(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明により本発明が限定されるものではない。以下の説明における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。また、以下に開示する構成は、適宜組み合わせることが可能である。
【0014】
図1は、本実施形態に係る弓形磁石の一例を示す斜視図である。
図2は、本実施形態に係る弓形磁石の長さ方向と直交する面で切った状態を示す断面図である。弓形磁石10は、全体がアーチ形状である。そして、弓形磁石10は、第1曲面11と、第1曲面11の外側11oに、第1曲面11と対向して配置される第2曲面12と、第1曲面11と第2曲面12とにつながる側面13と、を有する形状である。本実施形態において、弓形磁石10は、複数、より具体的には4個の側面13A、13B、13C、13Dを有する。それぞれの側面13A、13B、13C、13Dは平面であり、互いに直交している。なお、本実施形態において側面13は4個であるが、側面の数はこれに限定されるものではない。例えば、側面13B、13Dと第1曲面11との境界を面取りし、側面13を6個にしてもよいし、側面13B、13Dと第2曲面12との境界を面取りし、側面13を6個にしてもよい。
【0015】
第1曲面11又は第2曲面12は、それぞれ所定の軸Za、Zbを中心とした円筒の一部である。第1曲面11及び第2曲面の形状は、軸Za、Zbと直交する平面で切った場合に、円弧形状、すなわち円の一部の形状となる。本実施形態においては、軸Za、Zbは同一であり、第1曲面11の曲率半径raと第2曲面12の曲率半径rbの大きさが異なる(ra<rb)。なお、軸Za、Zbは異なっていてもよい。また、第1曲面11及び第2曲面12は、それぞれ曲率半径が異なっていても同一であってもよい。
【0016】
弓形磁石10の長さ方向とは、第1曲面11又は第2曲面12の中心となる軸Za又は軸Zbと平行な方向である。これは、第1曲面11の曲面又は第2曲面12の曲面、すなわちRに沿った方向(
図1の矢印Cで示す方向)と直交し、かつ第1曲面11の曲面又は第2曲面12の曲面と平行な方向である。本実施形態において、前記長さ方向は、平面形状が長方形の側面13B、13Dと、第1曲面11又は第2曲面12との境界線BLと平行な方向であるともいえる。前記長さ方向と直交する平面で弓形磁石10を切った断面を、弓形磁石10の横断面という。第1曲面11及び第2曲面12の横断面における形状は、円弧形状である。また、前記長さ方向と直交する方向を幅方向といい、
図2に示す軸Za又は軸Zbを中心とし、かつ弓形磁石10を通る円の周方向を、弓形磁石10の周方向という。前記長さ方向における弓形磁石10の寸法を弓形磁石10の長さ(符号はL)、幅方向における弓形磁石10の最大寸法を弓形磁石10の幅(符号はW)という。
【0017】
弓形磁石10は、全体はアーチ形状で、横断面の形状が円弧形状又はC形形状又は扇形形状である。弓形磁石10は、セグメント形の磁石(セグメント磁石)とも呼ばれ、例えば、電動機のステータ(固定子)又はロータ(回転子)等に用いられる。弓形磁石10の適用対象は、電動機に限定されるものではない。例えば、弓形磁石10は、スピーカ、マイク、マグネトロン管、MRI用磁場発生装置、ABSセンサ、燃料・オイルレベルセンサ、ディストリビュータ用センサ、マグネットクラッチ等に用いる永久磁石に対しても広く適用できる。
【0018】
本実施形態において、弓形磁石10はフェライト焼結磁石である。フェライト焼結磁石は、複数のフェライトの磁粉粒子を焼結して得られる。フェライト焼結磁石は、比較的高い磁気特性を有しつつ、安価であることから広く使用されている。フェライト焼結磁石の種類は特に限定されるものではなく、バリウム系、ストロンチウム系、カルシウム系等、いずれでもよい。弓形磁石10がフェライト焼結磁石である場合、弓形磁石10の製法は、湿式製法、乾式製法いずれであってもよく、製法は問わない。
【0019】
