(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内周に複数の磁極爪が等配された2個一組のヨークリングを各ヨークリングの磁極爪が交互に並ぶように成形型の内部に位置決めし、前記成形型内に樹脂を充填して成形される樹脂製の保持筒により一体に保持させてなるヨーク組立体の製造方法において、
各ヨークリングの内周の少なくとも2箇所に配置された被位置決め部に前記成形型に設けられた共通の位置決めピンを当接させて、両ヨークリングを相互に位置決めするヨーク組立体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。本実施の形態では、
本発明の製造方法により製造されたヨーク組立体を含むトルク検出装置が自動車の電動パワーステアリング装置に適用された例に則して説明するが、本発明の
製造方法により製造されたヨーク組立体および
そのヨーク組立体を含むトルク検出装置は、電動パワーステアリング装置以外の他の装置や機器に適用することもできる。
図1は、本発明の一実施の形態の
製造方法により製造されたヨーク組立体を含むトルク検出装置を用いて操舵トルクを検出する電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
図1を参照して、電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結される操舵軸3と、操舵軸3に自在継手4を介して連結される中間軸5と、この中間軸5に自在継手6を介して連結されているピニオン軸7と、ピニオン軸7の先端部に設けられたピニオン8に噛み合うラック9を形成して車両の左右方向に延びるラック軸10とを有している。
【0031】
ラック軸10は、筒状のハウジング11に軸方向移動可能に支持されている。ラック軸10の両端部にはそれぞれタイロッド12が連結されており、各タイロッド12は、対応するナックルアーム(図示せず)を介して対応する転舵輪13に連結されている。
操舵部材2が操作されて操舵軸3が回転されると、この回転は中間軸5等を介してピニオン8に伝達され、ピニオン8およびラック9によって、車両の左右方向に沿うラック軸10の直線運動に変換される。これにより、転舵輪13の転舵が達成される。
【0032】
操舵軸3は、操舵部材2に連なる第1軸としての第1操舵軸14と、自在継手4に連なる第2軸としての第2操舵軸15とを有している。これら第1操舵軸14および第2操舵軸15は、連結軸としてのトーションバー16を介して同軸上に互いに連結されている。第1操舵軸14および第2操舵軸15は、互いにトルク伝達可能であり、所定の範囲内で相対回転可能とされている。
【0033】
電動パワーステアリング装置1は、操舵部材2に負荷される操舵トルクを検出するトルク検出装置17と、車速を検出する車速センサ18と、トルク検出装置17および車速センサ18の検出結果に基づいて、操舵補助用の電動モータ19を駆動制御するマイクロコンピュータを含むECU(Electronic Control Unit :電子制御ユニット)20とを備えている。
【0034】
トルク検出装置17では、トーションバー16のねじれに起因する第1操舵軸14と第2操舵軸15との相対回転変位量に基づく磁束変化から、第1操舵軸14および第2操舵軸15に付与されるトルクを検出する。
ECU20が操舵補助用の電動モータ19を駆動すると、その出力回転(動力)が、駆動ギヤとしてのウォーム21aおよび被動ギヤとしてのウォームホイール21bを含む減速機構21で減速されて、第2操舵軸15へ伝達される。第2操舵軸15に伝えられた動力は、さらに中間軸5等を介して、ピニオン軸7、ラック軸10、タイロッド12およびナックルアーム等を含む転舵機構22に伝えられ、運転者の操舵が補助される。
【0035】
図2は、トルク検出装置17の要部の概略分解斜視図であり、
図3はトルク検出装置を含む電動パワーステアリング装置の要部の縦断面図である。
図2に示すように、トーションバー16は、捩じりばねとして細径の丸棒の両端に大径の連結部16a,16bを備えている。第1操舵軸14および第2操舵軸15は、それぞれ連結孔14a,15aを備えている。
【0036】
トーションバー16の連結部16aおよび連結部16bは、それぞれ、第1操舵軸14の連結孔14aおよび第2操舵軸15の連結孔15aに嵌合されている。トーションバー16の一端の連結部16aは、ピン23を用いて第1操舵軸14に一体回転可能に結合されている。また、トーションバー16の他端の連結部16bは、ピン24を用いて第2操舵軸15に一体回転可能に結合されている。
