(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871167
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】燃焼装置
(51)【国際特許分類】
F24H 1/14 20060101AFI20160216BHJP
F24H 9/00 20060101ALI20160216BHJP
F23D 14/78 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
F24H1/14 B
F24H9/00 P
F23D14/78 B
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-104265(P2012-104265)
(22)【出願日】2012年4月28日
(65)【公開番号】特開2013-231559(P2013-231559A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2015年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】秋山 隆
(72)【発明者】
【氏名】若田 武志
(72)【発明者】
【氏名】永井 逸夫
(72)【発明者】
【氏名】栗山 靖隆
(72)【発明者】
【氏名】和田 憲英
(72)【発明者】
【氏名】馬越 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】福西 啓吾
【審査官】
黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−78162(JP,A)
【文献】
特開2010−85039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/10 − 1/16
F24H 9/00
F24D 14/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンから上向きの空気供給を受けるバーナケース内に水平方向に並んで収容された第1および第2のバーナと、
前記第1および第2のバーナのそれぞれの上方の火炎発生領域どうしの間を仕切るように前記バーナケース内に起立状態に設けられた仕切り部材と、
この仕切り部材の側面を覆うようにしてこの側面に沿って設けられた遮熱板と、
を備えており、
前記仕切り部材と前記遮熱板との間には、上端部に第1の空気流出口を有し、かつ前記ファンから供給される空気の一部を上向きに流通させることが可能な空気流路が形成され、
前記遮熱板の下部側領域には、前記遮熱板の上部側領域よりも前記仕切り部材から離間する方向に突出する下部水平板部、およびこの下部水平板部の先端縁から下向きに屈曲して前記第1および第2のバーナのいずれかの側面に対向接近する下部起立板部が設けられている、燃焼装置であって、
前記遮熱板は、前記空気流路に流入した空気の一部を前記第1の空気流出口よりも低い位置から前記遮熱板の対面領域に流出させるための空気流出口として、前記下部起立板部が対向接近する第1または第2のバーナ、および前記下部水平板部のそれぞれよりも高い位置に設けられた第2の空気流出口を有していることを特徴とする、燃焼装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼装置であって、
前記遮熱板の前記下部水平板部には、前記空気流路に流入した空気を上向きに通過させる第3の空気流出口が設けられている、燃焼装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃焼装置であって、
前記第2の空気流出口は、前記遮熱板の起立状部分に設けられて水平方向に開口している、燃焼装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の燃焼装置であって、
前記第1および第2のバーナのそれぞれは、複数のバーナ本体が水平方向に所定の配列ピッチで並べられて構成されており、
前記遮熱板の前記下部起立板部が対向接近する第1または第2のバーナと前記仕切り部材との間隔は、前記配列ピッチよりも小さい、燃焼装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の燃焼装置であって、
