(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
廃棄物を燃焼する主燃焼室を有し、主燃焼室での燃焼後の未燃ガスを燃焼する二次燃焼室が該主燃焼室の出口側に接続されており、主燃焼室下部に、乾燥火格子、燃焼火格子そして後燃焼火格子が順に設けられていると共に、乾燥火格子と燃焼火格子のそれぞれの下方から一次空気を供給する一次空気供給手段と、二次燃焼室に二次空気を供給する二次空気供給手段とが設けられている火格子式の廃棄物焼却炉において、
二次空気供給手段は、一定供給量で二次燃焼室の吹込口から二次燃焼室へ主二次空気を供給する二次空気主供給手段と、一次空気供給手段の送気手段により取り込む空気の一部を廃棄物焼却炉から排出される排ガスの排ガス性状に応じた供給量で上記吹込口から二次燃焼室へ副二次空気として供給する二次空気副供給手段とを備えていることを特徴とする廃棄物焼却炉。
二次空気副供給手段は、廃棄物焼却炉から排出される排ガス性状を検出する排ガス性状検出計と、上記二次空気副供給手段による二次空気の供給量を調整可能な供給量調整器と、上記排ガス性状検出計で検出された排ガス性状に基づき排ガス性状を所定範囲内にするように上記供給量調整器を制御する制御装置とを有することとする請求項1に記載の廃棄物焼却炉。
排ガス性状検出計は温度計、酸素濃度計、CO濃度計及びNOx濃度計のうち少なくとも一つであり、制御装置は上記排ガス性状検出計により検出された排ガスの温度、酸素濃度、CO濃度及びNOx濃度のうち少なくとも一つの性状に基づき、該性状を所定範囲とするように供給量調整器を制御するように設定されていることとする請求項1又は請求項2に記載の廃棄物焼却炉。
廃棄物を燃焼する主燃焼室を有し、主燃焼室での燃焼後の未燃ガスを燃焼する二次燃焼室が該主燃焼室の出口側に接続されており、主燃焼室下部に、乾燥火格子、燃焼火格子そして後燃焼火格子が順に設けられていると共に、乾燥火格子と燃焼火格子のそれぞれの下方から一次空気を供給する一次空気供給手段と、二次燃焼室に二次空気を供給する二次空気供給手段とが設けられている火格子式の廃棄物焼却炉での廃棄物焼却方法において、
一定供給量で、二次燃焼室の吹込口から二次燃焼室へ主二次空気を供給するとともに、一次空気供給手段の送気手段により取り込む空気の一部を、廃棄物焼却炉から排出される排ガスの排ガス性状に応じた供給量で、上記吹込口から副二次空気として二次燃焼室へ供給することを特徴とする廃棄物焼却方法。
廃棄物焼却炉から排出される排ガス性状を検出した排ガス性状検出値に基づき、排ガスの排ガス性状を所定範囲内にするように、上記二次空気副供給手段による副二次空気の供給量を調整することとする請求項4に記載の廃棄物焼却方法。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ等の廃棄物を焼却処理する焼却炉として、火格子式廃棄物焼却炉が広く用いられており、その代表的なものの概要構成を添付図面の
図2に示す。この
図2の形式の焼却炉は特許文献1にも開示されている。
【0003】
図2に示される焼却炉は、廃棄物を燃焼する主燃焼室1の下部に廃棄物の移動方向に配置され三段から成る火格子(乾燥火格子1a、燃焼火格子1bそして後燃焼火格子1c)を有し、後燃焼火格子1cの上方に位置する主燃焼室1の出口に二次燃焼室2が連設されている。上記主燃焼室1には乾燥火格子1aの上方に位置して廃棄物投入口3がそして後燃焼火格子1cの右下方には灰落下口4がそれぞれ設けられている。通常、上記二次燃焼室2は廃熱回収用の廃熱ボイラ10の一部でもあり入口近傍部分である。また、上記主燃焼室1には、燃焼火格子1bと後燃焼火格子1cにまたがる範囲で火格子の上方位置に外部からの二次空気を主燃焼室1内へ吹き込む二次空気吹込み口5が設けられている。
【0004】
