特許第5870854号(P5870854)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧 ▶ 国立大学法人東北大学の特許一覧

<>
  • 特許5870854-燃料電池システム 図000002
  • 特許5870854-燃料電池システム 図000003
  • 特許5870854-燃料電池システム 図000004
  • 特許5870854-燃料電池システム 図000005
  • 特許5870854-燃料電池システム 図000006
  • 特許5870854-燃料電池システム 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5870854
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20160216BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20160216BHJP
   H01M 8/06 20160101ALI20160216BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20160216BHJP
【FI】
   H01M8/04 N
   H01M8/04 P
   H01M8/06 B
   H01M8/04 J
   !H01M8/12
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-128021(P2012-128021)
(22)【出願日】2012年6月5日
(65)【公開番号】特開2013-254589(P2013-254589A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2014年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】伊東 正篤
(72)【発明者】
【氏名】大島 久純
(72)【発明者】
【氏名】田口 隆志
(72)【発明者】
【氏名】外山 哲男
(72)【発明者】
【氏名】高村 仁
【審査官】 武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−023670(JP,A)
【文献】 特開昭62−043077(JP,A)
【文献】 特開平09−085044(JP,A)
【文献】 特開2002−246056(JP,A)
【文献】 特開2003−049638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガス、および酸化剤ガスの電気化学反応により電気エネルギを出力する燃料電池(1)と、
酸素イオン伝導性を有する電解質体(21)、前記電解質体の両側に配置された一対の電極(22、23)を含んで構成される燃料富化装置(20)と、
前記一対の電極における一方の電極(22)を介して、前記燃料電池に前記燃料ガスを供給する燃料ガス経路(11)と、
前記一対の電極における他方の電極(23)を介して、前記燃料電池から燃料オフガスを排出する燃料オフガス経路(13)と、
前記一対の電極間に電圧を印加することで前記一対の電極間に流れる電流を制御する電流制御手段(26、100a)と、を備え、
前記電流制御手段は、前記燃料電池の発電時に、少なくとも前記一方の電極から前記他方の電極へ電流が流れるように前記一対の電極間に電圧を印加することで、前記電解質体を介して前記一対の電極間で酸素イオンを移動させることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記電流制御手段は、前記燃料電池から出力される電気エネルギを電源として前記一対の電極間への印加電圧を生成することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記電流制御手段は、
前記燃料電池の出力電圧を前記一対の電極間への印加電圧に変換する電圧変換手段(26)と、
前記電圧変換手段(26)により前記一対の電極間への印加電圧を制御する印加電圧制御手段(100a)と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記電流制御手段は、前記燃料電池の発電時における出力電圧が所望の目標出力電圧を下回っている際に、前記一方の電極から前記他方の電極へ流れる電流量が増加するように前記一対の電極間に電圧を印加することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記燃料富化装置を通過した前記燃料オフガス、および前記燃料電池から排出された酸化剤オフガスを混合して燃焼させることで、前記燃料電池の発電に必要とされる熱を生成する燃焼装置(15)を備え、
