(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記塩素ガスは、吹き込み場所1箇所当たり1〜500L/hの範囲内の供給量で吹き込むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のクロロポリシランの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0020】
本発明に係るクロロポリシランの製造方法は、流動させたケイ素粒子またはケイ素合金粒子(以下、これらを総称してケイ素原料ということがある。)に塩素ガスを反応させて、高収率で六塩化二ケイ素を得るものである。塩素化反応に際しては、所定の反応槽内でケイ素原料と塩素ガスとを反応させる。反応槽としては、温度調節機構と、反応槽内に入れたケイ素原料を流動させる流動機構と、を備えているものであれば、特に限定されるものではない。温度調節機構としては、ジャケット式や内部熱交換式、反応槽を温度調節された熱媒を含む室内に置く方法などが応用でき、熱媒は気体でも液体でもよい。
【0021】
流動機構としては、例えば、反応槽に外部から力を加える機構や、反応槽内のケイ素原料に直接力を加える機構などが挙げられる。反応槽に外部から力を加える機構としては、反応槽に振動を与えて反応槽内のケイ素原料を振動流動させる振動流動や、反応層全体を回転させて反応槽内のケイ素原料を撹拌流動させる撹拌流動などが挙げられる。撹拌流動は、例えばロータリーキルンやコニカル乾燥機などを用いて行うことができる。反応槽内のケイ素原料に直接力を加える機構としては、反応槽内に撹拌羽根を備えた機構や、反応槽内に気体や液体などの流体を流動させてその流動する力を利用して反応槽内のケイ素原料を流動させる機構などが挙げられる。撹拌羽根としては、パドル式のものなどが挙げられる。流動機構は、これらの機構のうちの一つよりなるものであっても良いし、複数の機構を組み合わせたものであっても良い。流動機構としては、好ましくは振動流動である。振動流動においては、攪拌羽根を用いた機構のような回転シール部分がないため、反応槽内のガスの漏えいが抑えられる点で好ましい。振動流動においては、例えば振動流動層反応槽を用いることができる。
【0022】
以下、流動機構の一例として振動流動を例に挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は振動流動に特に限定されるものではない。
【0023】
図1は、本発明に係るクロロポリシランの製造方法(以下、本製造方法ということがある。)において好適に用いられるクロロポリシラン製造装置の一例の概略図である。
図2は、
図1の反応槽を上から見た模式図である。
図3は、
図1の反応槽の周方向断面図である。
【0024】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るクロロポリシラン製造装置10は、ケイ素原料を入れる円筒横型の反応槽12を備えている。この反応槽12の軸方向の両端はフランジ14a,14bによって閉鎖されている。反応槽12の上部には、反応槽12内にケイ素原料などの原料を供給するための原料供給口16、反応槽12内に塩素ガスを供給するための塩素供給口18、反応槽12から気体状の反応生成物を留出させるための留出口20が設けられている。また、反応槽12の上部には、ケイ素原料の粉面を測定する粉面計54を取り付けるための粉面計取付口22、反応槽12内の温度を測定するための熱電対56を取り付けるための熱電対取付口24なども設けられている。また、反応槽12の下部には、反応残渣を排出するための排出口26が設けられている。そして、反応槽12の外側には、反応槽12の加熱・除熱を行う熱媒を循環させるためのジャケット28が設けられており、反応温度の制御が可能になっている。熱媒としては、蒸気や熱媒オイルなどを用いることができる。
【0025】
反応槽12の底部には、偏心モータ30の出力30aが連結されており、この偏心モータ30の回転により、反応槽12には周方向への円振動が与えられる。原料供給口16には、反応槽12の円振動を吸収するフレキシブルホース32を介して原料供給部34が接続されている。原料供給部34は、ケイ素原料の他、後述する銅、銅化合物などの触媒の仕込みにも使用することができ、また、これらを塩素化反応中に反応槽12内に追加する場合にも使用することができる。これらの追加を行うことで、反応槽12内に仕込んだ粉量が塩素化反応によって減少した場合に、その粉面を一定レベルに維持することができる。また、留出口20には、反応槽12の円振動を吸収するフレキシブルホース36を介して留出成分を貯留するための受器38が接続されており、受器38までの途中のラインには、中間トラップ40を介して、留出成分を凝縮させる冷却部42が設けられている。なお、留出口20には、留出口20から固形分が排出されるのを防ぐためのフィルター44が取り付けられている。
【0026】
反応槽12は、細長いほど伝熱面積が大きくとれるので、この観点からいえば細長いほど好ましいが、細長すぎると内部の溶接が難しくなって製作しにくく、また、細長くなるほど反応槽12が重くなり偏心モータ30の所要動力が増加する。したがって、反応槽12は、長さLと内径Dとの比率L/Dを1〜10の範囲内に設定することが好ましい。また、伝熱面積、製作しやすさ、動力などの観点から、L/Dを2〜5の範囲内に設定することがより好ましい。
