【実施例1】
【0086】
次に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例で用いたトリアゾールは、全て1H−1,2,4−トリアゾールである。従って、実施例および比較例におけるトリアゾールは、1H−1,2,4−トリアゾールを示している。実施例および比較例で用いた評価方法は以下の通りである。
【0087】
(a)イオン導電率の評価
プレス成形機(P−16B、RIKEN社製)を用い、測定対象物を60MPaで1分間プレスを行い、直径12mmのペレット状の測定サンプルを作製した。電気化学測定システム(SI 1260、Solartron社製)を用い、作製した各測定サンプルの各々について、イオン導電率の測定を行った。測定は、無加湿条件下で60℃〜160℃(昇温速度5℃/分)の範囲で行った。測定データは専用のソフトウェア(Z−plot、Scribner Associates社製)を用いて収集した。尚、イオン導電率はプロトン伝導性を評価するものであり、イオン導電率が高いほどプロトン伝導性が高いことを示している。
【0088】
(b)TGAによる評価
TGA装置(Rigaku Thermo Plus TG 8120、(株)リガク社製)を用い、大気雰囲気下、昇温速度10℃/分で室温から500℃までの熱重量変化を測定した。また、TGA装置を用いて、大気雰囲気下で120℃に保持した場合の熱重量変化を測定した。
【0089】
(c)ラマン分光法による評価
レーザラマン分光光度計(NRS−3100、日本分光株式会社(JASCO))を使用し、フーリエ変換ラマン分光法(FT−Raman)を用いて、ラマン散乱光スペクトルの測定を行った。CCD検出器温度は−50℃、測定波数400〜4000cm−1、光源露出時間2秒、積算回数16回の条件下で測定を行い、評価を行った。
【0090】
(d)核磁気共鳴法(NMR)による評価
NMR装置(UNITY-400P、 バリアン・テクノロジーズ・ジャパン・リミテッド)を用い、核磁気共鳴法(NMR)による固体NMR測定を行って分子構造を評価した。固体NMR測定は、120℃の真空雰囲気で乾燥したサンプルを窒素雰囲気下で直径7mmのローターに詰め込み、回転数5000RPMの条件下で行った。
【0091】
(実施例1)
硫酸水素セシウム(添川理化学株式会社製)とトリアゾール(1H−1,2,4−トリアゾール、東京化成工業株式会社製)とを、モル比で、90:10、80:20、70:30、60:40、50:50、40:60、30:70、20:80、10:90となるように配合した。それぞれを、遊星型ミリング装置(planetary ball mill (Fritsch Pulverisette 7)、フリッチュ・ジャパン(株)製)に投入し、回転数720RPMで60分間、窒素雰囲気下でミリング処理を行い、混合処理を行った。その後、遊星型ミリング装置から取り出した内容物を、100℃の真空オーブンの中で10時間乾燥させ、各配合比に対応する硫酸水素セシウム−トリアゾール複合体を、白色個体で得た。このようにして得られた複合体を、以下「xCHS(100−x)Tz複合体」と称す。尚、xは硫酸水素セシウムのモル比である。
【0092】
(実施例2)
硫酸水素セシウム(添川理化学株式会社製)とトリアゾール(1H−1,2,4−トリアゾール、東京化成工業株式会社製)とを、モル比で80:20となるように配合した。それぞれを、遊星型ミリング装置(planetary ball mill (Fritsch Pulverisette 7)、フリッチュ・ジャパン(株)製)に投入し、回転数720RPM、窒素雰囲気下でミリング処理を行い、混合処理を行った。混合時間は、10分、30分、60分、120分、240分間とした。その後、遊星型ミリング装置から内容物を取り出し、100℃の真空オーブンの中で10時間乾燥させ、各混合時間に対応する硫酸水素セシウム−トリアゾール複合体を、白色個体で得た。
【0093】
(実施例3)
