(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、(A)イミド骨格含有2官能フェノール樹脂を含有することを特徴とする樹脂組成物である。
【0010】
[(A)イミド骨格含有2官能フェノール樹脂]
本発明において使用される(A)イミド骨格含有2官能フェノール樹脂は、特に限定されるものではなく、一分子中に2個のフェノール性水酸基とイミド骨格を有するものであれば良い。一分子中にフェノール性水酸基が2個だけ存在することで、樹脂組成物の硬化後の絶縁層が適度な架橋密度となり、耐折性能とラミネート性能が同時に発揮される。例えば、下記一般式(1)、下記一般式(4)が好ましく、下記一般式(2)、下記一般式(5)がより好ましく、下記一般式(3)、下記一般式(6)が更に好ましく、下記一般式(7)が更に一層好ましい。
【0011】
【化1】
(式中、R3は、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン元素であり、複数のR3は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、ベンゼン環上の隣接した炭素原子に結合した2個のR3は、互いに結合して炭素数4〜20の芳香環を含む環状基を形成してもよい。R4、R5、R6は、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、または炭素数1〜10の炭化水素基である。)
【0012】
【化2】
(式中、R7は、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン元素であり、複数のR7は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、ベンゼン環上の隣接した炭素原子に結合した2個のR7は、互いに結合して炭素数4〜20の芳香環を含む環状基を形成してもよい。)
【0014】
【化4】
(式中、R3は、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン元素であり、複数のR3は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、ベンゼン環上の隣接した炭素原子に結合した2個のR3は、互いに結合して炭素数4〜20の芳香環を含む環状基を形成してもよい。R4、R5、R6は、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、または炭素数1〜10の炭化水素基である。2個のR4、R5、R6は、それぞれ、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、ベンゼン環上の隣接した炭素原子に結合したR5、R6は、互いに結合して炭素数4〜20の芳香環を含む環状基を形成してもよい。Yは単結合、−SO2−、−O−、−CO−、−C(CF3)2−、−S−、又は炭素数1〜20の2価の炭化水素基から選ばれる基である。)
【0015】
【化5】
(式中、R7は、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン元素であり、複数のR7は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、ベンゼン環上の隣接した炭素原子に結合した2個のR7は、互いに結合して炭素数4〜20の芳香環を含む環状基を形成してもよい。Yは単結合、−SO2−、−O−、−CO−、−C(CF3)2−、−S−、又は炭素数1〜20の2価の炭化水素基から選ばれる基である。)
【0016】
【化6】
(式中、Yは単結合、−SO2−、−O−、−CO−、−C(CF3)2−、−S−、又は炭素数1〜20の2価の炭化水素基から選ばれる基である。)
【0018】
本発明の樹脂組成物において、樹脂組成物中の(A)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の(A)成分の含有量の上限値は、接着フィルムのラミネート性を向上させるという観点から、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が更に一層好ましい。樹脂組成物中の(A)成分の含有量の下限値は、樹脂組成物から得られる絶縁層の線熱膨張率を低下させるという観点から、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上が更に好ましく、3質量%以上が更に一層好ましく、5質量%以上が殊更好ましい。
【0019】
本発明の樹脂組成物において、(A)成分の重量平均分子量は特に限定されるものではないが、(A)成分の重量平均分子量の上限値は、接着フィルムのラミネート性を向上させるという観点から、1500以下が好ましく、1000以下がより好ましく、750以下が更に好ましい。一方、(A)成分の重量平均分子量の下限値は、樹脂組成物ワニス中で結晶化するのを防止するという観点から、200以上が好ましく、300以上がより好ましく、400以上が更に好ましい。本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定される。GPC法による重量平均分子量は、具体的には、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)社製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0020】
本発明の(A)成分を含有する樹脂組成物の硬化物の耐折回数は、後述する<MIT耐折性の測定及び評価>に記載の測定方法により把握することができる。
【0021】
本発明の樹脂組成物の硬化物の耐折回数の上限値は、250回が好ましく、300回がより好ましく、350回が更に好ましく、400回が更に一層好ましく、500回が殊更好ましく、800回が特に好ましく、1000回がとりわけ好ましく、10000回がなおさら好ましい。本発明の樹脂組成物の硬化物の耐折回数の下限値は、50回が好ましく、100回がより好ましく、150回が更に好ましく、170回が更に一層好ましく、190回が殊更好ましく、210回が特に好ましい。
【0022】
本発明の(A)成分を含有する樹脂組成物の硬化物の線熱膨張率は、後述する<ガラス転移温度(Tg)及び線熱膨張率の測定及び評価>に記載の評価方法により把握することができる。
【0023】
本発明の樹脂組成物の硬化物の線熱膨張率の上限値は、40ppmが好ましく、39ppmがより好ましく、38ppmが更に好ましい。本発明の樹脂組成物の硬化物の線熱膨張率の下限値は、36ppmが好ましく、35ppmがより好ましく、34ppmが更に好ましく、33ppmが更に一層好ましく、30ppmが殊更好ましく、15ppmが特に好ましく、4ppmがとりわけ好ましい。
【0024】
[(B)無機充填材]
本発明の樹脂組成物には、当該樹脂組成物から得られる絶縁層の熱膨張率をさらに低下させるために無機充填材を含有させる事ができる。無機充填材としては、特に制限はないが、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられ、なかでもシリカが好ましい。これらの中でも無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、粉砕シリカ、中空シリカ、球状シリカが好ましく、溶融シリカ、球状シリカがより好ましい。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0025】
無機充填材の平均粒径は、特に限定されるものではないが、当該樹脂組成物から得られる絶縁層の屈曲性を向上させるという観点、、絶縁層への微細配線形成を可能とし、レーザーによる加工性を向上させるという観点から、5μm以下が好ましく、2.5μm以下がより好ましく、1μm以下が更に好ましく、0.7μm以下が更に一層好ましく、0.5μm以下が殊更好ましく、0.45μm以下が特に好ましい。また、無機充填材の平均粒径が小さくなりすぎると、樹脂組成物を樹脂ワニスとした場合に、樹脂ワニスの粘度が上昇して取り扱い性が低下するのを防止するという観点、分散性を向上させるという観点から、平均粒径は0.02μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることが更に好ましく、0.2μm以上であることが更に一層好ましい。無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製 LA−500等を使用することができる。
【0026】
無機充填材の添加量の上限値は、硬化物が脆くなるのを防止し、樹脂組成物の密着強度が低下するのを防止するという観点から、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましく、55質量%以下が更に一層好ましく、50質量%以下が殊更好ましい。一方、無機充填材の添加量の下限値は、絶縁層の熱膨張率を低くするという観点から、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、30質量%以上が更に一層好ましく、35質量%以上が殊更好ましい。
【0027】
無機充填材は、シラン系カップリング剤、アクリレート系シランカップリング剤、スルフィド系シランカップリング剤、ビニル系シランカップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、スチリル系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤、オルガノシラザン化合物、エポキシシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等の表面処理剤で表面処理してその耐湿性、分散性を向上させたものが好ましい。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。表面処理剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン等のアミノシラン系カップリング剤、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド系シランカップリング剤、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、グリシジルブチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、11−メルカプトウンデシルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン系カップリング剤、メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メタクロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン、t−ブチルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤、p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル系シランカップリング剤、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルジメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルジエトキシシラン等のアクリレート系シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系シランカップリング剤、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、トリシラザン、シクロトリシラザン、2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサオクチルジシラザン、1,3−ジエチルテトラメチルジシラザン、1,3−ジ−n−オクチルテトラメチルジシラザン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシラザン、1,3−ジメチルテトラフェニルジシラザン、1,3−ジエチルテトラメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジメチルジシラザン、1,3−ジプロピルテトラメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ジメチルアミノトリメチルシラザン、テトラメチルジシラザン等のオルガノシラザン化合物、テトラ−n−ブチルチタネートダイマー、チタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレート、テトラ−n−ブチルチタネート、チタンオクチレングリコレート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシチタンビスラクテート、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート等のチタネート系カップリング剤等が挙げられる。
【0028】
[(C)エポキシ樹脂]
本発明の樹脂組成物には、当該樹脂組成物から得られる絶縁層の耐熱性、絶縁信頼性、屈曲性、金属膜との密着性を向上させるためにエポキシ樹脂を含有させる事ができる。エポキシ樹脂としては、特に制限はないが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物、及びアルコール類のジグリシジルエーテル化物、並びにこれらのエポキシ樹脂のアルキル置換体、ハロゲン化物及び水素添加物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0029】
エポキシ樹脂は、これらの中でも、耐熱性、絶縁信頼性、屈曲性、金属膜との密着性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。具体的には、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート828EL」)、ナフタレン型2官能エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製「HP4032」、「HP4032D])、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製「HP4700」)、ナフトール型エポキシ樹脂(東都化成(株)製「ESN−475V」)、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂(ダイセル化学工業(株)製「PB−3600」)、ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000H」、「NC3000L」、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX4000」)などが挙げられる。
【0030】
本発明の樹脂組成物において、樹脂組成物中の(C)成分の含有量は特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の(C)成分の含有量の上限値は、フィルムの可とう性が減少するのを防止するという観点から、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、60質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、40質量%が更に好ましい。一方、樹脂組成物中の(C)成分の含有量の下限値は、絶縁層のガラス転移温度を向上させ、線熱膨張率を低下させるという観点から、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、15質量%が更に好ましい。
【0031】
[(D)硬化剤((A)成分を除く)]
本発明の樹脂組成物には、当該樹脂組成物から得られる絶縁層の耐熱性を向上させ、絶縁信頼性を向上させ、誘電正接を低下させる等のために(D)成分を含有させる事ができる。(D)成分としては、エポキシ樹脂を硬化する機能を有するものであれば特に限定されず、具体的には、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0032】
本発明の樹脂組成物において、樹脂組成物中の(D)成分の含有量は特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の(D)成分の含有量の上限値は、フィルムの可とう性が減少するのを防止するという観点から、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、50質量%が好ましく、45質量%がより好ましく、40質量%が更に好ましい。一方、樹脂組成物中の(D)成分の含有量の下限値は、絶縁層のガラス転移温度を向上させるという観点から、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、15質量%が更に好ましい。
【0033】
