【0009】
本発明の実施の形態について、図を参照しながら説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態における無線通信システムの送信機の構成図である。
図示された送信機は、入力デジタル信号列
t{D}を複素シンボル列に変換するシンボルマッパ1と、生成された複素シンボル列を並列複素シンボル(S)へと変換する直並列変換器2と、並列複素シンボル(S)に含まれる各複素シンボル(s
0〜s
N−1)のそれぞれに対して個別の周波数を割り当てる周波数マッパ3と、割り当てられた周波数に対応した位相回転を与えたそれぞれの複素デジタル信号標本列(
t{v
0}〜
t{v
N−1})を生成するデジタル信号処理回路4と、生成した複素デジタル信号標本列(
t{v
0}〜
t{v
N−1})のそれぞれを複素アナログ信号(V
BB.0(t)〜V
BB.N−1(t))へと変換する複数のDA変換器5と、各複素アナログ信号(V
BB.0(t)〜V
BB.N−1(t))のそれぞれから実数部が直交変調されたRF信号(V
RF.0(t)〜V
RF.N−1(t))を生成する複数の直交変調ミクサ6と、各直交変調ミクサに局発信号を供給する複数の局発発振器7と、各直交変調されたRF信号(V
RF.0(t)〜V
RF.N−1(t))をそれぞれ増幅する複数のRF増幅器8と、増幅されたそれぞれのRF信号を空中に送出する複数のアンテナ9とから構成されている。
ここで、デジタル信号処理回路4は、信号処理手段として動作する。また、DA変換器5は、DA変換手段として動作する。また、直交変調ミクサ6と局発発振器7との組は、1組の直交変調手段ないし回路として動作する。また、RF増幅器8は、RF増幅手段ないし回路として動作する。
次に、動作について説明する。
入力デジタル信号列
t{D}は、シンボルマッパ1および直並列変換器2により、N個の複素シンボル(s
0〜s
N−1)を含む並列複素シンボル(s)に変換される。次に、周波数マッパ3により各複素シンボル(s
0〜s
N−1)に個別の周波数(f
0,f
1,・・・,f
k,・・・,f
N−1)が割り当てられ、さらに、デジタル信号処理回路4により、各割り当てられた周波数に対応した位相回転を与えた複素デジタル信号標本列
t(v)を生成する。以上を式で表すと、
ここで、
このとき、(3)および(5)の中で位相項として示されているf
k(1<k<N−1)が、この操作で与えられる周波数に対応している。上記N個の複素デジタル信号標本列(
t{v
0}〜
t{v
N−1})は、それぞれDA変換器5にて複素アナログ信号(V
BB.0(t)〜V
BB.N−1(t))に変換される。各複素アナログ信号(V
BB.0(t)〜V
BB.N−1(t))は、更に直交変調ミクサ6と局発発振器7とで直交変調されたRF信号(V
RF.0(t)〜V
RF.N−1(t))に変換される。直交変調されたRF信号(V
RF.0(t)〜V
RF.N−1(t))は、RF増幅器8にてそれぞれ増幅され、アンテナ9から空中に送出される。
以上の動作原理から、各RF増幅器8で増幅される直交変調された夫々のRF信号(V
RF.0(t)〜V
RF.N−1(t))は、シングルキャリア変調信号となっている。シングルキャリア変調としては、例えばBPSK、QPSK、8PSK、16QAM、64QAMが適用可能である。
これにより、既存のOFDMなどのマルチキャリアを使用する無線通信システムにおいて問題となったマルチキャリア信号を増幅する必要性がなくなり、増幅器におけるPAPRが増加する問題が軽減される。
この結果、大きな飽和出力のRF増幅器が不要となり、また、PAPRの増加に伴うRF増幅器の効率低下の問題を回避できる。すなわち、小さな出力電力のRF増幅器を使用することが可能となり、かつ、そのRF増幅器を高い電力効率で使用でき、その結果 周波数利用効率を維持しつつ送信機の消費電力を低減でき、高い周波数利用効率(bit/Hz)を維持しながら、消費電力を下げ、1bitあたりの消費電力を下げられる利点がある。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態の無線通信システムは、
図1の構成において、各並列複素シンボルのそれぞれに割り当てる個別の周波数を、シンボル周期Tの逆数で定義される基本周波数f
