(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871189
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】タイヤストッパ
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20160216BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
B62D25/20 D
B62D25/08 E
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-71609(P2012-71609)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-203126(P2013-203126A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】森 瑞樹
(72)【発明者】
【氏名】長江 寛之
(72)【発明者】
【氏名】千葉 勇
【審査官】
田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−260938(JP,A)
【文献】
特開平11−165652(JP,A)
【文献】
米国特許第3881742(US,A)
【文献】
特開2005−193776(JP,A)
【文献】
特開昭62−055275(JP,A)
【文献】
特開2005−170209(JP,A)
【文献】
米国特許第5275436(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びるサイドフレームと、前記サイドフレームの車幅方向外側に配置されるフロントタイヤと、前記フロントタイヤの外周後面の後方から上方へ延びてキャブの前方を区画するダッシュパネルとを備えた車両に設けられるタイヤストッパであって、
前記フロントタイヤの外周後面の後方で前記サイドフレームに固定されて車幅方向外側へ突出するストッパ本体と、
前記ストッパ本体の前端に固定されて該ストッパ本体よりも少なくとも上方へ延び、前記フロントタイヤの外周後面に後方から対向するタイヤ対向面と、
前記タイヤ対向面の後方で前記ストッパ本体に固定され、前記ダッシュパネルの下縁部前面に前方から対向するダッシュパネル対向面と、を備えた
ことを特徴とするタイヤストッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤストッパに関し、特に車両の衝突時においてフロントタイヤのキャブ側への侵入を規制するタイヤストッパに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フロントホイール近傍のサイドフレームの外側面に固着されるタイヤストッパが記載されている。車両衝突時にはフロントホイールの外周後面がタイヤストッパに当り、フロントホイールの移動が規制されるので、フロントタイヤからキャブへの入力が減少し、キャブの変形が減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−165652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のタイヤストッパは、車両の衝突時のフロントタイヤ(フロントホイール)からサイドフレームへの入力を受ける。また、サイドフレーム及びタイヤストッパの車幅方向外側にロッカが設けられている場合、フロントタイヤが前後方向に沿った姿勢を維持した状態では、フロントタイヤの外周後面がロッカの前面に当接し、フロントタイヤからキャブへの入力をロッカが受ける。
【0005】
しかし、フロントタイヤが車幅方向内側に切れ込み、フロントタイヤの外周後面がロッカに当接せずにキャブ側へ侵入する場合、タイヤストッパとダッシュパネルとがフロントタイヤからの入力を受けることになる。一般にダッシュパネルはロッカよりも強度が低いので、フロントタイヤがダッシュパネルに強く干渉すると、キャブ側へのフロントタイヤの侵入量が増加し、ダッシュパネルの下部が大きく変形して、車室内の乗員の下肢損傷の防止に悪影響を及ぼす。
【0006】
そこで、本発明は、フロントタイヤが車幅方向内側に切れ込んだ場合であっても、キャブ側へのフロントタイヤの侵入量の増大を抑制することが可能なタイヤストッパの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明は、前後方向に延びるサイドフレームと、サイドフレームの車幅方向外側に配置されるフロントタイヤと、フロントタイヤの外周後面の後方から上方へ延びてキャブの前方を区画するダッシュパネルとを備えた車両に設けられるタイヤストッパであって、ストッパ本体とタイヤ対向面とダッシュパネル対向面とを備える。
【0008】
ストッパ本体は、フロントタイヤの外周後面の後方でサイドフレームに固定されて車幅方向外側へ突出する。タイヤ対向面は、ストッパ本体の前端に固定されてストッパ本体よりも少なくとも上方へ延び、フロントタイヤの外周後面に後方から対向する。ダッシュパネル対向面は、タイヤ対向面の後方でストッパ本体に固定され、ダッシュパネルの下縁部前面に前方から対向する。
【0009】
上記構成では、車両の衝突時(前突時)において、後退するフロントタイヤの外周後面にタイヤ対向面が後方から当接し、フロントタイヤの後方への移動が規制される。
【0010】
また、タイヤ対向面は、ストッパ本体に固定されてストッパ本体よりも少なくとも上方へ延びているので、フロントタイヤの外周後面の上側領域に広い範囲で面接触する。このため、ダッシュパネルへの干渉によるフロントタイヤのキャブ側への侵入量の増大を抑制することができる。
【0011】
さらに、車両の衝突時のサイドフレームの前方への移動の減速時において、キャブが慣性力によって前方(フロントタイヤ側)へ移動しようとする場合がある。このような場合であっても、ダッシュパネルの下縁部前面がダッシュパネル対向面に後方から当接するので、ダッシュパネル(キャブ)の前方(フロントタイヤ側)への移動が規制される。従って、ダッシュパネルへの干渉によるフロントタイヤのキャブ側への侵入量の増大を、ダッシュパネル対向面によっても抑制することができる。
【0012】