【0027】
図1〜2に示すように、塩素供給口18は、反応槽12の上部に複数箇所設けられている。塩素供給口18には塩素ガスを反応槽12内の所定の場所に吹き込むための吹き込み管46が取り付けられている。吹き込み管46の先端は、反応槽12内の所定の場所に配置されており、この吹き込み管46の先端が塩素ガスの吹き出し口となる。吹き込み管46の基端は、反応槽12の外側に配置され、塩素ガス供給ライン48が接続されている。塩素ガス供給ライン48の流量調節バルブ50によって反応槽12内に供給する塩素ガスの流量調節が可能になっている。流量調節バルブ50は、それぞれの吹き込み管46に対応して個別に設けられており、吹き込み管46ごとに供給する塩素ガスの流量調節(供給停止も含む)が可能になっている。塩素ガス供給ライン48の上流では、各塩素ガス供給ライン48がまとめられて塩素ガス供給ヘッダー52が組まれている。
【0028】
粉面計取付口22および熱電対取付口24には、それぞれ粉面計54および熱電対56が取り付けられている。排出口26には、排出口26の開閉を行う開閉バルブ58が取り付けられている。
【0029】
反応槽12の振動は、偏心モータ30による反応槽12の円運動によって引き起こされる。この円運動により、反応槽12内に入れられたケイ素原料は、個々の粒子が跳ね回ることによってケイ素原料の粉面が上下し、粉全体のかさが増えるとともに、反応槽12内で周方向に回転流動(振動流動)する。
【0030】
図4には、反応槽12中の粒体の流動状態の一例を示す。
図4において、矢印は、反応槽12中の粒体の流動方向を示したものであり、実線Hは、静置状態における粒体の粉面を表したものである。粉面とは、粒子層と気相部との界面をいう。破線H’は、振動流動状態における粉面の位置を表したものである。Lは、粒体の膨張長さを表す。
【0031】
ここで、本製造方法では、ケイ素原料と塩素ガスとを反応させるため、クロロシランの混合物が得られる。クロロシランを一般式で示すと以下の通りである。
(式1)
Si
nCl
2n+2
ただし、式1において、nは1以上の整数である。
【0032】
クロロシランの具体例としては、SiCl
4、Si
2Cl
6、Si
3Cl
8、Si
4Cl
10、Si
5Cl
12、Si
6Cl
14などを挙げることができる。これらのうちで、生成物として好ましいものは、式1においてnが2以上の整数であるクロロポリシランであり、さらに好ましくはSi
2Cl
6、Si
3Cl
8、Si
4Cl
10であり、特に有用なものはSi
2Cl
6である。Si
2Cl
6は、生成したクロロシラン全体の中で10質量%以上であることが好ましい。より好ましくは20質量%以上である。
【0033】
本製造方法においては、振動流動させたケイ素原料の移動速度が5mm/s以上であるところに塩素ガスを吹き込むようにする。この場所では、ケイ素原料の移動速度が速いため、ケイ素原料の塩素化反応によって生じた熱が塩素ガスの吹き込み部分で蓄熱されにくくなり、吹き込み部分での余分な温度上昇を抑えることができる。これにより、反応温度を最適な温度に安定化できるため、反応生成物であるクロロシランにおける六塩化二ケイ素の選択率が向上し、六塩化二ケイ素の収率に優れたものとすることができる。
【0034】
所定の条件で振動流動させたケイ素原料の移動速度は、反応槽12内のケイ素原料の動きを観察することにより求めることができる。具体的には、例えば、フランジ14a,14bの少なくとも一方に透明材を用いて反応槽12内を観察可能にし、反応槽12内のケイ素原料の周方向の動きを観察するなどの方法を採用することができる。観察には、撮影機を用いることができる。撮影機を用いてケイ素原料の動きを撮影し、撮影された映像を解析することにより、このときのケイ素原料の移動速度を求めることができる。
【0035】
塩素ガスを吹き込む場所としては、ケイ素との反応速度及び反応熱の除去の観点から、好ましくは、振動流動させたケイ素原料の移動速度が40mm/s以上であり、より好ましくは100mm/s以上であり、特に好ましくは150mm/s以上である。一方、塩素ガス吹き込み管の摩耗防止の観点から、塩素ガスを吹き込む場所としては、振動流動させたケイ素原料の移動速度が1000mm/s以下であることが好ましい。より好ましくは500mm/s以下、さらに好ましくは300mm/s以下である。
【0036】
塩素ガスを吹き込む場所が振動流動するケイ素原料の粉面の常に外であると、塩素ガスとケイ素原料との接触が少なく、未反応の塩素ガスがそのまま留出口20から外に流出しやすくなる。そうすると、ケイ素原料の転化率が低下するだけでなく、留出成分として混合される塩素ガスの分離の労力が増える。したがって、未反応の塩素ガスが流出することはなるべく避けたい。
【0037】
また、塩素ガスを吹き込む場所がケイ素原料の粉面から深く入りすぎていると、生成した六塩化二ケイ素が粉面外に排出される前に、振動流動する粉中の高温部分で副反応を起こし、六塩化二ケイ素の選択率を低下させる可能性が生じる他、吹き込む場所が、粉中の鉛直方向に深くなれば、吹き込み口における振動流動した粉の静圧が高くなり、粉が吹き込み口から吹き込み管中に入り込む可能性が高くなる。吹き込み管中に入り込んだ粉は移動に伴う除熱が期待できないので、吹き込み管内で蓄熱して高温になり、六塩化二ケイ素の選択率の低下や吹き込み管の熱劣化を引き起こす可能性があるので、好ましくない。
