(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、住宅用の分電盤では、導電バーに沿って複数の分岐ブレーカが電気的に接続され、各分岐ブレーカに負荷が接続されている。導電バーは、主幹ブレーカを通じて単相三線式の交流電源が供給されるため、中性極および一対の電圧極の3つの導電バーを有している。これら3つの導電バーに対する分岐ブレーカの接続を切り換えることにより、100Vの負荷および200Vの負荷に対応した電圧の交流電源を供給可能となっている。
【0003】
このような分電盤においては、各分岐ブレーカに接続された負荷毎の電力使用量や住宅全体の電力使用量を計測する電力計測ユニットを備えたものがある。
【0004】
電力計測ユニットでは、各分岐ブレーカから負荷側に流れる電流を電流検出手段で検出し、検出した電流と負荷の電圧とから電力を演算している。負荷の電圧には100Vの場合と200Vの場合とがあるため、電力計測ユニットが備えている例えばスイッチを切り換えて各分岐ブレーカに接続される負荷の電圧を設定したり、画面上に表示させながら各分岐ブレーカに接続される負荷の電圧を設定している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態を、
図1ないし
図6を参照して説明する。
【0012】
図5および
図6に示すように、分電盤10は、壁面に設置される筐体11を有している。この筐体11内に、主幹ブレーカ12、複数の導電バー13、複数の分岐ブレーカ14、および電力計測ユニット15などが配設されている。そして、導電バー13、複数の分岐ブレーカ14、および電力計測ユニット15などによって分岐側機器部16が構成されている。
【0013】
分岐側機器部16は、筐体11に取り付けられる取付板20を有している。この取付板20上に、導電バー13、複数の分岐ブレーカ14、および電力計測ユニット15などが一体的に取り付けられている。取付板20には、取付板20の上下方向中央域に導電バー13が左右方向に沿って水平に配置され、この導電バー13の配置域の上段側および下段側に複数の分岐ブレーカ14が水平方向に並んで取り付けられている。
【0014】
また、
図4および
図5に示すように、導電バー13は、単相3線式の交流電源を主幹ブレーカ12から複数の分岐ブレーカ14および電力計測ユニット15に供給するもので、中性極N用の導電バー13aおよび一対の電圧極L1,L2用の導電バー13b,13cが用いられている。これら3つの導電バー13a,13b,13cは、分電盤10の前面から見て前後方向に間隔をあけて重なるように配置されている。
【0015】
また、複数の分岐ブレーカ14は、導電バー13の上段側および下段側に互いに向きを反対向きとして取付板20に取り付けられているとともに、導電バー13に電気的に接続されている。
【0016】
分岐ブレーカ14は、ケース23、このケース23内に配置された回路遮断ユニット(図示せず)を備えている。
【0017】
ケース23は、絶縁性を有する合成樹脂により、ケース23の前面から見て横幅が狭く縦方向に細長い形状に形成されている。ケース23の前面側には回路遮断ユニットを手動操作するためのブレーカハンドル24が配置され、ケース23の前面側から見て長手方向の一端側には導電バー13に電気的に接続される電源側接続部25が形成されているとともに他端側には負荷側からの一対の電線26を接続する電線接続部27が形成されている。
【0018】
電源側接続部25には、各導電バー13a,13b,13cが差し込まれる3つの溝28a,28b,28cが形成されているとともに、3つの溝28a,28b,28cのうちの2つには3つの導電バー13a,13b,13cのうちの2つと電気的に接続される端子が配置されている。そして、分岐ブレーカ14に接続される負荷側が100Vの場合には中性極N用の導電バー13aと一対の電圧極L1,L2用の導電バー13b,13cのうちのいずれか一方とが接続されるように、200Vの場合には一対の電圧極L1,L2用の導電バー13b,13cと接続されるように、端子が配置される溝が異なっているか切り換えられるように構成されている。なお、例えば、上段側の分岐ブレーカ14は、負荷側が100Vの場合、中性極N用の導電バー13aと電圧極L1用の導電バー13bとに接続され、また、下段側の分岐ブレーカ14は、負荷側が100Vの場合、中性極N用の導電バー13aと電圧極L2用の導電バー13cとに接続される。
【0019】
電線接続部27は、負荷側に接続される一対の電線26を差し込む一対の差込孔29を有している。これら差込孔29内には差し込まれた電線26に電気接続状態で抜け止めする鎖錠端子が配設されている。
【0020】
回路遮断ユニットは、電源側接続部25の端子と電線接続部27の鎖錠端子との間の接続回路を開閉可能とするもので、ブレーカハンドル24の操作に応じて接続回路を開閉するとともに、接続回路の閉成状態で設定値以上の過電流が流れたときに接続回路を自動的に開成するように構成されている。
【0021】
また、
図5に示すように、電力計測ユニット15は、複数のセンサ部32、および電力計測部33を備えている。
【0022】
