特許第5871125号(P5871125)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871125
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】フィールド機器
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20160216BHJP
   G05B 19/042 20060101ALI20160216BHJP
   H04W 24/04 20090101ALI20160216BHJP
【FI】
   G05B23/02 301Z
   G05B23/02 301R
   G05B19/042
   H04W24/04
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-6013(P2012-6013)
(22)【出願日】2012年1月16日
(65)【公開番号】特開2013-145492(P2013-145492A)
(43)【公開日】2013年7月25日
【審査請求日】2014年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 洋海
【審査官】 青山 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−193372(JP,A)
【文献】 特開2009−111976(JP,A)
【文献】 特開2010−035068(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/104336(WO,A1)
【文献】 特開2011−015051(JP,A)
【文献】 特開2010−041459(JP,A)
【文献】 特開2009−147551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00 − 23/02
G05B 19/00 − 19/05
H04W 24/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントに設置され、該プラントの制御に用いられるフィールド機器であって、
当該フィールド機器の制御を行う機器制御部と、
センサから得られた出力値を表示するディスプレイと、
複数のフィールド機器を管理する管理装置とスターメッシュ型ネットワークによって無線通信を行う無線通信部と、
を備え、
前記機器制御部は、前記無線通信部の無線通信品質を取得する無線品質取得部として機能し、
前記ディスプレイは、前記無線品質取得部によって取得された無線通信品質を前記センサの出力値とともに、あるいは該無線通信品質と該センサの出力値とを選択して表示可能であり、
前記無線通信品質は、パケットエラーレートであり、
前記無線通信部は、データ送信時に使用する空きチャネルを検出するCCA機能を有し、該CCA機能によって空きチャネルがない場合はデータ送信を中止し、
前記無線通信部からの送信データを受信した際に前記管理装置から送信される確認応答であるAckを該無線通信部が受信できなかった回数であるAck非受信回数と、前記CCA機能によって該無線通信部がデータ送信を中止した回数である送信中止回数とを加算し、該加算した値を、該無線通信部が該管理装置に対してデータを送信したすべての回数である全送信回数で除算した値を、前記パケットエラーレートとすることを特徴とするフィールド機器。
【請求項2】
前記ディスプレイは、前記無線通信品質と前記センサの出力値とを、所定時間ずつ交互に表示することを特徴とする請求項1に記載のフィールド機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントに設置され、かかるプラントの制御に用いられるフィールド機器に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントには、そのプロセス系のシステム制御(以下、単に制御と称する)を目的としてフィールド機器が設置されている。かかるフィールド機器としては、プロセスの圧力を計測する圧力伝送器や、オリフィス等の差圧から流量を計測する差圧伝送器(以下、差圧/圧力伝送器と称する)、プロセスの温度を計測する温度伝送器等を例示することができる。
【0003】
上記のフィールド機器(ノード)は、無線通信ネットワーク(以下、単にネットワークと称する)によって接続される管理装置(親ノード)により管理されている。フィールド機器と管理装置とを接続するネットワークとしては、スター型ネットワーク、メッシュ型ネットワーク、スターメッシュ型ネットワークトポロジーを例示することができる。
【0004】
