【実施例】
【0034】
以下に本発明を実施例及び比較例によって、更に具体的に説明し、各実施例のデータ及び各実施例と各比較例の対照により、本発明の構成の合理性と有意性及び従来技術に対する卓越性を実証する。
なお、実施例及び比較例における諸物性は、下記の評価方法に従って測定し評価し、使用した樹脂として実施例と比較例に記載のものを用いた。
【0035】
イ)MFR:JIS K7210に準じて加熱温度230℃・荷重21.2Nにて測定した。
ロ)融解ピーク温度:セイコー社製DSCを用い、サンプル5.0mgを採り、200
℃で5分間保持後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、更に10℃/分の昇温スピードで融解させたときの融解ピーク温度を測定した。
ハ)最細繊維径:日立ハイテクノロジーズ社製の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて紡糸した繊維径の観察を行い、最細繊維径を測定した。
【0036】
1.ポリプロピレン系樹脂:ポリプロピレン系樹脂として以下の材料を用いた。
(1)ポリプロピレン系樹脂(PP−1);製造例1で得た組成物を用いた。
[製造例1]
(触媒の調整)
3つ口フラスコ(容積1L)中に、硫酸で逐次的に処理されたスメクタイト族ケイ酸塩(水沢化学社製ベンクレイSL)20g、ヘプタン200mLを仕込み、トリノルマルオクチルアルミニウム50mmolで処理後、ヘプタンで洗浄し、スラリー1とした。また、別のフラスコ(容積200mL)中に、ヘプタン90mL、(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム(特開2002−284808号公報の、実施例1に記載された方法に基づいて調製した。)0.3mmol、トリイソブチルアルミニウム1.5mmolを仕込みスラリー2とした。スラリー2を、上記スラリー1に加えて、室温で60分攪拌した。その後ヘプタンを210mL追加し、このスラリーを1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にしたのちプロピレンを10g/hrの速度でフィードし4時間40℃を保ちつつ予備重合、1時間残重合を行い予備重合触媒83gを得た。
【0037】
(プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体の製造)
内容積270Lの反応器に液状プロピレン、エチレン、水素、及びトリイソブチルアルミニウム(TIBA)のヘキサン希釈溶液を連続的に供給し、内温を62℃に保持した。プロピレンの供給量は、38kg/hrであり、エチレンの供給量は0.92kg/hrであり、水素の供給量は0.25g/hrであり、TIBAの供給量は18g/hrであった。前記予備重合触媒を流動パラフィンによりスラリー状とし、2.35g/hrでフィードした。その結果、12.2kg/hrのプロピレン・エチレンランダム共重合体を得た。
得られたプロピレン・エチレンランダム共重合体は、MFR=26.0g/10分、エチレン含量=4.5mol%、Tm=125℃、Q値=2.7であり、0℃可溶分量は0.13重量%であった。
【0038】
(添加剤の配合)
前記のプロピレン・エチレンランダム共重合体100重量部に対し、有機過酸化物である1,3−ビス(t−ブチル−パーオキシ−イソプロピル)ベンゼン(商品名:パーカドックス14・化薬アクゾ株式会社製)0.04重量部、フェノ−ル系酸化防止剤であるテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン(商品名:IRGANOX1010・BASF社製)0.1重量部、フォスファイト系酸化防止剤であるトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名:IRGAFOS 168・BASF社製)0.1重量部、並びに中和剤であるステアリン酸カルシウム(商品名:カルシウムステアレ−ト・日本油脂株式会社製)0.1重量部配合し、高速攪拌式混合機(ヘンシェルミキサ−:商品名)にて室温下で3分間混合した後、押出機にて溶融混練して、MFR=80g/10min、Tm125℃のプロピレン系樹脂ペレットを得た。
【0039】
(2)ポリプロピレン系樹脂(PP−2)
市販のポリプロピレン(WMB3:日本ポリプロ(株)社製)に有機過酸化物である1,3−ビス(t−ブチル−パーオキシ−イソプロピル)ベンゼン(商品名:パーカドックス14・化薬アクゾ株式会社製)0.04重量部、フェノ−ル系酸化防止剤であるテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン(商品名:IRGANOX1010・BASF社製)0.1重量部、フォスファイト系酸化防止剤であるトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名:IRGAFOS 168・BASF社製)0.1重量部、並びに中和剤であるステアリン酸カルシウム(商品名:カルシウムステアレ−ト・日本油脂株式会社製)0.1重量部配合し、高速攪拌式混合機(ヘンシェルミキサ−:商品名)にて室温下で3分間混合した後、押出機にて溶融混練してMFR80g/10min、Tm142℃のポリプロピレン系樹脂を得た。