硫酸水素セシウム(添川理化学株式会社製)とイミダゾール(東京化成工業株式会社製)とを、モル比で、90:10、80:20、70:30、50:50、40:60、30:70、20:80、10:90となるように配合した。それぞれを、遊星型ミリング装置(planetary ball mill (Fritsch Pulverisette 7)、フリッチュ・ジャパン(株)製)に投入し、回転数720RPMで60分間、窒素雰囲気下でミリング処理を行い、混合処理を行った。その後、遊星型ミリング装置から内容物を取り出し、100℃の真空オーブンの中で10時間乾燥させ、各配合比に対応する硫酸水素セシウム−イミダゾール複合体を、白色個体で得た。このようにして得られた複合体を、以下「xCHS(100−x)Iz複合体」と称す。尚、xは硫酸水素セシウムのモル比である。
【0094】
(実施例4)
硫酸水素セシウム(添川理化学株式会社製)とベンジイミダゾール(東京化成工業株式会社製)とを、モル比で、90:10、80:20、70:30、60:40、50:50、40:60、30:70、20:80、10:90となるように配合した。それぞれを、遊星型ミリング装置(planetary ball mill (Fritsch Pulverisette 7)、フリッチュ・ジャパン(株)製)に投入し、回転数720RPMで60分間、窒素雰囲気下でミリング処理を行い、混合処理を行った。その後、遊星型ミリング装置から内容物を取り出し、100℃の真空オーブンの中で10時間乾燥させ、各配合比に対応する硫酸水素セシウム−ベンジイミダゾール複合体を、白色個体で得た。このようにして得られた複合体を、以下「xCHS(100−x)Bz複合体」と称す。尚、xは硫酸水素セシウムのモル比である。
【0095】
(実施例5)
硫酸水素セシウム(添川理化学株式会社製)とテトラゾール(1H−テトラゾール、東京化成工業株式会社製)とを、モル比で、90:10、80:20、70:30、60:40となるように配合した。それぞれを、遊星型ミリング装置(planetary ball mill (Fritsch Pulverisette 7)、フリッチュ・ジャパン(株)製)に投入し、回転数720RPMで60分間、窒素雰囲気下でミリング処理を行い、混合処理を行った。その後、遊星型ミリング装置から内容物を取り出し、100℃の真空オーブンの中で10時間乾燥させ、各配合比に対応する硫酸水素セシウム−テトラゾール複合体を、白色個体で得た。このようにして得られた複合体を、以下「xCHS(100−x)Tez複合体」と称す。尚、xは硫酸水素セシウムのモル比である。
【0096】
(実施例6)
リン酸二水素セシウム(三津和化学株式会社製)とトリアゾール(1H−1,2,4−トリアゾール、東京化成工業株式会社製)とを、モル比で、90:10、80:20、70:30、60:40、50:50となるように配合した。それぞれを、遊星型ミリング装置(planetary ball mill (Fritsch Pulverisette 7)、フリッチュ・ジャパン(株)製)に投入し、回転数720RPMで60分間、窒素雰囲気下でミリング処理を行い、混合処理を行った。その後、遊星型ミリング装置から内容物を取り出し、100℃の真空オーブンの中で10時間乾燥させ、各配合比に対応するリン酸二水素セシウム−トリアゾール複合体を、白色固体で得た。このようにして得られた複合体を、以下「xCDP(100−x)Tz複合体」と称す。尚、xはリン酸二水素セシウムのモル比である。
【0097】
(実施例7)
リン酸二水素セシウム(三津和化学株式会社製)とベンジイミダゾール(東京化成工業株式会社製)とを、モル比で、90:10、80:20、70:30、60:40、50:50となるように配合した。それぞれを、遊星型ミリング装置(planetary ball mill (Fritsch Pulverisette 7)、フリッチュ・ジャパン(株)製)に投入し、回転数720RPMで60分間、窒素雰囲気下でミリング処理を行い、混合処理を行った。その後、遊星型ミリング装置から内容物を取り出し、100℃の真空オーブンの中で10時間乾燥させ、各配合比に対応するリン酸二水素セシウム−ベンジイミダゾール複合体を、白色個体で得た。このようにして得られた複合体を、以下「xCDP(100−x)Bz複合体」と称す。尚、xはリン酸二水素セシウムのモル比である。
【0098】
(比較例1〜6)
