【実施例】
【0037】
以下に、実施例をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
(輪成分の合成例)
下記式(V)で表されるクラウンエーテル化合物(5.0g、10mmol)とカレンズMOI(登録商標)(3.0mL、21mmol)のジクロロメタン(100mL)溶液に、ジラウリル酸ジ−n−ブチルすず(0.61mL、1.0mmol)を加え、25oCで13時間攪拌した。反応混合物を10mL程度まで濃縮してからヘキサン(100mL)に再沈殿し、得られた沈殿を回収した。これを、イソプロパノール、トルエン、ヘキサンの混合溶媒で再結晶させることで、下記式(VI)で表されるクラウンエーテル誘導体(10mmol、96%)を無色球状結晶として得た。
mp 95.0-102.8 oC;
1H NMR (400 MHz, 298K, CDCl
3) d 6.91-6.81 (m, 7H, Ar-H), 6.10 (s, 1H,
CH2=C),5.58 (s, 1H,
CH2=C), 5.03 (br, 1H, N-H), 5.00 (s, 2H, ArCH
2), 4.23 (t, J = 5.2 Hz, -COOCH
2-), 4.16-4.14 (m, 8H, ArOCH
2-), 3.93-3.91 (m, 8H, ArOCH
2CH2), 3.53-3.49 (m, 8H, ArCH
2CH
2O
CH2-), 3.51 (d, J = 5.2 Hz, -NHCOO
CH2-), 1.93 (s, 3H, Me) ppm;
13C NMR (100 MHz, 298 K, CDCl
3), d 167.2, 156.2, 148.9, 148.8 (2), 135.8, 129.2, 126.0, 121.6, 121.3, 114.2, 113.9, 113.5, 71.2 (2), 69.8 (2), 69.4, 69.3, 66.8, 63.6, 40.1, 18.2 ppm; IR (KBr) 3315 (N-H), 3066 (C-H), 2930 (C-H), 1715 (C=O), 1693 (C=O), 1255 (N-H), 1173 (C-O) cm
-1; FAB-HRMS (NBA) m/z calcd for C
32H
43NO
12 [M
+] 633.2777; found, 633.2785.
【0038】
【化4】
【0039】
(軸成分の合成例)
4-(アミノメチル)安息香酸9.06g(60.0mmol)をメタノール400mLに溶かし、塩化チオニル20mLを滴下した後、12時間還流した。余剰の塩化チオニル及び溶媒を減圧留去して白色固体を得た後、これを酢酸エチルで洗浄し、真空乾燥後8.16gの4−(メトキシカルボニル)ベンジルアンモニウム塩酸塩を得た。
1H NMR(400MHz,298K,CD
3OD):δ 8.51 (br,3H),7.97 (d,J = 12.0Hz,2H,Ar-H)
,7.62 (d,J = 12.0Hz,2H,Ar-H),4.09 (s,2H,ベンジル位),3.82 (s,3H,メチル
基) ppm.
次に、4−(メトキシカルボニル)ベンジルアンモニウム塩酸塩4.02g(20.0mmol)を脱水テトラヒドロフラン60mLに溶解し、トリエチルアミン10mLを加えた。ここにピバリン酸クロリド2.40g(20.0mmol)と脱水テトラヒドロフラン30mLとの溶液を0℃で加え、室温で一晩攪拌した。反応液に1M塩酸を酸性になるまで加え、酢酸エチル200mLで抽出した。溶媒を減圧留去し、残渣を真空乾燥して、N−(4−(メトキシカルボニル)ベンジル)ピバルアミドの白色固体4.87g(収率98.1%)を得た。
1H NMR(400MHz,298K,アセトン-d
6):δ 8.00 (d,J = 7.08Hz,2H,-OCO
-Ar-H),7.3
1 (d,J = 7.08Hz,2H,-CH
2-Ar-H),6.19 (br,1H,N-H),4.50,4.48 (s,1H×2,ベン
ジル位のプロトン),3.93 (s,3H,Me),1.20 (s,9H,
tBu) ppm.
