(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態に係る積層フィルム100は、
図1に示されるように、主に、外層110、第1接着層120、バリア層130、第2接着層140、酸素吸収層150、吸着シール層160が、この順に積層されて形成される。
図2に示されるように、この積層フィルム100は、包装体200の底材300の材料として用いられる。また、底材300には、蓋材400がシールされる。以下、積層フィルム100の各構成について、それぞれ詳しく説明する。
【0022】
<外層>
外層110の材料として、底材300で用いることができる程度の強度を有しているものであればよく、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などが用いられる。
【0023】
<第1接着層、第2接着層>
第1接着層120は、隣接する層である外層110と、バリア層130とを接着する機能を有する。第2接着層140は、隣接する層であるバリア層130と、酸素吸収層150とを接着する機能を有する。
【0024】
第1接着層120および第2接着層140の材料として、公知の接着性のオレフィン系樹脂、例えば、接着性ポリプロピレン系樹脂、接着性ポリエチレン系樹脂などが用いられる。なお、第1接着層120および第2接着層140の少なくとも一方は、包装体200の内容物(図示せず)の酸化を防止するために、酸化防止剤を含有していてもよい。第1接着層120および第2接着層140の少なくとも一方が酸化防止剤を含有する場合、酸化防止剤として、公知の酸化防止剤、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが、単体でまたは2種類以上混合して用いられる。
【0025】
<バリア層>
バリア層130は、包装体200の外部から侵入する水蒸気、酸素、光などの透過を制限するバリア機能を有する。水蒸気をバリアするバリア層130の材料として、例えば、アルミニウム箔のような金属箔、フッ素、ポリ塩化ビニリデン、環状ポリオレフィン等の水分バリア性を有する樹脂が用いられる。酸素をバリアするバリア層130の材料として、例えば、アルミニウム箔のような金属箔、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等が用いられる。水蒸気および酸素をバリアするバリア層130の材料として、例えば、バリアPET等が用いられる。光である紫外線をバリアするバリア層130の材料として、例えば、紫外線吸収剤または顔料を含有する樹脂薄膜などが用いられる。水蒸気、酸素、および光をバリアするバリア層130の材料として、例えば、透明樹脂フィルムに、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムまたはそれらの混合物などの無機酸化物からなる蒸着薄膜層が形成されたものが用いられる。なお、必要に応じて、透明樹脂フィルム上に透明プライマー層が形成されてもよいし、または蒸着薄膜層上にガスバリア被膜層が形成されてもよい。
【0026】
<酸素吸収層>
酸素吸収層150は、酸素吸収剤である酸素吸収性樹脂と、酸素吸収反応触媒とを含む。酸素吸収性樹脂として、不飽和ポリオレフィン系酸素吸収樹脂などが用いられる。具体的に、酸素吸収性樹脂として、例えば、エチレン系不飽和炭化水素ポリマー、主鎖エチレン系不飽和炭化水素ポリマー、ポリエーテルユニットポリマー、エチレンと歪んだ環状アルキレンのコポリマー、ポリアミド樹脂、酸変性ポリブタジエン、ヒドロキシアルデヒドポリマー等が、単体でまたは酸素吸収性樹脂以外の透明性に影響しないベース樹脂と混合して用いられる。
【0027】
酸素吸収反応触媒として、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトナート亜鉛、アセチルアセトナートコバルトまたはアセチルアセトナート銅などの遷移金属触媒などが用いられる。
【0028】
酸素吸収層150は、酸化防止剤を含有していてもよいし、酸化防止剤を含有していなくてもよい。酸素吸収層150が酸化防止剤を含有する場合、酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤が用いられ、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが、単体でまたは2種類以上混合して用いられる。
【0029】
なお、酸素吸収層150と吸着シール層160との間に何らかの機能層が設けられることで、酸素吸収層150は吸着シール層160と隣接していなくてもよい。
【0030】
<吸着シール層>
