(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1において、前記回転角規制機構は、前記操舵部材の回転軸と同軸的に一体回転可能な回転可能要素と、前記回転可能要素に前記回転軸の軸方向に対向する回転不能要素と、前記回転可能要素と前記回転不能要素との間に介在し前記回転軸に対して同軸的に回転可能な複数の板要素と、前記回転不能要素、前記複数の板要素および前記回転可能要素のうちの隣接する要素間の相対回転量をそれぞれ規制するように前記隣接する要素間をそれぞれ連結する複数の連結要素と、前記規制角度範囲の一対の終端で所定の板要素の回転を軸方向移動に変換することにより軸方向の一方の端の板要素を軸方向に移動させるカム機構と、を含み、
前記操舵方向検出装置は、前記規制角度範囲の一対の終端で、前記軸方向の一方の端の板要素の軸方向移動により作動するセンサを含む車両用操舵装置。
請求項2において、複数の連結要素は、前記カム機構を備えた第1連結要素と、前記軸方向の一方の端の板要素とこれに対向する前記回転不能要素および前記回転可能要素の何れか一方とを連結する第2連結要素と、を含み、
前記複数の連結要素のそれぞれは、前記隣接する要素の一方に設けられた突起と、前記隣接する要素の他方に設けられた係合溝の一対の終端に配置されて前記操舵部材の回転方向に応じて対応する突起に択一的に当接する一対の規制部と、を有し、
前記操舵方向検出装置としてのセンサは、前記第2連結要素の突起の頂部および係合溝の底部の何れか一方に設けられて、他方の接近または接触を検知し、
前記回転角規制機構は、前記突起の頂部および前記係合溝の底部の他方と前記操舵方向検出装置とを離隔させる方向に前記複数の板要素を付勢する付勢部材を含む車両用操舵装置。
請求項3から5の何れか1項において、前記第1連結要素は、軸方向の他方の端の板要素とこれに対向する前記回転不能要素および前記回転可能要素の他方とに設けられている車両用操舵装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好ましい実施形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の一実施形態の車両用操舵装置の概略構成を示す模式図である。
図1を参照して、本車両用操舵装置1は、多回転操作されるステアリングホイール等の操舵部材2と転舵輪3との機械的な連結が解除された、いわゆるステアバイワイヤシステムを構成している。
【0015】
車両用操舵装置1では、操舵部材2の回転操作に応じて駆動される転舵アクチュエータ4の動作を、ハウジング5に支持された転舵軸6の車幅方向の直線運動に変換するようになっている。この転舵軸6の直線運動は、転舵用の左右の転舵輪3の転舵運動に変換され、これにより車両の転舵が達成される。車両が直進しているときの転舵輪3の位置に対応する操舵部材2の位置が、操舵中立位置として設定されている。
【0016】
転舵アクチュエータ4は、例えば、電動モータを含んでいる。この電動モータの駆動力(出力軸の回転力)は、転舵軸6に関連して設けられた運動変換機構(ボールねじ装置)により、転舵軸6の軸方向の直線運動に変換される。この転舵軸6の直線運動は、転舵軸6の両端に連結されたタイロッド7に伝達され、ナックルアーム8の回動を引き起こす。これにより、ナックルアーム8に支持された転舵輪3の操向が達成される。
【0017】
転舵軸6、タイロッド7およびナックルアーム8により、転舵輪3を転舵するための転舵機構Aが構成されている。転舵軸6を支持するハウジング5は、車体Bに固定されている。
操舵部材2は、車体Bに回転可能に支持された操舵軸9に連結されている。操舵軸9には、路面等から転舵輪3に伝わる反力を操舵反力として操舵部材2に与えるための反力モータ10が取り付けられている。反力モータ10は、ブラシレスモータ等の電動モータを含む。反力モータ10は、車体Bに固定されたハウジング11内に収容されている。
【0018】
車両用操舵装置1には、操舵軸9に関連して、操舵部材2の操舵角θh を検出するための操舵角センサ12が設けられている。また、操舵軸9には、操舵部材2に加えられた操舵トルクTを検出するためのトルクセンサ13が設けられている。操舵角センサ12およびトルクセンサ13は、ハウジング11内に収容されている。
