(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5870873
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】コンベヤベルトの接合方法
(51)【国際特許分類】
B65G 15/30 20060101AFI20160216BHJP
B65G 15/34 20060101ALI20160216BHJP
B29C 65/02 20060101ALI20160216BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
B65G15/30 A
B65G15/34
B29C65/02
B29C35/02
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-178972(P2012-178972)
(22)【出願日】2012年8月10日
(65)【公開番号】特開2014-37280(P2014-37280A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2014年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】侯 剛
【審査官】
八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−344318(JP,A)
【文献】
特開平06−345231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 15/30−15/58
B29C 35/00−35/18
B29C 63/00−65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の帆布層を積層して形成された芯体を有するコンベヤベルトの接合方法において、ベルト本体の長さ方向の少なくとも一方端部の芯体を予めステップ状に形成しておき、このステップ状に形成した芯体の上を剥離部材でカバーし、この剥離部材の上にカバーゴムを積層した状態でベルト本体を加硫成型しておき、前記予め芯体をステップ状に形成した部分よりもベルト本体の長さ方向先端側にはベルト本体の余長部分を残しておき、このベルト本体の長さ方向端部を接合する際に、前記余長部分を把持してベルト本体をベルトコンベヤ装置に引き込み、ベルト本体の引き込みが終了後に前記余長部分を切除し、次いで、前記剥離部材を引き剥がすことにより、この剥離部材の上に積層したカバーゴムを除去して、この剥離部材でカバーされていた前記ステップ状に形成した芯体を露出させ、この露出させた芯体に、接合相手となるステップ状に形成した他方の芯体を対向させて積層し、この芯体どうしを積層させた部分を加硫して接合することを特徴とするコンベヤベルトの接合方法。
【請求項2】
前記ベルト本体の長さ方向の一方端部の芯体のみを予めステップ状に形成しておき、このステップ状に形成した芯体の上を剥離部材でカバーし、この剥離部材の上にカバーゴムを積層した状態でベルト本体を加硫成型しておく請求項1に記載のコンベヤベルトの接合方法。
【請求項3】
前記ベルト本体の長さ方向の両端部の芯体を予めステップ状に形成しておき、このステップ状に形成した芯体の上を剥離部材でカバーし、この剥離部材の上にカバーゴムを積層した状態でベルト本体を加硫成型しておく請求項1に記載のコンベヤベルトの接合方法。
【請求項4】
前記予めステップ状に形成する芯体の長さを0.5m〜2.0mに設定する請求項1〜3のいずれかに記載のコンベヤベルトの接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の帆布層を積層して形成された芯体を有するコンベヤベルトの接合方法に関し、さらに詳しくは、コンベヤベルトの長さ方向端部の接合作業時間の短縮および接合部の品質向上を図ることができるコンベヤベルトの接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
