【実施例】
【0031】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
なお、物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
【0032】
(1)ポリエステル中の、リンを含有する微小異物個数
ポリエステルチップ1kgを倍率10倍のルーペで観察して、ポリエステル中にある異物(最大直径10〜50μm)の有無を確認し、異物が確認されたポリエステルチップをヘキサフルオロイソプロパノールで溶解させ、異物のみを取り出し、SEMに付属したエネルギー分散型X線分析装置(EDX:堀場製作所社製、EMAX−7000型)および赤外顕微鏡(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、NICOLET CONTINUμM型)を備えたフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、NICOLET6700型)を用いて組成分析を行い、エネルギー分散型X線分析装置でリンのピークを検出し、かつフーリエ変換赤外分光光度計でポリエチレンテレフタレートのピークを検出した異物の個数をカウントした。
【0033】
(2)ポリエステルの濾過性
濾過性試験機(富士フィルター工業社製、MELT SPINNING TESTER)を用いて、フィルター目開き20μm、濾過面積4.9cm
2、温度設定252℃、濾過速度10g/分において、ポリエステル組成物6kg通過時の圧力と初期圧力の差を濾過圧力ΔPとして判定した。濾過圧力が小さいほど、異物が少なく良好である。
【0034】
(3)ポリエステル中の金属元素量
蛍光X線元素分析装置(堀場製作所社製、MESA−500W型)を用いて、各元素に対する蛍光X線強度を求め、あらかじめ作成しておいた検量線より求めた。
【0035】
実施例1
テレフタル酸86重量部、エチレングリコール39重量部とのエステル反応物。即ちビスヒドロキシエチルテレフタレート(低重合体)をエステル化反応槽で255℃で溶融し、これにテレフタル酸86重量部、エチレングリコール39重量部の組成からなる混合物を加え、255℃で攪拌しながらエステル化反応を行った。エステル化反応を続け、水の留出量がエステル化反応率で97%以上となる理論留出量に達したところで、テレフタル酸86重量部に相当する反応物を重縮合反応装置に移行した。重縮合反応装置に移行した反応物に、ポリメチルフェニルシロキサン0.15重量部を添加した。ポリエチレンテレフタレートシートを用いて厚さ200μmの容器およびそのふたを射出成形して、エチレングリコールで15重量%に希釈したリン酸をリン原子換算で40ppmとなる量に充填した。重縮合反応装置の温度が252℃の時点で重縮合反応装置の撹拌機を停止して30秒後にリン酸を充填した容器を投入し、容器の投入終了から30秒後に撹拌を再開した。さらに三酸化アンチモンを0.040重量部、酢酸マグネシウム4水塩を0.060重量部、ペンタエリスリトール=テトラキス[3−(tert−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオナート]を0.10重量部添加した。重縮合反応装置内の温度が220℃となった時点で重縮合反応装置の内容物を撹拌しながら減圧および昇温を開始し、エチレングリコールを留出させながら重合をおこなった。なお、減圧は60分かけて常圧から133Pa以下に減圧し、昇温は60分かけて280℃まで昇温した。
重縮合反応装置の撹拌トルクが所定の値に達したら重縮合反応装置内を窒素ガスにて常圧へ戻し、重縮合反応装置下部のバルブを開けてガット状のポリマーを水槽へ吐出した。水槽で冷却されたポリエステルガットはカッターにてカッティングし、ポリエチレンテレフタレートチップを得た。
得られたポリエステルの特性を表1および2に示す。本発明のポリエステルには微小異物は確認されず、濾過性による濾過圧力ΔPは0.1MPaと良好であった。
【0036】
実施例2
リン化合物としてトリエチルホスホノアセテートを使用した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。結果を表1および2に示す。本発明のポリエステルには微小異物は確認されず、濾過性による濾過圧力ΔPは0.1MPaと良好であった。
【0037】
実施例3
リン化合物としてフェニルホスホン酸ジメチルを使用した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。結果を表1および2に示す。本発明のポリエステルには微小異物は確認されず、濾過性による濾過圧力ΔPは0.1MPaと良好であった。
【0038】
実施例4〜6