本発明の樹脂組成物中の(C)エポキシ樹脂のエポキシ基数と、(A)成分と(D)成分の活性水素の合計基数との比は、(1:0.2)〜(1:2)が好ましく、(1:0.3)〜(1:1.5)がより好ましく、(1:0.4)〜(1:1)が更に好ましい。当量比が上記範囲外であると、硬化物の機械強度や耐水性が低下する傾向にある。
【0034】
本発明の樹脂組成物は、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤を含有させる事により、耐熱性、絶縁信頼性を向上させることができる。フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤としては、耐熱性、耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤やノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。市販品としては、MEH−7700、MEH−7810、MEH−7851(明和化成社製)、NHN、CBN、GPH(日本化薬(株)製)、SN170、SN180、SN190、SN475、SN485、SN495、SN375、SN395(東都化成(株)製)、LA7052、LA7054(大日本インキ化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0035】
本発明の樹脂組成物は、活性エステル系硬化剤を含有させる事により、誘電正接を低下させることができる。本発明において使用される活性エステル系硬化剤は、フェノールエステル化合物、チオフェノールエステル化合物、N−ヒドロキシアミンエステル化合物、複素環ヒドロキシ化合物のエステル化化合物等の反応活性の高いエステル基を有し、エポキシ樹脂の硬化作用を有するものをいう。活性エステル系硬化剤は、特に制限はないが、1分子中に2個以上の活性エステル基を有する化合物が好ましく、多価カルボン酸を有する化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族化合物から得られる1分子中に2個以上の活性エステル基を持つ芳香族化合物がより好ましく、少なくとも2個以上のカルボン酸を1分子中に有する化合物と、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とから得られる芳香族化合物であり、かつ該芳香族化合物の分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物が更に好ましい。また、直鎖状または多分岐状であってもよい。また、少なくとも2個以上のカルボン酸を1分子中に有する化合物が脂肪族鎖を含む化合物であればエポキシ樹脂との相溶性を高くすることができ、芳香族環を有する化合物であれば耐熱性を高くすることができる。特に耐熱性等の観点から、カルボン酸化合物とフェノール化合物又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましい。カルボン酸化合物としては、具体的には、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。なかでも耐熱性の観点からコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、イソフタル酸、テレフタル酸がより好ましい。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、具体的には、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。なかでも耐熱性、溶解性の観点から、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、カテコール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが好ましく、カテコール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックがより好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが更に好ましく、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが更に一層好ましく、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが殊更好ましく、ジシクロペンタジエニルジフェノールが特に好ましいこれらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。活性エステル系硬化剤の製造方法は特に制限はないが、公知の方法により製造することができるが、具体的には、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物との縮合反応によって得ることができる。活性エステル系硬化剤としては、特開2004−277460号公報に記載の活性エステル系硬化剤を使用することができ、また市販のものを用いることもできる。
【0036】
市販されている活性エステル系硬化剤としては、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むもの、フェノールノボラックのアセチル化物、フェノールノボラックのベンゾイル化物等が好ましく、なかでもジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むものがより好ましい。具体的には、EXB9460S−65T(DIC(株)製、活性基当量約223)、DC808(ジャパンエポキシレジン(株)製、活性基当量約149)、YLH1026(ジャパンエポキシレジン(株)製、活性基当量約200)、YLH1030(ジャパンエポキシレジン(株)製、活性基当量約201)、YLH1048(ジャパンエポキシレジン(株)製、活性基当量約245)、等が挙げられ、中でもEXB9460Sがワニスの保存安定性、硬化物の熱膨張率の観点から好ましい。
【0037】
本発明の樹脂組成物は、ベンゾオキサジン系硬化剤を含有させる事により、絶縁層のガラス転移温度を上昇させることができる。ベンゾオキサジン系硬化剤としては、特に限定されるものではないが、具体的に、HFB2006M(昭和高分子(株))、P−d、F−a(四国化成工業(株)製)などが挙げられる。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、シアネートエステル系硬化剤を含有させる事により、誘電正接を低下させることができる。シアネートエステル系硬化剤としては、特に限定されるものではなく、ノボラック型(フェノールノボラック型、アルキルフェノールノボラック型など)シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型など)シアネートエステル樹脂、及びこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。シアネートエステル系硬化剤の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、好ましくは500〜4500であり、より好ましくは600〜3000である。
【0039】
シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ジシクロペンタジエン構造含有フェノール樹脂等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0040】
市販されているシアネートエステル樹脂としては、下式(8)で表されるフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製、PT30、シアネート当量124)、下式(9)で表されるビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー(ロンザジャパン(株)製、BA230、シアネート当量232)、下式(10)で表されるジシクロペンタジエン構造含有シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製、DT−4000、DT−7000)等が挙げられる。
【0041】
【化8】
[式(8)中、nは平均値として任意の数(好ましくは0〜20)を示す。]
【0043】
【化10】
(式(10)中、nは平均値として0〜5の数を表す。)
【0044】
[(E)硬化促進剤]
本発明の樹脂組成物には、当該樹脂組成物を効率よく硬化させるという観点から、(E)硬化促進剤を含有させる事ができる。(E)硬化促進剤としては、特に限定されるものではなく、金属系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、有機ホスフィン化合物、有機ホスホニウム塩化合物等が挙げられる。
【0045】
金属系硬化促進剤としては、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体などが挙げられる。有機金属塩としては、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。金属系硬化促進剤としては、硬化性、溶剤溶解性の観点から、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、亜鉛(II)アセチルアセトナート、ナフテン酸亜鉛、鉄(III)アセチルアセトナートが好ましく、特にコバルト(II)アセチルアセトナート、ナフテン酸亜鉛が好ましい。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0046】
エポキシ樹脂とシアネートエステル系硬化剤を効率よく硬化させるために、金属系硬化促進剤を用いる事が好ましい。金属系硬化促進剤の添加量は、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、金属系硬化促進剤に基づく金属の含有量が25〜500ppmの範囲が好ましく、40〜200ppmの範囲がより好ましい。25ppm未満であると、低粗度の絶縁層表面への密着性に優れる導体層の形成が困難となる傾向にあり、500ppmを超えると、樹脂組成物の保存安定性、絶縁性が低下する傾向となる。
【0047】
イミダゾール系硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。
【0048】
アミン系硬化促進剤としては、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン(以下、DBUと略記する。)などのアミン化合物などが挙げられる。
【0049】
有機ホスフィン化合物、有機ホスホニウム塩化合物としては、TPP、TPP−K、TPP−S、TPTP−S、TBP−DA、TPP−SCN、TPTP−SCN(北興化学工業(株)商品名)などが挙げられる。
【0050】
イミダゾール系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、有機ホスフィン化合物、有機ホスホニウム塩化合物等の金属系硬化促進剤以外の硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、0.05〜3質量%の範囲であるのが好ましく、0.07〜2質量%の範囲であるのがより好ましい。0.05質量%未満であると、下地導体層との密着強度が低下する傾向にあり、3質量%を超えると硬化物の誘電正接が大きくなる傾向となる。金属系硬化促進剤とそれ以外の硬化促進剤(イミダゾール系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、有機ホスフィン化合物、有機ホスホニウム塩化合物等)を組み合わせて用いる場合の含有量は、金属系硬化促進剤とそれ以外の硬化促進剤(イミダゾール系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、有機ホスフィン化合物、有機ホスホニウム塩化合物等)をそれぞれ上記範囲内とするのが好ましい。
【0051】
[(F)熱可塑性樹脂]
本発明の樹脂組成物には、硬化物の機械強度や接着フィルムの形態で使用する場合のフィルム成型能を向上させるという観点から、(F)熱可塑性樹脂を含有させる事ができる。このような(F)熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。なかでも、ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂が好ましい。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
(F)熱可塑性樹脂はガラス転移温度が80℃以上のものが好ましい。ここでいう「ガラス転移温度」はJIS K 7197に記載の方法に従って決定される。なお、ガラス転移温度が分解温度よりも高く、実際にはガラス転移温度が観測されない場合には、分解温度を本発明におけるガラス転移温度とみなすことができる。なお、分解温度とは、JIS K 7120に記載の方法に従って測定したときの質量減少率が5%となる温度で定義される。
【0053】
(F)熱可塑性樹脂の重量平均分子量は5000〜200000の範囲であるのが好ましく、10000〜150000の範囲であるのがより好ましく、15000〜100000の範囲であるのが更に好ましく、20000〜80000の範囲であるのが更に一層好ましい。この範囲よりも小さいとフィルム成型能や機械強度向上の効果が十分発揮されない傾向にあり、この範囲よりも大きいとシアネートエステル樹脂及びエポキシ樹脂との相溶性が低下し、絶縁層表面の粗化処理後の粗度が増大する傾向にある。なお本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定される。GPC法による重量平均分子量は、具体的には、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)社製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0054】
フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、トリメチルシクロヘキサン骨格から選択される1種以上の骨格を有するものが挙げられる。フェノキシ樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。フェノキシ樹脂の末端はフェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製1256、4250(ビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、ジャパンエポキシレジン製YX8100(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、ジャパンエポキシレジン製YX6954(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)や、その他東都化成(株)製FX280、FX293、ジャパンエポキシレジン(株)製YL7553、YL6954、YL6794、YL7213、YL7290、YL7482、等が挙げられる。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業(株)製、電化ブチラール4000−2、5000−A、6000−C、6000−EP、積水化学工業(株)製エスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製のポリイミド「リカコートSN20」および「リカコートPN20」が挙げられる。また、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のもの)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報、特開2000−319386号公報等に記載のもの)等の変性ポリイミドが挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績(株)製のポリアミドイミド「バイロマックスHR11NN」および「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。また、日立化成工業(株)製のポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド「KS9100」、「KS9300」等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学(株)社製のポリエーテルスルホン「PES5003P」等が挙げられる。ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベンアドバンストポリマーズ(株)社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0055】