【0038】
よって、本製造方法においては、例えば、振動流動させたケイ素原料の粉面から所定の深さまでに塩素ガスを吹き込むことが好ましい。この場合の粉面とは、振動流動状態におけるケイ素原料の粉面をいう。塩素ガスを吹き込む好ましい深さとしては、例えば振動流動させたケイ素原料の粉面(深さ0mm)から深さ500mmまでの範囲内を挙げることができる。この範囲内では、振動流動させたケイ素粒子またはケイ素合金粒子の移動速度が比較的速いところに塩素ガスを供給できやすいので、クロロシランにおける六塩化二ケイ素の選択率を高める効果が得られやすい。
【0039】
塩素ガスを吹き込む場所としては、より好ましくは、振動流動するケイ素原料の粉面から深さ100mmまでの範囲内、さらに好ましくはケイ素原料の粉面から深さ50mmまでの範囲内、特に好ましくは粉面から深さ30mmまでの範囲内である。また、塩素ガスを吹き込む場所としては、ケイ素原料の粉面から深さ5mm以上、さらに好ましくは10mm以上とすることにより、未反応の塩素ガスの排出を抑える効果にも優れる。
【0040】
振動流動状態におけるケイ素原料は、光の透過率やかさ密度などの諸物性が気体部分とは明らかに異なるので、粉面の位置は、目視でも容易に判別でき、光透過や超音波反射等の物理法則に基づく粉面計でも容易に検出できる。粉面計54を用いれば、振動流動中に上下する粉面の位置も検出することができる。粉面計54は、公知の粉面計を用いることができる。具体的には、例えば、測定原理によって分類されるように、静電容量式、振動式、パドル式、超音波式、放射線式、サウンジング式などの各種形式のものを挙げることができる。これらのうちでは、比較的過酷な環境下でも使用できるなどの理由で、静電容量式のものがより好ましい。静電容量式のものでは、粒体と反応槽12との間の静電容量を測定することにより粉面の位置を検出することができる。
【0041】
また、反応中の粉面の位置は、粉面計を用いて検出する以外に、温度計を用いることによっても検出することができる。したがって、クロロシラン製造装置10においては、粉面計54を備えていても良いし、備えていなくても良い。温度計を用いた粉面の検出方法としては、具体的には、複数本の温度計を使用し、反応槽12内の高さ方向の温度変化を監視する。塩素化反応中に粉が常に存在する位置では、塩素ガスとの反応により特に温度が高くなり、塩素化反応中に粉が常に存在しない位置では、塩素ガスとの反応が生じないため、温度が低い傾向があるので、粉面の位置を推定することにより粉面の位置を検出することができる。
【0042】
塩素ガスを吹き込む場所は、例えば、塩素供給口18から吹き込み管46の先端までの長さを変更することにより、変更することができる。吹き込み管46は、例えば反応槽12とは別体のものであれば、反応中であっても反応中でなくても、塩素供給口18から吹き込み管46の先端までの長さ調整が可能となる。
【0043】
なお、振動流動するケイ素原料の移動速度が速いところは、ケイ素原料の粉面に近いところだけでなく、これ以外の場所にも存在する場合がある。例えば、
図4に示す断面図では、A地点なども、ケイ素原料の移動速度が速いところである。したがって、塩素ガスを吹き込む場所としては、このA地点などであっても良い。
【0044】
反応槽12の振動条件としては、特に限定されるものではないが、振動の安定性と反応槽12の機械的強度の観点から、振動数(回転数)が900〜1500cpm(サイクル/min.)の範囲内、振幅が1〜4mmの範囲内であることが好ましい。
【0045】
塩素ガスの供給量としては、吹き込み場所1箇所当たり1〜500L/hの範囲内であることが好ましい。より好ましくは、吹き込み場所1箇所当たり10〜300L/hの範囲内、さらに好ましくは、吹き込み場所1箇所当たり25〜200L/hの範囲内、特に好ましくは吹き込み場所1箇所当たり50〜100L/hの範囲内である。吹き込み場所1箇所当たり1L/h以上であると、六塩化二ケイ素の生産性に優れる。一方、吹き込み場所1箇所当たり500L/h以下以下であると、反応によって生じた熱が塩素ガスの吹き込み部分で蓄熱されにくく、吹き込み部分での余分な温度上昇を抑えられやすい。そのため、クロロシランにおける六塩化二ケイ素の選択率を高める効果が得られやすい。なお、塩素ガスの供給量は、フローメータで流量を確認しながら流量調節バルブ50によって調節することができる。
【0046】
塩素ガスの吹き込みの角度としては、振動流動させたケイ素原料の粉面に対して30〜90度の範囲内であることが好ましい。より好ましくは45〜90度の範囲内、さらに好ましくは60〜90度の範囲内である。吹き込み角度が30〜90度の範囲内であるであると、振動流動させているケイ素原料が塩素ガスの吹き出し口に入り込むのを防止することができる。これにより、吹き出し口での反応による余分な温度上昇を抑えることができるため、クロロシランにおける六塩化二ケイ素の選択率を高める効果が得られやすい。なお、吹き込み角度は、粉面と吹き込み管46との角度により表される角度である。
【0047】