なお、本実施形態において、弓形磁石10の種類はフェライト焼結磁石に限定されるものではなく、希土類焼結磁石やサマリウム・コバルト系焼結磁石のような金属焼結磁石であってもよい。また、弓形磁石10は、磁粉粒子を樹脂又はゴム等で固めたボンド磁石であってもよい。すなわち、本実施形態に係る弓形磁石10は、複数の磁粉粒子を成形して得られる、複数の磁粉粒子を含む磁石全般が対象となる。
【0020】
図3は、本実施形態に係る弓形磁石の横断面において、磁粉粒子の磁化容易軸の配向方向を示す断面図である。
図3に示す矢印が磁粉粒子CPmの配向方向を示し、CLは、弓形磁石10の幅方向中心を示す(以下同様)。
図4は、着磁を説明するための図である。
図5は、本実施形態に係る弓形磁石を着磁した状態を示す模式図である。本実施形態において、弓形磁石10は、複数の磁粉粒子CPmの磁化容易軸が、少なくとも2つの軸Zca、Zcbに向かって集束するように配向している。すなわち、弓形磁石10は、
図3に示すように、その横断面において、複数の磁粉粒子CPmは、磁化容易軸の配向方向が、少なくとも2つの点(2つの軸Zca、Zcbと前記横断面との交点)に集束するように配向されている。磁粉粒子を固めて弓形磁石10の形状とする際に、磁場中で成形しながら配向(磁場成形)させることにより、磁化容易軸が少なくとも2つの軸Zca、Zcbに向かって集束するように磁粉粒子CPmを配向させる。この磁場成形の手法は後述する。なお、本実施形態において、磁粉粒子の磁化容易軸の配向方向が集束する部分は、2に限定されるものではない。
【0021】
磁粉粒子CPmの磁化容易軸は、磁粉粒子CPmを構成する磁性材料の結晶の磁化容易軸に相当する。弓形磁石10がフェライト磁石である場合、磁粉粒子CPmは六方晶型の結晶構造を有する。このような結晶構造である場合、結晶CRmの磁化容易軸は、Z軸である(
図3参照)。弓形磁石10を加熱し、ある温度を超えると弓形磁石10の結晶は異常成長を起こす。このような弓形磁石10の横断面を研磨すると、異常成長した結晶は光を反射するようになり、周囲の組織よりも光って見える。したがって、弓形磁石10の結晶を異常成長させて横断面に現れた結晶を観察することにより、磁粉粒子CPmの磁化容易軸が少なくとも2つの軸Zca、Zcbに向かって集束しているか否かを観察することができる。弓形磁石10がフェライト焼結磁石である場合、例えば、
図3に示すように、横断面に現れた結晶CRmの磁化容易軸(Z軸)が向いている方向を求めて、磁化容易軸が少なくとも2つの軸Zca、Zcbに向かって集束しているか否かを知ることができる。
【0022】
磁粉粒子CPmを上述したように配向させることにより、弓形磁石10は、幅方向中心CLを境に磁粉粒子CPmの配向方向が軸Zcaに向かって集束する部分と、軸Zcbに向かって集束する部分とに分けられる。本実施形態において、例えば、
図4に示すように、1個の弓形磁石10は、磁性のケース1に組み込まれ、電源3から電力が供給されて磁界を発生させる内面着磁ヨーク2により2極(N極、S極)に着磁される。
【0023】
例えば、
図5に示すように、幅方向中心CLで区画される弓形磁石10の一方を第1部分10nとし、他方を第2部分10sとする。
図5に示す例では、第1部分10nがN極に、第2部分10sがS極に着磁される。このため、1個の弓形磁石10は、その周方向に向かってN極とS極とが入れ替わる。上述したように、弓形磁石10が有する複数の磁粉粒子CPmの磁化容易軸が配向する方向は、軸Zca、Zcbに向かっているので、弓形磁石10の磁化の方向は、第1部分10nにおいて軸Zcaに向かい、第2部分10sにおいて軸Zcbに向かう。このように、弓形磁石10は、第1部分10nと第2部分10sとでそれぞれ磁化の方向が異なるため、弓形磁石10を電動機に用いた場合、弓形磁石10の磁束はそれぞれの電動機のティースTSに集中しやすくなる。その結果、弓形磁石10は、ティースTSが利用できる磁束密度を増加させることができる。この点については後述する。
【0024】
図6は、1極ずつ着磁した弓形磁石と電動機のティースとの関係を示す図である。
図7は、2極の着磁をした弓形磁石と電動機のティースとの関係を示す図である。