図2に示される焼却炉にあっては、廃棄物投入口3から炉内に投入された廃棄物は、シュート3aを通して乾燥火格子1a上に堆積され、乾燥火格子1aの下からの一次空気と炉内の輻射熱により乾燥されると共に、昇温されて着火する。すなわち、上記乾燥火格子1aの直上方では、廃棄物の流れ方向の上流側たる左域空間で乾燥領域をそして下流側たる右域空間では燃焼開始領域を形成する。燃焼開始領域で着火して燃焼を開始した廃棄物は、燃焼火格子1b上に送られ、廃棄物が熱分解ガス化され可燃性ガスが発生し、燃焼火格子1bの下から送られる燃焼用の一次空気によりガス分と固形分が燃焼し、上記燃焼火格子1bの直上方空間で主燃焼領域を形成する。そして、更に後燃焼火格子1c上で、後燃焼火格子1cの下から送られる燃焼用の一次空気により固定炭素など未燃分が完全に燃焼し、該後燃焼火格子1c直上方空間で後燃焼領域を形成する。しかる後、燃焼後に残った灰は、灰落下口4より外部に排出される。かくして廃棄物は三段の火格子1a〜1cの下から吹き上げる一次空気により、燃焼する。
【0005】
このような焼却炉では、廃棄物の燃焼は主燃焼室1内で行われ、燃焼排ガスに含まれている未燃ガスは、二次空気吹込み口5からの二次空気を受けて二次燃焼室2で二次的な燃焼が行われて未燃分が完全に燃焼する。二次燃焼室2からの排ガスは、廃熱ボイラ10にて熱交換された後に、減温塔、バグフィルタ(共に図示せず)等を経由して無害化された状態で煙突から外部に放出される。廃熱ボイラ10では、高温の燃焼排ガスから熱交換器により熱回収され蒸気を発生し、その蒸気を熱供給,発電等に供している。
【0006】
この
図2の焼却炉は、一次空気と二次空気の2系統の燃焼用空気供給系を備え、一次空気供給系はファン6からダンパ等の流量調節機構7を介して火格子1a〜1cに空気を送り込む系統であり、二次空気供給系はファン8からダンパ等の流量調節機構9を介して二次空気を吹込み口5から主燃焼室1内に吹き込む系統である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図2に示されるような従来の廃棄物焼却炉では、実際に炉内に供給する空気量を廃棄物の燃焼に必要な理論空気量で除した比は(空気比)は、通常1.6程度である。これは、一般燃料の燃焼に必要な空気比である1.05〜1.2に比べて大きくなっている。その理由は、廃棄物には、上記一般燃料としての液体燃料や気体燃料に比べて不燃分が多く、かつ燃料分の分布が不均質なため、空気の利用効率が低く、燃焼を行うには多量の空気が必要となるためである。しかし、単に供給空気を多くすると、空気比が大きくなるにしたがって排ガス量も多くなるので、これに伴ってより大きな排ガス処理設備が必要となる。
【0009】
焼却炉において空気比を小さくした状態で支障なく廃棄物を燃焼することができれば排ガス量は低減し、排ガス処理設備がコンパクトになり、その結果、廃棄物焼却施設全体が小型化して設備費を低減できる。これに加えて、排ガス処理のための薬剤量も低減するので、運転費を低減できる。さらには、熱回収できずに大気に捨てられる熱量を低減させ、廃熱ボイラの熱回収率を向上できるので、廃棄物発電の効率を上げることができる。
【0010】
このような状況のもとで、空気比を1.3以下の低空気比で廃棄物焼却炉を操業することが検討されている。低空気比操業を行うことにより焼却炉より排出される排ガス量が低減されるため、排ガスの体積当たりの顕熱が増加し廃熱ボイラでの熱回収効率が向上して発生蒸気による発電効率が向上でき、また、排ガス処理設備をコンパクトにでき廃棄物焼却設備全体をコンパクトにできる効果がある。
【0011】
しかしながら、このように、低空気比燃焼に対する利点は大きくなるが、一方で、低空気比燃焼では燃焼が不安定になるという問題が残る。すなわち、低空気比で廃棄物を燃焼させると、燃焼が不安定となり、COの発生が増加したり、火炎温度が局所的に上昇してNOxが急増したり、煤が大量に発生したり、クリンカが発生したり、局所的な高温により炉の耐火物の寿命が短くなるという問題点がある。
【0012】