前記電流制御手段は、前記燃焼装置にて生成する熱量が所望の目標熱量以上となっている際には、前記一方の電極から前記他方の電極へ流れる電流量が増加するように前記一対の電極間に電圧を印加することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記燃料富化装置を通過した前記燃料オフガス、および前記燃料電池から排出された酸化剤オフガスを混合して燃焼させることで、前記燃料電池の発電に必要とされる熱を生成する燃焼装置(15)を備え、
前記電流制御手段は、前記燃焼装置にて生成する熱量が所望の目標熱量を下回っている際には、前記一方の電極から前記他方の電極へ流れる電流量が減少するように前記一対の電極間に電圧を印加することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温型の燃料電池を備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池として高温で作動する固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)や溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC:Molten Carbonate Fuel Cell)を備える燃料電池システムが存在する。
【0003】
このような燃料電池システムでは、燃料電池に供給される燃料ガス(改質ガス)中に燃料電池1の発電に寄与しない不活性ガス(例えば、HO、CO)が多量に含まれており、燃料濃度が低く発電効率が悪いといった問題がある。
【0004】
一方、燃料電池への燃料ガスの供給不足による燃料電池内部の酸化劣化を避けるために、燃料電池への燃料ガスの量を発電に必要とされる量よりも過剰に供給しており、燃料電池から排出される燃料オフガスに未反応燃料が多く含まれている。
【0005】
これら未反応燃料は、燃料電池の発電に必要とされる熱(改質に必要とされる熱や反応ガスの余熱等)を生成するために利用されるものの熱余りが生ずることがあり、燃料オフガスの未反応燃料を充分に活用できないことがある。
【0006】
そこで、燃料オフガスを燃料ガスの供給経路に再循環させることで未反応燃料を再利用することも検討されているが、燃料オフガスには、燃料電池内での酸化反応により、燃料ガス以上に不活性ガスが含まれており、未反応燃料を有効に活用することが難しいといった問題がある。
【0007】
これに対して、例えば、特許文献1には、燃料ガスの供給経路に燃料オフガスを再循環させる循環経路に不活性ガスを除去する手段を設けることで、燃料濃度の向上および燃料オフガスに含まれる未反応燃料の有効活用するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2006−500758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の燃料電池システムでは、燃料濃度の向上および燃料オフガスに含まれる未反応燃料の有効活用を図るために、燃料オフガスを循環させる循環経路を設けると共に、当該循環経路にシフト反応器、凝縮器、CO分離器といった多数の機器を配置する必要があり、システム構成が複雑化するといった問題がある。
【0010】
本発明は上記点に鑑みて、簡素なシステム構成で燃料濃度の向上および燃料オフガスに含まれる未反応燃料の有効活用を図ることが可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、燃料ガス、および酸化剤ガスの電気化学反応により電気エネルギを出力する燃料電池(1)と、酸素イオン伝導性を有する電解質体(21)、電解質体の両側に配置された一対の電極(22、23)を含んで構成される燃料富化装置(20)と、一対の電極における一方の電極(22)を介して、燃料電池に前記燃料ガスを供給する燃料ガス経路(11)と、一対の電極における他方の電極(23)を介して、燃料電池から燃料オフガスを排出する燃料オフガス経路(13)と、一対の電極間に電圧を印加することで前記一対の電極間に流れる電流を制御する電流制御手段(26、100a)と、を備える。そして、電流制御手段は、燃料電池の発電時に、少なくとも一方の電極から前記他方の電極へ電流が流れるように一対の電極間に電圧を印加することで、電解質体を介して一対の電極間で酸素イオンを移動させることを特徴とする。
【0012】
このように、燃料富化装置にて、燃料オフガスに含まれる未反応燃料と燃料ガスに含まれる不活性ガスを電気化学反応させることで、一対の電極間で酸素イオンを移動可能(酸素ポンピング可能)な構成とすれば、燃料オフガスを燃料ガス経路に再循環させる循環経路を設けることなく、燃料電池の発電時に、燃料電池に供給する燃料ガスの燃料濃度を増加させること(燃料リッチ)ができる。従って、簡素なシステム構成で燃料濃度の向上および未反応燃料の有効活用を図ることができる。