図6に示す例において、それぞれの弓形磁石110n、110sは、ラジアル配向により、磁粉粒子の磁化容易軸がそれぞれ軸Zca、Zcbへ向くように配向される。そして、弓形磁石110nはN極に、弓形磁石110sはS極に着磁される。このような弓形磁石110n、110sを、電動機のロータに組み付けると、それぞれの弓形磁石110n、110sからの磁束は、それぞれ軸Zca、Zcbへ向かう。その結果、前記磁束は、電動機のそれぞれのティースTSに集中しやすくなるとともに、それぞれのティースTSを通過する磁束量も多くなる。
【0025】
図7に示す例の弓形磁石210は、周方向の寸法が、
図6に示す弓形磁石110n、110sを周方向に連結した寸法と同程度である。弓形磁石210は、ラジアル配向により、磁粉粒子の磁化容易軸が軸Zcへ向くように配向される。そして、弓形磁石210は、ラジアル配向を施された後、幅方向中心CLで区画される弓形磁石210の一方である第1部分210nがN極に着磁され、他方である第2部分210sがS極に着磁される。このような弓形磁石210を、例えば、電動機のロータに組み付けると、第1部分210n及び第2部分210sからの磁束は、いずれも軸Zcへ向かうので、電動機のそれぞれのティースTSを通過する磁束量が少なくなる。その結果、ティースTSが利用できる磁束密度は、
図6に示す弓形磁石110n、110sよりも低下する。
【0026】
上述したように、本実施形態においては、弓形磁石10の磁粉粒子の磁化容易軸が配向する方向は、軸Zca、Zcbに向かって集束している。このため、弓形磁石10が着磁されると、弓形磁石10のからの磁束は、第1部分10nにおいて軸Zcaに向かい、第2部分10sにおいて軸Zcbに向かう。このような弓形磁石10を、例えば、電動機のロータに組み付けると、第1部分10nからの磁束と第2部分10sからの磁束とが、電動機のそれぞれのティースTSに向かうので、それぞれのティースTS通過する磁束の量は弓形磁石210よりも多くなる。その結果、ティースTSが利用できる磁束密度は、
図7に示す弓形磁石210よりも増加する。
【0027】
また、
図6に示す弓形磁石110n、110sは、電動機のロータに組み込んだ場合、両者の間には周方向に一定の間隔Iが生ずる。すなわち、弓形磁石110n、110sは、一対のN極とS極との組み合わせにおいて、極間に一定の間隔Iが生ずる。
図5に示すように、本実施形態の弓形磁石10は、1個の磁石を2極(N極、S極)に着磁するので、周方向に向かってN極とS極とが連続している。このような構造により、
図5、
図6から分かるように、弓形磁石10は、1極に着磁したN極及びS極の弓形磁石110n、110sを周方向に配置する場合とは異なり、極間に一定の間隔Iは生じない。このため、弓形磁石10を用いた場合、ティースTSは、幅方向中心CL付近の領域(中心領域)Cからの弓形磁石10の磁束も利用できる。その結果、ティースTSが利用できる磁束密度は、
図6に示す弓形磁石110n、110sよりも増加する。次に、弓形磁石10の表面における磁束密度(表面磁束密度)Bdについて説明する。
【0028】
図8、
図9は、弓形磁石の表面磁束密度を測定する手法の説明図である。表面磁束密度Bdを測定する場合、
図8に示すように、着磁した弓形磁石10の第1曲面11の付近にホール素子6を配置する。このときのホール素子6は、第1曲面11の長さ方向における中央部に位置させて、第1曲面11に接触させるか、できるだけ接近させて配置する。そして、弓形磁石10を周方向(
図8の矢印CRで示す方向)に回転させることにより、第1曲面11の周方向における一端PAから他端PBにかけての表面磁束密度Bdの分布が測定される。なお、弓形磁石10を回転させる場合、ホール素子6と第1曲面11との距離が変動しないようする。
【0029】
弓形磁石10の第2曲面12の表面磁束密度Bdを測定する場合、
図9に示すように、着磁した弓形磁石10の第2曲面12の付近にホール素子6を配置する。このときのホール素子6は、第2曲面12の長さ方向における中央部に位置させて、第2曲面12に接触させるか、できるだけ接近させて配置する。そして、弓形磁石10を周方向(
