をもう0.5時間撹拌した。このとき、LC−MSにより、還元は完了していることが示された。この反応混合物を水で希釈し、室温まで昇温させた。この反応混合物をクロロホルムと水とに分配させ、各層を分離させ、水層をさらなるクロロホルムで抽出した(エマルジョン)。最後に、この合わせた有機相をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムを入れて乾燥させた。この還元生成物をメタノール、クロロホルム及び水に溶解させ、シリカゲルの存在下に72時間撹拌した。この粗製生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(メタノール/クロロホルム勾配)に付し、選択されたフラクションから過剰溶離液を除去した後、所望イミン生成物(150mg、0.21mmol、77%)を得た。
【0504】
LC−MS RT 2.63min、97%面積,726(M+H);1H−NMR(400MHZ,CDCl)δ 7.85(d,J=3.9Hz,1H),7.84(d,J=3.9Hz,1H),7.50(s,1H),7.49(s,1H),7.42(s,1H),7.36(s,1H),7.32(d,J=7.3Hz,2H),7.11(t,(d,J=7.8Hz,1H),6.90−6.80(m,4H),6.77(d,J=7.9Hz,1H),4.40−4.20(m,6H),3.92(s,6H),3.80(s,3H),3.60−3.27(m,6H),2.48−2.29(m,2H)。
【0505】
(実施例5)
【化79】
【0506】
(a)(11S,11aS)−2,2,2−トリクロロエチル11−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−8−(5−((11S,11aS)−11−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−7−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−5−オキソ−10−((2,2,2−トリクロロエトキシ)カルボニル)−5,10,11,11a−テトラヒドロ?1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ)ペンチルオキシ)−7−メトキシ−5−オキソ−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−11,11a−ジヒドロ−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−10(5H)−カルボキシラート(21)
固体4−メトキシベンゼンボロン酸(59mg、0.39mmol)を溶液Troc保護ビストリフラート(化合物44、国際公開第2006/111759号パンフレット)(600mg、0.41mmol)+炭酸ナトリウム(65mg、0.61mmoml)+パラジウムテトラキストリフェニルホスフィン(0.012mmol)/トルエン(10.8mL)+エタノール(5.4mL)+水(5.4mL)に加えた。この反応混合物を室温で一晩撹拌した。この反応混合物をこのあと酢酸エチルと水とに分配させた。有機層を水及びブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムを入れて乾燥させた。減圧下のロータリーエバポレーターにより過剰溶媒を除去し、得られた残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;勾配溶離EtOAc/ヘキサン20/80→30/70→40/60→60/40)に付して、未反応ビス−トリフラートを除去した。選択されたフラクションから過剰溶離液を除去することによりこの4−メトキシフェニル連結生成物(261mg、0.18mmol、46%)を得た。
【0507】
LC−MS RT 4.17min、1427(M+H);1H−NMR(400MHZ,CDCl)δ 7.38(s,1H),7.33(s,1H),7.31(s,1H),7.30(s,1H),7.25(s,1H),7.20(bs,1H),6.92(d,J=8.6Hz,2H),6.77(d,J=8.7Hz,2H),6.0−5.90(m,2H),5.25(d,J=12.0Hz,1H),5.24(d,J=12.0Hz,1H),4.24(d,J=12.0Hz,1H),4.22(d,J=12.0Hz,1H),4.18−4.08(m,2H),4.07−3.89(m,10H),3.81(s,3H),3.44−3.25(m,2H),2.85(d,J=16.6Hz,2H),2.05−1.90(m,4H),1.76−1.64(m,2H),0.93(s,9H),0.90(s,9H),0.30(s,6H),0.26(s,6H)。
【0508】
(b)(11S,11aS)−2,2,2−トリクロロエチル11−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−8−(5−((11S,11aS)−11−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−7−メトキシ−5−オキソ−10−((2,2,2−トリクロロエトキシ)カルボニル)−5,10,11,11a−テトラヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ)ペンチルオキシ)−7−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−5−オキソ−11,11a−ジヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−10(5H)−カルボキシラート(22)
化合物21の合成にはステップ(a)で述べたSuzukiカップリング手順を適用した。化合物20(62.5mg、0.044mmol)を1当量の4−ヒドロキシベンゼンボロン酸(10mg)で30℃にて一晩処理し、シリカゲルのパッドに通して濾過した後、この所望生成物を得た(40mg、0.029mmol、66%収率)。この化合物は、そのまま、次のステップで用いた。
【0509】
LC−MS RT 4.27min、1371(M+H)。
【0510】
(c)(S)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−7−メトキシ−8−(5−((S)−7−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−5−オキソ−5,11a−ジヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ)ペンチルオキシ)−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5(11aH)−オン(23)
カドミウム/鉛カップル(100mg、Q Dong et al. Tetrahedron Letters vol 36,issue 32,5681-5682,1995)を溶液21(40mg、0.029mmol)/THF(1mL)+酢酸アンモニウム(1N、1mL)に加え、この反応混合物を1時間撹拌した。この反応混合物をクロロホルムと水とに分配させ、各相を分離させ、水相をクロロホルムで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムを入れて乾燥させた。減圧下のロータリーエバポレーターにより蒸発させて、粗製生成物を得、これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、0→4%MeOH/CHCl)に付した。減圧下のロータリーエバポレーターにより過剰溶離液を除去して、この所望イミン生成物(17mg 0.023mmol 79%)を得た。
【0511】
LC−MS RT 2.20min、755(M+H);1H−NMR(400MHZ,CDCl)δ 7.89(d,J=3.94Hz,1H),7.89(d,J=4.00Hz,1H),7.53(s,1H),7.52(s,1H),7.38(d,J=8.7Hz,2H),7.33(d,J=8.6Hz,2H),7.28(s,1H),6.90(d,J=8.7Hz,2H),6.84(d,J=8.6Hz,2H),6.82(s,1H),6.81(s,1H),5.68(bs,1H),4.50−4.30(m,2H),4.22−4.00(m,4H),3.93(s,6H),3.82(s,3H),3.69−3.45(m,2H),3.44−3.28(m,2H),2.64−1.88(m,4H),1.77−1.62(m,2H)。
【0512】
(実施例6)
【化80】
【0513】
(a)(11S,11aS)−2,2,2−トリクロロエチル11−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−8−(5−((11S,11aS)−11−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−2−(4−ホルミルフェニル)−7−メトキシ−5−オキソ−10−((2,2,2−トリクロロエトキシ)カルボニル)−5,10,11,11a−テトラヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ)ペンチルオキシ)−7−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−5−オキソ−11,11a−ジヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−10(5H)−カルボキシラート(24)
化合物24の合成には実施例5のステップ(a)で述べたSuzukiカップリング手順を適用した。化合物21(62.5mg、0.044mmol)を1当量の4−ホルミルベンゼンボロン酸(10.5mg)で室温にて一晩処理し、シリカゲルのパッドに通して濾過した後、所望生成物を得た(45mg、0.033mmol、75%収率)。この化合物を、そのまま、次のステップで用いた。
【0514】
LC−MS RT 4.42min、1383(M+H)。
【0515】
(b)4−((S)−7−メトキシ−8−(5−((S)−7−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−5−オキソ−5,11a−ジヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ)ペンチルオキシ)−5−オキソ−5,11a−ジヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−2−イル)ベンズアルデヒド(25)
化合物24を実施例5のステップ(c)で述べた方法で脱保護して、この所望化合物(18mg、0.023mmol、79%)を得た。
【0516】
LC−MS RT 3.18min、768(M+H);1H−NMR(400MHZ,CDCl)δ 9.98(s,1H),7.91(d,J=3.90Hz,1H),7.90−7.80(m,3H),7.68(s,1H),7.60−7.45(m,4H),7.39(s,1H),7.33(d,J=8.7Hz,1H),6.90(d,J=8.7Hz,2H),6.83(s,1H),6.82(s,1H),4.55−4.44(m,1H),4.43−4.36(m,1H),4.23−4.00(m,4H),3.95(s,3H),3.94(s,3H),3.82(s,3H),3.66−3.51(m,2H),3.50−3.34(m,2H),2.05−1.87(m,4H),1.76−164(m,2H)。
【0517】
(実施例7)
【化81】
【0518】
(a)(11S,11aS)−2,2,2−トリクロロエチル2−(3−アミノフェニル)−11−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−8−(5−((11S,11aS)−11−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−7−メトキシ−5−オキソ−10−((2,2,2−トリクロロエトキシ)カルボニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−5,10,11,11a−テトラヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ)ペンチルオキシ)−7−メトキシ−5−オキソ−11,11a−ジヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−10(5H)−カルボキシラート(26)
化合物26の合成には、3−アミノベンゼンボロン酸を用いて、実施例5のステップ(a)で述べたSuzukiカップリング手順を適用して、この所望化合物を41%収率(230mg、0.163mmol)で得た。
【0519】
LC−MS RT 4.28min、1411(M+H);1H−NMR(400MHZ,CDCl)δ 7.44(bs,1H),7.29(s,1H),7.25(s,1H),7.20(s,1H),7.16(t,J=7.9Hz,1H),6.84−6.73(m,3H),6.70(bs,1H),6.62(dd,J=7.9,1.7Hz,1H),6.66−6.58(m,2H),5.25(d,J=12.0Hz,1H),5.24(d,J=12.0Hz,1H),4.24(d,J=12.0Hz,1H),4.22(d,J=12.0Hz,1H),4.17−4.07(m,2H),4.08−3.89(m,10H),3.43−3.28(m,2H),2.85(d,J=1.65Hz,2H),2.07−1.90(m,4H),1.78−1.63(m,2H),0.94(s,9H),0.90(s,9H),0.30(s,6H),0.27(s,6H)。
【0520】
(b)(11S,11aS)−2,2,2−トリクロロエチル2−(3−アミノフェニル)−11−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−8−(5−((11S,11aS)−11−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−2−(4−(3−(ジメチルアミノ)プロポキシ)フェニル)−7−メトキシ−5−オキソ−10−((2,2,2−トリクロロエトキシ)カルボニル)−5,10,11,11a−テトラヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ)ペンチルオキシ)−7−メトキシ−5−オキソ−11,11a−ジヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−10(5H)−カルボキシラート(27)
固体4−[3−(ジメチルアミノ)プロポキシベンゼンボロン酸ピナコールエステル(25mg、0.082mmol)を溶液26(73mg、0.052mmolmmol)+炭酸ナトリウム(18mg、0.17mmol)+パラジウムテトラキストリフェニルホスフィン(3mg)/トルエン(1mL)+エタノール(0.5mL)+水(0.5mL)に加えた。この反応混合物を室温で一晩撹拌した。この反応混合物をこのあと酢酸エチルと水とに分配させた。有機層を水及びブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムを入れて乾燥させた。減圧下のロータリーエバポレーターにより過剰溶媒を除去し、得られた残留物をクロロホルム/メタノールでのシリカゲルプラグに通して溶離させた。選択されたフラクションから過剰溶離液を除去して、この4−メトキシフェニル連結生成物(50mg、0.035mmol、67%)を得た。
【0521】
LC−MS RT 4.12min、1440(M+H)。
【0522】
(c)(S)−2−(3−アミノフェニル)−8−(5−((S)−2−(4−(3−(ジメチルアミノ)プロポキシ)フェニル)−7−メトキシ−5−オキソ−5,11a−ジヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ)ペンチルオキシ)−7−メトキシ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5(11aH)−オン(28)
化合物27を実施例5のステップ(c)で述べた方法で脱保護して、この所望化合物を得た。この反応混合物をDCMと炭酸水素ナトリウム水溶液(エマルジョン)とに分配させ、粗製生成物をシリカゲルでの勾配カラムクロマトグラフィー(5%メタノールクロロホルム→35%メタノール/クロロホルム)により精製して、この所望不斉PBDイミン(50mg、0.018mmol、58%)を得た。
【0523】
LC−MS RT 2.55min、826(M+H);1H−NMR(400MHZ,CDCl)δ 7.92−7.82(m,2H),7.52(bs,2H),7.45(bs,1H),7.39(bs,1H),7.31(d,J=8.6Hz,2H),7.14(t,J=7.8Hz,1H),6.89(d,J=8.6Hz,2H),6.85−6.75(m,3H),6.72(bs,1H),6.60(d,J=8.0Hz,1H),4.46−4.33(m,2H),4.21−3.98(m,6H),3.94(s,6H),3.63−3.50(m,2H),3.43−3.29(m,2H),2.64−2.48(m,2H),2.34(s,6H),2.10−1.89(m,6H),1.57(m,2H)。