前記遮熱板には、前記下部水平板部よりも高い位置に存在する追加の水平板部が設けられ、
前記第2の流出口は、前記追加の水平板部に設けられて上下方向に開口している、燃焼装置。
【請求項6】
請求項5に記載の燃焼装置であって、
前記遮熱板および前記仕切り部材が互いに対向する方向において、前記追加の水平板部の幅は、前記下部水平板部の幅よりも小さくされている、燃焼装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の燃焼装置であって、
前記バーナケースは、前記第1および第2のバーナを構成する複数のバーナ本体を所定の配列ピッチで並べて装着することが可能な複数のバーナ装着用エリアを有し、
前記遮熱板の前記下部起立板部が対向接近する第1または第2のバーナは、前記複数のバーナ装着用エリアのうち、前記仕切り部材寄りのバーナ装着用エリアにはバーナ本体が装着されていない構成とされ、
前記下部起立板部が対向接近する第1または第2のバーナと前記仕切り部材との間隔は、前記所定の配列ピッチよりも大きい、燃焼装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の燃焼装置であって、
前記遮熱板の前記下部起立板部の上縁の高さは、前記下部起立板部が対向接近する第1または第2のバーナよりも高くされている、燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯装置などとして構成される燃焼装置、さらに詳しくは、1つのバーナケース内に複数のバーナが収容され、それらの間が仕切り部材を用いて仕切られた構成を有する燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1つのバーナケース内に2つのバーナを収容し、これらの間を仕切り部材で仕切った場合、この仕切り部材は、かなり高温に加熱されて熱損傷を生じる虞がある。そこで、従来においては、仕切り部材を保護するための手段として、仕切り部材を遮熱板によって覆うとともに、これら仕切り部材と遮熱板との間に空気流路を形成し、この空気流路には、ファンからバーナケースに供給される燃焼用空気の一部を流通させる手段がある。このような手段の一例として、特許文献1に記載の手段があり、これを
図9に示す。
【0003】
図9に示す手段では、第1および第2のバーナ9A,9Bの間に設けられた仕切り部材91の両側に、遮熱板92が設けられている。遮熱板92と仕切り部材91との間には、上端部に空気流出口93aを有する空気流路93が形成され、この空気流路93には、冷却用の空気が流通する。また、遮熱板92の下部側領域には、下部水平板部92aおよび下部起立板部92bが設けられており、下部水平板部92aには、空気流出口93bが設けられている。
このような構成によれば、空気流路93を流通する空気によって遮熱板92および仕切り部材91が冷却される。加えて、空気流出口93bから空気が流出する作用により、第1および第2のバーナ9A,9Bの火炎や燃焼ガスが遮熱板92に接触または接近することも抑制される。
【0004】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0005】
すなわち、下部水平板部92aは、火炎との接触を回避すべく第1および第2のバーナ9A,9Bと略同一高さに設定されており、空気流出口93bもそれと同一高さである。したがって、空気流出口93bの高さは低く、この空気流出口93bから上向きに流出する空気は、空気流の状態で遮熱板92や仕切り部材91の上端と略同一高さまで届かず、その途中で拡散し易い。その結果、第1および第2のバーナ9A,9Bの火炎や高温の燃焼ガスが遮熱板92や仕切り部材91の上部領域に接近し、この領域が高温に加熱されて熱損傷を生じる虞がある。
燃焼装置が熱交換器を備えた給湯装置として構成され、かつ熱交換器が第1および第2のバーナ9A,9Bの上側に配置されている場合、熱交換器が経年変化などに起因して、排気閉塞気味となる場合がある。このような現象を生じると、第1および第2のバーナ9A,9Bによって発生された高温の燃焼ガスも滞留気味となってそのボリュームが増加し、遮熱板92に対してより作用し易くなり、前記した不具合は一層顕著となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4718593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、2つのバーナの火炎