図9の矢印CRで示す方向)に回転させることにより、第2曲面12の周方向における一端PCから他端PDにかけての表面磁束密度Bdの分布が測定される。なお、弓形磁石10を回転させる場合、ホール素子6と第2曲面12との距離が変動しないようする。上述したようにして測定された表面磁束密度Bdを、弓形磁石10の周方向位置に対してプロットすると、表面磁束密度Bdの分布曲線(波形)が得られる。
【0030】
図10は、本実施形態に係る弓形磁石を1極で着磁した場合における表面磁束密度の波形を示す図である。
図11は、本実施形態に係る弓形磁石と寸法及び形状が同じ弓形磁石をラジアル配向して1極で着磁した場合における表面磁束密度の波形を示す図である。
図12は、本実施形態に係る弓形磁石を1極で着磁した場合の他の例における表面磁束密度の波形を示す図である。
図10から
図12の測定に用いた弓形磁石は、いずれも材料、寸法及び形状は同一であり、磁場配向の方法が異なる。
【0031】
図10から
図12の横軸は、弓形磁石の周方向位置θ(度)であり、縦軸は表面磁束密度Bdである。周方向位置は、θが90度及び270度を中心としておよそ±45度の範囲が、弓形磁石10の第1曲面11又は第2曲面12の周方向における範囲である。
図10から
図12の縦軸は、測定値を基準の表面磁束密度で規格化した相対値であるが、基準の表面磁束密度は同じ値なので、それぞれの結果同士を比較することはできる。
【0032】
図10に示すように、弓形磁石10を1極で着磁した場合において、弓形磁石10の表面、すなわち、第1曲面11と第2曲面12との少なくとも一方での磁束密度(表面磁束密度)Bdの波形は、弓形磁石10を構成する複数の磁粉粒子の磁化容易軸の配向方向(磁粉粒子配向方向)が集束する軸(横断面においては点)の数だけピークを有する。第1曲面11及び第2曲面12の両方で、それぞれ前記ピークを有する場合、弓形磁石10の有する前記ピークの数は、前記配向方向が収束する軸の数の2倍になる。例えば、前記配向方向が収束する軸の数が2つである場合、弓形磁石10の有する前記ピークの数は4つになる。また、第1曲面11又は第2曲面12のいずれか一方で前記ピークを有する場合、弓形磁石10の有する前記ピークの数は、前記配向方向が収束する軸の数に等しくなる。例えば、前記配向方向が収束する軸の数が2つである場合、弓形磁石10の有する前記ピークの数は2つになる。
【0033】
本実施形態では、前記配向方向が集束する軸は、
図3に示すように2つである。
図10に示すように、弓形磁石10の表面磁束密度Bdの波形は、第1曲面11においては2つのピークPiを有し、第2曲面12においては2つのピークPoを有する。一方、
図11に示すように、
図3に示す弓形磁石10と寸法及び形状が同じ弓形磁石をラジアル配向して1極で着磁した場合、表面磁束密度Bdの波形は一つのピークのみ有する。これは、弓形磁石10の磁粉粒子配向方向が2つの異なる軸に集束した結果、着磁後における表面磁束密度Bdも、弓形磁石10の周方向において異なる2箇所で高くなることにより、ピークを形成するためであると考えられる。
【0034】
図12に示す例は、磁場配向の条件、より具体的には、磁場成形における磁場を
図10に示す例よりも弱めたものである。この例において、弓形磁石10の表面磁束密度Bdの波形は、第2曲面12において2つのピークPoを有する。また、弓形磁石10の第1曲面11における表面磁束密度Bdの波形は、弓形磁石10の周方向位置θが90度近傍、すなわち、幅方向中心に向かって減少し、θ=90度近傍で極小値をとる。その過程で、表面磁束密度Bdの波形は、極小値をとる位置を除き、Pviで示す位置で前記波形が上に凸になるように、前記波形の曲がる方向が変化する。弓形磁石10は、弓形磁石10の磁粉粒子配向方向が集束する軸は2つ存在するため、第1曲面11の周方向において、磁束密度が異なる2箇所に集中した結果、表面磁束密度Bdの波形は、Pviで示す位置において、曲がる方向が変化したと考えられる。
【0035】