より具体的には、吹込み角度とは、粉面平面を0度、粉面に対する上側の垂線がなす角度を90度としたときに、吹き込み管46と粉面のなす角度であり、吹き込み管46が粉面と平行に設置されている場合の0度から粉面に対して垂直に立っている場合の90度の間で定義される。また、反応による粉の減少や、粉を追加した場合などの粉量の変化や振動条件の変動によって粉面の角度が変化する場合があるが、あらかじめ当該条件による粉面の角度を試験しておき、吹き込み管46の角度を調整しておいてもよく、ボールジョイント等の角度を変化させられる方法を用いて、反応開始後に反応槽12の外側から吹き込み管46の粉面に対する角度を調整することもできる。吹き込み管46の深さについても同様に、あらかじめ調整しておくほかに、反応槽12への吹き込み管46の固定機構を、スライド可動式にして粉面の変動に追従して吹き込み口の深さを調整したり、着脱可能式にして、ちょうど良い長さの吹き込み管に交換したりする方法もとることができる。
【0048】
塩素ガスの吹き込み場所は、ケイ素原料が振動流動する範囲全体に対して1箇所であっても良いし、2箇所以上であっても良いが、好ましくは2箇所以上に分けて塩素ガスを分散供給することである。塩素ガスを分散供給する場合には、吹き込み場所1箇所当たりの供給量を増やすことなく全体の供給量を増やすことができるので、クロロシランにおける六塩化二ケイ素の高い選択率を維持しながら、反応速度(クロロシランの生成速度)を向上させることができる。これにより、六塩化二ケイ素の収率を向上させることができる。
【0049】
塩素ガスの吹き込み場所を2箇所以上にする場合、隣り合う吹き込み場所間の距離は、100mm以上にすることが好ましい。より好ましくは120mm以上、さらに好ましくは140mm以上である。隣り合う吹き込み場所間の距離が近すぎると、隣りの吹き込み場所の反応熱の影響を受けて吹き込み場所の温度上昇が大きくなりやすい。これにより、クロロシランにおける六塩化二ケイ素の選択率が低下するおそれがあり、塩素ガスを分散供給することにより六塩化二ケイ素の選択率を高める効果が低下しやすくなる。一方、隣り合う吹き込み場所間の距離を500mm超にしても、塩素ガスの分散供給による上記効果の向上が格段に大きくなるものではない。したがって、隣り合う吹き込み場所間の距離は500mm以下とすれば良い。より好ましくは400mm以下、さらに好ましくは300mm以下である。
【0050】
塩素ガスは、高純度のものを希釈することなくそのまま供給しても良いが、希釈ガスを併用して混合ガスを供給することが好ましい。希釈ガスを併用することにより、塩素ガス濃度が低下するため、ケイ素原料との反応がマイルドになって反応熱による温度上昇を抑えることができる。また、希釈ガスにより反応熱を吹き込み場所から持ち出すことができるため、除熱効果も期待できる。
【0051】
希釈ガスは、ケイ素原料との反応性に乏しい(反応しない)ガスであることが好ましい。このようなガスとしては、窒素、アルゴンなどの不活性ガスや、四塩化ケイ素などの副生ガスなどを挙げることができる。これらの内では、安価で使いやすいので、窒素が好ましい。
【0052】
希釈ガスを併用する場合、希釈ガスを用いる効果に優れるなどの観点から、塩素ガス濃度は90質量%以下であることが好ましい。より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。一方、ケイ素原料との反応性を確保するなどの観点から、塩素ガス濃度は0.1質量%以上であることが好ましい。より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。
【0053】
また、本発明においては、希釈ガスや塩素ガスに水分が含まれると、生成したクロロポリシランが加水分解し、収率を下げる原因となるため、含まれる水分は少ないほうが好ましい。希釈ガスに関する好ましい水分量は10000体積ppm以下であり、より好ましくは5000体積ppm以下、特に好ましくは1500体積ppm以下である。塩素ガスに関しては、好ましい水分量は5000体積ppm以下であり、より好ましくは1000体積ppm以下、特に好ましくは500体積ppm以下である。下限は特にないが、水分を除去精製したり、設備の気密を保つためのコストを考慮すると、希釈ガスおよび塩素共に0.01体積ppb以上のものが好ましく、より好ましくは0.1体積ppb以上である。
【0054】
ケイ素原料は、ケイ化鉄、ケイ化カルシウム、ケイ化マグネシウムなどのケイ素合金粒子であっても良いが、ケイ素合金粒子を用いた場合、副生する金属塩等を除去することが必要になるので、合金ではないケイ素粒子が好ましい。
【0055】
ケイ素粒子は、Fe、Ca、Mg、Al、Ti、C、Oなどの不純物の含有量が比較的多い低純度のものも用いることができるが、塩素化工程で生じる副生成物の分離の負荷が小さいなどの観点から、比較的高純度のものが好ましい。より具体的には、例えば、ケイ素粒子のケイ素純度が95質量%以上であることが好ましい。より好ましくは97質量%以上である。ただし、ケイ素粒子の不純物には、吸着水分は含まれない。なお、ケイ素粒子の吸湿性はそれほど高くはなく、工業的に製造されたものでも吸着水分は3000質量ppm以下である。ケイ素粒子は、吸着水分を含んだ状態で用いることができるが、適当な方法で乾燥してから使用することもできる。高純度のケイ素原料としては、シリコンウェハ、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、金属ケイ素などを挙げることができる。
【0056】