樹脂組成物中の(F)熱可塑性樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.5〜20質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。(F)熱可塑性樹脂の配合割合が0.5質量%未満の場合、樹脂組成物粘度が低いために、均一な樹脂組成物層を形成することが難しくなる傾向となり、20質量%を超える場合、樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎて、基板上の配線パターンへの埋め込みが困難になる傾向となる。
【0056】
[(G)ゴム粒子]
本発明の樹脂組成物には、硬化物の機械強度を高め、応力緩和効果を向上させるという観点から、(G)ゴム粒子を含有させる事ができる。(G)ゴム粒子は、樹脂組成物を調製する際の有機溶媒にも溶解せず、エポキシ樹脂等の樹脂組成物中の成分とも相溶せず、樹脂組成物のワニス中では分散状態で存在するものが好ましい。このようなゴム粒子は、一般には、ゴム成分の分子量を有機溶剤や樹脂に溶解しないレベルまで大きくし、粒子状とすることで調製される。ゴム粒子としては、例えば、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリルニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。コアシェル型ゴム粒子は、粒子がコア層とシェル層を有するゴム粒子であり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマー、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、または外層のシェル層がガラス状ポリマー、中間層がゴム状ポリマー、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のものなどが挙げられる。ガラス状ポリマー層は例えば、メタクリル酸メチルの重合物などで構成され、ゴム状ポリマー層は例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)などで構成される。コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、スタフィロイドAC3832、AC3816N、(ガンツ化成(株)商品名)、メタブレンKW−4426(三菱レイヨン(株)商品名)が挙げられる。アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、XER−91(平均粒径0.5μm、JSR(株)製)などが挙げられる。スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例としては、XSK−500(平均粒径0.5μm、JSR(株)製)などが挙げられる。アクリルゴム粒子の具体例としては、メタブレンW300A(平均粒径0.1μm)、W450A(平均粒径0.5μm)(三菱レイヨン(株)製)を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
配合する(G)ゴム粒子の平均粒径は0.005〜1μmの範囲が好ましく、0.2〜0.6μmの範囲がより好ましい。本発明におけるゴム粒子の平均粒径は、動的光散乱法を用いて測定することが出来る。例えば、適当な有機溶剤にゴム粒子を超音波などにより均一に分散させ、FPRA−1000(大塚電子(株)社製)を用いて、ゴム粒子の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。
【0058】
(G)ゴム粒子を配合する場合の含有量は、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、1〜10質量%の範囲であるのが好ましく、2〜5質量%の範囲であるのがより好ましい。
【0059】
[(H)難燃剤]
本発明の樹脂組成物は、難燃性向上の観点から、(H)難燃剤をさらに含有することができる。(H)難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。有機リン系難燃剤としては、三光(株)製のHCA、HCA−HQ、HCA−NQ等のフェナントレン型リン化合物、昭和高分子(株)製のHFB−2006M等のリン含有ベンゾオキサジン化合物、味の素ファインテクノ(株)製のレオフォス30、50、65、90、110、TPP、RPD、BAPP、CPD、TCP、TXP、TBP、TOP、KP140、TIBP、北興化学工業(株)製のPPQ、クラリアント(株)製のOP930、大八化学(株)製のPX200等のリン酸エステル化合物、東都化成(株)製のFX289、FX305等のリン含有エポキシ樹脂、東都化成(株)製のERF001等のリン含有フェノキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン(株)製のYL7613等のリン含有エポキシ樹脂等が挙げられる。有機系窒素含有リン化合物としては、四国化成工業(株)製のSP670、SP703等のリン酸エステルミド化合物、大塚化学(株)社製のSPB100、SPE100、(株)伏見製作所製FP−series等のホスファゼン化合物等が挙げられる。金属水酸化物としては、宇部マテリアルズ(株)製のUD65、UD650、UD653等の水酸化マグネシウム、巴工業(株)社製のB−30、B−325、B−315、B−308、B−303、UFH−20等の水酸化アルミニウム等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果が発揮される範囲で、マレイミド化合物、ビスアリルナジイミド化合物、ビニルベンジル樹脂、ビニルベンジルエーテル樹脂などのエポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂を配合することができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。マレイミド樹脂としてはBMI1000、BMI2000、BMI3000、BMI4000、BMI5100(大和化成工業(株)製)、BMI、BMI−70、BMI−80(ケイ・アイ化成(株)製)、ANILIX−MI(三井化学ファイン(株)製)、ビスアリルナジイミド化合物としてはBANI−M、BANI−X(丸善石油化学工業(株)製)ビニルベンジル樹脂としてはV5000(昭和高分子(株)製)、ビニルベンジルエーテル樹脂としてはV1000X、V1100X(昭和高分子(株)製)が挙げられる。
【0061】
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果が発揮される範囲で、上述した以外の他の各種樹脂添加剤を任意で含有させることができる。樹脂添加剤としては、例えばシリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等の有機充填剤、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、シランカップリング剤、トリアゾール化合物、チアゾール化合物、トリアジン化合物、ポルフィリン化合物等の密着性付与剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック等の着色剤等を挙げることができる。
【0062】
本発明の樹脂組成物の用途は、特に限定されないが、本発明の樹脂組成物を用いることでラミネート性、屈曲性、低線熱膨張率を達成することが特徴であり、接着フィルム、プリプレグ等のシート状積層材料、回路基板、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる。なかでも、多層プリント配線板の製造において絶縁層を形成するために好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物は、ワニス状態で回路基板に塗布して絶縁層を形成することもできるが、工業的には一般に、接着フィルム、プリプレグ等のシート状積層材料の形態で用いるのが好ましい。樹脂組成物の軟化点は、シート状積層材料のラミネート性の観点から40〜150℃が好ましい。
【0063】
[接着フィルム]
本発明の接着フィルムは、当業者に公知の方法、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーターなどを用いて、支持体に塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0064】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0065】
乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層への有機溶剤の含有割合は10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。乾燥条件は、簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。ワニス中の有機溶媒量によっても異なるが、30〜60質量%の有機溶剤を含むワニスを50〜150℃で3〜10分程度乾燥させることが好ましい。
【0066】
接着フィルムにおいて形成される樹脂組成物層の厚さは、樹脂組成物の硬化物のMIT耐折性試験を行った際の耐折回数を増加させるという観点から、10〜100μmが好ましく、15〜90μmがより好ましく、20〜80μmが更に好ましく、25〜70μmが更に一層好ましく、30〜65μmが殊更好ましく、35〜60μmが特に好ましく、40〜55μmがとりわけ好ましい。
【0067】
本発明における支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドなどのプラスチックフィルムが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、とくにPETが好ましい。支持体として銅箔、アルミニウム箔等の金属箔を使用し、金属箔付接着フィルムとすることもできる。また支持体はマット処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。また、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等の離型剤で離型処理が施してあってもよい。支持体の厚さは特に限定されないが、10〜150μmが好ましく、25〜50μmのがより好ましい。
【0068】
本発明における支持体は、内層回路基板等にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持体を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができ、また硬化後の絶縁層の表面平滑性を向上させることができる。硬化後に剥離する場合、支持体には予め離型処理が施されるのが好ましい。なお、支持体上に形成される樹脂組成物層は、層の面積が支持体の面積より小さくなるように形成するのが好ましい。
【0069】
樹脂組成物層の支持体が密着していない面には、保護フィルムとして支持体と同様のプラスチックフィルムをさらに積層することができる。保護フィルムはマット処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。また、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等の離型剤で離型処理が施してあってもよい。保護フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、1〜40μmが好ましい。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。接着フィルムは、ロール状に巻きとって、保存、貯蔵することができる。
【0070】
[接着フィルムを用いた多層プリント配線板]
上記のようにして製造した接着フィルムを用いて多層プリント配線板を製造することができる。その方法の一例を次に説明する。樹脂組成物層が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、樹脂組成物層を内層回路基板に直接接するように、内層回路基板の片面又は両面にラミネートする。本発明の接着フィルムにおいては真空ラミネート法により減圧下で内層回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び内層回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
【0071】
本発明における内層回路基板とは、主として、ガラスエポキシ、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板の片面又は両面にパターン加工された導体層が形成されたものをいう。また導体層と絶縁層が交互に層形成され、片面又は両面がパターン加工された導体層となっている、多層プリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層および導体層が形成されるべき中間製造物も本発明における内層回路基板に含まれる。内層回路基板において、導体回路層表面は黒化処理等により予め粗化処理が施されていた方が絶縁層の内層回路基板への密着性の観点から好ましい。
【0072】
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm
2(9.8×10
4〜107.9×10
4N/m
2)とし、空気圧が20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートするのが好ましい。
【0073】
真空ラミネートは市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニチゴー・モートン(株)製 バキュームアップリケーター、(株)名機製作所製 真空加圧式ラミネーター、(株)日立インダストリイズ製 ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0074】
また、減圧下、加熱及び加圧を行う積層工程は、一般の真空ホットプレス機を用いて行うことも可能である。例えば、加熱されたSUS板等の金属板を支持体層側からプレスすることにより行うことができる。
【0075】
プレス条件は、減圧度を1×10−2MPa以下にするのが好ましく、1×10−3MPa以下とするのがより好ましい。加熱及び加圧は、1段階で行うことも出来るが、樹脂のしみだしを制御する観点から2段階以上に条件を分けて行うのが好ましい。1段階目のプレスを、温度が70〜150℃、圧力が1〜15kgf/cm2の範囲、2段階目のプレスを、温度が150〜200℃、圧力が1〜40kgf/cm2の範囲で行うのが好ましい。各段階の時間は30〜120分で行うのが好ましい。市販されている真空ホットプレス機としては、例えば、MNPC−V−750−5−200(株)名機製作所製)、VH1−1603(北川精機(株)製)等が挙げられる。
【0076】
このように接着フィルムを内層回路基板に積層した後、支持体を剥離する場合は剥離し、熱硬化することにより内層回路基板上に絶縁層を形成することができる。加熱硬化の条件は150℃〜220℃で20分〜180分の範囲で選択され、より好ましくは160℃〜200℃で30〜120分である。
【0077】
絶縁層を形成した後、硬化前に支持体を剥離しなかった場合は、ここで剥離する。次に内層回路基板上に形成された絶縁層に穴開けを行いビアホール、スルーホールを形成する。穴あけはドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができる。なかでも炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけが好ましい。
【0078】
次いで、絶縁層表面に粗化処理を行う。本発明における粗化処理は、酸化剤を使用した湿式粗化方法で行うのが好ましい。酸化剤としては、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等が挙げられる。好ましくはビルトアップ工法による多層プリント配線板の製造における絶縁層の粗化に汎用されている酸化剤である、アルカリ性過マンガン酸溶液(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムの水酸化ナトリウム水溶液など)を用いて粗化を行うのが好ましい。
【0079】
次に、粗化処理により凸凹のアンカーが形成された樹脂組成物層表面に、無電解メッキと電解メッキを組み合わせた方法で導体層を形成する。また導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成することもできる。なお導体層形成後、150〜200℃で20〜90分アニール(anneal)処理することにより、導体層のピール強度をさらに向上、安定化させることができる。
【0080】
また、導体層をパターン加工し回路形成する方法としては、例えば当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディディブ法などを用いることができる。
