(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接合部材および前記応力吸収材の熱膨張係数は、前記半導体素子の熱膨張係数以上、且つ前記金属ステムの熱膨張係数以下であることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各図相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。また、
図2では、各部の識別の容易化のために、便宜上、接合部材20表面に片側斜線ハッチング、半導体素子30表面に点線ハッチング、応力吸収材40表面に点ハッチングを施してある。
【0018】
本実施形態に係る圧力センサは、たとえば自動車に搭載されるもので、燃料やオイル等の圧力測定に適用されるものである。この圧力センサは、大きくは、圧力検出用のダイアフラム11を有する金属ステム10と、ダイアフラム11上に設けられた接合部材20と、接合部材20上に設けられて接合部材20を介してダイアフラム11に接合された半導体素子30と、を備えて構成されている。
【0019】
金属ステム10は一端側に閉塞部としての薄肉状のダイアフラム11を有し、他端側に開口部12を有する中空円筒形状を成すものであり、外周の側面にネジ部10aを有する。金属ステム10は、このネジ部10aにより、上記した燃料やオイルの配管等の被取付部材に対してネジ結合により固定されるようになっている。そして、金属ステム10においては、開口部12から圧力媒体による圧力が導入され、この圧力はダイアフラム11の内面に印加されるようになっている。
【0020】
また、接合部材20は、ダイアフラム11の外面と半導体素子30とを接合するものである。この接合部材20は接合ガラス等よりなり、厚さt1の層状のものである。接合部材20の詳細については、応力吸収材40とともに後述する。
【0021】
半導体素子30は、ダイアフラム11の歪みを検出するものであり、ここでは、典型的な矩形板状をなす。この半導体素子30は、半導体プロセスにより形成されたシリコン半導体よりなる。
【0022】
具体的には、半導体素子30は、開口部12から金属ステム10内部に導入された圧力媒体の圧力によってダイアフラム11が変形したときに発生する歪みを、圧力として検出する検出部として機能するものである。そして、これらダイアフラム11及び半導体素子30が、センサの基本性能を左右する。
【0023】
また、図示しないが、金属ステム10の外側には図示しない回路基板が設けられており、この回路基板に対して半導体素子30は、リード部材やワイヤボンディング等により電気的に接続されている。これにより、半導体素子30は、当該回路基板を介して自動車のECU等に電気的に接続されるようになっている。
【0024】
そして、たとえば燃料パイプ内の燃料圧(圧力媒体)が、金属ステム10の開口部12から金属ステム10の内部(中空部)へ導入されたときに、その圧力によってダイアフラム11が変形し、この変形を半導体素子30により電気信号に変換し、上記回路基板に出力することにより、圧力検出が行われるようになっている。
【0025】
ここにおいて、接合部材20上にて、半導体素子30の外周側には、応力吸収材40が設けられ、接合部材20に固定されている。この応力吸収材40は、接合部材20と金属ステム10との熱膨張係数の差に起因する熱応力を吸収するものである。この応力吸収材40は接合ガラス等よりなり、厚さt3の平面環状の層状をなすものである。
【0026】
ここで、接合部材20のうち半導体素子11の外周側に位置する部位と当該部位上に位置する応力吸収材40との合計厚さt2(=t1+t3)は、接合部材20のうち半導体素子30の直下に位置する部位の厚さt1よりも厚いものとされている。
【0027】
本実施形態では、応力吸収材40は、半導体素子30の外周側にて、連続した環状をなしている。なお、
図1、
図2の例では、応力吸収材40は平面円環状(たとえば内径6mm、外径7.5mm)をなすものであるが、平面矩形環状、平面多角形環状のものであってもよい。また、
図2に示されるように、接合部材20上にて、応力吸収材40の内郭は、半導体素子30の外郭と離間して配置されている。
【0028】
[圧力センサにおける各部10〜40の材質等]
次に、圧力センサにおける上記各部10〜40の材質等について、具体的に述べる。本実施形態では、典型的なものと同様、接合部材20の熱膨張係数は、半導体素子30の熱膨張係数以上、且つ金属ステム10の熱膨張係数以下である。
【0029】