下記原料のそれぞれを、メノウ乳鉢にて細粉化して、それぞれ比較例1〜6の試料とした。比較例1には硫酸水素セシウム(添川理化学株式会社製)、比較例2にはトリアゾール(1H−1,2,4−トリアゾール、東京化成工業株式会社製)、比較例3にはイミダゾール(東京化成工業株式会社製)、比較例4にはベンジイミダゾール(東京化成工業株式会社製)、比較例5にはテトラゾール(東京化成工業株式会社製)、比較例6にはリン酸二水素セシウム(三津和化学株式会社製)をそれぞれ用いて試料を調製した。尚、比較例1〜6にて調製された試料は原料そのままであるので、理解を容易とするために、以下においては適宜、原料の物質名を用いて説明を行う。
【0099】
(比較例7、8)
硫酸水素セシウム(添川理化学株式会社製)とトリアゾール(1H−1,2,4−トリアゾール、東京化成工業株式会社製)とを、モル比で、80:20となるように配合して、乳鉢にて均一になるよう混合し、比較例7の混合物aを得た。更に、得られた混合物aを100℃の真空オーブンの中で1時間乾燥させ、比較例8の混合物bを得た。
【0100】
(評価結果)
実施例1および比較例1,2について、ラマン分光法、核磁気共鳴法、イオン導電率、TGAにより評価を行った結果を、
図1Aから
図5に示す。
【0101】
図1A、および
図1Bは、実施例1で作製したxCHS(100−x)Tz複合体および比較例1,2で調製した試料(硫酸水素セシウム、トリアゾール)それぞれのラマンスペクトル分析結果を示している。
図1A、および
図1Bにおいては、横軸は波数を、縦軸はピーク強度を示している。ラマンスペクトルは、800cm
−1〜1200cm
−1の範囲で測定を行った。
図1Aに、1200cm
−1〜1000cm
−1の範囲のスペクトルを示している。
図1Bに、1000cm
−1から800cm
−1の範囲のスペクトルを示している。また、
図1A、および
図1Bにおいては、上側から順に、硫酸水素セシウム、xCHS(100−x)Tz複合体、トリアゾールとなるように、測定されたラマンスペクトルが示されている。また、xCHS(100−x)Tz複合体のラマンスペクトルは、上側からxが90、80、70、・・・、10となる順で示されている。
図1A、および
図1Bの各スペクトルの右方には、それぞれのスペクトルに対応する複合体の符号、称号、物質名、または化学式が示されている。
【0102】
図1A、および
図1Bから解るように、実施例1のxCHS(100−x)Tz複合体には、硫酸水素セシウム、トリアゾールの両者には存在しないピークであって、C−S結合に帰属するピークとN−S結合に帰属するピークとが観察された。C−S結合に帰属するピークの位置は、
図1Aにおいて一点鎖線にて示されている。N−S結合に帰属するピークの位置は、
図1Bにおいて破線にて示されている。即ち、機械的混合処理によって作製された複合体は、単なる混合物ではなく、トリアゾールと硫酸水素セシウムとが複合化されたことによって、両者のいずれとも異なる構造体となったことが示された。
【0103】
図2は、実施例1で作製した、xCHS(100−x)Tz複合体および比較例1,2で調製した試料(硫酸水素セシウム、トリアゾール)の固体NMR分析の結果を示している。
図2においては、横軸は化学シフトを、縦軸はピーク強度を示している。
図2において、上側から順に、硫酸水素セシウム、xCHS(100−x)Tz複合体、トリアゾールとなるようにNMRスペクトルが示されている。また、xCHS(100−x)Tz複合体のNMRスペクトルは、上側からxが90、80、70、60、50となる順で示されている。
図2の各スペクトルの右方には、それぞれのスペクトルに対応する複合体の符号、称号、物質名、又は化学式が示されている。
【0104】
図2から解るように、xCHS(100−x)Tz複合体のNMRスペクトルは、トリアゾール、硫酸水素セシウムとのいずれのスペクトルとも全く異なった。つまり、
図1Aおよび
図1Bのラマンスペクトル分析結果と同様に、xCHS(100−x)Tz複合体は、トリアゾールと硫酸水素セシウムとが複合化されたことによって、両者のいずれとも異なる構造体となったことが示された。言い換えれば、無機固体酸塩に含まれるオキソ酸の酸性塩とアゾール化合物とを機械的混合処理することにより、単なる混合物ではなく両者の複合体が生成されたことが示された。
【0105】
図3は、実施例1のxCHS(100−x)Tz複合体および比較例1,2で調製した試料(硫酸水素セシウム、トリアゾール)のイオン導電率を示している。