【0081】
[プリプレグ]
本発明のプリプレグは、本発明の樹脂組成物をシート状繊維基材にホットメルト法又はソルベント法により含浸させ、加熱して半硬化させることにより製造することができる。すなわち、本発明の樹脂組成物がシート状繊維基材に含浸した状態となるプリプレグとすることができる。シート状繊維基材としては、ガラスクロスやアラミド繊維等のプリプレグ用繊維として常用されている繊維からなるものを用いることが好ましい。
【0082】
ホットメルト法は、樹脂を有機溶剤に溶解することなく、樹脂を樹脂と剥離性の良い塗工紙に一旦コーティングし、それをシート状繊維基材にラミネートする、あるいはダイコーターにより直接塗工するなどして、プリプレグを製造する方法である。またソルベント法は、接着フィルムと同様、樹脂を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスにシート状繊維基材を浸漬し、樹脂ワニスをシート状繊維基材に含浸させ、その後乾燥させる方法である。
【0083】
[プリプレグを用いた多層プリント配線板]
上記のようにして製造したプリプレグを用いて多層プリント配線板を製造することができる。その方法の一例を次に説明する。内層回路基板に本発明のプリプレグを1枚あるいは必要により数枚重ね、離型フィルムを介して金属プレートで挟み、加圧・加熱条件下でプレス積層する。加圧・加熱条件は、好ましくは、圧力が5〜40kgf/cm
2(49×10
4〜392×10
4N/m
2)、温度が120〜200℃で20〜100分である。また接着フィルムと同様に、プリプレグを真空ラミネート法により回路基板にラミネートした後、加熱硬化することも可能である。その後、上記で記載した方法と同様にして、硬化したプリプレグ表面を粗化した後、導体層をメッキにより形成して多層プリント配線板を製造することができる。
【0084】
[半導体装置]
さらに本発明の多層プリント配線板を用いることで半導体装置を製造することができる。多層プリント配線板上の接続用電極部分に半導体素子を接合することにより、半導体装置を製造する。半導体素子の搭載方法は、特に限定されないが、例えば、ワイヤボンディング実装、フリップチップ実装、異方性導電フィルム(ACF)による実装、非導電性フィルム(NCF)による実装などが挙げられる。
【0085】
一方、樹脂組成物に、特定の無機充填材を含有させることにより、絶縁層に微細配線溝を形成することができる。微細配線溝とは、ライン(配線)/スペース(間隔)=15μm/15μm以下のものをいい、12μm/12μm以下がより好ましく、10μm/10μm以下が更に好ましく、8μm/8μm以下が更に一層好ましい。
【0086】
従来、多層プリント配線板の製造技術としては、コア基板上に絶縁層と導体層を交互に積み重ねるビルトアップ方式による製造方法が知られている。例えば、内層回路基板上に接着フィルムにより硬化性樹脂組成物を積層し、該硬化性樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成する。その後、レーザーを用いて層間接続用のビアを形成し、アルカリ性過マンガン酸カリウム溶液等の酸化剤でビア底のデスミアと該絶縁層を粗化し、その粗面にセミアディティブ法により、無電解めっきによりめっきシード層を形成し、次いで電解めっきにより導体層を形成する。そして、エッチングにより不要なめっきシード層を除去し、回路形成される。
【0087】
一方、特許文献(特開2010−21301)や非特許文献(Advancing MICROELECTRONICS 11/12 2007 P22)に開示されているように、レーザーを用いて絶縁層に直接、配線となる溝を形成する工法が微細配線に適しているとして期待されている。該工法では、上記のビルトアップ方式による製造方法と同様に、内層回路基板上に絶縁層を形成し、レーザーを用いて絶縁層に配線となる溝およびビアを形成するが、シリカの粒径についての記載はない。さらに、アルカリ性過マンガン酸カリウム溶液等の酸化剤でビア底のデスミアと該絶縁層を粗化し、その粗面に無電解めっき、電気めっきを行い、最後に表層の不要な銅層を除去して回路形成するが、デスミアについては、プラズマ等のドライ工法も可能である。しかしながら、デスミア工程において絶縁層が粗化される際に、形成された溝の角部樹脂が除去され、好ましい矩形を維持することができず、その後に形成される配線が想定した微細配線とならない問題があった。
【0088】
そこで、支持体層上に金属膜層が形成された金属膜付きフィルム又は、支持体層上に金属膜層が形成され、さらに該金属膜層上に硬化性樹脂組成物層が形成された金属膜付き接着フィルムを用いて、絶縁層上に金属膜層を設けることによって、金属膜層上からレーザーを用いて絶縁層に配線溝形成し、デスミアした後においても、絶縁層が矩形を維持し、微細配線溝形状を得ることができるようになった。以下、金属膜付きフィルム及び金属膜付き接着フィルムについて説明する。
【0089】
<支持体層>
支持体層は自己支持性を有するフィルム乃至シート状物であり、金属箔、プラスチックフィルム等を用いることができ、特にプラスチックフィルムが好適に用いられる。金属箔としては、アルミニウム箔、銅箔等が挙げられる。支持体層として金属箔を用いる場合で金属膜付きフィルムが離型層を有しない場合は、形成される金属膜層とは別の金属からなる金属箔が採用される。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート等が挙げられ、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが好ましく、中でも、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。また支持体層表面は、コロナ処理等の表面処理が施してあってもよい。また金属膜層や離型層が存在しない側の支持体層フィルム表面にも、マット処理、コロナ処理等の表面処理が施してあってもよい。離型層が形成される側の支持体層表面は、金属膜付きフィルムを製造する際のクラック防止の観点から、算術平均粗さ(Ra値)を50nm以下(0以上50nm以下)、さらには40nm以下、さらには35nm以下、さらには30nm以下とするのが好ましい。また離型層が形成されない側の支持体層表面の算術平均粗さも、上記と同じ範囲内とするのが好ましい。算術平均粗さ(Ra値)の測定は、公知の方法を用いることができ、例えば、非接触型表面粗さ計(例えば、ビーコインスツルメンツ社製WYKO NT3300等)などの装置を用いて測定することができる。支持体は市販のものを用いることもでき、例えば、T60(東レ(株)製、ポリエチレンテレフタレートフィルム)、A4100(東洋紡(株)製、ポリエチレンテレフタレートフィルム)、Q83(帝人デュポンフィルム(株)製、ポリエチレンナフタレートフィルム)、リンテック(株)製、アルキッド型離型剤(AL−5)付きポリエチレンテレフタレートフィルム、ダイアホイル(登録商標)B100(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、ポリエチレンテレフタレートフィルム)等が挙げられる。
【0090】
支持体層の層厚は、10〜70μmが好ましく、より好ましくは15〜70μmである。層厚が小さすぎると、取り扱い性に劣る傾向や、支持体層の剥離性低下の傾向や、平滑な金属膜層の形成に不具合が生じる傾向がある。また、層厚が大きすぎると、コスト的に実用的でない傾向となる。
【0091】
<離型層>
本発明における金属膜付きフィルム及び金属膜付き接着フィルムは、金属膜を被着体表面に効率的に転写するため、支持体層と金属膜層間に離型層を有するのが好ましい。
【0092】
離型層は、フッ素樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、セルロース樹脂等の高分子離型層を用いて形成することができる。
【0093】
離型層は、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等で形成される金属膜や、金属箔を用いることができる。金属としては、アルミニウム、亜鉛、鉛、ニッケル等が挙げられるが、アルミニウムが好ましい。
【0094】
離型層は、金属膜層を均一に転写する観点、離型層を形成するコストの観点から、水溶性セルロース樹脂、水溶性アクリル樹脂及び水溶性ポリエステル樹脂から選択される1種以上の水溶性高分子離型層で形成するのが好ましい。これらの水溶性高分子離型層は、金属離型層に比べ、支持体層上への離型層形成が容易であり、コスト面でも有利である。さらに被着体である硬化性樹脂組成物の硬化後に支持体層−離型層間で支持体層の剥離が可能で金属膜層が損傷を受けにくく、また金属膜層上に残る離型層は水溶液で簡便に除去されるため、被着体上に均一に金属膜を形成することが可能となる。これらの中でも、水溶性セルロース樹脂及び水溶性ポリエステル樹脂がより好ましく、水溶性セルロース樹脂が更に好ましい。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。また、水溶性高分子離型層は使用される水溶性高分子が異なる1又は2以上の層から形成される多層構造を有していてもよい。
【0095】
なお離型層として、水溶性高分子離型層を用いる場合、水溶性高分子離型層と支持体層間に、これらの層間での剥離性を向上させるため、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂等の他の離型層が存在していてもよい。すなわち、離型層に水溶性高分子離型層を適用する場合、離型層の少なくとも金属膜と接着する面が水溶性高分子離型層で形成されていればよく、例えば、離型層を水溶性高分子離型層のみで形成するか、またはその金属膜と接着する面が水溶性高分子離型層で形成されるように、水溶性高分子離型層と他の離型層との2層構造にすることができる。水溶性高分子離型層を少なくとも金属膜と接着する面に採用した場合、被着体である硬化性樹脂組成物の硬化後に支持体層−離型層間で支持体の剥離が可能となり、その後、金属膜層上に残る離型層は水溶液で簡便に除去されるため、被着体上に均一性に優れる金属膜を形成することが可能となる。なお支持体層−離型層間での支持体の剥離は、離型層が上記水溶性高分子離型層のみで形成される場合、支持体と水溶性高分子離型層の界面で行われ、離型層がアルキッド樹脂等の他の離型層と上記水溶性高分子離型層の2層からなる場合は、該他の離型層と該水溶性高分子離型層の界面で行われる。
【0096】
離型層の層厚は、0.01μm以上20μm以下が好ましく、0.05μm以上10μm以下がより好ましく、0.1μm以上5μm以下が更に好ましく、0.1μm以上3μm以下が更に一層好ましく、0.1μm以上2μm以下が殊更好ましい、0.1μm以上1μm以下が特に好ましく、0.2μm以上1μm以下がとりわけ好ましい。ここでいう「層厚」とは離型層が単層の場合はその厚みであり、多層の場合は、多層の総厚みである。例えば離型層が上述したように、水溶性高分子離型層と、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂等の他の離型層とから構成される場合は、これらの離型層の合計の層厚を上記範囲に設定する。該水溶性高分子離型層以外の他の離型層の層厚は0.01〜0.2μmの範囲が好ましい。離型層の層厚が厚すぎると、硬化性樹脂組成物層を熱硬化する場合に、金属膜層と離型層との熱膨張率の相違によって金属膜層にひびや傷が入るなどの不具合を生じるおそれがある。また層厚が薄すぎると、支持体層の剥離性が低下するおそれがある。
【0097】
(水溶性セルロース樹脂)
本発明でいう「水溶性セルロース樹脂」とは、セルロースに水溶性を付与するための処理を施したセルロース誘導体のことであり、好適には、セルロースエーテル、セルロースエーテルエステル等が挙げられる。
【0098】
セルロースエーテルは、セルロースポリマーに1以上のエーテル連結基を与えるために、セルロースポリマーの1以上の無水グルコース繰り返し単位に存在する1以上のヒドロキシル基の変換により形成されるエーテルのことであり、エーテル連結基には、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基(炭素数1〜4)及びヒドロキシアルコキシ基(炭素数1〜4)から選択される1種以上の置換基により置換されていてもよいアルキル基(炭素数1〜4)が挙げられる。具体的には、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシアルキル基(炭素数1〜4);2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、2−メトキシプロピル、2−エトキシエチルなどのアルコキシ(炭素数1〜4)アルキル基(炭素数1〜4);2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルまたは2−(2−ヒドロキシプロポキシ)プロピルなどのヒドロキシアルコキシ(炭素数1〜4)アルキル基(炭素数1〜4)、カルボキシメチルなどのカルボキシアルキル基(炭素数1〜4)等が挙げられる。ポリマー分子中のエーテル連結基は単一種でも複数種でもよい。すなわち、単一種のエーテル連結基を有するセルロースエーテルであっても、複数種のエーテル連結基を有するセルロースエーテルであってもよい。
【0099】
セルロースエーテルの具体例としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びこれらの水溶性塩(例えば、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩)が挙げられる。
【0100】
なお、セルロースエーテルにおける単位グルコース環あたりに置換されたエーテル基の平均モル数は特に限定されないが、1〜6が好ましい。また、セルロースエーテルの分子量は重量平均分子量が20000〜60000程度が好適である。
【0101】
一方、セルロースエーテルエステルは、セルロース中に存在する1以上のヒドロキシル基および1以上の好適な有機酸またはその反応性誘導体との間で形成され、それによりセルロースエーテルにおいてエステル連結基を形成するエステルのことである。なお、ここでいう「セルロースエーテル」は上述の通りであり、「有機酸」は脂肪族または芳香族カルボン酸(炭素数2〜8)を含み、脂肪族カルボン酸は、非環状(分枝状または非分枝状)または環状であってもよく、飽和または不飽和であってもよい。具体的には、脂肪族カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、マレイン酸等の置換又は非置換の非環状脂肪族ジカルボン酸;グリコール酸または乳酸などの非環状ヒドロキシ置換カルボン酸;リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などの非環状脂肪族ヒドロキシ置換ジ−またはトリ−カルボン酸等が挙げられる。また、芳香族カルボン酸としては、炭素数が14以下のアリールカルボン酸が好ましく、1以上のカルボキシル基(例えば、1、2または3のカルボキシル基)を有するフェニルまたはナフチル基などのアリール基を含むアリールカルボン酸が特に好ましい。なお、アリール基は、ヒドロキシ、炭素数が1−4のアルコキシ(例えば、メトキシ)およびスルホニルから選択される、同一または異なってもよい1以上の(例えば、1、2または3)の基により置換されていてもよい。アリールカルボン酸の好適な例には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸またはトリメリット酸(1,2,4−ベンゼントリカルボン酸)等が挙げられる。
【0102】
有機酸が1以上のカルボキシル基を有する場合、好適には、酸のただ1つのカルボキシル基が、セルロースエーテルに対してエステル連結を形成する。例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースサクシネートの場合、各サクシネート基の1つのカルボキシル基がセルロースとエステル連結を形成し、他のカルボキシ基が遊離の酸として存在する。「エステル連結基」は、セルロースまたはセルロースエーテルと、既述の好適な有機酸またはその反応性誘導体による反応により形成される。好適な反応性誘導体には、例えば、無水フタル酸などの酸無水物が含まれる。
【0103】
ポリマー分子中のエステル連結基は単一種でも複数種でもよい。すなわち、単一種のエステル連結基を有するセルロースエーテルエステルであっても、複数種のエステル連結基を有するセルロースエーテルエステルであってもよい。例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートは、サクシネート基とアセテート基の両方を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースの混合エステルである。
【0104】