帆布層を芯体としたコンベヤベルトは、ベルトコンベヤ装置の前後部に設置された駆動ローラと従動ローラとの間に張設される。そして、駆動ローラと従動ローラとの間に配置された複数のガイドローラにより支持される。一定期間使用した後や使用中に損傷した場合には、コンベヤベルト全体の交換作業や、損傷した部分を切除し、そのベルト本体の長さ方向端部に新たなコンベヤベルトを接合する補修作業が行われていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなコンベヤベルトの交換作業や補修作業は、専らベルトコンベヤの使用現場で行われていた。例えば、複数の帆布層を積層して形成された芯体を有するコンベヤベルトの長さ方向端部を接合させるには以下(1)〜(5)の作業工程がある。
(1)ベルト本体の長さ方向端部をステップ状(階段状)に切除するためにベルト本体の対象部分にケガキ線を入れる工程。
(2)ケガキ線に沿って切断具(メスやカッター等)で帆布層に不要な傷を付けることなくカバーゴムの切除作業を行なう工程。
(3)接合させるベルト本体の長さ方向端部どうしのステップ状に形成した部分が互いに一致するか否かの合わせを行う工程。
(4)ステップ状に形成した部分の表面を研摩装置等でバフ加工して表面仕上げを行う工程。
(5)上記表面仕上げをした部分に接着剤を塗布してステップ状に形成した部分どうしを対向させて積層して成形し、この積層した部分を加硫装置により加熱、加圧しながら加硫接着させて接合する工程。
【0004】
上記の従来の作業工程では、ベルト本体の長さ方向端部のカバーゴムおよび帆布層を一枚ずつ剥す複雑な接合作業を行なう。コンベヤベルトの使用現場では、作業スペースや加工設備の点で制約もあるため、接合作業には特に多大な時間を要するという問題があった。
【0005】
また、この接合作業の際に、切断具によって帆布層に不要な傷を付けたり、帆布層の位置ずれ等の不具合が生じることがある。それ故、コンベヤベルトの接合部の品質を確保するには、接合作業を行なう作業者には高いスキルが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−252814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、コンベヤベルトの長さ方向端部の接合作業時間の短縮および接合部の品質向上を図ることができる帆布層を芯体としたコンベヤベルトの接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明のコンベヤベルトの接合方法は、複数の帆布層を積層して形成された芯体を有するコンベヤベルトの接合方法において、ベルト本体の長さ方向の少なくとも一方端部の芯体を予めステップ状に形成しておき、このステップ状に形成した芯体の上を剥離部材でカバーし、この剥離部材の上にカバーゴムを積層した状態でベルト本体を加硫成型しておき、
前記予め芯体をステップ状に形成した部分よりもベルト本体の長さ方向先端側にはベルト本体の余長部分を残しておき、このベルト本体の長さ方向端部を接合する際に、
前記余長部分を把持してベルト本体をベルトコンベヤ装置に引き込み、ベルト本体の引き込みが終了後に前記余長部分を切除し、次いで、前記剥離部材を引き剥がすことにより、この剥離部材の上に積層したカバーゴムを除去して、この剥離部材でカバーされていた前記ステップ状に形成した芯体を露出させ、この露出させた芯体に、接合相手となるステップ状に形成した他方の芯体を対向させて積層し、この芯体どうしを積層させた部分を加硫して接合することを特徴とする。
【0009】
ここで、前記ベルト本体の長さ方向の一方端部の芯体のみを予めステップ状に形成しておき、このステップ状に形成した芯体の上を剥離部材でカバーし、この剥離部材の上にカバーゴムを積層した状態でベルト本体を加硫成型しておくこともできる。或いは、前記ベルト本体の長さ方向の両端部の芯体を予めステップ状に形成しておき、このステップ状に形成した芯体の上を剥離部材でカバーし、この剥離部材の上にカバーゴムを積層した状態でベルト本体を加硫成型しておくこともできる。