火格子式焼却炉では、焼却炉へ供給する空気量を低減して低空気比燃焼を指向する場合でも、乾燥、燃焼、後燃焼のため火格子から供給する一次空気は空気比1.2程度は供給しないと廃棄物の燃焼状況が悪化してしまい、燃え切りが悪くなり灰分中未燃分の増加(熱勺減量の増加)につながることになってしまう。したがって、低空気比燃焼での操業を行うためには、二次空気量をも減少させることが試みられているが、次のような問題がある。すなわち、低空気比燃焼の操業を指向し、二次空気量を減少させると、廃棄物の供給量や性状が変動した場合、未燃ガスが完全燃焼されず、燃焼排ガス中に数百ppmオーダのCOガスが残存する場合があり、COスパイクの発生の原因ともなる。COスパイクが発生すると、有害物質を含んだ排ガスが炉外に放出されることになり、公害防止の上から好ましくない。そのため低空気比燃焼を実現するのが困難になっている。
【0013】
本発明は、かかる事情に鑑み、低空気比燃焼を行った場合においても、CO等の有害ガスの発生を抑制でき、廃棄物を安定して燃焼できる火格子式の廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下、本発明に至る検討の結果及び本発明の構成について説明する。
【0015】
<検討の結果>
二次燃焼室における未燃ガスの燃焼のために供給する二次空気を、二次空気の大部分を一定供給量で供給する主供給系と、変動する排ガス性状に対応して排ガス性状を所定範囲内にするように供給量を調整する副供給系との二つの供給系を設けることで良好な結果が得られることを見い出した。
【0016】
副供給系における送気手段として、新たな送気ファンを設けることは、設備費用、運転費用の増加となるため、好ましくない。そこで、一次空気供給系のうち、後燃焼火格子に供給している系に着目して検討したところ、従来の火格子式廃棄物焼却炉にて、後燃焼火格子下から供給する一次空気は、燃焼火格子から移された廃棄物の焼却残渣中の未燃分(主に固定炭素)を燃焼するために供給されているが、実際には、後燃焼火格子に至るまでに、固定炭素は燃え切っており、これを考慮すると、後燃焼火格子下から供給する一次空気を削減してもよいことが判明した。そこで、二次空気の副供給源として、一次空気供給系の送気手段である送風ファン、管路を利用することを考案した。
【0017】
<廃棄物焼却炉>
本発明にかかる廃棄物焼却炉は、廃棄物を燃焼する主燃焼室を有し、主燃焼室での燃焼後の未燃ガスを燃焼する二次燃焼室が該主燃焼室の出口側に接続されており、主燃焼室下部に、乾燥火格子、燃焼火格子そして後燃焼火格子が順に設けられていると共に、乾燥火格子と燃焼火格子のそれぞれの下方から一次空気を供給する一次空気供給手段と、二次燃焼室に二次空気を供給する二次空気供給手段とが設けられている。
【0018】
かかる火格子式の廃棄物焼却炉において、本発明では、二次空気供給手段は、一定供給量で二次燃焼室へ主二次空気を供給する二次空気主供給手段と、一次空気供給手段の送気手段により取り込む空気の一部を二次燃焼室へ副二次空気として供給する二次空気副供給手段とを備えていることを特徴としている。
【0019】
本発明において、二次空気副供給手段は、廃棄物焼却炉から排出される排ガス性状を検出する排ガス性状検出計と、上記二次空気副供給手段による二次空気の供給量を調整可能な供給量調整器と、上記排ガス性状検出計で検出された排ガス性状に基づき排ガスの排ガス性状を所定範囲内にするように上記供給量調整器を制御する制御装置とを有することとすることができる。
【0020】
このように構成される本発明の廃棄物焼却炉にあっては、従来、一次空気供給手段の送気手段により取り込み後燃焼火格子下へ送っていた空気の分だけ一次空気を削減して、その分を二次空気副供給手段により二次燃焼室へ副二次空気として供給することができ、さらに、排ガス性状に応じて副二次空気の供給量を調整し排ガス性状を所定範囲内にするようにする。その結果、二次燃焼室で未燃ガスを完全に燃焼することができる。そのため、低空気比燃焼でも廃棄物、未燃ガスを安定して燃焼することができ、COなど有害物の発生を抑制でき、低空気比燃焼を達成できる。
