(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリンダ内孔を有するシリンダボディと、このシリンダボディの前記シリンダ内孔にシリンダ軸方向に移動可能に組付けられて前記シリンダボディ内に作動液を給排可能な反力液室を形成しブレーキ操作部材によって一体的に駆動可能な入力ピストンと、この入力ピストンに対して同軸的に配置されかつ前記シリンダ内孔にシリンダ軸方向に移動可能に組付けられて前記シリンダボディ内に作動液を給排可能な駆動液室と作動液を給排可能な圧力室を形成し前記入力ピストンまたは前記駆動液室に供給される作動液によって駆動されるマスタピストンとを備えていて、前記駆動液室内の液圧は前記入力ピストンに対して相殺されるように構成されているマスタシリンダと、
前記ブレーキ操作部材の作動量に応じて、電気制御装置によって作動を制御される電動式液圧源と電磁弁を備えていて、前記電動式液圧源が前記反力液室と前記駆動液室に作動液を供給可能であり、前記電磁弁が前記反力液室内の液圧と前記駆動液室内の液圧を別個に制御可能である液圧制御回路と、
前記マスタシリンダの前記圧力室とホイールシリンダの圧力室を接続する液圧回路に介装されていて、車輪のスリップ状態に応じて作動を制御されて、前記ホイールシリンダの圧力室に供給される液圧を制御可能な液圧制御用アクチュエータを備えていて、
前記電気制御装置は、
前記液圧制御用アクチュエータの作動・非作動を判定するABS判定手段と、
前記ABS判定手段により、前記液圧制御用アクチュエータが非作動であると判定されたときに、前記電動式液圧源を作動状態で保持し、前記電磁弁を前記ブレーキ操作部材の作動量に応じて第1制御モードにて制御して、前記反力液室内の液圧と前記駆動液室内の液圧を制御する通常時制御手段と、
前記ABS判定手段により、前記液圧制御用アクチュエータが作動していると判定されたときに、前記電動式液圧源を作動状態で保持し、前記電磁弁を前記ブレーキ操作部材の作動量に応じて第2制御モードにて制御して、前記反力液室内の液圧と前記駆動液室内の液圧を制御するABS時制御手段を備えていて、
前記ブレーキ操作部材の作動量が設定値を超える領域で、
前記電磁弁が前記ブレーキ操作部材の作動量に応じて第2制御モードにて制御されることによって得られる前記反力液室内の液圧は、前記電磁弁が前記ブレーキ操作部材の作動量に応じて第1制御モードにて制御されることによって得られる前記反力液室内の液圧に比して、高く設定されている車両用液圧ブレーキ装置。
【発明の概要】
【0005】
ところで、上記したABS作動時において、ブレーキ操作部材に過大な操作力が加えられて、入力ピストンが駆動されると、駆動液室の液圧が過大に増大する、または、入力ピストンがマスタピストンに直に当接して、駆動液室の液圧と圧力室の液圧との差圧が過大に増大する。このため、液圧制御用アクチュエータ(ABS用モジュレータ)の作動(増減圧作動)に伴う振動・騒音が増大し、操作フィーリングを悪化させるおそれがある。上記した問題は、低μ路面での制動時(マスタピストンの初期位置からのストローク量が少ない場合)において、顕著に現れやすい。
【0006】
本発明は、上記した課題を解消すべくなされたものであり、
シリンダ内孔を有するシリンダボディと、このシリンダボディの前記シリンダ内孔にシリンダ軸方向に移動可能に組付けられて前記シリンダボディ内に作動液を給排可能な反力液室を形成しブレーキ操作部材によって一体的に駆動可能な入力ピストンと、この入力ピストンに対して同軸的に配置されかつ前記シリンダ内孔にシリンダ軸方向に移動可能に組付けられて前記シリンダボディ内に作動液を給排可能な駆動液室と作動液を給排可能な圧力室を形成し前記入力ピストンまたは前記駆動液室に供給される作動液によって駆動されるマスタピストンとを備えていて、前記駆動液室内の液圧は前記入力ピストンに対して相殺されるように構成されているマスタシリンダと、
前記ブレーキ操作部材の作動量に応じて、電気制御装置によって作動を制御される電動式液圧源と電磁弁を備えていて、前記電動式液圧源が前記反力液室と前記駆動液室に作動液を供給可能であり、前記電磁弁が前記反力液室内の液圧と前記駆動液室内の液圧を別個に制御可能である液圧制御回路と、