このように、弓形磁石10は、磁場配向の条件が異なることにより、表面磁束密度Bdの波形が異なることがある。しかし、第1曲面11と第2曲面12との少なくとも一方における表面磁束密度Bdの波形は、磁粉粒子配向方向が集束する軸の数だけピークを有する。このように、弓形磁石10は、第1曲面11と第2曲面12との少なくとも一方の周方向における表面磁束密度Bdの波形(分布)が、磁粉粒子配向方向が集束する軸の数だけピークを有する点に特徴がある。
【0036】
図11に示すように、
図3に示す弓形磁石10と寸法及び形状が同じ弓形磁石をラジアル配向して1極で着磁した場合、表面磁束密度Bdの最高値は、第1曲面11において6程度である。一方、弓形磁石10においては、表面磁束密度Bdの最高値は、第1曲面11におけるピークPiの値であり、6.8程度になる。また、弓形磁石10の表面磁束密度Bdの最小値は、第1曲面11において6.0程度であり、
図11の弓形磁石と同程度である。
【0037】
図10に示す例と
図11に示す例とでトータルフラックスを比較した。
図11に示す、ラジアル配向して1極で着磁した弓形磁石のトータルフラックスは172μWbであった。これに対し、
図10に示す例、すなわち、磁粉粒子配向方向を2つの異なる軸に集束させた弓形磁石10のトータルフラックスは177.6μWbであった。このように、弓形磁石10は、ラジアル配向して1極で着磁した弓形磁石に対して、トータルフラックスは約3%向上した。この結果から、弓形磁石10は、磁場配向の条件を調整して磁粉粒子配向方向が集束する軸の位置を調整することにより、寸法及び形状が同じ弓形磁石10をラジアル配向した場合よりも、高い表面磁束密度を得ることができるといえる。
【0038】
図10に示す例において、弓形磁石10の第1曲面11における表面磁束密度Bdは、ピークPiの値の絶対値が6.7及び6.9、最小値の絶対値が6.0である。第1曲面11において、表面磁束密度Bdの波形のピークPiと最小値との差の絶対値は、それぞれ0.7、0.9であり、最小値の絶対値の11.7%、15%である。また、弓形磁石10の第2曲面12における表面磁束密度Bdは、ピークPoの値の絶対値がいずれも3.1、最小値の絶対値が3.5である。第2曲面12において、表面磁束密度Bdの波形のピークPoと最小値との差の絶対値は0.4であり、最小値の絶対値の11.4%である。
図12に示す例において、弓形磁石10の第2曲面12における表面磁束密度Bdは、ピークPoの値の絶対値がそれぞれ4.2、4.1、最小値の絶対値が4.45である。第2曲面12において、表面磁束密度Bdの波形のピークPoと最小値との差の絶対値は0.25、0.35であり、最小値の絶対値の5.6%、7.8%である。これらの結果から、本実施形態において、弓形磁石10は、表面磁束密度Bdの波形のピークと最小値との差の絶対値は、最小値の絶対値の5%以上、好ましくは10%以上あれば、磁粉粒子配向方向を2つの異なる軸に集束させ、有効に利用できる磁束密度の低下を抑制することができる。
【0039】
弓形磁石10を備える電動機は、弓形磁石10の第1曲面11が電動機のステータ26が有するティース23と対向している。しかし、
図10及び
図12の結果から分かるように、弓形磁石10は、第2曲面12においても、表面磁束密度Bdの波形のピークは、周方向において異なる2箇所に存在する。したがって、ステータが有するティースと弓形磁石の外周面とが対向する方式の電動機に対しても、弓形磁石10を適用すれば、前記ティースが磁束密度を有効に利用できるので好ましい。次に、弓形磁石10を磁場成形するための磁場成形装置を説明する。
【0040】
図13は、本実施形態に係る弓形磁石を磁場成形する磁場成形装置の説明図である。
図14は、本実施形態に係る磁場成形装置が有する成形用金型を示す説明図である。
図1、
図3等に示す弓形磁石10は、磁場成形装置50によって磁場中で成形(磁場成形)され、この成形体を焼結することによって製造される。磁場成形装置50は、型枠51と、第1パンチ52と、第2パンチ53と、磁場発生用コイル55とを含む。磁場成形装置50は、型枠51と第1パンチ52と第2パンチ53とで囲まれる成形空間54内の磁粉粒子CPm(
図14参照)を加圧して、円弧状の形状に成形する。型枠51と、第1パンチ52と、第2パンチ53とが、弓形磁石10を磁場成形する際の成形用金型50Mとなる。