【0013】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る燃料電池システムの全体構成図である。
図2】第1実施形態に係る燃料富化装置の一対の電極へ印加する印加電圧の試算結果を説明するための説明図である。
図3】第2実施形態に係る燃料電池システムの全体構成図である。
図4】第3実施形態に係る燃料電池システムの全体構成図である。
図5】第3実施形態に係る制御装置が実行する電流制御処理の流れを示すフローチャートである。
図6】燃料電池における出力電圧と燃料利用率との関係を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0016】
(第1実施形態)
本実施形態の燃料電池システムは、図1の全体構成図に示すように、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により電気エネルギを出力する燃料電池1を備えている。
【0017】
本実施形態の燃料電池1は、酸素イオン伝導性を有する電解質体10a、燃料ガスが供給される燃料極(アノード電極)10b、空気が供給される空気極(カソード電極)10c等を有する複数の電池セル10を接合部材(インタコネクタ)を介して接続した固体電解質型燃料電池(SOFC)で構成されている。
【0018】
固体電解質型燃料電池は、その作動温度が500℃〜1000℃といった高温に設定される高温型の燃料電池である。なお、説明の便宜のため、図1では、燃料電池1を単一の電池セルとして図示している。
【0019】
本実施形態の燃料電池1は、炭化水素系の原料であるメタンガス(CH)を改質した改質ガス(H、HO、CO、CO)を燃料ガスとし、空気(O等)を酸化剤ガスとしている。
【0020】
燃料電池1では、以下の反応式F1、F2に示す水素および酸素の電気化学反応により、電気エネルギが出力される。
(燃料極)2H+2O2−→2HO+4e…F1
(空気極)O+4e→2O2−…F2
また、燃料電池1では、以下の反応式F3、F4に示す一酸化炭素(CO)および酸素の電気化学反応により、電気エネルギが出力される。
(燃料極)2CO+2O2−→2CO+4e…F3
(空気極)O+4e→2O2−…F4
続いて、燃料電池1の燃料極10bの入口側には、燃料ガスを供給するための燃料ガス経路11が接続されている。この燃料ガス経路11には、燃料流れ上流側から順に、燃料用ブロワ111、改質器112等が設けられている。
【0021】
燃料用ブロワ111は、原料であるメタンガスを下流側へ圧送する圧送手段である。改質器112は、水供給経路113の水ポンプ114により供給される水(水蒸気)とメタンガスとを混合した混合ガスを加熱して、水蒸気改質により水素および一酸化炭素を含む燃料ガスを生成する燃料ガス生成手段である。
【0022】
具体的には、改質器112にメタンガスおよび水蒸気が供給されると、以下の反応式F5、F6で示すように水蒸気改質反応および水性シフト反応によって燃料ガスが生成される。
(水蒸気改質反応)CH+3HO→3H+CO+2HO…F5
(水性シフト反応)CO+HO→CO+H…F6
このように、改質器112にて生成された燃料ガスには、水素(H)一酸化炭素(CO)以外にも燃料電池1の発電に寄与しない水蒸気(HO)や二酸化炭素(CO)といった不活性ガスが含まれており、燃料濃度が低い燃料リーンなガスとなっている。
【0023】
なお、改質器112にて行う改質は、水蒸気改質に限らず部分酸化改質等としてもよい。この場合、以下の反応式F7で示す改質反応により燃料ガスが生成される。
(改質反応)CH+1/2O+2N→2H+CO+2N…F7
改質器112にて生成された燃料ガスは、後述する燃料富化装置20にて燃料濃度が増加された後、燃料電池1の水素極10b側に導入される。なお、改質器112は、後述する燃焼器15で生成した燃焼ガスの高熱を熱源として、混合ガスを加熱するように構成されている。
【0024】
一方、燃料電池1の空気極10c側の入口側には、空気を供給するための空気供給経路12が接続されている。この空気供給経路12には、空気流れ上流側から順に、空気用ブロワ121、空気予熱器122等が設けられている。
【0025】
空気用ブロワ121は、酸化剤ガスである空気を下流側へ圧送する圧送手段である。空気予熱器122は、燃料電池1の空気極10cに導入する空気を予め加熱する加熱手段である。空気予熱器122は、空気極10cに導入される空気と燃料極10bに導入される高温の燃料ガスとの温度差を縮小して、燃料電池1における発電効率の向上を図るために設けられている。なお、空気予熱器122は、後述する燃焼器15で生成した燃焼ガスの高熱を熱源として、混合ガスを加熱するように構成されている。