前記マスタシリンダの前記圧力室とホイールシリンダの圧力室を接続する液圧回路に介装されていて、車輪のスリップ状態に応じて(前記電気制御装置とは別の電気制御装置、または、前記電気制御装置により)作動を制御されて、前記ホイールシリンダの圧力室に供給される液圧を制御可能な液圧制御用アクチュエータ(ABS用モジュレータ)を備えていて、
前記電気制御装置は、
前記液圧制御用アクチュエータの作動・非作動を判定するABS判定手段と、
前記ABS判定手段により、前記液圧制御用アクチュエータが非作動であると判定されたときに、前記電動式液圧源を作動状態で保持し、前記電磁弁を前記ブレーキ操作部材の作動量に応じて第1制御モードにて制御して、前記反力液室内の液圧と前記駆動液室内の液圧を制御する通常時制御手段と、
前記ABS判定手段により、前記液圧制御用アクチュエータが作動していると判定されたときに、前記電動式液圧源を作動状態で保持し、前記電磁弁を前記ブレーキ操作部材の作動量に応じて第2制御モードにて制御して、前記反力液室内の液圧と前記駆動液室内の液圧を制御するABS時制御手段を備えていて、
前記ブレーキ操作部材の作動量が設定値を超える領域で、
前記電磁弁が前記ブレーキ操作部材の作動量に応じて第2制御モードにて制御されることによって得られる前記反力液室内の液圧は、前記電磁弁が前記ブレーキ操作部材の作動量に応じて第1制御モードにて制御されることによって得られる前記反力液室内の液圧に比して、高く設定されている車両用液圧ブレーキ装置
に特徴がある。
【0007】
上記した本発明の車両用液圧ブレーキ装置においては、ABS作動時に、反力液室内の液圧を、ABS非作動時(通常時)とは異ならせる(ABS非作動時に比して高くする)ことが可能である。これにより、ABS作動時におけるブレーキ操作部材の操作フィーリングを、ABS非作動時におけるブレーキ操作部材の操作フィーリングとは異ならせて、ABS作動時に適したものとすること(例えば、ABS作動時におけるブレーキ操作部材の過負荷操作時に、入力ピストンの過大な作動量を抑制することが可能であり、操作フィーリングを向上させること)が可能である。
【0008】
また、本発明では、ABS作動時におけるブレーキ操作部材の過負荷操作時に、ブレーキ操作部材の過作動抑制(入力ピストンの過移動抑制)によって、駆動液室内液圧や圧力室内液圧の不必要な増大を抑制することが可能であり、液圧制御回路や液圧制御用アクチュエータ(ABS用モジュレータ)での消費電力の低減を図ることも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明による車両用液圧ブレーキ装置(以下、単にブレーキ装置という)の一実施形態を概略的に示したものであり、このブレーキ装置100は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル10と、このブレーキペダル10の踏込操作に基づいて作動可能なマスタシリンダ20、ホイールシリンダFL・FR・RL・RR、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ(ABS用モジュレータ)30、液圧制御回路40およびブレーキECU(電気制御装置)50等を備えている。
【0011】
ブレーキペダル10は、ドライバによって踏み込まれることにより、マスタシリンダ20のシリンダボディ21に組付けられている入力ピストン22を一体的に駆動(押動)可能に構成されている。ブレーキペダル10の操作量(作動量)は、ストロークセンサS1と踏力センサS2によって検出されるように構成されている。ストロークセンサS1と踏力センサS2の検出信号はブレーキECU50に伝えられるように構成されていて、ブレーキECU50でストロークセンサ値Sと踏力センサ値Fが把握できるように構成されている。なお、ブレーキ操作部材は、ブレーキペダル10に限定されるものではなく、例えば、ブレーキレバー等であっても実施可能である。
【0012】
マスタシリンダ20は、リザーバRに接続されるとともにブレーキ液圧制御用アクチュエータ30と液圧制御回路40に接続されるシリンダ内孔21aを有するシリンダボディ21と、このシリンダボディ21に組付けた入力ピストン22と前後一対のマスタピストン23、24と前後一対のスプリング25、26等を備えている。