【0037】
図3に示すように、第2操舵軸15は、ハウジング43内に上下2つの軸受91,92により両持ち支持されている。2つの軸受91,92の間において、第2操舵軸15に、ウォームホイール21bが一体回転可能に連結されている。
第2操舵軸15は、軸受91の上方に配置された連結筒93と、連結筒93の端面に開口し且つトーションバー16用の連結孔15aに連続する支持孔94とを備えている。第1操舵軸14の連結側端部は、支持孔94に適長挿入され、支持孔94に内嵌固定されたブッシュ95によって同軸を保って支持されている。
【0038】
トルク検出装置17の後述するヨーク組立体26の内周のカラー39が、第2操舵軸15の連結筒93の外周に一体回転可能に嵌合されている。
図2および
図3に示すように、トルク検出装置17は、第1操舵軸14と一体回転する多極磁石25と、多極磁石25の回りに第2操舵軸15と一体回転するヨーク組立体26と、一対の集磁リング27,28と、一対の磁気センサとしてのホールIC29,30とを備えている。
【0039】
図2に示すように、多極磁石25は、周方向に各複数のN極31およびS極32を交互に並べ、これらのN極31およびS極32を樹脂製の保持筒33により一体化してなる円筒磁石として構成されている。多極磁石25の軸線と、第1操舵軸14の軸線とは、互いに一致している。
ヨーク組立体26は、2個一組のヨークリング34,35を備えている。ヨーク組立体26は、両ヨークリング34,35を円筒形にモールド成形された保持筒36によって保持させて構成されている。
【0040】
図4はヨーク組立体26の概略斜視図である。
図4では、保持筒36を想像線(二点鎖線)により示し、2個のヨークリング34,35の形状および位置関係が示してある。
ヨークリング34,35は、軟磁性体製の薄肉の円環であり、それぞれの内周34a,35aには、軸方向に延びる各複数の磁極爪37,38が周方向に等配をなして連設してある。
【0041】
磁極爪37,38は、先端に向けて縮幅された三角形状を有し、多極磁石25のN極31とS極32の組と同数設けられている。
ヨーク組立体26は、2個のヨークリング34,35を、それぞれの磁極爪37,38の延長側を向き合わせて同軸上に配置し、各磁極爪37,38が周方向に等しい間隔を保って交互に並ぶように後述のように位置決めしている。多極磁石25に対向する各磁極爪37,38は、概略斜視図である
図5に示すように、保持筒36の内周36aに露出している。
【0042】
図4に示すように、各ヨークリング34,35の内周34a,35aの少なくとも2箇所には、保持筒の後述する成形型に設けられた位置決めピン82,83(
図4において、想像線としての二点鎖線で示されている)を用いて、各ヨークリング34,35を周方向に位置決めするための被位置決め部が設けられている。
位置決めピン82,83の断面形状は、図に示すような矩形状の他、円形状その他の丸型であってもよい。
【0043】
具体的には、
図5に示すように、保持筒36の内周36aには、軸方向X1に沿って延びる位置決め用の挿通溝50が形成されている。挿通溝50は、各位置決めピン82,83を抜き出した後の成形品に残る溝である。その挿通溝50を挟んだ両側に隣接する一対の磁極爪として、一方のヨークリング34の磁極爪37と、他方のヨークリング35の磁極爪38とが配置されている。
【0044】
挿通溝50の内面50aの一側には、一方のヨークリング34の磁極爪37の基部51の側面の一部が、被位置決め部55として露出している。また、挿通溝50の内面50aの他側には、他方のヨークリング35の磁極爪38の基部52の側面の一部が、被位置決め部56として露出している。
図4および
図5では、簡略化のため、磁極爪37,38の基部51,52は、その概略形状が模式的に示されている。実際には、プレスにて打ち抜き形成した製造用中間体から、磁極爪37,38を曲げ加工している関係上、
図6に示すように、各磁極爪37,38の基部51,52には、各磁極爪37,38の基端部61と、各磁極爪37,38の基端部61からヨークリング34,35に連なる連接部62とが含まれている。
【0045】
したがって、挿通溝50の内面50aに露出する基部51,52の側面により構成される被位置決め部55,56は、磁極爪37,38の基端部61の側面の少なくとも一部であってもよいし、また、連接部62の側面の少なくとも一部であってもよい。例えば、丸棒からなる位置決めピン82’を用いて、各磁極爪37,38の基部51,52の連接部62の側面を位置決めしてもよい。その場合、図示していないが、挿通溝50の内面50aには、各磁極爪37,38の基部51,52の連接部62の側面が露出することになる。