【0524】
(実施例8)
【化82】
【0525】
(a)(11S,11aS)−2,2,2−トリクロロエチル2−(3−アミノフェニル)−11−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−8−(5−((11S,11aS)−11−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−7−メトキシ−2−(4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)−5−オキソ−10−((2,2,2−トリクロロエトキシ)カルボニル)−5,10,11,11a−テトラヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ)ペンチルオキシ)−7−メトキシ−5−オキソ−11,11a−ジヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−10(5H)−カルボキシラート(29)
実施例7のステップ(b)の方法を実行し、シリカゲルのプラグに通して(1/3メタノール/クロロホルムで)濾過し、減圧下のロータリーエバポレーターにより過剰溶媒を除去することによりこの所望生成物(58mg、0.040mmol、78%)を得た。
【0526】
LC−MS RT 4.08min、1439(M+H)。
【0527】
(b)(S)−2−(3−アミノフェニル)−7−メトキシ−8−(5−((S)−7−メトキシ−2−(4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)−5−オキソ−5,11a−ジヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ)ペンチルオキシ)−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5(11aH)−オン(30)
実施例7のステップ(c)の方法を用いて化合物29を脱保護した。この粗製生成物をシリカゲル勾配クロマトグラフィー(2%メタノールクロロホルム→35%メタノール/クロロホルム)により精製して、この所望不斉PBDイミン(18mg、0.022mmol、59%)を得た。
【0528】
LC−MS RT 2.52min、823(M+H);1H−NMR(400MHZ,CDCl)δ 7.80(d,J=3.8Hz,2H),7.45(s,2H),7.38(s,1H),7.30(s,1H),7.23(d,J=8.6Hz,2H),7.07(t,J=7.8Hz,1H),6.83(d,J=8.6Hz,2H),6.79−6.89(m,3H),6.65(s,1H),6.54(d,J=7.9Hz,1H),4.40−4.24(m,2H),4.15−3.93(m,4H),3.87(s,6H),3.56−3.42(m,2H),3.37−3.23(m,2H),3.22−3.08(m,4H),2.61−2.41(m,4H),2.29(s,3H),1.98−1.80(m,4H),1.67−1.54(m,2H)。
【0529】
(実施例9)
【化83】
【0530】
(a)(S)−2−(4−(アミノメチル)フェニル)−7−メトキシ−8−(3−((S)−7−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−5,11−ジオキソ−10−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−5,10,11,11a−テトラヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ)プロピルオキシ)−10−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5,11(10H,11aH)−ジオン(31)
固体4−アミノメチルベンゼンボロン酸ヒドロクロリド(0.111g、0.59mmol)を溶液17(0.394g、0.37mmol)+炭酸ナトリウム(175mg、1.654mmol)+パラジウムテトラキストリフェニルホスフィン(28.0mg、0.024mmol)/トルエン(10mL)+エタノール(5mL)+水(5mL)に加えた。この反応混合物を一晩30℃で撹拌した。次の日、この反応混合物をさらに3時間70℃で加熱した。この反応混合物をこのあと酢酸エチルと水とに分配させた。有機層を水及びブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムを入れて乾燥させた。減圧下のロータリーエバポレーターにより過剰溶媒を除去し、得られた残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;勾配溶離EtOAc/ヘキサン2/98→15/85)に付した。選択されたフラクションから過剰溶離液を除去して、この所望生成物(0.230mg、0.22mmol、61%)を得た。
【0531】
LC−MS RT 3.63min、1034(M+2H);1H−NMR(400MHz,DMSO d)δ 11.7( (s,2H),7.52(d,J=8.2Hz,2H),7.48(d,J=8.7Hz,2H),7.40(s,1H),7.50(d,J=8.1Hz,2H),7.38−7.19(m,5H)6.93(d,J=8.7Hz,2H),5.40(d,J=2.13Hz,1H),5.38(d,J=2.12Hz,1H),5.32(d,J=10.6Hz,2H),5.25(d,J=10.6Hz,2H),4.87−4.72(m,2H),4.35−4.15(m,4H),3.85(s,6H),3.79(s,3H),3.73−3.56(m,2H),3.55−3.39(m,4H),3.22−3.02(m,2H),2.39−2.23(m,2H),0.94−0.67(m,4H),−0.06(s,18H)。
【0532】
(b)(S)−2−(4−(アミノメチル)フェニル)−7−メトキシ−8−(3−((S)−7−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−5−オキソ−5,11a−ジヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ)プロピルオキシ)−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5(11aH)−オン(32)
実施例1のステップ(c)に従って化合物31を脱保護した。この粗製生成物を勾配カラムクロマトグラフィー(5/95→30/70MeOH/CHCl)により精製して、この生成物をイミンとカルビノールアミンメチルエーテルの混合物として得た。
【0533】
LC−MS RT 2.58min、740(M+H)。
【0534】
(実施例10)
【化84】
【0535】
(S)−2−(4−アミノフェニル)−7−メトキシ−11(S)−スルホ−8−(3−((S)−7−メトキシ−11(S)−スルホ−2−(4−メトキシフェニル)−5−オキソ−5,10,11,11a−テトラヒドロ−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ)プロピルオキシ)−1H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5(11aH)−オン二ナトリウム塩(33)
亜硫酸水素ナトリウム(8.5mg、3.1eq)を撹拌懸濁液ビス−イミン11(20mg、0.036mmol)/イソプロパノール(4mL)+水(2mL)に加えた。この反応混合物を激しく撹拌すると、そのうち、透明になった(約1時間)。この反応混合物を漏斗に移し、コットンウォールに通して濾過した(及びそのあと2mLの水で洗浄した)。この濾液を急速冷凍し(液体及びバスに)、凍結乾燥させて、この所望生成物33を一定量の収率で得た。
【0536】
LC−MS RT 11.77min、727.2(M+H)(親化合物の質量、重亜硫酸塩付加物質量分光計では不安定);1H−NMR(400MHz,CDCl)δ 7.66−7.55(m,5H),7.43(s,1H),7.39(d,J=8.66Hz,2H),7.06(m,2H),6.93(d,J=8.84Hz,2H),6.54(m,2H),5.29−5.21(m,2H),4.32−4.28(m,2H),4.14−4.20(m,4H),3.96−3.83(m,2H),3.77(s,3H),3.73(m,6H),3.52−3.43(m,2H),3.30−3.08(m,2H),2.24−2.21(m,2H)。
【0537】
(実施例11)
【化85】
【0538】
(a)(S)-2-(2-アミノフェニル)-7-メトキシ-8-(3-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5,11-ジオキソ-10-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-5,10,11,11a-テトラヒドロ-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-10-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5,11(10H,11aH)-ジオン(103):
エタノール(5mL)、トルエン(5mL)及び水(5mL)中のモノトリフレート(17)(380mg)、2-アミノフェニルボロン酸のピナコールエステル(124mg)及び炭酸ナトリウム(120mg)の混合物に、触媒量のテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(11.2mg)を添加した。反応混合物を室温で一夜、そして40℃で反応が完結するまで(約2時間)撹拌したままにした。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、有機層を水及びブラインで洗浄した。酢酸エチル溶液を硫酸マグネシウム上で乾燥し、真空下で濾過した。減圧下にロータリー蒸発によって酢酸エチルを除去して粗生成物を得て、それをフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン)にかけた。純粋な画分を集め、一緒にした。過剰な溶離液を減圧下でのロータリー蒸発により除去して、純粋な生成物(103)を得た(330mg、収率86%)。LC/MS RT:4.17分、ES+1018.48。
【0539】
(b)(S)-2-(2-アミノフェニル)-7-メトキシ-8-(3-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5(11aH)-オン(104):
2-アナリノ化合物(103)(300mg)の無水テトラヒドロフラン(5mL)溶液に、スーパーヒドリド(Superhydride)の無水テトラヒドロフラン溶液(1.0M、4.4当量)を、不活性雰囲気下に-78℃で添加した。還元が徐々に進行するにつれて、水素化ホウ素リチウム(20当量)のアリコートを添加し、反応混合物を室温に戻した。反応混合物に水/氷を添加して未反応のヒドリドを失活させ、反応物をジクロロメタンで希釈した。有機層を水(2回)、クエン酸及びブラインで逐次的に洗浄した。過剰のジクロロメタンを、減圧下でのロータリー蒸発によって除去し、残留物をエタノール及び水に再溶解し、シリカゲルで96時間処理した。反応混合物を真空で濾過し、濾液を蒸発乾固した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム/メタノールでのグラジエント)にかけた。純粋な画分を集め、一緒にし、過剰な溶離液を減圧下でのロータリー蒸発により除去して、純粋な生成物(104)を得た(30mg、収率14%)。LC/MS RT:2.90分、ES+726.09。
【0540】
(実施例12:代表PBD化合物のインビトロ細胞傷害の測定)
K562アッセイ
K562ヒト慢性骨髄白血病細胞を、5%CO含有加湿雰囲気中の37℃にある、10%ウシ胎仔血清及び2mMグルタミンが補充されたRPM1 1640培地に保持し、指定された用量の薬物と共に1時間又は96時間37℃の暗闇でインキュベートした。このインキュベーションを遠心分離(5min、300g)により停止させ、細胞を、1回、薬物不含有培地で洗浄した。適切に薬物処理した後、その細胞を96ウェルマイクロタイタープレート(1ウェル当たり10細胞、1サンプル当たり8ウェル)に移した。プレートをこのあと5%CO含有加湿雰囲気中37℃の暗闇で保管した。このアッセイは、黄色可溶性テトラゾリウム塩である3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムブロミド(MTT、Aldrich−Sigma)を不溶性紫色ホルマザン沈殿物[formazan precipitate]に還元する生存細胞の能力に基づくものである。各プレートを4日間インキュベートした後(対照細胞の数をおよそ10倍に増やすために)、20μLのMTT溶液(リン酸緩衝生理食塩水中5mg/mL)を各ウェルに加え、このプレートをさらに5時間インキュベートした。このプレートをこのあと5min間300gで遠心分離し、細胞プレートから培地の大部分をピペット取り出しして1ウェル当たり10〜20μLを残した。DMSO(200μL)を各ウェルに加え、完全混合を確実なものにするためサンプルを撹拌した。このあとTitertek MultiscELISAプレート読み取り機で光学密度を550nmの波長で読み取って、用量−応答曲線を作成した。それぞれの曲線に対して、IC50値を、最終光学密度を対照値の50%まで低減させるのに必要とされる用量として読み取った。
【0541】
このアッセイでは化合物13は30pMのIC50を有している。
【0542】
A2780アッセイ
A2780親細胞を、Corning Cellbind 75cmフラスコ中の約10%Foetal Calf Serum(FCS)及び約1%200mM L−Glutamine溶液含有Dulbecco’s Modified Eagles’Medi(DMEM)で増殖させた。
【0543】
190μl細胞懸濁液を96ウェルプレート(Nunc 96F平坦底TCプレート)のカラム2〜11の各ウェルに加えた(1×10で)。190μlの培地をカラム1及び12の各ウェルに加えた。この培地はDulbecco’s Modified Eagles’Medi(DMEM)(これには約10%Foetal Calf Serum(FCS)及び約1%200mM L−Glutamine溶液が含まれている)であった。
【0544】
プレートを一晩37℃でインキュベートし、そのあと細胞が付着している場合は薬物を加えた。200μMの試験化合物溶液(100%DMSO中)を96ウェルプレートに沿って連続希釈した。各得られたポイントをこのあとさらに滅菌蒸留水(SDW)に1/10希釈した。
【0545】
細胞ネガティブブランクウェル及び化合物ネガティブコントロールウェルには、10%DMSOを5%v/vで加えた。アッセイプレートを加湿インキュベーター中で次の期間(72時間)5%CO中の37℃でインキュベートした。インキュベーションの後、各ウェルにMTT溶液を1.5μMの最終濃度まで加えた。プレートをこのあと加湿インキュベーター中で5%COの37℃でさらに4時間インキュベートした。培地をこのあと取り出して、染料を200μl DMSO(99.99%)に溶かした。
【0546】
Envisionプレート読み取り機を用いて540nmの吸光度でプレートを読み取った。Microsoft Excel及びGraphPad Prismを用いてデータを解析し、IC50値を得た。
【0547】
このアッセイでは化合物11は11.7pMのIC50を有している。
【0548】
腎細胞及びAML細胞株のアッセイ
種々の遊離薬物化合物の細胞障害性を、腎細胞がん細胞株786-O、ホジキンリンパ腫細胞株L428、並びに2種のAML細胞株HL60及びHELについて試験した。96時間のアッセイで、対数増殖期の培養細胞を、20%FBSで補足された150μLのRPMI1640を含む96ウェルプレート中に24時間播種した。試験物(すなわち、遊離薬物)の細胞培養培地での逐次希釈液を、4種の試験濃度で調製し、50μLの各希釈液を96ウェルプレートに添加した。試験物の添加に続いて、細胞を、試験物と共に37℃で4日間インキュベートした。次いで、各ウェルにリサズリンを50μMの最終濃度になるように添加し、プレートを37℃でさらに4時間インキュベートした。次いで、Fusion HTプレートリーダー(Packard Instruments、Meridien、コネティカット州、米国)を用い、それぞれ530及び590nmの励起及び発光波長で、プレートを染料還元の度合いについて読み取った。三つ組みで測定されたIC50値を、本明細書では、未処理対照に比較して50%の細胞増殖低下をもたらす濃度と定義する。
【0549】
次表1を参照すると、このアッセイで、パラ-アニリン化合物11は、メタ-アニリン化合物19に比較して、これらの細胞株に対して著しい活性増加を示した。
【表1】