図3においては、横軸は温度を、縦軸は導電率を示している。xCHS(100−x)Tz複合体、硫酸水素セシウム、およびトリアゾールのイオン導電率が温度に対してプロットされている。
【0106】
図3において、白丸、黒逆三角、白三角、黒四角、白四角のプロットは、それぞれ、xCHS(100−x)Tzのxが、90、80、70、60、50である複合体のイオン導電率を示している。また、黒丸のプロットは硫酸水素セシウムのイオン導電率を示し、黒菱形で示すプロットはトリアゾールのイオン導電率を示している。
【0107】
図3から解るように、xCHS(100−x)Tz複合体は、120℃を超えると、少なくとも120℃〜160℃の範囲で、いずれも10
−3Scm
−1程度という高いイオン導電率を示した。
【0108】
また、xCHS(100−x)Tz複合体において硫酸水素セシウムのモル比が50以上になると、60℃〜120℃の範囲の比較的低い温度領域においても良好なイオン導電率を示した。70CHS30Tz複合体では、60℃近傍から10
−4Scm
−1以上の高いイオン導電率を示した。特に、80CHS20Tzにおいては、60℃近傍から160℃の広い温度範囲で略10
−3Scm
−1のイオン導電率が実現された。90CHS10Tzでは、60℃〜140℃の範囲においてはイオン導電率が80CHS20Tzよりも低下する傾向が見られたが、140℃以上において、少なくとも140℃〜160℃の範囲で、比較例1の硫酸水素セシウムのイオン導電率10
−3Scm
−1を上回るイオン導電率を示した。尚、図示を省略しているが、xCHS(100−x)Tz複合体において硫酸水素セシウムのモル比が40以下の場合は、特に100℃以下における高いイオン導電率は達成できなかった。
【0109】
一方で、比較例1の硫酸水素セシウムは、140℃近傍で10
−3Scm
−1程度の高い導電率を備えるが、140℃未満では10
−6Scm
−1を下回る低イオン導電率であった。また、比較例2のトリアゾールは、120℃で10
−3Scm
−1程度の高い導電率を備えるが、120℃を下回る温度では低いイオン導電率であった。
【0110】
図4は、実施例1のxCHS(100−x)Tz複合体および比較例1,2で調製した試料(硫酸水素セシウム、トリアゾール)の熱重量変化を示している。
図4においては、横軸は温度、縦軸は重量分率を示している。各複合体の熱重量変化を示す曲線には、それぞれの複合体を示す符号が対応付けられて示されている。また、
図4において、硫酸水素セシウムの熱重量変化を示す曲線には「CsHSO
4」が対応付けて示され、トリアゾールの熱重量変化を示す曲線には「pure1,2,4−Triazole」が対応付けて示されている。尚、
図4には、参考例として、原料トリアゾールのみを実施例1と同じ条件でミリング処理したものの熱重量変化を示す曲線を示しており、「MM1,2,4−Triazole」の表示が対応付けて示されている。
【0111】
図5は、実施例1で作製したxCHS(100−x)Tz複合体および比較例1,2で調製した試料(硫酸水素セシウム、トリアゾール)の120℃環境下での熱重量変化を示している。
図5中には、xCHS(100−x)Tz複合体、硫酸水素セシウム、およびトリアゾールについて、120℃での熱重量変化が示されている。また、xCHS(100−x)Tz複合体の熱重量変化を示す曲線は、上側からxが90,80,70となる順で示されている。
図5中において、各複合体等の熱重量変化を示す曲線には、
図4と同様、それぞれに対応する符号、物質名、化学式が対応付けて示されている。また、
図5の右方には、複合体中に配合されたトリアゾールの重量分率を矢印にて示している。具体的には、90CHS10Tz複合体中のトリアゾール配合量は3wt%であり、80CHS20Tz複合体中のトリアゾール配合量は7wt%であり、70CHS30Tz複合体中のトリアゾール配合量は12wt%である。
【0112】
図4、
図5から解るように、xCHS(100−x)Tz複合体の熱安定性は、トリアゾールに比べて改善し向上した。特に、xCHS(100−x)Tz複合体において硫酸水素セシウムのモル比が50以上になると、
図4に示すように、150℃程度までの熱安定性は大きく向上した。