【0046】
図3および
図4に示すように、ヨークリング34,35は、ヨークリング34,35と同軸をなして配置された固定用のカラー39と共に、樹脂製の保持筒36により一体化されている。
図3に示すように、ヨーク組立体26のカラー39は、第2操舵軸15の連結筒93の外周に一体回転可能に嵌合されている。
多極磁石25及びヨーク組立体26が相対回転することによりヨークリング34,35間の磁束密度が変化するように構成されている。
【0047】
ヨーク組立体26は、第1操舵軸14および第2操舵軸15にトルクが加えられていない操舵中立状態において、それぞれの磁極爪37,38の先端が、多極磁石25のN極31及びS極32の境界を指すように配置される。
一対の集磁リング27,28は、軟磁性体を用いて形成された環状の部材であり、ヨークリング34,35の回りに相対回転可能に配置されており、ヨークリング34,35にそれぞれ磁気的に結合されている。
【0048】
一対の集磁リング27,28は、第1操舵軸14の軸方向X1に離隔して対向する平板状の集磁板40,41とを有している。集磁板40,41間に、ホールIC29,30が挿入されている。
一対の集磁リング27,28、ホールIC29,30および図示しない回路基板等が、樹脂製の保持筒42内にモールドされている。保持筒42は、一対の集磁リング27,28がハウジング43と同心になる状態で、ハウジング43に取り付けられている。
【0049】
ホールIC29,30は、集磁板40,41間に生ずる磁束の密度を検出するものであり、集磁板40,41間に生ずる磁束のうち、軸方向X1に平行な成分に応じた出力(電位差)を生じるように配置されている。
ECU20は、ホールIC29,30からの出力信号の信号レベル、即ちホールIC29,30の出力電圧に基づいて、操舵軸3に入力された操舵トルクを算出する構成となっている。
【0050】
図4に示した位置決めピン82,83は、
図5に示すように、一方のヨークリング34の相隣接する一対の磁極爪37の基部51の側面53間の間隔を規制し、且つ、前記相隣接する一対の磁極爪37間に介在する、他方のヨークリング35の1つの磁極爪38の基部52の両側の側面54,54間の間隔を規制する。すなわち、磁極爪37,38の基部51,52の側面53,54に、被位置決め部55,56が設けられている。
【0051】
各位置決めピン82,83の幅分の間隔によって、両ヨークリング34,35の磁極爪37,38間の間隔を規制している。位置決めピン82が、一方のヨークリング34に対する他方のヨークリング35の一方向の回転を規制し、位置決めピン83が、一方のヨークリング34に対する他方のヨークリング35の他方向の回転を規制する。
位置決めピン82,83の組は、ヨークリング34,35の径方向に対応する位置に、もう一組設けられている。各2個二組の位置決めピン82,83によって、ヨークリング34,35が周方向に位置決めされる。
【0052】
前記のような被位置決め部55,56を用いたヨークリング34,35の位置決めは、保持筒36を成形するための成形型の内部において、固定用のカラー39の位置決めを含めて以下に示すように実現される。ヨーク組立体26は、ヨークリング34,35が位置決めされた状態で保持筒36を成形することにより製造される。
図7〜
図11は、ヨーク組立体26の製造手順を示す説明図である。
【0053】
保持筒36の成形型は、保持筒36の軸長方向に分離可能な下型及び上型と、これらの間にて径方向に分離可能な一対の中間型とを組み合わせて構成される。
図7に示すように、下型80は、厚肉の円板であり、上面の中央に垂直に立設された円柱形の中芯81を備えている。また、下型80は、中芯81の外周に近接する同心円周上に同じく垂直に立設された2対の位置決めピン82,83を備えている。
【0054】
中芯81は、成形対象となる保持筒36の内径と略等しい外径を有している。中芯81の先端部には、カラー39の嵌め込みのための嵌合用段差部84が周設されている。位置決めピン82,83は、ヨークリング34,35の磁極爪37,38の基部の板厚面に設けられた位置決め部に沿って配置される図示のような板状ないし棒状の長尺材であり、前記同心円周上の相対向する位置に配してある。
【0055】
図7に示すように、ヨークリング35を、磁極爪38の突設側を上に向けて中芯81に嵌め込む。このとき、ヨークリング35の磁極爪38の基部52の両側の側面54が、2個一組の位置決めピン82,83によって挟まれる態様にて、ヨークリング35を下型80の上面に載置する。このように下型80に載置されたヨークリング35は、位置決めピン82,83の作用により周方向に移動不能に拘束され、下型80の上に正しく位置決めされる。