【0021】
本発明において、排ガス性状検出計は温度計、酸素濃度計、CO濃度計及びNOx濃度計のうち少なくとも一つであり、制御装置は上記排ガス性状検出計により検出された排ガスの温度、酸素濃度、CO濃度及びNOx濃度のうち少なくとも一つの性状に基づき、該性状を所定範囲とするように供給量調整器を制御するようにすることができる。
【0022】
<廃棄物焼却方法>
本発明の廃棄物焼却方法は、廃棄物を燃焼する主燃焼室を有し、主燃焼室での燃焼後の未燃ガスを燃焼する二次燃焼室が該主燃焼室の出口側に接続されており、主燃焼室下部に、乾燥火格子、燃焼火格子そして後燃焼火格子が順に設けられていると共に、乾燥火格子と燃焼火格子のそれぞれの下方から一次空気を供給する一次空気供給手段と、二次燃焼室に二次空気を供給する二次空気供給手段とが設けられている火格子式の廃棄物焼却炉での廃棄物焼却方法において、一定供給量で二次燃焼室へ主二次空気を供給するとともに、一次空気供給手段の送気手段により取り込む空気の一部を副二次空気として二次燃焼室へ供給することを特徴とする。
【0023】
かかる本発明において、廃棄物焼却炉から排出される排ガス性状を検出した排ガス性状検出値に基づき、排ガスの排ガス性状を所定範囲内にするように、上記二次空気副供給手段による副二次空気の供給量を調整することとすることができる。
【0024】
さらに本発明では、廃棄物の燃焼に必要な単位時間当りの理論酸素量に対する、一次空気により供給される単位時間当りの酸素量の比Q1と、
主二次空気により供給される単位時間当りの酸素量の比Q2と、
副二次空気により供給される単位時間当りの酸素量の比Q3とが、下式(1)及び(2)を満足するように設定することができる。
【0025】
Q1:Q2:Q3=0.75〜0.95:0.25〜0.40:0.05〜0.20 ………(1)
1.2≦Q1+Q2+Q3≦1.4 …………………………………………(2)
【発明の効果】
【0026】
本発明は、以上のように、二次燃焼室へ、一定量で二次空気を二次空気主供給手段により供給すると共に、従来、後燃焼火格子下へ送っていた分の一次空気を、排ガス性状に応じた供給量のもとで二次空気副供給手段により二次空気の一部として上記二次燃焼室へ供給することとしたので、二次燃焼室において、未燃ガスを完全に燃焼することができる。そのため、低空気比燃焼でも廃棄物、未燃ガスを安定して燃焼することができ、COなど有害物の発生を抑制でき、低空気比燃焼を達成できる廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面の
図1にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
図1に示される本実施形態の廃棄物焼却炉は、廃棄物を燃焼するための主燃焼室11の出口側に二次燃焼室12が連設されている。二次燃焼室12は廃熱回収のための廃熱ボイラ17の一部でもあり入口近傍部分である。
【0030】
主燃焼室11の下部には、廃棄物の移動方向(図では右方向)で、上流側から乾燥火格子11a、燃焼火格子11b、そして後燃焼火格子11cが順に設けられている。各火格子11a,11b,11cはそれぞれ、火格子上の廃棄物を右方に移動させる動作を伴っている。
【0031】
上記焼却炉では、乾燥火格子11aの上流側の上方に、廃棄物投入口13が設けられており、該廃棄物投入口13から垂下するシュート14により上記主燃焼室11の上部空間に連通していて、廃棄物投入口13から投入された廃棄物が上記シュート14を経て、図示しない廃棄物供給機構により上記乾燥火格子11aに供給されるようになっている。該乾燥火格子11a上に供給された廃棄物は、各火格子11a〜11cの動作によって、火格子上に廃棄物の層を形成しつつ燃焼火格子11bそして後燃焼火格子11cへと移動する。各火格子11aそして11bの下方には、燃焼用の空気の供給を受けるための風箱11a−1,11b−1が設けられている。燃焼用の一次空気は、火格子上の廃棄物の乾燥及び燃焼に使われるほか、火格子の冷却作用、廃棄物の攪拌作用を有する。また、後燃焼火格子11cに対して下流側で隣接する位置に、下方に開口する灰落下口15が設けられている。
