【文献】
Vladimir Cirkva et al,New perfluoroalkylated amphiphilic methacrylates bearing sulfinyl group as monomers for biomedical applications: water content and oxygen permeability of their copolymers with DEGMA,European Journal of Medicinal Chemistry,Elsevier,2006年,Volume 41, Issue 11,pp. 1320-1326
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
重合体の疎水性繰り返し単位が、スチレン類、(メタ)アクリレート類および(メタ)アクリルアミド類から選ばれる1種以上の単量体から誘導される繰り返し単位である請求項13に記載の表面親水化剤。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の重合体は、少なくとも1つのスルフィニル基を側鎖に有する親水性繰り返し単位(以下、繰り返し単位(A)とも称する)を有するものである。まず、斯かる重合体について詳細に説明する。
【0010】
繰り返し単位(A)は親水性を示す。ここで、本明細書において、親水性とは、水との親和力が強い性質を持つことを意味する。具体的には1種の繰り返し単位のみからなるホモポリマー(実施例の測定法による数平均分子量が1万〜10万程度のもの)が、常温(25℃)において純水100gに対して1g以上溶解する場合にはその繰り返し単位は親水性である。
また、上記繰り返し単位(A)としては、親水疎水の尺度を示すHydrophile−Lipophile Balance(HLB値)が10以上のものが好ましい。高い親水性を得る場合には、HLB値は15以上がより好ましく、20〜40がさらに好ましい。
また、本明細書において、HLB値は、化合物の有機性の値と無機性の値の比率から算出されるもの(小田式)を意味し、「Formulation Design with Organic Conception Diagram」[1998年、NIHON EMULSION CO.,LTD]に記載の計算方法により算出できる。例えば、後述する実施例に記載のN−1−1の共重合体に含まれる親水性繰り返し単位のHLB値は、(100×4+60×1+20×2+140)/(40−10×4+20×15)×10=21.3である。
【0011】
また、繰り返し単位(A)は特に限定されないが、ノニオン性のものが好ましい。
また、繰り返し単位(A)は、スルフィニル基の他に、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基、チオール基、リン酸基、アルデヒド基等の親水性基を有していてもよい。また、斯かる親水性基の位置および個数は任意であるが、その位置は好ましくは重合体の側鎖である。一方、スルフィニル基以外の親水性基の個数としては、適度な親水性を得る観点から、繰り返し単位1個中に、0〜12個が好ましく、0〜10個がより好ましく、0〜5個が更に好ましく、0〜3個が更に好ましく、1〜3個が更に好ましく、2または3個が特に好ましい。また、上記親水性基の中でも、適度な親水性を得る観点から、ヒドロキシ基が好ましい。なお、本発明の効果が失われない範囲で、重合体に含まれる複数のスルフィニル基の一部がスルフィド基やスルホニル基となっていてもよい。
【0012】
また、上記繰り返し単位(A)の好適な具体例としては、下記式(1)で表される構造を側鎖中に少なくとも1つ含む繰り返し単位が挙げられる。式(1)で表される構造を側鎖中に有する繰り返し単位となるポリマー種としては公知のものを用いることができ、中でも(メタ)アクリレート系のポリマー種、(メタ)アクリルアミド系のポリマー種、スチレン系のポリマー種等が好ましい。より具体的には、下記式(2)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0014】
〔式(1)中、R
3は、直接結合または炭素数1〜24の2価の有機基を示し、R
4は、炭素数1〜10の有機基を示す。〕
【0016】
〔式(2)中、R
1は、水素原子またはメチル基を示し、R
2は、基−O−、基*−(C=O)−O−、基*−(C=O)−NR
5−、基*−NR
5−(C=O)−(R
5は、水素原子または炭素数1〜10の有機基を示し、*は、式(2)中のR
1が結合している炭素原子と結合する位置を示す)またはフェニレン基を示し、R
3およびR
4は前記と同義である。〕
ここで、式(1)および(2)中の各記号について詳細に説明する。
【0017】
R
1は、水素原子またはメチル基を示すが、メチル基が好ましい。
【0018】
また、R
2は、基−O−、基*−(C=O)−O−、基*−(C=O)−NR
5−、基*−NR
5−(C=O)−またはフェニレン基を示す。斯かるフェニレン基としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基が挙げられる。
【0019】
また、上記R
5で示される有機基の炭素数は、好ましくは1〜10であり、より好ましくは2〜8であり、更に好ましくは2〜6である。上記有機基としては、炭化水素基が挙げられる。斯かる炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基および芳香族炭化水素基を包含する概念である。
【0020】
上記R
5における脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐状でもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基が挙げられる。
また、上記脂環式炭化水素基は、単環の脂環式炭化水素基と橋かけ環炭化水素基に大別される。上記単環の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。また、橋かけ環炭化水素基としては、イソボルニル基等が挙げられる。
また、上記芳香族炭化水素基としては、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0021】
上述のようなR
2の中でも、非特異吸着抑制効果の観点から、基*−(C=O)−O−、フェニレン基が好ましく、基*−(C=O)−O−が特に好ましい。
【0022】
R
3は、直接結合または炭素数1〜24の2価の有機基を示す。斯かる直接結合としては、単結合が挙げられる。
【0023】
斯様なR
3の中でも、炭素数1〜24の2価の有機基が好ましい。斯かる2価の有機基の炭素数は、好ましくは2〜18であり、より好ましくは2〜10であり、更に好ましくは2〜9であり、特に好ましくは3〜6である。
【0024】
上記2価の有機基としては、2価の炭化水素基が挙げられる。2価の炭化水素基は、好ましくは2価の脂肪族炭化水素基であり、直鎖状でも分岐状でもよい。具体的には、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基等のアルカンジイル基が挙げられる。
【0025】
また、上記2価の炭化水素基は、置換基を有していてもよく、炭素−炭素結合間にエーテル結合を含んでいてもよい。
上記2価の炭化水素基が有していてもよい置換基としては、前記親水性基が挙げられる。該置換基の個数は、好ましくは1〜5であり、より好ましくは1〜3であり、更に好ましくは1または2である。
また、上記2価の炭化水素基が含んでいてもよいエーテル結合の個数としては、0〜5が好ましく、0〜3がより好ましい。
【0026】
また、2価の有機基の好適な具体例としては、下記式(3)で表される連結基、炭素数1〜24のアルカンジイル基が挙げられ、より好ましくは式(3)で表される連結基である。
【0028】
〔式(3)中、R
6は、単結合、基−R
8−O−(R
8は、炭素数1〜4のアルカンジイル基を示す)または下記式(4)で表される連結基を示し、R
7は、炭素数1〜4のアルカンジイル基を示し、nは1または2を示し、**は、式(1)、(2)中のイオウ原子と結合する位置を示す。〕
【0030】
〔式(4)中、R
9は、炭素数1〜4のアルカンジイル基を示し、R
10は、炭素数2または3のアルカンジイル基を示し、m
1は1または2を示し、m
2は1〜3の整数を示す。〕
【0031】
上記R
6としては、単結合、基−R
8−O−が好ましく、単結合が特に好ましい。
【0032】
また、上記R
7、R
8およびR
9で示されるアルカンジイル基の炭素数は1〜4であるが、1または2が好ましい。
また、上記アルカンジイル基は直鎖状でも分岐でもよく、前述のアルカンジイル基と同様のものが挙げられる。
【0033】
また、上記R
10で示されるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは2である。また、該アルカンジイル基としては、R
7で示されるものと同様のものが挙げられる。なお、m
2が2または3の場合、m
2個のR
10は同一であっても異なっていてもよい。
また、nおよびm
1としては1が好ましく、m
2としては1または2が好ましい。
【0034】
また、R
4は、炭素数1〜10の有機基を示す。斯かる有機基としては、R
5で示されるものと同様のものが挙げられる。また、R
4が炭化水素基である場合、斯かる炭化水素基は置換基を有していてもよく、該置換基およびその個数としては、前記2価の炭化水素基が有していてもよいものと同様のものが挙げられる。また、親水性の観点から、R
4としては、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等の環構造を含まないものが好ましい。
【0035】
上述のようなR
4の好適な具体例としては、前記親水性基を有する炭素数1〜10の有機基が挙げられ、より好ましくは下記式(5)で表される1価の基、炭素数1〜10のアルキル基であり、更に好ましくは式(5)で表される1価の基である。
【0037】
〔式(5)中、k
1は、1〜4の整数を示し、k
2は、0〜4の整数を示し、***は、式(1)、(2)中のイオウ原子と結合する位置を示す。〕
【0038】
式(5)中、k
1としては、1または2が好ましい。また、k
2としては、0〜2の整数が好ましく、0または1がより好ましい。
【0039】