0(=1/T)の整数倍でなる周波数f
k=kf
0(kは整数)としている点で第1の実施形態と異なっている。
この場合、行列(F
−1)は逆離散フーリエ変換行列(IDFT)になり、行列(F)は離散フーリエ変換行列(DFT)になる。その結果、式(1)〜(5)は以下のように変更して表せる。
ここで、
ここで、生成されたN個の複素デジタル信号標本列(
t{v
0}〜
t{v
N−1})を標本時間ごとに加算すると既存のOFDM変調信号と同一の信号となる。このことから、本発明により生成したRF信号は、周波数利用効率が良く、マルチパスフェージングに強いなどの既存のOFDM変調信号の優れた特長を有する。
一方、本発明では、複素デジタル信号標本列(
t{v
0}〜
t{v
N−1})のそれぞれから直交変調されたRF信号(V
RF.0(t)〜V
RF.N−1(t))を生成し、各RF信号(V
RF.0(t)〜V
RF.N−1(t))をそれぞれ個別に増幅することができ、既存のOFDM変調信号で問題となった大きなPAPRの問題が軽減される。その結果、RF増幅器に大きなバックオフを持たせる必要がなく、実現が容易な低出力な増幅器を用いることができ、また、高い電力効率で動作させることができ、高い周波数利用効率(bit/Hz)を維持しながら、消費電力を下げ、1bitあたりの消費電力を下げられる利点がある。
以上のように、第2の実施形態に係る無線通信システムでは、既存のOFDM変調信号を用いた無線通信システムの優れた特長を有しながら、単一増幅器を用いる欠点である大きなPAPRによる送信機の効率低下の問題を回避できる。
(第3の実施の形態)
図2は、本発明の第3の実施の形態における無線通信システムの送信機の構成図である。
図1の構成と異なる点は、N個の直交変調ミクサ6に局発信号を供給する局発発振器を共通の局発信号を生成する単一の共通局発発振器10で構成していることである。
次に、動作について説明する。本実施の形態の無線通信システムの送信機では並列複素シンボル(S)に含まれる各複素シンボル(s
0〜s
N−1)のそれぞれに対して周波数マッパ3によって個別の周波数(f
0,f
1,・・・,f
k,・・・,f
N−1)が割り当てられ、さらに、デジタル信号処理回路4により各割り当てられた周波数に対応した位相回転を与えた複素デジタル信号標本列(
t{v
0}〜
t{v
N−1})を生成している。
このため、
図2の各直交変調ミクサ6に供給する局発信号は、同一の周波数でよい。その結果、一つの共通局発発振器10を用いることが可能となる。局発発振器が1つでよいので小型化が可能であり、かつ、各直交変調ミクサ6に供給する局発信号間の周波数偏差を考慮する必要がないため構成が簡単になる利点がある。
(第4の実施の形態)
図3は、本発明の第4の実施の形態における無線通信システムの構成図である。
図1および
図2の構成と比較すると、各RF増幅器8で個別に増幅されたRF信号を合成するための複数の電力合成器11、および各電力合成器11に対応して合成したRF信号を空中に送出する複数のアンテナ12を備えた点が異なる。
次に、動作について説明する。各RF増幅器8で個別に増幅された複数のRF信号を電力合成器11にて合成した後にアンテナ12から空中に送出することにより、使用するアンテナの削減が可能となる。
図3に示した構成は、複数の電力合波器を用いる場合の例を示しているが、各RF増幅器8で個別に増幅されたRF信号の全てを1つの電力合成器で合成し、1つのアンテナから空中に送出するものであってもよい。換言すれば、電力合成器11の個数nは、RF増幅器8の個数となる入力系統数>n≧1である。
以上のように、第4の実施形態に係る無線通信システムでは、既存のOFDM変調信号を用いた無線通信システムの優れた特長を有しながら、単一増幅器を用いる欠点である大きなPAPRによる送信機の効率低下の問題を回避でき、且つ、アンテナの個数を所望の個数まで削減できる。
(第5の実施の形態)
図4は、本発明の第5の実施の形態における無線通信システムの構成図である。
図1ないし
図3と比較すると、
図4における無線通信システムの送信機では、デジタル信号処理回路4及び複数のDA変換器5の間にガードインターバル回路13を装荷する点が異なる。