【0550】
次表2には、化合物28、30及び32のL428、786-O、HEL、HL-60及びMCF-7細胞に対する活性、並びに化合物19のMCF-7細胞に対する活性が示されている。
【表2】
【0551】
次表3では、化合物23、25の786-O、Caki-1、MCF-7、HL-60、THP-1、HEL、及びTF1細胞に対する活性が、化合物11のそれと比較されている。細胞を、側面が黒で底が透明の96ウェルプレート(Costar、Corning)中のウェル当たり150μLの増殖培地に播種し、バイオキャビネット中に1時間静置した後、37℃、5%CO2のインキュベーター中に配置した。翌日、4種の濃度の薬物原液を調製し、次いで、8点の用量曲線を作出する10倍逐次希釈液として用量設定し、ウェル当たり50μLの二つ組みで添加した。次いで、細胞を、37℃、5%CO2で48時間インキュベートした。細胞障害性は、100μLのCell Titer Glo(Promega)溶液と共に1時間インキュベートすることによる測定であり、次いで、発光をFusion HTプレートリーダー(Perkin Elmer)で測定した。データを、Excel(Microsoft)及びGraphPad(Prism)で処理して、用量-応答曲線を作出し、IC50値を求め、データを集めた。
【表3】
【0552】
実施例13〜16では、次の化合物は、下記に示す通りの化合物番号によって呼ばれる。
【表4】
【0553】
(実施例13):PBD薬物-リンカー化合物の合成
一般情報
以下の実施例では、すべての市販無水溶媒をさらなる精製なしで使用した。分析薄層クロマトグラフィーは、シリカゲル60 F254アルミニウムシート(EMD Chemicals、Gibbstown、ニュージャージー州)を用いて実施した。ラジアルクロマトグラフィーは、Chromatotron装置(Harris Research、Palo Alto、カリフォルニア州)を用いて実施した。分析HPLCは、Varian ProStar 330 PDA検出器を備えた構成されたVarian ProStar210溶媒送液システムを用いて実施した。サンプルは、C12 Phenomenex Synergi 2.0×150mm、4μm、80Å、逆相カラムで溶離した。酸性移動相は、双方とも0.05%トリフルオロ酢酸又は0.1%ギ酸のどちらか(各化合物に対して示される)を含むアセトトリル及び水から構成した。化合物は、注入1分後の5%から11分の時点の95%までの酸性アセトニトリルでの線形グラジエント、それに続く15分までの95%アセトニトリルでのアイソクラティックで溶離した(流速=1.0mL/分)。LC/MSは、C12 Phenomenex Synergi 2.0×150mm、4μm、80Åの逆相カラムを備えたHP Agilent 1100 HPLC装置に連結されたZMD Micromass質量分光計を用いて実施した。酸性溶離液は、(5%〜95%)アセトニトリル/0.1%ギ酸水での10分間にわたる線形グラジエント、それに続く95%アセトニトリルでの5分間のアイソクラティックから構成した(流速=0.4mL/分)。分取HPLCは、Varian ProStar 330 PDA検出器を備えて構成されたVarian ProStar210溶媒送液システムを用いて実施した。生成物は、C12 Phenomenex Synergi 10.0×250mm、4μm、80Åの逆相カラムを用い、0.1%ギ酸/水(溶媒A)及び0.1%ギ酸/アセトニトリル(溶媒B)で溶離して精製した。精製方法は、溶媒A/溶媒Bが、0〜5分では90/10、5〜80分では90/10〜10/90のグラジエント、それに続く5分間の10/90でのアイソクラティックから構成した。流速は、4.6mL/分とし、254nmで監視した。NMRスペクトルデータは、Varian Mercury 400 MHz分光計で集めた。カップリング定数(J)はヘルツで報告する。
【化86】
【0554】
(S)-2-((S)-2-(6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサンアミド)-3-メチルブタンアミド)プロパン酸(36):
10.6mLの無水DMFに溶解したVal-Alaジペプチド(34)(200mg、1.06mmol)の溶液に、マレイミドカプロイルNHSエステル(35)(327mg、1.06mmol)を添加した。次いで、ジイソプロピルエチルアミン(0.92mL、5.3mmol)を添加し、反応物を窒素下に外界温度で18時間撹拌した。この時点で、TLC及び分析HPLCは、出発原料の消失を明らかにした。反応物を0.1M HCl(100mL)で希釈し、水層を酢酸エチル(100mL、3×)で抽出した。合わせた有機層を水及びブラインで洗浄し、次いで硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濃縮した。粗生成物を最小量の塩化メチレンに溶解し、CH2Cl2/MeOH混合物(95/5〜90/10のCH2Cl2/MeOH)で溶離する2mm Chromatotronプレートでのラジアルクロマトグラフィーによって精製し、油状残渣として(36)を得た(158mg、39%)。TLC:Rf=0.26、10%MeOH/CH2Cl21H NMR(CDCl3) δ (ppm) 0.95(d, J=17Hz, 3H), 0.98(d, J=17Hz, 3H), 1.30(m, 2H), 1.40(d, J=17Hz, 3H), 1.61(m, 4H), 2.06(m, 1H), 2.25(dt, J=4, 19Hz, 2H), 3.35(s, 1H), 3.49(t, J=17Hz, 2H), 4.20(d, J=18Hz, 1H), 4.38(m, 1H), 6.80(s, 2H)。分析HPLC (0.1%ギ酸): tR 9.05分。LC-MS: tR 11.17分、m/z (ES+) 実測値381.9(M+H)+、m/z (ES-) 実測値379.9(M-H)-
【0555】
6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-N-((S)-1-(((S)-1-((4-((S)-7-メトキシ-8-(3-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5-,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)ヘキサンアミド(38):
火炎で乾燥した10mLフラスコに、(36)(3.6mg、9.5μmol)、EEDQ(2.8mg、11.4μmol)、及び0.33mLの無水CH2Cl2を仕込んだ。溶解を促進するため、メタノール(4滴、約80μL)を添加し、混合物を窒素下で1時間撹拌した。次いで、PBD二量体(37)(5.7mg、7.9μmol)を添加し、反応物を室温で6時間撹拌した、この時点で、LC-MSは生成物への転化を明らかにした。反応物を濃縮し、最小量のCH2Cl2に溶解し、CH2Cl2/MeOH混合物(100/0〜90/10のCH2Cl2/MeOH)で溶離する1mm Chromatotronプレートでのラジアルクロマトグラフィーによって精製して、薬物-リンカー(38)を得た(3.9mg、45%)。TLC:Rf=0.06、5%MeOH/CH2Cl2。分析HPLC(0.1%ギ酸):tR 11.51分。LC-MS:tR12.73分、m/z(ES+) 実測値1089.6(M+H)+、m/z(ES-) 実測値1087.3(M-H)-
【化87】
【0556】
6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-N-(4-((S)-7-メトキシ-8-(3-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)ヘキサンアミド(40):
火炎で乾燥した10mLフラスコに、1.4mLの10%MeOH/CHCl3溶媒混合物に溶解したPBD二量体(37)(25mg、34.4μmol)を添加した。マレイミドカプロン酸(39)(7.3mg、34.4μmol)、続いてEEDQ(10.2mg、41.3μmol)及びピリジン(6μL、68.8μmol)を添加した。反応物を窒素雰囲気下に室温で14時間撹拌した。この時点で、LC-MSは生成物への転化を明らかにした。反応物を濃縮し、最小量のCH2Cl2に溶解し、CH2Cl2/MeOH混合物(100/0〜90/10のCH2Cl2/MeOH)で溶離する1mm Chromatotronプレートでのラジアルクロマトグラフィーによって精製して、薬物-リンカー(40)を得た(14.1mg、45%)。LC-MS:tR12.81分、m/z(ES+) 実測値918.9(M+H)+、m/z(ES-) 実測値917.0(M-H)-
【化88】
【0557】
2-ブロモ-N-(4-((S)-7-メトキシ-8-(3-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)アセトアミド(41):
火炎で乾燥した10mLフラスコに、0.9mLの10%MeOH/CHCl3溶媒混合物に溶解したPBD二量体(37)(16.5mg、22.7μmol)を添加した。ブロモ酢酸(3.2mg、22.7μmol)を、続いてEEDQ(6.8mg、27.2μmol)を添加した。反応物を窒素雰囲気下に室温で4時間撹拌した。この時点で、LC-MSは生成物への転化を明らかにした。反応物を濃縮し、最小量のCH2Cl2に溶解し、CH2Cl2/MeOH混合物(100/0〜95/5のCH2Cl2/MeOH)で溶離する1mm Chromatotronプレートでのラジアルクロマトグラフィーによって精製して、薬物リンカー(41)を得た(9.9mg、52%)。TLC:Rf=0.09、5%MeOH/CH2Cl2。LC-MS:tR12.44分、m/z(ES+) 実測値848.1(M+H)+、m/z(ES-) 実測値845.7(M-H)-
【化89】
【0558】
6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-N-((S)-1-(((S)-1-((3-((S)-7-メトキシ-8-(3-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)ヘキサンアミド(43):
火炎で乾燥した10mLフラスコに、酸(36)(3.6mg、9.4μmol)、EEDQ(2.8mg、11.3μmol)、及び0.38mLの無水CH2Cl2(1%のメタノールを含む)を仕込んだ。反応物を窒素下で1時間撹拌した。次いで、PBD二量体(42)(6.8mg、9.4μmol)を添加し、反応物を室温で2時間撹拌し、この時点で、LC-MSは生成物への転化を明らかにした。反応物を濃縮し、最小量のCH2Cl2に溶解し、CH2Cl2/MeOH混合物(100/0〜90/10のCH2Cl2/MeOH)で溶離する1mm Chromatotronプレートでのラジアルクロマトグラフィーによって精製して、薬物リンカー(43)を得た(3.1mg、30%)。TLC:Rf=0.31、10%MeOH/CH2Cl2。分析HPLC(0.1%ギ酸):tR 11.49分。LC-MS:tR12.28分、m/z(ES+) 実測値1089.5(M+H)+、m/z(ES-) 実測値1087.3(M-H)-
【化90】
【0559】
6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-N-(3-((S)-7-メトキシ-8-(3-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)ヘキサンアミド(44):
火炎で乾燥した10mLフラスコに、0.44mLの10%MeOH/CH2Cl2溶媒混合物に溶解したPBD二量体(42)(8.0mg、11μmol)を添加した。マレイミドカプロン酸(39)(2.3mg、11μmol)、続いてEEDQ(3.3mg、13.2μmol)及びピリジン(1.8μL、22μmol)を添加した。反応物を窒素雰囲気下に室温で3時間撹拌した。この時点で、LC-MSは生成物への転化を明らかにした。反応物をCH2Cl2/MeOH混合物(100/0〜90/10のCH2Cl2/MeOH)で溶離する1mm Chromatotronプレートでのラジアルクロマトグラフィーによって精製して、薬物リンカー化合物(44)を得た(1.2mg、12%)。TLC:Rf=0.45、10%MeOH/CH2Cl2。分析HPLC(0.05%トリフルオロ酢酸):tR 11.71分。LC-MS:tR12.63分、m/z(ES+) 実測値919.1(M+H)+、m/z(ES-) 実測値917.1(M-H)-
【化91】
【0560】
(2S,3R,4S,5R,6R)-2-(2-(3-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)プロパンアミド)-4-((((3-((S)-7-メトキシ-8-(3-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)カルバモイル)オキシ)メチル)フェノキシ)-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリルトリアセテート(46):
火炎で乾燥したフラスコに、グルクロニドリンカー中間体(45)(参考文献:Jeffreyら、Bioconjugate Chemistry、2006、17、831〜840)(15mg、20μmol)、1.4mLの無水CH2Cl2、ピリジン(20μL、240μmol)を仕込み、次いで、窒素下で-78℃まで冷却した。次いで、ジホスゲン(3.0μL、24μmol)を添加し、反応物を-78℃で2時間撹拌した。その後の時点で、少量のアリコートをメタノールで失活させ、クロロギ酸グルクロニドの形成を確証する炭酸メチルの形成をLC-MSで分析した。次いで、PBD二量体(42)(15mg、20μmol)を0.7mLの無水CH2Cl2に溶解し、反応容器に滴加した。反応物を2時間かけて0℃まで暖め、次いで、50mLのCH2Cl2で希釈した。
【0561】
有機層を、水(50mL)、ブライン(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濃縮した。粗反応生成物を、10%MeOH/CH2Cl2で溶離する1mm Chromatotronプレートでのラジアルクロマトグラフィーによって精製して(46)を得た(5.7mg、19%)。TLC:Rf=0.47、10%MeOH/CH2Cl2。分析HPLC(0.1%ギ酸):tR 12.09分、LC-MS:tR 14.05分、m/z(ES+) 実測値1500.3(M+H)+
【0562】
(2S,3S,4S,5R,6S)-6-(2-(3-アミノプロパンアミド)-4-((((3-((S)-7-メトキシ-8-(3-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)カルバモイル)オキシ)メチル)フェノキシ)-3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸(47):
それぞれ0.2mLのMeOH、テトラヒドロフラン及び水からなる溶媒混合物に溶解した(46)(5.7mg、3.8μmol)を含むフラスコを0℃まで冷却した。撹拌された溶液に、水酸化リチウム一水和物(0.8mg、19μmol)を添加し、反応物を室温で4時間撹拌した。この時点で、LC-MSは生成物への転化を示した。氷酢酸(1.1μL、19μmol)を添加し、反応物を濃縮して(47)を得た。これを、さらなる精製なしで次に進めた。LC-MS:tR 11.59分、m/z(ES+) 実測値1138.4(M+H)+
【0563】
(2S,3S,4S,5R,6S)-6-(2-(3-(6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサンアミド)プロパンアミド)-4-((((3-((S)-7-メトキシ-8-(3-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)カルバモイル)オキシ)メチル)フェノキシ)-3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸(48):
0.38mLの無水DMFに溶解した(47)(4.3mg、3.8μmol)の溶液に、マレイミドカプロイルNHSエステル(35)(1.2mg、3.8μmol)、続いてジイソプロピルエチルアミン(4.0μL、22.8μmol)を添加した。反応物を窒素下に室温で2時間撹拌した。この時点で、LC-MSは生成物への転化を明らかにした。反応物を、アセトニトリル(0.5mL)、DMSO(1mL)、水(0.5mL)の混合物で希釈し、次いで、分取HPLCで精製した。移動相は、双方とも0.1%のギ酸を含むA=水及びB=アセトニトリルから構成した。A/Bが75分間で90/10〜10/90となる線形溶離グラジエントを採用し、所望の生成物を含む画分を凍結乾燥して薬物-リンカー化合物(48)を得た(1.2mg、2ステップで24%)。分析HPLC(0.1%ギ酸):tR 10.85分。LC-MS:tR 12.12分、m/z(ES+) 実測値1331.4(M+H)+、m/z(ES-) 実測値1329.5(M-H)-
【化92】
【0564】