【0013】
入力ピストン22は、シリンダボディ21のシリンダ内孔21aにシリンダ軸方向に移動可能に組付けられていて、シリンダボディ21a内に作動液(ブレーキ液)を給排可能な反力液室C1を形成しており、後端部がシリンダボディ22外に突出していてブレーキペダル10によって駆動可能とされている。また、入力ピストン22は、後方のマスタピストン23に係合・離脱可能な小径部22aを有していて、
図1の状態(復帰位置状態)では後方のマスタピストン23に対して所定量Lo軸方向に離れている。
【0014】
後方のマスタピストン23は、入力ピストン22に対して同軸的に配置されかつシリンダ内孔21aにシリンダ軸方向に移動可能に組付けられていて、入力ピストン22との間にあるシリンダボディ21内に作動液を給排可能な駆動液室C2を形成し、前方のマスタピストン24との間にあるシリンダボディ21内に作動液を給排可能な圧力室C3を形成している。また、後方のマスタピストン23は、スプリング25によって
図1の位置(復帰位置)に向けて付勢されていて、入力ピストン22の小径部22aまたは駆動液室C2に供給される作動液によってスプリング25の付勢力に抗して駆動されるように構成されている。また、この実施形態では、入力ピストン22に軸方向孔22bと径方向孔22cが設けられていて、駆動液室C2内の液圧が入力ピストン22に対して相殺される(入力ピストン22の軸方向に作用しない)ように構成されている。
【0015】
前方のマスタピストン24は、入力ピストン22および後方のマスタピストン23に対して同軸的に配置されかつシリンダ内孔21aにシリンダ軸方向に移動可能に組付けられていて、シリンダボディ21の底壁間にあるシリンダボディ21内に作動液を給排可能な圧力室C4を形成している。また、前方のマスタピストン24は、スプリング26によって
図1の位置(復帰位置)に向けて付勢されていて、スプリング25または圧力室C3内の作動液によってスプリング26の付勢力に抗して駆動されるように構成されている。
【0016】
上記した反力液室C1と駆動液室C2は、液圧制御回路40に接続されている。一方、各圧力室C3、C4は、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ30に接続されている。なお、反力液室C1と各圧力室C3、C4は、各ピストン22、23、24が
図1の復帰位置にあるとき、リザーバRに連通しているものの、各ピストン22、23、24が復帰位置から所定量以上に前方へ移動することにより、リザーバRとの連通が遮断されるように構成されている。
【0017】
なお、マスタシリンダ20の上述以外の構成は、特開2012−20707号公報の
図1に記載されている車両用液圧ブレーキ装置におけるマスタシリンダの構成と同じであるため、その説明は省略する。また、ホイールシリンダFL・FR・RL・RRと、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ30の各構成は、特開2012−20707号公報の
図1に記載されている車両用液圧ブレーキ装置におけるホイールシリンダと、ブレーキ液圧制御用アクチュエータの各構成と同じである。
【0018】
ブレーキ液圧制御用アクチュエータ30は、周知のように、マスタシリンダ20の圧力室C3,C4とホイールシリンダFL・FR・RL・RRの圧力室を接続する液圧回路に介装されている。また、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ30は、各車輪のスリップ状態(各車輪速センサS5,S6、S7,S8の出力)に応じ、ブレーキECU50とは別の電気制御装置(ABS用ECU)60によって周知のように作動を制御されて、ホイールシリンダFL・FR・RL・RRの圧力室に供給される液圧を制御可能に構成されている。なお、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ30の作動がブレーキECU50によって制御されるように構成して実施することも可能である。