発生領域を仕切る仕切り部材および遮熱板が高温に加熱されることを、簡易な手段によって適切に防止または抑制することが可能な燃焼装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明により提供される燃焼装置は、ファンから上向きの空気供給を受けるバーナケース内に水平方向に並んで収容された第1および第2のバーナと、前記第1および第2のバーナのそれぞれの上方の火炎発生領域どうしの間を仕切るように前記バーナケース内に起立状態に設けられた仕切り部材と、この仕切り部材の側面を覆うようにしてこの側面に沿って設けられた遮熱板と、を備えており、前記仕切り部材と前記遮熱板との間には、上端部に第1の空気流出口を有し、かつ前記ファンから供給される空気の一部を上向きに流通させることが可能な空気流路が形成され、前記遮熱板の下部側領域には、前記遮熱板の上部側領域よりも前記仕切り部材から離間する方向に突出する下部水平板部、およびこの下部水平板部の先端縁から下向きに屈曲して前記第1および第2のバーナのいずれかの側面に対向接近する下部起立板部が設けられている、燃焼装置であって、前記遮熱板は、前記空気流路に流入した空気の一部を前記第1の空気流出口よりも低い位置から前記遮熱板の対面領域に流出させるための空気流出口として、前記下部起立板部が対向接近する第1または第2のバーナ、および前記下部水平板部のそれぞれよりも高い位置に設けられた第2の空気流出口を有していることを特徴としている。
【0010】
本発明においては、前記第1および第2のバーナのそれぞれは、複数のバーナ本体が水平方向に所定の配列ピッチで並べられて構成されており、前記遮熱板の前記下部起立板部が対向接近する第1または第2のバーナと前記仕切り部材との間隔は、前記配列ピッチよりも小さい構成とすることができる。
また、本発明においては、前記とは異なり、前記バーナケースは、前記第1および第2のバーナを構成する複数のバーナ本体を所定の配列ピッチで並べて装着することが可能な複数のバーナ装着用エリアを有し、前記遮熱板の前記下部起立板部が対向接近する第1または第2のバーナは、前記複数のバーナ装着用エリアのうち、前記仕切り部材寄りのバーナ装着用エリアにはバーナ本体が装着されていない構成とされ、前記下部起立板部が対向接近する第1または第2のバーナと前記仕切り部材との間隔は、前記所定の配列ピッチよりも大きい構成とすることもできる。
【0011】
本発明によれば、第2の空気流出口の位置が従来の空気流出口の位置よりも高くされているために、この第2の空気流出口から吐出されて生じる空気流を、遮熱板や仕切り部材の上部領域まで有効に進行させ、あるいは遮熱板や仕切り部材の上部領域に向けて火炎や高温の燃焼ガスが接近してくることを有効に阻止する空気流として機能させることが可能となる。したがって、従来技術では困難であった遮熱板や仕切り部材の上部領域が高温に加熱されることを適切に防止し、遮熱板などの熱損傷を防止する上で好ましいものとなる。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記遮熱板の前記下部水平板部には、前記空気流路に流入した空気を上向きに通過させる第3の空気流出口が設けられている。
【0013】
このような構成によれば、遮熱板の上部側領域のうち、第2の空気流出口よりも下方領域の表層部に沿って空気層を形成し、その領域に火炎や高温の燃焼ガスが接近するようなことをも適切に防止することができる。遮熱板の上部側領域と第1または第2のバーナとの距離が短い場合には、遮熱板の上部側領域に火炎が接近し易くなるが、上記構成はそのような場合により好適である。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記第2の空気流出口は、前記遮熱板の起立状部分に設けられて水平方向に開口している。
【0015】
このような構成によれば、第2の空気流出口からは基本的には略水平方向に空気が流出することとなる。したがって、たとえばバーナの火炎が遮熱板の上部側領域に近い箇所で発生していることに起因して、この火炎が遮熱板に向けて略水平方向に接近してくる虞がある場合、これを効率良く防止する上で好ましいものとなる。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記遮熱板には、前記下部水平板部よりも高い位置に存在する追加の水平板部が設けられ、前記第2の流出口は、前記追加の水平板部に設けられて上下方向に開口している。
