特許第5871011号(P5871011)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JSR株式会社の特許一覧

特許5871011変性共役ジエン系重合体及びその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871011
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】変性共役ジエン系重合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/42 20060101AFI20160216BHJP
   C08F 36/04 20060101ALI20160216BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20160216BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20160216BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20160216BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   C08F8/42
   C08F36/04
   C08L15/00
   C08K3/04
   C08K3/36
   B60C1/00 A
   B60C1/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2013-550300(P2013-550300)
(86)(22)【出願日】2012年12月19日
(86)【国際出願番号】JP2012082885
(87)【国際公開番号】WO2013094629
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年1月6日
(31)【優先権主張番号】特願2011-282517(P2011-282517)
(32)【優先日】2011年12月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【弁理士】
【氏名又は名称】村地 俊弥
(72)【発明者】
【氏名】森田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 毅
(72)【発明者】
【氏名】谷 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】野坂 直矢
(72)【発明者】
【氏名】田中 了司
(72)【発明者】
【氏名】岡田 公二
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/125698(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/049180(WO,A1)
【文献】 特表2011−514421(JP,A)
【文献】 特開2008−285558(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/044252(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 8/00−8/50
36/00−36/22
C08K 3/00−3/40
C08L 15/00−15/02
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)〜(2)のいずれかの構造を有する化合物とアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の存在下で、共役ジエン系化合物を含む単量体、または共役ジエン系化合物と芳香族ビニル化合物を含む単量体を重合して、共役ジエン系重合体を得る重合工程と、
上記共役ジエン系重合体と下記の一般式(3)の構造を有する化合物を反応させて、変性共役ジエン系重合体を得る変性工程と、
上記変性共役ジエン系重合体とオニウム生成剤を反応させて、末端の一部もしくは全部をオニウムにしてなる、変性共役ジエン系重合体を得る工程を含む、変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【化1】
【化2】
(一般式(1)〜(2)中、R1はヒドロカルビレン基であり、Qは、
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
又は
【化7】
である。ここで、A1は、活性水素原子を有さず、N、P、O、S、Si及びSnからなる群より選ばれる1種以上の原子を含んでもよい置換もしくは非置換のヒドロカルビル基もしくはヒドロカルビレン基である。A2は、ヒドロカルビル基もしくはヒドロカルビレン基である。A1とA2は結合して環を形成していてもよい。式中に複数存在するR1及びQは、各々、同じでも異なってもよい。)
【化8】
(一般式(3)中、Eは、N、P及びSからなる群より選ばれる1種以上の原子を有し、活性水素原子を有さず、R4と上記N、P又はSのいずれかの原子で結合している官能基である。Eの上記N、P及びSからなる群より選ばれる1種以上の原子の一部または全部が、「−SiH3」の構造中の3つのH(水素原子)が各々、ヒドロカルビル基によって置換されているヒドロカルビルシリル基で保護されていてもよい。R2及びR3はヒドロカルビル基である。R4はヒドロカルビレン基である。nは0〜2の整数である。式中、複数存在するR2及びR3は、各々、同じでも異なってもよい。)
【請求項2】
下記一般式(4)〜(5)のいずれかの構造を有する化合物の存在下で、共役ジエン系化合物を含む単量体、または共役ジエン系化合物と芳香族ビニル化合物を含む単量体を重合して、共役ジエン系重合体を得る重合工程と、
上記共役ジエン系重合体と下記の一般式(3)の構造を有する化合物を反応させて、変性共役ジエン系重合体を得る変性工程と、
上記変性共役ジエン系重合体とオニウム生成剤を反応させて、末端の一部もしくは全部をオニウムにしてなる、変性共役ジエン系重合体を得る工程を含む、変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【化9】
【化10】
(一般式(4)〜(5)中、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子である。R1はヒドロカルビレン基である。Qは、
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
又は
【化15】
である。ここで、A1は、活性水素原子を有さず、N、P、O、S、Si及びSnからなる群より選ばれる1種以上の原子を含んでもよい置換もしくは非置換のヒドロカルビル基もしくはヒドロカルビレン基である。A2は、ヒドロカルビル基もしくはヒドロカルビレン基である。A1とA2は結合して環を形成していてもよい。式中に複数存在するR1及びQは、各々、同じでも異なってもよい。)
【化16】
(一般式(3)中、Eは、N、P及びSからなる群より選ばれる1種以上の原子を有し、活性水素原子を有さず、R4と上記N、P又はSのいずれかの原子で結合している官能基である。Eの上記N、P及びSからなる群より選ばれる1種以上の原子の一部または全部が、「−SiH3」の構造中の3つのH(水素原子)が各々、ヒドロカルビル基によって置換されているヒドロカルビルシリル基で保護されていてもよい。R2及びR3はヒドロカルビル基である。R4はヒドロカルビレン基である。nは0〜2の整数である。式中、複数存在するR2及びR3は、各々、同じでも異なってもよい。)
【請求項3】
一方の末端に下記の一般式(6)〜(7)のいずれかの構造を有し、かつ、他方の末端に下記の一般式(8)の構造を有する変性共役ジエン系重合体の、末端の一部もしくは全部オニウム化した、変性共役ジエン系重合体。
【化17】
【化18】
(一般式(6)〜(7)中、R1はヒドロカルビレン基であり、Qは、
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
又は
【化23】
である。ここで、A1は、活性水素原子を有さず、N、P、O、S、Si及びSnからなる群より選ばれる1種以上の原子を含んでもよい置換もしくは非置換のヒドロカルビル基もしくはヒドロカルビレン基である。A2は、ヒドロカルビル基もしくはヒドロカルビレン基である。A1とA2は結合して環を形成していてもよい。式中に複数存在するR1及びQは、各々、同じでも異なってもよい。)
【化24】
(一般式(8)中、Eは、N、P及びSからなる群より選ばれる1種以上の原子を有し、活性水素を有さず、R4と上記N、P又はSのいずれかの原子で結合している官能基である。Eの上記N、P及びSからなる群より選ばれる1種以上の原子の一部または全部が、「−SiH3」の構造中の3つのH(水素原子)が各々、ヒドロカルビル基によって置換されているヒドロカルビルシリル基で保護されていてもよい。R2はヒドロカルビル基である。R4はヒドロカルビレン基である。R5は水素原子またはヒドロカルビル基である。nは0〜2の整数である。式中、複数存在するR2及びR5は、各々、同じでも異なってもよい。)