吸着シール層160は、蓋材400を底材300にシール(ヒートシール、超音波シール、高周波シール、インパルスシール等)するためのシール機能を有し、包装体200に収容される内容物に対して悪影響を及ぼさないものである。また、吸着シール層160は、臭気原因物質を吸着する機能を有する。なお、積層フィルム100から成る底材300と蓋材400とのシール強度は、良好なシール機能の観点から、900g/15mm以上であることが好ましい。シール強度の測定方法は、下記の実施例において詳述する。
【0031】
吸着シール層160は、化学的な消臭剤および物理的な消臭剤の少なくとも一方を含有する樹脂から成る。化学的な消臭剤は、物理的な消臭剤に比べて、臭気原因物質を良好に抑制することができる。そのため、吸着シール層160は、化学的な消臭剤によって、臭気原因物質を化学的に吸着することが好ましい。
【0032】
また、吸着シール層160は、化学的な消臭剤および物理的な消臭剤の少なくとも一方を含有することで、積層フィルム100のユーザでのハンドリングが良好となる。例えば、積層フィルム100は、滑り性が向上して摩擦係数が低下する。そのため、ロール状の積層フィルム100のユーザ加工時の作業性が向上する。
【0033】
消臭剤は、積層フィルム100の透明性の低下と、シール強度の低下とを抑制する観点から、吸着シール層160の全重量に対して、0.5重量%以上100重量%以下の割合で添加されることが好ましく、0.5重量%以上25重量%以下の割合で添加されることがより好ましい。消臭剤の比表面積は、良好な消臭機能を得る観点から、1.0m
2/g以上であることが好ましく、5.0m
2/g以上70m
2/g以下であることが好ましい。消臭剤の粒径は、外観の悪化を抑制する観点から、50μm以下であることが好ましく、樹脂への配合および分散を容易にするという観点から、25μm以下であることがより好ましく、膜厚みを安定させ、メッシュ詰りを低減し(ロングラン性)、さらにシール強度の低下を抑制する観点から、10μm以下であることがさらに好ましい。また、消臭剤は、例えば、溶融押出し時に、通常のマスターバッチ方式のブレンド法などにより樹脂へ添加される。
【0034】
吸着シール層160の化学的な消臭剤は、臭気原因物質を化学的に吸着し、特に、アルデヒド類および酸類の少なくとも一方を化学的に吸着するか、またはアルデヒド類および酸類の両方を化学的に吸着することが好ましい。臭気原因物質は、例えば、積層フィルム100、特に酸素吸収層150から放出されたり、内容物から放出されたりするものである。吸着シール層160に吸着される酸類は、消臭を効果的に行う観点から、有機酸類であることが好ましく、脂肪酸類であることがより好ましい。
【0035】
化学的な消臭剤として、臭気原因物質を化学的に吸着する公知の物質が用いられ、ターゲットとする臭気原因物質に応じて適宜選択される。具体的に、ターゲットとする臭気原因物質がアルデヒド類の場合、消臭剤として、例えば、アミン系化合物担持二酸化珪素、アミン系有機化合物とケイ酸塩系無機化合物との複合物、層間にアミノ基を保持した層状リン酸塩などが用いられる。また、ターゲットとする臭気原因物質が酸類の場合、消臭剤として、例えば、水酸基担持ジルコニウム、アルミノケイ酸、水酸基担持酸化亜鉛などが用いられる。
【0036】
ここで、臭気原因物質であるアルデヒド類を消臭する場合の消臭機構について、
図3(a)、(b)を用いて説明する。
図3(a)はアルデヒド類用消臭剤161がアルデヒド類510を化学的に吸着する前の状態を示した図であり、
図3(b)はアルデヒド類用消臭剤161がアルデヒド類510を化学的に吸着した後の状態を示した図である。
図3(a)に示されるように、アルデヒド類用消臭剤161は、アミノ基を担持している。アルデヒド類用消臭剤161のアミノ基は、アルデヒド類510のアルデヒド基と化学反応して共有結合を形成する。そして、
図3(b)に示されるように、アルデヒド類用消臭剤161は、アルデヒド類510を化学的に吸着する。そのため、アルデヒド類510は、アルデヒド類用消臭剤161から脱離しにくい。また、アルデヒド類510は、化学反応によって無臭の物質に化学変化している。そのため、アルデヒド類510が化学変化した物質が、たとえアルデヒド類用消臭剤161から脱離したとしても、無臭の物質が放出されることになる。
【0037】
次に、臭気原因物質である酸類、特に脂肪酸類を消臭する場合の消臭機構について、
図4(a)、(b)を用いて説明する。
図4(a)は脂肪酸類用消臭剤162が脂肪酸類520を化学的に吸着する前の状態を示した図であり、
図4(b)は脂肪酸類用消臭剤162が脂肪酸類520を化学的に吸着した後の状態を示した図である。