また、繰り返し単位(A)の合計含有量の下限としては、水溶性の付与、非特異吸着抑制効果の観点から、全繰り返し単位中、10モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましい。特に、本発明の重合体が後述する繰り返し単位(B)としてスチレン類から誘導される繰り返し単位を含む場合、繰り返し単位(A)の合計含有量の下限は、より好ましくは50モル%以上であり、更に好ましくは60モル%以上であり、更に好ましくは65モル%以上である。
一方、上限としては、水溶性の付与、基材との吸着の観点から、全繰り返し単位中、99モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましく、85モル%以下が特に好ましい。特に、本発明の重合体が後述する繰り返し単位(B)としてスチレン類から誘導される繰り返し単位を含む場合、繰り返し単位(A)の合計含有量の上限は、より好ましくは80モル%以下であり、更に好ましくは70モル%以下である。
また、質量%としての繰り返し単位(A)の合計含有量の下限としては、水溶性の付与、非特異吸着抑制効果の観点から、全繰り返し単位中、20質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上が特に好ましい。特に、本発明の重合体が後述する繰り返し単位(B)としてスチレン類から誘導される繰り返し単位を含む場合、繰り返し単位(A)の合計含有量の下限は、より好ましくは75質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上である。
一方、上限としては、水溶性の付与、基材との吸着の観点から、全繰り返し単位中、99質量%以下が好ましく、98質量%以下がより好ましく、95質量%以下が更に好ましく、90質量%以下が特に好ましい。
なお、繰り返し単位(A)の含有量は
13C−NMR等により測定可能である。
【0040】
また、本発明の重合体としては、更に疎水性繰り返し単位(以下、繰り返し単位(B)とも称する)を有するものが好ましい。ここで、疎水性とは、水との親和性が低い性質を持つことを意味する。具体的には、1種の繰り返し単位のみからなるホモポリマー(実施例の測定法による数平均分子量が1万〜10万程度のもの)が、常温(25℃)において純水100gに対して溶解する量が1g未満である場合にはその繰り返し単位は疎水性である。
また、上記繰り返し単位(B)のHLB値としては、高い疎水性を得る場合には、20未満が好ましく、15未満がより好ましく、0.1以上10未満が更に好ましい。
【0041】
繰り返し単位(B)としては、疎水性を示す公知のものが挙げられ、特に限定されないが、スチレン類、(メタ)アクリレート類および(メタ)アクリルアミド類から選ばれる1種以上の単量体から誘導されるものが好ましい。
【0042】
上記スチレン類から誘導される繰り返し単位としては、下記式(6)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0044】
〔式(6)中、R
11は、水素原子またはメチル基を示し、R
12は、炭素数1〜10の有機基を示し、pは0〜5の整数を示す。〕
【0045】
式(6)中、R
12で示される有機基としては、R
5で示されるものと同様のものが挙げられるが、その炭素数は、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜3である。また、親水性基がないものが好ましい。なお、斯かる有機基は、炭素数1〜3のアルコキシ基等が置換していてもよい。また、pが2〜5の整数の場合、p個のR
12は同一であっても異なっていてもよい。
【0046】
また、pは0〜5の整数を示すが、0〜3が好ましく、0がより好ましい。
【0047】
スチレン類から誘導される繰り返し単位の具体例としては、スチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−イソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、α―メチルスチレン等に由来する繰り返し単位が挙げられる。
【0048】
また、上記(メタ)アクリレート類としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸C
1-10アルキル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸C
6-10シクロアルキル;(メタ)アクリル酸1−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル等の(メタ)アクリル酸C
1-10アルコキシC
1-10アルキル;(メタ)アクリル酸1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−(1−アダマンチルエチル)、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イル等の炭素数8〜16の橋かけ環炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。また、これら(メタ)アクリレート類において、上記C
1-10アルキル基としてはC
1-8アルキル基が好ましく、上記C
6-10シクロアルキル基としてはC
6-8シクロアルキル基が好ましく、上記C
1-10アルコキシ基としてはC
1-6アルコキシ基が好ましく、炭素数8〜16の橋かけ環炭化水素基としては、炭素数8〜12の橋かけ環炭化水素基が好ましい。
また、(メタ)アクリレート類として、末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリスチレンのマクロモノマー、末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリメチル(メタ)アクリレートのマクロモノマー(東亜合成株式会社製 マクロモノマーAA−6等)、末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリブチル(メタ)アクリレートのマクロモノマー(東亜合成株式会社製 マクロモノマーAB−6等)、末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリジメチルシロキサンのマクロモノマー(信越化学工業株式会社製 変性シリコーンオイルX−22−2475等)等の末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するマクロモノマーを使用してもよい。これらマクロモノマーを使用することによりグラフト共重合体が得られる。
また、上記(メタ)アクリレート類の中でも、炭素数8〜16の橋かけ環炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸C
1-10アルコキシC
1-10アルキル、(メタ)アクリル酸C
1-10アルキル、末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するマクロモノマーが好ましく、炭素数8〜16の橋かけ環炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸C
1-10アルコキシC
1-10アルキル、(メタ)アクリル酸C
1-10アルキルがより好ましく、炭素数8〜16の橋かけ環炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸C
1-10アルキルが更に好ましく、(メタ)アクリル酸C
1-10アルキルが特に好ましい。
【0049】
また、上記(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、N,N−ジC
1-10アルキル(メタ)アクリルアミド;N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等のN−C
1-10アルキル(メタ)アクリルアミド;N−(1,1−ジメチル−2−アセチルエチル)(メタ)アクリルアミド等のN−C
1-10アルカノイルC
1-10アルキル(メタ)アクリルアミドの他、(メタ)アクリロイルピペリジン等が挙げられる。また、これら(メタ)アクリルアミド類において、上記C
1-10アルキル基としては、C
3-10アルキル基が好ましく、上記C
1-10アルカノイル基としては、C
1-6アルカノイル基が好ましい。
【0050】
また、繰り返し単位(B)の合計含有量の下限としては、基材との吸着の観点から、全繰り返し単位中、1モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、15モル%以上が更に好ましい。特に、繰り返し単位(B)がスチレン類から誘導される繰り返し単位である場合、繰り返し単位(B)の合計含有量の下限は、より好ましくは20モル%以上であり、更に好ましくは30モル%以上である。
一方、上限としては、水溶性の付与、非特異吸着抑制の観点から、全繰り返し単位中、90モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましく、70モル%以下が更に好ましく、60モル%以下が更に好ましい。特に、繰り返し単位(B)がスチレン類から誘導される繰り返し単位である場合、繰り返し単位(B)の合計含有量の上限は、より好ましくは50モル%以下であり、更に好ましくは40モル%以下であり、更に好ましくは35モル%以下である。
また、質量%としての繰り返し単位(B)の合計含有量の下限としては、基材との吸着の観点から、全繰り返し単位中、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましく、5質量%以上が更に好ましく、10質量%以上が特に好ましい。
一方、上限としては、水溶性の付与、非特異吸着抑制の観点から、全繰り返し単位中、80質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましく、40質量%以下が更に好ましく、30質量%以下が特に好ましい。特に、繰り返し単位(B)がスチレン類から誘導される繰り返し単位である場合、繰り返し単位(B)の合計含有量の上限は、より好ましくは20質量%以下であり、更に好ましくは18質量%以下である。
なお、繰り返し単位(B)の含有量は、繰り返し単位(A)の含有量と同様にして測定すればよい。
【0051】