6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-N-((S)-1-(((S)-1-((3-((S)-7-メトキシ-8-((5-(((S)-7-メトキシ-2-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)ペンチル)オキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)ヘキサンアミド(51):
火炎で乾燥した10mLフラスコに、酸(36)(2.7mg、7.1μmol)、EEDQ(2.1mg、8.5μmol)、及び0.28mLの無水CH2Cl2(1%のメタノールを含む)を仕込んだ。反応物を窒素下で1時間撹拌し、次いで、PBD二量体(49)(5.8mg、7.1μmol)を添加し、反応物を室温で20時間撹拌した。この時点で、LC-MSは生成物への転化を明らかにした。反応物を濃縮し、次いで、分取HPLCで精製し、所望の生成物を含む画分を凍結乾燥して薬物リンカー化合物(51)を得た(2.7mg、32%)。分析HPLC(0.1%ギ酸):tR 9.17分。LC-MS:tR11.25分、m/z(ES+) 実測値1185.3(M+H)+、m/z(ES-) 実測値1182.9(M-H)-
【0565】
N-((S)-1-(((S)-1-((3-((S)-8-((5-(((S)-2-(4-(3-(ジメチルアミノ)プロポキシ)フェニル)-7-メトキシ-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)ペンチル)オキシ)-7-メトキシ-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)-6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサンアミド(52):
火炎で乾燥した10mLフラスコに、酸(36)(3.7mg、9.7μmol)、EEDQ(2.9mg、11.6μmol)、及び0.4mLの無水CH2Cl2(1%のメタノールを含む)を仕込んだ。反応物を窒素下で1時間撹拌し、次いで、PBD二量体(50)(8.0mg、9.7μmol)を添加し、反応物を室温で6時間撹拌した。この時点で、LC-MSは生成物の存在を明らかにした。反応物を濃縮し、次いで、分取HPLCで精製し、所望の生成物を含む画分を凍結乾燥して薬物-リンカー化合物(52)を得た(3.1mg、25%)。分析HPLC(0.1%ギ酸):tR 9.45分。LC-MS:tR11.75分、m/z(ES+) 実測値1188.4(M+H)+、m/z(ES-) 実測値1186.0(M-H)-
【化93】
【0566】
4-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-N-((S)-1-(((S)-1-((4-((S)-7-メトキシ-8-(3-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)ベンズアミド(54):
火炎で乾燥した10mLフラスコに、0.33mLの5%MeOH/CH2Cl2溶媒混合物に溶解したリンカーフラグメント(53)(7.7mg、20μmol)を添加した。EEDQ(6.1mg、25μmol)を添加し、反応物を窒素下に室温で15分間撹拌した。この時点で、PBD二量体(37)(12mg、16.5μmol)を添加した。反応物を窒素雰囲気下に室温でさらに3時間撹拌した。この時点で、LC-MSは生成物への転化を明らかにした。反応物を、CH2Cl2/MeOH混合物(100/0〜90/10のCH2Cl2/MeOH)で溶離する1mm Chromatotronプレートでのラジアルクロマトグラフィーによって精製して(54)を得た(2.4mg、13%)。TLC:Rf=0.44、10%MeOH/CH2Cl2。分析HPLC(0.05%トリフルオロ酢酸):tR 11.53分。LC-MS:tR 12.61分、m/z(ES+) 実測値1095.4(M+H)+、m/z(ES-) 実測値1093.9(M-H)-
【0567】
(S)-2-(2-ヨードアセトアミド)-N-((S)-1-((4-((S)-7-メトキシ-8-(3-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)-3-メチルブタンアミド(56):
火炎で乾燥したフラスコに、0.37mLの5%MeOH/CH2Cl2溶媒混合物に溶解したリンカー(55)(7.8mg、22μmol)を仕込んだ。EEDQ(6.8mg、27.5μmol)を添加し、反応物を窒素下に室温で15分間撹拌した。この時点で、PBD二量体(37)(13mg、18μmol)を添加した。反応物を窒素雰囲気下に室温でさらに4時間撹拌した。この時点で、LC-MSは生成物への転化を明らかにした。反応物を、CH2Cl2/MeOH混合物(100/0〜80/20のCH2Cl2/MeOH)で溶離する1mm Chromatotronプレートでのラジアルクロマトグラフィーによって精製して(56)を得た(3.5mg、18%)。分析HPLC(0.1%ギ酸):tR 11.43分。LC-MS:tR 12.49分、m/z(ES+) 実測値1064.6(M+H)+、m/z(ES-) 実測値1098.9(M+2H2O-H)-
【化94】
【0568】
6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-N-((S)-1-(((S)-1-((4-((S)-7-メトキシ-8-((5-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)ペンチル)オキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)ヘキサンアミド(58):
火炎で乾燥した10mLフラスコに、0.33mLの5%MeOH/CH2Cl2溶媒混合物に溶解したリンカーフラグメント(36)(19mg、50μmol)を添加した。EEDQ(12.4mg、50μmol)を添加し、反応物を窒素下に室温で15分間撹拌した。この時点で、PBD二量体(57)(12.5mg、16.6μmol)を添加した。反応物を窒素雰囲気下に室温でさらに5時間撹拌した。この時点で、LC-MSは生成物への転化を明らかにした。反応物を、CH2Cl2/MeOH混合物(100/0〜80/20のCH2Cl2/MeOH)で溶離する1mm Chromatotronプレートでのラジアルクロマトグラフィーによって精製して(58)を得た(2.1mg、11%)。分析HPLC(0.1%ギ酸):tR 12.19分。LC-MS:tR 12.58分、m/z(ES+) 実測値1117.8(M+H)+、m/z(ES-) 実測値1133.7(M+H2O-H)-
【化95】
【0569】
(R)-2-((R)-2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-3-メチルブタンアミド)プロパン酸(60):
火炎で乾燥したフラスコに、Fmoc-D-バリン(200mg、0.59mmol)及び5.9mLの無水THFを仕込んだ。N-ヒドロキシスクシンイミド(75mg、0.65mmol)、続いてジイソプロピルカルボジイミド(0.1mL、0.65mmol)を添加し、反応物を外界温度で一夜撹拌し、この時点で、LC-MSは生成物への転化を明らかにした。反応混合物を、CH2Cl2で希釈し、水(50mL)、ブライン(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮乾固した。この材料はさらなる精製なしに次に進めた。LC-MS:tR 13.89分、m/z(ES+) 実測値437.0(M+H)+。粗Fmoc-D-Val-OSu(0.59mmol)をジメトキシエタン(1.5mL)及びTHF(0.8mL)に溶解した。反応混合物に、2.3mLの水に溶解したD-アラニン(73mg、0.89mmol)、続いて重炭酸ナトリウム(99mg、1.2mmol)を添加した。生じたスラリーを室温で一夜撹拌した。この時点で反応物は澄明になり、LC-MSは反応完結を明らかにした。反応物を50mLのCH2Cl2中に注ぎ、有機層を、50mLの0.1M HCl、次いでブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、次いで濃縮乾固した。粗生成物を、CH2Cl2で溶離する1mm Chromatotronプレートでのラジアルクロマトグラフィーによって精製して(60)を得た(128mg、54%)。TLC:Rf=0.18、10%MeOH/CH2Cl2。分析HPLC(0.1%ギ酸):tR 9.47分。LC-MS:tR 13.09分、m/z(ES+) 実測値411.1(M+H)+、m/z(ES-) 実測値409.2(M-H)-
【0570】
(R)-2-((R)-2-(6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサンアミド)-3-メチルブタンアミド)プロパン酸(61):
保護されたジペプチド(60)(70mg、0.37mmol)を、6mLの無水CH2Cl2に懸濁し、窒素下に氷上で冷却し、2mLのジエチルアミンを滴加した。反応物を室温まで暖め、窒素下で2時間撹拌した。この時点で、HPLCは出発原料の消失を明らかにした。反応物を6mLのクロロホルムで希釈し、濃縮した。粗反応物残渣を、6mLのクロロホルムに再溶解し、2回濃縮し、続いて真空系で2時間乾燥した。次いで、脱保護されたジペプチドを3.7mLの無水DMFに溶解した。次いで、MC-OSu(138mg、0.44.mmol)、続いてジイソプロピルエチルアミン(0.32mL、1.9mmol)を添加した。反応物を窒素雰囲気下に室温で一夜撹拌した。反応物を50mLの0.1M HClに注ぐこと、及び酢酸エチル(50mL、3×)で抽出することによって後処理を行った。合わせた有機層を、水(50mL)及びブライン(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮した。粗生成物を、CH2Cl2/MeOH混合物(99/1〜95/5のCH2Cl2/MeOH)で溶離する1mm Chromatotronプレートでのラジアルクロマトグラフィーによって精製して(61)を得た(14mg、22%)。1H NMR(CD3OD) δ (ppm) 0.94(d, J=14Hz, 3H), 0.98(d, J=14Hz, 3H), 1.29(m, 2H), 1.39(d, J=7.4Hz, 3H), 1.61(m, 4H), 2.05(m, 1H), 2.25(dt, J=1.2, 7.4Hz, 2H), 3.48(t, J=7Hz, 2H), 4.19(m, 1H), 4.37(m, 1H), 6.78(s, 2H)。分析HPLC (0.1%ギ酸): tR 10.04分。LC-MS: tR 11.22分、m/z (ES+) 実測値382.1(M+H)+、m/z (ES-) 実測値380.0(M-H)-
【0571】
6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-N-((R)-1-(((R)-1-((4-((S)-7-メトキシ-8-(3-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)ヘキサンアミド(62):
火炎で乾燥した10mLフラスコに、0.33mLの5%MeOH/CH2Cl2溶媒混合物に溶解したリンカー(61)(9.5mg、25μmol)を添加した。EEDQ(7.3mg、30μmol)を添加し、反応物を窒素下に室温で15分間撹拌した。この時点で、PBD二量体(37)(12mg、16.5μmol)を添加した。反応物を窒素雰囲気下に室温でさらに3時間撹拌した。この時点で、LC-MSは生成物への転化を明らかにした。反応物を、CH2Cl2/MeOH混合物(100/0〜80/20のCH2Cl2/MeOH)で溶離する1mm Chromatotronプレートでのラジアルクロマトグラフィーによって精製して(62)を得た(2.8mg、16%)。TLC:Rf=0.39、10%MeOH/CH2Cl2。分析HPLC(0.1%ギ酸):tR 11.50分。LC-MS:tR 12.50分、m/z(ES+) 実測値1089.7(M+H)+、m/z(ES-) 実測値1088.0(M-H)-
【化96】
【0572】
(S)-2-(6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサンアミド)プロパン酸(64):
L-アラニン(58mg、0.65mmol)を6.5mLの無水DMFに懸濁し、次いでMC-OSu(35)(100mg、0.324mmol)を添加した。ジイソプロピルエチルアミン(0.28mL、1.6mmol)を添加し、反応物を窒素下に室温で一夜撹拌した。次いで、反応物を50mLの0.1M HClで希釈し、次いで水層を酢酸エチル(50mL、3×)で抽出した。次いで、合わせた有機層を、水(50mL)及びブライン(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、次いで濃縮乾固した。反応物を、CH2Cl2/MeOH混合物(97.5/2.5〜90/10のCH2Cl2/MeOH)で溶離する1mm Chromatotronプレートでのラジアルクロマトグラフィーによって精製して(64)を得た(25mg、27%)。1H NMR(CD3OD) δ (ppm) 1.30(m, 2H), 1.37(d, J=7.4Hz, 3H), 1.60(m, 4H), 2.21(t, J=7.4Hz, 2H), 3.48(t, J=7Hz, 2H), 4.35(q, J=7.4Hz, 1H), 6.78(s, 2H)。分析HPLC (0.1%ギ酸): tR 9.06分。
【0573】
6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-N-((S)-1-((4-((S)-7-メトキシ-8-(3-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)ヘキサンアミド(65):
火炎で乾燥した10mLフラスコに、0.66mLの5%MeOH/CH2Cl2溶媒混合物に溶解したリンカー(64)(14mg、50μmol)を添加した。EEDQ(15mg、60μmol)を添加し、反応物を窒素下に室温で15分間撹拌した。この時点で、PBD二量体(37)(24mg、33μmol)を添加した。反応物を窒素雰囲気下に室温でさらに4時間撹拌した。反応物を、CH2Cl2/MeOH混合物(100/0〜90/10のCH2Cl2/MeOH)で溶離する1mm Chromatotronプレートでのラジアルクロマトグラフィーによって精製して(65)を得た(3.5mg、11%)。分析HPLC(0.1%ギ酸):tR 11.40分。LC-MS:tR 12.39分、m/z(ES+) 実測値990.6(M+H)+、m/z(ES-) 実測値989.0(M-H)-
【化97】
【0574】
マレイミドカプロイルスペーサーを介して直接的に連結されたPBD二量体(スキーム14)(57):
PBD二量体(57)を、スキーム2に記載の化学を採用してマレイミドカプロン酸(39)にカップリングさせた。
【化98】
【0575】
6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-N-(2-((S)-7-メトキシ-8-(3-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)ヘキサンアミド(68):
CH2Cl2(300μL)中の(66)(10mg、0.013mmol)の混合物に、DIPEA及びMC-Cl(67)(3mg、0.013mmol)を添加した。1時間後、さらに3当量のDIPEA(7μL)及び2当量の酸クロリド(6mg、0.026mmol)を添加した。1時間後、さらなる量のDIPEA(7μL)及び酸クロリド(6mg、0.026mmol)を添加した。さらに3時間後、反応混合物を、1mmラジアルChromatotronプレート上に直接的に吸引し、ジクロロメタン、続いて(1%〜5%)メタノール/ジクロロメタンのグラジエントで溶離した。生成物を含む画分を、出発アニリンとの混合物として濃縮し、残渣を0.5mLのDMSO、0.5mLのアセトニトリル、及び0.5mLの脱イオン水からなる混合物に溶解し、分取HPLCでさらに精製した。主要ピークを集め、画分を合わせ、凍結乾燥して、2.1mgを得た(18%)。MS(ES+) m/z 919.2 [M+H]+
【0576】
(注)酸クロリド(67)は、100mgの(39)をシュウ酸クロリド(5mL)に溶解して調製した。1滴のDMFを添加し、混合物を外界温度で数時間撹拌した後、減圧下で濃縮した。ジクロロメタンを添加し、混合物を2回濃縮して類白色固体を得て、これを直接使用した。1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ 6.70(s, 2H), 3.46(t, J=7Hz, 2H), 2.82(t, J=7.2Hz, 2H), 1.72(五重線, J=7.6Hz, 2H), 1.61(五重線, J=7.4Hz, 2H), 1.35(五重線, J=7.6Hz, 2H).