【0026】
ここで、図示しないが、燃料ガス経路11、および空気供給経路12それぞれには、燃料極10bに供給する燃料ガスの供給量を調整する調整弁や、空気極10cに供給する空気の供給量を調整する調整弁等が設けられている。
【0027】
燃料電池1の燃料極10bの出口側には、燃料オフガスを排出する燃料オフガス経路13が接続され、空気極10cの出口側には、酸化剤オフガスである空気を排出する空気排出経路14が接続されている。
【0028】
燃料オフガス経路12には、後述する燃料富化装置20を通過した燃料オフガスに含まれる未反応燃料を、空気排出経路14を流れる空気と混合して燃焼させる燃焼装置15が設けられている。
【0029】
燃焼装置15は、燃料オフガスと空気とを混合して燃焼させることで、燃料電池1の発電に必要とされる高温の熱を生成するものである。この燃焼装置15には、燃焼装置15で生じた高温の燃焼ガスを外部に排出する燃焼ガス経路16が接続されている。この燃焼ガス経路16には、内部を流れる燃焼ガスの熱を有効利用すべく、上流側から順に改質器113、空気予熱器122といった加熱対象機器を経由するように構成されている。
【0030】
次に、燃料富化装置20について説明する。燃料富化装置20は、燃料オフガス経路13を流れる燃料オフガスに含まれる未反応燃料を利用して、燃料ガス経路11を流れる燃料ガスの燃料濃度を向上させる装置である。燃料富化装置20は、燃料電池1と同様に、酸素イオン伝導性を有する電解質体21、電解質体21の両側に配置された一対の電極22、23、図示しない燃料ガス流路および燃料オフガス流路で構成されている。なお、燃料富化装置20の一対の電極のうち、一方の電極22は、燃料ガス流路に隣接して配置され、他方の電極23は、燃料オフガス流路に隣接して配置されている。
【0031】
燃料富化装置20には、一対の電極間に電圧を印加する電圧印加装置24が接続されている。本実施形態の電圧印加装置24は、燃料富化装置20の作動電源を構成しており、後述する制御装置100からの制御信号に応じて、燃料富化装置20の一方の電極22から他方の電極23へ外部回路(図示略)を通じて電流が流れ、一対の電極22、23間の電解質体21を介して酸素イオンが移動するように、一対の電極22、23に電圧を印加する。本実施形態では、燃料富化装置20における一方の電極22がカソード電極を構成し、他方の電極23がアノード電極を構成している。
【0032】
電圧印加装置24にて燃料富化装置20の一対の電極22、23に所定の電圧が印加されると、電気化学反応により、一方の電極22から他方の電極23へと酸素イオンが移動すること(酸素ポンピング)により、一方の電極22側(カソード電極)における燃料ガスの燃料濃度が高められる。
【0033】
ここで、本実施形態の燃料富化装置20の一対の電極22、23へ印加する印加電圧について説明する。燃料富化装置20に供給される燃料オフガスは、燃料電池1における電気化学反応により酸素リッチなガスとなっており、燃料ガスおよび燃料オフガスにおける酸素ポテンシャル差が小さいことから、微小な電圧を一対の電極22、23へ印加することで、酸素ポンピングを実現することができる。
【0034】
図2は、燃料富化装置20の一対の電極22、23へ印加する印加電圧の試算結果の説明図である。なお、図2における「丸プロット」が燃料富化装置20の一方の電極22に供給される直前の燃料濃度(酸素濃度)を示し、「四角プロット」が燃料富化装置20の他方の電極23に供給される直前の燃料濃度を示している。また、図2における「三角プロット」が燃料富化装置20の一方の電極22を通過直後の燃料濃度を示し、「菱形プロット」が燃料富化装置20の他方の電極23を通過直後の燃料濃度を示している。さらに、図2における「×プロット」が一対の電極22、23間に発生する開回路電圧を示している。
【0035】
図2に示すように、燃料富化装置20の一方の電極22を通過直後の燃料濃度は、一方の電極22に供給される直前よりも増加し、燃料富化装置20の他方の電極23を通過直後の燃料濃度は、他方の電極23に供給される直前よりも減少していることが分かる。
【0036】
この際、一対の電極22、23間に発生する開回路電圧は、例えば、750℃の環境下において約マイナス70mVであり、この開回路電圧の正負を逆転した70mV以上の微小な電圧を一対の電極22、23間に印加するだけで、酸素ポンピングを実現可能であることが分かる。
【0037】
次に、本実施形態における電子制御部の概要を説明すると、制御装置100はCPUやROM、RAMといった記憶手段等からなる周知のマイクロコンピュータと、その周辺回路にて構成され、記憶手段に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算・処理を行い出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する制御手段である。