詳しくは、スター型ネットワークは、各端末(ノード)が基地局やアクセスポイントに接続される接続形態(トポロジー)である。メッシュ型ネットワークは、端末(ノード)が相互に網の目のように接続される接続形態である。メッシュ型ネットワークでは、ノードの先に、またノードが接続される(末端のノードは管理装置に直接は接続していない)。スターメッシュ型(クラスタメッシュ型とも称される)ネットワークトポロジーは、一台の親ノードと複数台の子ノードとが接続したクラスタとよばれるグループを形成し、クラスタの親ノードがメッシュ状に相互接続することで構成される(例えば、特許文献1)。また特許文献2においてもスターメッシュ型ネットワークを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−041660号公報
【特許文献2】特開2002−044003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フィールド機器において得られた出力値(PV(Process Value)値とも称される)は、ネットワークを通じて管理装置に送信される。このため、ネットワークの無線通信品質は常に良好な状態に管理する必要があり、通信トラブルが発生した際にはそれを迅速に解決しなければならない。しかしながら、スターメッシュ型のネットワークトポロジーでは、通信トラブルが発生した際(通信が正常に行われない場合)に、いずれのノード(フィールド機器)で支障が生じているのかがわかりにくい。
【0007】
また現状では、フィールド機器がゲートウェイ(以下、GWと称する)にパケットエラーレートを送信し、それを管理装置(Host Application)が取得して表示する。このため、フィールド機器を設置する際には、管理装置側において無線通信品質を確認する必要があった。更に、このような構成であると、フィールド機器とGWとの通信が完全に切断されると、無線通信品質に関する情報を取得できないという問題もあった。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、フィールド機器側において無線通信品質を確認することが可能なフィールド機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかるフィールド機器の代表的な構成は、プラントに設置され、プラントの制御に用いられるフィールド機器であって、当該フィールド機器の制御を行う機器制御部と、センサから得られた出力値を表示するディスプレイと、複数のフィールド機器を管理する管理装置とスターメッシュ型ネットワークによって無線通信を行う無線通信部と、を備え、機器制御部は、無線通信部の無線通信品質を取得する無線品質取得部として機能し、ディスプレイは、無線品質取得部によって取得された無線通信品質をセンサの出力値とともに、あるいは無線通信品質とセンサの出力値とを選択して表示可能であり、無線通信品質は、パケットエラーレートであり、無線通信部は、データ送信時に使用する空きチャネルを検出するCCA機能を有し、CCA機能によって空きチャネルがない場合はデータ送信を中止し、無線通信部からの送信データを受信した際に管理装置から送信される確認応答であるAckを無線通信部が受信できなかった回数であるAck非受信回数と、CCA機能によって無線通信部がデータ送信を中止した回数である送信中止回数とを加算し、加算した値を、無線通信部が管理装置に対してデータを送信したすべての回数である全送信回数で除算した値を、パケットエラーレートとすることを特徴とする
【0010】
上記構成によれば、出力値を表示するディスプレイに無線通信品質を表示可能であるため、フィールド機器側において無線通信品質を確認することができる。これにより、フィールド機器設置時に、管理装置側において無線通信品質を確認することなく設置位置を定めることが可能である。また上記構成のようにフィールド機器そのものに無線通信品質が表示されることにより、フィールド機器とGWとの通信が完全に切断された場合であっても、フィールド機器において無線通信品質を確認することができ、且つ通信トラブルが発生している端末の特定が容易になる。
【0011】
上記ディスプレイは、無線通信品質とセンサの出力値とを、所定時間ずつ交互に表示するとよい。これにより、ディスプレイにおいて、センサの出力値または無線通信品質の一方が表示されている状態であっても、特段の操作を要することなく他方を表示することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フィールド機器側において無線通信品質を確認することが可能なフィールド機器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態にかかるフィールド機器が接続されているネットワークの構成を例示する概略図である。
図2】本実施形態にかかるフィールド機器の構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態にかかるフィールド機器が接続されているネットワークの構成を例示する概略図である。プラント(不図示)では、図1に示すように、本実施形態にかかるフィールド機器100a〜100eが設置され、そのフィールド機器100a〜100eを含む無線ネットワーク100が構築されている。
【0017】