また、ハウジング11内には、操舵部材2の回転角を規制する回転角規制機構14と、操舵方向検出装置としての操舵方向検出センサ15とが収容されている。
【0019】
回転角規制機構14は、操舵のために多回転操作される操舵部材2の回転軸としての、操舵軸9の出力軸24の回転角を規制角度範囲内に規制する機能を果たす。本実施の形態のようにステアバイワイヤ式の車両用操舵装置1では、操舵部材2が、転舵機構Aからの制約を受けない。そこで、操舵部材2が、転舵機構Aの動作限界を超えて操作されることがないように、回転角規制機構14によって、操舵部材2の回転角を、前記動作限界に対応する前記規制角度範囲内に規制する。
【0020】
操舵方向検出センサ15は、操舵角センサ12に異常が発生したフェール時に、回転角規制機構14の動作に関連して、操舵部材2の操舵方向を検出する。
一方、車両用操舵装置1には、転舵軸6に関連して、転舵輪3の転舵角θw (タイヤ角)を検出するための転舵角センサ16が設けられている。これらのセンサの他にも、車速Vを検出する車速センサ17が設けられている。前記のセンサ類12,13,15〜17の各検出信号は、マイクロコンピュータを含む構成の制御装置としてのECU18(Electronic Control Unit) に入力されるようになっている。
【0021】
ECU18は、操舵角センサ12によって検出された操舵角θh および車速センサ17によって検出された車速Vに基づいて、目標転舵角を設定する。そして、この目標転舵角と、転舵角センサ16によって検出された転舵角θw との偏差に基づいて、ECU19に内蔵された駆動回路(図示せず)を介し、転舵アクチュエータ4を駆動制御(転舵制御)する。
【0022】
一方、ECU18は、センサ類12,13,15〜17が出力する検出信号に基づいて、操舵部材2が操舵された方向と逆方向を向く適当な反力が操舵部材2に付与されるように、ECU18に内蔵された駆動回路(図示せず)を介して、反力モータ10を駆動制御(反力制御)する。
図2を参照して、操舵軸9は、筒状のハウジング11によって回転可能に支持されている。ハウジング11から操舵軸9の一端が突出しており、前記一端に、操舵部材2が一体回転可能に連結されている。ハウジング11内には、前記の操舵角センサ12、トルクセンサ13および反力モータ10が収容されている。
【0023】
操舵軸9は、一端22a(操舵軸9の前記一端に相当)に操舵部材2が一体回転可能に連結された入力軸22と、入力軸22にトーションバー23を介して同軸上にトルク伝達可能に連結された出力軸24とを備えている。トーションバー23の一端23aは、入力軸22と一体回転可能に連結されており、トーションバー23の他端23bは、出力軸24と一体回転可能に連結されている。
【0024】
操舵軸9は、ハウジング11に保持された第1軸受25、第2軸受26および第3軸受27によって回転可能に支持されている。第1軸受25、第2軸受26および第3軸受27は、例えば玉軸受等の転がり軸受からなる。
第1軸受25は、入力軸22の軸方向の中間部を回転可能に支持している。第2軸受26および第3軸受27は、出力軸24を回転可能に支持している。具体的には、第2軸受26は、出力軸24の一端24a付近を回転可能に支持しており、第3軸受27は、出力軸24の他端24bを回転可能に支持している。
【0025】
また、入力軸22の他端22bは、出力軸24に設けられた支持孔28内に挿入されている。入力軸22の他端22bは、支持孔28の内周に、例えば針状ころ軸受等の第4軸受30を介して回転可能に支持されている。
ハウジング11は、ハウジング本体31と端壁32とを組み合わせて構成されている。ハウジング本体31は、筒状をなし、一端31aおよび他端31bを有している。ハウジング11の一部としての端壁32は、概ね板状をなし、ハウジング本体31の他端31bを閉塞している。
【0026】