【0038】
制御装置100の出力側には、制御対象機器として燃料用ブロワ111、水ポンプ114、空気用ブロワ121、電圧印加装置24等が接続されている。これら制御対象機器は、制御装置100から出力される制御信号に応じて、その作動が制御される。
【0039】
制御装置100の入力側には、燃料電池1の出力電圧を検出する出力電圧検出手段を構成する電圧センサ101、燃焼装置15で生成される熱量として、燃焼ガス経路13を流れる燃焼ガスの温度(排熱温度)を検出する排熱温度検出手段を構成する温度センサ102等が接続されている。なお、温度センサ102としては、燃焼装置15で生成される熱量を把握可能であれば、燃焼ガス経路13を流れる燃焼ガスの温度以外を検出するものを採用してもよい。
【0040】
また、本実施形態の制御装置100は、燃料電池10の発電時に、電圧印加装置24を電源として、燃料富化装置20の一対の電極22、23間に流れる電流を制御する電流制御処理を実行する。なお、本実施形態では、制御装置100における電流制御処理を実行する構成100aが電流制御手段を構成している。
【0041】
次に、上記構成に係る燃料電池システムの作動について説明する。燃料電池システムの運転が開始されると、制御装置100が各制御対象機器へ所定の制御信号を出力する。なお、制御装置100は、電流制御処理として、燃料富化装置20の一対の電極22、23の一方の電極22から他方の電極23へ外部回路を通じて電流が流れ、電解質体21を介して酸素イオンが移動するように、電圧印加装置24に対して一対の電極22、23間への所定の電圧の印加を指示する制御信号を出力する。これにより、燃料用ブロワ111、水ポンプ114、空気用ブロワ121、電圧印加装置24等が作動する。
【0042】
空気供給経路12では、空気用ブロワ121にて圧送された空気が空気予熱器122にて加熱され、当該加熱された空気が燃料電池1の空気極10cに供給される。
【0043】
一方、燃料ガス経路11では、燃料用ブロワ111にて圧送されたメタンガスが、水ポンプ114にて圧送された水蒸気に混合され、改質器112にて燃料ガス(燃料リーン)に改質される。そして、改質器112にて生成された燃料ガスは、燃料富化装置20の一方の電極22にて燃料濃度が高められた後、燃料リッチな燃料ガスが燃料電池1の燃料極10bに供給される。
【0044】
燃料電池1は、燃料ガスおよび空気が供給されると、水素および一酸化炭素を燃料として前述の化学式F1〜F4に示す電気化学反応により、電気エネルギを出力する。
【0045】
燃料電池1から排出された燃料オフガスは、燃料富化装置20の他方の電極23を介して燃焼装置15へ流れ、燃料電池1から排出された空気と共に燃焼装置15にて燃焼される。そして、燃焼装置15にて生ずる高温の燃焼ガスは、燃焼ガス経路16を介して改質器113の加熱源、空気予熱器122の加熱源として利用された後に外部へ排出される。
【0046】
以上説明した本実施形態の燃料電池システムでは、燃料富化装置20において、燃料オフガスに含まれる未反応燃料と燃料ガスに含まれる不活性ガスを電気化学反応させることで、燃料ガス側から燃料オフガス側へ酸素イオンを移動可能(酸素ポンピング可能)なシステム構成としている。このため、燃料オフガスを燃料ガス経路11に再循環させる循環経路を設けることなく、燃料電池1の発電時に、燃料電池1に供給する燃料ガスの燃料濃度を増加させること(燃料リッチ)ができるので、簡素なシステム構成で燃料濃度の向上および未反応燃料の有効活用を図ることができる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態では、燃料電池1から出力される電気エネルギを燃料富化装置20の作動電源としている点が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0048】
図3の全体構成図に示すように、本実施形態の燃料富化装置20は、一対の電極22、23間に電圧を印加するために燃料電池1が接続されており、燃料電池1が燃料富化装置20の作動電源を構成している。燃料電池1は、制御装置100からの制御信号に応じて、燃料富化装置20の一方の電極22から他方の電極23へと外部回路を通じて電流が流れ、電解質体21を介して酸素イオンが移動するように、一対の電極22、23に電圧を印加する。
【0049】
その他のシステム構成は、第1実施形態と同様であり、本実施形態では、第1実施形態と同様に、燃料電池1の発電時に、燃料富化装置20において、燃料ガス側から燃料オフガス側へ酸素イオンを移動させることで、燃料ガスの燃料濃度を高めることができる。従って、簡素なシステム構成で燃料濃度の向上および未反応燃料の有効活用を図ることができる。
