(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871141
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】光電変換素子評価装置
(51)【国際特許分類】
H02S 50/10 20140101AFI20160216BHJP
H01L 31/18 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
H02S50/10
H01L31/04 424
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-213805(P2013-213805)
(22)【出願日】2013年10月11日
(65)【公開番号】特開2015-76583(P2015-76583A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2015年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昭成
(72)【発明者】
【氏名】石川 真人
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 幸樹
(72)【発明者】
【氏名】坪田 孝志
【審査官】
清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−177218(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0122612(US,A1)
【文献】
特開平11−051856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 50/10
H01L 31/18−31/20
H01L 21/66
G01N 21/63−21/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触により光電変換素子の評価を行う光電変換素子評価装置であって、
測定対象である光電変換素子にプローブ光を照射するプローブ光源と、
プローブ光が照射されている前記光電変換素子にパルス状のポンプ光を照射するポンプ光源と、
前記光電変換素子に照射される前記プローブ光の変化量を検出する受光素子と、
前記光電変換素子にプローブ光を照射しながらパルス状のポンプ光を照射することにより前記受光素子で検出される前記プローブ光の変化量のピーク値aとこのピーク値aから一定時間経過した時点における変化量bを抽出し、これら変化量のピーク値aと変化量bに基づいて判定基準を設定し、この判定基準に基づいて前記抽出されたプローブ光の変化量bの良否を判定して判定結果を外部に出力する信号処理部、
とで構成されていることを特徴とする光電変換素子評価装置。
【請求項2】
前記光電変換素子は、ロール・ツー・ロールにより連続生産される生産ライン段階のものであることを特徴とする請求項1記載の光電変換素子評価装置。
【請求項3】
前記プローブ光は、前記ポンプ光の照射期間およびその前後を含むパルス幅を有するパルス光であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光電変換素子評価装置。
【請求項4】
前記プローブ光は、連続光であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光電変換素子評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子評価装置に関し、詳しくは、光電変換素子の生産ライン工程における評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子(たとえば太陽電池)の特性評価にあたっては、太陽電池の電流電圧特性を測定して最大出力(Pmax)を算出し、変換効率(PCE)を計算することにより判定パラメータとしている。変換効率は、最大出力を疑似太陽光照射出力と太陽電池面積とで割ることで計算する。
【0003】
図7は、従来の太陽電池評価装置の一例を示すブロック図である。太陽電池1には疑似太陽光源2から疑似太陽光が照射され、太陽電池1の電極間には負荷3が接続されるとともに負荷3と直列に電流計4が接続され、負荷3と並列に電圧計5が接続されている。
【0004】
太陽電池1の最大出力Pmaxおよび変換効率PCEは、太陽電池1に疑似太陽光源2からの疑似太陽光を照射した状態で、太陽電池1の電極間に接続された負荷3を可変させながら電流計4で電流を測定するとともに電圧計5で電圧を測定することにより、
図8に示すような電流電圧特性曲線を求めて算出する。
【0005】
図8において、ΔIocは回路を開いた状態からの電流減少量、ΔVocは回路を開いた状態からの電圧低下量であり、太陽電池1の内部における並列抵抗成分Rshを次式で求めることができる。
Rsh=−ΔVoc/ΔIoc
【0006】
一方、ΔIscは回路を短絡した状態に至る近傍における電流減少量、ΔVscは回路を短絡した状態に至る近傍における電圧低下量であり、太陽電池1の内部における直列抵抗成分Rsを次式で求めることができる。
Rs=−ΔVsc/ΔIsc
【0007】