さらに、応力吸収材40についても、応力吸収材40の熱膨張係数は、半導体素子30の熱膨張係数以上、且つ金属ステム10の熱膨張係数以下である。つまり、本実施形態では、接合部材20および応力吸収材40の熱膨張係数は共に、半導体素子30の熱膨張係数以上、且つ金属ステム10の熱膨張係数以下である。
【0030】
このような接合部材20および応力吸収材40としては、主成分が無機ガラスよりなるものが挙げられる。より具体的には、本実施形態の接合部材20および応力吸収材40は、熱膨張係数を制御できるフィラーを無機ガラス中に含有し、これに溶媒を加えてなるペースト状ガラスを素材とし、このペーストを固化させてなるものである。このように、接合部材20および応力吸収材40は、接合作用を提供する無機ガラスを主成分として含むものである。
【0031】
当該無機ガラスとしては、半導体素子30の耐熱温度よりも低い温度で接合が可能な組成を有するものを採用できる。たとえば、バリウム(Ba)、ビスマス(Bi)、ホウ素(B)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)、バナジウム(V)、りん(P)などの成分を含有する無鉛ガラスを採用することができる。また、鉛(Pb)を含有する鉛ガラスを採用してもよい。これらガラスは低融点組成であるため、半導体素子30の耐熱温度(たとえば470℃)よりも低い温度(400℃以下)の低温で、接合が可能である。
【0032】
また、本実施形態の接合部材20および応力吸収材40は、熱膨張係数などを調整するために、ガラスと反応しない粒子、すなわちフィラーを含有している。このフィラーとしては、たとえばコージェライト、リン酸ジルコン酸タングステン、アルミナ、シリカ等の酸化物、あるいは、鉄(Fe)、コバルト(Co)、タングステン(W)、銅(Cu)、ストロンチウム(Sr)、銀(Ag)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、セリウム(Ce)、ガリウム(Ga)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)等の各種元素の酸化物を採用することができる。
【0033】
なお、当該フィラーの粒度は、0.1μmから50μmまで選択することができ、主に接合部材20および応力吸収材40の厚さや被接合体(金属ステム10や半導体素子30)の表面粗さに応じて選択される。
【0034】
また、本実施形態の金属ステム10の材料としては、従来と同様のコバール等でもよいが、ここでは、金属ステム10は、ステンレスよりなるもので、型加工や切削加工等により形成されている。
【0035】
より具体的には、金属ステム10は、SUS430からなり、熱膨張係数は、たとえば120×10
−7/℃(20℃〜300℃の範囲にて)である。また、シリコンからなる半導体素子30の熱膨張係数は、たとえば30×10
−7/℃(20℃〜300℃の範囲にて)である。
【0036】
そして、本実施形態では、接合部材20および応力吸収材40の熱膨張係数は、上述のように、金属ステム10の熱膨張係数と半導体素子30の熱膨張係数との中間にあり、たとえば接合部材20は、56×10
−7/℃(20℃〜300℃の範囲にて)であり、応力吸収材40は、49〜69×10
−7/℃(20℃〜300℃の範囲にて)である。これら接合部材20および応力吸収材40の熱膨張係数は、無機ガラス中の上記フィラーの添加量を調整することにより、容易に調整することができる。
【0037】
ここで、上記熱膨張係数の関係が満足されるならば、接合部材20と応力吸収材40とは、同一の熱膨張係数でもよいし、異なる熱膨張係数でもよい。さらに言うならば、接合部材20および応力吸収材40は、互いに別部材ではあるが、同一の材料よりなるものであってもよいし、異種材料よりなるものであってもよい。
【0038】
[製造方法の第1の例]
次に、本圧力センサの製造方法を述べる。まず、本製造方法の第1の例を述べる。まず、用意工程では、金属ステム10、半導体素子30、接合部材20の素材としての第1のガラスペースト、および、応力吸収材40の素材としての第2のガラスペーストを用意する。これら各ガラスペーストは、上記したフィラーを無機ガラス中に含有するペースト状ガラスである。
【0039】
そして、この第1の製造方法では、第1の工程として、第1のガラスペーストをダイアフラム11上に塗布し、これを熱処理することにより溶融して固化させ、接合部材20を形成する。こうして、ダイアフラム11上にいったん硬化された接合部材20が形成される。
【0040】
次に、第2の工程では、この接合部材20のうち半導体素子30の外周側に位置する部位に、応力吸収材40の配置パターンにて第2のガラスペーストを塗布する。
【0041】