具体的には、端壁32は、その外径部付近から軸方向に突出する筒状部33を有しており、その筒状部33は、ハウジング本体31の他端31bの内周に嵌合されている。筒状部33の外周に設けられた収容溝に、例えばOリング等の封止部材34が収容されており、封止部材34によって、ハウジング31本体および筒状部33の嵌合部における密封性が確保されている。また、端壁32は、固定ねじ35等を用いてハウジング本体31の他端31bに固定されている。
【0027】
ハウジング11の一部としての端壁32と、この端壁32によって後述する付勢部材69を介して回転を規制された後述する押圧板70とが、回転角規制機構14の後述する回転不能要素を構成している。
ハウジング本体31の一端31aの内周と、操舵軸9の入力軸22の外周との間には、両者間を封止する例えばオイルシールからなる環状の封止部材36が介在している。また、前記第1軸受25は、ハウジング本体31の一端31aの内周に設けられた軸受保持部37に保持されている。
【0028】
第2軸受26は、ハウジング本体31の軸方向の中間部に設けられた軸受保持部38に保持され、出力軸24の一端24a付近の外周を回転可能に支持している。第2の軸受26は、軸受保持部38に嵌合固定された外輪39と、出力軸24の外周に一体回転可能に嵌合された内輪40とを備えている。
第2軸受26の外輪39の一端面が、ハウジング本体31の軸受保持部38の一端に形成された位置決め段部41に当接することによって、外輪39が、出力軸24の軸方向X1の一方側(第1軸受25側)へ移動することが規制されている。また、第2軸受26の内輪40の一端面が、出力軸24の外周に形成された位置決め段部42に当接することによって、内輪40が、出力軸24の軸方向X1の他方側(第3軸受27側)へ移動することが規制されている。
【0029】
端壁32の内壁面32aには、第1凹部としての円形の中心凹部43と、中心凹部43を取り囲む第2凹部としての環状凹部44とが設けられている。中心凹部43の深さは、環状凹部44の深さよりも深くされている。出力軸24の他端24bは、中心凹部43内に挿入されている。第3軸受27は、中心凹部43の内周に保持され、出力軸24の他端24bを回転可能に支持している。
【0030】
第3軸受27は、中心凹部43の内周に回転不能で且つ軸方向移動可能なようにルーズフィットで嵌合された外輪46と、出力軸24の他端24bの外周に一体回転可能に嵌合された内輪47とを備えている。第3軸受27の内輪47の一端面が、出力軸24の外周に形成された位置決め段部48に当接することにより、内輪47が、出力軸24の軸方向X1の前記一方側(第2軸受26側)へ移動することが規制されている。
【0031】
また、中心凹部43内には、第2軸受26および第3軸受27に一括して軸方向の予圧を与える例えば波板ばねからなる弾性部材49と、弾性部材49と第3軸受27との間に介在した予圧付与部材としてのスペーサ50とが収容されている。
スペーサ50は、
図2に示すような円形板または環状板からなる。スペーサ50は、出力軸24の他端24bの端面や第3軸受27の内輪47の端面とは接触しないで、外輪46の端面のみに接触するように、環状突起51を設けている。弾性部材49は、スペーサ50の環状突起51を介して、第3軸受27の外輪46を出力軸24の軸方向X1の前記一方側へ付勢する。
【0032】
この付勢力は、第3軸受27の外輪46、第3軸受の内輪47、出力軸24の位置決め段部48、出力軸24の位置決め段部42、第2軸受26の内輪40、および第2軸受26の外輪39を介して、ハウジング本体31の位置決め段部41によって受けられる。したがって、第2軸受26および第3軸受27に、一括して軸方向の予圧を付与することができる。
【0033】
トルクセンサ13は、ハウジング11内において、第1軸受25と第2軸受26との間に配置されている。トルクセンサ13としては、例えばホールIC(磁気センサ)を用いたトルクセンサを用いてもよい。ECU18は、トルクセンサ13からの信号に基づいて、操舵軸9に入力された操舵トルクを算出する構成となっている。
反力モータ10は、出力軸24と一体回転可能に連結されたロータ61と、ロータ61を同心に取り囲み、ハウジング本体31の内周に固定されたステータ62とを備えている。ロータ61は、出力軸24と一体回転可能なロータコア63と、ロータコア63に一体回転可能に連結された永久磁石64とを備えている。