【0056】
中間型85は、保持筒36の外径に対応する孔型86を中心に備え、径方向に分離可能に構成された半円形の割型である。
図8中には、一方の中間型85のみが示されている。中心の孔型86の上下縁には係合溝87が周設してある。中間型85は、
図8に示すように下型80の上面に載置され、図示しない他方の中間型85と下型80の中心上にて合わされる。中間型85と下型80の中芯81との間に、保持筒36の内外径に相当する円環状の空間が形成される。このとき孔型86の下縁に設けた係合溝87は、
図8に示すように、下型80に載置されたヨークリング35の周縁を受け入れ、当該係合溝87と下型80との間に挾持する作用をなす。
【0057】
一方、孔型86の上縁に周設された係合溝87は、図示しない他方の中間型85の係合溝87と合わされて、上部のヨークリング34の周縁を受け入れる円形の受け座を構成する。下型80に突設された位置決めピン82,83の先端は、中間型85の上面よりも上方に適長突出している。上部のヨークリング34は、
図9に示すように、磁極爪37の突設側を下に向けて中芯81に嵌め込まれる。このヨークリング34の対応する2つの磁極
爪37の基部51の側面53間に、2個一組の位置決めピン82,83の先端を挿通させて、係合溝87により形成される前記受け座に載置する。
【0058】
このように載置された上部のヨークリング34は、相隣接する2つの磁極爪37の基部51の側面53間に差し込まれる2個一組の位置決めピン82,83の作用により、周方向に移動不能に拘束される。また、ヨークリング34は、中間型85の厚さ相当分だけ下型80の上面から離れて位置決めされる。
図示していないが、位置決めピン82,83の先端部分には、先細となるように成形された導入部が設けてある。これらの導入部は、位置決めピン82,83を、下部のヨークリング35の磁極爪38および上部のヨークリング34の磁極爪37の間に差し込む動作を容易にし、上下のヨークリング34,35の位置決めを確実にする作用をなす。
【0059】
以上のように上下のヨークリング34,35を位置決めした後、
図10に示すように、中芯81の先端に設けた嵌合用段差部84に固定用のカラー39を嵌め込み、このカラー39の下向き端面を嵌合用段差部84の上向き端面に突き当てて位置決めする。カラー39の下向き端面には、
図10に示すように凹部39aが設けられ、嵌合用段差部84の上向き端面には、
図7に示すように凹部39aに対応する凸部84aが設けてある。カラー39は、凹部39aと凸部84aとを係合させて周方向にも位置決めされる。
【0060】
この後、中間型85の上部に、図示しない上型をセットし、この上型と下型80との間に、中間型85を挾持するように型締めし、上型、下型80及び中間型85と中芯81との間の円環状の空間内に、樹脂を充填固化せしめて保持筒36を成形する。
図11には、保持筒36の成形後に上型及び中間型85を取り除いた状態が示されており、本図に示すように、中芯81を内径とする樹脂製の保持筒36の外周面に2つのヨークリング34,35の外周縁が軸長方向に所定の間隔を隔てて露出し、上端部の内周に固定用のカラー39が一体化されたヨーク組立体26が製造される。
【0061】
ヨーク組立体26は、上方への引き上げにより下型80に立設された中芯81から抜き取り、同時に、ヨークリング34,35の磁極爪37,38間から位置決めピン82,83を抜き出して取り出される。このように製造されるヨーク組立体26は、
図5に示すように、ヨーク組立体26の保持筒36の内周36aに形成された軸方向に延びる挿通溝50の内面50aに、各ヨークリング34,35の磁極爪37,38の基部51,52の側面53,54の一部が、被位置決め部55,56として露出する形態をなすので、従来の方法により製造されたヨーク組立体との差別化が可能である。
【0062】
前述したようにヨーク組立体26のヨークリング34,35は、それぞれの内周および磁極爪37,38の基部51,52の側面53,54の側面の一部に、位置決めピン82,83を当接させて位置決めされている。位置決めピン82,83は、周方向と共に径方向の位置決め作用もなすから、保持筒36の成形過程においてヨークリング34,35の同心性が良好に保たれる。従って、ヨークリング34,35のそれぞれに設けた磁極爪37,38は、成形後の保持筒36の内周36aに等しい間隔を保って確実に露出する。
【0063】
以上のように構成されたヨーク組立体26は、