次に、第3の工程では、接合部材20上にて第2のガラスペーストの内側に半導体素子30を設置し、熱処理する。これにより、第2のガラスペーストを溶融して固化させて応力吸収材40を形成するとともに、接合部材20を再溶融して固化させることで半導体素子30と接合部材20とを接合する。これが、本実施形態の製造方法の第1の例であり、これにより、
図1、
図2に示される圧力センサができあがる。
【0042】
[製造方法の第2の例]
次に、本圧力センサの製造方法の第2の例を述べる。まず、用意工程では、上記第1の例の製造方法と同様に、金属ステム10、半導体素子30、接合部材20の素材としての第1のガラスペースト、および、応力吸収材40の素材としての第2のガラスペーストを用意する。
【0043】
そして、この第2の製造方法では、第1の工程として、第1のガラスペーストをダイアフラム11上に塗布して乾燥させることにより第1の固形物を得る。この第1の固形物は、溶融ではなく乾燥によりペースト中の溶媒が蒸発して、第1のガラスペーストが固化したものである。
【0044】
次に、第2の工程では、当該第1の固形物のうち半導体素子30の外周側に位置する部位に、応力吸収材40の配置パターンにて第2のガラスペーストを塗布し、さらにこれを乾燥させることにより第2の固形物を得る。この第2の固形物は、溶融ではなく乾燥によりペースト中の溶媒が蒸発して、第2のガラスペーストが固化したものである。
【0045】
次に、第3の工程では、第1の固形物上にて、第2の固形物の内側に半導体素子30を設置し、熱処理する。これにより、本第3の工程では、第1の固形物を溶融して固化させて接合部材20を形成し、半導体素子30と接合部材20とを接合するとともに、第2の固形物を溶融して固化させて応力吸収材40を形成する。これが、本実施形態の製造方法の第2の例であり、これにより、
図1、
図2に示される圧力センサができあがる。
【0046】
本実施形態の圧力センサは、これらどちらの例で製造してもよい。第1の例と第2の例とを比較すると、第1の例の場合、半導体素子30を接合部材20に搭載する前に、第1の工程によって、第1のガラスペーストを溶融、固化して接合部材20を形成するようにしている。そのため、第1のガラスペースト中に存在するボイドを、第1のガラスペーストの表面全体から効率良く排出することができるという利点がある。
【0047】
それに対して、第2の例の場合、半導体素子30を接合部材20に搭載した後、第1のガラスペーストを乾燥させてなる第1の固形物を溶融、固化して接合部材20を形成するようにしている。
【0048】
そのため、上記第1の例に比べて、第1のガラスペーストに相当する第1の固形物の表面が半導体素子30で覆われている分、第1のガラスペースト中に存在するボイドの排出という点で不利であるが、接合部材20および応力吸収材40を同時に熱処理して形成できるという点で、熱処理の手間やコストが軽減されるという面で有利である。
【0049】
ここで、上記第1の例および第2の例の製造方法について、より具体的に述べる。当該各例の製造方法において、各ガラスペーストの塗布は、印刷法により行ってもよいが、たとえばディスペンサー装置により行ってもよい。
【0050】
この場合、ディスペンサー装置としては、典型的には、上記ガラスペーストを吐出するノズルと、金属ステム10を搭載し、ワーク位置決め駆動が可能なテーブルで構成する支持機構と、を備えるものが挙げられる。たとえば10〜50Pa・sの粘度としたガラスペーストを用いる場合、当該ノズルの吐出口径は、直径0.2〜0.5mm程度のものにできる。
【0051】
さらに、ガラスペーストが塗布されるダイアフラム11の外面に対して上記ノズルの相対位置制御を行う位置制御手段と、ペースト塗布時に上記ノズルの位置補正を行う位置補正手段とを備えるものが望ましい。このような位置制御手段および位置補正手段は、アクチュエータやコンピュータ等により構成される。
【0052】
また、接合部材20および応力吸収材40の形状について検査を行い、異常形状のものを排除するためには、さらに、塗布されたガラスペースト形状をカメラによって測定する画像手段を備えたディスペンサー装置が望ましい。このようなカメラとして、CCDカメラ、CMOSカメラ等が使用でき、立体(3D)寸法計測手段によって検査ができる。
【0053】
なお、CCDカメラとは、電荷結合素子(CCD:Charge Coupled Device)である固体撮像素子カメラであり、CMOSカメラとは、相補性金属酸化膜半導体(Complementary Metal Oxide Semiconductor)である固体撮像素子カメラである。
【0054】
さらに、当該カメラは、自動焦点機能を備えたものが望ましい。具体的には、当該カメラは、金属ステム10上の上記ガラスペーストの塗布面であるダイアフラム11の外面に、自動焦点するものであることが望ましい。