本実施形態のフィールド機器100a〜100eは、いわゆるI/Oデバイスであり、具体的には、上述したように差圧/圧力伝送器や温度伝送器等のセンサ、バルブポジショナ等の操作端を例示することができる。かかるフィールド機器100a〜100eのうち、フィールド機器100a〜100bはルーティングデバイス102aを介して、フィールド機器100c〜100eはルーティングデバイス102bを介して、それぞれゲートウェイ104と無線通信を行う。
【0018】
ルーティングデバイス102a〜102bは、フィールド機器100a〜100eとゲートウェイ104とを接続するルータである。ルーティングデバイス102a〜102bは、近隣デバイスに対して広告ルータ(advertisement)を定期的に発行し、ルート情報の伝達やメッセージの伝達を行う機能(ルーティング機能)を有する。なお、このルーティング機能はフィールド機器100a〜100eに搭載されてもよい。
【0019】
上述したように、本実施形態では、ルーティングデバイス102a〜102b(親ノード)のそれぞれに対して複数のフィールド機器100a〜100e(子ノード)が接続されたクラスタが形成されている。そして、クラスタの親ノードであるルーティングデバイス102a〜102bおよびゲートウェイ104は、それぞれメッシュ状に相互接続されている。すなわち本実施形態では、フィールド機器100a〜100b、ルーティングデバイス102a〜102bおよびゲートウェイ104からなるスターメッシュ型ネットワークトポロジー(以下、ネットワークトポロジー101と称する)が形成されている。
【0020】
ゲートウェイ104は、ネットワークトポロジー101とプラントネットワーク106とを接続する機能を有する。これにより、ゲートウェイ104およびプラントネットワーク106を経由してのフィールド機器100a〜100eと管理装置108との接続が実現される。ゲートウェイ104は、ネットワークトポロジー101のシステムマネージャ機能およびセキュリティマネージャ機能を備え、ネットワークトポロジー101のシステムおよびセキュリティの管理を行うことも可能である。管理装置108は、いわゆるホストアプリケーションであって、ルーティングデバイス102a〜102bおよびフィールド機器100a〜100eの設定や機器診断、ファームウェアのアップグレードを行う。
【0021】
次に、本実施形態にかかるフィールド機器100a〜100eについて説明する。図2は、本実施形態にかかるフィールド機器100aの構成を示す機能ブロック図である。なお、フィールド機器100a〜100eは同一の構成を有するため、図2および以下の説明では、フィールド機器100aを例示する。
【0022】
本実施形態のフィールド機器100aは、管理装置108によって管理され、プラント(不図示)の制御に用いられるフィールド機器である。図2に示すように、フィールド機器100aは、コネクタ(不図示)によって接続されるセンサボード110、およびディスプレイである液晶ディスプレイ120を含んで構成される。
【0023】
センサボード110には機器制御部112が設けられている。機器制御部112は、中央処理装置(CPU)を含む半導体集積回路により当該フィールド機器100aの機能を管理および制御する。また機器制御部112は、後述するセンサ130からの出力信号(電圧や電流)が機器固有IC116によって変換された出力値(数値)の加工や、機器固有IC116において得られた出力値の単位変更、レンジ変更等も行う。更に、本実施形態の機器制御部112は、無線品質取得部112aおよび表示内容制御部112bとしても機能する。その詳細については後に詳述する。
【0024】
無線IC114は、ネットワークトポロジー101(スターメッシュ型ネットワーク)によってルーティングデバイス102a〜102bのいずれかと無線通信を行う無線通信部である。特に、本実施形態の無線IC114は、ISA100.11a、ZigBee、BlueTooth(登録商標)、IEEE802.11b/a/g/nなどで規定された無線通信機能を有する。機器固有IC116は、プラント(不図示)に設置されたセンサ130の制御や、かかるセンサ130からの出力信号(電圧や電流)に対して増幅やノイズ除去などを行い、AD変換して符号化(数値化)することにより、「出力値」を生成する。メモリ118は、RAM等で構成され、無線IC114からの情報を一時的に記憶する。
【0025】
液晶ディスプレイ120は、センサ130から得られた出力値(厳密には、センサ130から得られた出力信号が機器固有IC116において変換された出力値)を表示する。この液晶ディスプレイ120の動作はディスプレイ制御部122(LCDドライバ)によって制御される。特に、本実施形態において、液晶ディスプレイ120は、センサ130の出力値に加え、無線品質取得部112aによって取得された無線通信品質も表示可能である。この詳細については後述する。
【0026】
上述したように、本実施形態の機器制御部112は、無線品質取得部112aおよび表示内容制御部112bとして機能する。詳細には、まず機器制御部112は、無線品質取得部112aとして機能し、無線IC114の無線通信品質を取得する。かかる無線通信品質としては、パケットエラーレートやビットエラーレートを例示することができる。