【0034】
ロータコア63は、出力軸24を同心に取り囲む筒状の第1部分65と、第1部分65の一端65aを出力軸24に一体回転可能に連結した第2部分66とを有している。永久磁石64は、第1部分65の外周に一体回転可能に連結されている。第2部分66は、回転角規制機構14の後述する回転可能要素を構成している。
本実施の形態では、第1部分65および第2部分66を含むロータコア63が、出力軸24と単一の材料で一体に形成されている例に則して説明するが、出力軸24とは別体に形成されたロータコアが出力軸24に一体に連結されていてもよい。
【0035】
ハウジング11内において、第2部分66と第2軸受26との間に、操舵角センサ12が配置されている。操舵角センサ12は、例えばレゾルバを用いて構成されている。具体的には、操舵角センサ12は、出力軸24と一体回転可能に連結されたレゾルバロータ67と、ハウジング本体31の内周に固定され、レゾルバロータ67を取り囲むレゾルバステータ68とを備えている。
【0036】
拡大図である
図3に示すように、回転角規制機構14の大部分の要素は、ロータ61のロータコア63の第1部分65の径方向内方の空間に配置されている。
図3および分解斜視図である
図4を参照して、回転角規制機構14は、回転不能要素としての、ハウジング11の端壁32と、操舵部材2の回転軸としての、操舵軸9の出力軸24によって同軸的に支持され出力軸24に対して回転可能で且つ軸方向X1に移動可能な複数の板要素71〜75と、回転可能要素としての、ロータコア63の第2部分66とを備えている。回転不能要素としての端壁32と回転可能要素としての第2部分66とは、板要素71〜75の軸方向X1の両側に配置されている。
【0037】
また、回転角規制機構14は、回転不能要素(端壁32)、複数の板要素71〜75および回転可能要素(第2部分66)のうちの、それぞれ対応する隣接する要素間の相対回転量を規制するように前記隣接する要素間をそれぞれ連結する複数の連結要素81,82,83を備えている。また、回転角規制機構14は、前記隣接する要素間の相対回転にそれぞれ摩擦抵抗を付与する複数の摩擦付与要素としての摩擦板91〜96とを備えている。
【0038】
図3および
図4に示すように、複数の連結要素81,82,83は、第1連結要素81と、第2連結要素82と、残りの連結要素である第3の連結要素83とを備えている。
第1連結要素81は、ロータコア63の第2部分66(回転可能要素)に設けられ軸方向X1に突出したピン状の突起84と、突起84が係合するように第2部分66(回転可能要素)に隣接する板要素71に設けられ、回転方向C1に延びる有端の係合溝85〔
図6(a)を参照〕とにより構成されている。
【0039】
図3に示すように、第1連結要素81の突起84は、第2部分66(回転可能要素)に設けられた固定孔54に固定されている。突起84は、円柱状をなす主体部841と、先端に設けられた円錐状部842とを備えている。
図3に示すように、第2連結要素82は、複数の板要素71〜75のうちの軸方向の一方の端の板要素75に設けられた軸方向X1に突出したピン状の突起86と、突起86が係合するようにハウジング11の端壁32(回転不能要素)に設けられ、回転方向C1に延びる有端の係合溝87〔
図6(c)を参照〕とにより構成されている。
【0040】
図3に示すように、第3の連結要素83は、互いに隣接する板要素71〜75の一方に設けられ軸方向X1に突出したピン状の突起88と、突起88が係合するように他方の板要素71〜75に設けられ、回転方向C1に延びる有端の係合溝89〔
図6(b)を参照〕とにより構成されている。
端壁32とその周辺の概略断面図である
図8(a)に示すように、端壁32に設けられた係合溝87は底部871を有している。係合溝87の一対の終端の底部871に、例えば接触センサにより構成された操舵方向検出センサ15a,15bが取り付けられている。一方の操舵方向検出センサ15aは、一方の規制部87aの近傍に配置されて例えば左操舵を検出し、他方の操舵方向検出センサ15bは、他方の規制部87bの近傍に配置されて例えば右操舵を検出する。
【0041】
板要素71とその周辺の概略断面図である