図3に示すように、保持筒36の端部に一体化されたカラー39を介して第2操舵軸15の上端の連結筒93に外嵌固定され、保持筒36の内面に露出するヨークリング34,35の磁極爪37,38が、第1操舵軸14に嵌合固定された多極磁石25の外周面にわずかなエアギャップを隔てて対向し、この多極磁石25に対し、以下に示す周方向に位置関係が得られるように組み付けられている。
【0064】
図12は、ヨークリングの磁極爪と多極磁石の磁極との位置関係を示す説明図である。
図12(b)には、組み付け時の位置関係が示されており、ヨークリング34,35と多極磁石25とは、前者の磁極爪37,38が後者の周上に並ぶN極31とS極32との境界と一致するように周方向に位置決めされている。このとき、2個のヨークリング34,35の磁極爪37,38は、多極磁石25の周上において互いに相隣するN極31とS極32との間に形成される磁界内に同一の条件下にて位置することとなり、これらの磁極爪37,38の基部を連絡するヨークリング34,35内に生じる磁束は同一となる。
【0065】
このような磁極爪37,38とN極31およびS極32との周方向の位置関係は、多極磁石25が固定された第1操舵軸14と、ヨーク組立体26が固定された第2操舵軸15との間にトーションバー16の捩れを伴って生じる相対角変位に応じて、
図12(a)又は
図12(c)に示すように互いに逆向きに変化する。この変化が生じた場合、一方のヨークリング34の磁極爪37と他方のヨークリング35の磁極爪38とには、逆の極性を有する磁力線が増加し、それぞれのヨークリング34,35に正負の磁束が発生する。
【0066】
このとき発生する磁束の正負は、多極磁石25とヨーク組立体26との間、即ち、第
1操舵
軸14と第
2操舵軸15との間に生じる相対角変位の向きに応じて定まり、正負の磁束の密度は、前記相対角変位の大きさに対応するから、この磁束を集磁リング27,28により集めてホールIC29,30により検出することにより、第1操舵軸14と第2操舵軸15との間の相対角変位、即ち、第1操舵軸14および第2操舵軸15に加わる回転トルク(操舵トルク)を知ることができる。
【0067】
なお2つのホールIC(磁気センサ)29,30を設けてあるのは、一方をトルク検出用とし、他方をフェイル判定用とするためである。このフェイル判定は、例えば、2つホールIC29,30の出力を経時的に比較し、両者間に有意差が存在するとき、その前後に非定常な出力変化を示しているホールIC29または30がフェイル状態にあると判定する公知の手順により行われる。
【0068】
本実施の形態のヨーク組立
体の製造方法によれば、成形型内において、各ヨークリング34,35の内周34a,35aに配置された被位置決め部55,56に当接するように位置決めピン82,83を軸方向X1に挿通し、この状態で保持筒36を成形する。保持筒36の成形型内でのヨークリング34,35の位置決めを確実且つ容易に行える。
【0069】
離型後の保持筒36の内周36aには、位置決めピン82,83の抜き出し後に残る挿通溝50が形成されており、その挿通溝50の内面50aには、被位置決め部55,56が露出しているので、従来の方法により製造されたヨーク組立体との差別化が可能である。
ヨークリングに位置決め孔を穿孔した従来技術のように磁路が狭くなる等の問題がない。したがって、当該ヨーク組立体26を用いたトルク検出装置17において、検出精度のばらつきを小さくすることができる。
【0070】
また、被位置決め部55,56が挿通溝50の両側に隣接する一対の磁極爪37,38の側面の一部に設けられている。具体的には、前記一対の磁極爪37,38のうち一方の磁極爪37が、一方のヨークリング34に設けられ、他方の磁極爪38が、他方のヨークリング35に設けられているので、位置決めピン82,83によって両ヨークリング34,35を周方向に位置決めすることができる。
【0071】
また、挿通溝50の両側に隣接する一対の磁極爪37,38の基部51,52の側面53,54の一部によって、被位置決め部55,56を構成したので、下記の利点がある。すなわち、通例、ヨークリング34,35は、型を用いて板金により打ち抜き形成した寸法精度の高い製造用中間体から、磁極爪37,38を折り曲げ形成している。
その磁極爪37,38の基部51,52の側面53,54であれば、磁極爪37,38の曲げの影響を全く受けないか或いは殆ど受けないので、基部51,52の側面53,54に設けられた被位置決め部5
5,56にそれぞれ位置決めピン82,83を当接させて、ヨークリング34,35を精度良く位置決めすることができる。
【0072】
ただし、本発明において、