【0019】
ところで、この実施形態の液圧制御回路40は、反力液室C1と駆動液室C2に作動液を供給可能な一つの電動式液圧源41(ポンプPとモータM)と、この電動式液圧源41の吸入路411に接続されているとともに還流路412に接続されていて作動液を収容するリザーバRと、電動式液圧源41の吐出路413と反力液室C1を接続する第1供給経路414と、この第1供給経路414と還流路412を接続する第1排出経路415と、電動式液圧源41の吐出路413と駆動液室C2を接続する第2供給経路416と、この第2供給経路416と還流路412を接続する第2排出経路417とを備えている。
【0020】
また、液圧制御回路40は、第1開閉弁V1と、第2開閉弁V2と、メイン逆止弁V3と、第1逆止弁V4と、第2逆止弁V5と、第1制御弁V6と、第2制御弁V7を備えているとともに、一対の圧力センサS3、S4を備えている。第1開閉弁V1は、常開型で電磁式の開閉弁であり、第1供給経路414と第1排出経路415の接続部X1より上流にて第1供給経路414に介装されている。第2開閉弁V2は、常開型で電磁式の開閉弁であり、第2供給経路416と第2排出経路417の接続部X2より上流にて第2供給経路416に介装されている。
【0021】
メイン逆止弁V3は、電動式液圧源41の吐出路413に介装されていて、上流側への作動液の流れを規制するように構成されている。第1逆止弁V4は、第1供給経路414にて第1開閉弁V1に対して並列に配置されていて、下流側への作動液の流れを規制するように構成されている。第2逆止弁V5は、第2供給経路416にて第2開閉弁V2に対して並列に配置されていて、下流側への作動液の流れを規制するように構成されている。第1制御弁V6は、第1排出経路415に介装されていて、電動式液圧源41から反力液室C1に供給される液圧をブレーキペダル10の作動量に応じて制御するように構成されている。第2制御弁V7は、第2排出経路417に介装されていて、電動式液圧源41から駆動液室C2に供給される液圧をブレーキペダル10の作動量に応じて制御するように構成されている。
【0022】
圧力センサS3は、第1供給経路414内の圧力を検出するセンサであり、その検出信号はブレーキECU50に伝えられることで、ブレーキECU50で第1供給経路414内の圧力Prが把握できるように構成されている。一方、圧力センサS4は、第2供給経路416内の圧力を検出するセンサであり、その検出信号はブレーキECU50に伝えられることで、ブレーキECU50で第2供給経路416内の圧力Psが把握できるように構成されている。
【0023】
上記した電動式液圧源41と第1開閉弁V1、第2開閉弁V2、第1制御弁V6、第2制御弁V7等(液圧制御回路40の電気機器)は、各センサS1〜S4の検出信号や、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ30の作動・非作動を判定するための信号(ブレーキ液圧制御用アクチュエータ30またはABS用ECU60から得られる信号)等に基づいて、ブレーキECU(電気制御装置)50によって各作動を制御されるように構成されている。
【0024】
また、この実施形態では、通常のブレーキ作動時(ABS非作動時)において、駆動液室C2内の液圧(電動式液圧源41から吐出路413に吐出されて第2供給経路416に供給される作動液が第2制御弁V7によって減圧制御されて得られる液圧)が反力液室C1内の液圧(電動式液圧源41から吐出路413に吐出されて第1供給経路414に供給される作動液が第1制御弁V6によって減圧制御されて得られる液圧)に比して高くなるように設定されている。
【0025】
ブレーキECU50は、
図5に示したブレーキ作動制御プログラムを備えている。
図5に示したブレーキ作動制御プログラムは、所定の演算周期(例えば、数msec)毎に繰り返し実行されるものであり、踏力センサS2によって検出される踏力センサ値Fが閾値F1を超えているとき(ブレーキペダル10の作動量(操作量)が設定値を超えているとき)に、プログラムの実行が開始され(ステップ201)、ステップ202にてブレーキ液圧制御用アクチュエータ30の作動・非作動(ABS作動か否か)が判定される。