図7(a)に示すように、突起84の円錐状部842の傾斜状の周面により構成されたカム97と、係合溝85の両端の一対の規制部85a,85bに設けられた傾斜面からなるカムフォロワ98とによって、カム機構99が構成されている。ここで、カム機構とは、カムの表面形状に従って、従動部(カムフォロワ)に所定の運動を与える機械的な連動機構である。
【0042】
カム機構99は、回転角規制機構14による規制角度範囲の一方の終端で、
図7(a)から
図7(b)に示すように、板要素71の回転を当該板要素71の軸方向移動に変換して板要素71を軸方向に押す。また、カム機構99は、規制角度範囲の他方の終端で、
図7(c)から
図7(d)に示すように、板要素71の回転を当該板要素71の軸方向移動に変換して板要素71を軸方向に押す。
【0043】
これにより、
図9に示すように、板要素71〜75の全体を軸方向の端壁32(回転不能要素)側へ移動させる働きをする。すなわち、規制角度範囲の一対の終端で、カム機構99は、板要素71〜75のうち、軸方向の一方の端の板要素75を端壁32(回転不能要素)側へ移動させる働きをする。
すなわち、規制角度範囲の一方の終端で、
図7(b)に示すように板要素71が軸方向に移動して、
図8(b)に示すように軸方向の一方の端の板要素75が端壁32(回転不能要素)側へ移動すると、板要素75に固定された第2連結要素82の突起86の頂部861が、係合溝87の底部871の対応する操舵方向検出センサ15aに接触する。操舵方向検出センサ15aから接触信号がECU18に出力され、ECU18は例えば左操舵と判断する。
【0044】
また、規制角度範囲の他方の終端で、
図7(d)に示すように板要素71が軸方向に移動して、
図8(c)に示すように、軸方向の一方の端の板要素75が端壁32(回転不能要素)側へ移動すると、板要素75に固定された第2連結要素82の突起86の頂部861が、係合溝87の底部871の対応する操舵方向検出センサ15bに接触する。操舵方向検出センサ15bから接触信号がECU18に出力され、ECU18は、例えば右操舵と判断する。
【0045】
図6(a)に示すように、第1連結要素81では、突起84が板要素71の係合溝85に回転方向C1にスライド可能に嵌合している。突起84が、係合溝85の両端である規制部85a,85bに係合することにより、隣接する要素としての、第2部分66(回転可能要素)と板要素71との間の相対回転量が規制される。
また、
図6(c)に示すように、第2連結要素82では、突起86が、端壁32(回動不能要素)の係合溝87に回転方向C1にスライド可能に嵌合している。突起86が、係合溝87の両端である規制部87a,87bに係合することにより、隣接する要素としての、板要素75と端壁32との間の相対回転量が規制される。
【0046】
また、
図6(b)に示すように、第3連結要素83では、突起88が係合溝89に回転方向C1にスライド可能に嵌合している。突起88が、係合溝89の両端である規制部89a,89bに係合することにより、隣接する板要素71〜75間の相対回転量が規制される。
図3および
図4を参照して、板要素71〜75は環状板からなり、第1部分65と出力軸24との間に配置されている。板要素71〜75は、出力軸24の外周に一体回転可能に嵌合された筒状部材55(例えばメタルブッシュ等の滑り軸受)の外周55aに回転可能に且つ軸方向移動可能に支持されている。板要素71〜75は、出力軸24および第1部分65に対して相対回転可能である。
【0047】
図5(a)に示すように、板要素71は、その一方の端面に、第3連結要素83の突起88を突出形成し、突起88を避けた残りの領域に、回転方向C1に延びる、第1連結要素81の係合溝85を形成している。
図5(b)に示すように、各板要素72〜74は、その一方の端面に、第3連結要素83の突起88を突出形成し、突起88を避けた残りの領域に、回転方向C1に延びる、第3連結要素83の係合溝89を形成している。
【0048】
図5(c)に示すように、板要素75は、その一方の端面に、第2連結要素82の突起86を突出形成し、突起86を避けた残りの領域に、回転方向C1に延びる、第3連結要素83の係合溝89を形成している。
各突起86,88は、