次に、N−(4−(メトキシカルボニル)ベンジル)ピバルアミド4.87g(19.6mmol)と脱水テトラヒドロフラン90mLとの溶液を、脱水テトラヒドロフラン90mL中に水素化リチウムアルミニウム2.73g(72.0mmol)を懸濁させた溶液に0℃で滴下した。反応液を12時間還流し、室温まで冷却した後、飽和硫酸ナトリウム水溶液で余剰の水素化リチウムアルミニウムを処理した。ろ過により沈殿物を除去し、ろ液をクロロホルム250mLで2回抽出し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、得られた無色オイルを20mLのメタノールに溶かし、氷浴下で10質量%ヘキサフルオロリン酸水溶液30mLを加え、さらに水を沈殿の析出が止まるまで加えた。ろ過により沈殿を回収し、真空乾燥によりによって、下記式(VII)で表されるアンモニウム塩5.06g(収率73%)を得た。
【0040】
(ロタキサンの合成例)
上記式(VI)で表されるクラウンエーテル誘導体(0.253g、0.400mmol)と上記式(VII)で表されるアンモニウム塩(0.141g、0.400mmol)のジクロロメタン溶液(2.0mL)に4,4−メチレンビスイソシアナート(50.0mg、0.200mmol)を加え、ジラウリル酸ジ−n−ブチルスズ(15μL)を入れて25oCで12時間攪拌した.反応溶液を濃縮し,クロロホルム(3.0mL)に溶かして,分取GPCで精製し下記式(VIII)で表されるロタキサン(0.272g、61.1%)を白色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, 298 K, CDCl
3) 7.58 (d, J = 7.7 Hz, 4H), 7.25-7.24 (m, 8H), 7.07 (d, J = 8.0 Hz, 4H), 7.01 (d, J = 8.0 Hz, 4H), 6.92-6.77 (m, 14H), 6.09 (s, 2H), 5.78 (s, 2H), 5.09 (s, 4H), 5.00 (s, 4H), 4.69-4.61 (m, 4H), 4.22-4.14 (m, 16H), 3.90 (s, 8H), 3.85 (s, 4H), 3.81 (s, 8H), 3.75 -3.74 (m, 8H), 3.51-3.49 (m, 8H), 3.25-3.23 (m, 4H), 3.03-3.00 (m, 4H), 1.93 and 1.90 (s, 6H), 1.64 (s, 18H) ppm.
【0041】
【化5】
【0042】
<実施例1>
上記式(VIII)で表されるロタキサン(0.224g、0.100mmol)と、メタクリル酸メチル(0.513mL、4.80mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(0.5mL)溶液を凍結脱気し、アゾビスイソブチロニトリル(8mg、50μmol)を加えた。アルゴン雰囲気下、60oCで12時間攪拌した。その後、得られたゲルをクロロホルムとメタノールに交互に浸して2回洗浄を行い、真空乾燥することで、架橋ポリマー(0.612g、83%)を作製した。なお、作製した架橋ポリマーのガラス転移点は、T
g163℃、5%重量分解温度は、T
d5211℃であった。
【0043】
<実施例2>
上記式(VIII)で表されるロタキサン(0.112g、0.050mmol)と、N,N−ジメチルアクリルアミド(0.257mL、2.40mmol)溶液を凍結脱気し、アゾビスイソブチロニトリル(4mg、25μmol)を加えた。アルゴン雰囲気下、60oCで12時間攪拌した。その後、得られたゲルをクロロホルムとメタノールに交互に浸して2回洗浄を行い、真空乾燥することで、架橋ポリマー(0.275g、76.3%)を作製した。なお、作製した架橋ポリマーのガラス転移点は、T
g98.8℃、5%重量分解温度は、T
d5226℃であった。
【0044】
<評価1>
各実施例において作製された架橋ポリマー20mgを正確に秤量し、大量の溶媒(表第1を参照。)に浸漬して12時間25℃で静置した。その後、デカンテーションにより溶媒を取り除き、残ったゲル(架橋ポリマー)の重量を秤量し次式から重量膨潤度を算出した。
重量膨純度(%)=(膨潤時の重量−乾燥時の重量)/乾燥時の重量×100
重量膨潤度の算出結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1の結果から、実施例1及び2とで、膨潤度の大きく異なる架橋ポリマーが得られた。その結果、既存のモノマーから、架橋度及び性質の異なる架橋ポリマーが得られることがわかった。特に、実施例1の架橋ポリマーがクロロホルムによく膨潤するオルガノゲルであったのに対して、実施例2の架橋ポリマーは、水によく膨潤するヒドロゲルであることがわかった。
【0047】
<評価2>
実施例1及び2において作製された架橋ポリマー15mgを、0.1mol/Lに調製したテトラブチルアンモニウムフッ化物塩三水和物のN,N−ジメチルホルムアミド溶液に浸した後、60℃で12時間加熱を行った。反応溶液を、水(40mL)へ再沈殿させ、得られた沈殿物をジクロロメタン(0.5mL)に溶かして、メタノール又はエーテル(40mL)へ再沈殿させたところ、白色固体が回収された。
【0048】
実施例1の架橋ポリマーから得られた白色固体は、
図2に示す
1H NMRスペクトル及び
図3のGPC曲線から、実施例1で得た架橋ポリマーが解架橋したポリマーであることがわかった。3.6ppmの−OCH
3のピークとクラウンエーテル由来のeのピークから算出した架橋度は3.4%であり、架橋度を4%に設定した仕込み比とほぼ一致した。また、SECでは単峰性のピークを与え、完全に解架橋が進行したことが示唆された。このポリマーの数平均分子量(M
n)と分子量分布(M
w/M
n)は、それぞれ、M
n:4.48×10
5、M
w/M
n:1.77であった。
【0049】
実施例の架橋ポリマーから得られた白色固体は、クロロホルムに可溶であり、
1H NMRスペクトルから、実施例2で得た架橋ポリマーが解架橋したポリマーであることがわかった。積分比から求めた架橋度は1.5%であり、SECでは単峰性のピークを与え、完全に解架橋が進行したことが示唆された。このポリマーの数平均分子量(M
n)と分子量分布(M
w/M
n)は、それぞれ、M
n:5.05×10
5、M
w/M
n:1.70であった。