次に、動作について説明する。ガードインターバル回路13を装荷することにより、デジタル信号処理回路4にて生成した複素デジタル信号標本列(
t{v
0}〜
t{v
N−1})のそれぞれに、適切なガードインターバル(GI)が付加される。付加したGIにより、マルチパス干渉波の影響を低減することが可能となる。
(第6の実施の形態)
図5は、本発明の第6の実施の形態における無線通信システムの構成図である。
図4と比較すると、ガードインターバル回路13と複数のDA変換器5との間に、ウインドウイング処理回路14を装荷する点が異なる。
図6はウインドウイング処理回路14を装荷した場合の信号の様子を示す図である。
図4に示すように、ガードインターバル回路(GI)13を付加した場合、
図6に示すように、連続する信号間(図ではA点)に不連続が生じる。このような不連続が生じるとスプリアス成分が発生することになる。これに対し、
図6に示すように、ウインドウイング処理回路14を設け、ランプ状(傾斜状)のウインドウイング処理を行うと不連続部分の振幅が小さくなり、滑らかになる。これにより、信号のスプリアス成分の抑制やピーク電力の削減等が可能となる。
(第7の実施の形態)
図7は、本発明の第7の実施の形態における無線通信システムの送信機の構成図である。
図示された送信機は、入力デジタル信号列
t{D}を複素シンボル列に変換するシンボルマッパ1と、生成された複素シンボル列を並列複素シンボル(S)へと変換する直並列変換器2と、並列複素シンボル(S)に含まれる各複素シンボル(s
0〜s
N−1)のそれぞれに対して個別の周波数を割り当てる周波数マッパ3と、割り当てられた周波数に対応した位相回転を与えたそれぞれの複素デジタル信号標本列を生成するデジタル信号処理回路4と、各複素デジタル信号標本列の帯域を制限するフィルタ15と、生成した複素デジタル信号標本列のそれぞれを複素アナログ信号(V
BB.0(t)〜V
BB.N−1(t))へと変換するDA変換器5と、各複素アナログ信号(V
BB.0(t)〜V
BB.N−1(t))のそれぞれから直交変調されたRF信号(V
RF.0(t)〜V
RF.N−1(t))を生成する複数の直交変調ミクサ6と、各直交変調ミクサに局発信号を供給する複数の局発発振器7と、各直交変調されたRF信号(V
RF.0(t)〜V
RF.N−1(t))をそれぞれ増幅する複数のRF増幅器8と、増幅されたそれぞれのRF信号を空中に送出するアンテナ9とから構成されている。即ち、フィルタ15を設けた点で、第7の実施の形態に係る送信機は、第1の実施の形態に係る送信機とは異なっている。
次に、動作について説明する。
入力デジタル信号列
t{D}は、シンボルマッパ1および直並列変換器2により、N個の複素シンボル(s
0〜s
N−1)に変換される。次に、周波数マッパ3により各複素シンボル(s
0〜s
N−1)に個別の周波数(f
0,f
1,・・・,f
k,・・・,f
N−1)が割り当てられ、さらに、デジタル信号処理回路4により、各割り当てられた周波数に対応した位相回転を与えて複素デジタル信号標本列(
t{v
0}〜
t{v
N−1})を生成する。このとき各複素シンボルがそれぞれ別の周波数領域に展開され、かつ個別に復調可能であるシングルキャリア信号が生成できるように位相回転がそれぞれに与えられ、その結果N個の複素デジタル信号標本列(
t{v
0}〜
t{v
N−1})が生成される。さらに各複素デジタル信号標本列(
t{v
0}〜
t{v
N−1})は、フィルタ15により帯域が制限される。このときにフィルタ15として、例えばロールオフフィルタが用いられる。さらに、フィルタリングされた各複素デジタル信号標本列(
t{v
0}〜
t{v
N−1})はそれぞれDA変換器5にて複素アナログ信号(V
BB.0(t)〜V
BB.N−1(t))に変換される。複素アナログ信号(V
BB.0(t)〜V
BB.N−1(t))は、さらに直交変調ミクサ6と局発発振器7とで直交変調されたRF信号(V
RF.0(t)〜V
RF.N−1(t))に変換される。直交変調されたRF信号(V
RF.0(t)〜V
RF.N−1(t))はさらにRF増幅器8にてそれぞれ増幅され、アンテナ9から空中に送出される。
以上の動作原理から、各RF増幅器8で増幅される直交変調されたRF信号(V