【0017】
このような構成によれば、遮熱板の上部側領域のうち、第2の空気流出口よりも上方領域の表層部に沿わせて空気層を形成することができるために、遮熱板の上部領域の広い範囲を保護するのに好ましいものとなる。遮熱板の上部側領域とバーナとの距離が比較的大きい場合には、それらの間の領域において高温の燃焼ガスが滞留して遮熱板の上部側領域の広い範囲が高温に加熱される虞があるが、前記構成によれば、そのような虞を解消するのに好ましい。
【0018】
本発明において、好ましくは、前記遮熱板および前記仕切り部材が互いに対向する方向において、前記追加の水平板部の幅は、前記下部水平板部の幅よりも小さくされている。
【0019】
このような構成によれば、遮熱板のうち、追加の水平板部と下部水平板部との間の領域が、バーナ側に大きく接近しないようにし、この領域が高温に加熱されることを防止する上で有利である。
【0020】
本発明において、好ましくは、前記遮熱板の前記下部起立板部の上縁の高さは、前記下部起立板部が対向接近する第1または第2のバーナよりも高くされている。
【0021】
このような構成によれば、遮熱板の下部起立板部がバーナに沿ってこのバーナよりも上方に起立した形態となるため、バーナから上向きに上昇する燃焼ガスや火炎が遮熱板側に向けて広がる現象を抑制することができる。このことにより、遮熱板が比較的高温に加熱される領域が上方にシフトすることとなり、その領域およびその周辺領域に対して第2の空気流出口から集中的に空気を作用させて、前記の領域が高温になることを効率良く抑制することが可能となる。なお、遮熱板の下部起立板部がバーナに沿って上方に起立したとしても、その起立高さが適度(たとえば、3mm程度以下)であれば、高温の火炎が下部起立板部に直接触れることを抑制し、この部分が過熱状態となることを適切に回避することが可能である。
【0022】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る燃焼装置の一例を示す正面断面図である。
【
図4】
図1に示す燃焼装置で用いられている遮熱板の斜視図である。
【
図5】
図1に示す燃焼装置で用いられている1次熱交換器の平面断面図である。
【
図6】本発明に係る燃焼装置の他の例を示す正面断面図である。
【
図8】
図6に示す燃焼装置で用いられている遮熱板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0025】
図1および
図2に示す燃焼装置C1は、湯水加熱が可能な温水装置として構成されている。この燃焼装置C1は、燃焼ガスを発生させる第1および第2のバーナ5A,5B、これらを収容するバーナケース2、バーナケース2内に燃焼用空気を供給するためのファン30、第1および第2のバーナ5A,5Bによって発生された燃焼ガスから熱回収を行なう1次熱交換器HE1、および2次熱交換器HE2を具備している。
【0026】
1次熱交換器HE1および2次熱交換器HE2は、ともに1缶2回路方式であり、1次熱交換器HE1においては、缶体6内に伝熱管T1,T2が収容されている。2次熱交換器HE2においては、ケース7内に伝熱管T3,T4が収容されている。伝熱管T1,T3は、たとえば一般給湯用の湯水加熱を行なうためのであり、伝熱管T2,T4は、たとえば風呂給湯用または暖房用の湯水加熱を行なうためのである。第1および第2のバーナ5A,5Bは、そのような構成に対応したものである。
【0027】
1次熱交換器HE1は、顕熱回収用の熱交換器であり、その伝熱管T1,T2には、複数のフィン18a,18bが装着されている。
図5に示すように、伝熱管T1,T2は、フィン18a,18bが装着された複数の直状管体部11が略U字状の連結用管体部12を介して一連に繋がった平面視蛇行状である。このような蛇行状の伝熱管T1,T2は、上下高さ方向に単段(1段)に設けられている。このことにより、1次熱交換器HE1の薄型化を図ることができる。伝熱管T1,T2の相互間には、仕切り部材19が設けられている。伝熱管T1,T2の外端側に位置する直状管体部11には、入水口15a,15bを有する管体12a,12bが接続されている。入水口15a,15bに入水した湯水は、伝熱管T1,T2のそれぞれの内部を一方向に流れてから、缶体6の幅方向中央寄りの直状管体部11の出湯口としての端部16a,16bから出湯する。