【0113】
また、
図5に示すように、120℃の条件下で10時間経過した後においても、xCHS(100−x)Tz複合体のトリアゾール成分は、配合量よりも多く残存した。つまり、トリアゾールは、複合体化されることで熱的に安定化されたことが示された。これまで、アゾール化合物をプロトン伝導体として用いることも提案されてはいるが、融点以上で熱安定性が低下するために中温条件下での長時間使用は困難であった。しかし、アゾール化合物を無機固体酸塩と複合化することで、アゾール化合物の熱安定性を向上させることができるので、中温無加湿条件下で実用的に使用し得るプロトン伝導体を実現できることが示された。
【0114】
実施例2および比較例1,2について、イオン導電率により評価を行った結果を
図6に示す。
【0115】
図6は、実施例2において作製した80CHS20Tz複合体および比較例1,2で調製した試料(硫酸水素セシウム、トリアゾール)のイオン導電率を示している。
図6においては、横軸は温度を、縦軸は導電率を示している。実施例2において作製した各複合体、硫酸水素セシウム、およびトリアゾールのイオン導電率が温度に対してプロットされている。
【0116】
図6において、白丸、黒逆三角、白三角、黒四角、白四角のプロットは、それぞれ、混合時間が10分、30分、60分、120分、240分で作製された80CHS20Tz複合体のイオン導電率を示している。また、黒丸で示すプロットは硫酸水素セシウムのイオン導電率を示しており、黒菱形で示すプロットはトリアゾールのイオン導電率を示している。
【0117】
図6からも解るように、トリアゾールと硫酸水素セシウムとをミリング処理することにより得られる80CHS20Tz複合体は、わずか10分の混合時間でも120℃で10
−3Scm
−1のイオン導電率を示すと共に、60℃〜120℃の低温側でもイオン導電率がトリアゾールおよび硫酸水素セシウムに比べて大きく向上した。更に、混合時間を60分とした80CHS20Tz複合体は、60℃〜160℃の広い温度範囲で10
−3Scm
−1という高いイオン導電率を示した。また、混合時間が240分になると、混合時間が120分のものよりも、80CHS20Tz複合体のイオン導電率は低下した。
【0118】
実施例3および比較例1,3について、イオン導電率、およびTGAにより評価を行った結果を、
図7および
図8に示す。
【0119】
図7は、実施例3において作製したxCHS(100−x)Iz複合体、および比較例1,3で調製した試料(硫酸水素セシウム、イミダゾール)のイオン導電率を示している。
図7においては、横軸は温度を、縦軸は導電率を示している。xCHS(100−x)Iz複合体、硫酸水素セシウム、およびイミダゾールのイオン導電率が温度に対してプロットされている。
【0120】
図7において、白丸、黒逆三角、白三角、黒四角のプロットは、それぞれ、xCHS(100−x)Izのxが、90、80、70、50である複合体のイオン導電率を示している。また、黒丸で示すプロットは硫酸水素セシウムのイオン導電率を示しており、白四角で示すプロットはイミダゾールのイオン導電率を示している。
【0121】
図8は、xCHS(100−x)Iz複合体および比較例1,3で調製した試料(硫酸水素セシウム、イミダゾール)の熱重量変化を示している。
図8においては、横軸は温度、縦軸は重量分率を示している。各複合体の熱重量変化を示す曲線には、それぞれの複合体を示す符号が対応付けられて示されている。また、
図8において、硫酸水素セシウムの熱量変化を示す曲線には「CsHSO
4」が対応付けて示され、イミダゾールの熱重量変化を示す曲線には「pureImidazole」が対応付けて示されている。尚、
図8には、参考例として原料イミダゾールのみを実施例3と同じ条件でミリング処理したものの熱重量変化を示す曲線を示しており、「MM Imidazole」の表示が対応付けて示されている。
【0122】
図7からも解るように、xCHS(100−x)Iz複合体は、120℃を越えても、少なくとも160℃まではイオン伝導性を備えることが示された。また、xCHS(100−x)Iz複合体において硫酸水素セシウムのモル比が70以上となると、120℃で10
−3Scm