図4(a)に示されるように、脂肪酸類用消臭剤162は、ヒドロキシル基を担持している。脂肪酸類用消臭剤162のヒドロキシル基は、脂肪酸類520のカルボキシル基と化学反応してイオン結合を形成する。そして、
図4(b)に示されるように、脂肪酸類用消臭剤162は、脂肪酸類520を化学的に吸着する。そのため、脂肪酸類520は、脂肪酸類用消臭剤162から脱離しにくい。
【0038】
吸着シール層160の物理的な消臭剤は、臭気原因物質を物理的に吸着する。吸着シール層160の物理的な消臭剤として、臭気原因物質を物理的に吸着する公知の物質が用いられ、例えば、活性炭、シクロデキストリン(α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等)、ヒドロキシアパタイト、超微粒子酸化亜鉛、ゼオライト、セラミック、カテキン等が用いられる。
【0039】
吸着シール層160の樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂、中密度ポリエチレン(MDPE)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)樹脂、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)樹脂、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E−EA−MAH)樹脂、エチレン−アクリレート共重合体(EAA)樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)樹脂、アイオノマー(ION)樹脂などが、単体でまたは2種類以上混合して用いられる。
【0040】
吸着シール層160は、酸化防止剤を含有していてもよいし、酸化防止剤を含有していなくてもよい。吸着シール層160が酸化防止剤を含有する場合、酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤が用いられ、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが、単体でまたは2種類以上混合して用いられる。
【0041】
<包装体>
図2に示されるように包装体200は、底材300と、蓋材400とから構成される。底材300には、外層110が外側で吸着シール層160が内側となるようにして、ポケット310が成形されている。
【0042】
蓋材400の材料として、例えば、2軸延伸したポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)、金属酸化物を蒸着した2軸延伸したポリエチレンテレフタレートフィルム(VM−PETフィルム)、またはポリエチレン樹脂を積層したフィルム等が用いられる。内部の空気を除去した底材300のポケット310には、食品、飲料または工業用部品などの内容物が収容される。ポケット310に内容物が収容された後、蓋材400が底材300にシールされ、底材300のポケット310が密封される。
【0043】
<本実施形態における効果>
この積層フィルム100は、吸着シール層160を備えることによって、臭気原因物質の吸着を目的とする層をシール層とは別に設ける必要がない。そのため、この積層フィルム100は、臭気原因物質に対する吸着性を有しつつ、製造コストを低減することができる。
【0044】
また、この積層フィルム100を包装体200に用いた場合、吸着シール層160は、積層フィルム100を構成する層のなかで、包装体200の内容物に最も近い位置に配置される。そのため、吸着シール層160は、内容物から発生する臭気原因物質を吸着しやすく、かつ、吸着シール層160以外の層から放出される臭気原因物質、いわゆる素材臭を吸着しやすい。よって、この積層フィルム100は、包装体200内部の臭気原因物質を良好に抑制することができる。
【0045】
この積層フィルム100は、臭気原因物質を化学的に吸着する。そして、この積層フィルム100では、臭気原因物質を物理的に吸着する積層フィルムに比べて、吸着後の臭気原因物質の脱離が起きにくい。
【0046】
また、臭気原因物質は、化学反応によって無臭の物質に化学変化する。そのため、臭気原因物質が化学変化した物質が、たとえ積層フィルム100から脱離したとしても、無臭の物質が放出されることになる。さらに、この積層フィルム100は、臭気原因物質を物理的に吸着する積層フィルムに比べて、臭気原因物質の選択性の高い消臭ができ、かつ、消臭容量が大きい。
【0047】
この積層フィルム100を包装体200に用いた場合、酸素吸収層150は、包装体200内部の酸素を吸収し、内容物の酸化を抑制することができる。しかし、酸素吸収層150のなかには、酸素を吸収して臭気原因物質を放出するものがある。かかる場合であっても、この積層フィルム100は、吸着シール層160によって、臭気原因物質を良好に抑制することができる。