【0050】
これに加えて、本実施形態では、燃料電池1から出力される電気エネルギを燃料富化装置の作動電源としており、電圧印加装置24のような外部電源を用意する必要がないので、燃料電池システムのシステム構成をより簡素化することができる。
【0051】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態では、燃料電池1から出力される電気エネルギ(出力電圧)を燃料富化装置20の作動電圧(印加電圧)に変換する電圧変換器26を設けている点が第2実施形態と相違している。本実施形態では、第1、第2実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0052】
図4の全体構成図に示すように、本実施形態の燃料富化装置20は、電圧変換器26を介して燃料電池1に接続されており、燃料電池1が燃料富化装置20の作動電源を構成している。
【0053】
電圧変換器26は、燃料電池1の出力電圧を燃料富化装置20の一対の電極22、23への印加電圧に変換する電圧変換手段である。本実施形態の電圧変換器26は、制御装置100からの制御信号に応じて、一対の電極22、23への印加電圧を調整可能に構成されている。
【0054】
ここで、本実施形態の電圧変換器26は、制御装置100における電流制御処理を実行する構成100aと共に電流制御手段を構成している。なお、本実施形態の制御装置100における電流制御処理を実行する構成100aは、電圧変換器26により一対の電極22、23間へ印加する印加電圧を制御する印加電圧制御手段を構成している。
【0055】
本実施形態の制御装置100は、電圧変換器26にて一対の電極22、23への印加電圧を調整することで、一方の電極22から他方の電極23へと流れる電流量を調整(制御)することができる。
【0056】
その他の構成は、第1、第2実施形態で説明したシステム構成と同様である。
【0057】
次に、本実施形態の制御装置100が行う電流制御処理について、図5に示すフローチャートを用いて説明する。なお、図5に示す制御ルーチンは、燃料電池1の発電中に周期的または外部からの指示信号に応じて実行される。
【0058】
まず、各種センサから出力される出力信号(センサ信号)を読み込む(S10)。具体的には、電圧センサ101にて検出された燃料電池1の出力電圧を読み込むと共に、温度センサ102にて検出される排熱温度を読み込む。
【0059】
続いて、ステップS10にて読み込んだ燃料電池1の出力電圧が所望の目標出力電圧以上であるか否かを判定する(S20)。ここで、目標出力電圧は、燃料電池1から電力を供給する電力供給機器からの要求電圧に応じて制御装置100にて決定される。
【0060】
ステップS20の判定処理の結果、燃料電池1の出力電圧が目標出力電圧を下回っていると判定された場合(S20:NO)には、目標出力電圧を得るために必要とされる必要燃料濃度(必要富化量)を算出する(S30)。
【0061】
ここで、燃料電池1の出力電圧は、図6の説明図に示すように、燃料電池1における燃料利用率Uf(=燃料消費量/燃料供給量)の低下(燃料濃度の増加)に伴い増大するといった関係がある。
【0062】
そこで、ステップS30では、出力電圧と燃料濃度または燃料利用率Ufとの相関関係に基づいて、目標出力電圧を得るために必要とされる必要燃料濃度を算出する。ステップS30では、例えば、予め出力電圧と燃料濃度との関係を規定したマップを制御装置100の記憶手段に記憶しておき、当該マップを参照して燃料電池1の目標出力電圧から必要燃料濃度を算出すればよい。
【0063】
続いて、燃料富化装置20において、燃料電池1に供給する燃料ガスの燃料濃度をステップS30にて算出した必要燃料濃度とするために必要となる必要電流量を算出する(S40)。なお、例えば、予め必要燃料濃度と必要電流量との関係を規定したマップを制御装置100の記憶手段に記憶しておき、当該マップを参照してステップS30で算出した必要燃料濃度から必要電流量を算出すればよい。
【0064】
続いて、燃料富化装置20の一方の電極22から他方の電極23へとステップS40で算出した必要電流量が流れるように、一対の電極22、23間への印加電圧を増加させて(S50)、電流制御処理を抜ける。
【0065】
一方、ステップS20の判定処理の結果、燃料電池1の出力電圧が目標出力電圧以上と判定された場合(S20:YES)には、さらに、ステップS10にて読み込んだ排熱温度が所望の目標温度以上であるか否かを判定する(S60)。
【0066】