好適なセルロースエーテルエステルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースのエステルであり、具体的には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルローストリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースブチレートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレートサクシネートおよびヒドロキシプロピルセルロースアセテートトリメリテートサクシネート等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を使用できる。これらの中でも、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレートが好ましい。
【0105】
なお、セルロースエーテルエステルにおける単位グルコース環あたりに置換されたエステル基の平均モル数は特に限定されないが、例えば0.5%〜2%程度が好ましい。また、セルロースエーテルエステルの分子量は重量平均分子量が20000〜60000程度が好適である。
【0106】
セルロースエーテル、セルロースエーテルエステルの製法は公知であり、天然由来のセルロース(パルプ)を原料とし、定法に従って、エーテル化剤、エステル化剤を反応させることによって得ることができるが、本発明では市販品を使用してもよい。例えば、信越化学工業(株)製「HP−55」、「HP−50」(ともにヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート)等が挙げられる。
【0107】
(水溶性ポリエステル樹脂)
本発明でいう「水溶性ポリエステル樹脂」とは、多価カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と多価アルコールまたはそのエステル形成性誘導体を主たる原料とする通常の重縮合反応によって合成されるような、実質的に線状のポリマーからなるポリエステル樹脂であって、分子中または分子末端に親水基が導入されたものである。ここで、親水基としては、スルホ基、カルボキシル基、燐酸基等の有機酸基またはその塩等が挙げられ、好ましくは、スルホン酸基またはその塩、カルボン酸基またはその塩である。水溶性ポリエステル樹脂としては、特にスルホ基もしくはその塩及び/又はカルボキシル基もしくはその塩を有するものが好ましい。
【0108】
当該ポリエステル樹脂の多価カルボン酸成分の代表例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸などであり、これらは、単独使用でも2種以上の併用でもよい。また、上記の種々の化合物と共に、p−ヒドロキシ安息香酸などのようなヒドロキシカルボン酸、マレイン酸、フマル酸またはイタコン酸などのような不飽和カルボン酸も少量であれば併用してもよい。
【0109】
当該ポリエステル樹脂の多価アルコール成分の代表例としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサンメタノール、キシリレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパンまたはポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール等であり、これらは、単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0110】
当該ポリエステル樹脂の分子中または分子末端への親水基の導入は公知慣用の方法で行えばよいが、親水基を含有するエステル形成性化合物(例えば、芳香族カルボン酸化合物、ヒドロキシ化合物等)を共重合する態様が好ましい。
【0111】
例えば、スルホン酸塩基を導入する場合、5−スルホン酸ナトリウムイソフタル酸、5−スルホン酸アンモニウムイソフタル酸、4−スルホン酸ナトリウムイソフタル酸、4−メチルスルホン酸アンモニウムイソフタル酸、2−スルホン酸ナトリウムテレフタル酸、5−スルホン酸カリウムイソフタル酸、4−スルホン酸カリウムイソフタル酸および2−スルホン酸カリウムテレフタル酸等から選ばれる1または2種以上を共重合するのが好適である。
【0112】
また、カルボン酸基を導入する場合、たとえば、無水トリメリット酸、トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸、シクロブタンテトラカルボン酸、ジメチロールプロピオン酸等から選ばれる1または2種以上を共重合するのが好適であり、当業共重合反応の後、アミノ化合物、アンモニアまたはアルカリ金属塩などで中和せしめることによって、カルボン酸塩基を分子中に導入することが出来る。
【0113】
水溶性ポリエステル樹脂の分子量は特に制限はないが、重量平均分子量が10000〜40000程度が好ましい。重量平均分子量が10000未満では、層形成性が低下する傾向となり、40000を超えると、溶解性が低下する傾向となる。
【0114】
本発明において、水溶性ポリエステル樹脂は、市販品を使用することができ、例えば、互応化学工業(株)製の「プラスコート Z−561」(重量平均分子量:約27000)、「プラスコート Z−565」(重量平均分子量:約25000)等が挙げられる。
【0115】
(水溶性アクリル樹脂)
本発明でいう「水溶性アクリル樹脂」とは、カルボキシル基含有単量体を必須成分として含有することで、水に分散乃至溶解するアクリル樹脂である。
【0116】
当該アクリル樹脂は、より好ましくは、カルボキシル基含有単量体及び(メタ)アクリル酸エステルが必須の単量体成分であり、必要に応じてその他の不飽和単量体を単量体成分として含有するアクリル系重合体である。
【0117】
上記単量体成分において、カルボキシル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸が好適である。
【0118】
また、(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等のアルキルの炭素数が1〜18であるメタアクリル酸アルキルエステルが挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。
【0119】
また、その他の不飽和単量体としては、例えば、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、水酸基含有単量体等をあげることができる。芳香族アルケニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン等を挙げることができる。シアン化ビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができる。共役ジエン系化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン等をあげることができる。ハロゲン含有不飽和化合物としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等をあげることができる。水酸基含有単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、α−ヒドロキシメチルエチル(メタ)アクリレート等をあげることができる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0120】
後述するように、本発明において、離型層は、好適には、水溶性セルロース、水溶性ポリエステルまたは水溶性アクリル樹脂を含む塗工液を支持体層に塗布・乾燥する方法によって形成される。水溶性アクリル樹脂を使用する場合、その塗工液はエマルジョン形態でも、水溶液形態でも使用可能である。
【0121】
水溶性アクリル樹脂をエマルジョン形態で使用する場合、コアシェル型エマルジョンが好適であり、コアシェル型エマルジョンでは、コアシェル粒子のシェルにカルボキシル基が存在することが重要であり、従って、シェルはカルボキシル基含有単量体及び(メタ)アクリル酸エステルを含むアクリル樹脂で構成される。
【0122】
このようなコアシェル粒子の分散品(エマルジョン)は市販品を使用することができ、例えば、ジョンクリル7600(Tg:約35℃)、7630A(Tg:約53℃)、538J(Tg:約66℃)、352D(Tg:約56℃)(いずれもBASFジャパン社(株)製)等が挙げられる。
【0123】
水溶性アクリル樹脂を水溶液形態で使用する場合、当該アクリル樹脂は、カルボキシル基含有単量体及び(メタ)アクリル酸エステルを含むアクリル樹脂であり、比較的低分子量であることが重要である。よって、重量平均分子量が1000〜50000であるのが好ましく、重量平均分子量が1000未満では、層形成性が低下する傾向となり、重量平均分子量が50000を超えると、支持体層との密着性が高くなり、硬化後の支持体層の剥離性が低下する傾向となる。
【0124】
このような水溶性アクリル樹脂の水溶液は、市販品を使用することができ、例えば、ジョンクリル354J(BASFジャパン社(株)製)等を挙げることができる。
【0125】
なお、水溶性アクリル樹脂のエマルジョンと水溶液では、エマルジョンの方が分子量が高いために薄膜化しやすい。従って、水溶性アクリル樹脂のエマルジョンが好適である。
【0126】
<金属膜層>
金属膜層に使用する金属としては、金、白金、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ、インジウム等の金属単体やニッケル・クロムアロイ等の2種類以上の金属の固溶体(アロイ)を使用することができるが、金属膜形成の汎用性、コスト、エッチングによる除去の容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、ニッケル・クロムアロイ、アルミニウム、亜鉛、銅・ニッケルアロイ、銅・チタンアロイ、金、銀及び銅が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、ニッケル・クロムアロイ、アルミニウム、亜鉛、金、銀及び銅がより好ましく、銅が特に好ましい。また、金属膜層は単層であっても、異なる金属が2層以上積層した複層構造であってもよい。
【0127】
金属膜層の層厚は特に制限はないが、10nm〜5000nmが好ましく、20nm〜2000nmがより好ましく、30nm〜1000nmが更に好ましく、50nm〜500nmが更に一層好ましく、50nm〜400nmが殊更好ましく、50nm〜300nmが特に好ましい。層厚が小さすぎると、金属膜付きフィルムの製造後、金属膜にクラックが入り易い傾向にあり、またデスミア工程等において金属膜層が溶解し、絶縁層表面が粗化されてしまう傾向がある。一方、層厚が大きすぎると、金属膜の形成に長時間を要し、コストがかかる傾向となり、レーザー加工にも時間を要する傾向にある。
【0128】
<硬化性樹脂組成物層>
本発明における金属膜付き接着フィルムは、上述した金属膜付きフィルムの金属膜層上に更に硬化性樹脂組成物層が形成された構造を有する。すなわち、本発明における金属膜付き接着フィルムは、支持体層、金属膜層に加え、さらに硬化性樹脂組成物層を有する。また金属膜付きフィルムと同様、支持体層と金属膜層間に離型層を有するのが好ましい。金属膜付き接着フィルムにおいて、硬化性樹脂組成物層に使用する硬化性樹脂組成物は、その硬化物が、十分な硬度と絶縁性を有するものであれば、特に限定なく使用でき、なかでも、(a)エポキシ樹脂、(b)熱可塑性樹脂及び(c)硬化剤を含有することが好ましい。その他にも、上記で記載したゴム粒子、難燃剤、各種樹脂添加剤、マレイミド化合物、ビスアリルナジイミド化合物、ビニルベンジル樹脂、ビニルベンジルエーテル樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、アクリル樹脂等を使用することができる。
【0129】
(a)エポキシ樹脂としては、特に制限はないが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物、及びアルコール類のジグリシジルエーテル化物、並びにこれらのエポキシ樹脂のアルキル置換体、ハロゲン化物及び水素添加物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0130】
(a)エポキシ樹脂は、これらの中でも、耐熱性、絶縁信頼性、屈曲性、金属膜との密着性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。具体的には、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート828EL」)、ナフタレン型2官能エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製「HP4032」、「HP4032D])、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製「HP4700」)、ナフトール型エポキシ樹脂(東都化成(株)製「ESN−475V」)、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂(ダイセル化学工業(株)製「PB−3600」)、ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000H」、「NC3000L」、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX4000」)などが挙げられる。
【0131】
当該硬化性樹脂組成物において、硬化性樹脂組成物中の(a)成分の含有量は特に限定されるものではないが、硬化性樹脂組成物中の(a)成分の含有量の上限値は、フィルムの可とう性が減少するのを防止するという観点から、硬化性樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、60質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、40質量%が更に好ましい。一方、硬化性樹脂組成物中の(a)成分の含有量の下限値は、絶縁層のガラス転移温度を向上させ、線熱膨張率を低下させるという観点から、硬化性樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、15質量%が更に好ましい。
【0132】
(b)熱可塑性樹脂としては、特に制限はないが、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、硬化物に適度な可とう性を付与するという観点から、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。
【0133】
(b)熱可塑性樹脂はガラス転移温度が80℃以上のものが好ましい。ここでいう「ガラス転移温度」はJIS K 7197に記載の方法に従って決定される。なお、ガラス転移温度が分解温度よりも高く、実際にはガラス転移温度が観測されない場合には、分解温度を本発明におけるガラス転移温度とみなすことができる。なお、分解温度とは、JIS K 7120に記載の方法に従って測定したときの質量減少率が5%となる温度で定義される。
【0134】
(b)熱可塑性樹脂の重量平均分子量は5000〜200000の範囲であるのが好ましく、10000〜150000の範囲であるのがより好ましく、15000〜100000の範囲であるのが更に好ましく、20000〜80000の範囲であるのが更に一層好ましい。この範囲よりも小さいとフィルム成型能や機械強度向上の効果が十分発揮されない傾向にあり、この範囲よりも大きいとシアネートエステル樹脂及びエポキシ樹脂との相溶性が低下し、絶縁層表面の粗化処理後の粗度が増大する傾向にある。
【0135】
なお本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定される。GPC法による重量平均分子量は、具体的には、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)社製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0136】
フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、トリメチルシクロヘキサン骨格から選択される1種以上の骨格を有するものが挙げられる。フェノキシ樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。フェノキシ樹脂の末端はフェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製1256、4250(ビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、ジャパンエポキシレジン製YX8100(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、ジャパンエポキシレジン製YX6954(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)や、その他東都化成(株)製FX280、FX293、ジャパンエポキシレジン(株)製YL7553、YL6954、YL6794、YL7213、YL7290、YL7482、等が挙げられる。
【0137】
ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業(株)製、電化ブチラール4000−2、5000−A、6000−C、6000−EP、積水化学工業(株)製エスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0138】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製のポリイミド「リカコートSN20」および「リカコートPN20」が挙げられる。また、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のもの)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報、特開2000−319386号公報等に記載のもの)等の変性ポリイミドが挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績(株)製のポリアミドイミド「バイロマックスHR11NN」および「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。また、日立化成工業(株)製のポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド「KS9100」、「KS9300」等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学(株)社製のポリエーテルスルホン「PES5003P」等が挙げられる。ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベンアドバンストポリマーズ(株)社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0139】
当該硬化性樹脂組成物において、(b)熱可塑性樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、当該硬化性樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.5〜20質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。(b)熱可塑性樹脂の配合割合が0.5質量%未満の場合、樹脂組成物粘度が低いために、均一な硬化性樹脂組成物層を形成することが難しくなる傾向となり、20質量%を超える場合、樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎて、基板上の配線パターンへの埋め込みが困難になる傾向となる。
【0140】
(c)硬化剤としては、特に制限はないが、アミン系硬化剤、グアニジン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤、フェノール系硬化剤、トリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、酸無水物系硬化剤又はこれらのエポキシアダクトやマイクロカプセル化したもの、シアネートエステル系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤等を挙げることができる。めっきの剥離強度を向上させる観点から、硬化剤としては分子構造中に窒素原子を有するものが好ましく、中でも、イミド骨格含有2官能フェノール、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤、トリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤が好ましく、特にイミド骨格含有2官能フェノール、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0141】
フェノール系硬化剤、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、MEH−7700、MEH−7810、MEH−7851(明和化成(株)製)、NHN、CBN、GPH(日本化薬(株)製)、SN170、SN180、SN190、SN475、SN485、SN495、SN375、SN395(東都化成(株)製)、TD2090、LA7052、LA7054、LA3018、LA1356(大日本インキ化学工業(株)製)等が挙げられる。シアネートエステル系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤としては、上記に記載したものを用いる事ができる。
【0142】
(a)エポキシ樹脂のエポキシ当量と、(c)硬化剤の活性水素当量との比は、(1:0.2)〜(1:2)が好ましく、(1:0.3)〜(1:1.5)がより好ましく、(1:0.4)〜(1:1)が更に好ましい。当量比が上記範囲外であると、硬化物の機械強度や耐水性が低下する傾向にある。
【0143】
当該硬化性樹脂組成物には、当該硬化性樹脂組成物を効率よく硬化させるという観点から、(d)硬化促進剤を含有させる事ができる。(d)硬化促進剤としては、特に限定されるものではなく、金属系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、有機ホスフィン化合物、有機ホスホニウム塩化合物等が挙げられる。具体例としては、上記に記載したものを用いる事ができる。(d)硬化促進剤の含有量は、上記に記載した含有量で用いるのが好ましい。
【0144】
当該硬化性樹脂組成物には、当該硬化性樹脂組成物から得られる絶縁層の熱膨張率をさらに低下させるために(e)無機充填材を含有させる事ができる。無機充填材としては、特に制限はないが、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられ、なかでもシリカが好ましい。これらの中でも無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、粉砕シリカ、中空シリカ、球状シリカが好ましく、溶融シリカ、球状シリカがより好ましい。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0145】
(e)無機充填材の平均粒径は、特に限定されるものではないが、絶縁層への微細配線溝形成を可能とし、レーザーによる加工性を向上させるという観点から、5μm以下が好ましく、2.5μm以下がより好ましく、1μm以下が更に好ましく、0.7μm以下が更に一層好ましく、0.5μm以下が殊更好ましく、0.45μm以下が特に好ましい。また、(e)無機充填材の平均粒径が小さくなりすぎると、硬化性樹脂組成物を樹脂ワニスとした場合に、ワニスの粘度が上昇し、取り扱い性が低下するのを防止し、分散性を向上させるという観点から、平均粒子径は0.02μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることが更に好ましく、0.2μm以上であることが更に一層好ましい。
【0146】
(e)無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製 LA−500等を使用することができる。
【0147】
(e)無機充填材の添加量の上限値は、硬化物が脆くなるのを防止し、硬化性樹脂組成物の密着強度が低下するのを防止するという観点から、硬化性樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましく、55質量%以下が更に一層好ましく、50質量%以下が殊更好ましい。一方、無機充填材の添加量の下限値は、絶縁層の熱膨張率を低くするという観点から、硬化性樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、20質量%が更に好ましく、30質量%が更に一層好ましく、40質量%が殊更好ましく、50質量%が特に好ましい。
【0148】
(e)無機充填材は、シラン系カップリング剤、アクリレート系シランカップリング剤、スルフィド系シランカップリング剤、ビニル系シランカップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、スチリル系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤、オルガノシラザン化合物、エポキシシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等の表面処理剤で表面処理してその耐湿性、分散性を向上させたものが好ましい。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。表面処理剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン等のアミノシラン系カップリング剤、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド系シランカップリング剤、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、グリシジルブチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、11−メルカプトウンデシルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン系カップリング剤、メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メタクロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン、t−ブチルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤、p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル系シランカップリング剤、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルジメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルジエトキシシラン等のアクリレート系シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系シランカップリング剤、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、トリシラザン、シクロトリシラザン、2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサオクチルジシラザン、1,3−ジエチルテトラメチルジシラザン、1,3−ジ−n−オクチルテトラメチルジシラザン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシラザン、1,3−ジメチルテトラフェニルジシラザン、1,3−ジエチルテトラメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジメチルジシラザン、1,3−ジプロピルテトラメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ジメチルアミノトリメチルシラザン、テトラメチルジシラザン等のオルガノシラザン化合物、テトラ−n−ブチルチタネートダイマー、チタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレート、テトラ−n−ブチルチタネート、チタンオクチレングリコレート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシチタンビスラクテート、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート等のチタネート系カップリング剤等が挙げられる。
【0149】
当該硬化性樹脂組成物は、特に制限はされないが、(a)成分を含有することが好ましく、(a)成分及び(b)成分を含有することがより好ましく、(a)成分及び(b)成分及び(c)成分を含有することが更に好ましく、(a)成分及び(b)成分及び(c)成分及び(d)成分を含有することが更に一層好ましい。
【0150】
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、配合成分を、必要により溶媒等を添加し、回転ミキサーなどを用いて混合する方法などが挙げられる。なかでも、無機充填材を効率的に分散させるという観点から、高圧ホモジナイザーによる分散処理を行うことが好ましい。
【0151】
樹脂組成物を全て高圧ホモジナイザーで分散処理することができるが、処理時間を短縮させるという観点から、一部の樹脂組成物について懸濁液を調製し、それを高圧ホモジナイザーで分散処理し、その後に残りの樹脂組成物を別途、混合、攪拌して樹脂組成物ワニスを調製するのが好ましい。また、 高圧ホモジナイザーによる分散処理中に組成物の温度が上昇するため、残りの樹脂組成物としてエポキシ硬化剤等の温度の影響を受けやすい成分は高圧ホモジナイザーによる分散処理の後に添加するのがより好ましい。
【0152】
本発明において、懸濁液を調整する際には公知の攪拌加熱溶解装置を使用できるが、より早く均一溶解させるためにホモジナイザーやディスパー翼等の高速回転翼を装備した攪拌加熱溶解装置が好ましい。攪拌加熱溶解装置の具体例としては、T.Kホモミクサー、T.K.ホモディスパー、T.K.コンビミックス、T.K.ハイビスディスパーミックス、(以上、プライミクス(株)製 商品名)、クレアミックス(エム・テクニック(株)製 商品名)、真空乳化攪拌装置(みずほ工業(株)製 商品名)、真空混合装置「ネリマゼDX」(みずほ工業(株)製 商品名)、BDM2軸ミキサー、CDM同芯2軸ミキサー、PDミキサー(以上、(株)井上製作所製 商品名)が挙げられる。攪拌温度は使用する溶媒によっても異なるが、30℃〜80℃の範囲で行うことが好ましい。懸濁液の粘度は10〜1000mPa・sが好ましく、100〜500mPa・sがより好ましい。粘度が高いとその液粘度により、衝突部位での粒子の拡散が抑制され、全体として不均一な分散となる傾向がある。なお、粘度はE型粘度計等の回転粘度計で測定することができる。懸濁液中の無機充填材の含有量が懸濁液100質量%に対し、30〜60質量%であるのが好ましく、40〜60質量%であるのがより好ましい。30質量%未満だと無機充填材の粒子同士の衝突の機会が減少し、十分なせん断力が得られず、高圧ホモジナイザーによる分散処理が不十分となる傾向がある。60質量%を超えると衝突部位の単位面積当たりに衝突する無機充填材の量が多くなり、高圧ホモジナイザーによる分散処理が不十分となると同時に、高圧ホモジナイザーの衝突部位の磨耗が激しくなる傾向がある。
【0153】
上記のようにして調整された懸濁液は高圧ホモジナイザーによって分散処理される。高圧ホモジナイザーとは、原料を高圧に加圧し、スリット(隙間)を抜ける際のせん断力を利用して粉砕・分散・乳化を行う装置のことを指す。高圧ホモジナイザーとしては、無機充填材が高圧で衝突する部分の材質がタングステンカーバイド製、又はダイヤモンド製であることが衝突磨耗による異物混入を防ぐ上で好ましい。なお、高圧ホモジナイザーによる処理は、バッチ式分散方式でなく、連続分散方式であるため、生産性の向上とともに、有機溶剤蒸気が放散するリスクが低減でき、コスト面、環境面への負荷を低減することもできる。高圧ホモジナイザーの具体例としては、三和エンジニアリング(株)製高圧ホモゲナイザー、(株)イズミフードマシナリ製高圧ホモゲナイザー、ニロ・ソアビ社(イタリア)製高圧ホモジナイザー等が挙げられる。高圧ホモジナイザーの分散圧力は10〜300MPaが好ましく、15〜100MPaがより好ましく、20〜60MPaが更に好ましい。分散圧力が低すぎると、分散処理が不十分となる傾向にあり、高すぎると懸濁液の液温が上昇し、懸濁液中の成分が反応したり、無機充填材の形状が変化する傾向にある。懸濁液中の成分の反応を抑制するためには、分散処理後の液温が60℃以下であることが好ましい。また、分散処理後は冷却装置を用いて、速やかに液温を40℃以下にさせることが好ましい。
【0154】
高圧ホモジナイザーで分散処理された懸濁液と残りの樹脂組成物としてエポキシ硬化剤等の温度の影響を受けやすい成分とを混合する装置としては、例えば、ディスパー翼、タービン翼、パドル翼、プロペラ翼、アンカー翼などを備えた公知の攪拌混合装置が使用できる。攪拌混合装置の具体例としては、プラネタリーミキサー、トリミックス、バタフライミキサー(以上(株)井上製作所製 商品名)、VMIX攪拌槽、マックスブレンド、SWIXERミキシングシステム(以上、(株)イズミフードマシナリ製 商品名)、Hi−Fミキサー(綜研テクニックス(株)製 商品名)、ジェットアジター((株)島崎製作所製 商品名)、などが挙げられる。また、上記で説明した攪拌加熱溶解装置を使用することもでき、通常の攪拌操作で行うことができる。
【0155】