【化99】
【0577】
2-(2-アミノアセトアミド)酢酸tert-ブチル(69):
ジクロロメタン(25mL)中のグリシンtert-ブチルエステル塩酸塩(70)(484mg、2.9mmol)の混合物に、Fmoc-Gly-OH(71)(0.861mg、2.99mmol)、DIPEA(756mg、4.35mmol)、及びHATU(1.3g、3.5mmol)を添加した。反応混合物を外界温度で16時間撹拌し、次いで、酢酸エチル中に注ぎ、水(3×)及びブライン(1×)で洗浄した。有機相をMgSO4上で乾燥し、減圧下で濃縮した。生じた残渣を、5%メタノール/ジクロロメタンで溶離する2mmのプレートでのラジアルクロマトグラフィーで精製した。生成物を含む画分を、減圧下で濃縮し、20%ピペリジン/ジクロロメタン(10mL)で1時間処理した後、減圧下で濃縮し、次いで、(5〜10%)メタノール/ジクロロメタンのグラジエントで溶離する2mmのプレートでのラジアルクロマトグラフィーで2回精製して(200mg、37%)を得た。1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ 7.62(s, 1H), 4.00(s, 2H), 3.39(s, 2H), 1.47(s, 9H)。
【0578】
2(2-(6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサンアミド)アセトアミド)酢酸(72):
アミン(69)(200mg、0.11mmol)のDMF(1mL)溶液に(35)(350mg、0.11mmol)を添加し、反応混合物を外界温度で2時間撹拌した。混合物を、減圧下で濃縮し、ジクロロメタンで、及び(1〜5%)メタノール/ジクロロメタンのグラジエントで溶離する1mmのプレートでのラジアルクロマトグラフィーで精製した。生成物を含む画分を、減圧下で濃縮し、ジクロロメタン(4mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(4mL)で処理した。40分後に、混合物を減圧下で濃縮し、生じた残渣をジクロロメタンに溶解し、濃縮して白色固体として22.5mgの(72)を得た(19%)。1H-NMR(400MHz, CD3OD) δ 6.79(s, 2H), 3.93(s, 2H), 3.89(s, 2H), 3.49(t, J=6.8Hz, 2H), 2.26(t, J=6.8Hz, 2H), 1.61(m, 4H), 1.34(m, 2H); MS(ES+) m/z 326.21 [M+H]+
【0579】
6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-N-(2-((2-((4-((S)-7-メトキシ-8-(3-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)アミノ)-2-オキソエチル)アミノ)-2-オキソエチル)ヘキサンアミド(73):
5%メタノール/ジクロロメタン(0.5mL)中の(72)(15mg、0.046mmol)の混合物に、EEDQ(11mg、0.046mmol)を添加し、混合物を外界温度で30分間撹拌した、この時点で、(37)(16mg、0.023mmol)を添加した。反応混合物を3時間撹拌し、(1%〜4%)メタノール/ジクロロメタンのグラジエントで溶離する1mmのラジアルChromatoronプレートで直接的に精製し、黄色固体として6.8mgの(73)を得た(29%)。MS(ES+) m/z 1033.57[M+H]+
【化100】
【0580】
1-((S)-ピロリジン-2-カルボニル)ピロリジン-2-カルボン酸(S)-tert-ブチル(74):
ジクロロメタン(50mL)中のL-プロリン-tert-ブチルエステル塩酸塩(75)(0.5g、2.9mmol)の混合物に、(76)(0.98g、2.99mmol)、DIPEA(756mg、4.35mmol)、及びHATU(1.3g、3.5mmol)を添加した。反応混合物を外界温度で16時間撹拌した。混合物を酢酸エチル(100mL)中に注ぎ、0.2N HCl(50mL)、水(50mL)、ブライン(50mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥した。10%酢酸エチル/ヘキサンで溶離する2mmのラジアルクロマトグラフィープレートでのクロマトグラフィーを実施した。生成物を含む画分を減圧下で濃縮し、ジクロロメタン(8mL)に溶解し、ピペリジン(2mL)で処理した。混合物を1時間撹拌し、減圧下で濃縮し、5%メタノール/ジクロロメタンで溶離する2mmのラジアルChromatotronプレートで精製した。これにより、200mgのジペプチド(74)を得た(26%)。1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ 4.41(m, 1H), 4.17(m, 1H), 3.82(m, 1H), 3.57(m, 4H), 3.2(m, 1H), 2.82(m, 1H), 2.83-1.65(m, 5H), 1.44(m, 9H)。
【0581】
1-((S)-1-(6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサノイル)ピロリジン-2-カルボニル)ピロリジン-2-カルボン酸(S)-tert-ブチル(77):
アミン(74)(200mg、0.75mmol)、(39)(190mg、0.9mmol)及びDIPEA(0.32mL、1.8mmol)の混合物に、HATU(342mg、0.9mmol)を添加し、混合物を外界温度で5時間撹拌した。混合物を酢酸エチル(100mL)中に注ぎ、水(3×100mL)及びブライン(1×100mL)で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、濃縮した。生じた残渣を、ジクロロメタン、続いて(1%〜5%)メタノール/ジクロロメタンでの漸増するグラジエントで溶離する2mmラジアルChromatronプレートでのラジアルクロマトグラフィーにかけた。最初は2mmプレートで、次いで1mmプレートで、双方とも(1%〜5%)メタノール/ジクロロメタンのグラジエントで溶離する2回のさらなる精製により、白色固体として113mgの(77)を得た(33%)。1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ 4.63(m, 1H), 4.41(m, 1H), 3.82(m, 1H), 3.63(m, 1H), 3.55(m, 1H), 3.45(m, 3H), 2.38-1.83(m, 10H), 1.70-1.50(m, 5H), 1.45(m, 9H), 1.35(m, 2H); MS(ES+) m/z 462.33 [M+H]+
【0582】
(S)-1-((S)-1-(6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサノイル)ピロリジン-2-カルボニル)ピロリジン-2-カルボン酸(78):
ジクロロメタン(4mL)中のtert-ブチルエステル(77)の混合物にトリフルオロ酢酸(4mL)を添加した。40分後に、HPLC分析により反応は完結していると判定された。混合物を減圧下で濃縮し、生じた残渣をジクロロメタンに溶解し、2回濃縮して、白色固体として37mgの(78)を得た(100%)。1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ 6.68(s, 2H), 4.62(m, 2H), 3.81(m, 1H), 3.70(m, 1H), 3.57(m, 2H), 3.45(m, 2H), 2.40-1.91(m, 10H), 1.70-1.45(m, 4H), 1.33(m, 2H); MS(ES+) m/z 406.2 [M+H]+
【0583】
1-(1-(6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサノイル)ピロリジン-2-カルボニル)-N-(4-((S)-7-メトキシ-8-(3-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)ピロリジン-2-カルボキサミド(79):
5%メタノール/ジクロロメタン(0.4mL)中の(78)(9.3mg、0.023mmol)の混合物にEEDQ(7mg、0.027mmol)を添加した。混合物を外界温度で15分間撹拌し、次いで、(37)(15mg、0.021mmol)を添加した。混合物を4時間撹拌し、反応混合物をジクロロメタン(2mL)で希釈し、1mmのラジアルChromatoronプレート上に直接的に吸引した。生成物を、(1%〜5%)メタノール/ジクロロメタンのグラジエントで溶離し、黄色固体として6.8mgの(79)を得た(29%)。MS(ES+) m/z 1113.51[M+H]+
【化101】
【0584】
(S)-5-(アリルオキシ)-2-((S)-2-(((アリルオキシ)カルボニル)アミノ)-3-メチルブタンアミド)-5-オキソペンタン酸(80):
ジクロロメタン(10mL)中に懸濁した2-クロロトリチル樹脂(1.0g、1.01mmol)の混合物に、Fmoc-Glu-(Oアリル)-OH(81)(409mg、1.0mmol)及びDIPEA(173μL、1.0mmol)を添加した。反応混合物を5分間振盪し、さらなるDIPEA(260μL、1.5mmol)を添加し、混合物を1時間振盪した。メタノール(0.8mL)を添加し、混合物を5分間振盪した後、濾過し、DMF(6×)、ジクロロメタン(6×)、ジエチルエーテル(6×)で洗浄し、減圧下で乾燥した。生じた樹脂を、20%ピペリジン/ジクロロメタン(10mL)に1時間さらした後、濾過し、DMF(6×)、ジクロロメタン(6×)、ジエチルエーテル(6×)で洗浄し、減圧下で乾燥した。
【0585】
DMF(7mL)中のFmoc-Val-OH(82)(1.03g、3.30mmol)の混合物に、DIPEA(1.0mL)及びHATU(1.1g、3.03mmol)を添加した。徹底的に混合した後、溶液を、上記で調製した樹脂を含む10mLシリンジ中に吸引した。混合物に蓋をし、16時間振盪した。樹脂をDMF(6×)、ジクロロメタン(6×)及びエーテル(6×)で洗浄した。少量(10mg)を単離し、20%TFA/ジクロロメタンで処理し、生じた溶液をLC-MSで分析すると、修正質量(MS(ES+) m/z 509.28[M+H]+)を示す一つの高純度のピークが現れた。次いで、残りの樹脂を20%ピペリジン/DMF(8mL)で2時間処理した後、DMF(6×)、ジクロロメタン(6×)、ジエチルエーテル(6×)で洗浄し、減圧下で乾燥した。
【0586】
ジクロロメタン(10mL)中でクロロギ酸アリル(529μL、5.05mmol)とDIPEA(1.7mL、10mmol)との混合物を調製し、上記の樹脂を含むシリンジ中に吸引した。混合物に蓋をし、振盪した。ほぼ2時間後に、反応混合物を排出し、ジクロロメタン(6×)で洗浄した。少量の樹脂(約10mg)を、20%TFA/ジクロロメタンで開裂させ、LC-MSで出発原料及び生成物の質量に関して分析した。主要成分は、なお未反応アミンであったので、樹脂を、再び上記条件にさらした。4時間後に、樹脂をジクロロメタン(6×)で洗浄し、次いで5%TFA/ジクロロメタン(4×7mL)で繰り返し処理した。生じた溶液を減圧下で濃縮した。混合物を、5%メタノール/ジクロロメタンで溶離する2mmラジアルChromatronプレートで精製して、107mgの(80)を得た。1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ 7.05(s, 1H), 5.90(m, 2H), 5.57(d, 1H), 5.29(d, J=14.7Hz, 2H), 5.22(t, J=10.9Hz, 2H), 4.59(m, 5H), 4.02(m, 1H), 2.60-2.40(m, 2H), 2.37-2.18(m, 1H), 2.17-2.02(m, 2H), 0.96(d, J=6.4Hz, 3H), 0.93(d, J=6.6Hz, 3H); MS(ES+) m/z 371.12 [M+H]+
【0587】
4-((S)-2-(((アリルオキシ)カルボニル)アミノ)-3-メチルブタンアミド)-5-((4-((S)-7-メトキシ-8-(3-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)アミノ)-5-オキソペンタン酸(S)-アリル(83):
5%メタノール/ジクロロメタン(1mL)中の酸(80)(30、0.04mmol)の混合物に、EEDQ(20mg、0.082mmol)を添加した。混合物を外界温度で30分間撹拌し、次いで(37)(30mg、0.04mmol)を添加し、混合物をほぼ5時間撹拌した。1mmラジアルChromatotronプレート上に直接的に吸引し、(1%〜5%)メタノール/ジクロロメタンのグラジエントで溶離する部分的精製により、所望の生成物と(37)との混合物が得られた(それぞれ、26mg、約3:1)。これをさらなる精製なしに次に進めた。
【0588】
(S)-4-((S)-2-アミノ-3-メチルブタンアミド)-5-((4-((S)-7-メトキシ-8-(3-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)アミノ)-5-オキソペンタン酸(84):
無水ジクロロメタン(3mL)中の(83)と(37)(26mg)との混合物に、Ph3P(0.3mg、0.0012mmol)、ピロリジン(4μL、0.048mmol)及びテトラキスパラジウム(0.7mg、0.6μmol)を添加した。2時間後に、さらなる量のテトラキスパラジウム(0.7mg、0.6μmol)を添加し、反応物をさらに1時間撹拌した後、減圧下で濃縮した。残留物をDMSO(1mL)、アセトニトリル(0.05%ギ酸を含む)(1mL)、及び水(0.05%ギ酸を含む)(1mL)に溶解し、逆相分取HPLCで精製した。生成物の単一画分を集め、凍結乾燥して6mgの(84)を得た(2ステップで14%)。MS(ES+) m/z 1078.6[M+H]+
【0589】