【0048】
この包装体200は、上記の積層フィルム100を備える。そのため、この包装体200は、臭気原因物質に対する吸着性を有しつつ、製造コストを低減することができる。
【0049】
<変形例>
(A)
積層フィルム100は、外層110、第1接着層120、バリア層130、第2接着層140、酸素吸収層150、吸着シール層160以外の機能層をさらに備えてもよい。また、積層フィルム100は、第1接着層120、バリア層130、第2接着層140、および酸素吸収層150のうちの少なくとも1層を省略してもよい。
【0050】
(B)
酸素吸収層150の酸素吸収剤は、酸素吸収性樹脂ではなく、例えば、主に鉄粉から成る鉄粉系酸素吸収剤が用いられていてもよい。この場合、鉄粉系酸素吸収剤は、公知の熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン類、エラストマー及びこれらの変性物、あるいはこれらの混合樹脂などに添加されて用いられる。
【0051】
(C)
積層フィルム100は、蓋材400に成形されてもよいし、底材300と蓋材400との両方に成形されてもよい。なお、積層フィルム100から成る蓋材400を備える包装体200においては、蓋材400の吸着シール層160が底材300と対向するようにして配置される。
【実施例】
【0052】
次に、本発明の積層フィルム100から成る底材300を備える包装体200に係る実施例と、比較例と、参考例とについて説明する。なお、これら実施例によって本発明は何ら限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
<底材の作製>
外層110を構成する樹脂として、共重合ポリエステル樹脂(イーストマンケミカルジャパン株式会社製、品番:GN071)を準備した。第1接着層120を構成する樹脂として、接着性ポリオレフィン系樹脂(三井化学株式会社製、品番:SF740)を準備した。バリア層130を構成する樹脂として、EVOH樹脂(株式会社クラレ製、品番:J171B)を準備した。第2接着層140を構成する樹脂として、接着性ポリオレフィン系樹脂(三井化学株式会社製、品番:LF308)を準備した。酸素吸収層150および吸着シール層160を構成する樹脂として、LDPE樹脂(宇部丸善ポリエチレン株式会社製、品番:F522N)を準備した。
【0054】
酸素吸収層150のLDPE樹脂には、含有率が酸素吸収層150に対して重量比率で1000ppmとなるように、酸素吸収反応触媒であるステアリン酸コバルトを添加した。吸着シール層160のLDPE樹脂には、吸着シール層160の全重量に対して2重量%の割合で、化学的な消臭剤であるアミン系化合物担持二酸化ケイ素(東亜合成株式会社製、品番:ケスモンNS−241)を添加した。
【0055】
吸着シール層160のLDPE樹脂と、酸素吸収層150のLDPE樹脂と、第2接着層140の接着性ポリオレフィン系樹脂と、バリア層130のEVOH樹脂と、第1接着層120の接着性ポリオレフィン系樹脂と、外層110の共重合ポリエステル樹脂とをこの順で共押出しし、積層フィルム100を作製した(
図1参照)。得られた積層フィルム100において、吸着シール層160の厚さは10μm、酸素吸収層150の厚さは30μm、第2接着層140の厚さは20μm、バリア層130の厚さは40μm、第1接着層120の厚さは20μm、外層110の厚さは90μmであった。
【0056】
深絞り型全自動真空包装機(MULTIVAC社製、型番:R−530)を用いて、成形温度95℃、成形時間3秒の条件で、積層フィルム100にポケット310(長辺160mm×短辺105mm×深さ15mm、表面積240cm
2)を成形し、底材300を作製した。
【0057】
<蓋材の作製>
LLDPE樹脂(株式会社プライムポリマー製、品番:ウルトゼックス2022L)をTダイ押出法にて製膜し、厚さ30μmのLLDPEフィルムを得た。このLLDPEフィルムと、厚さ30μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)と、アルミ蒸着を施した厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(VM−PETフィルム)をドライラミネート法により貼り合せて、多層のフィルムである蓋材400を作製した。
【0058】
<包装体の作製>
底材300と蓋材400とを、ポケット310の内部の空気を除去することなく、135℃、1.5秒の条件でヒートシールして密封し、包装体200を作製した(