図5(a)〜(c)に示すように、対応する板要素71〜75と別体で設けられ、対応する板要素71〜75の固定孔56に一部が挿入されて一体に固定されていてもよい。また、図示していないが、各突起は、対応する板要素71〜75と単一の材料で一体に形成されていてもよい。各板要素71〜75の少なくとも一方の端面には(本実施の形態では、突起86,88が突出する側の端面)に、環状の受け凹部57が設けられている。
【0049】
図4に示すように、各受け凹部57は、対応する摩擦板92〜96を受ける。また、各摩擦板92〜96の外周が、対応する受け凹部57の周壁面によって回転可能に支持される。一方、ロータ31のロータコア63の第2部分66には、環状の受け凹部58が設けられている。摩擦板91の外周が、受け凹部58の周壁面によって回転可能に支持される。
【0050】
図6(a)に示すように、第1連結要素81では、板要素71の係合溝85に係合する突起84の可動範囲(突起84が係合溝85の両端の規制部85a,85b間を可動する範囲)が、隣接要素〔
図6(a)では図示していない第2部分66と板要素71)間の相対回転角がδ1となるように、回転方向C1に関する係合溝85の配置範囲を設定してもよい。
【0051】
図6(b)に示すように、第3連結要素81では、板要素72〜75の係合溝89に係合する突起88の可動範囲(突起88が係合溝89の両端の規制部89a,89b間を可動する範囲)が、隣接要素〔隣接する板要素71〜75)間の相対回転角がδ1となるように、回転方向C1に関する係合溝89の配置範囲を設定してもよい。
また、
図6(c)に示すように、第2連結要素82では、端壁32(回転不能要素)の係合溝87に係合する、板要素75〔
図6(c)では図示せず〕の突起86の可動範囲(突起86が係合溝87の両端の規制部87a,87b間を可動する範囲)を、隣接要素(板要素75と端壁32)間の相対回転角がδ2となるように、回転方向C1に関する係合溝87の配置範囲を設定してもよい。
【0052】
この場合、操舵軸9の最大回転角に相当する、回転角規制機構14による規制角度範囲δmax は、
δmax =δ1×4+δ2
となるので、操舵軸9の回転量を、所望の多回転範囲に規制することが可能となる。例えばδ1が306°でδ2が90°の場合、操舵軸9の回転量が1620°(所定角度)内に規制される。ただし、δ1=δ2であってもよい。
【0053】
図3および
図4に示すように、各摩擦板91〜96は、それぞれ対応する隣接要素間の相対回転に抗する摩擦抵抗をそれぞれ対応する隣接要素に付与するように、それぞれ対応する隣接要素間に介在している。
例えば、摩擦板91は、第2部分66(回転可能要素)と板要素71との間に介在し、両者66,71の相対回転に抗する摩擦抵抗を両者66,71に与える。各摩擦板92〜95は、それぞれ隣接する板要素71,72;72,73;73,74;74,75間に介在し、各隣接する板要素71〜75の相対回転に抗する摩擦抵抗を各隣接する板要素71〜75に付与する。また、摩擦板96は、板要素75と押圧板70との間に介在し、板要素75および押圧板70の相対回転に抗する摩擦抵抗を、板要素75および押圧板70に付与する。
【0054】
図3に示すように、付勢部材69および押圧板70は、ハウジング11の端壁32の内壁面32aの環状凹部44内に収容され、保持されている。付勢部材69および押圧板70は環状をなし、出力軸24の周囲を取り囲んでいる。付勢部材69には、例えば波板ばねが用いられる。付勢部材69は、環状凹部44の底44aと押圧板70との間に介在している。
【0055】
押圧板70は、その外周から軸方向に突出する軸方向移動規制要素としての例えば環状の凸部701を単一の材料で一体に形成している。環状の凸部701の外周は、環状凹部44の周壁面44bによって、軸方向X1に移動可能に支持されている。環状の凸部701は、波板ばねからなる付勢部材69を取り囲んでいる。
付勢部材69は、押圧板70を摩擦板96側へ弾性的に付勢することにより、当該押圧板70(回転不能要素)とロータ61の第2部分66(回転可能要素)との間に、板要素71〜75および摩擦抵抗付与要素としての摩擦板91〜96を含む積層ユニットを弾性的に挟持する。すなわち、付勢部材69は、積層ユニットの板要素71〜75、摩擦板91〜96に一括して軸方向の予圧を与える。これにより、各摩擦板91〜96がこれに接する部材に対して、所要の大きさの摩擦抵抗を付与できるように設定されている。