このため、フロントタイヤが車幅方向内側に切れ込み、フロントタイヤの外周後面がストッパ以外の他の部材(例えばロッカ)に当接しない場合であっても、キャブ側へのフロントタイヤの侵入量の増大を抑制し、ダッシュパネルの変形を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のタイヤストッパによれば、フロントタイヤが車幅方向内側に切れ込んだ場合であっても、キャブ側へのフロントタイヤの侵入量の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤストッパが配設される車体前部の概要構造を下方から視た平面図である。
【
図3】車両の衝突時の状態を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図中FRは車両前方を、UPは車両上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示している。また、以下の説明で使用する左右は、車両前方を向いた状態での左右を意味する。
【0016】
図1〜
図3に示すように、RV車等の車体フレーム1は、車両の前後方向に沿って延びる左右1対のサイドフレーム7と、車幅方向に沿って延びる複数のクロスメンバ9,10,11とを備える。左右のサイドフレーム7の車幅方向外側には、操向輪である左右1対のフロントホイール14が配置され、フロントホイール14には、ゴム製(弾性体)のフロントタイヤ17が装着される。クロスメンバ9,10,11は、サイドフレーム7に架設され、サイドフレーム7とクロスメンバ10,11との結合部分には、サスペンションアーム12の基端側が取り付けられる。フロントホイール14は、サスペンションアーム12にナックルアーム13等を介して取り付けられる。サスペンションアーム12には、トルクロッド15が連結され、ナックルアーム13には、スタビライザ16等が連結される。サイドフレーム7の前端部は、フロントホイール14の収容空間を形成するために、車幅方向内側に曲折されている。サイドフレーム7及び後述するタイヤストッパ20の車幅方向外側には、左右1対のロッカ2が設けられ、ロッカ2の前端は、フロントタイヤ17の外周後面18に後方から対向する。フロントタイヤ17の外周後面18の後方には、上方へ延びてキャブ3の前方を区画するダッシュパネル4が起立し、ダッシュパネル4の左右の下端はロッカ2に支持される。
【0017】
タイヤストッパ20は、ストッパ本体21とタイヤ対向板22とダッシュパネル対向部23とを備え、サイドフレーム7とロッカ2との間でフロントタイヤ17の後方に配置される。
【0018】
ストッパ本体21は、その基端部がサイドフレーム7の外側面に溶着又はボルト等によって固定され、サイドフレーム7の外側面から突出する。ストッパ本体21は、板形状を有し、フロントホイール14(フロントタイヤ17)の回転中心19(
図3参照)よりも僅かに下方に配置される。
【0019】
タイヤ対向板22は、上下方向に起立する板体であり、ストッパ本体21の前端に固着され、フロントタイヤ17の回転中心19よりも上方へ延びる。タイヤ対向板22の前面は、フロントタイヤ17の外周後面18に後方から対向するタイヤ対向面24を形成する。タイヤ対向面24は、ストッパ本体21よりも上方へ延びて、車幅方向内側に切れ込んだフロントタイヤ17の外周後面18に沿って対向する(
図1参照)。なお、タイヤ対向面24(タイヤ対向板22)は、ストッパ本体21から上下方向に延びていてもよく、また、その車幅方向外側が後方に向かって傾斜してもよい。
【0020】
ダッシュパネル対向部23は、箱体状であり、タイヤ対向板22の後方でストッパ本体21の上面に固定される。ダッシュパネル対向部23の前面は、タイヤ対向板22の後面に近接又は接触し、ダッシュパネル対向部23の後面は、ダッシュパネル4の下縁部前面に前方から対向するダッシュパネル対向面25を形成する。
【0021】
車両の衝突時(前突時)において、後退するフロントタイヤ17の外周後面18にタイヤ対向面24が後方から当接してこれを受け止める。これにより、フロントタイヤ17の後方への移動が規制される。
【0022】
また、タイヤ対向面24は、ストッパ本体21から上方へ延びているので、フロントタイヤ17の外周後面18の上側領域に広い範囲で面接触する。このため、タイヤ対向面24がストッパ本体21から上方へ延びていない場合(
図3に2点鎖線で示す)と比較して、ダッシュパネル4への干渉によるフロントタイヤ17のキャブ3側への侵入量(フロントタイヤ17の弾性変形による進入量)の増大を抑制することができる。
【0023】
さらに、車両の衝突時のサイドフレーム7の前方への移動の減速時において、キャブ3が慣性力によって前方(フロントタイヤ17側)へ移動しようとする場合がある。このような場合であっても、ダッシュパネル4の下縁部前面がダッシュパネル対向面25に後方から当接するので、ダッシュパネル4(キャブ3)の前方(フロントタイヤ17側)への移動が規制される。従って、ダッシュパネル4への干渉によるフロントタイヤ17のキャブ3側への侵入量の増大を、ダッシュパネル対向面25によっても抑制することができる。
【0024】
このため、フロントタイヤ17が車幅方向内側に切れ込み(外周後面18がサイドフレーム7側に近接する方向へフロントタイヤ17が傾動し)、フロントタイヤ17の外周後面18がロッカ2に当接しない場合であっても、キャブ3側へのフロントタイヤ17の侵入量の増大を抑制し、ダッシュパネル4の変形を抑制することができる。
【0025】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定をされるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲では適宜の変更が可能である。
【0026】
例えば、ストッパ本体21とタイヤ対向板22とダッシュパネル対向部23(タイヤ対向面24及びダッシュパネル対向面25を含む)とを一体的に形成してもよい。また、ストッパ本体21やダッシュパネル対向部23を、板形状や箱体状ではなく、剛性を高めた形状としてもよい。また、タイヤストッパ20のサイドフレーム7への固定は、溶着やボルトによる締結に限定されない。
【符号の説明】
【0027】
1:車体フレーム
2:ロッカ
3:キャブ
4:ダッシュパネル
7:サイドフレーム
9,10,11:クロスメンバ
12:サスペンションアーム
13:ナックルアーム
14:フロントホイール
15:トルクロッド
16:スタビライザ
17:フロントタイヤ
18:外周後面
20:タイヤストッパ
21:ストッパ本体
22:タイヤ対向板
23:ダッシュパネル対向部
24:タイヤ対向面
25:ダッシュパネル対向面