変換効率PCEは、最大出力をPmax、疑似太陽光源2から太陽電池1に照射される疑似太陽光の照射パワーをE、太陽電池1の面積をAとすると、次式で求めることができる。
PCE=Pmax/(E・A)
【0008】
なお、最大出力Pmax時における電流を最大出力電流Imaxとし、電圧を最大出力電圧Vmaxとする。
【0009】
特許文献1には、エピタキシャルウェハの状態のままで、発光出力や応答速度を評価する検査方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−64652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、太陽電池1の製造方式として、ロール状の基板シートに印刷技術を用いて多数の太陽電池を形成しながら順次巻き取るロール・ツー・ロールとよばれる連続生産方式が注目されている。
【0012】
しかし、従来の評価装置は太陽電池1の電極間に接続された負荷3を可変させなければならないことから、太陽電池1と負荷3との電気的な接続が必須であり、ロール・ツー・ロールの連続生産方式で用いることは困難である。
【0013】
すなわち、測定評価対象である太陽電池1は電極のない状態で生産プロセスの途中段階の生産ライン上を移動しているので、太陽電池1を傷付けることなく測定用プローブピンを太陽電池1に接触させることは事実上不可能である。
【0014】
したがって、製造工程の途中で不具合が発生していてもロールの最後まで作り切ってしまわないと良否の判断ができない。
【0015】
この結果、場合によっては、全長が数100メートルにもなるロール一本分の太陽電池が全て不良になってしまうことも考えられる。
【0016】
本発明は、このような従来の問題点に着目したものであり、その目的は、ロール・ツー・ロールにより生産される光電変換素子について、生産ライン段階で非接触で測定することにより、光電変換素子を傷付けることなく的確な特性評価判断が行える光電変換素子評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このような課題を達成する請求項1の発明は、
非接触により光電変換素子の評価を行う光電変換素子評価装置であって、
測定対象である光電変換素子にプローブ光を照射するプローブ光源と、
プローブ光が照射されている前記光電変換素子にパルス状のポンプ光を照射するポンプ光源と、
前記光電変換素子に照射される前記プローブ光の
変化量を検出する受光素子と、
前記光電変換素子にプローブ光を連続照射しながらパルス状のポンプ光を照射することにより前記受光素子で検出される前記プローブ光の変化量のピーク値aとこのピーク値aから一定時間経過した時点における変化量bを抽出し、これら変化量のピーク値aと変化量bに基づいて判定基準を設定し、この判定基準に基づいて前記抽出されたプローブ光の変化量bの良否を判定して判定結果を外部に出力する信号処理部、
とで構成されていることを特徴とする。
【0018】
請求項2の発明は、請求項1記載の光電変換素子評価装置において、
前記光電変換素子は、ロール・ツー・ロールにより連続生産される生産ライン段階の光電変換素子であることを特徴とする。
【0019】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2記載の光電変換素子評価装置において、
前記プローブ光は、前記ポンプ光の照射期間およびその前後を含むパルス幅を有する
パルス光であることを特徴とする。
【0020】
請求項4の発明は、
請求項1または請求項2記載の光電変換素子評価装置において、
前記プローブ光は、連続光であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
これらにより、非接触測定であることから、ロール・ツー・ロールによる連続生産方式の生産ライン段階において、光電変換素子を傷付けることなく的確な特性評価判断を行うことができ、不良素子の早期発見により損失を最小限に抑えて歩留まりを改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施例を示す概念ブロック図である。
【
図2】ポンプ光のパルス照射によるキャリア応答の概念図である。
【
図3】キャリア応答によるプローブ光の光量変化の概念図である。
【
図4】太陽電池の特性を評価するパラメータの説明図である。
【
図6】本発明の他の実施例を示す概念ブロック図である。
【
図7】従来の太陽電池評価装置の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例を示す概念ブロック図である。
図1において、ポンプ光源6は太陽電池1にパルス状のポンプ光を照射するものであり、たとえばナノ秒パルスレーザーを使用する。
【0024】
プローブ光源7は太陽電池1に対してプローブ光を連続照射するものであり、たとえば半導体発光素子を使用する。
【0025】
検出器8は太陽電池1に照射されたプローブ光の変化量をリアルタイムに検出するものであり、たとえばフォトダイオードのような高速光検出器を使用する。
【0026】
信号処理部9は、波形取得部9a、データ抽出部9b、基準設定部
9c、データ判定部9d、判定出力部9eなどで構成されている。
【0027】
太陽電池1に対してプローブ光を連続照射しながらそこにパルス状のポンプ光を照射すると、太陽電池1では光電変換反応に起因して