【請求項4】
請求項3に記載の変性共役ジエン系重合体と、カーボンブラック及び/又はシリカと、架橋剤を含む重合体組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の重合体組成物を架橋させてなる架橋重合体。
【請求項6】
請求項5に記載の架橋重合体を、少なくともトレッドまたはサイドウォールの材料として用いてなるタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性共役ジエン系重合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車タイヤ用ゴムとして、乳化重合法によって得られる共役ジエン系ゴム(例えば、スチレン−ブタジエン共重合体)が知られている。近年、自動車の低燃費性能の向上が期待される中で、優れた低燃費性能を実現しうる種々の共役ジエン系ゴムが提案されている。
一例として、(1)共役ジオレフィンあるいは共役ジオレフィンと芳香族ビニル化合物の(共)重合ゴムであって、(2)(共)重合体鎖に結合した第1級アミノ基とアルコキシシリル基とを有し、かつ(3)(共)重合体鎖中に2官能性以上のモノマーが共重合されているか、および/または、2官能性以上のカップリング剤で(共)重合体鎖の少なくとも一部がカップリングされている、ことを特徴とする共役ジオレフィン(共)重合ゴムが提案されている(特許文献1)。
他の例として、アルカリ金属触媒の存在下、炭化水素溶媒中で、共役ジエンモノマー、又は、共役ジエンモノマーと芳香族ビニルモノマーとを重合させ、アルカリ金属末端を有する活性重合体を得る工程1と、該活性重合体と、特定の式で表される化合物とを反応させて、変性重合体ゴムを得る工程2から得られる、変性ジエン系重合体ゴムが提案されている(特許文献2)。
また、シリカ及びカーボンブラックとの相互作用を高め、破壊特性、耐摩耗性、低発熱性を向上させることができる変性重合体を製造する方法として、有機金属の活性部位を分子中に有する重合体の該活性部位にヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させる第一次変性反応を行い、その後さらにヒドロカルビルオキシシリル基同士の縮合反応を経由して、ヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させる第二次変性反応を行う方法が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−18795号公報
【特許文献2】特開2005−290355号公報
【特許文献3】WO 03/048216 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のとおり、自動車の優れた低燃費性能を実現しうる種々の共役ジエン系ゴムが提案されている。しかし、ガソリンの価格高騰等の経済事情、及び、二酸化炭素の排出による地球温暖化等の環境事情下において、自動車のさらなる低燃費化が期待されている。
そこで、本発明は、自動車のタイヤ(特に、トレッド)等の用途に用いることができ、自動車等の低燃費性能を高めることができる架橋重合体の原料として用いうる変性共役ジエン系重合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の化合物を用いて共役ジエン系重合体を得た後、該共役ジエン系重合体を変性して変性共役ジエン系重合体を得て、次いで、該変性共役ジエン系重合体とオニウム生成剤を反応させて、末端の一部もしくは全部をオニウムにしてなる、変性共役ジエン系重合体を得て、この変性共役ジエン系重合体を原料として用いて、架橋重合体を製造した場合に、この架橋重合体が、低ヒステリシスロス特性(70℃tanδ)、ウェットスキッド抵抗性(0℃tanδ)、耐摩耗性等の物性に優れており、自動車のタイヤ等の用途において、優れた低燃費性能を与えうることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[]を提供するものである。
[1] 下記の一般式(1)〜(2)のいずれかの構造を有する化合物とアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の存在下で、共役ジエン系化合物を含む単量体、または共役ジエン系化合物と芳香族ビニル化合物を含む単量体を重合して、共役ジエン系重合体を得る重合工程と、
上記共役ジエン系重合体と下記の一般式(3)の構造を有する化合物を反応させて、変性共役ジエン系重合体を得る変性工程と、
上記変性共役ジエン系重合体とオニウム生成剤を反応させて、末端の一部もしくは全部をオニウムにしてなる、変性共役ジエン系重合体を得る工程を含む、変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【化1】
【化2】
(一般式(1)〜(2)中、R1はヒドロカルビレン基であり、Qは、
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
又は
【化7】
である。ここで、A1は、活性水素原子を有さず、N、P、O、S、Si及びSnからなる群より選ばれる1種以上の原子を含んでもよい置換もしくは非置換のヒドロカルビル基もしくはヒドロカルビレン基である。A2は、ヒドロカルビル基もしくはヒドロカルビレン基である。A1とA2は結合して環を形成していてもよい。式中に複数存在するR1及びQは、各々、同じでも異なってもよい。)
【化8】
(一般式(3)中、Eは、N、P及びSからなる群より選ばれる1種以上の原子を有し、活性水素原子を有さず、R4と上記N、P又はSのいずれかの原子で結合している官能基である。Eの上記N、P及びSからなる群より選ばれる1種以上の原子の一部または全部が、「−SiH3」の構造中の3つのH(水素原子)が各々、ヒドロカルビル基によって置換されているヒドロカルビルシリル基で保護されていてもよい。R2及びR3はヒドロカルビル基である。R4はヒドロカルビレン基である。nは0〜2の整数である。式中、複数存在するR2及びR3は、各々、同じでも異なってもよい。)
【0007】
[2] 下記一般式(4)〜(5)のいずれかの構造を有する化合物の存在下で、共役ジエン系化合物を含む単量体、または共役ジエン系化合物と芳香族ビニル化合物を含む単量体を重合して、共役ジエン系重合体を得る重合工程と、
上記共役ジエン系重合体と下記の一般式(3)の構造を有する化合物を反応させて、変性共役ジエン系重合体を得る変性工程と、
上記変性共役ジエン系重合体とオニウム生成剤を反応させて、末端の一部もしくは全部をオニウムにしてなる、変性共役ジエン系重合体を得る工程を含む、変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【化9】
【化10】
(一般式(4)〜(5)中、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子である。R1はヒドロカルビレン基である。Qは、
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
又は
【化15】
である。ここで、A1は、活性水素原子を有さず、N、P、O、S、Si及びSnからなる群より選ばれる1種以上の原子を含んでもよい置換もしくは非置換のヒドロカルビル基もしくはヒドロカルビレン基である。A2は、ヒドロカルビル基もしくはヒドロカルビレン基である。A1とA2は結合して環を形成していてもよい。式中に複数存在するR1及びQは、各々、同じでも異なってもよい。)
【化16】
(一般式(3)中、Eは、N、P及びSからなる群より選ばれる1種以上の原子を有し、活性水素原子を有さず、R4と上記N、P又はSのいずれかの原子で結合している官能基である。Eの上記N、P及びSからなる群より選ばれる1種以上の原子の一部または全部が、「−SiH3」の構造中の3つのH(水素原子)が各々、ヒドロカルビル基によって置換されているヒドロカルビルシリル基で保護されていてもよい。R2及びR3はヒドロカルビル基である。R4はヒドロカルビレン基である。nは0〜2の整数である。式中、複数存在するR2及びR3は、各々、同じでも異なってもよい。)
【0008】
[3] 一方の末端に下記の一般式(6)〜(7)のいずれかの構造を有し、かつ、他方の末端に下記の一般式(8)の構造を有する変性共役ジエン系重合体の、末端の一部もしくは全部オニウム化した、変性共役ジエン系重合体。
【化17】
【化18】
(一般式(6)〜(7)中、R1はヒドロカルビレン基であり、Qは、
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
又は
【化23】