また、重合体に含まれる繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とのモル比〔(A):(B)〕としては、非特異吸着抑制効果の観点から、10:30〜99:1が好ましく、10:20〜99:1がより好ましい。特に、繰り返し単位(B)がスチレン類から誘導される繰り返し単位である場合、10:15〜50:1が更に好ましく、10:10〜10:1が更に好ましく、10:8〜10:3が特に好ましい。
また、上記繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)との質量比<(A):(B)>としては、非特異吸着抑制効果の観点から、40:60〜99:1が好ましく、55:45〜99:1がより好ましく、60:40〜99:1が更に好ましい。特に、繰り返し単位(B)がスチレン類から誘導される繰り返し単位である場合、70:30〜98:2が更に好ましく、75:25〜90:10が特に好ましい。
【0052】
また、上記親水性繰り返し単位(A)及び疎水性繰り返し単位(B)の組み合わせとしては、非特異吸着抑制効果の観点から、
(A)式(2)で表される親水性繰り返し単位:60〜99質量%
(B)スチレン類、(メタ)アクリレート類および(メタ)アクリルアミド類から選ばれる1種以上の単量体から誘導される疎水性繰り返し単位:1〜40質量%
の組み合わせが好ましく、
(A)式(2)で表され、式(2)中の側鎖部のヒドロキシ基の数が0〜3個である親水性繰り返し単位:60〜99質量%
(B)スチレン類、炭素数8〜16の橋かけ環炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸C
1-10アルコキシC
1-10アルキル、(メタ)アクリル酸C
1-10アルキルおよび(メタ)アクリルアミド類から選ばれる1種以上の単量体から誘導される疎水性繰り返し単位:1〜40質量%
の組み合わせがより好ましく、
(A)式(2)で表され、式(2)中の側鎖部のヒドロキシ基の数が1〜3個である親水性繰り返し単位:60〜99質量%
(B)スチレン類、炭素数8〜16の橋かけ環炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸C
1-10アルキルおよび(メタ)アクリルアミド類から選ばれる1種以上の単量体から誘導される疎水性繰り返し単位:1〜40質量%
の組み合わせが更に好ましく、
(A)式(2)で表され、式(2)中の側鎖部のヒドロキシ基の数が1〜3個であり、且つ式(2)中のR
2が基*−(C=O)−O−である親水性繰り返し単位:70〜99質量%
(B)スチレン類、(メタ)アクリル酸C
1-10アルキルおよび(メタ)アクリルアミド類から選ばれる1種以上の単量体から誘導される疎水性繰り返し単位:1〜30質量%
の組み合わせが特に好ましい。
【0053】
また、本発明の重合体は、前記繰り返し単位(A)以外の親水性繰り返し単位(C)を有していてもよい。斯様な親水性繰り返し単位(C)としては、アニオン性の単量体(アニオン性モノマー)、カチオン性の単量体(カチオン性モノマー)、またはノニオン性の単量体(ノニオン性モノマー)から誘導されるものが挙げられ、これらを1種または2種以上含んでいてもよい。
【0054】
上記アニオン性モノマーとしては、ビニル安息香酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸モノマー;スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、イソプレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸モノマーが挙げられる。不飽和スルホン酸モノマーを用いれば、免疫診断薬の希釈液として用いた場合の非特異検体のシグナル抑制効果を向上させることができる。
【0055】
また、カチオン性モノマーとしては、アリルアミン、アミノスチレン、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド塩化メチル4級塩等の1〜4級アミノ基と不飽和結合を有するものが挙げられる。
【0056】
また、ノニオン性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリセリル、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレン等のヒドロキシ基を有する不飽和カルボン酸エステルモノマー;N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルアミドモノマーが挙げられる。
【0057】
上記繰り返し単位(C)の合計含有量としては、全繰り返し単位中、0〜49モル%が好ましく、0〜20モル%がより好ましく、0〜10モル%が更に好ましく、0〜1モル%が特に好ましい。また、質量%として0〜49質量%が好ましく、0〜20質量%がより好ましく、0〜10質量%が更に好ましく、0〜1質量%が特に好ましい。
【0058】
また、本発明の重合体が共重合体である場合、その繰り返し単位の配列の態様は特に限定されず、共重合体は、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
また、本発明の重合体の両末端としては、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、RAFT剤残基が好ましい。
また、本発明の重合体の数平均分子量(M
n)としては、5000〜100万が好ましく、7000〜20万がより好ましく、1万〜15万が特に好ましい。数平均分子量を5000以上とすることにより、非特異吸着抑制効果が向上し、一方、100万以下とすることにより、コーティング性やハンドリング性が向上する。
また、分子量分布(M
w/M
n)としては、1.0〜5.0が好ましく、1.0〜4.0がより好ましく、1.0〜3.0が更に好ましく、1.5〜2.5が特に好ましい。
なお、上記数平均分子量および分子量分布は、後述する実施例に記載の方法に従い測定すればよい。
【0059】
また、本発明の重合体としては、非特異吸着抑制効果の観点から、水溶性のものが好ましい。ここで、本明細書において、水溶性とは、1質量%のポリマー固形分となるように重合体を水(25℃)に添加・混合したときに、目視で透明となることをいう。
また、本発明の重合体としては、ノニオン性のものが好ましい。
【0060】
また、本発明の重合体としては、水溶性の付与、非特異吸着抑制効果の観点から、HLB値が10〜22の範囲であるものが好ましい。
【0061】
次に、本発明の重合体の製造方法について説明する。
本発明の重合体は、(1)公知の重合体の側鎖中にスルフィド基を導入し、斯かるスルフィド基をスルフィニル基に変換すること、(2)重合させたときに側鎖となる部分にスルフィド基を有するモノマーを、重合または他のモノマーと共重合させ、得られた(共)重合体のスルフィド基をスルフィニル基に変換すること、(3)或いは重合させたときに側鎖となる部分にスルフィニル基を有するモノマーを、重合または他のモノマーと共重合させること等により製造できる。
上記製造方法を、下記共重合体(N−1)の製造方法を例に挙げて具体的に説明する。
すなわち、工程1−A−1および工程1−A−2により、或いは工程1−Bまたは工程1−Cにより、共重合体(S−1)を得、これを用いて共重合体(G−1)を経て共重合体(N−1)を得る。
【0064】
(式中の各記号は前記と同義である。)
【0065】
<工程1−A−1>
工程1−A−1は、化合物(A−1−1)と化合物(B−1)とを重合開始剤の存在下で重合させ、共重合体(M−1)を得る工程である。
化合物(A−1−1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸等が挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
また、化合物(B−1)としては、前記スチレン類が挙げられ、その合計使用量としては、化合物(A−1−1)に対し、0.001〜1.5モル当量が好ましく、0.005〜0.8モル当量がより好ましく、0.02〜0.8モル当量がさらに好ましく、0.3〜0.8モル当量が特に好ましい。
【0066】
また、上記重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ系開始剤;ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、過酸化ベンゾイル等の過酸化物が挙げられ、これら重合開始剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
重合開始剤の合計使用量は、化合物(A−1−1)に対し、通常0.0002〜0.2質量倍程度である。
【0067】
また、工程1−A−1には溶媒、連鎖移動剤を使用してもよい。溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶媒;トルエン、ベンゼン等の芳香族系溶媒;1、4−ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒が挙げられ、これら溶媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これら溶媒の合計使用量は、化合物(A−1−1)に対し、通常0.5〜15質量倍程度である。
また、上記連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、チオグリセロール、tert−ドデシルメルカプタン等が挙げられる。
【0068】
また、工程1−A−1の反応時間は特に限定されないが、通常0.5〜24時間程度であり、反応温度は、溶媒の沸点以下で適宜選択すればよいが、通常0〜120℃程度である。
【0069】
<工程1−A−2>
工程1−A−2は、工程1−A−1で得た共重合体(M−1)の−R
2を、化合物(C−1)のグリシジル基またはオキセタニル基に対し開環付加させ、共重合体(S−1)を得る工程である。
工程1−A−2で用いる化合物(C−1)としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられ、その合計使用量としては、共重合体(M−1)中の化合物(A−1−1)から誘導される繰り返し単位に対し、1.5〜10モル当量が好ましく、2〜5モル当量がより好ましい。
【0070】