図2に示すようにキャリア発生消滅過程が現れる。
図2はポンプ光のパルス照射によるキャリア応答の概念図であり、縦軸はキャリア量を示し、横軸は応答時間を示している。
【0028】
そして、プローブ光の光強度は、太陽電池1のキャリア発生状況に対応した光吸収過程などの変異の影響を受けることから、
図3のように変化する。
図3はキャリア応答によるプローブ光の光量変化の概念図であり、縦軸は光量変化を示し、横軸は応答時間を示している。
【0029】
これらから明らかなように、プローブ光の変化量をリアルタイムに検出してキャリア量の時間推移を計測することで、キャリア発生消滅状況を求めることができる。
【0030】
なお、プローブ光は連続光に限るものでなくパルス光としてもよい。パルス光の場合には、プローブ光のパルス幅はポンプパルスに対して十分広く、ポンプパルスの照射中およびその前後でプローブ光強度が安定なものを用いる。
【0031】
太陽電池が移動状態にあるロール・ツー・ロールなどの連続生産プロセスへの対応をはかるためには、評価時間の短縮化が必要である。そこで、本発明では、演算時間を短くするため、時間推移を評価する場合の一般的な手法であるキャリアライフタイム取得を行う方法ではなく、
図4に示すように、変化量のピーク値aと、ピーク値aから一定時間経過した時点における変化量bを判定基準として用いる。
図4は、太陽電池の特性を評価するパラメータの説明図である。
【0032】
図4において、ピーク値aの値が大きくかつ変化量bの値が大きいものが太陽電池としての効率が良く良品となる。ピーク値aは発生キャリアの量に対応しており、値が大きければ発生したキャリアが多いことを表している。変化量bはキャリア消滅の程度に対応しており、値が小さければ多くのキャリアがリークなどにより消滅したことを表している。各々の値については、材料やプロセス条件などによって適切値があるので、適宜調整を行う。
【0033】
図5は太陽電池の特性測定例図であり、(A)は変換効率と時間変化量ピーク値の関係を示し、(B)は時間変動率と最大変換出力電流Imaxの関係を示している。太陽電池の光電変換効率は、本来はキャリア発生量と相関があり、図(A)における一点鎖線直線がその相関である。この線から外れているものについては、何らかの問題があることになる。
【0034】
図(A)の一点鎖線直線を用いた場合は、判定例としてaを4mV以上とすると、PCE1%以上が選別できる。しかしながら、実際には一点鎖線直線から乖離した一点鎖線丸の部分のようにキャリア量がありながら変換効率が悪いものが存在する。これは内部リークなどによりキャリアが電流にならないもの、つまりImaxが悪いものと思われる。
【0035】
次にキャリア発生量に相当する変化量のピーク値aが5.5mV付近となる図(A)の破線で楕円状に囲まれたサンプルデータを抽出すると、ピーク値から一定時間経ったところの変化量bを100nsecの位置で評価するとしたときImaxとb/aの値には図(B)に示すように高い相関性がある。この場合はb/aを0.35以上にとることで、図(A)の黒破線の範囲のデバイスから図(A)の実線丸部分の良品のみを選別することが可能になる。
【0036】
信号処理部9において、波形取得部9aは、
図3に示すようなキャリア応答によるプローブ光の光量変化波形を取り込む。
【0037】
データ抽出部9bは、取り込まれた
図3の波形から、
図4に示すように、変化量のピーク値aと、ピーク値aから一定時間経過した時点における変化量bを抽出する。
【0038】
基準設定部9cは、データ抽出部9bで抽出された変化量bの良否を判定するための基準となる所定の基準値を設定する。
【0039】
データ判定部9dは、基準設定部9cにより設定される基準値に基づいて、データ抽出部9bで抽出された変化量bの良否を判定する。
【0040】
判定出力部9eは、データ判定部9dの良否判定結果を、測定対象である太陽電池1の判定結果として外部に出力する。
【0041】
ここで、判定手法として、ライフタイム評価を行うのではなく、時間的に2ポイントに絞りこんだスポット評価を行うことを導入したことにより、演算時間を大幅に短縮することができ、高速な測定にも対応することができる。
【0042】
また、内部電流リークの影響を推定できるため、将来、早期劣化する可能性のある太陽電池を取り除くこともできる。
【0043】
また、上記実施例では、変化量の比に基づいて良否判定を行う例を説明したが、変化量の差に基づいて良否判定を行うようにしてもよい。
【0044】
なお、測定系は、実施例のような反射光測定に限るものではなく、
図6に示すように、ポンプ光源6およびプローブ光源7と光検出器8とを測定対象である太陽電池1を挟むようにして対向配置した透過光測定でもよい。
【0045】
さらに、上記実施例では太陽電池の特性を測定する例について説明したが、本願発明はその他の光電変換素子の特性測定にも適用できるものである。
【0046】
以上説明したように、本発明によれば、非接触で光電変換素子を傷付けることなく的確な特性評価判断を行うことができ、たとえばロール・ツー・ロールにより生産される光電変換素子の生産ラインに適用することにより、不良素子の早期発見により損失を最小限に抑えて歩留まりを改善できる光電変換素子評価装置が実現できる。
【符号の説明】
【0047】
1 測定対象(太陽電池)
6 ポンプ光源
7 プローブ光源
8 光検出器
9 信号処理部