ケイ素粒子の不純物濃度としては、塩素化工程で生じる副生成物の分離の負荷を抑えるなどの観点から、ケイ素以外の金属元素がケイ素粒子全体の中で2質量%以下であることが好ましい。より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。ケイ素以外の金属元素のうちAlやTiは、その塩化物がクロロシランと特に分離しにくいものであるため、ケイ素粒子中でより低濃度であることが望ましい。具体的には、ケイ素粒子全体の中で、Alがアルミニウム元素として0.5質量%以下、Tiがチタン元素として0.1質量%以下であることが好ましい。より好ましくはAlが0.3質量%以下、Tiが0.05質量%以下であり、さらに好ましくはAlが0.2質量%以下、Tiが0.01質量%以下である。AlやTi以外では、ケイ素粒子全体の中で、Feが0.2質量%以下、Caが0.5質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、Feが0.1質量%以下、Caが0.04質量%以下である。なお、不純物として含まれ得る炭素や酸素などの非金属元素は、金属ケイ素中に含まれることがあるが、これらに由来する副生成物はクロロシランとの分離が蒸留などの精製方法によって比較的容易であるため、その不純物濃度としては特に限定されるものではない。
【0057】
一方、ケイ素原料の不純物濃度の下限については、イレブンナイングレードのシリコンウェハが知られていることから、ケイ素原料としては、不純物濃度が0.01質量ppb以上のものが適用可能である。また、工業的に安価に入手しやすいなどの観点から、ケイ素原料としては、不純物濃度が1質量ppm以上のものが特に適用しやすい。
【0058】
ケイ素原料は、後述する触媒体が得られやすい、塩素化の反応が起きやすいなどの観点からいえば、比較的粒径が小さくて表面積が大きいことが好ましい。一方、ケイ素原料の粒径が小さいと、振動流動時に飛散して留出口20から排出されやすい、あるいは、留出口20のフィルター44を目詰まりさせやすいため、このような観点からいえば、ケイ素原料は、比較的粒径が大きいことが好ましい。したがって、これらのバランスを考慮すると、ケイ素原料の粒径としては、1μm〜5mmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは100μm〜3mmの範囲内である。なお、ケイ素原料の粒径は、例えばレーザー回折式粒度分布計で測定することができる。この際、体積基準で粒度分布を解析して、メジアン径を粒径の代表値として用いることができる。
【0059】
ケイ素原料の塩素化反応においては、反応の促進の観点から、触媒を用いることが好ましい。このような触媒としては、銅、銅化合物を挙げることができる。より具体的には、金属銅、ハロゲン化銅、硫酸銅、硝酸銅、炭酸銅、塩基性炭酸銅、有機酸銅などを挙げることができる。これらは、単独で用いることもできるし、2種以上を併用することもできる。銅化合物の酸化数は、特に限定されるものではなく、1価であっても良いし2価であっても良い。これらのうちでは、金属銅、塩化銅がより好ましく、金属銅がさらに好ましい。
【0060】
上記触媒は、粒状であることが好ましい。上記触媒は、後述する触媒体が得られやすいなどの観点からいえば、比較的粒径が小さくて表面積が大きいことが好ましい。一方、上記触媒の粒径が小さいと、凝集を起こしやすいため、このような観点からいえば、上記触媒は、比較的粒径が大きいことが好ましい。したがって、これらのバランスを考慮すると、上記触媒の粒径としては、1μm〜0.2mmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは10μm〜0.1mmの範囲内である。なお、上記触媒の粒径は、ケイ素原料と同様、メジアン径を粒径の代表値として用いることができる。
【0061】
上記触媒のなかで、金属銅粉としては、湿式還元銅粉やアトマイズ銅粉、スタンプ品と呼ばれる平らに押しつぶした形状など様々な製法によるものを好適に用いることができる。また、ケイ素原料との触媒活性化反応では、電解銅粉と呼ばれる樹枝状の銅粉も好適に用いることができる。
【0062】
上記触媒とケイ素原料とを接触させて所定の温度条件下で反応させることにより、ケイ素原料の塩素化反応を促進できる触媒体が得られる。触媒体を生成させる温度としては、220℃以上であることが好ましい。より好ましくは280℃以上である。一方、その温度の上限は特に限定されるものではないが、工業的な装置を考慮すると、高温に耐える装置はコストが大きくなるので、その意味での好ましい上限は400℃である。より好ましくは350℃以下である。触媒体を生成するための加熱時間としては、特に限定されるものではないが、より好ましくは10分以上24時間以内、さらに好ましくは1時間以上12時間以内である。
【0063】
触媒体を得る反応は、ケイ素酸化物や銅酸化物の発生を抑えて触媒活性の低下を抑えるなどの観点から、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中や、水素ガスなどの還元雰囲気中、あるいは、塩素ガス雰囲気中などで行うことが好ましい。触媒体を得る反応は、上記触媒およびケイ素原料を流動させながら行うことが好ましい。流動方式としては振動流動式、気層流動式、パドル式などの公知の技術を応用できるが、上記触媒およびケイ素原料は比重の大きな粒子であり、塩素化反応での気流量が少ないことから、振動流動床式がより好ましい。