また、工程1−A−2は、触媒存在下で行うのが好ましい。触媒としては、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の四級アンモニウム塩;テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド等の四級ホスホニウム塩が挙げられ、これら触媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
上記触媒の合計使用量は、共重合体(M−1)中の化合物(A−1−1)から誘導される繰り返し単位に対し、通常0.01〜0.2モル当量程度である。
また、工程1−A−2で好適に使用される溶媒としては、工程1−A−1と同様のものが挙げられる。
【0071】
また、工程1−A−2の反応時間は特に限定されないが、通常1〜24時間程度であり、反応温度は、溶媒の沸点以下で適宜選択すればよいが、通常40〜200℃程度である。
【0072】
<工程1−Bおよび工程1−C>
工程1−Bおよび工程1−Cは、化合物(A−1−2)または化合物(A−1−3)と、化合物(B−1)とを重合開始剤の存在下で重合させ、共重合体(S−1)を得る工程である。
化合物(A−1−2)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、オキセタニル(メタ)アクリレートが挙げられ、化合物(A−1−3)としては、ビニルベンジルグリシジルエーテル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。なお、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
工程1−Bおよび工程1−Cは、上記工程1−A−1と同様にして行えばよい。
なお、上記工程1−A−1、1−A−2、工程1−B、工程1−Cに先立ち、単量体のうち一方にRAFT剤を反応させておくことによりブロック共重合体を合成できる。RAFT剤としては、トリチオ炭酸ドデシルシアノメチルや、2−メチル−2−[(ドデシルスルファニルチオカーバーボニル)スルファニル]プロパン酸、2−シアノ−2−プロピルドデシルトリチオカーボネート等が挙げられる。これらRAFT剤の使用量は、上記単量体に対し、通常0.00001〜0.1質量倍等量である。
また、化合物(B−1)は、前述の繰り返し単位(B)を誘導する化合物に変更して共重合させることもでき、斯かる化合物としてマクロモノマーを使用することでグラフト共重合体を合成できる。
【0073】
<工程2>
工程2は、工程1−A−2、工程1−Bまたは工程1−Cで得た共重合体(S−1)のグリシジル基またはオキセタニル基に対し、−SR
4を開環付加させ、共重合体(G−1)を得る工程である。
工程2で用いるR
4SHで表される化合物としては、チオグリセロール、メルカプトエタノールが挙げられるが、親水性向上の観点から、チオグリセロールが好ましい。
上記化合物の合計使用量は、化合物(A−1−1)、(A−1−2)または(A−1−3)から誘導される繰り返し単位に対し、通常0.1〜20モル当量であり、好ましくは1〜10モル当量である。
【0074】
また、工程2は、触媒存在下で行うのが好ましい。触媒としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン等の塩基性触媒が挙げられ、これら触媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
上記触媒の合計使用量は、化合物(A−1−1)、(A−1−2)または(A−1−3)から誘導される繰り返し単位に対し、通常0.01〜32モル当量である。
【0075】
また、工程2は、溶媒存在下で行うのが好ましい。溶媒としては、工程1で使用できる溶媒の他、エタノール、メタノール等のアルコール系溶媒、またはこれらの混合溶媒が挙げられ、その合計使用量は、共重合体(S−1)に対し、通常0.5〜20質量倍程度である。
【0076】
また、工程2の反応時間は特に限定されないが、通常1〜8時間程度であり、反応温度は、溶媒の沸点以下で適宜選択すればよいが、通常40〜100℃程度である。
【0077】
なお、工程2を工程1−Bまたは工程1−Cの前に実施し、その後工程1−Bまたは工程1−Cの重合を実施してもよい。
【0078】
<工程3>
工程3は、酸化剤を用いて、工程2で得た共重合体(G−1)のスルフィド基をスルフィニル基に変換し、共重合体(N−1)を得る工程である。なお、本発明の効果が失われない範囲で、共重合体中に含まれる複数のスルフィニル基の一部がスルフィド基やスルホニル基となってもよい。
【0079】
上記酸化剤は、有機酸化剤と無機酸化剤とに大別され、有機酸化剤としては、例えば、過酢酸、過安息香酸、メタクロロ過安息香酸等が挙げられる。一方、無機酸化剤としては、例えば、過酸化水素、クロム酸、過マンガン酸塩等が挙げられる。なお、これら酸化剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
また、酸化剤の使用量は、化合物(A−1−1)、(A−1−2)または(A−1−3)から誘導される繰り返し単位に対し、通常1.0〜10.0モル当量程度であるが、好ましくは1.0〜2.0モル当量である。
【0080】
工程3は、溶媒存在下で行うのが好ましい。斯かる溶媒としては、水;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒等が挙げられ、これら溶媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できるが、水、アルコール系溶媒が好ましい。
上記溶媒の合計使用量は、共重合体(G−1)に対し、通常1〜20質量倍程度であるが、好ましくは1〜15質量倍である。
【0081】
また、工程3の反応時間は特に限定されないが、通常1〜24時間程度であり、反応温度は、溶媒の沸点以下で適宜選択すればよいが、通常25〜70℃程度である。
【0082】
なお、前記各工程において、各反応生成物の単離は、必要に応じて、ろ過、洗浄、乾燥、再結晶、再沈殿、透析、遠心分離、各種溶媒による抽出、中和、クロマトグラフィー等の通常の手段を適宜組み合わせて行えばよい。
【0083】
そして、上記のようにして得られる本発明の重合体(ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体を含む)は、タンパク活性維持効果を有し、かつタンパク質や脂質の非特異吸着を抑制する効果に優れる。斯かる非特異吸着抑制効果が奏される理由は必ずしも明らかではないが、繰り返し単位(B)によって、重合体が、容器、器具等の壁面に吸着し、かつタンパク質、脂質等と何らかの相互作用を示し、その一方で、繰り返し単位(A)によって、前記壁面が親水化され、更にタンパク質、脂質等の吸着が防止されることにより奏されるものと本発明者は推察する。
したがって、本発明の重合体を含有する非特異吸着抑制剤は、固相等の表面親水化剤をはじめとして、親水性付与剤、表面改質剤、高分子界面活性剤、分散剤等として有用である。また、臨床検査・診断薬の分野等で広く利用することができ、例えば、臨床診断薬、臨床診断装置、バイオチップ、細胞培養基材、生体材料等生体物質等に接触する材料(固相、容器・器具等)のコーティング剤;血液検査等の診断に使用される全自動分析機用測定セルのコンディショニング剤、洗浄剤、リンス液;診断薬の希釈剤、反応溶媒、保存剤等への添加剤;細胞接着コントロール剤;臨床診断薬等に含まれるタンパク質の安定化剤;酵素安定化剤として使用することもできる。
【0084】
次に、本発明の表面親水化剤について説明する。
斯かる表面親水化剤は、上記重合体を含有するものである。
また、表面親水化剤は溶剤を含んでいてもよく、溶剤としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤等が挙げられ、これら溶剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。斯かる溶剤の含有量は、非特異吸着抑制効果の観点から、本発明の重合体が0.001〜15質量%となる量が好ましく、0.01〜10質量%となる量がより好ましい。
また、本発明の表面親水化剤は、前記重合体と溶剤の他に、殺菌剤、防腐剤等を含んでいてもよい。
【0085】
また、基材と上記表面親水化剤とを接触させることにより親水性表面を有する基材が製造できる。ここで、親水性表面を有する基材の製造は、基材に対する表面親水化剤の通常のコーティングと同様に行えばよいが、具体的な方法としては、
(1)表面親水化剤の溶液を基材に接触させ、溶媒を残したまま溶液中で表面親水化剤を基材表面に物理吸着させる方法
(2)表面親水化剤の溶液を基材に接触させ、乾燥により溶媒を揮発させ、表面親水化剤の乾燥膜を基材表面に形成させる方法
が挙げられる。
上記方法(1)においては、溶液中で表面親水化剤を基材表面に物理吸着させたのち、通常、溶液が流れ出るように基材を傾ける、基材を溶液から引き上げる、基材上の溶液を吹き飛ばす、溶媒を多量に注ぎ込むなどの方法により、溶液を取り除く工程を経て、表面親水化剤が吸着した基材を得る。本発明においては、低環境負荷の観点や、親水化した基材を使用している最中に表面親水化剤が溶け出さないという利点から、方法(1)が好ましい。
また、親水性表面を有する基材の製造に用いる基材としては、疎水性表面を有するものが好ましい。基材の材質は、無機材料、有機材料のいずれでもよいが、本発明の表面親水化剤は低温での表面親水化処理が可能なため、有機材料がより好ましい。
【0086】
また、上記有機材料としては、高分子材料が好ましい。斯様な高分子材料としては、ポリスチレン、ABS樹脂等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系ポリマー(環状オレフィン樹脂を含む);ポリビニルアセテート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピロリジン等のビニル系ポリマー;ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系ポリマー;ポリアミド、ポリアクリルアミド等のアミド系ポリマー;ポリイミド、ポリエチレンイミド等のイミド系ポリマー;ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系ポリマー;ポリアセトニトリル、ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリビニルフェノール等のビニルフェノール系ポリマー;ポリビニルアルコール等のビニルアルコール系ポリマー;ポリウレタン等のウレタン系ポリマー;ポリカーボネート等のカーボネート系ポリマー;ポリベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系ポリマー;ポリエーテルエーテルケトン等のポリエーテルエーテルケトン系ポリマー;ポリアニリン等のアニリン系ポリマー;ポリアクリレート等のポリ(メタ)アクリレート類;ポリカプロラクトン等のポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル;ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ乳酸・グリコール酸等のヒドロキシカルボン酸系ポリエステルを含む);エポキシ樹脂(SU−8等を含む);フェノール樹脂;メラミン樹脂、公知のレジスト材料の他、糖鎖高分子、タンパク質等が挙げられ、これらが1種または2種以上含まれていてよい。