である。ここで、A1は、活性水素原子を有さず、N、P、O、S、Si及びSnからなる群より選ばれる1種以上の原子を含んでもよい置換もしくは非置換のヒドロカルビル基もしくはヒドロカルビレン基である。A2は、ヒドロカルビル基もしくはヒドロカルビレン基である。A1とA2は結合して環を形成していてもよい。式中に複数存在するR1及びQは、各々、同じでも異なってもよい。)
【化24】
(一般式(8)中、Eは、N、P及びSからなる群より選ばれる1種以上の原子を有し、活性水素を有さず、R4と上記N、P又はSのいずれかの原子で結合している官能基である。Eの上記N、P及びSからなる群より選ばれる1種以上の原子の一部または全部が、「−SiH3」の構造中の3つのH(水素原子)が各々、ヒドロカルビル基によって置換されているヒドロカルビルシリル基で保護されていてもよい。R2はヒドロカルビル基である。R4はヒドロカルビレン基である。R5は水素原子またはヒドロカルビル基である。nは0〜2の整数である。式中、複数存在するR2及びR5は、各々、同じでも異なってもよい。)
【0009】
] 前記[3]に記載の変性共役ジエン系重合体と、カーボンブラック及び/又はシリカと、架橋剤を含む重合体組成物。
] 前記[]に記載の重合体組成物を架橋させてなる架橋重合体。
] 前記[]に記載の架橋重合体を、少なくともトレッドまたはサイドウォールの材料として用いてなるタイヤ。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、低ヒステリシスロス特性(70℃tanδ)、ウェットスキッド抵抗性(0℃tanδ)、及び耐摩耗性等に優れた架橋重合体を製造することが可能な、変性共役ジエン系重合体を得ることができる。
上記架橋重合体は、自動車のタイヤ(特にトレッド)等の材料として用いた場合に、優れた低燃費性能を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[共役ジエン系重合体を得る重合工程]
本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、下記の一般式(1)〜(2)のいずれかの構造を有する化合物とアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の存在下で、共役ジエン系化合物を含む単量体、または共役ジエン系化合物と芳香族ビニル化合物を含む単量体を重合して、共役ジエン系重合体を得る重合工程を含む。
【化25】
【化26】
(一般式(1)〜(2)中、R1はヒドロカルビレン基であり、Qは、
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
又は
【化31】
である。ここで、A1は、活性水素原子を有さず、N、P、O、S、Si及びSnからなる群より選ばれる1種以上の原子を含んでもよい置換もしくは非置換のヒドロカルビル基もしくはヒドロカルビレン基である。A2は、ヒドロカルビル基もしくはヒドロカルビレン基である。A1とA2は結合して環を形成していてもよい。式中に複数存在するR1及びQは、各々、同じでも異なってもよい。)
一般式(1)及び(2)中のA1における「N、P、O、S、Si及びSnからなる群より選ばれる1種以上の原子を含んでもよい置換もしくは非置換の」とは、ヒドロカルビル基もしくはヒドロカルビレン基中の炭素原子の一部が、N、P、O、S、SiまたはSnによって置換されていてもよいし、置換されていなくてもよいことを表す。
【0012】
一般式(1)及び(2)中のR1(ヒドロカルビレン基)としては、例えば、メチレン基、アルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基等が挙げられる。該ヒドロカルビレン基の炭素数は、特に限定されないが、例えば、1〜10である。
一般式(1)及び(2)中のQに含まれるA1で表されるヒドロカルビル基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。該ヒドロカルビル基の炭素数は、特に限定されないが、例えば、1〜10である。
一般式(1)及び(2)中のQに含まれるA1で表されるヒドロカルビレン基としては、例えば、メチレン基、アルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基等が挙げられる。該ヒドロカルビレン基の炭素数は、特に限定されないが、例えば、1〜10である。
一般式(1)及び(2)中のQに含まれるA2で表されるヒドロカルビル基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。該ヒドロカルビル基の炭素数は、好ましくは1〜6である。
一般式(1)及び(2)中のQに含まれるA2で表されるヒドロカルビレン基としては、例えば、メチレン基、アルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基等が挙げられる。該ヒドロカルビレン基の炭素数は、好ましくは1〜6である。
【0013】
上記共役ジエン系重合体は、例えば、上記の一般式(1)〜(2)のいずれかの構造を有する化合物と、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物(例えば、アルキルリチウム等のリチウム化合物)を、単量体及び溶媒等を含む重合溶液の中に各々供給して、これらの化合物を混合させることによって得ることができる。また、上記の一般式(1)〜(2)のいずれかの構造を有する化合物と、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物(例えば、アルキルリチウム等のリチウム化合物)を、重合溶液の中に供給する前に、予め混合してもよい。すなわち、上記共役ジエン系重合体は、重合系中(in−situ)で、特定の二級アミンとリチウム化合物等のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を添加して調製することができ、あるいは、特定の二級アミンとリチウム化合物等のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物とを予め調製したものを、重合系中に添加することができる。
なお、上記の「一般式(1)〜(2)のいずれかの構造を有する化合物」としては、一般式(1)と(2)のいずれか一方もしくは両方の化合物の中で、2種以上の化合物を組み合わせて用いることができる。上記の「アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物」としては、アルカリ金属化合物とアルカリ土類金属化合物のいずれか一方もしくは両方の化合物の中で、2種以上の化合物を組み合わせて用いることができる。
上記の一般式(1)〜(2)のいずれかの構造を有する化合物とアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物との混合モル比(アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物/一般式(1)〜(2)のいずれかの構造を有する化合物)は、好ましくは0.1〜1.8、より好ましくは0.8〜1.6、特に好ましくは1.0〜1.4である。該混合モル比が1.8を超えるとムーニー粘度が大きくなり、練りにくくなる場合がある。該混合モル比が0.1未満であるとムーニー粘度が小さくなり、架橋重合体の強度が低下する場合がある。
【0014】
上記の一般式(1)〜(2)のいずれかの構造を有する化合物と、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物(例えば、アルキルリチウム等のリチウム化合物)を混合することで、下記式(4)〜(5)で示される化合物が生成する。下記式(4)〜(5)で示される化合物は、重合開始剤として機能する。
【0015】
【化32】
【化33】
(一般式(4)〜(5)中、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子である。R1及びQは、一般式(1)〜(2)の括弧書きで説明したとおりである。)
【0016】
本発明において、一般式(1)〜(2)のいずれかの構造を有する化合物の使用量は、好ましくはモノマー100gあたり、0.2〜20ミリモルである。
アルカリ金属化合物におけるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属化合物におけるアルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
中でも、リチウムが特に好ましい。本明細書中、以下、リチウムを例にして説明する。なお、以下の説明中、リチウムに代えて、他のアルカリ金属、またはアルカリ土類金属を用いた実施形態も可能である。
本発明で使用可能なアルカリ金属化合物であるアルキルリチウムとしては、例えば、炭素数が1〜4のアルキルリチウムが挙げられる。
炭素数が1〜4であるアルキルリチウムの例としては、メチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム等が挙げられる。