【0041】
型枠51は、強磁性体であり、シリンダ部51Cを有する。シリンダ部51Cは、断面が矩形、すなわち、弓形磁石10の平面視の形状である貫通孔である。本実施形態においては、シリンダ部51Cの一方の開口に第1パンチ52が配置される。第2パンチ53は、シリンダ部51Cの他方の開口からシリンダ部51Cの内部へ進入している。本実施形態において、第1パンチ52は鉛直方向とは反対側(上方)に配置され、第2パンチ53は鉛直方向側(下方)に配置される。成形空間54は、型枠51、すなわち型枠51のシリンダ部51Cと第1パンチ52と第2パンチ53とで囲まれる空間である。
【0042】
磁場成形時においては、シリンダ部51Cの内部に磁粉粒子CPmを投入し、第1パンチ52をシリンダ部51Cの一方の開口に配置する。そして、磁場発生用コイル55によって成形空間54内の磁粉粒子CPmに磁界を印加しながら、第2パンチ53を第1パンチ52側に進入させて(
図13の矢印Pで示す方向)、成形空間54内の磁粉粒子CPmを加圧する。このような処理によって、磁粉粒子CPmは磁界中で加圧されるので、前記磁界の方向に磁粉粒子CPmの磁化容易軸が配向しながら、横断面が円弧形状に成形される。このようにして得られた磁粉粒子の成形体を焼結することにより、弓形磁石10を得ることができる。
【0043】
第1パンチ52は、磁粉粒子CPmと接する成形面52aを有する非磁性体52Nと、非磁性体52Nの成形面52aとは反対側(成形空間54側)で非磁性体52Nと接する強磁性体52Mとを含む。すなわち、非磁性体52Nは、成形面52aとは反対側で強磁性体52Mと接する。第2パンチ53は、磁粉粒子CPmと接する成形面53aを有する非磁性体53Nと、非磁性体53Nの成形面53aとは反対側(成形空間54側)で非磁性体53Nと接し、かつ非磁性体53Nと接する部分に、非磁性体53Nに向かって突出する凸部56を少なくとも2つ有する強磁性体53Mとを含む。すなわち、非磁性体53Nは、成形面53aとは反対側で強磁性体53Mと接する。このような構造により、磁場成形装置50の第1パンチ52が有する非磁性体52Nと、第2パンチ53が有する非磁性体53Nとは、型枠51のシリンダ部51C内で対向している。凸部56の数は、
図1、
図3等に示す弓形磁石10の磁粉粒子配向方向が集束する軸の数に対応しており、2個に限定されるものではない。凸部56の形状は、曲面形状である。
【0044】
本実施形態において、第1パンチ52が有する非磁性体52Nの成形面52aは、弓形磁石10の第2曲面12を形成する。また、第2パンチ53が有する非磁性体53Nの成形面53aは、弓形磁石10の第1曲面11を形成する。このため、成形面52aは、弓形磁石10の第2曲面12を転写した形状、すなわち凹形の曲面形状であり、成形面53aは、弓形磁石10の第1曲面11を転写した形状、すなわち凸形の曲面形状である。
【0045】
第2パンチ53が有する強磁性体53Mは、曲面形状の凸部56を2つ有することにより、成形用金型50M内の磁束をそれぞれの凸部56、56に向かわせることができる。その結果、弓形磁石10を構成する複数の磁粉粒子の磁化容易軸は、
図3に示す2つの異なる軸Zca、Zcbに向かって集束するようになる。このような作用によって、磁場成形装置50は、
図3に示すような、第1曲面11の内側に存在する2つの異なる軸Zca、Zcbに向かって磁粉粒子配向方向が集束する弓形磁石10を得ることができる。また、成形空間54内に、第1パンチ52の非磁性体52Nと第2パンチ53の非磁性体53Nとを対向して配置し、磁場成形中においては磁粉粒子CPmと接するようにすることにより、弓形磁石10の配向が第1曲面11又は第2曲面12に集束することを抑制できる。凸部56の曲面の曲率半径や頂点の位置等は、磁粉粒子配向方向が集束する軸の位置に応じて適宜調整される(以下同様)。
【0046】