また、上記糖鎖高分子としては、アガロースまたはその誘導体、セルロースまたはその誘導体(酢酸セルロース等)等の多糖類が挙げられる。また、上記タンパク質としては、コラーゲンまたはその誘導体等が挙げられる。
本発明においては、有機材料の中でもスチレン系ポリマーが好ましい。
【実施例】
【0087】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0088】
実施例における各分析条件は以下に示すとおりである。
<分子量測定>
重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、東ソー社製 TSKgel α−Mカラムを用い、流量:0.5ミリリットル/分、溶出溶媒:NMP溶媒(H
3PO
4:0.016M、LiBr:0.030M)、カラム温度:40℃の分析条件で、ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
<NMRスペクトル>
13C−NMRスペクトルは、溶媒および内部標準物質としてd6−DMSOを用いて、BRUKER製モデルAVANCE500(500MHz)により測定した。
<吸光度測定>
吸光度は、日本バイオ・ラッドラボラトリーズ社製モデル680マイクロプレートリーダーにより450nmの吸光度を測定した。
<接触角測定>
接触角は、協和界面科学株式会社製接触角計 DROP MASTER 500を用いて水滴下10秒後の水の接触角をθ/2法により測定した。
【0089】
実施例1 共重合体(N−1−1)の合成
以下の合成経路に従い、共重合体(N−1−1)を得た。
【0090】
【化9】
【0091】
メタクリル酸6.79gおよびスチレン2.27gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.272gと、N,N−ジメチルホルムアミド18.9gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、6時間重合させ、その後室温に冷却することで、共重合体(M−1−1)を得た。
【0092】
次いで、得られた共重合体(M−1−1)を含む溶液に、エチレングリコールジグリシジルエーテル41.2gおよび触媒としてテトラブチルアンモニウムブロマイド2.54gを溶解させ、これに窒素を吹き込み、100℃まで昇温し、12時間反応させ、その後室温に冷却した。この溶液をメタノールによる再沈殿で精製し、減圧乾燥することで共重合体(S−1−1)を得た。
得られた共重合体(S−1−1)において、メタクリル酸から誘導された繰り返し単位の含有量は80モル%であり、スチレンから誘導された繰り返し単位の含有量は20モル%であった。なお、これら含有量は
13C−NMRにより測定した。
【0093】
次いで、得られた共重合体(S−1−1)1gおよびチオグリセロール3.02gと、N,N−ジメチルホルムアミド9.45gとを混合してフラスコに入れた。これに窒素を吹き込みながら60℃まで昇温し、触媒としてトリエチルアミン11.3gを添加した後4時間反応させ、その後室温に冷却した。この溶液を水による再沈殿で精製し、凍結乾燥することで共重合体(G−1−1)を得た。
【0094】
次いで、得られた共重合体(G−1−1)0.1gを0.857gの水に分散させ、フラスコへ入れた。これに、30%過酸化水素水溶液を0.043g添加し、室温で18時間反応させた。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−1)を得た(収率:15%)。この共重合体(N−1−1)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−1)は水に溶解していた。
また、得られた共重合体(N−1−1)の数平均分子量は25632であり、分子量分布は2.40であった。
共重合体(N−1−1)の構造は
13C−NMRより確認した。
【0095】
実施例2 共重合体(N−1−2)の合成
以下の合成経路に従い、共重合体(N−1−2)を得た。
【0096】
【化10】
【0097】
ビニルベンジルグリシジルエーテル(メタ、パラ混合物)6.79gおよびスチレン2.27gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.272gと、N,N−ジメチルホルムアミド18.9gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、8時間重合させ、その後室温に冷却した。この溶液をメタノールによる再沈殿で精製し、減圧乾燥することで共重合体(S−1−2)を得た。
得られた共重合体(S−1−2)において、ビニルベンジルグリシジルエーテルから誘導された繰り返し単位の含有量は62モル%であり、スチレンから誘導された繰り返し単位の含有量は38モル%であった。なお、これら含有量は実施例1と同様にして測定した。
【0098】
次いで、得られた共重合体(S−1−2)1gおよびチオグリセロール3.37gと、N,N−ジメチルホルムアミド9.45gとを混合してフラスコに入れた。これに窒素を吹き込みながら60℃まで昇温し、触媒としてトリエチルアミン12.6gを添加した後4時間反応させ、その後室温に冷却した。この溶液を水による再沈殿で精製し、凍結乾燥することで共重合体(G−1−2)を得た。
【0099】
次いで、得られた共重合体(G−1−2)0.1gを0.853gの水に分散させ、フラスコへ入れた。これに、30%過酸化水素水溶液を0.047g添加し、室温で18時間反応させた。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−2)を得た(収率:21%)。この共重合体(N−1−2)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−2)は水に溶解していた。
また、得られた共重合体(N−1−2)の数平均分子量は19502であり、分子量分布は2.31であった。
共重合体(N−1−2)の構造は
13C−NMRより確認した。
【0100】
実施例3 共重合体(N−1−3)の合成
以下の合成経路に従い、共重合体(N−1−3)を得た。
【0101】
【化11】
【0102】
ビニルベンジルグリシジルエーテル(メタ、パラ混合物)15.0gおよびチオグリセロール17.1gと、イソプロピルアルコール39.0gとを混合してフラスコに入れた。これに触媒としてトリエチルアミン15.9gを添加した後、窒素を吹き込みながら30℃まで昇温し、1時間反応させ、その後室温に冷却した。この溶液中のイソプロピルアルコールをエバポレーターにより除去し、酢酸エチル90.2gに溶解させた。次いで、水150mLを用いて不純物を抽出除去し、更に酢酸エチルをエバポレーターにより除去することで化合物(K−1−3)を得た。
【0103】
次いで、得られた化合物(K−1−3)7.48gおよびスチレン1.58gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.272gと、N,N−ジメチルホルムアミド18.9gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、8時間重合させ、その後室温に冷却した。この溶液を水による再沈殿で精製し、凍結乾燥することで共重合体(G−1−3)を得た。
得られた共重合体(G−1−3)において、化合物(K−1−3)から誘導された繰り返し単位の含有量は61モル%であり、スチレンから誘導された繰り返し単位の含有量は39モル%であった。なお、これら含有量は実施例1と同様にして測定した。
【0104】
次いで、得られた共重合体(G−1−3)0.1gを0.853gの水に分散させ、フラスコへ入れた。これに、30%過酸化水素水溶液を0.047g添加し、室温で18時間反応させた。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−3)を得た(収率:15%)。この共重合体(N−1−3)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−3)は水に溶解していた。
また、得られた共重合体(N−1−3)の数平均分子量は17405であり、分子量分布は2.01であった。
共重合体(N−1−3)の構造は
13C−NMRより確認した。
【0105】
実施例4 共重合体(N−1−4)の合成
以下の合成経路に従い、共重合体(N−1−4)を得た。
【0106】
【化12】
【0107】
グリシジルメタクリレート6.79gおよびスチレン2.27gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.272gと、N,N−ジメチルホルムアミド18.9gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、6時間重合させ、その後室温に冷却した。この溶液をメタノールによる再沈殿で精製し、減圧乾燥することで共重合体(S−1−4)を得た。
得られた共重合体(S−1−4)において、グリシジルメタクリレートから誘導された繰り返し単位の含有量は67モル%であり、スチレンから誘導された繰り返し単位の含有量は33モル%であった。なお、これら含有量は実施例1と同様にして測定した。
【0108】
次いで、得られた共重合体(S−1−4)1gおよびチオグリセロール4.47gと、N,N−ジメチルホルムアミド9.45gとを混合してフラスコに入れた。これに窒素を吹き込みながら60℃まで昇温し、触媒としてトリエチルアミン16.7gを添加した後4時間反応させ、その後室温に冷却した。この溶液を水による再沈殿で精製し、凍結乾燥することで共重合体(G−1−4)を得た。