【0017】
本発明で用いられる共役ジエン系化合物(共役ジエン系モノマー)の例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン等が挙げられる。中でも、好ましくは1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等である。
これらの化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの共役ジエン系化合物は、活性リチウム末端を有する共役ジエン系重合体を得ることが可能であるという観点から、いずれも同様の作用を有するものであり、後述の実施例に記載されていないものであっても、本発明において使用することが可能である。
【0018】
本発明で用いられる芳香族ビニル化合物(芳香族ビニル系モノマー)の例としては、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、tert−ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4−ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N−ジメチルアミノエチルスチレン、N,N−ジメチルアミノメチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2−t−ブチルスチレン、3−t−ブチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ジフェニルエチレン、3級アミノ基含有ジフェニルエチレン等が挙げられる。中でも好ましくはスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン等である。
これらの化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの芳香族ビニル化合物は、活性リチウム末端を有する共役ジエン系重合体を得ることが可能であるという観点から、いずれも同様の作用を有するものであり、後述の実施例に記載されていないものであっても、本発明において使用することが可能である。
【0019】
共役ジエン系化合物と芳香族ビニル化合物を組み合わせて用いる場合、1,3−ブタジエンとスチレンを使用することが好ましい。これらの化合物は、入手が容易であるとともに、アニオン重合におけるリビング性が高いという点において優れている。
また、溶液重合法を用いた場合には、溶媒中のモノマー濃度は、生産性と重合コントロールの容易性のバランスを維持する観点から、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。
なお、共役ジエン系化合物と芳香族ビニル化合物を用いて共重合を行う場合、仕込みモノマー混合物中の芳香族ビニル化合物の含有率は、得られる架橋重合体の低ヒステリシスロス特性とウェットスキッド抵抗性のバランスの観点から、好ましくは3〜55質量%、より好ましくは5〜50質量%である。
【0020】
本発明において、モノマーとして、イソブチレン等の共役ジエン系化合物及び芳香族ビニル化合物以外の化合物(以下、他のモノマーという。)を用いることもできる。
また、本発明の共役ジエン系重合体は活性部位を有していても良い。活性部位の導入方法は、他のモノマーとして、1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン等の官能基含有モノマーを共重合させ、ポリマー中の官能基を重合開始剤によって活性化する方法を挙げることができる。その他、例えば、イソブチレン単位、パラメチルスチレン単位及びパラハロゲン化メチルスチレン単位を含む共重合体の官能基部分をリチオ化して活性部位とすることも有効である。
なお、本発明において、「共役ジエン系化合物を重合して、共役ジエン系重合体を得る」、「共役ジエン系化合物と芳香族ビニル化合物を重合して、共役ジエン系重合体を得る」とは、各々、「共役ジエン系化合物と他のモノマーを重合して、共役ジエン系重合体を得る」場合、「共役ジエン系化合物と芳香族ビニル化合物と他のモノマーを重合して、共役ジエン系重合体を得る」場合を包含するものとする。
【0021】
本発明の共役ジエン系重合体は、上述の化合物を用いて、共役ジエン系化合物等のモノマーをアニオン重合させることによって製造される。
重合法としては、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれも用いることができる。中でも、好ましくは溶液重合法である。また、重合形式としては、回分式と連続式のいずれも用いることができる。
溶液重合法を用いる場合の具体的な重合方法の例としては、反応に不活性な有機溶剤(例えば脂肪族、脂環族もしくは芳香族の炭化水素化合物等)からなる溶媒中において、共役ジエン系化合物等のモノマーを、重合開始剤及び所望により用いられるランダマイザーの存在下に、アニオン重合させる方法を挙げることができる。
【0022】
溶媒として用いられる炭化水素化合物は、好ましくは炭素数3〜8の化合物である。
このような炭素数3〜8の化合物の例としては、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−へキサン、シクロへキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンチン、2−ペンチン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘプタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、1−ペンテン、2−ペンテン、シクロヘキセン等を挙げることができる。
炭化水素化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
所望により用いられるランダマイザー(ビニル含有調整剤)は、ビニル結合(1,2結合及び3,4結合)の含有率(本明細書中、ビニル含量ともいう。)の調整等のために用いられる。
ランダマイザーの例としては、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン、2−(2−エトキシエトキシ)−2−メチルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン等が挙げられる。
ランダマイザーは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
重合反応の温度は、好ましくは−20〜150℃、より好ましくは0〜120℃、特に好ましくは20〜100℃である。
重合反応は、モノマーを実質的に液相に保つに十分な圧力の下で行われることが好ましい。このような圧力は、重合反応に対して不活性なガスによって、反応器内を加圧する等の方法によって得ることができる。
【0025】
[変性共役ジエン系重合体の製造方法]
本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、(a)上述の重合工程と、(b)上述の重合工程で得られた活性リチウム末端を有する共役ジエン系重合体と、この共役ジエン系重合体の活性リチウム末端と反応しうる特定のシラン化合物(変性剤)を反応させて、変性共役ジエン系重合体を得る変性工程、を含む。
活性リチウム末端と反応しうる特定のシラン化合物を用いて、共役ジエン系重合体を変性させることによって、優れた低ヒステリシスロス特性等を架橋重合体に与えることができる。
【0026】
本発明において、活性リチウム末端と反応しうる特定のシラン化合物としては、活性リチウム末端を有する共役ジエン系重合体との反応性の観点から、下記一般式(3)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物が用いられる。
【化34】
(一般式(3)中、Eは、N、P及びSからなる群より選ばれる1種以上の原子を有し、活性水素原子を有さず、R4と上記N、P又はSのいずれかの原子で結合している官能基である。Eの上記N、P及びSからなる群より選ばれる1種以上の原子の一部または全部が、3置換のヒドロカルビルシリル基(「−SiH3」の構造中の3つのH(水素原子)が各々、ヒドロカルビル基によって置換されているヒドロカルビルシリル基)で保護されていてもよい。R2及びR3はヒドロカルビル基である。R4はヒドロカルビレン基である。nは0〜2の整数である。式中、複数存在するR2及びR3は、各々、同じでも異なってもよい。)
【0027】
2及びR3で表されるヒドロカルビル基は、好ましくは、炭素数1〜20のアルキル基、又は、炭素数6〜20のアリール基である。
4で表されるヒドロカルビレン基は、好ましくは、炭素数1〜20の直鎖又は分岐の、環状構造を含んでいてもよいアルキレン基、又はアリーレン基である。
活性水素原子とは、炭素原子以外の原子に結合した水素原子をいい、好ましくは、ポリメチレンの炭素−水素結合よりも結合エネルギーが低いものを指す。