RF.0(t)〜V
RF.N−1(t))は、シングルキャリア変調信号となっている。シングルキャリア変調としては、例えばBPSK、QPSK、8PSK、16QAM、64QAMが適用可能である。
これにより、既存のOFDMなどのマルチキャリアを使用する通信システムにおいて問題となったマルチキャリア信号を増幅する必要性がなくなり、増幅器におけるPAPRが増加する問題が軽減される。この結果、大きな飽和出力のRF増幅器が不要となり、また、PAPRの増加に伴うRF増幅器の効率低下の問題を回避できる。すなわち、小さな出力電力のRF増幅器を使用することが可能となり、かつ、そのRF増幅器を高い電力効率で使用でき、その結果送信機の消費電力を低減できる利点がある。
また、フィルタをサブキャリアごとに使うことによって、各サブキャリアのサイドローブが低減されるため、サブキャリア間隔を狭くしても、サブキャリアをそれぞれシングルキャリア信号として扱うことができる。
(第8の実施の形態)
図8は、本発明の第8の実施の形態における無線通信システムの送信機の構成図である。
図7の構成と異なる点は、N個の直交変調ミクサ6に局発信号を供給する局発発振器を単一の共通局発発振器10で構成していることである。
次に、動作について説明する。本発明の無線通信システムの送信機では各並列複素シンボルs
kのそれぞれに対して個別の周波数(f
0,f
1,・・・,f
k,・・・,f
N−1)が割り当てられている。
さらに、デジタル信号処理回路4により、各複素シンボルがそれぞれ固別の周波数領域に展開され、かつ個別に復調可能なシングルキャリア信号が生成可能なように位相回転が与えられ、その結果、N個の複素デジタル信号標本列(
t{v
0}〜
t{v
N−1})が生成される。このため、
図8の各直交変調ミクサ6に供給する局発信号は同一の周波数でよい。その結果、一つの共通局発発振器10を用いることが可能となる。局発発振器が1つでよいので小型化が可能であり、かつ、各直交変調ミクサ6に供給する局発信号間の周波数偏差を考慮する必要がないため構成が簡単になる利点がある。
(第9の実施の形態)
図9に示された第9の実施の形態に係る送信機は、複数の複素デジタル信号標本列
t{v
k}を生成する機能を有する信号処理回路4’に、いずれか一つの複素デジタル信号標本列
t{v
k}を選択する制御部を設けている点で、
図2に示された送信機と異なっている。
例えば、信号処理回路4’内に、OFDMとOFDMではないマルチキャリア通信システムに対応した複素デジタル信号標本列を出力できる機能を予め回路内に用意する。これにより、制御信号を用いて状況に応じた使い分けが可能になり、1つの無線機が2つの方式をサポートすることが実現できる。
以上説明したように、本発明における無線通信システムの送信機では、N個の複素シンボルのそれぞれに対して個別の周波数を割り当て、さらに直交変調し、各直交変調したRF信号をそれぞれ個別に増幅する構成としている。
上記構成とすることにより、多数のサブキャリア信号を含むマルチキャリア信号を1つの増幅器で増幅をする必要がなくなり、増幅器におけるPAPRが増加する問題が軽減される。この結果、大きな飽和出力のRF増幅器が不要となり、また、PAPRの増加に伴うRF増幅器の効率低下の問題を回避できる。すなわち、小さな出力電力のRF増幅器を使用することが可能となり、かつ、そのRF増幅器を高い電力効率で使用でき、その結果 周波数利用効率を維持しつつ送信機の消費電力を著しく低減できる。
尚 以上に述べた発明の実施の形態においては、OFDM通信システムにおける信号処理回路4、信号処理回路4’と、実施の形態7や8で示したマルチキャリア通信システムにおけるフィルタ15は、デジタル回路で構成することができ、回路の有無や順序の変更が可能である。他方、RF増幅器は、直交変調器よりも後段に設けることが望ましい。
また、本発明の具体的な構成は前述の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があってもこの発明に含まれる。
この出願は、2010年1月29日に出願された日本出願特願2010−017636号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。