強磁性体で作られる型枠51及び強磁性体52M、53Mの材料は特に限定されず、一般に用いられるものであればよい。例えば、炭素鋼、炭素工具鋼、合金工具鋼、ダイス鋼等が型枠51及び強磁性体52M、53Mの材料として用いられる。非磁性体52N、53Nの材料は特に限定されず、ステライト(登録商標)、ステンレス鋼、銅ベリリウム合金、ハイマンガン鋼、青銅、真鍮、非磁性超鋼等を用いることができる。
【0047】
また、第1パンチ52と第2パンチ53とのいずれか一方は、強磁性体のみを有し、磁場成形中において強磁性体が磁粉粒子CPmと接するようにしてもよい。すなわち、本実施形態においては、第1パンチ52と第2パンチ53との少なくとも一方が、非磁性体を有していればよい。このようにすると、
図13に示す磁場発生用コイル55が発生する磁場の強さを変更せずに、磁場配向の条件を変更することができる。このため、第1パンチ52と第2パンチ53との少なくとも一方が、非磁性体を有するようにすると、磁場配向の条件を変更する際の自由度が高くなる。その結果、製造する弓形磁石10の特性に応じて、磁場配向の条件を容易に変更することができる。例えば、
図12に示す例の弓形磁石は、第1パンチ52を強磁性体52Mのみとして磁場成形して得られたものである。なお、第1パンチ52と第2パンチ53との少なくとも一方が非磁性体を有する場合、非磁性体と接する強磁性体は、非磁性体と接する部分に、非磁性体に向かって突出する凸部を少なくとも2つ有するようにする。第1パンチ52と第2パンチ53との少なくとも一方が、非磁性体を有する場合、非磁性体と接する強磁性体は、非磁性体に向かって突出する凸部を少なくとも2つ有する。
【0048】
図15は、本実施形態に係る磁場成形装置が有する成形要金型の変形例を示す説明図である。この成形用金型50Maは、第2曲面12(
図2参照)の外側に存在する2つの異なる軸に向かって磁粉粒子配向方向を集束させた弓形磁石10を得るためのものである。この成形用金型50Maは、型枠51が有するシリンダ部51Cの一方の開口に配置される第1パンチ52aが有する強磁性体52Maが、非磁性体52Naに向かって突出する凸部57を2つ有する。また、第2パンチ53aは、非磁性体53Naと、非磁性体53Nの成形空間54側で非磁性体53Nと接する強磁性体53Maとを含んでいる。そして、他方の開口からシリンダ部51C内に第2パンチ53aが進入する。
【0049】
このような構造により、第1パンチ52aは、成形用金型50Ma内の磁束をそれぞれの凸部57、57に向かわせることができる。その結果、弓形磁石10を構成する複数の磁粉粒子の磁化容易軸は、第2曲面12(
図2参照)の外側に存在する2つの異なる軸に向かって集束するようになる。この成形用金型50Maは、第2曲面12(
図2参照)の外側に存在する2つの異なる軸に向かって磁粉粒子配向方向を集束させた弓形磁石10を成形することができる。
【0050】
また、成形用金型50Maにおいて、第2パンチ53aを、
図14示す第2パンチ53としてもよい。すなわち、成形用金型50Maは、成形面53aを有する非磁性体53Nと、この非磁性体53Nの反成形面側に接触し、かつ非磁性体53Nに向かって突出する凸部56を少なくとも2つ有する強磁性体52Mとを含む第2パンチ53を備えてもよい。このようにすれば、弓形磁石10を構成する複数の磁粉粒子の磁化容易軸は、第1曲面11の内側に存在する2つの異なる軸及び第2曲面12の外側に存在する2つの異なる軸に向かって集束するようになる。その結果、このような第1パンチ52a及び第2パンチ53を有する成形用金型50Maは、第1曲面11の内側に存在する2つの異なる軸及び第2曲面12の外側に存在する2つの異なる軸に向かって磁粉粒子配向方向を集束させた弓形磁石10を成形することができる。このように、本実施形態においては、第1パンチと第2パンチとの少なくとも一方が有する強磁性体は、非磁性体と接する部分に、非磁性体に向かって突出する凸部を少なくとも2つ有していればよい。
【0051】
図16、
図17は、本実施形態に係る弓形磁石を製造する他の手法を示す説明図である。この手法(製造方法)は、
図1、