(S)-4-((S)-2-(6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサンアミド)-3-メチルブタンアミド)-5-((4-((S)-7-メトキシ-8-(3-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)アミノ)-5-オキソペンタン酸(85):
DMF(200μL)中の(84)(6mg、6μmol)と(35)(2mg、6μmol)との混合物にDIPEA(3μL、18μmol)を添加し、反応混合物を外界温度で撹拌した。1時間後に、さらなる当量の(35)(2mg、6μmol)を添加し、反応混合物を外界温度で3時間撹拌し続けた。3度目の当量の(35)(2mg、6μmol)を添加し、混合物をほぼ1時間撹拌し、減圧下で濃縮し、ジクロロメタンに溶解し、1mmのラジアルChromatotronプレート上に直接的に吸引し、5%メタノール/ジクロロメタンで溶離した。これによって、2.5mgの高純度の(85)を得た(36%)。MS(ES+) m/z 1147.49[M+H]+
【0590】
(21S,24S)-1-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-21-イソプロピル-24-((4-((S)-7-メトキシ-8-(3-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)カルバモイル)-3,19,22-トリオキソ-7,10,13,16-テトラオキサ-4,20,23-トリアザヘプタコサン-27-オイック酸(86):
DMF(200μL)中の(84)(8mg、8.4μmol)とMal-PEG4-NHS(87)(6.5mg、12.6μmol)との混合物にDIPEA(4.3μL、25μmol)を添加した。反応混合物を外界温度で2時間撹拌し、減圧下で濃縮した。生じた残渣をジクロロメタンに溶解し、1mmのラジアルChromatotronプレート上に吸引した。材料は、極性であり、シリカゲルをベースにしたChromatotronプレート上でクロマト化されなかった。プレートをメタノールで溶離して混合物を回収し、減圧下に単離した。残留材料を、逆相分取HPLCで精製した。単一の主要ピークが溶離し、画分を合わせ、凍結乾燥して、残留物として0.9mgの(86)を得た(8%)。MS(ES+) m/z 1353.04[M+H]+
【化102】
【0591】
(S)-6-(ジメチルアミノ)-2-(6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサンアミド)ヘキサン酸(88):
CH2Cl2(10mL)中の2-クロロトリチル樹脂(1g、1.01mmol)の混合物に、Fmoc-Lys(Me)2-OH(89)(432mg、1.0mmol)及びDIPEA(433μL、2.5mmol)を添加した。反応混合物を1時間振盪した。メタノール(0.8mL)を添加し、混合物をさらに5分間振盪した後、濾過し、DMF(6×)、ジクロロメタン(6×)、ジエチルエーテル(6×)で洗浄し、減圧下で乾燥した。乾燥した樹脂を20%ピペリジン/DMF(10mL)に1時間さらした後、濾過し、DMF(6×)、ジクロロメタン(6×)、ジエチルエーテル(6×)で洗浄した。
【0592】
DMF(7mL)中の(39)(3.0mmol、633mg)の混合物にDIPEA(1.0mL)及びHATU(1.1g、3.03mmol)を添加した。徹底的に混合した後、上記樹脂を含む10mLシリンジ中に溶液を吸引した。混合物に蓋をし、16時間振盪し、濾過し、樹脂をDMF(6×)、ジクロロメタン(6×)、及びエチルエーテル(6×)で洗浄した。樹脂を、5%TFA/ジクロロメタン(6mL×5)で1分間振盪して繰り返し処理し、次いで濾過した。生じた溶液を減圧下、及び高度真空下で濃縮した。材料を逆相分取HPLCで精製して、208mgの(88)を得た。1H-NMR(400MHz, CD3OH/CDCl3 1:1混合物) δ 6.73(s, 2H), 4.41(m, 1H), 3.48(t, 2H), 3.31(s, 1H), 3.03(m, 2H), 2.84(s, 6H), 2.22(m, 2H), 1.87(m, 2H), 1.78-1.52(m, 6H), 1.43(m, 2H), 1.31(五重線, 2H); MS(ES+) m/z 386.28 [M+H]+
【0593】
(S)-6-(ジメチルアミノ)-2-(6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサンアミド)-N-(4-((S)-7-メトキシ-8-(3-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)ヘキサンアミド(90):
5%メタノール/ジクロロメタン(400μL)中の(88)(9.3mg、0.023mmol)の混合物にEEDQ(7mg、0.027mmol)を添加した。混合物を外界温度で30分間撹拌し、次いで(37)(15mg、0.021mmol)を添加した。4時間後に、混合物を減圧下で濃縮し、DMSO(1mL)、アセトニトリル(2mL、0.05%ギ酸を含む)及び水(1mL、0.05%ギ酸を含む)の混合物中に溶解し、逆相HPLC(方法A)で精製した。生成物を含む画分には(37)が混入していたので、該画分を凍結乾燥し、残留物を前記のように再精製して0.5mgの純粋な(90)を得た(2%)。MS(ES+) m/z 537.46[M+H]/2+
【化103】
【0594】
((S)-1-(((S)-1-((4-((S)-7-メトキシ-8-(3-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)カルバミン酸アリル(91):
5%メタノール/ジクロロメタン(1mL)中の(92)(45mg、0.123mmol)の混合物にEEDQ(30.4mg、0.123mmol)を添加した。混合物を外界温度で30分間撹拌し、次いで(37)(30mg、0.041mmol)を添加した。反応混合物をほぼ5時間撹拌し、次いで5%メタノール/ジクロロメタンで溶離する1mmのラジアルChromatotoronプレートで精製して、22mgの(91)(55%)を得、これを同定しないで直接次に進めた。
【0595】
1-(3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)プロパンアミド)-N-((S)-1-(((S)-1-((4-((S)-7-メトキシ-8-(3-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)プロポキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)フェニル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)-3,6,9,12-テトラオキサペンタデカン-15-アミド(93):
(91)(22mg、0.022mmol)の無水ジクロロメタン(3mL)溶液に、Ph3P(0.3mg、0.0012mmol)、ピロリジン(4μL、0.048mmol)及びテトラキスパラジウム(0.7mg、6μmol)を添加した。ほぼ2時間後に、反応混合物を、(5%〜10%)メタノール/ジクロロメタンで溶離する1mmのラジアルChromatotronプレートで精製した。主要バンドを集め、濃縮し、残留物をDMF(0.2mL)に溶解し、NHSエステル(87)(10mg、0.19mmol)と反応させた。反応物を30分間撹拌し、濃縮し、5%メタノール/ジクロロメタンで溶離する1mmのプレートでのラジアルクロマトグラフィーで精製して、3.2mgの(93)を得た(11%)。MS(ES+) m/z 1294.7[M+H]+
【化104】
【0596】
(E)-6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-N'-(4-((S)-7-メトキシ-8-((5-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル)オキシ)ペンチル)オキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル)ベンジリデン)ヘキサンヒドラジド(94):
5%メタノール/ジクロロメタン中のアルデヒド(95)(5.4mg、7μmol)の混合物に0℃でヒドラジド-TFA塩(96)(4.5mg、14μmol)を添加した。反応混合物を外界温度まで暖め、5時間撹拌した後、減圧下で濃縮し、3%メタノール/ジクロロメタンで溶離するシリカゲルカラムで精製して、2.2mgの(94)を得た(32%)。MS(ES+) m/z 974.49[M+H]+
【化105】
【0597】
2-((S)-2-アミノ-3-メチルブタンアミド)プロパン酸(S)-tert-ブチル(97):
ジクロロメタン(5mL)中のアラニン-O-tert-ブチルエステル塩酸塩(98)の混合物(500mg、2.76mmol)にFmoc-Val-OSu(99)(1.09g、2.51mmol)を添加した。DIPEA(0.96mL、5.5mmol)を添加し、反応混合物を外界温度で16時間撹拌した。混合物をジクロロメタン(100mL)中に注ぎ、1N HCl(50mL)及び水(50mL)で洗浄した後、硫酸マグネシウム上で乾燥した。材料を、(1%〜5%)メタノール/ジクロロメタンのグラジエントで溶離する2mmのラジアルChromatotronプレートでクロマトグラフィーを行い、生成物を含む画分を合わせ、濃縮した。生じた残渣をジクロロメタン(16mL)に溶解し、ピペリジン(4mL)を添加した。混合物を10分間撹拌した後、減圧下で濃縮した。生じた残渣を、最初にアンモニアで飽和したジクロロメタンで、続いて5%メタノール/アンモニア飽和ジクロロメタンで溶離する2mmプレートでのクロマトグラフィーを行い、494mg(2.02mmol)の(97)を得た(2ステップで81%)。1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ 7.78(bs, 1H), 4.47(m, 1H), 3.30(d, 1H), 2.30(m, 1H), 1.38(d, 3H), 1.47(s, 9H), 1.00(d, J=7.0Hz, 3H), 0.84(d, J=6.9Hz, 3H)。
【0598】
2-((S)-2-(4-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ベンズアミド)-3-メチルブタンアミド)プロパン酸(S)-tert-ブチル(100):
(97)(100mg、0.41mmol)と4-マレイミド安息香酸(101)(98mg、0.45mmol)との混合物に、ジクロロメタン(5mL)、続いてTBTU(157mg、0.49mmol)及びDIPEA(212μL、1.23mmol)を添加した。混合物を外界温度で16時間撹拌し、次いで、50%酢酸エチル/ヘキサンで溶離する2mmラジアルChromatotronプレートで精製して95mgの(100)を得た(51%)。1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ 7.85(d, J=6.6Hz, 2H), 7.42(d, J=6.6Hz, 2H), 6.81(s, 2H), 6.38(bs, 1H), 4.43(m, 2H), 2.14(七重線, J=6.6Hz, 1H), 1.41(s, 9H), 1.31(d, J=7.0Hz, 3H), 0.98(m, 6H); MS(ES-) m/z 441.90 [M-H]-
【0599】
(R)-2-((S)-2-(4-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ベンズアミド)-3-メチルブタンアミド)プロパン酸(53):
ジクロロメタン(5mL)中の(100)(47mg、0.11mmol)の混合物にトリフルオロ酢酸(5mL)を添加し、反応混合物をTLC(50%酢酸エチル/ヘキサン、TLCプレートを高真空下で5分間吸引した後)で監視した。75分後に、TLCで出発原料を検出できなかった。反応は、同一条件を使用して2回実施し、双方の反応からの材料を合わせ、(5%〜10%)メタノール/ジクロロメタンのグラジエントで溶離する2mmラジアルChromatotronプレートで精製した。42mgの(53)を得た(49%)。1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ 7.92(d, J=6.6Hz, 2H), 7.51(d, J=6.6Hz, 2H), 7.0(m, 1H), 6.89(s, 2H), 6.70(s, 1H), 4.60 M, 1H), 2.22(m, 1H), 1.18(d, J=6.6Hz, 3H), 1.04(m, 6H); MS(ES+) m/z 388.02 [M+H]+
【0600】
(S)-2-((S)-2-(2-ヨードアセトアミド)-3-メチルブタンアミド)プロパン酸(102):
ジクロロメタン中の(97)(100mg、0.41mmol)の混合物にヨードアセトアミド-NHSエステル(103)(115mg、0.41mmol)を添加し、混合物を外界温度で撹拌した。30分後に、混合物を1mmのChromatotronプレート上に吸引し、酢酸エチル/ヘキサン(1/1)で溶離した。単一バンドを集め、構造を確認した。1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ 6.70(d, J=7.8Hz, 1H), 6.27(d, J=7.0Hz, 1H), 4.45(m, 1H), 4.26(dd, J=8.6, 6.3Hz, 1H), 3.72(四重線, J=11.3Hz, 2H), 2.13(七重線, J=6.5Hz, 1H), 1.47(s, 9H), 1.38(d, J=7.1Hz, 3H), 0.99(m, 6H); MS(ES+) m/z 412.87 [M+H]+
【0601】
(S)-2-((S)-2-(2-ヨードアセトアミド)-3-メチルブタンアミド)プロパン酸(55):