【0040】
(3)ポリプロピレン系樹脂(PP−3);製造例2で得た組成物を用いた。
[製造例2]
(触媒の調整)
特開2002−284808号公報の実施例1に記載された方法に基づいてメタロセン系重合触媒((r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム)を調製した。
【0041】
(プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体の製造)
内容積200Lの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで充分に置換した後、充分に脱水した液化プロピレン45kgを導入した。これにトリイソブチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液500ml(0.12mol)、エチレン2.03kg、水素20L(標準状態の体積として)を加え、内温を30℃に維持した。次いで、触媒製造例に従い調製したメタロセン系重合触媒を0.2g(固体触媒成分として)アルゴンで圧入して重合を開始させ、40分かけて62℃に昇温し、120分間その温度を維持した。ここでエタノール100mlを添加して反応を停止させた。残ガスをパージし、ポリプロピレン系重合体16.6kgを得た。得られたポリプロピレン系重合体のMFRは500g/10分であり、融点は125.0℃であった。
【0042】
(添加剤配合)
前記樹脂100重量部に対して、有機過酸化物である1,3−ビス(t−ブチル−パーオキシ−イソプロピル)ベンゼン(商品名:パーカドックス14・化薬アクゾ株式会社製)0.04重量部、フェノ−ル系酸化防止剤であるテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン(商品名:IRGANOX1010・BASF社製)0.1重量部、フォスファイト系酸化防止剤であるトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名:IRGAFOS 168・BASF社製)0.1重量部、並びに中和剤であるステアリン酸カルシウム(商品名:カルシウムステアレ−ト・日本油脂株式会社製)0.1重量部配合し、高速攪拌式混合機(ヘンシェルミキサ−:商品名)にて室温下で3分間混合した後、押出機にて溶融混練して融点125℃・MFR=500g/10minのプロピレン系樹脂ペレットを得た。
【0043】
(4)ポリプロピレン系樹脂(PP−4)
水素の量を30L(標準状態の体積として)に変更した以外は、製造例2と同様の操作を行ってポリプロピレン系樹脂を得た。得られたポリプロピレン系重合体のMFRは3,600g/10minであり、融点は125.2℃であった。
【0044】
(5)ポリプロピレン系樹脂(PP−5)
ポリプロピレンにMA1(日本ポリプロ(株)社製)を用いた以外はポリプロピレン系樹脂(PP−2)と同様の操作を行ってポリプロピレン系樹脂を得た。得られたポリプロピレン系樹脂のMFRは80g/10min、Tmは160℃であった。
【0045】
2.脂環族炭化水素:脂環族炭化水素として以下の材料を用いた。
S−1:荒川化学工業社製の水添石油樹脂(商品名:アルコンP−90、軟化点90℃)
S−2:荒川化学工業社製の水添石油樹脂(商品名:アルコンP−125、軟化点120℃)
【0046】
(実施例1)
樹脂組成物としてポリプロピレン系樹脂(PP−1)80重量%と脂環族炭化水素樹脂(S−1)20重量%を押出機にて溶融混練して得られたペレットを用いた。
得られたプロピレン系樹脂を、
図1に示す溶融紡糸型エレクトロスピニング装置において、260℃に加熱した溶融シリンダー内に4g投入し、5分間保持後、ピストンにて0.05cc/hrの吐出量で押し込み、ノズルとターゲット間に40kvの電圧を印加し、極細繊維を得た。
本発明の構成の要件を満たすプロピレン系樹脂組成物から得られた極細繊維として、目的とするナノファイバーが得られた。以上の結果を表1に掲載する。以下の各実施例及び各比較例の結果も表1に掲載する。
【0047】
(実施例2)
樹脂組成物としてポリプロピレン系樹脂(PP−1)80重量%と脂環族炭化水素樹脂(S−2)20重量%を押出機にて溶融混練して得られたペレットを用いた。
得られたプロピレン系樹脂を、実施例1と同様に
図1に示す溶融紡糸型エレクトロスピニング装置において、260℃に加熱した溶融シリンダー内に4g投入し、5分間保持後、ピストンにて0.05cc/hrの吐出量で押し込み、ノズルとターゲット間に40kvの電圧を印加し、極細繊維を得た。
本発明の構成の要件を満たすプロピレン系樹脂組成物から得られた極細繊維として、目的とするナノファイバーが得られた。