なお、変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度の調整を目的として、活性リチウム末端と反応しうるシラン化合物と共に、四塩化ケイ素、エポキシ基含有化合物(例えば、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等)を用いることができる。
本発明において、活性リチウム末端を有する共役ジエン系重合体との反応性を高める観点から、2つ以上のヒドロカルビルオキシ基を有するヒドロカルビルオキシシラン化合物を用いることが好ましい。
上述の重合工程で得られた共役ジエン系重合体に、上記一般式(3)で表される化合物を反応させることで、一方の末端に下記一般式(6)〜(7)のいずれかの構造を有し、かつ、他方の末端に下記の一般式(8)の構造を有する変性共役ジエン系重合体を得ることができる。
【化35】
【化36】
(一般式(6)〜(7)中、R1及びQは、一般式(1)〜(2)の括弧書きで説明したとおりである。)
【化37】
(一般式(8)中、Eは、N、P及びSからなる群より選ばれる1種以上の原子を有し、活性水素を有さず、R4と上記N、P又はSのいずれかの原子で結合している官能基である。Eの上記N、P及びSからなる群より選ばれる1種以上の原子の一部または全部が、「−SiH3」の構造中の3つのH(水素原子)が各々、ヒドロカルビル基によって置換されているヒドロカルビルシリル基で保護されていてもよい。R2はヒドロカルビル基である。R4はヒドロカルビレン基である。R5は水素原子またはヒドロカルビル基である。nは0〜2の整数である。式中、複数存在するR2及びR5は、各々、同じでも異なってもよい。)
本発明において、活性リチウム末端と反応しうるシラン化合物として、活性リチウム末端と反応しうる基に加えて、オニウム生成剤によってオニウムになり得る基を有するものを用いることが好ましい。オニウム生成剤によってオニウムになり得る基を有することによって、架橋重合体に対して、優れた形状保持性を与えることができる。
【0028】
オニウム生成剤によってオニウムになり得る基は、前記一般式(3)のEに相当する基である。オニウム生成剤によってオニウムになり得る基とは、共役ジエン系重合体の活性リチウム末端と反応することを防ぐために、保護基によって置換された基であり、脱保護基の後にオニウム生成剤の作用によってオニウムになりうる基である。該オニウムになりうる基は分子中に少なくとも1つ以上あればよい。具体的には、1級アミノ基の2つの水素原子が2つの保護基によって置換されてなる窒素含有基、2級アミノ基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなる窒素含有基、3級アミノ基、イミノ基、ピリジル基、1級ホスフィノ基の2つの水素原子が2つの保護基によって置換されてなるリン含有基、2級ホスフィノ基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなるリン含有基、3級ホスフィノ基、及び、チオールの1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなる硫黄含有基等が挙げられる。
【0029】
1級アミノ基の2つの水素原子が2つの保護基によって置換されてなる窒素含有基、2級アミノ基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなる窒素含有基、または3級アミノ基と、ヒドロカルビルオキシ基とを有するヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、例えば、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N’,N’−トリス(トリメチルシリル)−N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、N−〔3−(トリメトキシシリル)−プロピル〕−N,N’−ジエチル−N’−トリメチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、N−[3−(メチルジメトキシシリル)−プロピル]−N,N’−ジエチル−N’−トリメチルシリル−p−フェニレンジアミン、3−〔3−(トリメチルシリルエチルアミノ)−1−ピロリジニル〕−プロピル−メチルジエトキシシラン、N−〔3−(ジエトキシメチルシリル)−プロピル〕−N−エチル−N’−(2−エトキシエチル)−N’−トリメチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジノ)プロピルメチルジメトキシシラン、N−トリメチルシリル−N−メチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン、N−[2−(トリメトキシシリル)−エチル]−N,N’,N’−トリメチルエタン−1,2−ジアミン、1−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−3−メチルイミダゾリジン、2−(3−トリメトキシシリル−プロピル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、3−[3−(トリブトキシシリル)−プロピル]−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、1−(2−エトキシエチル)−3−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−イミダゾリジン、2−{3−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−テトラヒドロピリミジン−1−イル}−エチルジメチルアミン、2−(トリメトキシシリル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−(トリエトキシシリル)−1,4−ジエチルピペラジン、5−(トリエトキシシリル)−1,3−ジプロピルヘキサヒドロピリミジン、5−(ジエトキシエチルシリル)−1,3−ジエチルヘキサヒドロピリミジン、2−[3−(2−ジメチルアミノエチル)−2−(3−エチルジメトキシシリル−プロピル)−イミダゾリジン−1−イル]−エチル−ジメチルアミン、5−(3−トリメトキシシリル−プロピル)−1,3−ビス−(2−メトキシエチル)−ヘキサヒドロピリミジン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−モルホリノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ピペリジノプロピルトリメトキシシラン、3−(1−ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン、3−ピペリジノプロピルメチルジメトキシシラン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]トリメチルシリルアミン、および上記化合物中のアルキル基またはアルキレン基を他の炭素数1〜6のアルキル基またはアルキレン基に置き換えた化合物等を挙げることができる。
【0030】
中でも、好ましい化合物の例として、N,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、N,N’,N’−トリス(トリメチルシリル)−N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、N−〔3−(トリメトキシシリル)−プロピル〕−N,N’−ジエチル−N’−トリメチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、N−〔3−(トリエトキシシリル)−プロピル〕−N,N’−ジエチル−N’−トリメチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、N−トリメチルシリル−N−メチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン、N−[2−(トリメトキシシリル)−エチル]−N,N’,N’−トリメチルエタン−1,2−ジアミン、1−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、2−(トリメトキシシリル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−(3−トリメトキシシリル−プロピル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]トリメチルシリルアミン、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]トリメチルシリルアミン等が挙げられる。
【0031】