樹脂組成物ワニス中の異物、及び無機充填材の2次凝集体等の除去のため、高圧ホモジナイザーによる分散処理後に、樹脂組成物ワニスをろ過処理するのが好ましい。濾過方法は公知の方法が使用できる。例えば、樹脂組成物ワニスを定量ポンプで送液し、カートリッジフィルター、カプセルフィルター等を単独または連続して通過させる事により濾過する。その際のろ過圧力(差圧)はフィルターメッシュが目開きしないように0.4MPa以下が好ましい。また、定量ポンプは公知のものを使用できるが、ろ過圧力を一定に保つために脈動の少ないものが好ましい。ろ過のメッシュサイズは10μm〜30μmが好ましい。
【0156】
なお、硬化性樹脂組成物層は、シート状繊維基材中に上述の硬化性樹脂組成物を含浸したプリプレグであってもよい。シート状繊維基材としては、例えば、ガラスクロスやアラミド繊維等、プリプレグ用繊維として常用されているものを用いることができる。プリプレグは硬化性樹脂組成物をシート状繊維基材にホットメルト法又はソルベント法により含浸させ、加熱により半硬化させることで形成することができる。なお、ホットメルト法は、樹脂組成物を有機溶剤に溶解することなく、樹脂組成物を樹脂組成物と剥離性の良い塗工紙に一旦コーティングし、それをシート状繊維基材にラミネートする、あるいはダイコータにより直接塗工するなどして、プリプレグを製造する方法である。また、ソルベント法は、樹脂組成物を有機溶剤に溶解したワニスにシート状繊維基材を浸漬し、ワニスをシート状繊維基材に含浸させ、その後乾燥させる方法である。
【0157】
本発明で使用する金属膜付き接着フィルムにおいて、硬化性樹脂組成物層の厚さは、内層回路導体層の厚み等によっても異なるが、層間での絶縁信頼性向上等の観点から、10〜150μmが好ましく、15〜80μmがより好ましい。
【0158】
<金属膜付きフィルム及び金属膜付き接着フィルムの製造方法>
本発明で使用する金属膜付きフィルム及び金属膜付き接着フィルムの製造方法は、特に制限されないが、以下の方法が好適である。
【0159】
金属膜付きフィルムは、例えば、支持体層上に金属膜層を形成する。離型層を設ける場合は、これら金属層の形成に先立って、支持体層表面に離型層を形成し離型層表面に金属膜層を形成する。
【0160】
離型層の形成方法は特に限定されず、熱プレス、熱ロールラミネート、押出しラミネート、塗工液の塗布・乾燥等の公知の積層方法を採用できるが、簡便で、性状均一性の高い層を形成し易い等の点から、離型層に使用する材料を含む塗工液を塗布、乾燥する方法が好ましい。
【0161】
金属膜層の形成は、蒸着法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法から選ばれる1種以上の方法により形成されるのが好ましく、特に蒸着法及び/又はスパッタリング法により形成されるのが好ましい。これらの方法は組合せて用いることもできるが、いずれかの方法を単独で用いることもできる。
【0162】
蒸着法(真空蒸着法)は、公知の方法を用いることができ、例えば、支持体を真空容器内に入れ、金属を加熱蒸発させることにより支持体上(離型層を有する場合は離型層上)に膜形成を行うことができる。
【0163】
スパッタリング法も、公知の方法を用いることができ、例えば、支持体を真空容器内に入れ、アルゴン等の不活性ガスを導入し、直流電圧を印加して、イオン化した不活性ガスをターゲット金属に衝突させ、叩き出された金属により支持体上(離型層を有する場合は離型層上)に膜形成を行うことができる。
【0164】
イオンプレーティング法も、公知の方法を用いることができ、例えば、支持体を真空容器内に入れ、グロー放電雰囲気下で、金属を加熱蒸発させ、イオン化した蒸発金属により支持体上(離型層を有する場合は離型層上)に膜形成を行うことができる。
【0165】
金属膜付き接着フィルムは、金属膜付きフィルムの金属膜層の形成工程後、金属膜層表面に硬化性樹脂組成物層を形成することで製造することができる。硬化性樹脂組成物層の形成方法は公知の方法を用いることができ、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコータなどを用いて、金属膜付きフィルムの金属膜層上に塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0166】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。有機溶剤は1種又は2種以上を組みわせて用いてもよい。
【0167】
乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下となるのが好ましく、5質量%以下となるのがより好ましい。ワニス中の有機溶剤の量、有機溶剤の沸点によっても異なるが、30〜60質量%の有機溶剤を含むワニスを50〜150℃で3〜10分間乾燥させることにより樹脂組成物層を形成するのが好ましい。
【0168】
また金属膜付き接着フィルムは、金属膜付きフィルムとは別に、支持体上に硬化性樹脂組成物層を形成した接着フィルムを作製し、該金属膜付きフィルムと該接着フィルムとを金属膜層と硬化性樹脂組成物層とが接触するように加熱条件下で貼り合わせる方法によって作製することもできる。また、硬化性樹脂組成物層がプリプレグである場合、プリプレグを支持体層上に、例えば、真空ラミネート法により積層することができる。接着フィルムは公知の方法により製造することができる。接着フィルムの支持体層及び硬化性樹脂組成物層としては、前述と同様である。
【0169】
貼り合わせは、熱プレス、熱ロール等で加熱圧着する。加熱温度は、60〜140℃が好ましく、より好ましくは80〜120℃である。圧着圧力は、1〜11kgf/cm
2(9.8×10
4〜107.9×10
4N/m
2)の範囲が好ましく、2〜7kgf/cm
2(19.6×10
4〜68.6×10
4N/m
2)の範囲がより好ましい。
【0170】
<金属膜付きフィルム又は金属膜付き接着フィルムを使用した多層プリント配線板の製造方法>
上記のようにして製造した金属膜付きフィルム又は金属膜付き接着フィルムを用いて多層プリント配線板を製造することができる。その方法の一例を次に説明する。
【0171】
なお、「内層回路基板」とは、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板の片面又は両面にパターン加工された導体層を有するものであり、さらに絶縁層および導体層が形成されるべき中間製造物を言う。
【0172】
金属膜付き接着フィルムを用いる場合は、硬化性樹脂組成物層を接着面として、内層回路基板に積層すればよい。一方、金属膜付きフィルムを用いる場合は、金属膜層が、金属膜付きフィルムと内層回路基板間に存在する硬化性樹脂組成物層の表面に接するように重ねて積層する。内層回路基板上への硬化性樹脂組成物層の形成は公知の方法を用いることができ、例えば、上述したような支持体層上に硬化性樹脂組成物層が形成された接着フィルムを内層回路基板に積層し、支持体層を除去することにより、硬化性樹脂組成物層を内層回路基板上に形成することができる。接着フィルムの積層条件は、後述する金属膜付き接着フィルム等の積層条件と同様である。また硬化性樹脂組成物層としてプリプレグを用いる場合、単一のプリプレグ又は複数枚のプリプレグを重ねて多層化した多層プリプレグを基板に積層した積層体の片面又は両面の表面層であるプリプレグに、金属膜付きフィルムの金属膜層をプリプレグ表面に接するよう重ねて積層することができる。
【0173】
金属膜付き接着フィルム及び金属膜付きフィルムの積層は、作業性及び一様な接触状態が得られやすい点から、ロールやプレス圧着等でフィルムを被着体表面に積層する。なかでも、真空ラミネート法により減圧下で積層するのが好適である。また、積層の方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。
【0174】
加熱温度は、60〜140℃が好ましく、より好ましくは80〜120℃である。圧着圧力は、1〜11kgf/cm
2(9.8×10
4〜107.9×10
4N/m
2)の範囲が好ましく、2〜7kgf/cm
2(19.6×10
4〜68.6×10
4N/m
2)の範囲が特に好ましい。空気圧が20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下で積層するのが好ましい。
【0175】
真空ラミネートは市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、(株)名機製作所製 バッチ式真空加圧ラミネーター MVLP−500、ニチゴー・モートン(株)製 バキュームアップリケーター、(株)日立インダストリイズ製ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製 真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0176】
また、減圧下、加熱及び加圧を行う積層工程は、一般の真空ホットプレス機を用いて行うことも可能である。例えば、加熱されたSUS板等の金属板を支持体層側からプレスすることにより行うことができる。
【0177】
プレス条件は、減圧度を1×10
−2MPa以下とするのが好ましく、1×10
−3MPa以下とするのがより好ましい。加熱及び加圧は、1段階で行うことも出来るが、樹脂のしみだしを制御する観点から2段階以上に条件を分けて行うのが好ましい。例えば、1段階目のプレスを、温度が70〜150℃、圧力が1〜15kgf/cm
2の範囲、2段階目のプレスを、温度が150〜200℃、圧力が1〜40kgf/cm2の範囲で行うのが好ましい。各段階の時間は30〜120分で行うのが好ましい。市販されている真空ホットプレス機としては、例えば、MNPC−V−750−5−200(株)名機製作所製)、VH1−1603(北川精機(株)製)等が挙げられる。
【0178】
金属膜付き接着フィルム又は金属膜付きフィルムを内層回路基板にラミネートした後、硬化性樹脂組成物層を硬化し絶縁層を形成する。硬化条件は硬化性樹脂の種類等によっても異なるが、硬化温度が120〜200℃、硬化時間が15〜90分であるのが好ましい。なお、比較的低い硬化温度から高い硬化温度へ段階的に硬化させる、又は上昇させながら硬化させることが、形成される絶縁層表面のしわ防止の観点から好ましい。
【0179】
支持体層の除去は、一般に、手動または自動剥離装置により機械的に剥離することによって行われる。金属箔を支持体層に使用した場合は、エッチングにより支持体層を除去することもできる。支持体層は硬化性樹脂組成物層の硬化処理による絶縁層形成後に除去されるのが好ましい。支持体層を硬化処理前に除去した場合、金属膜層が十分に密着しない傾向や、硬化性樹脂組成物層の硬化後に金属膜層に亀裂が入る傾向がある。
【0180】
支持体層と金属膜層間に離型層が存在し、支持体層を除去した後、離型層が金属膜層上に残存する場合は、離型層を除去する。支持体層及び/又は離型層の除去は、レーザーによる配線溝形成の工程の前又は後のいずれでもよいが、レーザーによる配線溝形成の工程の前に行うことが好ましい。離型層の除去は、金属離型層であれば、金属を溶解するエッチング液により除去されるのが好ましく、水溶性高分子離型層であれば水溶液によって除去するのが好ましい。
【0181】
なお、離型層として水溶性セルロース樹脂、水溶性アクリル樹脂及び水溶性ポリエステル樹脂から選択される1種以上からなる水溶性高分子樹脂を離型層として採用した場合、該離型層を溶解除去するための水溶液としては、好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を0.5〜10質量%の濃度で水に溶解させたアルカリ性水溶液等が挙げられる。回路基板等の製造上問題のない範囲で、水溶液中には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールが含まれていてもよい。溶解除去の方法は特に限定されず、例えば支持体層を剥離した後、水溶液中に基板を浸水させて溶解除去する方法、水溶液をスプレー状や霧状に吹き付けて溶解除去する方法等が挙げられる。水溶液の温度は、室温〜80℃が好ましく、浸水、吹き付け等の水溶液により処理時間は10秒〜10分で行うことが好ましい。アルカリ性水溶液としては、多層プリント配線板製造に使用される、アルカリ現像機のアルカリ型現液(例えば、0.5〜2質量%の炭酸ナトリウム水溶液、25℃〜40℃)、ドライフィルム剥離機の剥離液(例えば、1〜5質量%の水酸化ナトリウム水溶液、40〜60℃)、デスミア工程で使用する膨潤液(例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等を含むアルカリ水溶液、60〜80℃)等を使用することもできる。
【0182】
絶縁層上に金属膜層を形成し、金属膜層上部からレーザー照射することで、微細配線溝を形成することができる。また、レーザーを用いてビアを形成することもできる。更に、絶縁層に平均粒径0.02〜5μmの無機充填材を含有させることで、微細配線溝形成がより容易となる。本発明の方法において、支持体層がプラスチックフィルムの場合には、支持体層を除去する前に支持体層上から又は支持体層を除去した後に金属膜層上からレーザーを用いて絶縁層に微細配線溝を形成することもできるが、加工速度が遅くなるのを防止するという観点から支持体層を除去した後に金属膜層上からレーザーを用いて絶縁層に微細配線溝を形成することが好ましい。また、支持体層除去後、離型層が残存する場合は、離型層上からレーザーを用いて絶縁層に微細配線溝を形成することもできる。離型層は厚みが薄いので加工速度への影響は少ない。レーザー加工機としては、一般に炭酸ガスレーザー、UV−YAGレーザー、エキシマレーザー等が用いられる。
【0183】
レーザー加工性を向上させるため、離型層にレーザー吸収性成分を含有させることで、加工速度を上げることができる。レーザー吸収性成分としては、金属化合物粉、カーボン粉、金属粉、黒色染料等が挙げられる。レーザーエネルギー吸収性成分の配合量は、離型層を構成する全成分中、0.05〜40質量%が好ましく、0.1〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%が更に好ましい。例えば、水溶性高分子樹脂から形成される離型層に該成分を含有させる場合、水溶性高分子樹脂及び該成分を含む全体の含有量を100質量%とし、上記含有量で配合するのが好ましい。カーボン粉としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、アントラセンブラック等のカーボンブラックの粉末、黒鉛粉末、またはこれらの混合物の粉末などが挙げられる。金属化合物粉としては、酸化チタン等のチタニア類、酸化マグネシウム等のマグネシア類、酸化鉄等の鉄酸化物、酸化ニッケル等のニッケル酸化物、二酸化マンガン、酸化亜鉛等の亜鉛酸化物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、希土類酸化物、酸化コバルト等のコバルト酸化物、酸化錫等のスズ酸化物、酸化タングステン等のタングステン酸化物、炭化珪素、炭化タングステン、窒化硼素、窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミニウム、硫酸バリウム、希土類酸硫化物、またはこれらの混合物の粉末などが挙げられる。金属粉としては、銀、アルミニウム、ビスマス、コバルト、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、パラジウム、アンチモン、ケイ素、錫、チタン、バナジウム、タングステン、亜鉛、またはこれらの合金若しくは混合物の粉末などが挙げられる。黒色染料としては、アゾ(モノアゾ、ジスアゾ等)染料、アゾ−メチン染料、アントラキノン系染料キノリン染料、ケトンイミン染料、フルオロン染料、ニトロ染料、キサンテン染料、アセナフテン染料、キノフタロン染料、アミノケトン染料、メチン染料、ペリレン染料、クマリン染料、ペリノン染料、トリフェニル染料、トリアリルメタン染料、フタロシアニン染料、インクロフェノール染料、アジン染料、またはこれらの混合物などが挙げられる。黒色染料は水溶性高分子樹脂中への分散性を向上させるため溶剤可溶性の黒色染料であるのが好ましい。これらレーザーエネルギー吸収性成分は、各々単独で用いても良く、異なる種類のものを混合して用いてもよい。レーザーエネルギー吸収性成分は、レーザーエネルギーの熱への変換効率や、汎用性等の観点から、カーボン粉が好ましく、特にカーボンブラックが好ましい。
【0184】