図3等に示す弓形磁石10の周方向における寸法が半分の部分弓形磁石10S、10Sを接合することにより、弓形磁石10を得るものである。まず、部分弓形磁石10S、10Sを製造する。部分弓形磁石10S、10Sは、磁場成形においては、それぞれ、ラジアル配向される。このとき、部分弓形磁石10S、10Sの磁粉粒子配向方向は、軸Zca、Zcbに集束するようにする。
【0052】
磁場成形が終了した部分弓形磁石10S、10Sは、それぞれの側面10SP、10SP同士で接合される。この接合には、例えば、エポキシ系の接着剤が用いられる。部分弓形磁石10S、10S同士が接着されると、弓形磁石10aが完成する。この弓形磁石10は、第1曲面11aの内側に存在する2つの異なる軸Zca、Zcbに向かって磁粉粒子配向方向が集束する。このように、弓形磁石10は、ラジアル配向させた複数の部分弓形磁石10S、10Sを接合することによっても製造することができる。したがって、この手法によれば、上述した成形用金型50M、50Maを用いないでも、弓形磁石10を製造することができる。
【0053】
以上、本実施形態に係る弓形磁石は、長さ方向と直交する面で切った横断面において、弓形磁石が有する複数の磁粉粒子は、磁化容易軸の配向方向が、少なくとも2つの点に集束するようにするとともに、集束する点の数と同じ極の数(本実施形態では2)に着磁する。このようにすることで、本実施形態に係る弓形磁石から、これに対向する電動機のティースへ向けて磁束を集中させることができる。その結果、本実施形態に係る弓形磁石は、1極に着磁した弓形磁石をN極、S極と交互に配列した場合と比較して、ティースが利用できる磁束密度を同等以上とすることができる。
【0054】
また、本実施形態に係る弓形磁石は、1極に着磁した弓形磁石をN極、S極と交互に配列して用いる場合の弓形磁石を周方向に2個連結した寸法の弓形磁石であり、1個の弓形磁石を2極に着磁して用いる。このため、本実施形態に係る弓形磁石を電動機に用いた場合、1極に着磁した弓形磁石をN極、S極と交互に配列して用いる場合と比較して、弓形磁石を電動機に組み付ける作業を軽減できるので、電動機の生産性が向上するとともに、製造コストも低減できる。
【0055】
また、本実施形態に係る弓形磁石を電動機に用いた場合、1極に着磁した弓形磁石をN極、S極と交互に配列して用いる場合と比較して、使用する弓形磁石の個数を半分にすることができる。弓形磁石を磁場成形で製造する場合、弓形磁石の寸法が変化しても、磁場成形に要する時間はほぼ同じである。このため、1台の電動機に使用する弓形磁石の個数を半分にできるということは、1台の電動機に用いるすべての弓形磁石を製造する時間を約半分にできることになる。
【0056】
また、弓形磁石がフェライト焼結磁石である場合、必要な形状及び寸法を得るために、焼結後に研磨が必要である。この研磨は、通常、弓形磁石を、その長さ方向に向かって研磨装置へ送る。すなわち、研磨においては、研磨装置を通過する弓形磁石の総長さが研磨に要する時間に比例する。電動機に使用する弓形磁石の個数を半分にできるということは、1台の電動機に用いるすべての弓形磁石が研磨装置に通過する個数を半分にできるということである。したがって、本実施形態に係る弓形磁石は、1極に着磁した弓形磁石をN極、S極と交互に配列して用いる場合と比較して、研磨装置を通過する弓形磁石の総長さも半分にできるので、研磨に要する時間を約半分にすることができる。
【0057】
さらに、完成した弓形磁石は検査され、検査に合格したものが梱包され、製品として出荷される。1台の電動機に使用する弓形磁石の個数を半分にできるということは、検査する弓形磁石の数を半分にできるということである。このため、検査に要する時間は半減するので、弓形磁石の生産性は向上するとともに、検査員の負担も軽減される。また、1台の電動機に使用する弓形磁石の個数を半分にできるので、1極に着磁した弓形磁石をN極、S極と交互に配列して用いる場合と比較して、1台の電動機分の弓形磁石を梱包する梱包材の量も低減できる。このため、本実施形態に係る弓形磁石は、環境負荷も低減できる。このように、本実施形態に係る弓形磁石は、1極に着磁した弓形磁石をN極、S極と交互に配列して用いる場合と比較して、生産性の向上及び製造コストの低減を図ることができるとともに、検査員の負担及び環境負荷も低減できるという利点がある。