前記予めステップ状に形成する帆布層の長さは、例えば、0.5m〜2.0mに設定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ベルト本体の長さ方向の少なくとも一方端部の芯体を予めステップ状に形成しておき、このステップ状に形成した芯体の上を剥離部材でカバーし、この剥離部材の上にカバーゴムを積層した状態でベルト本体を加硫成型しておくので、コンベヤベルトの使用現場ではなく、ベルト製造工場等において必要なコンベヤベルト(ベルト本体)を予め用意することができる。そして、このベルト本体の長さ方向端部を接合する際に、前記剥離部材を引き剥がすことにより、この剥離部材の上に積層したカバーゴムを除去して、この剥離部材でカバーされていた前記ステップ状に形成した芯体を露出させ、この露出させた芯体に、接合相手となるステップ状に形成した他方の芯体を対向させて積層し、この芯体どうしを積層させた部分を加硫して接合する。それ故、従来のようにコンベヤベルトの使用現場にて複雑な接合作業を行なう必要がない。
【0011】
したがって、従来方法に比して、コンベヤベルトの長さ方向端部の接合作業時間を大幅に短縮することが可能になる。また、接合作業を行なう作業者のスキルによる接合部の品質のばらつきを小さくできるので、接合部の品質向上を図るには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】本発明を用いて形成したベルト本体の長さ方向端部を例示する説明図である。
【
図3】ベルトコンベヤ装置に引き込む前のベルト本体を例示する説明図である。
【
図4】ベルトコンベヤ装置に引き込んだ後にベルト本体の余長部分を切除するとともにステップ状に形成した芯体を露出させる工程を例示する説明図である。
【
図5】ステップ状に形成した芯体どうしを対向させて積層する工程を例示する説明図である。
【
図6】ベルト本体の長さ方向の一方端部の芯体のみを予めステップ状に形成した場合の接合工程を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のコンベヤベルトの接合方法を図面に示した実施形態に基づいて説明する。
【0014】
図1に例示するように、コンベヤベルト(ベルト本体1)は、ベルトコンベヤ装置の前後部に設置された駆動ローラ2Aと従動ローラ2Bとの間に張設される。ベルト本体1は、駆動ローラ2Aおよび従動ローラ2Bと、駆動ローラ2Aと従動ローラ2Bとの間に配置された複数のガイドローラ2Cとに掛け回される。
【0015】
図2に例示するように、本発明が対象にするコンベヤベルト(ベルト本体1)は、複数の帆布層1bを積層して形成された芯体1aを有するコンベヤベルトである。この実施形態では、3層の帆布層1bが積層されて芯体1aが形成されているが、帆布層1bの積層数は適宜決定される。
【0016】
本発明では
図3に例示するように、ベルト本体1の長さ方向の少なくとも一方端部1Aの芯体1aを予めステップ状(階段状)に形成しておく。予めステップ状に形成する芯体1aの長さLは、0.5m〜2.0mに設定するのが好ましい。その理由は、JIS K6322−2011の布層コンベヤベルトに規定されたベルトの強力の呼びに基づき、エンドレス接合部の接着性を確保するためである。各ステップの長さは、例えば、150mm〜500mm程度である。
【0017】
次いで、このステップ状に形成した芯体1aの上を剥離部材3でカバーし、この剥離部材3の上に、未加硫ゴムであるカバーゴム4を積層した状態にする。この状態のベルト本体1を加硫装置等により予め加硫成型しておく。
【0018】
剥離部材3としては、ベルト本体1を構成する部材に接着せず、かつ加硫時に融着しない耐熱性のシート状、テープ状またはフィルム状の部材から選ばれた一つを使用する。具体的に剥離部材3としては、ゴムシート、離型シート、ポリエチレンシート等を用いる。
【0019】
そして、
図4に例示するように、コンベヤベルトの使用現場において、ベルト本体1をベルトコンベヤ装置に引き込んでセッティングする。次いで、ベルト本体1に埋設された剥離部材3をベルト本体1から引き剥がす。これにより、剥離部材3の上に積層したカバーゴム4を容易に除去することができる。これに伴って、剥離部材3でカバーされていたステップ状に形成した芯体1aを露出させる。
【0020】
この実施形態では、予め芯体1aをステップ状に形成した部分よりもベルト本体1の長さ方向先端側にベルト本体1の余長部分1Xを残している。そのため、このベルト本体1の長さ方向端部1Aを接合する際に、余長部分1Xを把持してベルト本体1をベルトコンベヤ装置に引き込む。