【0064】
触媒体の生成は、例えばケイ素原料の塩素化反応を行ったときに反応速度が促進されていることにより確認できる。また、例えば触媒体を得る反応を行った後、未反応の触媒を抽出し、ケイ素原料中に銅成分が残っていることによっても確認できる。触媒が金属銅よりなる場合には、金属銅は硝酸に溶解するが触媒体は硝酸に溶解しないため、例えば硝酸を用いて未反応の金属銅を抽出することができる。触媒体の濃度は、ケイ素原料と触媒体との合計量のうち、好ましくは2質量ppm以上10質量%以下、さらに好ましくは5質量ppm以上5質量%以下である。
【0065】
ケイ素原料の塩素化反応は、触媒体の生成後、あるいは、触媒体の生成と同時に、塩素ガスの供給を開始することにより行うことができる。ケイ素原料の塩素化反応は、クロロシランにおける六塩化二ケイ素の選択率に優れるなどの観点から、150〜300℃の範囲内で行うことが好ましい。より好ましくは170〜270℃の範囲内、さらに好ましくは200〜250℃の範囲内である。
【0066】
塩素化反応の温度は、熱媒を用いて調整することができる。例えば反応初期には、所定の反応温度まで温度を上げるため、熱媒の温度を高めて加熱を行うと良い。塩素化反応が進むと、反応熱による温度上昇を考慮しながら、加熱または冷却を行って所定の反応温度を維持すると良い。塩素化反応は、常圧下で行うこともできるし、加圧下あるいは減圧下で行うこともできる。加圧下では、塩素化反応の反応性がより高まる。
【0067】
ケイ素原料の塩素化反応において、塩素ガスは、連続的に供給しても良いし、間欠的に供給しても良い。また、ケイ素原料は、最初に所定量仕込んで反応終了まで追加供給しないようにしても良いし、反応途中で逐次供給して塩素化反応を連続的に行うこともできる。
【0068】
塩素化反応に用いるクロロポリシラン製造装置10では、反応槽12や吹き込み管46に、SUS304やSUS316などを用いることができる。ただし、吹き込み管46などの常時塩素ガスに接触する部分は、塩素ガスによる腐食に耐える材質にすることが好ましい。耐食性材料としては、金属系材料のハステロイ(商品名)、インコネル(商品名)等の耐食性合金や、窯業系材料の炭化ケイ素(シリコンカーバイド)、アルミナ、ジルコニア、ムライト、石英ガラスなどを挙げることができる。より好ましいのは耐食性と耐熱性に優れる窯業系材料であり、中でも特に好ましいのは耐摩耗性にも優れる炭化ケイ素である。
【0069】
吹き込み管46の口径は、ケイ素原料によって閉塞されにくいなどの観点から、内径1mm以上であることが好ましく、粉の入り込みを防ぐ意味で内径30mm以下が好ましい。より好ましくは内径が2〜10mmの範囲内である。また、吹き込み管46の厚みとしては、耐食性に優れるなどの観点から、1mm以上であることが好ましい。
【0070】
なお、上記のクロロポリシラン製造装置10においては、吹き込み管46の先端は反応槽12内で分岐されていない構造のものであるが、例えば
図5(a)に示すように、先端が反応槽12内で分岐されている吹き込み管60であっても良い。また、
図5(b)に示すように、吹き込み管46に代えて、複数の吹き出し口62aを備えた筒体62によって塩素ガスを分散供給するようにしても良い。
【実施例】
【0071】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0072】
<クロロポリシラン製造装置の構成>
図1に示す構成のクロロポリシラン製造装置とした。反応槽には、円筒横型の反応槽(25L、内径250mm×長さ600mm)を用いた。反応槽は周方向に円振動が可能である。反応槽の円振動によりケイ素原料が振動流動される。反応温度の制御は、ジャケット内を循環する熱媒により行われる。ケイ素原料は原料供給口から供給され、塩素ガスは吹き込み管から供給される。反応生成物としてクロロポリシランを含むクロロシランが留出口から留出され、冷却部で凝縮されて受器に貯められる。反応槽の一方のフランジには透明材を用い、反応槽内部が観察できるようにした。なお、粉面は、吹き込み管の横に吹き込み管と平行方向に設置した静電容量式粉面計により検出した。これにより、吹き込み管の長さと粉面までの距離との差から吹き込み場所の深さを算出することができる。
【0073】
<ケイ素粒子の移動速度の測定>
反応槽内にケイ素粒子(エルケム・ジャパン社製「Silgrain HQ」、(Silgrainはエルケム社の登録商標)、Si純度99.7質量%、メジアン粒径0.2〜0.8mm)24kgを入れ、常温下、所定の振幅、所定の振動数にて反応槽内のケイ素粒子を振動流動させた。次いで、透明フランジ側から撮影機を用いてケイ素粒子の動きを撮影し、撮影された映像を解析することにより、このときのケイ素粒子の移動速度を求めた。ケイ素粒子の移動速度は、
図6に示すように、中心O(0,0)、粉面H
1(0,60)、左側面A(−70,−85)、右側面B(85,0)のそれぞれの位置について測定した。各位置は、中心からの位置を座標で表したものである(単位はmm)。測定結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
表1によれば、粉面や左側面での移動速度が速く、特に粉面での移動速度が最も速かった。反対に中心や右側面での移動速度が非常に遅かった。中心(粒体層内部)の粒子の移動速度は、粉面に対して1/4〜1/8程度の移動速度であった。なお、静置状態に対する粉面の膨張長さLは13mmであった。