【0109】
次いで、得られた共重合体(G−1−4)0.1gを0.844gの水に分散させ、フラスコへ入れた。これに、30%過酸化水素水溶液を0.056g添加し、室温で18時間反応させた。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−4)を得た(収率:27%)。この共重合体(N−1−4)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−4)は水に溶解していた。
また、得られた共重合体(N−1−4)の数平均分子量は23309であり、分子量分布は2.17であった。
共重合体(N−1−4)の構造は
13C−NMRより確認した。
【0110】
実施例5 共重合体(N−1−5)の合成
上記実施例4と同様の合成経路に従い、共重合体(N−1−5)を得た。
グリシジルメタクリレート4.53gおよびスチレン4.53gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.272gと、N,N−ジメチルホルムアミド18.9gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、6時間重合させ、その後室温に冷却した。この溶液をメタノールによる再沈殿で精製し、減圧乾燥することで共重合体(S−1−5)を得た。
得られた共重合体(S−1−5)において、グリシジルメタクリレートから誘導された繰り返し単位の含有量は45モル%であり、スチレンから誘導された繰り返し単位の含有量は55モル%であった。なお、これら含有量は実施例1と同様にして測定した。
【0111】
次いで、得られた共重合体(S−1−5)1gおよびチオグリセロール3.21gと、N,N−ジメチルホルムアミド9.45gとを混合してフラスコに入れた。これに窒素を吹き込みながら60℃まで昇温し、触媒としてトリエチルアミン12.0gを添加した後4時間反応させ、その後室温に冷却した。この溶液を水による再沈殿で精製し、凍結乾燥することで共重合体(G−1−5)を得た。
【0112】
次いで、得られた共重合体(G−1−5)0.1gを0.855gの水に分散させ、フラスコへ入れた。これに、30%過酸化水素水溶液を0.045g添加し、室温で18時間反応させた。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−5)を得た(収率:15%)。この共重合体(N−1−5)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−5)は水に溶解していた。
また、得られた共重合体(N−1−5)の数平均分子量は28000であり、分子量分布は1.69であった。
【0113】
実施例6 共重合体(N−1−6)の合成
上記実施例4と同様の合成経路に従い、共重合体(N−1−6)を得た。
グリシジルメタクリレート3.02gおよびスチレン6.04gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.272gと、N,N−ジメチルホルムアミド18.9gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、6時間重合させ、その後室温に冷却した。この溶液をメタノールによる再沈殿で精製し、減圧乾燥することで共重合体(S−1−6)を得た。
得られた共重合体(S−1−6)において、グリシジルメタクリレートから誘導された繰り返し単位の含有量は28モル%であり、スチレンから誘導された繰り返し単位の含有量は72モル%であった。なお、これら含有量は実施例1と同様にして測定した。
【0114】
次いで、得られた共重合体(S−1−6)1gおよびチオグリセロール2.52gと、N,N−ジメチルホルムアミド9.45gとを混合してフラスコに入れた。これに窒素を吹き込みながら60℃まで昇温し、触媒としてトリエチルアミン9.41gを添加した後4時間反応させ、その後室温に冷却した。この溶液を水による再沈殿で精製し、凍結乾燥することで共重合体(G−1−6)を得た。
【0115】
次いで、得られた共重合体(G−1−6)0.1gを0.862gのメタノールに溶解させ、フラスコへ入れた。これに、30%過酸化水素水溶液を0.038g添加し、室温で18時間反応させた。得られた水溶液を水による再沈殿で精製することで、共重合体(N−1−6)を得た(収率:23%)。この共重合体(N−1−6)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−6)は水に不溶であったが、メタノール中1質量%の濃度としたところ、メタノールに溶解していた。
また、得られた共重合体(N−1−6)の数平均分子量は23210であり、分子量分布は1.89であった。
【0116】
実施例7 共重合体(N−1−7)の合成
以下の合成経路に従い、ブロック共重合体である共重合体(N−1−7)を得た。
【0117】
【化13】
【0118】
グリシジルメタクリレート10.0g、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.01g、溶媒としてベンゼン18.9g、およびRAFT剤としてトリチオ炭酸ドデシルシアノメチル0.1gを混合しシュレンク管に投入して、窒素置換のために30分窒素でバブリングした。その後66℃まで昇温し、35分間重合させ室温まで冷却した。その後、凍結乾燥により残存溶媒を除去し、グリシジルメタクリレートのマクロモノマー(X−1−7)を得た。
次いで、上記で得られたマクロモノマー(X−1−7)6.79g、スチレン2.27g、2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.00522g、および溶媒として1,4−ジオキサンを12.0g混合しシュレンク管に投入して、脱酸素のために凍結−真空のサイクルを3回繰り返し、66℃まで昇温し90分間重合させ室温まで冷却した。その後、水による透析で溶媒や残存モノマーを除去し、凍結乾燥することでグリシジルメタクリレートとスチレンのジブロック共重合体(S−1−7)を得た。
得られたジブロック共重合体(S−1−7)において、グリシジルメタクリレートから誘導された繰り返し単位の含有量は65モル%であり、スチレンから誘導された繰り返し単位の含有量は35モル%であった。なお、これら含有量は実施例1と同様にして測定した。
【0119】
次いで、得られた共重合体(S−1−7)1gおよびチオグリセロール4.47gと、N,N−ジメチルホルムアミド9.45gとを混合してフラスコに入れた。これに窒素を吹き込みながら60℃まで昇温し、触媒としてトリエチルアミン16.7gを添加した後4時間反応させ、その後室温に冷却した。この溶液を水による再沈殿で精製し、凍結乾燥することで共重合体(G−1−7)を得た。
【0120】
次いで、得られた共重合体(G−1−7)0.1gを0.844gの水に分散させ、フラスコへ入れた。これに、30%過酸化水素水溶液を0.056g添加し、室温で18時間反応させた。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−7)を得た(収率:10%)。この共重合体(N−1−7)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−7)は水に溶解していた。
また、得られた共重合体(N−1−7)の数平均分子量は32500であり、分子量分布は1.20であった。
共重合体(N−1−7)の構造は
13C−NMRより確認した。
【0121】
実施例8 共重合体(N−1−8)の合成
以下の合成経路に従い、グラフト共重合体である共重合体(N−1−8)を得た。
【0122】
【化14】
【0123】
グリシジルメタクリレート27.5gおよび末端にメタクリロイルオキシ基を有するポリメチルメタクリレートのマクロモノマー(東亜合成株式会社製 マクロモノマーAA−6:分子量6,000)0.486gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.280gと、N−メチルピロリドン66.0gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、8時間重合させ、その後室温に冷却することで共重合体(S−1−8)のポリマー溶液を得た。
得られた共重合体(S−1−8)において、グリシジルメタクリレートから誘導された繰り返し単位の含有量は99モル%であり、上記マクロモノマーから誘導された繰り返し単位の含有量は1モル%であった。なお、これら含有量は実施例1と同様にして測定した。
【0124】
次いで、得られた共重合体(S−1−8)溶液10.0gおよびチオグリセロール11.1gと、メタノール4.83gとを混合してフラスコに入れた。これに窒素を吹き込みながら60℃まで昇温し、触媒としてトリエチルアミン0.416gを添加した後2時間反応させ、その後室温に冷却し、この溶液を水による再沈殿で精製して共重合体(G−1−8)を得た。
【0125】
次いで、得られた共重合体(G−1−8)2.13gを、水4.30gとメタノール3.55gの混合溶媒に溶解させ、フラスコへ入れた。これに、30%過酸化水素水溶液を1.43g添加し、40℃で2時間反応させた。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−8)を得た(収率:31%)。この共重合体(N−1−8)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−8)は水に溶解していた。
また、得られた共重合体(N−1−8)の数平均分子量は69600であり、分子量分布は3.04であった。
共重合体(N−1−8)の構造は
13C−NMRより確認した。
【0126】
実施例9 共重合体(N−1−9)の合成
以下の合成経路に従い、グラフト共重合体である共重合体(N−1−9)を得た。
【0127】
【化15】
【0128】
グリシジルメタクリレート27.5gおよび末端にメタクリロイルオキシ基を有するポリブチルアクリレートのマクロモノマー(東亜合成株式会社製 マクロモノマーAB−6:分子量6,000)0.486gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.280gと、N−メチルピロリドン66.0gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、8時間重合させ、その後室温に冷却することで共重合体(S−1−9)のポリマー溶液を得た。