イミノ基またはピリジル基と、ヒドロカルビルオキシ基とを有するヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジメトキシシリル化合物、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−4,5−イミダゾール、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−イミダゾール、3−ヘキサメチレンイミノプロピルトリメトキシシラン、3−ヘキサメチレンイミノプロピルメチルジメトキシシラン、ならびに、上記化合物中のアルキル基またはアルキレン基を他の炭素数1〜6のアルキル基またはアルキレン基に置き換えた化合物等を挙げることができる。
中でも、好ましい化合物の例として、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−4,5−イミダゾール、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−イミダゾール等が挙げられる。
【0032】
1級ホスフィノ基の2つの水素原子が2つの保護基によって置換されてなるリン含有基、2級ホスフィノ基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなるリン含有基、3級ホスフィノ基、またはチオールの1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなる硫黄含有基と、ヒドロカルビルオキシ基とを有するヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、P,P−ビス(トリメチルシリル)ホスフィノプロピルメチルジメトキシシラン、P,P−ビス(トリメチルシリル)ホスフィノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルフォスフィノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルフォスフィノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ジフェニルフォスフィノプロピルトリメトキシシラン、3−ジフェニルフォスフィノプロピルトリエトキシシラン、3−ジフェニルフォスフィノプロピルメリルジメトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルトリメトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルトリエトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、および上記化合物中のアルキル基またはアルキレン基を他の炭素数1〜6のアルキル基またはアルキレン基に置き換えた化合物等を挙げることができる。
中でも、好ましい化合物の例として、3−ジフェニルフォスフィノプロピルトリメトキシシラン、3−ジフェニルフォスフィノプロピルトリエトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルトリメトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルトリエトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0033】
活性リチウム末端を有する共役ジエン系重合体と、上述の活性リチウム末端と反応しうるシラン化合物であるヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させることによって、活性リチウム末端の部位とヒドロカルビルオキシ基の部位が結合して、オニウムになり得る基を有する変性共役ジエン系重合体を得ることができる。また、上述のヒドロカルビルオキシシラン化合物は、活性リチウム末端を有する共役ジエン系重合体と反応可能であり、カーボンブラック及び/又はシリカと反応又は相互作用し、架橋重合体に優れた低ヒステリシスロス特性を与えるという観点から、いずれも同様の作用を有するものであり、後述の実施例に記載されていないものであっても、本発明において使用することが可能である。
【0034】
共役ジエン系重合体を変性させて変性共役ジエン系重合体を得るための変性反応は、例えば、溶液反応として行うことができる。溶液反応は、重合反応の終了後の未反応モノマーを含む溶液を用いて行ってもよい。
変性反応は、バッチ式反応器を用いたバッチ式で行ってもよく、多段連続式反応器等の装置を用いた連続式で行ってもよい。また、変性反応は、重合反応の終了後、脱溶媒処理、水処理、熱処理、重合体の単離に必要な諸操作などを行う前に実施することが好ましい。
【0035】
この変性反応における、活性リチウム末端と反応しうるシラン化合物の量は、アニオン重合により得られた共役ジエン系重合体の活性部位に対し、好ましくは0.1モル当量以上、より好ましくは0.3モル当量以上である。該量が0.1モル当量未満では、変性反応の進行が十分でなく、カーボンブラック等の補強剤の分散性が十分に改良されず、架橋重合体の耐摩耗性、ウェットスキッド抵抗性及び低ヒステリシスロス特性が劣ることがある。
シラン化合物の添加方法は、特に制限されず、一括して添加する方法、分割して添加する方法、あるいは、連続的に添加する方法などが挙げられる。中でも、好ましくは一括して添加する方法である。
変性反応の温度は、上述の共役ジエン系重合体の重合温度と同じであり、好ましくは−20〜150℃、より好ましくは0〜120℃、特に好ましくは20〜100℃である。該温度が低いと、変性共役ジエン系重合体の粘度が上昇する傾向がある。該温度が高いと、活性リチウム末端が失活し易くなる。
変性反応の反応時間は、好ましくは1分間〜5時間、より好ましくは2分間〜1時間である。
【0036】
本発明においては、変性共役ジエン系重合体とオニウム生成剤を混合して、変性共役ジエン系重合体にオニウム構造を導入する
オニウム生成剤の例としては、ハロゲン化ケイ素化合物、ハロゲン化スズ化合物、ハロゲン化アルミニウム化合物、ハロゲン化チタン化合物、ハロゲン化ジルコニウム化合物、ハロゲン化ゲルマニウム化合物、ハロゲン化ガリウム化合物、ハロゲン化亜鉛化合物等のハロゲン化金属;硫酸エステル、リン酸エステル、炭酸エステル、硝酸エステル等の無機酸のエステル;弗酸、塩酸、臭酸、沃酸、硫酸、硝酸、炭酸、燐酸等の無機酸;フッ化カリウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム等の無機酸塩;カルボン酸(例えば、マレイン酸)、スルホン酸等の有機酸等が挙げられる。
【0037】
中でも、化合物の入手し易さ、および、取り扱いのし易さから、好ましくはハロゲン化ケイ素化合物、ハロゲン化スズ化合物、ハロゲン化アルミニウム化合物、ハロゲン化チタン化合物、ハロゲン化ジルコニウム化合物、ハロゲン化ゲルマニウム化合物、ハロゲン化ガリウム化合物、ハロゲン化亜鉛化合物、硫酸エステル、リン酸エステル、カルボン酸、及び、スルホン酸である。
オニウム生成剤の化合物の例としては、四塩化ケイ素、四塩化スズ、トリメチルシリルクロライド、ジメチルジクロロシラン、ジエチルアルミニウムクロライド、塩化亜鉛、四塩化チタン、四塩化ジルコニウム、四塩化ゲルマニウム、三塩化ガリウム、硫酸ジエチル、リン酸トリメチル、炭酸ジメチル、マレイン酸、ベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
オニウム生成剤を用いることによって、変性共役ジエン系重合体の形状保持性を高めることができる。
【0038】
変性共役ジエン系重合体とオニウム生成剤の混合は、例えば、溶液の形態で行うことができる。混合は、バッチ式混合器を用いたバッチ式として行ってもよく、多段連続式混合器やインラインミキサなどの装置を用いた連続式として行ってもよい。
オニウム生成剤の量は、変性共役ジエン系重合体の活性部位(変性した部分)に対し、好ましくは0.5モル当量以上、より好ましくは1.0モル当量以上である。該量が0.5モル当量未満では、オニウム化が十分に進行せず、変性共役ジエン系重合体の形状保持性に劣ることがある。
オニウム生成剤の添加方法は、特に制限されず、一括して添加する方法、分割して添加する方法、あるいは、連続的に添加する方法などが挙げられる。中でも、一括して添加する方法が好ましい。
【0039】
変性共役ジエン系重合体とオニウム生成剤を混合するときの温度は、上述の共役ジエン系重合体の重合温度と同じであり、好ましくは−20〜150℃、より好ましくは0〜120℃、特に好ましくは20〜100℃である。該温度が低いと、変性共役ジエン系重合体の粘度が上昇する傾向がある。該温度が高いと、活性リチウム末端が変質し易くなる。
変性共役ジエン系重合体とオニウム生成剤の混合後、共役ジエン系重合体の製造における公知の脱溶媒方法(例えば、スチームストリッピング等)及び乾燥の操作によって、変性共役ジエン系重合体を回収することができる。
【0040】