容器に充填する際のリン酸の濃度を変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。結果を表1および2に示す。微小異物個数および濾過性による濾過圧力ΔPは良好であった。
【0039】
実施例7
ポリメチルフェニルシロキサンを添加しない以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。結果を表1および2に示す。微小異物個数は2個、濾過性による濾過圧力ΔPは0.1MPaと良好であった。
【0040】
実施例8
シリコーンとしてポリジメチルシロキサンを使用した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。結果を表1および2に示す。微小異物個数は1個、濾過性による濾過圧力ΔPは0.2MPaと良好であった。
【0041】
実施例9、10
リン酸を充填した容器を投入する際の重縮合反応装置内温度を変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。結果を表1および2に示す。微小異物個数は1個および2個、濾過性による濾過圧力ΔPは共に0.1MPaと良好であった。
【0042】
実施例11、12
重縮合反応を開始する際の重縮合反応装置内温度を変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。結果を表1および2に示す。微小異物個数は1個および2個、濾過性による濾過圧力ΔPは0.1MPaおよび0.2MPaと良好であった。
【0043】
実施例13〜16
ポリエステルへのリン酸の添加量を変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。結果を表1および2に示す。微小異物個数および濾過性による濾過圧力ΔPは良好であった。
【0044】
実施例17
重縮合反応を開始する直前に数平均分子量1000のポリエチレングリコール6重量部を添加するよう変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。結果を表1および2に示す。本発明のポリエステルには微小異物は確認されず、濾過性による濾過圧力ΔPは0.1MPaと良好であった。
【0045】
実施例18、19
容器に充填する際のリン酸の濃度を変更した以外は実施例17と同様にしてポリエステルを重合した。結果を表1および2に示す。微小異物個数は2個および1個、濾過性による濾過圧力ΔPは共に0.1MPaと良好であった。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
実施例20
ポリメチルフェニルシロキサンを添加しない以外は実施例17と同様にしてポリエステルを重合した。結果を表3および4に示す。微小異物個数は3個、濾過性による濾過圧力ΔPは0.2MPaと良好であった。
【0049】
実施例21、22
表2のポリエチレングリコールの数平均分子量を添加した以外は実施例17と同様にしてポリエステルを重合した。結果を表3および4に示す。微小異物個数は2個および0個、濾過性による濾過圧力ΔPは0.2MPaおよび0.1MPaと良好であった。
【0050】
実施例23、24
リン酸を充填した容器を投入する際の重縮合反応装置内温度を変更した以外は実施例17と同様にしてポリエステルを重合した。結果を表3および4に示す。微小異物個数は1個および2個、濾過性による濾過圧力ΔPは共に0.2MPaと良好であった。
【0051】
実施例25、26
重縮合反応を開始する際の重縮合反応装置内温度を変更した以外は実施例17と同様にしてポリエステルを重合した。結果を表3および4に示す。微小異物個数は共に1個、濾過性による濾過圧力ΔPは共に0.1MPaと良好であった。
【0052】
実施例27、28
ポリエステルへのリン酸の添加量を変更した以外は実施例17と同様にしてポリエステルを重合した。結果を表3および4に示す。微小異物個数は1個および4個、濾過性による濾過圧力ΔPは0.1MPaおよび0.3MPaと良好であった。
【0053】
実施例29
実施例1と同様の方法で得た、テレフタル酸86重量部に相当するエステル化反応物を重縮合反応装置に移行した。重縮合反応装置に移行した反応物に、ポリメチルフェニルシロキサン0.15重量部、三酸化アンチモンを0.040重量部、酢酸マグネシウム4水塩を0.060重量部、ペンタエリスリトール=テトラキス[3−(tert−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオナート]を0.10重量部、数平均分子量1000のポリエチレングリコール6を重量部添加した。重縮合反応装置の内容物を撹拌しながら減圧および昇温を開始し、エチレングリコールを留出させながら重合をおこなった。なお、減圧は60分かけて常圧から133Pa以下に減圧し、昇温は60分かけて242℃から280℃まで昇温した。
【0054】