【0055】
また、圧力センサにおける焼成後の接合部材20および応力吸収材40の形状も上記に記載のCCDカメラ、CMOSカメラ等を用いた立体(3D)寸法計測手段によって検査ができる。
【0056】
[効果等]
ところで、本実施形態によれば、接合部材20のうち半導体素子30の外周側に位置する部位と、半導体素子30の直下に位置する部位とでは、前者の方が応力吸収材40との合計厚さt2によって厚いものとされている。そのため、上記両部位のうち前者の方が後者に比べて、上記熱膨張係数差に起因する金属ステム10からの応力によって、変位しにくいものとなる。
【0057】
より具体的に言うと、本実施形態では、接合部材20であるガラスが溶融から冷却過程で固化することにより半導体素子30を金属ステム10に接合している。従って、半導体素子30および接合部材20には、金属ステム10の収縮に伴う熱応力が発生する。ここで、本実施形態では、応力吸収材40を半導体素子30の外周側に構成することにより当該熱応力を低減するようにしている。
【0058】
すなわち、金属ステム10の方が半導体素子30よりも熱膨張係数が大きいため、当該冷却過程では、半導体素子30よりも金属ステム10の方が大きく収縮する。このことにより、半導体素子30直下の接合部材20には、圧力センサの中心(ダイアフラム11の中心)方向へ引張応力が作用する。
【0059】
一方、接合部材20のうち半導体素子30の外周側に位置する部位は、応力吸収材40との合計厚さt2によって厚いものとされ、上記引張応力によって変位しにくいものとなっているから、接合部材20に作用する引張応力は、全体的に相殺される。そのため、接合部材20や半導体素子30に作用する引張応力が低減し、これら部材20、30において亀裂および破壊が無い接合が実現する。
【0060】
このように、本実施形態によれば、接合部材20と金属ステム10との熱膨張差に起因する熱応力を低減して、接合部材20および半導体素子30に発生する亀裂や破壊を抑制し、製品の信頼性を向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、接合部材20のうち半導体素子30の直下に位置する部位では、従来通りに接合部材20の厚さを薄くできるので、金属ステム10のダイアフラム11の歪みを、半導体素子30によって感度良く検出できる。こうして、本実施形態によれば、センサ感度を確保しつつ製品の信頼性を向上させることができる。
【0062】
そして、本実施形態によれば、接合部材20および応力吸収材40の熱膨張係数を、半導体素子30の熱膨張係数以上、且つ金属ステム10の熱膨張係数以下とすることで、上記効果を適切に発揮するようにしている。
【0063】
また、本実施形態では、半導体素子30の外周側にて、応力吸収材40を、連続した環状をなしているものとしている。これによれば、半導体素子30の外側の全周において応力吸収材40による上記効果が発揮される。
【0064】
また、応力吸収材40は半導体素子30と接触して配置されていてもよいが、本実施形態では、応力吸収材40は、半導体素子30と離間して配置されている。このように離間配置形態を採用することにより、接触配置形態を採用する場合に比べて、応力吸収材40からの応力を半導体素子30が受けにくくなり、半導体素子30の感度を確保しやすくなるという利点がある。
【0065】
また、本実施形態では、金属ステム10を、ステンレスよりなるものにすることで、従来のコバール製の金属ステムに比べて、耐圧性に優れ高圧測定に適した圧力センサを提供できる。そして、このような高圧タイプの圧力センサにおいて上記した応力吸収材40による効果を発揮することができる。
【0066】
次に、上記熱応力を低減して接合部材20および半導体素子30に発生する亀裂や破壊を抑制するという本実施形態の効果について、
図3、
図4に示される実施例1〜18および比較例1、2を参照して、より具体的に述べる。ここで、比較例1、2は、応力吸収材40を省略した構成のものである。
【0067】
この
図3、
図4の例では、ガラスペーストの調製は以下のように行った。ここでは、接合部材20および応力吸収材40のガラスペースト原料となるガラスフリットとして、V
2O
5、P
2O
5、TeO
2、Fe
2O
3を用いた。
【0068】
ガラスフリットの組成は、酸化物換算でVが50重量%、Pが15重量%、Teが25重量%、Feが10重量%となるようにした。上記した各酸化物を上記組成となるように調合し、混合した。
【0069】