(R)-2-((S)-2-(4-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ベンズアミド)-3-メチルブタンアミド)プロパン酸(53)の合成のための手順を参照されたい。これによって22mgを得た(2ステップで15%)。1H-NMR(400MHz, D6-DMSO) δ 8.27(d, J=9.4Hz, 1H), 4.24(m, 2H), 3.97(bs, 2H), 3.83(d, J=9.4Hz, 1H), 3.71(d, J=9.6Hz, 1H), 2.07(m, 1H), 1.33(d, J=7.3Hz, 3H), 0.93(d, J=6.7Hz, 3H), 0.89(d, J=6.9Hz, 3H); MS(ES-) m/z 354.84 [M-H]-
【化106】
【0602】
脂肪族アミンを介して連結されたPBD二量体(スキーム21):
ベンジルアミンなどの脂肪族アミンを含むPBD二量体(実施例9)を、ペプチド系リンカー、グルクロニドリンカー、及び/又は放出のためのmAb分解に依存するリンカー(すなわち、非開裂性リンカー)を含めて合成する。ベンジルアミンを介してコンジュゲートされる薬物リンカーとしては、(1)スキーム1に類似の化学を採用する開裂性ペプチド、(2)マレイミドカプロイル基との直接結合(非開裂性リンカー)(スキーム2)、(3)スキーム6に記載のように調製されるグルクロニドリンカー、が挙げられる。
【化107】
【0603】
2-、3-及び4-アニリンPBD二量体に連結された一般的ペプチド(スキーム22):
2-、3-及び4-位のアニリンを備えたPBD二量体を、スキーム1に記載の化学を採用して、又はスキーム2に例示したようにマレイミドカプロン酸と直接的に結合して、ペプチドをベースにしたリンカーにコンジュゲートさせる。
【0604】
(実施例14):PDB二量体コンジュゲートの調製
抗体-薬物コンジュゲートは、前に記載のように(Doroninaら、Nature Biotechnology,21,778〜784(2003)を参照されたい)、又は後記のように調製した。簡潔には、マレイミド薬物-リンカーの場合、50mMホウ酸ナトリウムを含むpH7.4のPBS中のmAb(4〜5mg/mL)を、トリス(カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)を用い37℃で還元した。鎖間ジスルフィドを還元する反応の進行を、5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)との反応によって監視し、所望レベルのチオール/mAbが達成されるまで進行させた。還元された抗体を、次いで、0℃まで冷却し、抗体のチオール当たり1.5当量のマレイミド薬物-リンカーを用いてアルキル化した。1時間後に、5当量のN-アセチルシステインを添加して反応を止めた。反応を止めた薬物-リンカーをPD-10カラムでのゲル濾過によって除去した。次いで、ADCを、0.22μmのシリンジフィルターを通して無菌濾過した。タンパク質濃度は、それぞれ280nm及び329nmでスペクトルを分析し、280nmで薬物の吸光度の寄与に関して補正することによって測定した。サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、抗体の凝集度を測定し、RP(逆相)-HPLCによって、NAC(N-アセチルシステイン)で失活されて残存する薬物-リンカーの不在を確認した。
【0605】
ハロアセトアミドをベースにした薬物-リンカーの場合、コンジュゲーションは、一般に、次のように行った:10mM Tris(pH7.4)、50mMNaCl、及び2mM DTPA中の、還元され再酸化された抗体(重鎖中にS239Cの置換によって導入されたシステインを有する(下記参照))の10mg/mL溶液に、0.5容のプロピレングリコールを添加した。コンジュゲーションの直前に、ジメチルアセトアミド中のアセトアミドをベースにした薬物-リンカーの10mM溶液を調製した。抗体溶液に添加されると同量のプロピレングリコールを、6倍モル過剰の薬物-リンカーに添加した。抗体溶液に希薄な薬物-リンカー溶液を添加し、1M Tris(pH9)を使用してpHを8.0〜8.5に調整した。コンジュゲーション反応を37℃で45分間進行させた。コンジュゲーションは、還元及び変性PLRP-S逆相クロマトグラフィーによって検証した。過剰の薬物-リンカーをQuadrasil MP樹脂(Sigma Aldrich;製品番号679526)を用いて除去し、緩衝液を、PD-10脱塩カラム(GE Healthcare;製品番号17-0851-01)を使用して、10mM Tris(pH7.4)、50mM NaCl、及び5%プロピレングリコールに交換した。
【0606】
導入されたシステインを有する操作されたhlgG抗体:
重鎖の239位にシステイン残基を含むCD70抗体を、10当量のTCEP及び1mM EDTAを添加すること、及び1M Tris緩衝液(pH9.0)を用いてpHを7.4に調整することによって、完全に還元した。37℃で1時間のインキュベーションに続いて、反応物を22℃まで冷却し、30当量のデヒドロアスコルビン酸を添加し、システイン239を還元状態にしたまま、本来のジスルフィドを選択的に再酸化した。1M Tris緩衝液(pH3.7)を用いてpHを6.5に調整し、反応を22℃で1時間進行させた。次いで、1M Tris緩衝液(pH9.0)を添加することによって、溶液のpHを再び7.4まで上昇させた。反応物への添加に先立って、プロピレングリコールでの希釈のために、DMSO中の3.5当量のPBD薬物-リンカーを適切な容器中に入れた。PBD薬物-リンカーの溶解性を維持するために、抗体自体を、まず、プロピレングリコールで33%の最終濃度に希釈した(例えば、抗体溶液が60mLの反応体積で存在する場合、30mLのプロピレングリコールを添加した)。この同体積のプロピレングリコール(この例では30mL)を、次いで、希釈剤としてPBD薬物-リンカーに添加した。混合した後、PBD薬物-リンカーのプロピレングリコール溶液を抗体溶液に添加してコンジュゲーションを実施した(プロピレングリコールの最終濃度は50%である)。反応を30分間進行させ、次いで、5当量のN-アセチルシステインを添加して反応を止めた。次いで、30kDの膜を通す限外濾過によってADCを精製した(反応物中で使用されるプロピレングリコールの濃度は、その唯一の目的が水性媒体中での薬物-リンカーの溶解性を維持することにあるので、任意の個々のPBDに対して低下させることができることに留意されたい)。
【0607】
(実施例15):選択したコンジュゲートのインビトロ活性の測定
選択した抗体-薬物コンジュゲートのインビトロでの細胞障害活性を、レサズリン(Sigma、St.Louis、ミズーリ州、米国)還元アッセイを使用して評価した(参考文献:Doroninaら、Nature Biotechnology,2003,21,778〜784)。抗体-薬物コンジュゲートは、前に実施例13中に記載の通り調製した。
【0608】
96時間のアッセイの場合、対数増殖期の状態に培養された細胞を、20%FBSで補足された150μLのRPMI1640を含む96ウェルプレート中に24時間接種した。細胞培養培地でのADCの逐次希釈液を、4種の実施濃度で調製し、50μLの各希釈液を96ウェルプレートに添加した。ADCの添加に続いて、細胞を試験物とともに37℃で4日間インキュベートした。次いで、各ウェルにリサズリンを50μMの最終濃度になるように添加し、プレートを37℃でさらに4時間インキュベートした。次いで、プレートを染料の還元度について、Fusion HTプレートリーダー(Packard Instruments、Meridien、コネティカット州、米国)を用い、それぞれ530nm及び590nmの励起及び発光波長で読み取った。IC50値は、三つ組みで測定され、本明細書では、未処理対照に比較して50%の細胞増殖低下をもたらす濃度と定義される。
【0609】
表4(下記)は、パラ-アニリンPBD二量体を有するADCの96時間アッセイを使用するインビトロでの細胞障害性を示す。ADCを、CD70+CD30-細胞株、及び対照のCD70-CD30-細胞株に対して試験した。使用する抗体は、CD70抗体、ヒト化1F6(米国特許出願公開第2009/148942号を参照されたい)、CD30抗体、キメラAC10(米国特許出願公開第2008/0213289号を参照されたい)、及び重鎖の239位(EU番号化システムによる)のアミノ酸位置に導入されたシステイン残基を有するCD70抗体(ヒト化1F6dとして示す)とした。マレイミジル-ペプチドリンカーを有するコンジュゲート(薬物-リンカー化合物38)は、マレイミジル又はアセトアミドをベースにしたリンカー(それぞれ、化合物40及び41)とのコンジュゲートに比べてより低いIC50を有した。
【0610】
パラ-アニリンPBD二量体(37)から誘導される薬物-リンカーを所持するADCのインビトロでの細胞障害活性:
【表5】
【0611】
表5は、PBD二量体にコンジュゲートされたADCのCD30+細胞株に対する96時間アッセイを使用するインビトロでの細胞障害性を示す。ADCを、CD30+CD70+細胞株及びCD70-CD30-細胞株に対して試験した。使用する抗体は、CD70抗体、ヒト化1F6(米国特許出願公開第2009/148942号を参照されたい)、CD30抗体、キメラAC10(米国特許出願公開第2008/0213289号を参照されたい)とした。マレイミジル-ペプチドリンカー(薬物-リンカー化合物38)を有するコンジュゲートは、一般に、マレイミジル又はアセトアミドをベースにしたリンカー(それぞれ化合物40及び41)に比べてより低いIC50を有した。
【表6】
【0612】
メタ-アニリンPBD二量体(42)から誘導される薬物-リンカーを所持するADCのインビトロでの細胞障害活性:
表6は、PBD二量体ADCを含むADCのCD30+細胞株に対する96時間アッセイを使用するインビトロでの細胞障害性を示す。CD30+CD70+細胞株及びCD70-CD30-細胞株に対する活性を試験した。使用する抗体は、CD70抗体、ヒト化1F6(米国特許出願公開第2009/148942号を参照されたい)、及び重鎖の239位(EU番号化システムによる)のアミノ酸位置に導入されたシステイン残基を有するCD70抗体(ヒト化1F6)(h1F6dとして示される)とした。マレイミジル-ペプチドリンカー(薬物-リンカー化合物43)及びグルクロニドリンカー(48)を有するコンジュゲートは、マレイミジルをベースにしたリンカー(化合物44)とのコンジュゲートに比べて一般により低いIC50を有した。
【表7】
【0613】
パラ-及びメタ-アニリンPBD二量体(それぞれ、38及び42)から誘導される薬物-リンカーを所持するADCのインビトロでの細胞障害活性:
表7は、PBD二量体を含むADCのCD70+細胞株に対する96時間アッセイを使用するインビトロでの細胞障害性を示す。CD70+細胞株L428及び786O、並びにCD70-AML細胞株に対する活性を試験した。使用する抗体は、CD70抗体、ヒト化1F6(米国特許出願公開第2009/148942号を参照されたい)、及び重鎖の239位(EU番号化システムによる)のアミノ酸位置に導入されたシステイン残基を有するCD70抗体(ヒト化1F6)(h1F6dとして示される)とした。メタ-アニリンとのマレイミジル-ペプチドリンカー(薬物-リンカー化合物43)を有するコンジュゲートは、パラ-アニリンとのマレイミジル-ペプチドリンカーを有するもの(薬物-リンカー化合物38)を有するものに比べて、活性が若干低かった。メタ-アニリン化合物の薬物負荷量を抗体当たり2個まで減らすと、活性が低下した。パラ-アニリン化合物のグルクロニドリンカー(48)を有するコンジュゲートは、一般に、マレイミジルをベースにしたリンカー(化合物39)を有するコンジュゲートに比べて、より低いIC50を有した。さらに、パラ-アニリン化合物のアリールマレイミド(54)は、これらの細胞株に対して活性を有さなかった。さらに、化合物(42)に直接的にコンジュゲートされたマレイミジルリンカーを有するコンジュゲートは、コンジュゲートh1F6-43と比べて低減された活性を有した(データは示さない)。
【表8】
【0614】
アニリンで連結されたPBD二量体から誘導される薬物-リンカーを所持するADCのインビトロでの細胞障害活性
表8は、PBD二量体を含むADCのCD70+細胞株に対する96時間アッセイを使用するインビトロでの細胞障害性を示す。CD70+細胞株Caki-1及びL428並びにCD70-細胞株に対する活性を試験した。使用する抗体は、重鎖の239位(EU番号化システムによる)のアミノ酸位置に導入されたシステイン残基を有するCD70抗体(ヒト化1F6)(h1F6dとして示される)とした。PBDをオルト位のアミンを経由して非開裂性リンカーへ結合すると(化合物68)、パラ-アニリンで連結された開裂性リンカー(化合物54)を介して連結されたADCと比較して、活性が著しく低下した。開裂性リンカーを有する化合物73及び85(これらの化合物は、双方ともパラ-アニリンを介して連結されている)は、化合物54と類似の活性を示した。より厳しい開裂を必要とする開裂性リンカーを備えた化合物である化合物79及び90は、化合物54に比較して、若干低減された活性を示した。
【表9】
【0615】
アニリンで連結されたPBD二量体から誘導される薬物-リンカーを所持するADCのインビトロでの細胞障害活性
表9は、PBD二量体を含むADCのCD70+細胞株に対する96時間アッセイを使用するインビトロでの細胞障害性を示す。CD70+細胞株Caki-1及びL428並びに2種のCD70-白血病細胞株に対する活性を試験した。使用する抗体は、CD70抗体、ヒト化1F6(米国特許出願公開第2009/148942号を参照されたい)、及び重鎖の239位(EU番号化システムによる)のアミノ酸位置に導入されたシステイン残基を有するCD70抗体(ヒト化1F6)(h1F6dとして示される)とした。アセトアミドを介して抗体に連結された開裂性リンカーを有する化合物56は、化合物38と類似の活性を示した。メタ-アニリンで連結されたPBD二量体のグルクロニド連結バージョンである化合物48は、このアッセイでほとんど活性を示さなかった。PBDブリッジ中に5個のメチレン基を有する化合物58は、PBDブリッジ中に3個のメチレン基を有する化合物38と類似の活性を示した。
【表10】
【0616】
(実施例16):選択したコンジュゲートのインビボでの細胞障害性の測定