【0028】
図1および
図2において、2次熱交換器HE2は、1次熱交換器HE1を通過した燃焼ガスから潜熱をさらに回収するためのものである。複数の伝熱管T3,T4のそれぞれは、サイズが相違する螺旋状管体として形成されて、重ね巻き状に配列されており、それらの上下両端部は、ケース7の外部に引き出されてヘッダ75a〜75dと連結されている。燃焼装置C1に対する外部からの入水は、ヘッダ75b,75dになされ、伝熱管T2,T4を個々に通過した湯水は、ヘッダ75a,75cから伝熱管T1,T2の入水口15a,15bに供給される。
【0029】
図2に示すように、2次熱交換器HE2のケース7は、たとえばその底壁部70aに給気口71を有し、かつ前壁部70bに排気口72を有している。1次熱交換器HE1の伝熱管T1によって顕熱回収がなされた燃焼ガスは、給気口71からケース7内に流入し、伝熱管T3の隙間を通過して排気口72に到達する。このような過程において、燃焼ガスから伝熱管T3により潜熱回収がなされる。なお、図示説明は省略するが、1次熱交換器HE2の伝熱管T2によって顕熱回収がなされた燃焼ガスは、伝熱管T4に作用し、この伝熱管T4によって潜熱回収がなされるように構成されている。伝熱管T3,T4の相互間は、仕切り部材74によって仕切られている(
図1を参照)。
【0030】
第1および第2のバーナ5A,5Bは、たとえばガスバーナであり、複数のバーナ本体50(燃焼管)を用いて構成されている。各バーナ本体50としては、従来と同様なもの
を用いることが可能であり、その詳細は省略するが、全体が比較的偏平状であって、長手方向一端の下部には燃料ガス導入口51を有し、かつ上部には平面視細長矩形状の炎孔部52を有している。バーナケース2の前壁部には、燃料ガス導入口51に対向する開口部22が設けられており、この開口部22には、ファン30から吐出された空気の一部が供給されるようになっている。一方、バーナケース2の前側には、燃料ガス供給用のヘッダ31が取り付けられており、このヘッダ31のガス噴出用のノズル32から開口部22に燃料ガスを噴出することが可能である。バーナ本体50内には、開口部22および燃料ガス導入口51から燃料ガスおよび燃焼用空気(1次空気)が混合して供給され、これが炎孔部52において燃焼する。複数のバーナ本体50は、バーナケース2の左右横幅方向に所定の配列ピッチで並んで設けられている。
【0031】
バーナケース2内には、仕切り部材29、および一対の遮熱板8が設けられている。仕切り部材29は、たとえば薄手の金属板を用いて構成されており、第1および第2のバーナ5A,5Bどうしの間、およびそれらの上方の火炎発生領域どうしの間を仕切るように起立して設けられている。
【0032】
一対の遮熱板8は、仕切り部材29の両側面を保護するための部材である。本実施形態では、一対の遮熱板8のそれぞれは、同一の形状・サイズである。また、第1および第2のバーナ5A,5Bのそれぞれと仕切り部材29との距離は比較的小さく、その距離は、バーナ本体50の配列ピッチよりも小さくされている。
【0033】
図3および
図4によく表われているように、遮熱板8は、薄肉の金属板にプレス加工を施して形成されたものであり、最上部の水平板部80、その一側縁に繋がった主起立板部81、この主起立板部81の下端縁に繋がった下部水平板部82、およびその先端縁から下向きに屈曲するようにして繋がった下部起立板部83を有している。また、この遮熱板8には、第1ないし第3の空気流出口84a〜84cも設けられている。
【0034】
最上部の水平板部80は、仕切り部材29の上端に支持可能であり、この支持により、遮熱板8は、仕切り部材29に沿って起立した状態に取り付けられる。主起立板部81には、仕切り部材29側に向けて突出する複数の突起部85aが設けられており、これらの突起部85aを仕切り部材29の側面に当接させることによって、遮熱板8と仕切り部材29との間には、隙間しての空気流路27が形成されている。