【0032】
主燃焼室11の出口部(下流側)の上方位置で該主燃焼室11に二次燃焼室12が連設されている。廃熱ボイラ17はその入口近傍部分が二次燃焼室12であり、二次燃焼室12に続いて屈曲流路空間が形成され、内壁面の水冷壁や伝熱管群により廃熱を回収し、上方の排出口17aから排ガスを次工程処理のために排出するようになっている。
【0033】
本実施形態では、焼却炉は、燃焼用空気となる一次空気、そして二次空気の2系統の空気供給系を備えている。一次空気供給系21は、空気供給源からの空気を管路22を経て、乾燥火格子11a、燃焼火格子11bのそれぞれの風箱11a−1,11b−1に分岐供給管21a,21bから送り込むようになっており、上記管路22には、圧送用ファン23そして流量調整機構としてのダンパ24a,24bが設けられている。二次空気供給系は、二次空気主供給系(手段)31と二次空気副供給系(手段)25を備えている。二次空気主供給系31は、外部に設けられた空気供給源からの空気を管路32を経て、二次燃焼室12に設けられた吹込口28から該二次燃焼室12へ送り込むようになっており、上記管路32には、圧送用ファン33そして供給量調整機構としてのダンパ34が設けられている。該ダンパ34は適宜設定された開度で一定供給量の空気を供給するようになっている。二次空気副供給系25は、上記一次空気供給系21の管路22から分岐そして延長された管路26で流量調整機構としての供給量調整器であるダンパ27を経て、一次空気の一部を上記二次燃焼室12の吹込口28から該二次燃焼室12へ副二次空気として吹き込むようになっている。上記二次空気副供給系25は、二次燃焼室12の排出口17aに排ガス性状検出計としての酸素濃度計35が設けられていると共に、上記ダンパ27の開度を制御して該ダンパ27を通して供給される副二次空気の供給量を調整する制御装置36を有している。該制御装置36は、上記酸素濃度計35からの検出酸素濃度に基づいて、上記排出口17aでの酸素濃度が所定範囲内に収まるように、上記ダンパ27の開度を制御する指令信号を該ダンパ27に送るようになっている。なお、上記風箱及び燃焼用の一次空気、二次空気を供給するための管路等の構成は図示したものに限定されず、焼却炉の規模、形状、用途等により適宜選択され得る。
【0034】
本実施形態では、二次空気副供給系25に二次空気供給量調整器としてのダンパ27を有していて、二次燃焼室12を含む廃熱ボイラ17からの排ガスの酸素濃度を上記酸素濃度計35で検出して、排ガスの酸素濃度が所定範囲内に収まるように、上記制御装置36で上記ダンパ27を制御するので、二次空気副供給系25の副二次空気の供給量が増減され適正値となる。
【0035】
このような本実施形態の焼却炉では、各火格子11a〜11cの上に廃棄物の層が形成される。
【0036】
乾燥火格子11aの直上方では、該乾燥火格子11a上であって廃棄物の流れ方向の上流側範囲には乾燥領域が形成され、下流側範囲には燃焼開始領域が形成される。すなわち、乾燥火格子11aの廃棄物は、上流側範囲で乾燥され、下流側範囲で着火して燃焼が開始し燃焼火格子11bへと移動する。燃焼火格子11b上の廃棄物はここで熱分解そして部分酸化が行われ、可燃ガスと固形分が燃焼する。廃棄物はこの燃焼火格子11b上で実質的に殆んど燃焼される。こうして、上記燃焼火格子11b直上に主燃焼領域が形成される。しかる後、僅かに残った廃棄物中の固定炭素など未燃分が後燃焼火格子に移動して該後燃焼火格子11c上で完全に燃焼される。この後燃焼火格子11c上に後燃焼領域が形成される。
【0037】
主燃焼室11内で発生した未燃ガスは、上記後燃焼火格子11cの上方に位置する二次燃焼室12に流入してここで燃焼し、上記後燃焼領域の上方に二次燃焼領域を形成する。
【0038】