この結果、排熱温度が目標温度以上であると判定された場合(S60:YES)には、燃焼装置15にて生成する熱量が熱余り状態であると判断できる。このため、燃料オフガスに含まれる未反応燃料を有効利用すべく、ステップS30〜S50に移行して、燃料電池1へ供給する燃料ガスの燃料濃度が高まるように、一対の電極22、23間への印加電圧を増加させる。
【0067】
また、ステップS60の判定処理の結果、排熱温度が目標温度を下回っていると判定された場合(S60:NO)には、燃焼装置15にて生成する熱量が不足状態であると判断できることから、燃料電池1から排出される燃料オフガス中の燃料濃度が即座に高まるように、一対の電極22、23間への印加電圧を減少させて(S70)、電流制御処理を抜ける。
【0068】
ここで、ステップS70では、単に一対の電極22から他方の電極23へ流れる電流が小さくなるように一対の電極22、23間へ電圧を印加する場合に限らず、例えば、一対の電極22、23間への印加電圧を停止することで、一対の電極22から他方の電極23へ流れる電流が減少させてもよい。また、他方の電極23から一方の電極22へ電流が外部回路を通じて流れ、電解質体21を介して酸素イオンが移動するように、一対の電極22、23間へ電圧(負電圧)を印加することで、一対の電極22から他方の電極23へ流れる電流が減少させてもよい。この場合、燃料富化装置20における一方の電極22がアノード電極を構成し、他方の電極23がカソード電極を構成することとなる。
【0069】
以上説明した本実施形態によれば、燃料富化装置20にて、燃料ガスの燃料濃度を高めることができるので、第1、第2実施形態と同様に、簡素なシステム構成で燃料濃度の向上および未反応燃料の有効活用を図ることができる。
【0070】
これに加えて、本実施形態では、燃料電池1の発電中において、燃料電池1の出力電圧が低下している場合に、燃料富化装置20の一方の電極22から他方の電極23へ流れる電流量を増加させ、燃料電池1に供給する燃料ガスの燃料濃度を増加させるので、燃料電池1の出力電圧の増加を図ることができる。
【0071】
また、本実施形態では、燃料電池1の発電中において、燃焼装置15にて生成する熱量が所望の目標熱量以上となっている場合に、一方の電極22から他方の電極23へ流れる電流量を増加させ、燃料電池1に供給する燃料ガスの燃料濃度を増加させるので、燃焼装置15にて熱余りを抑制して燃料電池1の出力電圧を効率よく増加させることができる。
【0072】
さらに、本実施形態では、燃料電池1の発電中において、燃焼装置15にて生成する熱量が所望の目標熱量を下回っている場合に、一方の電極22から他方の電極23へ流れる電流量を減少させ、燃料電池1から排出される燃料オフガス中の燃料濃度が即座に高めるようにしているので、燃焼装置15にて生成する熱量の不足状態を解消することが可能となる。
【0073】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、種々変形可能である。例えば、以下のように種々変形可能である。
【0074】
(1)上述の各実施形態では、燃料電池1として高温で作動する固体酸化物型燃料電池を備える燃料電池システムの例について説明したが、これに限らず、例えば、高温で作動する溶融炭酸塩型燃料電池を備える燃料電池システムに適用することができる。
【0075】
(2)上述の第3実施形態では、燃料富化装置20の作動電源を燃料電池1とする例について説明したが、これに限らず、例えば、第1実施形態の如く、燃料富化装置20の作動電源を電圧印加装置24としてもよい。
【0076】
(3)上述の第3実施形態で説明したように、制御装置100の電流制御処理において、燃料電池1の出力電圧、および燃焼装置15にて生成する熱量に応じて、燃料富化装置20の一方の電極22から他方の電極23に流す電流量を制御することが望ましいが、これに限定されない。
【0077】
例えば、制御装置100の電流制御処理において、燃料電池1の出力電圧だけに応じて、燃料富化装置20の一方の電極22から他方の電極23に流す電流量を制御するようにしてもよい。
【0078】
また、制御装置100の電流制御処理において、燃焼装置15にて生成する熱量だけに応じて、燃料富化装置20の一方の電極22から他方の電極23に流す電流量を制御するようにしてもよい。この場合、一方の電極22から他方の電極23へ流れる電流量を増加させる処理、および一方の電極22から他方の電極23へ流れる電流量を減少させる処理の一方だけを行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 燃料電池
11 燃料ガス経路
13 燃料オフガス経路
20 燃料富化装置
21 電解質体
22 一方の電極
23 他方の電極
26 電圧変換器(電圧変換手段、電流制御手段)
100a 制御装置の一部(印加電圧制御手段、電流制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6