変性共役ジエン系重合体におけるオニウム構造の形成は、水の存在下で行なわれる。オニウム構造の形成方法としては、例えば、(i)変性共役ジエン系重合体溶液中に水を直接添加して混合する方法、(ii)水及び有機溶剤の両方に溶解可能なアルコール等の有機溶剤に水を溶解させてなるものを、変性共役ジエン系重合体溶液中に添加して混合する方法、(iii)スチームストリッピングの工程で脱溶媒と同時に、変性共役ジエン系重合体溶液と水を混合する方法、が挙げられる。
この場合、変性共役ジエン系重合体を調製する際に得られた重合体溶液を、脱溶媒しないまま、重合体溶液の状態で用いてもよい。また、上記重合体溶液を、スチームストリッピング等により脱溶媒を行い、更に乾燥して得られた変性共役ジエン系重合体を、シクロヘキサン等の溶媒に再度溶解させて用いてもよい。
本発明の変性共役ジエン系重合体は、必要に応じて伸展油を加えるなどによって、ムーニー粘度を調整し、加工性を良好にすることができる。
伸展油としては、アロマ油、ナフテン油、パラフィン油等が挙げられる。伸展油の量は、例えば、変性共役ジエン系重合体100質量部に対し、10〜50質量部である。
【0041】
本発明の重合体組成物は、重合体成分として、上述の変性共役ジエン系重合体を含むものである。
重合体組成物中の変性共役ジエン系重合体の割合は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、特に好ましくは25質量%以上である。該割合が15質量%以上であると、架橋重合体の引張強さ、引張伸び等の機械的特性、耐亀裂成長性、及び耐摩耗性をより良好なものとすることができる。
【0042】
本発明の重合体組成物は、上述の変性共役ジエン系重合体以外の重合体成分(以下、他の重合体成分ともいう。)を含むことができる。
他の重合体成分としては、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、変性ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、変性スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム、エチレン−α−オレフィン−ジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、スチレン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、ランダムスチレン−ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、及び、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体、並びにこれらの混合物等を挙げることができる。
タイヤ用重合体組成物として使用可能な他の重合体成分が含有されていても、低ヒステリシスロス特性に優れた架橋重合体を製造することが可能である。
変性共役ジエン系重合体と他の重合体成分の合計量100質量部中の変性共役ジエン系重合体の量は、好ましくは40質量部以上、より好ましくは50質量部以上、特に好ましくは60質量部以上である。
【0043】
本発明の重合体組成物は、カーボンブラック及び/又はシリカを含むことができる。
カーボンブラックの例としては、SRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF、ISAF−HS、ISAF−LS、IISAF−HS、HAF−HS、HAF−LSに代表されるファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイト、さらに、グラファイト繊維、フラーレン等の各グレードのカーボンブラックを挙げることができる。中でも、好ましくはヨウ素吸着量(IA)が60mg/g以上であり、ジブチルフタレート吸油量(DBP)が80ml/100g以上のカーボンブラックである。また、架橋重合体の耐摩耗性を向上させる観点から、より好ましくはHAF、ISAF、SAFである。
カーボンブラックを用いることにより、架橋重合体のグリップ性能、及び耐破壊特性の改良効果が大きくなる。
なお、カーボンブラックは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
シリカの例としては、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、コロイダルシリカ、沈降シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等を挙げることができる。これらのうち、耐破壊特性の改良効果、ウェットグリップ性、及び低転がり抵抗性の両立効果が最も顕著である湿式シリカが、好ましい。また、高分散型(High Dispersible Type)のシリカを使用することも、重合体組成物への分散性を良好にし、物性及び加工性が向上する観点から、好ましい。シリカは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
本発明の重合体組成物中のカーボンブラック及び/又はシリカの量(これら両方を含む場合は合計量)は、重合体成分(変性共役ジエン系重合体及び他の重合体成分の合計)100質量部に対して、補強性とそれによる諸物性の改良効果の観点から、好ましくは20〜130質量部、より好ましくは25〜110質量部である。なお、カーボンブラック及び/又はシリカの量が小さいと、耐破壊特性等の向上効果が不十分となる傾向にあり、カーボンブラック及び/又はシリカの量が大きいと、重合体組成物の加工性が低下する傾向にあるため、該量は前記数値範囲内であることが好ましい。
また、本発明の重合体組成物中にカーボン−シリカ デュアル・フェイズ・フィラー(Dual Phase Filler)を配合することにより、カーボンブラックとシリカを併用したときと同様の優れた利点を得ることができる。カーボン−シリカ デュアル・フェイズ・フィラーは、カーボンブラックの表面に、シリカを化学結合させた、いわゆるシリカ・コーティング・カーボンブラックであり、キャボット社から商品名CRX2000、CRX2002、CRX2006として販売されている。カーボン−シリカ デュアル・フェイズ・フィラーの配合量は、重合体成分の合計100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは5〜95質量部である。
【0045】
本発明の重合体組成物に、補強剤としてシリカを含有させる場合、補強効果を更に向上させるために、シランカップリッグ剤を配合することが好ましい。このシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、特開2006−249069号公報に例示されているメルカプトシラン化合物などを挙げることができる。
【0046】
市販品としては、例えば、モメンティブ パーフォーマンス マテリアルズ社製の商品名「NXT シラン」、「NXT Z シラン」、「NXT−Low−V シラン」、「NXT Ultra Low−V シラン」、デグザ社製の商品名「VP Si363」、gelest社製の商品名「11−MERCAPTOUNDECYLTRIMETHOXYSILANE」、エボニック社の商品名「Si69」などを挙げることができる。
これらのうち、補強性の改善効果等の点から、好ましくはビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィド、特開2006−249069号公報に例示されているメルカプトシラン化合物である。なお、これらのシランカップリング剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。シランカップリング剤の配合量は、シランカップリング剤の種類等により異なるが、シリカ100質量部に対して、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは3〜15質量部である。該量が1質量部未満であると、カップリング剤としての効果が十分に発揮され難くなる傾向にある。該量が20質量部を超えると、重合体成分がゲル化し易くなる傾向にある。
【0047】
本発明の重合体組成物の調製に際し、混練り時の加工性の改良、あるいはウェットスキッド抵抗性、低ヒステリシスロス特性、及び耐摩耗性のバランスをさらに向上させる目的で、相溶化剤を混練り時に添加することができる。相溶化剤の好ましい例としては、エポキシ基含有化合物、カルボン酸化合物、カルボン酸エステル化合物、ケトン化合物、エーテル化合物、アルデヒド化合物、水酸基含有化合物及びアミノ基含有化合物から選択される有機化合物、及び、アルコキシシラン化合物、シロキサン化合物及びアミノシラン化合物から選択されるシリコーン化合物が挙げられる。
【0048】