このような本実施形態の焼却炉は、次の要領で運転される。
【0039】
先ず、廃棄物投入口13へ廃棄物を投入すると、シュート14を経て、廃棄物は乾燥火格子11aに堆積され、各火格子11a〜11cの動作により、燃焼火格子11b上そして後燃焼火格子11c上へと移動し、各火格子11a〜11c上に廃棄物の層を形成する。
【0040】
各火格子11a〜11cは、風箱11a−1,11b−1を経て燃焼用の一次空気を受けていて、これにより各火格子11a〜11c上の廃棄物は燃焼する。
【0041】
乾燥火格子11aでは主として廃棄物の乾燥と着火が行われる。すなわち、乾燥火格子11aの廃棄物の流れ方向の上流側域で乾燥がそして下流側域で着火(燃焼開始)が行われる。燃焼火格子11bでは主として廃棄物の熱分解、部分酸化が行われ、可燃性ガスと固形分の燃焼が行われる。燃焼火格子11bにおいて廃棄物の燃焼は実質的に完了する。後燃焼火格子11c上では、僅かに残った廃棄物中の固定炭素など未燃分を完全におき燃焼させる。完全に燃焼した後の燃焼灰は、灰落下口15より排出される。このように廃棄物が燃焼している状態で、各火格子11a〜11c直上空間には、上述の乾燥領域、燃焼開始領域、主燃焼領域そして後燃焼領域がそれぞれ形成される。
【0042】
上記二次空気副供給系25からの副二次空気供給量は、制御装置36によるダンパ27の開度を増減して調整されるが、これは、酸素濃度計35により検出された廃熱ボイラ17の排出口17aの排ガスの検出酸素濃度が、所定範囲内に収まるように行われる。排ガスの酸素濃度はCO濃度と相関しており、この酸素濃度の所定範囲の下限は、COスパイクが起きないような酸素濃度として定め、上限を極力低空気比となる値として定めることにより、上記所定範囲を決定する。
【0043】
既述のごとく、廃棄物投入口13とは反対側となる主燃焼室11の出口に、廃熱ボイラ17の一部である二次燃焼室12が連設されている。したがって、主燃焼室11内で発生した未燃ガスは、二次燃焼室12に導かれ、そこで二次空気と混合・攪拌され、二次燃焼し、二次燃焼室12からの燃焼排ガスは廃熱ボイラ17で熱回収される。熱回収された後、廃熱ボイラ17から排出された燃焼排ガスは、消石灰による酸性ガスの中和と、活性炭によるダイオキシン類の吸着が行われ、さらに除塵装置(図示せず)に送られ、活性炭や中和反応物などが回収される。上記除塵装置で除塵され、無害化された後の燃焼排ガスは、誘引ファン(図示せず)により誘引され、煙突から大気中に放出される。なお、上記第一そして第二の除塵装置としては、例えば、バグフィルタ方式、電気集塵方式等の除塵装置を用いることができる。
【0044】
次に、本実施形態において、二次燃焼室の雰囲気そして排ガス酸素濃度にもとづく二次空気量の制御について詳述する。
【0045】
<二次燃焼室の雰囲気>
二次燃焼室内のガス温度は、800〜1050℃の範囲となるように、二次空気の流量を調整することが好ましい。その理由は、二次燃焼室内のガス温度が800℃未満となると燃焼が不十分となり、COが増加してしまうからであり、また、二次燃焼室内のガス温度が1050℃を超えると二次燃焼室内におけるクリンカの生成が助長され、さらに、NOxが増加してしまうからである。
【0046】
<排ガス酸素濃度にもとづく二次空気量の制御>
本実施形態において、廃熱ボイラ17の排出口17aの排ガスの酸素濃度を測定し、これにもとづいて副二次空気供給量を制御することとしているが、この酸素濃度と排ガス中のCO濃度、排ガス中のNOx濃度、二次空気供給量との関係を表1に示す。
【0047】
焼却炉内で廃棄物と熱分解によって発生する可燃性ガスを適正な酸素濃度や温度等の範囲内で燃焼させた場合に、CO、NOx、DXN(ダイオキシン類)等の有害物質の発生が最も抑制される。表1において、ボイラ出口近傍での排ガス中酸素濃度が高い場合は、焼却炉から排出されるCO濃度は減少するかあるいは変化無しであるが、NOx濃度は増加する。そのため、二次空気供給量を減少させ、二次燃焼室への酸素の供給量を減少させて二次燃焼室の燃焼を適正に行うようにする。反対に、ボイラ出口近傍での排ガス中酸素濃度が低い場合は、焼却炉から排出されるNOx濃度は減少するかあるいは変化無しの状態となるが、CO濃度は増加する状態となる。そのため、二次空気供給量を増加させ、二次燃焼室への酸素の供給量を増やし、二次燃焼室の燃焼を適正に行うようにする。