すべての研究は、実験動物管理評価認定協会(the Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal care)によって完全に認可された施設内の動物管理使用委員会(the Animal Care and Use Committee)の同意のもとで実施した。まず、コンジュゲートが臨床的に意味のある用量で忍容されることを保障するために、インビボでの忍容性を評価した。BALB/cマウスを、0.01%Tween20を含むPBS中で製剤されたADCの段階的に増大する用量で治療した。マウスを薬物治療後の体重減少について監視し、20%の体重減少又は他の病的状態の兆候を示したマウスは安楽死させた。使用する抗体は、CD70抗体、ヒト化1F6(米国特許出願公開第2009/148942号を参照されたい)及びCD30抗体、キメラAC10(米国特許出願公開第2008/0213289号を参照されたい)とした。
【0617】
図1は、cAC10-val-ala-SG3132(2)(cAC10-化合物38)を使用した体重減少研究の結果を示す。IP又はIVのどちらかにより5mgで投与されるコンジュゲートの単回投与は、体重減少をほとんどもたらさなかった。より多い用量(15mg/kg)のコンジュゲートは、マウスに体重減少をもたらした。
【0618】
図2は、h1F6-val-ala-SG3132(2)(h1F6-化合物38)を使用した体重減少研究の結果を示す。IPにより5mgで投与されるコンジュゲートの単回投与は、若干の体重減少をもたらした。より多い用量(10mg/kg)のコンジュゲートは、マウスにかなりの体重減少をもたらした。
【0619】
治療研究は、2種のCD70+腎細胞癌異種移植片モデルにおいて実施した。腫瘍(786-O及びCaki-1)断片をヌードマウスの右側腹部に移植した。マウスは、8日目(786-O)又は9日目(Caki-1)に各群でおよそ100mm3に平均化して、研究群(n=5)に対して無作為化した。ADC又は対照を、q4d×4の予定に従ってip投与した。時間の関数としての腫瘍体積を、式(L×W2)/2を使用して測定した。腫瘍体積が1000mm3に達したら、動物を安楽死させた。永続的な退縮を示すマウスは、移植のおよそ100日後に屠殺した。
【0620】
図3は、h1F6-val-ala-SG3132(2)(h1F6-化合物38)コンジュゲートを使用する治療研究の結果を示す。対照コンジュゲート、cAC10-val-ala-SG3132(2)(cAC10-化合物38)も使用した。0.1mg/kgの用量でh1F6コンジュゲートを投与されたマウスは、若干の腫瘍縮小を示したが、より多い0.3mg/kg及び1mg/kgの用量は、完全な腫瘍縮小を提示するようであった。対照コンジュゲート(非結合性)は、h1F6コンジュゲートに比べて活性が低かった。
【0621】
図4は、h1F6-mc-val-ala-SG3132(2)(h1F6-化合物38)コンジュゲートを使用する治療研究の結果を示す。対照コンジュゲート、cAC10-mc-val-ala-SG3132(2)(cAC10-化合物38)も使用した。1mg/kgの用量でh1F6コンジュゲートを投与されたマウスは、完全な腫瘍縮小を示すようであった。より少ない0.3mg/kg及び0.1mg/kgの用量を投与されたマウスは、それぞれ、より少ない腫瘍縮小を示した。対照コンジュゲート(非結合性)は、同様の用量で投与されたh1F6コンジュゲートに比べて活性が低かったが、より少ない用量で投与されたh1F6コンジュゲートに比べてより高い活性を提示した。h1F6コンジュゲートは、また、より多い用量で投与されたh1F6-vc-MMAEコンジュゲート(米国特許出願公開第2009/0148942号)に比べてより活性であった。
【0622】
図5では、化合物38に連結された2個の負荷量の抗体h1F6d(h1F6d-38)を使用した治療研究の結果を、2個の負荷量の非結合性対照、同一化合物にコンジュゲートされたH00d(h00d-38)と比較した。モデルは、ヌードマウスのCaki皮下モデルとした。用量は0.1、0.3及び1mg/kgでのq7d×2とした。h1F6コンジュゲートの最も高い2種の用量は、1mg/kgで完全な退縮を、及び0.3mg/kgでかなりの腫瘍遅延を示した。非結合性対照は、1mg/kgの用量で腫瘍遅延を示した。
【0623】
図6では、化合物38に連結された2個の負荷量の抗体h1F6d(h1F6d-38)を使用した治療研究の結果を、2個の負荷量の非結合性対照、同一化合物にコンジュゲートされたH00d(h00d-38)と比較した。モデルは、ヌードマウスの786-O皮下モデルとした。用量は0.1、0.3及び1mg/kgでのq7d×2とした。h1F6コンジュゲートの3種の用量は、すべて、完全な退縮又は腫瘍遅延を示し、一方、非結合性対照は、腫瘍遅延を示した。
本発明の実施形態として例えば以下を挙げることができる。
[実施形態1]
式I:
L-(LU-D)p (I)
を有するコンジュゲート、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物
{式中、
Lは、リガンド単位であり、
LUは、リンカー単位であり、
pは、1〜20であり、
Dは、次式II:
【化108】
[式中、
R2は、式III:
【化109】
(ここで、AはC5〜7アリール基であり、Xは、-O-、-S-、-C(O)O-、-C(O)-、-NH(C=O)-、-N(RN)-を含む群から選択され、ここで、RNはH、C1〜4アルキル及び(C2H4O)mCH3(ここで、mは1〜3である)を含む群から選択され、且つ
(i)Q1は単結合であり、Q2は単結合及び-Z-(CH2)n-(ここで、Zは、単結合、O、S、及びNHから選択され、1〜3である)から選択されるか、又は
(ii)Q1は-CH=CH-であり、Q2は単結合であるか、
のいずれかである)
であり、
R12は、ハロ、ニトロ、シアノ、エーテル、C1〜7アルキル、C3〜7ヘテロシクリル、ジメチルアミノプロピルオキシ、ピペラジニル、及びビス-オキシ-C1〜3アルキレンを含む群から選択される一つ又は複数の置換基で置換されていてもよいC5〜10アリール基であり、
R6及びR9は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH2、NHR、NRR'、ニトロ、Me3Sn、及びハロから独立に選択され、
ここで、R及びR'は、置換されていてもよいC1〜12アルキル、C3〜20ヘテロシクリル、及びC5〜20アリール基から独立に選択され、
R7は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH2、NHR、NHRR'、ニトロ、Me3Sn、及びハロから選択され、
(a)R10はHであり、R11はOH又はORA(ここで、RAはC1〜4アルキルである)であるか、
(b)R10及びR11は、それらが結合している窒素及び炭素原子の間で窒素-炭素二重結合を形成しているか、又は
(c)R10はHであり、R11はSOzM(ここで、zは2又は3であり、Mは薬学的に許容される一価カチオンである)であるか、
のいずれかであり、
R''は、C3〜12アルキレン基(その鎖は、O、S、NHからなる群から選択される一つ又は複数のヘテロ原子、及び芳香族環によって中断されていてもよい)であり、
Yは、O、S、又はNHから選択され、
R6'、R7'、R9'は、それぞれR6、R7、及びR9と同じ群から選択され、R10'及びR11'は、R10及びR11と同一であり、ここで、R11及びR11'がSOzMである場合は、Mは薬学的に許容される二価カチオンを表してもよい]
を有するPBD二量体を含む薬物単位である}。
[実施形態2]
R7が、H、OH、及びORから選択される、実施形態1に記載のコンジュゲート。
[実施形態3]
R7が、C1〜4アルキルオキシ基である、実施形態2に記載のコンジュゲート。
[実施形態4]
YがOである、実施形態1から3のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[実施形態5]
R''が、C3〜7アルキレンである、実施形態1から4のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[実施形態6]
R9がHである、実施形態1から5のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[実施形態7]
R6が、H及びハロから選択される、実施形態1から6のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[実施形態8]
Aがフェニルである、実施形態1から7のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[実施形態9]
Xが、-O-、-S-、又は-NH-から選択される、実施形態1から8のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[実施形態10]
Q1が単結合である、実施形態1から9のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[実施形態11]
Q2が単結合である、実施形態10に記載のコンジュゲート。
[実施形態12]
Q2が-Z-(CH2)n-であり、ZがO又はSであり、nが1又は2である、実施形態10に記載のコンジュゲート。
[実施形態13]
Q1が-CH=CH-である、実施形態1から9のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[実施形態14]
R12がC5〜7アリール基である、実施形態1から13のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[実施形態15]
R12がフェニルである、実施形態14に記載のコンジュゲート。
[実施形態16]
R12がC8〜10アリール基である、実施形態1から13のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[実施形態17]
R12が、1〜3個の置換基を有する、実施形態1から16のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[実施形態18]
R10及びR11が、窒素-炭素二重結合を形成している、実施形態1から17のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[実施形態19]
R6'、R7'、R9'、R10'、R11'、及びY'が、それぞれ、R6、R7、R9、R10、R11、及びYと同一である、実施形態1から18のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[実施形態20]
リンカー単位(LU)が、式1a又は1b:
-A1a-L1s-L2y-, (Ia)
(式中、
-A1-は、ストレッチ単位であり、
aは、1又は2であり、
L1-は、特異性単位であり、
sは、0〜12の範囲の整数であり、
-L2-は、スペーサー単位であり、
yは、0、1又は2であり、
pは、1〜20である)、又は
【化110】
(式中、
-A1-は、ストレッチ単位(L2)に連結されたストレッチ単位であり、
aは、1又は2であり、
L1-は、特異性単位(L2)に連結された特異性単位であり、
sは、1〜12の範囲の整数であり、
-L2-は、スペーサー単位であり、
yは、1又は2であり、
pは、1〜20である)
を有する、実施形態1から19のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[実施形態21]
リンカー単位(LU)が、式1aを有する、実施形態20に記載のコンジュゲート。
[実施形態22]
A1が、
【化111】
(ここで、星印は、L1への結合箇所を示し、波線は、リガンド単位への結合箇所を示し、nは0〜6である)、
【化112】
(ここで、星印は、L1への結合箇所を示し、波線は、リガンド単位への結合箇所を示し、nは0〜6である)、
【化113】
(ここで、星印は、L1への結合箇所を示し、波線は、リガンド単位への結合箇所を示し、nは0又は1であり、mは0〜30である)、又は
【化114】
(ここで、星印は、L1への結合箇所を示し、波線は、リガンド単位への結合箇所を示し、nは0又は1であり、mは0〜30である)
から選択される、実施形態21に記載のコンジュゲート。
[実施形態23]
A1が、
【化115】
(ここで、星印は、L1への結合箇所を示し、波線は、リガンド単位への結合箇所を示し、nは0〜6である)
である、実施形態21に記載のコンジュゲート。
[実施形態24]
nが5である、実施形態23に記載のコンジュゲート。
[実施形態25]
L1が、アミノ酸配列を含む、実施形態20から24のいずれかに記載のコンジュゲート。
[実施形態26]
L1が、ジペプチドである、実施形態25に記載のコンジュゲート。
[実施形態27]
L1が、バリン-アラニン、バリン-シトルリン、及びフェニルアラニン-リシンからなる群から選択される、実施形態26に記載のコンジュゲート。
[実施形態28]
yが0である、実施形態20から27のいずれかに記載のコンジュゲート。
[実施形態29]
yが1又は2である、実施形態20から27のいずれかに記載のコンジュゲート。
[実施形態30]
L2が、
【化116】
(ここで、星印は、薬物単位への結合箇所を示し、波線は、L1への結合箇所を示し、Yは、-N(H)-、-O-、-C(=O)N(H)-、又は-C(=O)O-であり、nは0〜3である)
である、実施形態29に記載のコンジュゲート。
[実施形態31]
L2が、
【化117】
である、実施形態30に記載のコンジュゲート。
[実施形態32]
増殖性疾患又は自己免疫疾患を治療するための医薬の製造における、実施形態1から31のいずれか一項に記載のコンジュゲート又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の使用。
[実施形態33]
増殖性疾患又は自己免疫疾患を治療するための、実施形態1から32のいずれか一項に記載のコンジュゲート又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の使用。
[実施形態34]
有効量の実施形態1から32のいずれか一項に記載のコンジュゲート又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与するステップを含む、増殖性疾患又は自己免疫疾患を有する哺乳動物を治療する方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6