図2参照)。包装体200の容積は250cm
3であった。
【0059】
<シール強度の測定および評価>
JIS Z 0238に準拠して、シール強度の測定を行った。具体的に、上述のようにして得られた積層フィルム100を、135℃、1.5秒の条件でヒートシールして蓋材400に貼り付けた後、積層フィルム100の流れ方向(以下、「MD方向」という)に沿って、シールされた底材300および蓋材400を幅15mmで切り出して試験片を作製した。そして、この試験片のシール強度の測定を剥離試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、品名:テンシロン)を用いて行い、この得られたシール強度の測定値を、MD方向の底材300と蓋材400とのシール強度の測定値とした。また、積層フィルム100の幅方向(以下、「TD方向」という)に沿って、シールされた底材300および蓋材400を幅15mmで切り出して試験片を作製した以外は上記と同様にして、TD方向の底材300と蓋材400とのシール強度の測定を行った。
【0060】
そして、包装体200のシール強度について、MD方向のシール強度およびTD方向のシール強度のうち低い方のシール強度が、1200g/15mm以上であるものをA、900g/15mm以上および1200g/15mm未満であるものをB、900g/15mm未満であるものをCで評価した。
【0061】
上記の測定を行った結果、本実施例に係るMD方向のシール強度が1100g/15mmであり、TD方向のシール強度が1050g/15mmであり、シール強度の評価はBであった(下記表1参照)。
【0062】
<臭気の評価>
次に、におい識別装置(株式会社島津製作所製、品番:FF−2A)を用いて包装体200内部の臭気を測定した。におい識別装置は、人間の官能評価と同じように、臭気の「質」および「強さ」を表現できる装置であり、臭気の「強さ」および「質」を数値化することにより、臭気を客観的に評価することができる。具体的に、基準ガス(硫化水素、硫黄系、アンモニア、アミン系、有機酸系、アルデヒド系、エステル系、芳香族系、炭化水素系)とサンプルとの比較により、臭気を数値化およびパターン化することができる。
【0063】
まず、包装体200内から抜き取ったサンプル臭気をサンプルバックの中に入れ、さらに1000mlの乾燥窒素ガスをサンプルバックの中に入れ、6倍希釈した希釈サンプルを作製した。この希釈サンプルは、におい識別装置の検出感度適正範囲のものとなっている。この希釈サンプルをにおい識別装置に取り付け、臭気指数相当値を測定した(測定条件:25℃、ガス吸引時間90秒)。この測定を3回連続で行い、2回目と3回目の平均値を測定結果とした。なお、臭気指数相当値の差が3あれば、人間の嗅覚でもその差が判り、臭気としては約2倍の差があることに相当する。
【0064】
そして、包装体200の臭気について、臭気指数相当値が27.5未満であるものを○、臭気指数相当値が27.5以上30.0未満であるものを△、臭気指数相当値が30.0以上であるものを×で評価した。
【0065】
上記の測定を行った結果、本実施例に係る臭気の評価は○であった(下記表1参照)。
【0066】
<外観の評価>
積層フィルム100の外観について、肌荒れおよび透明性で評価した。積層フィルム100の肌荒れは曇度20%未満であり、かつ、透明性は光線透過率85%以上であるものをA、積層フィルム100の肌荒れは曇度20%以上であり、かつ、透明性は光線透過率85%以上であるものをB、積層フィルム100の肌荒れは曇度20%以上であり、かつ、透明性が光線透過率85%未満であるものをCで評価した。
【0067】
上記の評価を行った結果、本実施例に係る外観の評価はAであった(下記表1参照)。
【0068】
(実施例2)
下記以外については実施例1と同様にして、積層フィルム100および包装体200を得た。吸着シール層160のLDPE樹脂には、吸着シール層160の全重量に対して10重量%の割合で、化学的な消臭剤であるアミン系化合物担持二酸化ケイ素(東亜合成株式会社製、品番:ケスモンNS−241)を添加した。
【0069】
この積層フィルム100および包装体200について、実施例1と同様にして、シール強度の測定および評価、臭気の評価、外観の評価を行った。
【0070】
その結果、本実施例に係るMD方向のシール強度が950g/15mmであり、TD方向のシール強度が900g/15mmであり、シール強度の評価はBであった。臭気の評価は○であった。外観の評価はAであった(下記表1参照)。
【0071】
(実施例3)