本発明の方法では、更にデスミア工程を行うことができる。レーザーを用いて配線溝を形成した後に、デスミア工程を行うのが好ましい。デスミア工程は、プラズマ等のドライ法、アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤処理によるウエット法など公知の方法によることができる。デスミア工程は、主としてブラインドビア形成や配線溝形成により生じた樹脂残渣を除去する工程であり、ビアや配線溝の壁面の粗化を行うことができる。特に、酸化剤によるデスミアは、ビア底や配線溝のスミアを除去すると同時に、ビア壁面が酸化剤で粗化され、めっき密着強度を向上させることができる点で好ましい。酸化剤によるデスミア工程は、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理及び中和液による中和処理をこの順に行うことが好ましい。膨潤液としてはアルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液等が挙げられる。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP(Swelling Dip Securiganth P)、スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU(Swelling Dip Securiganth SBU)等を挙げることができる。酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液を挙げることができる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃〜80℃に加熱した酸化剤溶液に10分〜30分付すことで行うのが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5〜10重量%程度とするのが一般的である。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のコンセントレート・コンパクト CP、ドージングソリューション セキュリガンスP等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、アトテックジャパン(株)製のリダクションショリューシン・セキュリガントP(中和液)が挙げられる。
【0185】
本発明の方法では、更に無電解めっき工程を行うことができる。デスミア工程後に、無電解めっき工程を行うのが好ましい。無電解めっき工程により、絶縁層表面に無電解めっき層を形成することができる。無電解めっき工程は公知の方法により行うことができ、例えば、絶縁層表面を界面活性剤等で処理し、パラジウム等のめっき触媒を付与した後、無電解めっき液に含浸することで無電解めっき層を形成することができる。
【0186】
本発明の方法では、更に電解めっき工程を行うことができる。無電解めっき工程後に、電解めっき工程を行うのが好ましい。電解めっき工程により、導体層を形成することができる。電解めっき工程は公知の方法により行うことができ、例えば、絶縁層上に無電解めっき層(めっきシード層)0.1〜2μmを形成した後、電解めっきにより導体層を形成する。導体層は銅が好ましく、その厚みはレーザー加工した溝の深さ、形成する配線溝の高さにもよるが、3〜35μmが好ましく、5〜25μmがより好ましい。
【0187】
本発明の方法では、更に導体層を除去する工程を行うことができる。電解めっき工程後に、導体層を除去する工程を行うのが好ましい。無電解めっき工程及び電解めっき工程により、絶縁層表面全体に銅層が形成されてしまうため、絶縁層が表面に露出されるまで表面の導体層を除去する工程を行うことで、トレンチ型の配線を形成することができる。トレンチ型回路基板の模式図を
図1に示す。表面の導体層を除去する工程は、公知の方法により行うことができ、例えば、機械研磨及び/又は銅を溶解させる溶液によりエッチング除去することで行うことができる。
【実施例】
【0188】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、以下の記載において、「部」は「質量部」を意味する。
【0189】
<測定方法・評価方法>
まずは各種測定方法・評価方法について説明する。
【0190】
<MIT耐折性の測定及び評価>
実施例及び比較例で作成した接着フィルムを、190℃、90分で硬化し、カッターを用いて110mm×15mmの評価用サンプルを5本作成した。(株)東洋精機製作所製、MIT耐折疲労試験機「MIT−DA」を使用して、JIS C−5016に準拠して、荷重2.5N、折曲げ角度135度、折曲げ速度175回/分、曲率半径0.38mmと設定してMIT耐折性試験を行い、耐折回数を測定した。5本の評価用サンプルの耐折回数の平均値を求めた。MIT耐折性は、耐折回数が50回未満の場合を「×」と評価し、50〜100回未満の場合を「△」と評価し、100〜200回未満の場合を「○」と評価し、200〜300回未満の場合を「◎」と評価し、300回以上の場合を「◎○」と評価した。
【0191】
<ラミネート性の評価>
実施例及び比較例で作製した接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーターMVLP−500(名機(株)製商品名)を用いて、導体厚35μmでL(ライン:配線幅)/S(スペース:間隔幅)=160μm/160μmの櫛歯状の導体パターン上にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaでプレスすることにより行った。ラミネート後の樹脂組成物層の外観検査を行った。また、ラミネートされた接着フィルムからPETフィルムを剥離し、180℃、30分の硬化条件で樹脂組成物を硬化して、絶縁層を形成し、絶縁層上の凹凸差(Rt:最大のpeak−to−valley)の値を非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製WYKO NT3300)を用いて、VSIコンタクトモード、10倍レンズにより測定範囲を1.2mm×0.91mmとして得られる数値により求めた。そして以下のように判定を行った。
○:ラミネート後の外観にボイドの発生が無く、絶縁層上の凹凸差が5μm未満のもの
△:ラミネート後の外観にボイドの発生が無く、絶縁層上の凹凸差が5μm以上のもの、
×:ラミネート後にボイドが発生し、絶縁層上の凹凸差の測定ができないもの
【0192】
<ガラス転移温度(Tg)及び線熱膨張率の測定及び評価>
実施例および比較例で得られた接着フィルムを190℃で90分熱硬化させてシート状の硬化物を得た。その硬化物を、幅約5mm、長さ約15mmの試験片に切断し、(株)リガク製熱機械分析装置(Thermo Plus TMA8310)を使用して、引張加重法で熱機械分析を行った。試験片を前記装置に装着後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における25℃から150℃までの平均の線熱膨張率を算出した。線熱膨張率の値が41ppm以上の場合を「×」とし、37ppm以上41ppm未満の場合を「△」とし、37ppm未満の場合を「○」とした。また2回目の測定における寸法変化シグナルの傾きが変化する点からガラス転移温度(℃)を算出した。
【0193】
(実施例1)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)14部と、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「NC3000L」)14部、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX4000H」)5部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量38000、ジャパンエポキシレジン(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部、イミド骨格含有2官能フェノール樹脂(フェノール性水酸基当量252、ジャパンエポキシレジン(株)製、上記一般式(7)に記載のもの)10部とを、DMAc15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(フェノール性水酸基当量242、明和化成(株)製「MEH7851−4H」、固形分50質量%のシクロヘキサノン溶液)40部、ジシアンジアミド(ジャパンエポキシレジン(株)製「DICY7」)2部、硬化触媒(四国化成工業(株)製、「2E4MZ」)0.1部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SOC2」のアミノシラン処理品)、50部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次に、ポリエチレンテレフタレート(厚さ38μm、以下「PET」と略称する。)上に、乾燥後の樹脂厚みが40μmとなるようにダイコーターにて塗布し、80〜120℃(平均100℃)で7分間乾燥した(残留溶媒量約2質量%)。次いで樹脂組成物の表面に厚さ15μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせながらロール状に巻き取った。ロール状の接着フィルムを幅507mmにスリット(slit)し、これより507×336mmサイズのシート状の接着フィルムを得た。
【0194】
(実施例2)
実施例1の球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SOC2」のアミノシラン処理品)50部を、球状シリカ(平均粒径0.25μm、(株)アドマテックス製「SOC1」のアミノシラン処理品)に変更した以外は実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0195】
(比較例1)
実施例1のイミド骨格含有2官能フェノール樹脂(フェノール性水酸基当量252、ジャパンエポキシレジン(株)製、上記一般式(7)に記載のもの)10部を、イミド骨格含有多官能フェノール樹脂(DIC(株)製「V−8003」、固形分16質量%のDMAc溶液)60部に変更した以外は実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0196】
(比較例2)
実施例1のイミド骨格含有2官能フェノール樹脂(フェノール性水酸基当量252、ジャパンエポキシレジン(株)製、上記一般式(7)に記載のもの)10部を、2官能フェノール樹脂(東京化成工業(株)製「ビスフェノールA」)10部に変更した以外は実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0197】
(比較例3)
実施例1のイミド骨格含有2官能フェノール樹脂(フェノール性水酸基当量252、ジャパンエポキシレジン(株)製、上記一般式(7)に記載のもの)10部を、2官能フェノール樹脂(東京化成工業(株)製「ビスフェノールS」)10部に変更した以外は実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0198】
結果を表1に示す。
【0199】
【表1】
【0200】
実施例1、2において、本願発明が達成されていることがわかる。比較例1から、イミド骨格含有の樹脂であっても、多官能のフェノール性水酸基を含有していると、架橋密度が高くなりラミネート性が悪化していることが分かる。これは、プリント配線板の製造においては致命的欠点となってしまう。また、比較例2,3から、イミド骨格が存在しない2官能フェノール樹脂を用いた場合は、線熱膨張率が大きくなり、耐折回数も低いものとなることがわかる。
【0201】
(実施例3)
<金属膜付きフィルムの作製>
厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略す)フィルム上に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(信越化学工業(株)製「HP−55」)の固形分10重量%のメチルエチルケトン(以下、「MEK」と略す)とN,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と略す)の1:1溶液をダイコータにより塗布し、熱風乾燥炉を用いて室温から140℃まで昇温速度3℃/秒で昇温することで溶剤を除去し、PETフィルム上に約0.6μmのヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート層を形成させた。次いで、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート層上にスパッタリングにより、銅膜層約200nmを形成して、金属膜付きフィルムを作製した。
【0202】
<硬化性樹脂組成物層を有する接着フィルムの作製>
液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量170、ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート806H」)28部と、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量163、大日本インキ化学工業(株)製「HP4700」)28部、フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「YX6954BH30」不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)20部とをMEK15部、シクロヘキサノン15部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、トリアジン含有フェノールノボラック樹脂(水酸基当量125、DIC(株)製「LA7054」、不揮発分60質量%のMEK溶液)27部、ナフトール系硬化剤(水酸基当量215、東都化成(株)製「SN−485」)の固形分50質量%のMEK溶液27部、硬化触媒(四国化成工業(株)製、「2E4MZ」)0.1部、球形シリカ(平均粒径0.25μm、(株)アドマテックス製「SOC1」のアミノシラン処理品)70部、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製「KS−1」)の固形分15質量%のエタノールとトルエンの1:1溶液30部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。厚み38μmのアルキッド型離型剤(AL−5)付きPETフィルム(リンテック(株)製)上に上記ワニスをダイコータにより塗布し、熱風乾燥炉を用いて溶剤を除去し、硬化性樹脂組成物層の厚みが50μmである接着フィルムを作製した。
【0203】
<金属膜付き接着フィルムの作製>
上記接着フィルムの硬化性樹脂組成物層と金属膜付きフィルムの銅膜層が接触するように、90℃で貼り合わせて巻取り、金属膜付き接着フィルムを得た。
【0204】
<内層回路基板上への金属膜付き接着フィルムの積層及び硬化>
両面に18μm厚の銅回路が形成されているガラスエポキシ基板の銅回路上をCZ8100(アゾール類の銅錯体、有機酸を含む表面処理剤(メック(株)製))処理にて粗化を施した。次に、上記金属膜付き接着フィルムのアルキッド型離型剤(AL−5)付きPETフィルムを剥離し、硬化性樹脂組成物層が銅回路表面と接するようにし、バッチ式真空加圧ラミネーターMVLP−500((株)名機製作所製商品名)を用いて、基板の両面に積層した。積層は30秒間減圧して気圧を13hPa以下で行った。その後、160℃で30分間熱硬化し絶縁層を形成した。
【0205】
<支持体層の除去、レーザー加工、離型層の除去、並びにデスミア処理>
支持体層であるPETフィルムを剥離した後、UV−YAGレーザーを使用して配線溝(ライン(配線)/スペース(間隔)=8/8μm。深さ12μm)およびトップ径70μmの層間接続用ビアを形成した。次いで、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート層を1重量%炭酸ナトリウム水溶液で溶解除去した。次に、デスミア工程として、膨潤液であるアトテックジャパン(株)のスエリングディップ・セキュリガントPに80℃で10分間浸漬し、次に、粗化液として、アトテックジャパン(株)のコンセントレート・コンパクトP(KMnO
4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で20分間浸漬し、最後に中和液として、アトテックジャパン(株)のリダクションショリューシン・セキュリガントPに40℃で5分間浸漬した。その後、水洗、乾燥させた。
【0206】
<金属膜層のエッチングによる除去及びビア底下地金属層表面のエッチング>
上記基板を、塩化第二銅水溶液に25℃で1分間浸漬させ、絶縁層上の銅膜層をエッチング除去し、ビア底銅回路表面のエッチングを行い、その後、水洗し、配線溝を(株)日立ハイテクノロジーズ製「S―4800」を用いて、倍率2000倍で、SEM観察を行った。その写真を
図2に示す。
【0207】
<導体層形成、配線形成>
上記銅膜層をエッチングした絶縁層上に無電解銅めっき(アトテックジャパン(株)製薬液を使用した無電解銅めっきプロセスを使用)を行った。無電解銅めっきの膜厚は0.8μmとなった。その後、電解銅めっき約25μm厚で、配線の溝を銅で埋め込み、その後、最表面の不要な銅(導体層)を機械研磨により絶縁層が表面に出るまで除去し、回路基板を得た。配線形状を断面観察したところ、ライン(配線)/スペース(間隔)=8/8μmの良好なものであった。
【0208】
(比較例4)
支持体と離型層と銅膜層を除去した後、レーザー加工をしたこと以外は実施例3とまったく同様にして配線溝のSEM観察を行った。配線溝のSEM写真を
図3に示す。さらに、実施例3と同様にして回路基板を得て、配線形状を断面観察したところ、スペース(間隔)の上部は12μm以上に広がり、所望の形状ではなかった。
【0209】
実施例3から分かるように、本発明の方法を用いることで絶縁層中に微細配線溝形成が可能となることがわかった。さらに、デスミア工程後も、絶縁層最上部を銅膜層によって保護することによって、良好な配線溝形状が維持されることが可能となった。