図1に示すように、第1および第2のバーナ5A,5Bの下方には、整流板26が設けられており、ファン30から吐出された空気は、整流板26の通気孔26aを通過してバーナケース2内に上向きに進行する。この空気は、第1および第2のバーナ5A,5Bの燃焼駆動用の2次空気として利用されるが、そのうちの一部は、空気流路27にその下方から進入する。最上部の水平板部80には、第1の空気流出口84aが設けられており、このことにより空気流路27に進入した空気は、空気流路27内において停滞することなく、上向きに進行して第1の空気流出口84aを通過する。この空気は、その後に1次熱交換器HE1の仕切り部材19の側面に沿って流れ、この部分を冷却する作用を発揮する。
【0035】
下部水平板部82は、その上面の高さが第1および第2のバーナ5A,5Bの高さと略同一とされている。下部起立板部83は、第1および第2のバーナ5A,5Bのいずれかの側面に対向接近している。ただし、この下部起立板部83は、突出寸法が比較的小さい突起部85bを有しており、この突起部85bが第1および第2のバーナ5A,5Bのいずれかの側面に当接している。このことにより、第1および第2のバーナ5A,5Bと下部起立板部83との間には、空気流通が可能が隙間が形成される。第3の空気流出口84cは、下部水平板部82に複数設けられている。この第3の空気流出口84cは、上下高さ方向に開口して設けられているため、空気流路27の下部に進入した空気の一部は、この第3の空気流出口84cから上向きに流出する。
【0036】
図4によく表われているようち、第2の空気流出口84bは、主起立板部81の上部寄りの位置に複数設けられている。本実施形態では、突起部85aとの干渉を回避すべく、一部の第2の空気流出口84bについては、突起部85aの上方に設けられている。本実施形態では、第2の空気流出口84bが遮熱板8の横幅方向の全長域にわたって設けられておらず、遮熱板8の左右両側縁部の近傍には設けられていない。これは、遮熱板8の幅方向の中央寄り部分の方が両側縁部よりも高温に加熱され易いからである。勿論、本実施形態とは異なり、第2の空気流出口84bを遮熱板8の横幅方向の略全長域にわたって設けてもよい。第2の空気流出口84bは、水平方向に開口している。したがって、この第2の空気流出口84bからは、基本的には略水平方向に空気を噴出させることができる。主起立板部81の上部には、傾斜部81dが設けられているが、これは第1の空気流出口84aを仕切り部材29から大きく離間させつつ、主起立板部81の他の部分と仕切り部材29との間の距離を小さくするのに役立つ。
【0037】
この燃焼装置C1には、バーナケース2の側壁20が高温に加熱されることを防止するための手段として、サイドプレート24も設けられている。このサイドプレート24は、
図3に示すような断面形状を有するものであるが、その構成は、前記した遮熱板8と比較して、第2の空気流出口84bが設けられていない点が相違している。これは、バーナケース2内の中央寄りに配される仕切り部材29と比較すると、バーナケース2の側壁20は高温に加熱され難いからである。サイドプレート24の前記以外の基本的な構成については、遮熱板8と同様であるため、その詳細な説明は省略する。バーナケース2の側壁20とサイドプレート24との間にはファン30から供給されてきた空気が流入し、この空気が空気流出口24a,24bから上向きに流出する。したがって、サイドプレート24を空冷することが可能である。また、サイドプレート24の表層部に沿って空気層を形成する効果によって火炎や高温の燃焼ガスがサイドプレート24に接触する作用も緩和することが可能となる。空気流出口24aから上向きに進行した空気は、1次熱交換器HE1の缶体6の側壁を冷却する作用を発揮する。
【0038】
次に、前記した燃焼装置C1の作用について説明する。
【0039】
まず、遮熱板8と仕切り部材29との間に形成された空気流路27を流れる空気によって遮熱板8の裏面および仕切り部材29の外面が冷却される効果が得られる。また、第3の空気流出口84cから上向きに空気が流出しているために、主起立板部81の表層部近傍には、空気層が形成される。本実施形態では、既述したように、第1および第2のバーナ5A,5Bと仕切り部材29との距離が短く、第1および第2のバーナ5A,5Bと遮熱板8の主起立板部81とが比較的接近している。したがって、第3の空気流出口84cから流出する空気による空気層は、主起立板部81の下部側や中間高さ領域を保護するのに役立つ。ただし、
図9を参照して説明した従来技術と同様に、第3の空気流出口84cは低い高さにあり、ここから流出した空気は、主起立板部81の上部およびその近傍高さまでは適正な空気流として到達し難い。