【0026】
ステップ202にて「No」と判定された場合(ABS非作動時)には、ステップ203が実行されてステップ204にてプログラムの実行が終了する。ステップ203では、通常モード制御プログラムが実行されて、ブレーキペダル10の作動量(入力ピストン22のストローク量)に応じて、電動式液圧源41から反力液室C1に供給される液圧(
図6の特性線Pa参照)と、電動式液圧源41から駆動液室C2に供給される液圧がそれぞれ制御される。
【0027】
また、ステップ202にて「Yes」と判定された場合(ABS作動時)には、ステップ205が実行されてステップ204にてプログラムの実行が終了する。ステップ205では、ABSモード制御プログラムが実行されて、ブレーキペダル10の作動量(入力ピストン22のストローク量)に応じて、電動式液圧源41から反力液室C1に供給される液圧(
図6の特性線Pb参照)と、電動式液圧源41から駆動液室C2に供給される液圧がそれぞれ制御される。
図6の特性線Pbは、入力ピストン22のストローク量がSoであるときにABS作動が開始した場合のものであり、入力ピストン22のストローク量がSo以前または以後にABS作動が開始した場合の特性線もそれぞれ設定されている。なお、ABS作動時において電動式液圧源41から駆動液室C2に供給される液圧は、ABS非作動時のものと同じである。
【0028】
上記のように構成したこの実施形態においては、電気系が正常である場合、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ30内の電気機器と、液圧制御回路40における電動式液圧源(ポンプ・モータ)41、第1開閉弁V1、第2開閉弁V2、第1制御弁V6、第2制御弁V7等の電気機器が正常に作動可能である。このため、ブレーキペダル10の作動量(操作量)が所定量以上である通常のブレーキ作動時には、
図5のステップ201,202、203、204が実行されて、
図3に示したように、液圧制御回路40の第1制御弁V6と第2制御弁V7(電磁弁)が、ブレーキペダル10の作動量(操作量)に応じて、反力液室C1内の液圧と駆動液室C2内の液圧を別個に制御する。したがって、この場合には、通常モード(第1制御モード)の制御プログラムが得られて、ブレーキペダル10の作動量(操作量)に応じた液圧(反力液室C1内の液圧(
図6のPa参照)と駆動液室C2内の液圧)が得られて、所期の反力と制動力が得られる。
【0029】
また、この実施形態では、電気系が失陥した場合(例えば、電源失陥時)、液圧制御回路40において、電動式液圧源(ポンプ・モータ)41が停止状態となり、第1開閉弁V1と第2開閉弁V2が開状態となり、第1制御弁V6と第2制御弁V7が閉状態となる(
図2参照)。このため、メイン逆止弁V3により電動式液圧源41の吐出路413が上流側への作動液の流れを規制された状態で、反力液室C1が、第1開閉弁V1と第1チェック弁V4が介装されている第1供給経路414と、第2開閉弁V2と第2チェック弁V5が介装されている第2供給経路416を通して、駆動液室C2に連通接続される。
【0030】
したがって、この場合には、ブレーキペダル10の作動量(操作量)に応じて、反力液室C1内の作動液が、上述した第1供給経路414と第2供給経路416を通して、駆動液室C2に遅れなく供給されて、マスタピストン23、24が無効ストロークなく作動する。このため、マスタシリンダ20が的確に作動し、所期の制動力を発生させることが可能である。
【0031】
ところで、この実施形態では、電気系が正常である場合のブレーキ作動時において、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ30がABS作動を開始すると、
図5のステップ201,202、205、204が実行されて、
図4に示したように、液圧制御回路40の第1制御弁V6と第2制御弁V7が、ブレーキペダル10の作動量(操作量)に応じて、反力液室C1内の液圧と駆動液室C2内の液圧を別個に制御する。この場合には、ABSモード(第2制御モード)の制御プログラムが得られて、ブレーキペダル10の作動量(操作量)に応じた液圧(反力液室C1内の液圧(