【0076】
<吹き込み場所の検討1>
次に、塩素ガスの吹き込み場所の検討を行った。具体的には、上記のケイ素粒子24kgと電解銅粉(触媒)1kgとを反応槽内に入れ、所定の条件で反応槽を振動させ、吹き込み場所が粉面から深さ10mm、粉面との角度が90度になるように吹き込み管をセットして塩素ガスを供給して、六塩化二ケイ素の選択率を求めた。その結果を表2に示す。その他の反応条件は以下の通りである。なお、塩素化反応を行うに際し、事前に触媒体の生成を行った。触媒体の生成は、塩素ガスを吹き込む前に、吹き込み管から窒素を1L/hで吹き込みながら、反応槽の熱媒温度を320℃に設定して3時間加熱し、反応槽を1500cpm振幅3mmで振動させて行った。その後、熱媒温度を所定の反応温度に設定し、塩素ガスの供給を開始し、開始後1時間供給したときまでに得られた留出成分を全量集めて生成液として取り出した。六塩化二ケイ素(HCD)の選択率は、留出成分中のクロロシラン全体に占める六塩化二ケイ素(HCD)の割合(質量%(wt%))により算出した。留出成分中のクロロシランの分析は、ガスクロマトグラフを用いて行った。未反応塩素の流出は認められなかった。以下、同様である。
塩素ガス供給場所:粉面から深さ10mm
塩素ガス濃度:50vol%(窒素で希釈)
塩素ガス供給量:50L/h
塩素ガス供給時間:1時間
吹き込み管の本数:1本
反応温度(熱媒温度):220℃
【0077】
【表2】
【0078】
表2によれば、ケイ素粒子の移動速度が5mm/s以上のところに塩素ガスを供給すれば、10wt%以上の選択率で六塩化二ケイ素(HCD)を得ることができるが、40mm/s以上のところに塩素ガスを供給した場合、選択率がさらに高くなり、100mm/s以上では著しく高くなることが確認できた。
【0079】
<吹き込み場所の検討2>
上記のケイ素粒子24kgと電解銅粉(触媒)1kgとを反応槽内に入れ、塩素ガスの供給場所の深さが異なってもケイ素粒子の移動速度が同じになるように振動条件を調整して反応槽を振動させ、ケイ素粒子の粉面から所定の深さ(0mm〜120mm)に塩素ガスを供給して、六塩化二ケイ素の選択率を求めた。その結果を表3に示す。その他の反応条件は以下の通りである。なお、塩素化反応を行うに際し、<吹き込み場所の検討1>と同様にして、事前に触媒体の生成を行った。
塩素ガス濃度:50vol%(窒素で希釈)
塩素ガス供給量:50L/h
塩素ガス供給時間:1時間
吹き込み管の本数:1本
反応温度(熱媒温度):220℃
ケイ素粒子の移動速度:各深さ毎に、10〜20mm/sの範囲内になるように振動条件を調整した。
【0080】
【表3】
【0081】
表3によれば、塩素ガスの供給場所が振動流動するケイ素粒子の粉面から内部に向かって深くなるにつれてHCDの選択率は下がる傾向があり、深さが0〜5mmの場合は、HCDの選択率は良好だが未反応塩素が流出することが分かった。この結果から、吹き込み場所を所定の深さに設定することが好ましいことがわかる。
【0082】
<反応温度の検討>
次に、反応温度の検討を行った。具体的には、ジャケットに流す熱媒温度を各温度(200℃、220℃、250℃)に設定して、反応温度の影響を調べた。その結果を表4に示す。その他の反応条件は以下の通りである。なお、塩素化反応を行うに際し、<吹き込み場所の検討1>と同様にして、事前に触媒体の生成を行った。反応ガスの組成は、留出成分をガスクロマトグラフで分析することにより求めた。また、HCD生成速度は、物質収支により求めた。
ケイ素粒子:24kg
電解銅粉(触媒):1kg
塩素ガス供給場所:粉面からの深さ10mm
塩素ガス供給量:250L/h
塩素ガス濃度:50vol%(窒素で希釈)
塩素ガス供給時間:1時間
吹き込み管の本数:1本
振動数:1500cpm
振幅:3mm
【0083】
【表4】
【0084】
表4によれば、反応温度が高いと、HCDよりもSiCl
4ができやすいことが分かった。すなわち、反応温度が高くなると、クロロシランにおけるHCDの選択率が低下する傾向があることが分かった。このことから、塩素ガスの吹き込み部分での余分な温度上昇があると、クロロシランにおけるHCDの選択率が低下するため、HCDの選択率を向上させるには、このような余分な温度上昇を抑えることが必要であることが確認できた。なお、反応温度としては、220℃前後が好ましいことが分かった。
【0085】
<塩素ガス供給量の検討>
次に、吹き込み管1本当たり(吹き込み場所1箇所当たり)の塩素ガス供給量の検討を行った。このときの吹き込み管の本数は1本とした。その結果を表5に示す。その他の反応条件は以下の通りである。なお、塩素化反応を行うに際し、<吹き込み場所の検討1>と同様にして、事前に触媒体の生成を行った。
ケイ素粒子:24kg
電解銅粉(触媒):1kg
塩素ガス供給場所:粉面からの深さ10mm
塩素ガス濃度:50vol%(窒素で希釈)
塩素ガス供給時間:1時間
反応温度(熱媒温度):220℃
振動数:1500cpm
振幅:3mm
【0086】
【表5】
【0087】
表5によれば、塩素ガス供給量を増加させるとHCD選択率が低下する傾向があることが分かった。これは、塩素ガス供給量が増加すると反応熱が増加し、反応が起きる吹き込み管の先端付近の温度が上昇したためと推察される。すなわち、反応温度が上昇すると、表4に示すようにHCDよりもSiCl