【0048】
(実施例3)
樹脂組成物としてポリプロピレン系樹脂(PP−1)40重量%と脂環族炭化水素樹脂(S−1)60重量%を押出機にて溶融混練して得られたペレットを用いた。
得られたプロピレン系樹脂を、実施例1と同様に
図1に示す溶融紡糸型エレクトロスピニング装置において、260℃に加熱した溶融シリンダー内に4g投入し、5分間保持後、ピストンにて0.05cc/hrの吐出量で押し込み、ノズルとターゲット間に40kvの電圧を印加し、極細繊維を得た。
本発明の構成の要件を満たすプロピレン系樹脂組成物から得られた極細繊維として、目的とするナノファイバーが得られた。
【0049】
(実施例4)
樹脂組成物としてポリプロピレン系樹脂(PP−2)80重量%と脂環族炭化水素樹脂(S−1)20重量%を押出機にて溶融混練して得られたペレットを用いた。
得られたプロピレン系樹脂を、実施例1と同様に
図1に示す溶融紡糸型エレクトロスピニング装置において、260℃に加熱した溶融シリンダー内に4g投入し、5分間保持後、ピストンにて0.05cc/hrの吐出量で押し込み、ノズルとターゲット間に40kvの電圧を印加し、極細繊維を得た。
本発明の構成の要件を満たすプロピレン系樹脂組成物から得られた極細繊維として、目的とするナノファイバーが得られた。
【0050】
(実施例5)
樹脂組成物としてポリプロピレン系樹脂(PP−3)80重量%と脂環族炭化水素樹脂(S−1)20重量%を押出機にて溶融混練して得られたペレットを用いた。
得られたプロピレン系樹脂を、実施例1と同様に
図1に示す溶融紡糸型エレクトロスピニング装置において、260℃に加熱した溶融シリンダー内に4g投入し、5分間保持後、ピストンにて0.05cc/hrの吐出量で押し込み、ノズルとターゲット間に40kvの電圧を印加し、極細繊維を得た。
本発明の構成の要件を満たすプロピレン系樹脂組成物から得られた極細繊維として、目的とするナノファイバーが得られた。
【0051】
(実施例6)
樹脂組成物としてポリプロピレン系樹脂(PP−4)80重量%と脂環族炭化水素樹脂(S−1)20重量%を押出機にて溶融混練して得られたペレットを用いた。
得られたプロピレン系樹脂を、実施例1と同様に
図1に示す溶融紡糸型エレクトロスピニング装置において、260℃に加熱した溶融シリンダー内に4g投入し、5分間保持後、ピストンにて0.05cc/hrの吐出量で押し込み、ノズルとターゲット間に40kvの電圧を印加し、極細繊維を得た。
本発明の構成の要件を満たすプロピレン系樹脂組成物から得られた極細繊維として、目的とするナノファイバーが得られた。
【0052】
(
参考例)
樹脂組成物としてポリプロピレン系樹脂(PP−5)80重量%と脂環族炭化水素樹脂(S−1)20重量%を押出機にて溶融混練して得られたペレットを用いた。
得られたプロピレン系樹脂を、実施例1と同様に
図1に示す溶融紡糸型エレクトロスピニング装置において、260℃に加熱した溶融シリンダー内に4g投入し、5分間保持後、ピストンにて0.05cc/hrの吐出量で押し込み、ノズルとターゲット間に40kvの電圧を印加し、極細繊維を得た。
参考例としてのプロピレン系樹脂組成物から得られた極細繊維として
、ナノファイバーが得られた。
【0053】
(比較例1)
ポリプロピレン系樹脂(PP−1)を、脂環族炭化水素樹脂を配合せずに、実施例1と同様に
図1に示す溶融紡糸型エレクトロスピニング装置において、260℃に加熱した溶融シリンダー内に4g投入し、5分間保持後、ピストンにて0.05cc/hrの吐出量で押し込み、ノズルとターゲット間に40kvの電圧を印加し、極細繊維を得た。
本発明の構成の要件を満たさないプロピレン系樹脂組成物から得られた極細繊維としては、目的とするナノファイバーが得られていない。
【0054】
(比較例2)
樹脂組成物としてポリプロピレン系樹脂(PP−1)98重量%と脂環族炭化水素樹脂(S−1)2重量%を押出機にて溶融混練して得られたペレットを用いた。
得られたプロピレン系樹脂を、実施例1と同様に
図1に示す溶融紡糸型エレクトロスピニング装置において、260℃に加熱した溶融シリンダー内に4g投入し、5分間保持後、ピストンにて0.05cc/hrの吐出量で押し込み、ノズルとターゲット間に40kvの電圧を印加し、極細繊維を得た。
本発明の構成の要件を満たさないプロピレン系樹脂組成物から得られた極細繊維としては、目的とするナノファイバーが得られていない。
【0055】
【表1】
【0056】
[実施例と比較例の結果の考察]
表1から明らかなように、実施例1〜
6は本発明の構成の要件を満たしているので、比較例1〜2と対照して、極細繊維としてのナノファイバーが得られている。
比較例1は、脂環族炭化水素樹脂を配合せず、比較例2は、脂環族炭化水素樹脂の配合量が少な過ぎ、本発明の構成の要件を満たしていないので、極細繊維としてのナノファイバーにおいて最細繊維径が劣っている。
以上の結果より、本発明の構成の合理性と有意性及び従来技術に対する卓越性が明示されているといえる。