【0040】
これに対し、本実施形態では、主起立板部81の上部寄りの部位に第2の空気流出口84bが設けられているために、この第2の空気流出口84bから流出した空気を利用して主起立板部81の上部およびその近傍が高温に加熱されることを適切に抑制することができる。とくに、第2の空気流出口84bからは基本的には水平方向に空気流出がなされるが、このような空気流出がなされれば、たとえば主起立板部81に近い位置で発生している火炎がそのまま水平方向に移動して主起立板部81に接近することを効率良く抑制し得ることとなる。このようなことから、この燃焼装置C1においては、遮熱板8が過熱状態になることを適切に防止し、もって仕切り部材29の保護も的確に図ることができる。
【0041】
図6〜
図8は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付し、重複説明は省略する。
【0042】
図6に示す燃焼装置C2は、第2のバーナ5Bのバーナ本体50の数が、先の燃焼装置C1と比較して、1つ少なくされており、第2のバーナ5Bと仕切り部材29との間隔が大きくなっている。このことに対応し、第2のバーナ5B側の遮熱板として、遮熱板8Aが用いられている。これ以外の基本的な構成は、先の燃焼装置C1と同様である。
【0043】
より具体的に説明すると、まずバーナケース2は、複数のバーナ本体50を所定の配列ピッチで並べて装着することが可能な複数のバーナ装着用エリアを有しており、これらのうち、1つのエリアにはバーナ本体50を意図的に装着しないことにより、第2のバーナ5Bの火力(能力)を下げ、第2のバーナ5Bが実際の負荷に対応するように設定している。したがって、この燃焼装置C2において、バーナ本体50を1つ追加すれば、先の実施形態の燃焼装置C1を製作できることとなり、燃焼装置C1,C2の主要部品の共用化を図り、それらの製造コストを低減することが可能である。バーナ本体50が1つ少なくされているため、第2のバーナ5Bと仕切り部材29との間隔は、バーナ本体50の配列ピッチよりも大きくなっている。これは、第2のバーナ5Bの火炎が仕切り部材29や遮熱板8Aから遠くなる反面、遮熱板8Aと第2のバーナ5Bの上方領域との間の空間S1が大きくなり、この部分に高温の燃焼ガスが滞留し易くなる。とくに、この現象は、1次熱交換器HE1のフィン18bの隙間が詰まり気味となったような場合に一層顕著となる。
【0044】
図7および
図8によく表われているように、遮熱板8Aは、主起立板部81の中間高さ位置に、追加の水平板部81cを有し、かつこの追加の水平板部81cに、複数の第2の空気流出口84dが設けられている。この第2の空気流出口84dは、上下高さ方向に開口している。第2の空気流出口84dは、遮熱板8Aの左右幅方向の中央寄り部分が、両側縁部寄り部分よりも開口率が大きくなるように設けられている。これは、先に述べた第2の空気流出口84bを中央寄り部分のみに設けた理由と同様である。この第2の空気流出口84dについても、遮熱板8Aの幅方向各所における開口率が略均一となるように設けてよい。
【0045】
下部水平板部82の幅Laは、大きくされているが、これは仕切り部材29と第2のバーナ5Bとの間隔が大きいことに対応する。一方、追加の水平板部81cは、下部水平板部82よりも狭幅に形成されており、その幅は、第2の空気流出口84dを所定の開口面積に形成するのに必要とされる最小幅またはこれに近い幅である。遮熱板8Aには、前記実施形態の第3の空気流出口84cに相当する部位は設けられていない。
【0046】
主起立板部81には、仕切り部材29側に向けて突出する複数の突起部85aが設けられているが、追加の水平板部81cよりも下側部分81bは、上側部分81aよりも第2のバーナ5B寄りに位置している。このため、仕切り部材29には、下側部分81bの突起部85aに当接させるための凸部29aが設けられ、遮熱板8Aが傾かないようにしている。本実施形態とは異なり、たとえば凸部29aを設けることなく、突出寸法が高くて全体が大型化された突起部85aのみを設けた構成を採用したり、あるいは突起部85aを設けることなく突出寸法が高くて全体が大型化凸部29aのみを設けるといった手段を採用した場合には、これらの部位が空気流路27における空気流通を大きく阻害する要因となるが、本実施形態によれば、突起部85aおよび凸部29aの小サイズ化を図り、そのような不具合を抑制することができる。また、遮熱板8Aは、第2のバーナ5Bを構成するバーナ本体59が組み付けられた後に挿入される。したがって、突出寸法が大きな突起部を設ける手段を採用した場合には、遮熱板8Aの挿入時において突起部が他の部材と