【0056】
また、板要素71〜75および摩擦抵抗付与要素としての摩擦板91〜96を含む積層ユニットが、ロータ61の第2部分66側へ押圧された状態で、凸部701と端壁32(具体的には環状凹部44の底44a)との間に、隙間が形成されている。
次いで、
図10は、転舵制御に関するECU18の制御の流れを示すフローチャートである。システムが作動すると、まず、ステップS1において、ステップS1において、各種センサからの信号を入力し、ステップS2において、操舵角センサ12の信号に基づいてフェール(操舵角センサ12の異常)が発生しているか否かを判定する。
【0057】
フェールが発生していない場合(ステップS2においてNOの場合)には、通常モードに移行する。通常モードでは、操舵角センサ12により検出された操舵角θh に基いて、転舵アクチュエータ4を駆動制御(転舵制御)する。
フェールが発生している場合(ステップS2においてYESの場合)には、フェールモードに移行する。フェールモードでは、操舵方向検出センサ15a(または15b)により検出された操舵方向に基づいて、その接触センサ15a(または15b)がオンになっている間、転舵アクチュエータ4を対応する転舵方向へ駆動するように駆動制御(転舵制御)する。
【0058】
本実施形態によれば、操舵角センサ12に異常が発生したフェール時に、操舵された操舵部材2がその操舵方向に対応する規制角度範囲の終端まで達するに伴って、対応する操舵方向検出センサ15a(又は15b)が操舵方向を検出する。その検出された操舵方向に基づいて転舵アクチュエータ4を駆動制御することで、転舵が可能となり、フェールセーフを実現することができる。
【0059】
操舵方向検出装置としては、回転角規制機構14が規制角度範囲の一対の終端の何れで操舵部材2の回転角を規制しているかに基づいて操舵方向を検出すればよいので、安価なものを用いることができる。具体的には、操舵方向検出センサ15a,15bとしては、オンオフ式の簡易で安価なセンサ等を用いればよいので、製造コストを安くすることができる。
【0060】
また、フェール時に操舵された操舵部材2が、その回転方向に対応する規制角度範囲の終端まで達するに伴って、カム機構99が軸方向の一方の端の板要素75を軸方向に移動させる。前記軸方向の一方の端の板要素75の軸方向移動により、対応する操舵方向検出センサ15a(又は15b)が作動し、規制角度範囲の一対の終端の何れで操舵部材2の回転角が規制されているかに基づいて、操舵方向を検出することができる。
【0061】
また、フェール時に操舵された操舵部材2が、その回転方向に対応する規制角度範囲の終端まで達するに伴って、第1連結要素81のカム機構99が対応する隣接する要素(回転可能要素としての第2部分66と板要素71と)の間の間隔を付勢部材69に抗して拡げる。これにより、第2連結要素82の例えば係合溝87の底部871に配置された操舵方向検出センサ15a,15bが、突起86との例えば接触に基づいて操舵方向を検出する。その検出された操舵方向に基づいて転舵アクチュエータ4を駆動制御することで、転舵が可能となり、フェールセーフを実現することができる。
【0062】
また、カム機構99が、第1連結要素81の突起84に傾斜面からなるカム97と、係合溝85の一対の規制部85a,85bに設けられた傾斜面からなるカムフォロワ98とからなり、回転を軸方向移動に変換する。本実施形態では、カム97およびカムフォロワ98の双方を傾斜面により構成したが、カム機構99のカム97およびカムフォロワの少なくとも一方が傾斜面であればよい。
【0063】
また、カム機構99の傾斜面(カム97)が形成された円錐状部842を有する突起84を第2部分66(回転可能要素)に組み付けるときに、円錐状部842の向きを考慮する必要がないので、組み立て易い。
また、第2部分66(回転可能要素)が、第1連結要素81のカム機構99を介して、複数の板要素71〜74の全体を軸方向に押して、操舵方向検出センサ15a,15bを作動させるので、操舵方向検出センサ15a,15bによる検知の動作が確実となる。