センサ部32は、上段側の複数の分岐ブレーカ14の並設方向に沿って配置されるセンサ部32a、および下段側の複数の分岐ブレーカ14の並設方向に沿って配置されるセンサ部32bを有している。
【0023】
センサ部32は、横長に形成されたケース35を有している。このケース35には、長手方向に沿って、各分岐ブレーカ14にそれぞれ接続される一対の電線26のうちの予め決められている一方の電線26が挿通される複数の挿通孔36が設けられているとともに他方の電線26が挿通される複数の挿通溝37が設けられている。
【0024】
ケース35内には、例えばCT(Current Transformer)で構成され、各挿通孔36に挿通された各電線26に流れる電流に応じた検出信号をそれぞれ出力する複数の電流検出手段38が配置されている。ケース35の端部には、各電流検出手段38で検出された検出信号を電力計測部33に出力するためのコネクタ39が配置されている。
【0025】
電力計測部33は、導電バー13の下段側で複数の分岐ブレーカ14と並んで取付板20上に取り付けられているとともに、分岐ブレーカ14と同様に導電バー13に電気的に接続されて電力の供給を受けて動作するように構成されている。電力計測部33からは、各センサ部32のコネクタ39に電気的に接続されるコネクタを有する一対のケーブル(図示せず)が導出されている。
【0026】
図3に示すように、電力計測部33は、導電バー13から電圧を検出する電圧検出手段41、電圧検出手段41および各電流検出手段38からの検出信号を取得して電力を演算する演算部42、および演算部42での演算結果を分電盤10の外部に設置される例えばホームゲートウェイなどの機器に出力する出力部43を有している。
【0027】
図1には電力計測ユニット15による電流検出の模式図を示す。
【0028】
なお、図中の符号R100は100Vの負荷、R200は200Vの負荷を示す。これら負荷R100,R200には分岐ブレーカ14を通じて交流電源が供給されるが、分岐ブレーカ14は図示を省略している。
【0029】
単相3線式の交流電源は、中性極Nおよび一対の電圧極L1,L2を有し、電圧極L1と中性極Nとの間および中性極Nと電圧極L2との間が100V、電圧極L1と電圧極L2との間が200Vとなっている。
【0030】
分岐ブレーカ14に100Vの負荷R100が接続される場合、上段側の分岐ブレーカ14においては電圧極L1と中性極Nとに接続され、下段側の分岐ブレーカ14においては中性極Nと電圧極L2とに接続され、それぞれ100Vの交流電源が負荷R100に供給される。
【0031】
分岐ブレーカ14に200Vの負荷R200が接続される場合、分岐ブレーカ14においては電圧極L1と電圧極L2とに接続され、200Vの交流電源が負荷R200に供給される。
【0032】
そして、100Vの負荷R100が接続される分岐ブレーカ14においては、負荷R100に対して電圧極L1,L2側の配線場所に電流検出手段38が設置される。すなわち、100Vの負荷R100が接続される上段側の分岐ブレーカ14においては、負荷R100と電圧極L1との間の配線場所に電流検出手段38が設置され、また、100Vの負荷R100が接続される下段側の分岐ブレーカ14においては、負荷R100と電圧極L2との間の配線場所に電流検出手段38が設置される。
【0033】
200Vの負荷R200に接続される分岐ブレーカ14においては、負荷R200と電圧極L2との間の配線場所に電流検出手段38が設置される。
【0034】
各電流検出手段38の設置は、上述のように決められた配線場所に設置されるように、分岐ブレーカ14に接続される一対の電線26のうち、分岐ブレーカ14の場所や負荷の電圧に応じて予め決められている一方の電線26が、センサ部32の挿通孔36つまり電流検出手段38に挿通される。すなわち、100Vの負荷R100用で上段側の分岐ブレーカ14に接続される一対の電線26のうち、電圧極L1側に接続する一方の電線26が、電流検出手段38に通してから分岐ブレーカ14に接続される。100Vの負荷R100用で下段側の分岐ブレーカ14に接続される一対の電線26のうち、電圧極L2側に接続する一方の電線26が、電流検出手段38に通してから分岐ブレーカ14に接続される。200Vの負荷R200用の一対の電線26のうち、電圧極L2側に接続する一方の電線26が、電流検出手段38に通してから分岐ブレーカ14に接続される。
【0035】
このように、100Vの負荷R100を接続する上段側の分岐ブレーカ14と、100Vの負荷R100を接続する下段側の分岐ブレーカ14と、200Vの負荷R200を接続する分岐ブレーカ14とのそれぞれに応じて、予め決められた配線箇所に電流検出手段38が設置される。
【0036】
予め決められた配線箇所に電流検出手段38が設置されることにより、
図2に示すように、電圧検出手段41で検出される電圧の位相に対して、100Vの負荷R100と200Vの負荷R200とで電流検出手段38で検出された電流の位相が逆位相となる。すなわち、電圧検出手段41で検出される電圧の位相に対して、電流検出手段38で検出される100Vの負荷R100の電流の位相が同じ向きの位相となり、電流検出手段38で検出される200Vの負荷R200の電流の位相が逆位相となる。
【0037】