下記以外については実施例1と同様にして、積層フィルム100および包装体200を得た。酸素吸収層150および吸着シール層160を構成する樹脂として、LLDPE樹脂(プライムポリマー株式会社製、品番:モアテック0248Z)を準備した。吸着シール層160のLLDPE樹脂には、吸着シール層160の全重量に対して1重量%の割合で、化学的な消臭剤であるアミン系化合物担持二酸化ケイ素(東亜合成株式会社製、品番:ケスモンNS−241)と、吸着シール層160の全重量に対して1重量%の割合で、化学的な消臭剤である水酸基担持ジルコニウム(東亜合成株式会社製、品番:ケスモンNS−80E)とを添加した。
【0072】
この積層フィルム100および包装体200について、実施例1と同様にして、シール強度の測定および評価、臭気の評価、外観の評価を行った。
【0073】
その結果、本実施例に係るMD方向のシール強度が2800g/15mmであり、TD方向のシール強度が2550g/15mmであり、シール強度の評価はAであった。臭気の評価は○であった。外観の評価はAであった(下記表1参照)。
【0074】
(実施例4)
下記以外については実施例1と同様にして、積層フィルム100および包装体200を得た。酸素吸収層150および吸着シール層160を構成する樹脂として、LLDPE樹脂(プライムポリマー株式会社製、品番:モアテック0248Z)を準備した。吸着シール層160のLLDPE樹脂には、吸着シール層160の全重量に対して5重量%の割合で、化学的な消臭剤であるアミン系有機化合物とケイ酸塩系無機化合物との複合物(株式会社シナネンゼオミック製、品番:ダッシュライトM)を添加した。
【0075】
この積層フィルム100および包装体200について、実施例1と同様にして、シール強度の測定および評価、臭気の評価、外観の評価を行った。
【0076】
その結果、本実施例に係るMD方向のシール強度が1300g/15mmであり、TD方向のシール強度が1340g/15mmであり、シール強度の評価はAであった。臭気の評価は○であった。外観の評価はBであった(下記表1参照)。
【0077】
(実施例5)
下記以外については実施例1と同様にして、積層フィルム100および包装体200を得た。酸素吸収層150および吸着シール層160を構成する樹脂として、LLDPE樹脂(プライムポリマー株式会社製、品番:モアテック0248Z)を準備した。吸着シール層160のLLDPE樹脂には、吸着シール層160の全重量に対して3重量%の割合で、化学的な消臭剤である水酸基担持酸化亜鉛(テイカ株式会社製、品番:K−FRESH MZO)と、吸着シール層160の全重量に対して3重量%の割合で、化学的な消臭剤である層間にアミノ基を保持した層状リン酸塩(テイカ株式会社製、品番:K−FRESH ZA)とを添加した。
【0078】
この積層フィルム100および包装体200について、実施例1と同様にして、シール強度の測定および評価、臭気の評価、外観の評価を行った。
【0079】
その結果、本実施例に係るMD方向のシール強度が1700g/15mmであり、TD方向のシール強度が1740g/15mmであり、シール強度の評価はAであった。臭気の評価は○であった。外観の評価はBであった(下記表1参照)。
【0080】
(実施例6)
下記以外については実施例1と同様にして、積層フィルム100および包装体200を得た。吸着シール層160のLDPE樹脂には、吸着シール層160の全重量に対して0.5重量%の割合で、化学的な消臭剤であるアミン系化合物担持二酸化ケイ素(東亜合成株式会社製、品番:ケスモンNS−241)を添加した。
【0081】
この積層フィルム100および包装体200について、実施例1と同様にして、シール強度の測定および評価、臭気の評価、外観の評価を行った。
【0082】
その結果、本実施例に係るMD方向のシール強度が1300g/15mmであり、TD方向のシール強度が1300g/15mmであり、シール強度の評価は
Aであった。臭気の評価は○であった。外観の評価はAであった(下記表1参照)。
【0083】
(比較例1)
下記以外については実施例1と同様にして、積層フィルムおよび包装体を得た。吸着シール層160のLDPE樹脂には、消臭剤を添加しなかった。
【0084】
この積層フィルムおよび包装体について、実施例1と同様にして、シール強度の測定および評価、臭気の評価、外観の評価を行った。
【0085】
その結果、本比較例に係るMD方向のシール強度が1550g/15mmであり、TD方向のシール強度が1750g/15mmであり、シール強度の評価はAであった。臭気の評価は×であった。外観の評価はAであった(下記表1参照)。
【0086】
【表1】
【0087】
実施例1〜6に係る積層フィルム100および包装体200では、臭気の評価が○であり、シール強度の評価がAまたはBであり、かつ、外観の評価がAまたはBであった。これに対して、比較例1に係る包装体では、臭気の評価が×であった。