4が生成しやすくなり、また、HCDの分解も促進されるため、HCD選択率が低下したものと推察される。この結果から、吹き込み場所1箇所当たりの塩素ガス供給量が少ないほうがHCD選択率に優れることが分かった。すなわち、この結果から、塩素ガス供給量を所定の量に設定することが好ましいことがわかる。
【0088】
<吹き込み管の本数の検討1>
次に、吹き込み管の本数の検討を行った。具体的には、吹き込み管1本当たりの供給量を一定にして吹き込み管の本数を各本数(1本、2本)とした実験を行った。この場合、全体の塩素ガス供給量が異なる。その結果を表6に示す。その他の反応条件は以下の通りである。なお、塩素化反応を行うに際し、<吹き込み場所の検討1>と同様にして、事前に触媒体の生成を行った。隣り合う吹き込み管間距離は480mmとした。
ケイ素粒子:24kg
電解銅粉(触媒):1kg
塩素ガス供給場所:粉面からの深さ10mm
塩素ガス濃度:50vol%(窒素で希釈)
塩素ガス供給時間:1時間
反応温度(熱媒温度):250℃
振動数:1500cpm
振幅:3mm
【0089】
【表6】
【0090】
表6によれば、吹き込み管1本当たりの供給量が一定であれば、吹き込み管の本数を増やすことにより、HCD選択率を低下させることなく全体の塩素ガス供給量を増加させることができることが分かった。そして、全体の塩素ガス供給量を増加させることにより、HCD生成速度を向上できることが分かった。この結果から、塩素ガスを分散供給させることにより、HCD選択率を維持しながらHCDの生産量を増加させることが可能であることが分かった。
【0091】
<吹き込み管の本数の検討2>
また、全体の塩素ガス供給量を一定にして吹き込み管の本数を各本数(1本、2本、3本、4本)とした実験を行った。この場合、吹き込み管1本当たりの供給量が異なる。その結果を表7に示す。その他の反応条件は以下の通りである。なお、塩素化反応を行うに際し、<吹き込み場所の検討1>と同様にして、事前に触媒体の生成を行った。隣り合う吹き込み管間距離は140mmとした。
ケイ素粒子:24kg
電解銅粉(触媒):1kg
塩素ガス供給場所:粉面からの深さ10mm
塩素ガス濃度:50vol%(窒素で希釈)
塩素ガス供給時間:1時間
反応温度(熱媒温度):200℃
振動数:1500cpm
振幅:3mm
【0092】
【表7】
【0093】
表7によれば、全体の塩素ガス供給量が一定の場合、吹き込み管の本数を増やすことにより、HCD選択率を向上させることができることが分かった。この結果から、塩素ガスを分散供給することにより、HCD選択率を向上させることが可能であることが分かった。
【0094】
<塩素ガス濃度の検討>
次に、塩素ガス濃度の検討を行った。具体的には、塩素ガスを窒素ガスで希釈して各濃度(50vol%、45vol%)とした。その結果を表8に示す。その他の反応条件は以下の通りである。なお、塩素化反応を行うに際し、<吹き込み場所の検討1>と同様にして、事前に触媒体の生成を行った。排ガス量は、水吸収液及び水酸化ナトリウム水溶液の重量変化により測定(計算)した。また、隣り合う吹き込み管間距離は140mmとした。
ケイ素粒子:24kg
電解銅粉(触媒):1kg
塩素ガス供給場所:粉面からの深さ10mm
塩素ガス供給量:250L/h
塩素ガス供給時間:1時間
吹き込み管の本数:4本
反応温度(熱媒温度):220℃
振動数:1500cpm
振幅:3mm
【0095】
【表8】
【0096】
表8によれば、塩素ガス濃度を50vol%から45vol%に低下させることにより、HCD選択率の向上が確認された。これは、塩素ガス濃度の低下に伴ってケイ素原料との反応がマイルドになって反応熱による局部的な温度上昇が抑えられたことと共に、窒素ガスの量が増加することにより、窒素ガスによる熱の持ち出しが増え、吹き込み管の先端付近の温度上昇が抑えられた効果も加わったためと推察される。しかしながら、希釈ガスの量が増えたため、留出成分を凝縮させる冷却部で凝縮されずに通過するガスの量が増え、排ガス量が1.5倍に増加した。
【0097】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0098】
例えば上記実施形態においては、好ましい例として円筒横型の反応槽12を用いることが示されているが、これは、ケイ素原料などの原料粒子の振動による動きを円筒縦型よりも激しくすることができるからであり、本発明においては、円筒縦型の反応槽を用いて塩素化反応を行っても良い。また、上記実施形態においては、反応槽12の軸方向の両端はフランジ14a,14bによって閉鎖されることが示されているが、反応槽のメンテナンス性を確保する観点からいえば、反応槽12の軸方向の端部の少なくとも一方をフランジとし、開閉可能な形式とすれば良い。また、上記実施形態においては、伝熱効率に優れるなどの観点から、反応槽の加熱方法としてジャケット式を採用し、ジャケット28を備えることが好ましい例として示されているが、反応槽の加熱方法としては、ジャケット式に代えて電気ヒーターを用いた方式などであっても良い。また、上記実施形態においては、反応槽12の底部に偏心モータ30の出力30aが連結されている構成が示されているが、反応槽12の底部に偏心モータを直付して偏心モータもろとも振動する構成であっても良い。