図6のPb参照)と駆動液室C2内の液圧)が得られる。このため、ABS作動時には、反力液室C1内の液圧をABS非作動時(通常時)に比して高めることが可能である。これにより、ブレーキペダル10の過大な踏込(過負荷操作)時に、入力ピストン22の過大な作動量を抑制すること(ブレーキペダル10の過大な作動量を抑制すること)が可能であり、操作フィーリングを向上させること(操作フィーリングの適合化)が可能である。
【0032】
また、この場合には、ABS作動時におけるブレーキペダル10の過負荷操作時に、ブレーキペダル10の過作動抑制(入力ピストン22の過移動抑制)によって、駆動液室C2内液圧や圧力室C1内液圧の不必要な増大を抑制することが可能であり、液圧制御回路40やブレーキ液圧制御用アクチュエータ30での消費電力の低減を図ることも可能である。なお、液圧制御回路40での消費電力の低減は、主として、電動式液圧源41での吐出圧の増大抑制によって得られる。また、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ30での消費電力の低減は、主として、駆動液室C2の液圧と圧力室C3,C4の液圧との差圧増大抑制(ブレーキ液圧制御用アクチュエータ30内の電気機器の仕事量減少)によって得られる。
【0033】
なお、上記した実施形態において、通常のブレーキ作動時(
図3参照)に、回生制動が要求される状態にて、第2開閉弁V2が通電されるように設定すれば、第2開閉弁V2は第2供給経路416を閉じて、電動式液圧源(ポンプ・モータ)41から駆動液圧室C2への液圧供給を遮断する。このため、この場合には、回生制動装置(図示省略)にて制動力が得られ、マスタシリンダ20にてブレーキ操作反力は得られるものの制動力が得られない状態とすることが可能であり、高い回生効率を確保したブレーキ作動を得ることが可能である。
【0034】
また、上記した実施形態において、自動ブレーキ作動(ブレーキペダル10の作動(操作)によらないブレーキ作動)が要求される状態にて、第1開閉弁V1が通電されるように設定すれば、第1開閉弁V1は第1供給経路414を閉じて、電動式液圧源(ポンプ・モータ)41から反力液圧室C1への液圧供給を遮断する。なお、自動ブレーキ作動が要求される状態では、第1開閉弁V1が通電状態とされる他に、電動式液圧源(ポンプ・モータ)41が駆動状態とされ、第2制御弁V7が制御状態とされる。このため、電動式液圧源(ポンプ・モータ)41から駆動液圧室C2に液圧が供給されるとともに、同液圧が第2制御弁V7によって制御されて、所望のブレーキ作動が得られる。
【0035】
上記した実施形態においては、ABS作動時において、
図4に示したように、第1制御弁V6がブレーキペダル10の作動量に応じてABSモードにて制御されることによって、反力液室C1内の液圧(Pb)が得られるように構成して実施したが、ABS作動時において、
図7に示したように、反力液室C1が第1開閉弁V1と第1制御弁V6によって密封されるように構成して実施することも可能である。この場合には、反力液室C1内の液圧が
図6の特性線Pcのようになり、入力ピストン22の過大な移動量が抑制(阻止)される。なお、
図7に示した実施形態においては、第1開閉弁V1に対して並列的に配置される第1逆止弁V4を無くして実施したが、第1開閉弁V1に対して並列的に配置される第1逆止弁V4を設けて実施することも可能である。
【0036】
また、上記した実施形態においては、液圧制御回路40の構成が
図1〜
図4と
図7に示した構成(一つの電動式液圧源(ポンプ・モータ)41と、4個の電磁弁V1、V2、V6、V7を備えている構成)である実施形態について説明したが、本発明の実施に際して、液圧制御回路の構成は、前記ブレーキ操作部材(10)の作動量に応じて、電気制御装置(50)によって作動を制御される電動式液圧源(ポンプ・モータ)と電磁弁を備えていて、前記電動式液圧源が前記反力液室と前記駆動液室に作動液を供給可能であり、前記電磁弁が前記反力液室内の液圧と前記駆動液室内の液圧を別個に制御可能であればよく、電動式液圧源(ポンプ・モータ)と電磁弁の個数や構成は、適宜変更が可能である。