得られた共重合体(S−1−9)において、グリシジルメタクリレートから誘導された繰り返し単位の含有量は99モル%であり、上記マクロモノマーから誘導された繰り返し単位の含有量は1モル%であった。なお、これら含有量は実施例1と同様にして測定した。
【0129】
次いで、得られた共重合体(S−1−9)溶液10.0gおよびチオグリセロール11.1gと、メタノール4.83gとを混合してフラスコに入れた。これに窒素を吹き込みながら60℃まで昇温し、触媒としてトリエチルアミン0.416gを添加した後2時間反応させ、その後室温に冷却し、この溶液を水による再沈殿で精製して共重合体(G−1−9)を得た。
【0130】
次いで、得られた共重合体(G−1−9)2.10gを、水5.80gとメタノール3.49gの混合溶媒に溶解させ、フラスコへ入れた。これに、30%過酸化水素水溶液を1.40g添加し、40℃で2時間反応させた。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−9)を得た(収率:27%)。この共重合体(N−1−9)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−9)は水に溶解していた。
また、得られた共重合体(N−1−9)の数平均分子量は64300であり、分子量分布は2.94であった。
共重合体(N−1−9)の構造は
13C−NMRより確認した。
【0131】
実施例10 共重合体(N−1−10)の合成
以下の合成経路に従い、グラフト共重合体である共重合体(N−1−10)を得た。
【0132】
【化16】
【0133】
グリシジルメタクリレート11.3gおよび末端にメタクリロイルオキシ基を有するポリジメチルシロキサンのマクロモノマー(信越化学工業株式会社製 変性シリコーンオイルX−22−2475:分子量420)3.75gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.150gと、酢酸エチル35.4gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、8時間重合させ、その後室温に冷却することで共重合体(S−1−10)のポリマー溶液を得た。
得られた共重合体(S−1−10)において、グリシジルメタクリレートから誘導された繰り返し単位の含有量は90モル%であり、上記マクロモノマーから誘導された繰り返し単位の含有量は10モル%であった。なお、これら含有量は実施例1と同様にして測定した。
【0134】
次いで、得られた共重合体(S−1−10)溶液16.0gおよびチオグリセロール13.6gと、メタノール7.72gとを混合してフラスコに入れた。これに窒素を吹き込みながら60℃まで昇温し、触媒としてトリエチルアミン0.508gを添加した後2時間反応させ、その後室温に冷却し、この溶液を水による再沈殿で精製して共重合体(G−1−10)を得た。
【0135】
次いで、得られた共重合体(G−1−10)2.03gを、水3.85gとメタノール3.53gの混合溶媒に溶解させ、フラスコへ入れた。これに、30%過酸化水素水溶液を1.16g添加し、40℃で2時間反応させた。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−10)を得た(収率:21%)。この共重合体(N−1−10)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−10)は水に溶解していた。
また、得られた共重合体(N−1−10)の数平均分子量は53400であり、分子量分布は2.12であった。
共重合体(N−1−10)の構造は
13C−NMRより確認した。
【0136】
実施例11 共重合体(N−1−11)の合成
以下の合成経路に従い、共重合体(N−1−11)を得た。
【0137】
【化17】
【0138】
グリシジルメタクリレート24.0gおよびメタクリル酸トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イル8.00gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.320gと、N−メチルピロリドン75.5gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、8時間重合させ、その後室温に冷却することで共重合体(S−1−11)のポリマー溶液を得た。
得られた共重合体(S−1−11)において、グリシジルメタクリレートから誘導された繰り返し単位の含有量は82モル%であり、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イルから誘導された繰り返し単位の含有量は18モル%であった。なお、これら含有量は実施例1と同様にして測定した。
【0139】
次いで、得られた共重合体(S−1−11)溶液16.0gおよびチオグリセロール13.6gと、メタノール7.72gとを混合してフラスコに入れた。これに窒素を吹き込みながら60℃まで昇温し、触媒としてトリエチルアミン0.508gを添加した後2時間反応させ、その後室温に冷却し、この溶液を水による再沈殿で精製して共重合体(G−1−11)を得た。
【0140】
次いで、得られた共重合体(G−1−11)2.70gを、水8.88gとメタノール10.5gの混合溶媒に溶解させ、フラスコへ入れた。これに、30%過酸化水素水溶液を1.51g添加し、40℃で2時間反応させた。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−11)を得た(収率:32%)。この共重合体(N−1−11)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−11)は水に溶解していた。
また、得られた共重合体(N−1−11)の数平均分子量は60500であり、分子量分布は2.63であった。
共重合体(N−1−11)の構造は
13C−NMRより確認した。
【0141】
実施例12 共重合体(N−1−12)の合成
以下の合成経路に従い、共重合体(N−1−12)を得た。
【0142】
【化18】
【0143】
グリシジルメタクリレート11.3gおよびメタクリル酸1−アダマンチル3.75gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.150gと、N−メチルピロリドン35.4gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、8時間重合させ、その後室温に冷却することで共重合体(S−1−12)のポリマー溶液を得た。
得られた共重合体(S−1−12)において、グリシジルメタクリレートから誘導された繰り返し単位の含有量は82モル%であり、メタクリル酸1−アダマンチルから誘導された繰り返し単位の含有量は18モル%であった。なお、これら含有量は実施例1と同様にして測定した。
【0144】
次いで、得られた共重合体(S−1−12)溶液16.0gおよびチオグリセロール13.6gと、メタノール7.72gとを混合してフラスコに入れた。これに窒素を吹き込みながら60℃まで昇温し、触媒としてトリエチルアミン0.508gを添加した後2時間反応させ、その後室温に冷却し、この溶液を水による再沈殿で精製して共重合体(G−1−12)を得た。
【0145】
次いで、得られた共重合体(G−1−12)2.19gを、水3.31gとメタノール4.66gの混合溶媒に溶解させ、フラスコへ入れた。これに、30%過酸化水素水溶液を1.24g添加し、40℃で2時間反応させた。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−12)を得た(収率:35%)。この共重合体(N−1−12)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−12)は水に溶解していた。
また、得られた共重合体(N−1−12)の数平均分子量は99800であり、分子量分布は2.49であった。
共重合体(N−1−12)の構造は
13C−NMRより確認した。
【0146】
実施例13 共重合体(N−1−13)の合成
以下の合成経路に従い、共重合体(N−1−13)を得た。
【0147】
【化19】
【0148】
グリシジルメタクリレート20.2gおよびアクリル酸2−エチルヘキシル6.81gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.272gと、N−メチルピロリドン60.7gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、8時間重合させ、その後室温に冷却することで共重合体(S−1−13)のポリマー溶液を得た。
得られた共重合体(S−1−13)において、グリシジルメタクリレートから誘導された繰り返し単位の含有量は80モル%であり、アクリル酸2−エチルヘキシルから誘導された繰り返し単位の含有量は20モル%であった。なお、これら含有量は実施例1と同様にして測定した。
【0149】
次いで、得られた共重合体(S−1−13)溶液16.0gおよびチオグリセロール13.6gと、メタノール7.72gとを混合してフラスコに入れた。これに窒素を吹き込みながら60℃まで昇温し、触媒としてトリエチルアミン0.508gを添加した後2時間反応させ、その後室温に冷却し、この溶液を水による再沈殿で精製して共重合体(G−1−13)を得た。
【0150】
次いで、得られた共重合体(G−1−13)3.30gを、水8.03gとメタノール9.10gの混合溶媒に溶解させ、フラスコへ入れた。これに、30%過酸化水素水溶液を1.87g添加し、40℃で2時間反応させた。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−13)を得た(収率:41%)。この共重合体(N−1−13)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−13)は水に溶解していた。
また、得られた共重合体(N−1−13)の数平均分子量は69300であり、分子量分布は2.08であった。
共重合体(N−1−13)の構造は
13C−NMRより確認した。
【0151】
実施例14 共重合体(N−1−14)の合成
以下の合成経路に従い、共重合体(N−1−14)を得た。
【0152】
【化20】
【0153】