【0049】
上記の実施の形態では、排ガス性状検出計として酸素濃度計を用いる場合の形態を示したが、排ガス性状検出計として、酸素濃度計の代わりに、温度計、酸素濃度計、CO濃度計及びNOx濃度計のうち少なくとも一つを用いてもよい。制御装置はこれらの排ガス性状検出計により検出された排ガスの温度、酸素濃度、CO濃度及びNOx濃度のうち少なくとも一つの性状に基づき、該性状を所定範囲とするように供給量調整器を制御するようにすることができる。
【0050】
<低空気比燃焼を実現するための酸素量比配分>
次に、本実施形態の廃棄物焼却炉において低空気比燃焼を実現するための一次空気、主二次空気及び副二次空気の酸素量比配分について説明する。
【0051】
廃棄物の燃焼に必要な単位時間当たりの理論酸素量(X)に対する、乾燥火格子と燃焼火格子の下方から主燃焼室内に吹き込まれる一次空気により供給される単位時間当りの酸素量(Y1)の比Q1(=Y1/X)と、二次空気主供給手段により吹込まれる主二次空気により供給される単位時間当りの酸素量(Y2)の比Q2(=Y2/X)と、二次空気副供給手段により吹込まれる副二次空気により供給される単位時間当りの酸素量(Y3)の比Q3(=Y3/X)とは、下式(1)及び(2)を満足するように、それぞれの空気を吹込むことが好ましい。下式(1)及び(2)を満足するように、それぞれの空気を吹き込む比率を制御することにより、焼却炉全体へ供給する空気量を空気比1.4以下の低空気比での燃焼を実現できる。
【0052】
Q1:Q2:Q3=0.75〜0.95:0.25〜0.40:0.05〜0.20 ………(1)
1.2≦Q1+Q2+Q3≦1.4 …………………………………………(2)
ここで、上記廃棄物の燃焼に必要な単位時間当りの理論酸素量(X)は、主燃焼室内に投入される廃棄物の性状及び成分等から決定される廃棄物の単位質量当りの燃焼に必要な酸素量(Nm
3/kg)と、焼却炉における廃棄物の焼却処理速度(kg/hr)との積(Nm
3/hr)により決定される。
【0053】
また、上記Q1の値は、乾燥火格子と燃焼火格子の下方から主燃焼室内に供給される一次空気により供給される単位時間当りの酸素量(Y1)の理論酸素量に対する比であり、上記一次空気の流量を増減させることにより調整する。また、Q2の値は、二次空気主供給手段により吹込まれる主二次空気の流量を増減させることにより調整される。また、Q3の値は、二次空気副供給手段により吹込まれる副二次空気の流量を増減させることにより調整される。
【0054】
なお、以下において、Q1+Q2+Q3をλと記載する。
【0055】
上記比Q1,Q2,Q3を上式の範囲とすることにより、廃棄物焼却炉において低酸素比燃焼(1.2≦λ≦1.4)(すなわち、低空気比燃焼に相当する)を行った場合においても、COやNOx等の有害ガスの発生量が低減でき、焼却炉から排出される排ガス総量を大幅に低減できる。
【0056】
廃棄物の燃え残りや有害物質の発生を抑制して安定した低空気比燃焼を達成させることができるより好ましい配分比としては、Q1:Q2:Q3=0.90:0.30:010、λ=1.30を基準とし、焼却炉内に投入される廃棄物の組成や性状等に基づきλを1.2〜1.4の範囲でQ1,Q2,Q3を上記の範囲内で調整する。
Q1,Q2,Q3,λの具体例を以下に記載する。
Q1:Q2:Q3=0.90:0.25:0.15、λ=1.30
Q1:Q2:Q3=0.90:0.35:0.05、λ=1.30
Q1:Q2:Q3=0.95:0.30:0.05、λ=1.30
Q1:Q2:Q3=0.95:0.25:0.10、λ=1.30