図6に示すように、磁極爪37,38の基部51,52には、磁極爪37,38の基端部61と、磁極爪37,38の基端部61からヨークリング34,35に連なる連接部62とが含まれるものとする。
また、本発明に係るトルク検出装置17においてヨーク組立体26のヨークリング34,35は、前述した位置決めにより、それぞれの磁極爪37,38が周方向Y1に等しい間隔を隔てて並び、良好な同心性が確保された状態で一体化されている。したがって、第1操舵軸14および第2操舵軸15に加わる回転トルクの作用に応じた磁束の変化が安定して生じ、ホールIC(磁気センサ)29,30の出力変化に基づく回転トルクの検出を高精度に行わせることができる。
【0073】
ひいては、トルク検出装置17により高精度に検出された操舵トルクに基づいて、操舵補助用の電動モータ19を駆動制御することにより、操舵フィーリングの良い電動パワーステアリング装置1を提供することができる。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、例えば、前記実施の形態では、位置決めピン82,83は2個一組であったが、これに限らず、3組以上としてもよい。
【0074】
また、
図13に示すように、2個一組の位置決めピン82,83間に、ヨークリング35の磁極爪38が2個以上配置されていてもよい。また、図示していないが、2個一組の位置決めピン82,83間に、ヨークリング34の磁極爪37が2個以上配置されていてもよい。
また、2個一組の位置決めピン82,83に代えて、
図14に示すように、広幅の位置決めピン88を用いてもよい。すなわち、位置決めピン88は、一対のヨークリング34,35の何れか一方、例えば、ヨークリング35の隣接する一対の磁極爪38,38の基部52,52間の間隔に相当する幅を有している。位置決めピン88は、ヨークリング35の隣接する一対の磁極爪38,38の基部52,52の側面の一部に配置された第1被位置決め部155,155を位置決めすることにより、ヨークリング35を周方向Y1の双方向に位置決めする。
【0075】
また、位置決めピン88は、ヨークリング34の磁極爪37の、基部51を除く部分としての頂部371の、一対の側面372を受ける凹部88aを有している。これにより、位置決めピン88は、ヨークリング34の磁極爪37の頂部371の一対の側面372にそれぞれ配置された一対の第2被位置決め部156,156よって、ヨークリング34を周方向Y1の双方向に位置決めする。ひいては、位置決めピン88によって、両ヨークリング34,35が周方向Y1に相互に位置決めされる。
【0076】
この場合、
図15に示すように、ヨーク組立体126において、成形後の保持筒136の内周136aに形成された挿通溝150の内面150aに、一対の第1被位置決め部155,155および一対の第2被位置決め部156,156が露出することになる。位置決めピン88は、周方向Y1の少なくとも2箇所(例えば対称位置)に設ければよい。
本実施の形態によれば、少数の
位置決めピン
88によって、両ヨークリング34,35を精度良く位置決めすることができる。また、ヨークリング34を軸方向X1に位置決めすることも可能となる。
【0077】
また、
図16に示すように、位置決めピン89に位置決め段部89aを設け、成形型内で、
図17に示すように、一対のヨークリング34,35の少なくとも一方、例えばヨークリング34を、位置決め段部89aによって受けて、ヨークリング34を軸方向X1に位置決めするようにしてもよい。
この場合、
図18に示すように、ヨーク組立体226では、成形後の保持筒236の内周236aに形成された挿通溝250の内面250aにおいて、深さが相対的に深い第1部分251と、深さが相対的に浅い第2部分252とが形成され、両部分251,252の間に段部253が形成されることになる。
【0078】
図示していないが、段部253には、ヨークリング34の一部が露出する。すなわち、ヨークリング34を境として、すなわち、第1部分251と第2部分252とで、挿通溝250の内面250aの深さが異なることになる。本実施の形態によれば、ヨークリング34を軸方向X1に精度良く位置決めすることができる。
なお、図示していないが、位置決めピン89が、前記位置決め段部89aに代えて、或いは前記位置決め段部89aとともに、ヨークリング35を軸方向X1に位置決めする位置決め段部を有していてもよい。
【0079】
前記の実施の形態では、磁気センサとして2つのホールIC29,30を用いたが、単一のホールICを用いるようにしてもよい。また、磁気センサとして、ホールICに代えて、磁気抵抗素子(MR素子)を用いるようにしてもよい。その他、請求項記載の範囲内で種々の変更が可能である。