グリシジルメタクリレート6.57gおよびN−(1,1−ジメチル−2−アセチルエチル)アクリルアミド5.00gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.116gと、N−メチルピロリドン45.0gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、8時間重合させ、その後室温に冷却することで共重合体(S−1−14)のポリマー溶液を得た。
得られた共重合体(S−1−14)において、グリシジルメタクリレートから誘導された繰り返し単位の含有量は61モル%であり、N−(1,1−ジメチル−2−アセチルエチル)アクリルアミドから誘導された繰り返し単位の含有量は39モル%であった。なお、これら含有量は実施例1と同様にして測定した。
【0154】
次いで、得られた共重合体(S−1−14)溶液25.0gおよびチオグリセロール11.0gと、メタノール5.52gとを混合してフラスコに入れた。これに窒素を吹き込みながら60℃まで昇温し、触媒としてトリエチルアミン0.413gを添加した後2時間反応させ、その後室温に冷却し、この溶液を水による再沈殿で精製して共重合体(G−1−14)を得た。
【0155】
次いで、得られた共重合体(G−1−14)2.42gを、水2.27gとメタノール5.07gの混合溶媒に溶解させ、フラスコへ入れた。これに、30%過酸化水素水溶液を1.15g添加し、40℃で2時間反応させた。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−14)を得た(収率:23%)。この共重合体(N−1−14)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−14)は水に溶解していた。
また、得られた共重合体(N−1−14)の数平均分子量は36300であり、分子量分布は1.90であった。
共重合体(N−1−14)の構造は
13C−NMRより確認した。
【0156】
実施例15 共重合体(N−1−15)の合成
以下の合成経路に従い、共重合体(N−1−15)を得た。
【0157】
【化21】
【0158】
グリシジルメタクリレート22.5gおよびアクリル酸イソブチル7.49gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.300gと、N−メチルピロリドン70.7gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、8時間重合させ、その後室温に冷却することで共重合体(S−1−15)のポリマー溶液を得た。
得られた共重合体(S−1−15)において、グリシジルメタクリレートから誘導された繰り返し単位の含有量は73モル%であり、アクリル酸イソブチルから誘導された繰り返し単位の含有量は27モル%であった。なお、これら含有量は実施例1と同様にして測定した。
【0159】
次いで、得られた共重合体(S−1−15)溶液16.0gおよびチオグリセロール13.6gと、メタノール7.72gとを混合してフラスコに入れた。これに窒素を吹き込みながら60℃まで昇温し、触媒としてトリエチルアミン0.508gを添加した後2時間反応させ、その後室温に冷却し、この溶液を水による再沈殿で精製して共重合体(G−1−15)を得た。
【0160】
次いで、得られた共重合体(G−1−15)1.85gを、水5.24gとメタノール6.39gの混合溶媒に溶解させ、フラスコへ入れた。これに、30%過酸化水素水溶液を1.05g添加し、40℃で2時間反応させた。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−15)を得た(収率:22%)。この共重合体(N−1−15)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−15)は水に溶解していた。
また、得られた共重合体(N−1−15)の数平均分子量は66700であり、分子量分布は2.24であった。
共重合体(N−1−15)の構造は
13C−NMRより確認した。
【0161】
実施例16 共重合体(N−1−16)の合成
以下の合成経路に従い、共重合体(N−1−16)を得た。
【0162】
【化22】
【0163】
グリシジルメタクリレート22.5gおよびアクリル酸2−メトキシエチル7.49gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.300gと、N−メチルピロリドン70.7gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、8時間重合させ、その後室温に冷却することで共重合体(S−1−16)のポリマー溶液を得た。
得られた共重合体(S−1−16)において、グリシジルメタクリレートから誘導された繰り返し単位の含有量は73モル%であり、アクリル酸2−メトキシエチルから誘導された繰り返し単位の含有量は27モル%であった。なお、これら含有量は実施例1と同様にして測定した。
【0164】
次いで、得られた共重合体(S−1−16)溶液16.0gおよびチオグリセロール13.6gと、メタノール7.72gとを混合してフラスコに入れた。これに窒素を吹き込みながら60℃まで昇温し、触媒としてトリエチルアミン0.508gを添加した後2時間反応させ、その後室温に冷却し、この溶液を水による再沈殿で精製して共重合体(G−1−16)を得た。
【0165】
次いで、得られた共重合体(G−1−16)2.01gを、水4.83gとメタノール4.29gの混合溶媒に溶解させ、フラスコへ入れた。これに、30%過酸化水素水溶液を1.14g添加し、40℃で2時間反応させた。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−16)を得た(収率:25%)。この共重合体(N−1−16)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−16)は水に溶解していた。
また、得られた共重合体(N−1−16)の数平均分子量は40100であり、分子量分布は2.54であった。
共重合体(N−1−16)の構造は
13C−NMRより確認した。
【0166】
実施例17 共重合体(N−1−17)の合成
以下の合成経路に従い、共重合体(N−1−17)を得た。
【0167】
【化23】
【0168】
アクリル酸2−(エチルチオ)エチル1.60gおよびスチレン0.016gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.012gと、酢酸エチル6.46gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、8時間重合させ、その後室温に冷却し、水による再沈殿精製することで共重合体(G−1−17)を得た。
得られた共重合体(G−1−17)において、アクリル酸2−(エチルチオ)エチルから誘導された繰り返し単位の含有量は99モル%であり、スチレンから誘導された繰り返し単位の含有量は1モル%であった。なお、これら含有量は実施例1と同様にして測定した。
【0169】
次いで、得られた共重合体(G−1−17)0.300gを、水1.5gとメタノール1.5gの混合溶媒に溶解させ、フラスコへ入れた。これに、30%過酸化水素水溶液を0.318g添加し、40℃で2時間反応させた。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−17)を得た(収率:30%)。この共重合体(N−1−17)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−17)は水に溶解していた。
また、得られた共重合体(N−1−17)の数平均分子量は39400であり、分子量分布は2.98であった。
共重合体(N−1−17)の構造は
13C−NMRより確認した。
【0170】
上記実施例1〜17で得た共重合体(N−1−1)〜(N−1−17)のHLB値(小田式)を以下の表1に示す。なお、共重合体(N−1−1)〜(N−1−17)が有する繰り返し単位(A)からなるホモポリマーを合成し、1gを純水100gに添加したところ常温(25℃)で溶解した。また、共重合体(N−1−1)〜(N−1−17)が有する繰り返し単位(B)からなるホモポリマーを合成し、1gを純水100gに添加したところ常温(25℃)で溶解しきらなかった。
【0171】
【表1】
【0172】
試験例1 抗体吸着量測定(1)
実施例1〜5で得られた共重合体の1質量%水溶液をポリスチレン製96穴プレートに満たし、室温で5分間インキュベートした後、超純水で3回洗浄した。次いで、西洋ワサビパーオキシダーゼ標識マウスIgG抗体(AP124P:ミリポア社製)水溶液を上記96穴プレートに満たし、室温で1時間インキュベートした後、PBSバッファーで3回洗浄し、TMB(3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン)/過酸化水素水/硫酸で発色させて450nmの吸光度を測定し、この吸光度から検量線法により抗体吸着量を算出した。
また、コントロールとして、実施例1〜5で得られた共重合体の1質量%水溶液でプレートを処理しない以外は上記と同様にして抗体吸着量を算出した。
試験例1の結果を表2に示す。
【0173】
【表2】
【0174】
試験例2 抗体吸着量測定(2)
実施例1〜5及び7〜17で得られた共重合体の0.1質量%水溶液を使用した以外は試験例1と同様にして試験を行い検量線法により抗体吸着量を算出した。
試験例2の結果を表3に示す。
【0175】
【表3】
【0176】
上記表2及び3に示すように、共重合体(N−1−1)〜(N−1−5)及び(N−1−7)〜(N−1−17)は、優れた非特異吸着抑制効果を有する。
【0177】
試験例3 接触角測定(1)
実施例1〜5で得られた共重合体の1質量%水溶液中にポリスチレン基板を室温で5分間ディップし、超純水で3回洗浄した。実施例6で得られた重合体のみ、メタノールで10質量%に溶解後、ポリスチレン基板上に塗布し乾燥させた。次いで、これらについて水の接触角を測定した。また、コントロールとして、重合体で処理しない基板の接触角を測定した。
試験例3の結果を表4に示す。
【0178】
【表4】
【0179】
試験例4 接触角測定(2)
実施例1〜5及び7〜17で得られた共重合体の1質量%水溶液を使用した以外は試験例3と同様にして試験を行い、接触角を測定した。
試験例4の結果を表5に示す。
【0180】
【表5】
【0181】
表4及び5に示すように、共重合体(N−1−1)〜(N−1−17)によれば、ポリスチレン基板の表面を親水化できる。