Q1:Q2:Q3=0.95:0.30:0.10、λ=1.35
Q1:Q2:Q3=0.95:0.30:0.15、λ=1.40
Q1:Q2:Q3=0.85:0.25:0.10、λ=1.20
Q1:Q2:Q3=0.85:0.25:0.15、λ=1.25
Q1:Q2:Q3=0.85:0.30:0.10、λ=1.25
Q1:Q2:Q3=0.80:0.35:0.15、λ=1.30
Q1:Q2:Q3=0.75:0.35:0.20、λ=1.30
Q1:Q2:Q3=0.80:0.40:0.15、λ=1.35
Q1:Q2:Q3=0.75:0.40:0.15、λ=1.30
以下に、比率Q1,Q2,Q3の調整基準を説明する。
【0057】
[一次空気についての比率Q1の調整基準]
通常の都市ごみ等の廃棄物を乾燥させ燃焼させるにはQ1は0.90を基準とし、灰分の少ない廃棄物や水分の少ない廃棄物、例えばプラスチック等を燃焼する際には、Q1を0.75〜0.80程度に減らし、その代わりに主二次空気についての比率Q2を増加させる。
【0058】
[主二次空気についての比率Q2の調整基準]
通常の都市ごみ等の廃棄物を燃焼させるにはQ2は0.30を基準とし、灰分や水分が少なく可燃分が大部分である廃棄物、例えばプラスチック等、或いは、揮発分の大きい廃棄物を燃焼させる場合には、主燃焼室で発生する可燃ガスが多く未燃ガスが増加するため、Q2を0.35〜0.40程度に増加させ、二次燃焼室で未燃ガスを十分に燃焼させるようにする。廃棄物焼却炉を定常的に操業している間は、主二次空気についての比率Q2を一定とし、焼却炉内の燃焼状況が変化した場合には、副二次空気についての比率Q3を調整することで二次燃焼領域内での燃焼状態を調整する。
【0059】
[副二次空気についての比率Q3の調整基準]
廃棄物焼却炉内の状況を監視する因子を検出し、検出結果に基づき、副二次空気についての比率Q3を、0.10を基準とし、0.05〜0.20の範囲内で調整する。Q3の値を調整することで二次燃焼領域内での燃焼状態を調整する。
【0060】
廃棄物焼却炉の実際の操業では標準操業基準で操業していても、焼却炉内の燃焼状況が変化し排出される排ガス中の有害物質量が変動することがある。そこで、上述のようにして決定したQ1及びQ2の値は維持したまま、廃棄物焼却炉内の状況を監視する因子に基づいてQ3を増減するように調節する。このような燃焼制御方法をとることにより、焼却炉内の燃焼状況が変化しても、燃焼を安定して行うように調整でき、最終的に廃棄物焼却炉から排出される排ガス中の有害物質量を制御しやすくなり、さらに、焼却炉の燃焼制御系を簡単にすることができる。
【0061】
ここで、前記廃棄物焼却炉内の状況を監視する因子としては、例えば、主燃焼室から排出される未燃ガスの二次燃焼を行う二次燃焼領域出口近傍又は廃熱ボイラ出口における、排ガス温度、排ガス中の酸素濃度、CO濃度、NOx濃度のいずれか一つ以上とすることが好ましい。これらの監視因子の具体的な組み合わせとしては、例えば、(1)排ガス温度、(2)排ガス中酸素濃度、(3)排ガス温度と排ガス中酸素濃度、(4)排ガス温度と排ガス中CO濃度、(5)排ガス温度と排ガス中NOx濃度、(6)排ガス中NOx濃度と排ガス中CO濃度などを用いることができる。これらの濃度を計測するための計測手段は、例えば、次のごとくのものがある。
【0062】
ガス温度:温度センサ(熱電対、放射温度計)
ガス中O
2濃度:酸素濃度計
ガス中CO濃度:CO濃度計
ガス中NOx濃度:NOx濃度計
【0063】
以上説明したように本発明によれば、廃棄物焼却炉において低空気比燃焼を行った場合においても燃焼の安定性が維持され、且つ、局所高温領域の発生が抑制され、COやNOx等の有害ガスの発生量が低減できる廃棄物焼却炉が提供される。さらに、低空気比燃焼を行えるので焼却炉から排出される排ガス総量を大幅に低減でき、また、廃熱の回収効率を向上できる廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法が提供される。