接触し易くなって、この接触により遮熱板8Aが変形したり、あるいはバーナ本体50が傷つく虞がある。これに対し、本実施形態の構成を採用すれば、そのような問題も解決することができる。
【0047】
遮熱板8Aは、下部起立板部83の上縁部が第2のバーナ5Bよりも所定の高さH1だけ高くなるように設定されている(
図7を参照)。高さH1は、たとえば3mm前後である。このような高さであれば、第2のバーナ5Bの通常時の燃焼駆動において、下部起立板部83が高温の火炎に直接晒されないようにし、または晒され難くし、この部分が不当な過熱状態となることを回避することが可能である。
【0048】
次に、前記した燃焼装置C2の作用について説明する。
【0049】
まず、第2のバーナ5Bの上方と遮熱板8Aの主起立板部81との間には比較的大きな空間部S1が存在するために、第2のバーナ5Bの火炎が遮熱板8Aに直接接触する可能性は少ない。その反面、1次熱交換器HE1のフィン18bの隙間が詰まり気味となったような場合には、空間部S1に高温の燃焼ガスが滞留し、この燃焼ガスが遮熱板8Aの上部およびその近傍領域に作用し易くなる。これに対し、遮熱板8Aは、主起立板部81の中間高さに設けられた第2の空気流出口84dから上向きに空気を流出させているために、前記した燃焼ガスが作用し易い領域に対して、効率良く空気を供給し、その領域の表層部に沿って空気層を形成することができる。その結果、遮熱板8Aの上部およびその近傍領域が過熱状態となることを適切に防止することができる。
【0050】
下部起立板部83の上縁部は、第2のバーナ5Bよりも高さH1だけ高いために、第2のバーナ5Bの火炎が低い位置において遮熱板8A側に広がることは抑制される。すると、遮熱板8Aのうち、高温の燃焼ガスが作用する領域が上方にシフトする。このように高温の燃焼ガスが作用する領域が上方にシフトすれば、それに対応させて第2の空気流出口84dの高さを高くし、前記の領域に対して冷却用の空気を効率よく集中して供給し、前記の領域が高温になることをより的確に防止することが可能となる利点が得られる。
【0051】
遮熱板8Aには、第3の空気流出口84cが設けられていないが、既述したように、この燃焼装置C2においては、高温の燃焼ガスや火炎は、主起立板部81の下側部分81bには作用し難い。したがって、第3の空気流出口84cが設けられていないことによる不具合はとくにない。ただし、下部水平板部82に第3の空気流出口84cをさらに設けた構成としてもかまわない。
【0052】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る燃焼装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0053】
遮熱板は、仕切り部材の左右両側面の双方を保護するように、左右一対で設けることが望まれるが、これら一対の遮熱板のいずれか一方が、本発明の意図する構成であれば、仮に他方がそうでない場合であっても、本発明の技術的範囲に包摂される。遮熱板は、金属板へのプレス加工により製造することが可能であるが、その製法は問わない。遮熱板の表面に耐熱性のコーティング層を設けるといったことも可能である。また、遮熱板は必ずしも単一部材を用いて形成されていなくてもよく、複数の部材を接続するなどして構成してもかまわない。仕切り部材は、薄手の板状とは異なる形態とすることもできる。
【0054】
本発明に係る燃焼装置は、熱交換器を備えた給湯装置(温水装置)とは異なる態様の燃焼装置として構成することができる。たとえば、暖房用の燃焼装置などとして構成することも可能である。バーナは、ガスバーナに限らず、たとえばオイルバーナを用いることもできる。
【符号の説明】
【0055】
C1,C2 燃焼装置
HE1 1次熱交換器
HE2 2次熱交換器
2 バーナケース
5A,5B 第1および第2のバーナ
8,8A 遮熱板
27 空気流路
29 仕切り部材
30 ファン
50 バーナ本体
82 下部水平板部
83 下部起立板部
84a〜84c 第1ないし第3の空気流出口
84d 第2の空気流出口