本発明では余長部分1Xを設けることにより引き込み作業が容易になる。ベルト本体1の引き込みが終了後に余長部分1Xは切除する。
【0021】
次いで、
図5に例示するように、露出させた芯体1aに、接合相手となるステップ状に形成した他方の芯体1aを対向させる。対向させた芯体1aの少なくとも一方の表面に接着剤Q等を塗布して芯体1aどうしを積層する。積層させた部分は、加硫用の金型に挟み込み、一定時間一定温度で加熱、加圧することで加硫接着により接合する。
【0022】
上記のように本発明によれば、ベルト本体1の長さ方向端部の芯体1aを予めステップ状に形成して、このステップ状に形成した芯体1aの上を剥離部材3でカバーし、この剥離部材3の上にカバーゴム4を積層した状態でベルト本体1を加硫成型しておくので、ベルト製造工場等においてコンベヤベルト(ベルト本体1)を予め用意することができる。そして、このベルト本体1の長さ方向端部1Aを接合する際に、剥離部材3を引き剥がすことにより、剥離部材3の上に積層したカバーゴム4を除去することができる。これにより、剥離部材3でカバーされていたステップ状に形成した芯体1aを露出させることができる。
【0023】
そのため、この露出させた芯体1aに、接合相手となるステップ状に形成した他方の芯体1aを対向させて積層して、芯体1aどうしを積層させた部分を加硫して接合すればよい。それ故、従来のようにスペースや加工設備に制約があるコンベヤベルトの使用現場にて複雑な接合作業を行なう必要がない。即ち、接合作業現場では、ベルト本体1の長さ方向端部1Aにおける切除作業や、バフ作業等を簡略化できるので、従来方法に比して、コンベヤベルトの長さ方向端部1Aの接合作業時間を大幅に短縮することが可能になる。
【0024】
また、切断具により芯体1aに不要な傷を付けることを防止できるので、作業者のスキルによる接合部の品質のばらつきが小さくなり、接合部の品質向上を図るには有利になる。
【0025】
ベルトコンベヤ装置の機長が短く、コンベヤベルト(ベルト本体1)の全長が短い場合には、予めエンドレス状のベルト本体1の周長を正確に把握することができる。また、駆動ローラ2Aや従動ローラ2Bを長手方向に移動させて長さを調整するテークアップ機構がある。
【0026】
そのため、このような場合には、この実施形態のように、ベルト本体1の長さ方向の両端部1Aの芯体1aを予めステップ状に形成しておき、このステップ状に形成した芯体1aの上を剥離部材3でカバーし、この剥離部材3の上にカバーゴム4を積層した状態でベルト本体1を加硫成型することができる。
【0027】
一方、ベルトコンベヤ装置の機長が長く、コンベヤベルト(ベルト本体1)の全長が長い場合には、予めエンドレス状のベルト本体1の周長を正確に把握することが難しい。また、駆動ローラ2Aや従動ローラ2Bを長手方向に移動させて長さを調整する十分なテークアップ機構がない。
【0028】
そこで、
図6に例示するように、ベルト本体1の長さ方向の一方端部1Aの芯体1aのみを予めステップ状に形成しておく。そして、このステップ状に形成した芯体1aの上を剥離部材3でカバーし、この剥離部材3の上にカバーゴム4を積層した状態でベルト本体1を加硫成型しておく。接合相手となる他方の芯体1aは、従来どおりコンベヤベルトの使用現場でステップ状に形成する。そして、互いの芯体1aを対向させて積層して、積層させた部分を加硫して接合することもできる。
【0029】
例えば、JIS K6322−2011のコンベヤゴムベルトに規定のベルトの強力の呼びが1250、4層のポリエステル帆布を芯体とした幅1500mmのベルト本体における4箇所の接合作業では、従来方法では作業員6名、準備期間が2日間、作業期間が3日間要した。一方、
図5に例示した本発明を適用することにより作業時間を、準備時間を含めて約2/3程度にすることができた。それ故、作業員を2名に減らすことが可能になることが分かった。
【符号の説明】
【0030】
1 ベルト本体
1a 芯体
1b 帆布層
1A ベルト本体の長さ方向端部
1X 余長部
2A 駆動ローラ
2B 従動ローラ
2C ガイドローラ
3 剥離部材
4 カバーゴム
Q 接着剤