【0027】
なお、機器制御部112が取得する無線通信品質は上記に限らない。例えば、無線IC114に、データ送信時において、送信に使用する無線通信帯域が他のデバイスで使用されていないか(空きチャネルがあるか)を検出するCCA機能(空きチャネル判定機能)を持たせる。そして、CCA機能によって空きチャネルがない場合(すべてのチャネルが使用されていた場合)、無線IC114はデータ送信を中止する構成とし、このデータ送信を中止した回数(以下、送信中止回数と称する)を無線通信品質としてもよい。
【0028】
また例えば、無線IC114は、かかる無線IC114からの送信データを受信した際に管理装置108から送信される確認応答(以下、Ackと称する)を受信する構成とし、このAckを受信できなかった回数(以下、Ack非受信回数と称する)を無線通信品質としてもよい。またCCA機能による送信中止回数や、Ack非受信回数を加算し、これを、無線IC114が管理装置108に対してデータを送信したすべての回数(以下、全送信回数と称する)で除算してパケットエラーレートとして算出し、無線通信品質としてもよい。
【0029】
上述した送信中止回数やAck非受信回数、全送信回数を用いて無線通信品質を算出する場合、無線IC114は、それらの情報をメモリ118に転送して保持させるとよい。そして、無線品質取得部112aは、メモリ118にアクセスすることにより、そこに保持された情報(送信中止回数、Ack非受信回数、全送信回数)を取得する構成とするとよい。
【0030】
本実施形態のフィールド機器100aの最たる特徴として、液晶ディスプレイ120は、センサ130の出力値に加え、上述した無線品質取得部112aによって取得された無線通信品質を表示する。これにより、管理装置108側だけでなく、当該フィールド機器100a側において無線通信品質を確認することが可能となる。したがって、フィールド機器100aの設置時に、管理装置108側において無線通信品質を確認することなく設置位置を定めることができるため、設置作業効率の向上を図れる。
【0031】
また本実施形態のようにフィールド機器100aそのものに無線通信品質が表示されることにより、不具合によりフィールド機器100aとゲートウェイ104との通信が完全に切断され、管理装置108側において無線品質が確認できなくなってしまった場合であっても、フィールド機器100aにおいて無線通信品質を確認可能である。更に、本実施形態の構成であれば、スターメッシュ型ネットワークトポロジー(ネットワークトポロジー101)においても、通信トラブルが発生しているフィールド機器(ノード)を容易に特定できるため、通信トラブルからの早期の復旧が可能となる。
【0032】
上述した構成において、本実施形態では更に、機器制御部112を、センサ130の出力値または無線通信品質のいずれかを液晶ディスプレイ120に表示する表示内容制御部112bとして機能させ、液晶ディスプレイ120に表示する情報を制御する。
【0033】
このとき、表示内容制御部112bは、センサ130の出力値と無線通信品質とを所定時間ずつ交互に表示するように液晶ディスプレイ120を制御するとよい。詳細には、表示内容制御部112bは、所定時間(例えば3秒周期)ごとにセンサ130の出力値および無線通信品質を交互に選択し、選択された情報を表示データとしてディスプレイ制御部122に送信する。そして、ディスプレイ制御部122は、受信した表示データに基づいて、センサ130の出力値または無線通信品質を液晶ディスプレイ120に表示させる。このような構成により、液晶ディスプレイ120において、センサ130の出力値または無線通信品質の一方が表示されている状態であっても、所定時間が経過すれば他方が表示される。したがって、特段の操作を要することなくセンサ130の出力値および無線通信品質の両方を確認することが可能となる。
【0034】
なお、上記の所定時間は可変であってもよい。また例えば、センサ130の出力値の表示時間を3秒、無線通信品質の表示時間を5秒というように、センサ130の出力値と無線通信品質とにおいて所定時間を異ならせることも可能である。
【0035】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、プラントに設置され、かかるプラントの制御に用いられるフィールド機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0037】
100…無線ネットワーク、100a〜100e…フィールド機器、101…ネットワークトポロジー、102a・102b…ルーティングデバイス、104…ゲートウェイ、108…管理装置、110…センサボード、112…機器制御部、112a…無線品質取得部、112b…表示内容制御部、114…無線IC、116…機器固有IC、118…メモリ、120…液晶ディスプレイ、122…ディスプレイ制御部、130…センサ
図1
図2