そして、演算部42は、電圧検出手段41で検出される電圧の位相に対する電流検出手段38で検出される100Vの負荷R100の電流の位相および200Vの負荷R200の電流の位相の情報、電流検出手段38が上段側の分岐ブレーカ14に接続される負荷に流れる電流を検出するのか下段側の分岐ブレーカ14に接続される負荷に流れる電流を検出するのかという情報などを予め保有している。そのため、電圧検出手段41で検出された電圧の位相と電流検出手段38で検出された電流の位相とから負荷の電圧を判断し、判断した負荷の電圧に基づいて電力を演算することができる。
【0038】
次に、電力計測ユニット15による電力計測動作を説明する。
【0039】
例えば、上段側の分岐ブレーカ14に接続される100Vの負荷R100で電力が使用されると、負荷R100に対して電圧極L1側に設置されている電流検出手段38により負荷R100に流れる電流が検出され、検出された検出信号が演算部42に入力される。そして、演算部42では、上段側の分岐ブレーカ14に接続される負荷に流れる電流を検出する電流検出手段38からの検出信号であることが分かっているため、
図2に示すように、電圧検出手段41で検出される電圧の位相に対して、電流検出手段38からの検出信号の位相が同じ向きの位相となっていれば、100Vの負荷R100であると判断し、100Vの電圧で電力を演算する。
【0040】
また、下段側の分岐ブレーカ14に接続される100Vの負荷R100で電力が使用されると、負荷R100に対して電圧極L2側に設置されている電流検出手段38により負荷R100に流れる電流が検出され、検出された検出信号が演算部42に入力される。この場合、電圧極L1と中性極Nとの間の電流の位相に対して中性極Nと電圧極L2との間の電流の位相が逆位相となるが、負荷R100に対して電圧極L2側に電流検出手段38が設置されているため、この電流検出手段38で検出される電流の位相は、上段側の分岐ブレーカ14に接続される負荷R100に対して電圧極L1側に設置された電流検出手段38で検出される電流の位相と同じ向きの位相となる。そして、演算部42では、下段側の分岐ブレーカ14に接続される負荷に流れる電流を検出する電流検出手段38からの検出信号であることが分かっているため、
図2に示すように、電圧検出手段41で検出される電圧の位相に対して、電流検出手段38からの検出信号の位相が同じ向きの位相となっていれば、100Vの負荷R100であると判断し、100Vの電圧で電力を演算する。
【0041】
また、分岐ブレーカ14に接続される200Vの負荷R200で電力が使用されると、負荷R200に対して電圧極L2側に設置された電流検出手段38により負荷R200に流れる電流が検出され、検出された検出信号が演算部42に入力される。そして、演算部42では、上段側または下段側の分岐ブレーカ14に接続される負荷に流れる電流を検出する電流検出手段38からの検出信号であることが分かっているため、
図2に示すように、電圧検出手段41で検出される電圧の位相に対して、電流検出手段38から検出信号の位相が逆位相となっていれば、200Vの負荷R200であると判断し、200Vの電圧で電力を演算する。
【0042】
このように、電力計測ユニット15では、電圧検出手段41で検出される電圧の位相に対して100Vの負荷と200Vの負荷とで検出した電流の位相が逆位相となるように電流検出手段38を設置するとともに、電圧検出手段41で検出される電圧の位相に対する電流検出手段38で検出される100Vの負荷R100の電流の位相および200Vの負荷R200の電流の位相の情報を演算部42が予め保有していることにより、演算部42では、電圧検出手段41で検出された電圧の位相と電流検出手段38で検出された電流の位相とから負荷の電圧を自動的に判断し、判断した負荷の電圧に基づいて電力を演算できる。そのため、分岐ブレーカ14に接続される負荷の電圧の設定作業が不要になり、設定間違いがなく、正確な電力の計測ができる。
【0043】
なお、
図2には電圧の位相と電流の位相とが同じ場合を示したが、負荷回路の影響によって位相が多少ずれていても、演算部42では負荷の電圧を判断できる。
【0044】
また、電圧検出手段41で検出される電圧の位相に対して、電流検出手段38で検出される100Vの負荷R100の電流の位相が逆位相となり、電流検出手段38で検出される200Vの負荷R200の電流の位相が同じ向きの位相となるようにしてもよい。この場合、100Vの負荷R100が接続される上段側の分岐ブレーカ14においては、負荷R100と中性極Nとの間の配線場所に電流検出手段38を設置し、また、100Vの負荷R100が接続される下段側の分岐ブレーカ14においては、負荷R100と中性極Nとの間の配線場所に電流検出手段38を設置し、また、200Vの負荷R200に接続される分岐ブレーカ14においては、負荷R200と電圧極L1との間の配線場所に電流検出手段38を設置すればよい。
【0045】
また、電流検出手段38にCTを用いる場合、CTの検出コイルで電流の方向を検出する向きがあるため、電圧検出手段41で検出される電圧の位相に対して100Vの負荷と200Vの負荷とで検出した電流の位相が逆位相となるように、CTの検出コイルで電流の方向を検出する向きを変えるようにしてもよい。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。