重縮合反応装置の撹拌トルクが所定の値に達したら、ポリエチレンテレフタレートシートを用いて厚さ200μmの容器およびそのふたを射出成形して、エチレングリコールで15重量%に希釈したリン酸をリン原子換算で40ppmとなる量に充填した。重縮合反応装置の撹拌機を停止して30秒後にリン酸を充填した容器を投入し、容器の投入終了から30秒後に撹拌を再開した。この時の重縮合反応装置の温度は279℃であった。さらに減圧下で撹拌を15分行った後、重縮合反応装置内を窒素ガスにて常圧へ戻し、実施例1と同様の方法でポリエチレンテレフタレートチップを得た。
結果を表3および4に示す。リン酸を充填した容器を投入する際および重縮合反応を開始する際の重縮合反応装置内温度が規定の範囲外であったため、微小異物個数は7個、濾過性による濾過圧力ΔPは0.5MPaと若干高めであったが問題ないレベルであった。
【0055】
実施例30
テレフタル酸ジメチル101重量部、エチレングリコール56重量部、ポリメチルフェニルシロキサン0.15重量部、三酸化アンチモン0.030重量部、酢酸カルシウム0.090重量部、ペンタエリスリトール=テトラキス[3−(tert−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオナート]0.10重量部を145℃で溶融、撹拌しながら235℃まで3時間かけて昇温し、メタノールを留出させてエステル交換反応を行った。エステル交換反応を続け、メタノールの留出量がエステル交換反応率で97%以上となる理論留出量に達したところで、エステル交換反応物を重縮合反応装置に移行した。ポリエチレンテレフタレートシートを用いて厚さ200μmの容器およびそのふたを射出成形して、エチレングリコールで15重量%に希釈したリン酸をリン原子換算で70ppmとなる量に充填した。重縮合反応装置に移行した反応物に、重縮合反応装置の温度が252℃の時点で重縮合反応装置の撹拌機を停止して30秒後にリン酸を充填した容器を投入し、容器の投入終了から30秒後に撹拌を再開した。さらに数平均分子量1000のポリエチレングリコール6重量部添加した。重縮合反応装置内の温度が220℃となった時点で重縮合反応装置の内容物を撹拌しながら減圧および昇温を開始し、実施例1と同様の方法で重縮合反応を行いポリエチレンテレフタレートチップを得た。
得られたポリエステルの特性を表3および4に示す。本発明のポリエステルの微小異物個数は3個、濾過性による濾過圧力ΔPは0.2MPaと良好であった。
【0056】
比較例1
実施例1のポリエステルの重合において、リン酸を容器に充填せずに重縮合反応装置に添加した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。結果を表3および4に示すが、リン酸を容器に充填しなかったため、微小異物個数が31個、濾過性による濾過圧力ΔPが2.3MPaと不良であった。また、重縮合反応装置の缶壁および撹拌翼にリン酸が付着、高温で分解して黒色化した異物が確認された。
【0057】
比較例2
実施例1のポリエステルの重合において、重縮合反応装置の撹拌機を停止せずにリン酸を充填した容器を投入した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。結果を表3および4に示すが、リン酸を充填した容器を投入する際に撹拌機を停止しなかったため、微小異物個数が33個、濾過性による濾過圧力ΔPが2.6MPaと不良であった。
【0058】
比較例3
実施例10のポリエステルの重合において、リン酸を容器に充填せずに重縮合反応装置に添加した以外は実施例17と同様にしてポリエステルを重合した。結果を表3および4に示すが、リン酸を容器に充填しなかったため、微小異物個数が45個、濾過性による濾過圧力ΔPが4.4MPaと不良であった。また、重縮合反応装置の缶壁および撹拌翼にリン酸が付着、高温で分解して黒色化した異物が確認された。
【0059】
比較例4
実施例10のポリエステルの重合において、重縮合反応装置の撹拌機を停止せずにリン酸を充填した容器を投入するよう変更した以外は実施例17と同様にしてポリエステルを重合した。結果を表3および4に示すが、リン酸を充填した容器を投入する際に撹拌機を停止しなかったため、微小異物個数が47個、濾過性による濾過圧力ΔPが4.5MPaと不良であった。
【0060】
比較例5、6
実施例10のポリエステルの重合において、ポリエステルへのリン酸の添加量を0.5ppmおよび110ppmに変更した以外は実施例17と同様にしてポリエステルを重合した。結果を表3および4に示すが、リン酸の添加量が規定の範囲外であったため、微小異物個数が24個および28個、濾過性による濾過圧力ΔPが1.8MPaおよび2.1MPaと不良であった。
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】