【0064】
また、操舵部材2の回転軸(出力軸24)によって同軸的に支持された板要素71〜75の軸方向X1の両側に、回転不能要素(端壁32)および回転可能要素(第2部分66)を配置するので、回転角規制機構14の要素をコンパクトに配置することができ、小型化を達成することができる。
また、操舵部材2に操舵反力を付与する反力モータ10と回転角規制機構14を同一のハウジング11内に収容することにより、ステアバイワイヤ式の車両用操舵装置1において、構造の簡素化、小型化を達成することができる。
【0065】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、例えば、請求項2に関連しして、前記実施形態では、カム機構99が、全ての板要素71〜75を軸方向に移動させたが、これに代えて、カム機構99が、一部の板要素のみ(単一の板要素であってもよい)を軸方向に移動させてもよい。要は、カム機構99の動作により、操舵方向検出センサ15a,15bに対向する軸方向の何れか一方の端の板要素71(または75)を軸方向に移動させることができればよい。
【0066】
また、請求項3に関連して、前記実施形態では、操舵方向検出センサ15a,15bが、第2連結要素82の係合溝87の底部871に配置されて、突起86の頂部861の接触を検知する接触センサであったが、突起86の頂部861の接近を非接触で検出する非接触式のセンサ(赤外線センサ等)であってもよい。また、操舵方向検検出センサが、突起86の頂部861に配置されて、係合溝87の底部871の接近または接触を検知するものであってもよい。また、付勢部材69は、カム機構99が対応する板要素を軸方向に押す方向とは反対方向に付勢力を及ぼせばよい。要は、付勢部材69は、第2連結要素82の突起86の頂部861と係合溝87の底部871とを離隔させる方向に複数の板要素71〜75を付勢できればよい。
【0067】
また、請求項4に関連して、前記実施形態では、カム機構99を構成するカム97およびカムフォロワ98の双方を傾斜面に形成したが、傾斜面はカム97およびカムフォロワ98の何れか一方または双方に形成すればよい。
また、請求項5に関連して、前記実施形態では、カム機構99のカム97が設けられる第1連結機構81の突起84を所定の要素(回転可能要素としての第2部分66)に固定していたが、これに代えて、第1連結機構81の突起84を所定の要素と単一の部材で一体に形成してもよい。
【0068】
また、請求項6に関連して、前記実施形態では、カム機構99を備えた第1連結要素が、回転可能要素(第2部分66)とこれに対向する板要素71との間を連結していたが、これに代えて、カム機構99を備えた第1連結要素が、回転不能要素(端壁32)とこれに対向する板要素75との間を連結してもよい。この場合、カム機構99が全ての板要素71〜75を軸方向に移動させるとともに、操舵方向検出センサは、回転可能要素(第2部分66と)に対向する板要素71の軸方向移動を検出することになる。また、カム機構99を備えた第1連結要素が、隣接する板要素71〜75間を連結するものであってもよい。この場合、カム機構99が、一部の板要素のみ(単一の板要素であってもよい)を軸方向に移動させるとともに、操舵方向検出センサは、その移動側の端の板要素71(または75)の軸方向を移動を検出することになる。
【0069】
また、前記実施の形態では、板要素71〜75の内周を、操舵軸9(出力軸24)の外周に嵌合された筒状部材55の外周55aによって支持したが、これに代えて、操舵軸9(出力軸24)によって板要素71〜75の内周を直接支持してもよい(図示せず)。
摩擦抵抗付与要素として、隣接要素間の対向面の少なくとも一方に被覆された摩擦層(図示せず)を用いてもよい。
【0070】
また、付勢部材69および押圧板70が、回転可能要素としての第2部分66と板要素71との間に介在していてもよい(図示せず)。
また、板要素71〜75をロータ61の第1部分65の内周に保持された滑り軸受(図示せず)によって保持してもよい。
その他、本発明は請求項記載の範囲で種々の変更を施すことができる。