本発明の重合体組成物は、所望により、ゴム工業界で通常用いられている各種の薬品や添加剤等を含むことができる。このような薬品または添加剤の例としては、架橋剤(例えば、加硫剤)、加硫助剤、加工助剤、加硫促進剤、プロセス油、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華(酸化亜鉛)、ステアリン酸等を挙げることができる。
【0049】
加硫剤(架橋剤)としては、硫黄、ハロゲン化硫黄、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、メチロール基を有するアルキルフェノール樹脂などが挙げられる。中でも、通常は、硫黄が使用される。硫黄の量は、重合体成分(変性共役ジエン系重合体と他の重合体成分の合計)100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.5〜3質量部である。
加硫助剤及び加工助剤としては、通常、ステアリン酸が用いられる。加硫助剤及び加工助剤の量は、重合体成分100質量部に対して、通常、0.5〜5質量部である。
また、加硫促進剤としては、特に限定されないが、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、チオウレア系、チアゾール系、ジチオカルバミン酸系、キサントゲン酸系の化合物が挙げられ、好ましくは2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジサルファイド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビスグアニジンなどを挙げることができる。
加硫促進剤の量は、重合体成分100質量部に対して、通常、0.1〜5質量部、好ましくは0.4〜4質量部である。
【0050】
本発明の重合体組成物は、開放式混練機(例えば、ロール)、密閉式混練機(例えば、バンバリーミキサー)等の混練機を用いて混練することによって製造することができる。
また、本発明の重合体組成物は、成形加工後に架橋(加硫)することによって、架橋重合体として、各種ゴム製品に適用可能である。
架橋重合体の用途としては、タイヤトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部等のタイヤ用途;防振ゴム、防舷材、ベルト、ホース、その他の工業品等の用途が挙げられる。本発明の架橋重合体は、低燃費性能を与える観点から、特に、タイヤトレッド用ゴムとして好適に使用される。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0052】
比較例1〔変性共役ジエン系重合体Aの合成、およびその評価〕
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、ピペリジン4.70mmol、シクロヘキサン2,750g、テトラヒドロフラン50.0g、スチレン125g、1,3−ブタジエン365gを仕込んだ。反応器の内容物の温度を10℃に調整した後、n−ブチルリチウム5.80mmolを添加して、重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は85℃に達した。
なお、ピペリジンとn−ブチルリチウムが反応して、重合開始剤である化合物が生じる。
【0053】
重合転化率が99%に達した時点(重合開始から26分経過後)で、1,3−ブタジエン10gを2分間かけて追加し、さらに3分間重合させた後、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.96mmolを加えて15分間反応を行って、変性共役ジエン系重合体を含む重合体溶液を得た。
得られた変性共役ジエン系重合体を含む重合体溶液に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加し、次いで、水酸化ナトリウムでpH=9に調整した熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、変性共役ジエン系重合体を得た。その後、110℃に調温された熱ロールを用いて、変性共役ジエン系重合体を乾燥させ、変性共役ジエン系重合体Aを得た。
変性共役ジエン系重合体Aの重合処方(合成例1)を表1に、得られた変性共役ジエン系重合体Aの性質を表2に示す。また、変性共役ジエン系重合体Aを用いて、表3に示す配合処方により調製した重合体組成物を加硫し、得られた架橋重合体(加硫重合体)について物性評価を行った。その結果を表4に示す。
【0054】
実施例1〜17、比較例2〔変性共役ジエン系重合体B〜Sの合成、およびその評価〕
表1に示す重合処方を用いた以外は変性共役ジエン系重合体Aと同様にして、変性共役ジエン系重合体B〜Sを得た(合成例2〜19)。得られた変性共役ジエン系重合体B〜Sの性質を表2に示す。また、変性共役ジエン系重合体B〜Sを用いて、表3に示す配合処方により調製した重合体組成物を加硫して、物性評価を行った。その結果を表4に示す。
なお、変性共役ジエン系重合体L〜Qの合成に際しては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールの添加後に、さらに四塩化ケイ素2.69mmolを添加した。また、変性共役ジエン系重合体Sの合成に際しては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールの添加後に、さらにメタノールを添加し、反応を失活させた。
【0055】
[変性共役ジエン系重合体の特性評価]
変性共役ジエン系重合体の各種物性値の測定方法を以下に示す。
(i)スチレン単位量(%):500MHzのH−NMRによって求めた。
(ii)ビニル含量(%):500MHzのH−NMRによって求めた。
(iii)ガラス転移温度:ASTM D3418に準拠して測定した。
(iv)変性前の重量平均分子量:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(HLC−8120GPC(商品名(東ソー社製)))を使用して得られたGPC曲線の最大ピークの頂点に相当する保持時間から、ポリスチレン換算で求めた。
(GPCの条件)
カラム;商品名「GMHHXL」(東ソー社製)2本
カラム温度;40℃
移動相;テトラヒドロフラン
流速;1.0ml/分
サンプル濃度;10mg/20ml
(v)ムーニー粘度(ML1+4,100℃):JIS K6300−1に準拠し、Lローターを使用して、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃の条件で測定した。
【0056】
[重合体組成物の混練り方法、及び特性評価]
温度制御装置を付属したプラストミル(内容量:250ml)を使用し、一段目の混練として、充填率72%、回転数60rpmの条件で、本発明の変性共役ジエン系重合体、ブタジエンゴム、伸展油、カーボンブラック、シリカ、シランカップリング剤、ステアリン酸、老化防止剤、酸化亜鉛を混練した。ついで、二段目の混練として、上記で得た配合物を室温まで冷却後、硫黄及び加硫促進剤を混練した。これを成型し、160℃で所定時間、加硫プレスにて加硫し、以下のタイヤ性能を表す特性評価を実施した。
(i)ムーニー粘度(ML1+4,100℃):加硫前の重合体組成物を測定用試料とし、JIS K6300−1に準拠し、Lローターを使用して、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃の条件で測定した。
(ii)引張強度:JIS K6251に従って、300%モジュラスを測定した。比較例1を100とした指数で表示し、数値が大きいほど、引張強度が大きく、良好である。
(iii)0℃tanδ:架橋重合体を測定用試料とし、動的スペクトロメーター(米国レオメトリックス社製)を使用し、引張動歪0.14%、角速度100ラジアン毎秒、0℃の条件で測定した。比較例1を100とした指数で表示し、数値が大きいほどウェットスキッド抵抗性が大きく良好である。
(iv)70℃tanδ:架橋重合体を測定用試料とし、動的スペクトロメーター(米国レオメトリックス社製)を使用し、引張動歪0.7%、角速度100ラジアン毎秒、70℃の条件で測定した。比較例1を100とした指数で表示し、数値が大きいほど低ヒステリシスロス特性が小さく良好である。
(v)耐摩耗性:架橋重合体を測定用試料とし、DIN摩耗試験機(東洋精機社製)を使用し、JIS K 6264に準拠し、荷重10Nで25℃にて測定した。比較例1を100とした指数で表示し、数値が大きいほど耐摩耗性が良好である。
(vi)反撥弾性:架橋重合体を測定用試料とし、レジリエンステスタ(東洋精機社製)を用い、測定温度50℃で、JIS K6255に準拠して測定した。比較例1を100とした指数で表示し、数値が大きいほど、低ヒステリシスロス特性が小さく良好である。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
表4から、実施例1〜17では、比較例1〜2に比べて、架橋重合体の低ヒステリシスロス特性(70℃tanδ、反撥弾性)、ウェットスキッド抵抗性(0℃tanδ)、耐摩耗性が優れることがわかる。