そして、この混合した原料をPtるつぼに入れ、焼成炉で10℃/分で昇温し、900〜950℃で1時間保持して、ガラスを得た。この得られたガラスをPtるつぼから取り出し、その後、粉砕処理により粒径20μm未満まで粉砕した。次いで、篩(ふるい)通しを行って、粒度3μmのガラスフリットを得た。
【0070】
次に、接合部材20および応力吸収材40において熱膨張係数を制御する材料であるフィラーを用意し、各フィラーと上記した粒度3μmのガラスフリットとを混合して種々の混合粉を得た。ここで、フィラーとしては、リン酸ジルコン酸タングステン(Zr
2WP
2O
12)、五酸化ニオブ(Nb
2O
5)、酸化タングステン(WO
3)を用いた。
【0071】
そして、上記混合粉をガラスペーストとするために、上記混合粉に、溶媒として、ブチルカルビレートアセテート、バインダーとしてエチルセルロースを添加して混合し、ガラスペーストを得た。
【0072】
図3、
図4の例では、ガラスフリットとしては同一組成のものとし、フィラーの添加量を異ならせたガラスペーストを作製することにより、熱膨張係数の異なる種々の接合部材20および応力吸収材40を形成するようにした。
【0073】
そして、
図3、
図4の例では、接合部材20および応力吸収材40となるガラスペーストは、上記溶媒の添加量によって10〜50Pa・sに粘度調整し、これを、ディスペンサー装置を用いて、SUS430よりなる金属ステム10のダイアフラム11上に塗布した。
【0074】
そして、この塗布されたガラスペーストについて、上記した本実施形態の第1の例または第2の例の製造方法を適用し、乾燥、加熱による溶融および固化を行うことにより、接合部材20および応力吸収材40を形成した。
【0075】
図3、
図4の各実施例1〜18および比較例1、2では、接合部材20の熱膨張係数は、56×10
−7/℃(20℃〜300℃の範囲にて)で一定とし、接合部材20の厚さt1は、金属ステム10の表面すなわちダイアフラム11表面を基準として50〜100μmの範囲で制御した。
【0076】
また、応力吸収材40の熱膨張係数は、49〜69×10
−7/℃(20℃〜300℃の範囲にて)の範囲で変えていき、応力吸収材40の厚さt3は50〜150μmの範囲で制御した。なお、半導体素子30の厚さは、すべての例において100μmとした。これら、半導体素子30、接合部材20の厚さは、この種の圧力センサとして典型的な厚さである。
【0077】
そして、各例について、接合後における半導体素子30および接合部材20に発生した亀裂や破壊を調査した。その結果、
図3、
図4に示されるように、実施例1〜18では、半導体素子30や接合部材20に亀裂や破壊は見られず、評価サンプルすべてにおいて接合形態が確保されたのに対し、応力吸収材20を省略した構成の比較例1、2では、半導体素子30や接合部材40に亀裂や破壊が発生した。
【0078】
このように、本実施形態によれば、高圧タイプに適したステンレスよりなる金属ステム10を用いた場合においても、接合ガラスよりなる接合部材20を介して、半導体素子30を金属ステム10に適切に接合できるのである。
【0079】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態では、半導体素子30の外周側にて、応力吸収材40は連続した環状に配置されたものであったが、これに限定されるものではなく、たとえば断続的に環状に配置されたものであってもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、半導体素子30は平面矩形の板状であったが、半導体素子30としては、平面形状が円形、または、角部がR加工された多角形であってもよい。半導体素子30が平面矩形の場合、角部に上記熱応力が集中しやすく、当該角部に亀裂が発生しやすい。その点、半導体素子30を円形板状もしくは角部がR加工された多角形板状のものとすれば、半導体素子30における上記熱応力集中を抑制しやすい。
【0081】
また、上記実施形態では、接合部材20および応力吸収材40は、主成分が無機ガラスよりなるものとしたが、当該主成分としては、アルミナやシリカ等の酸化物であってもよい。
【0082】
また、上記製造方法において、ディスペンサー装置による各ガラスペーストの塗布形状及び圧力センサにおける焼成後の接合部材20および応力吸収材40の形状の検査を行う場合、立体(3D)寸法計測手段によって、ペースト形状検査を行ってもよい。それによれば、より高速で高精度な形状判定が可能となる。このような立体(3D)寸法計測は、たとえば光切断法に基づくものである。
【0083】
また、上記した各実施形態同士の組み合わせ以外にも、上記各実施形態は、可能な範囲で適宜組み合わせてもよく、また、上記各実施形態は、上記の図示例に限定されるものではない。