−1の高いイオン導電率を示した。硫酸水素セシウム、イミダゾールのそれぞれに比して、50℃で10倍から1000倍程度、イオン導電率が上昇した。特に、80CHS20Iz複合体は、50℃でも10
−3Scm
−1近いイオン導電率を示し、50℃〜160℃の広い温度範囲で、略10
−3Scm
−1のイオン導電率を示した。
【0123】
更に、
図8に示されるように、xCHS(100−x)Iz複合体は、イミダゾールに比べて熱安定性が向上し、複合体中の硫酸水素セシウムのモル比が大きくなるほど、熱重量の減少が緩慢になった。特に、xCHS(100−x)Iz複合体において硫酸水素セシウムのモル比が50以上である場合、中温無加湿燃料電池の動作領域である100℃〜200℃の範囲内において、熱安定性が著しく向上することが認められた。
【0124】
一方、イミダゾールは、100℃を越えると熱的に不安定になり、150℃付近から急激に重量減少が生じた。このため
図7に示すように、融点以上である場合、100℃で10
−3Scm
−1以上という良好なイオン導電率を備えるものの、120℃に達する前に、イオン伝導体としての機能を失うことが示された。尚、xCHS(100−x)Iz複合体中においてセシウムのモル比が40以下の場合は、特に100℃以下における高いイオン導電率は達成できなかった。
【0125】
実施例4および比較例1,4について、イオン導電率、およびTGAにより評価を行った結果を
図9および
図10に示す。
【0126】
図9は、実施例4において作製したxCHS(100−x)Bz複合体および比較例1,4で調製した試料(硫酸水素セシウム、ベンジイミダゾール)のイオン導電率を示している。
図9においては、横軸は温度を、縦軸は導電率を示している。xCHS(100−x)Bz複合体、硫酸水素セシウム、およびベンジイミダゾールのイオン導電率が温度に対してプロットされている。
【0127】
図9において、白丸、黒逆三角、白三角、黒四角、白四角のプロットは、それぞれ、xCHS(100−x)Bzのxが、90、80、70、60、50である複合体のイオン導電率を示している。また、
図9において、黒丸で示すプロットは硫酸水素セシウムのイオン導電率を示しており、黒菱形で示すプロットはベンジイミダゾールのイオン導電率を示している。
【0128】
図10は、xCHS(100−x)Bz複合体および比較例1,4で調製した試料(硫酸水素セシウム、ベンジイミダゾール)の熱重量変化を示している。
図10において横軸には温度、縦軸には重量分率を示している。各複合体の熱重量変化を示す曲線には、それぞれの複合体を示す符号が対応付けられている。また、
図10において、硫酸水素セシウムの熱重量変化を示す曲線には「CsHSO
4」が対応付けて示されており、ベンジイミダゾールの熱重量変化を示す曲線には「Benzimidazole」の表示が対応付けて示されている。尚、
図10には、参考例として、原料ベンジイミダゾールのみを実施例4と同じ条件でミリング処理したものの熱重量変化を示す曲線を示しており、「MM−Benzimidazole」の表示が対応付けて示されている。
【0129】
図9からも解るように、xCHS(100−x)Bz複合体は、硫酸水素セシウムのモル比が60以上になると、少なくとも100℃近傍から140℃以下の温度範囲において、硫酸水素セシウム、ベンジイミダゾールに比べて、イオン伝導性が向上した。更に、70CHS30Bz複合体、80CHS20Bz複合体は、60℃〜140℃の温度範囲において、硫酸水素セシウム、ベンジイミダゾールのいずれよりも、イオン導電率が向上し、140℃を超えると、10
−3Scm
−1程度のイオン導電率となった。
【0130】
また、
図10に示すように、xCHS(100−x)Bz複合体は、ベンジイミダゾールに比べて熱安定性が向上した。また、xCHS(100−x)Bz複合体中の硫酸水素セシウムのモル比が50以上となると、その効果は顕著となった。
【0131】
ここで、
図9、
図10に示されるように、ベンジイミダゾールは、150℃を越えると熱的に不安定になった。
図10に示されるように、ベンジイミダゾールは、180℃付近から急激に重量減少が生じた。ベンジイミダゾールは、トリアゾールやイミダゾールに比べて熱安定性は高いものの、
図9に示すように、イオン導電率は、140℃においても10
−6Scm
−1を超えない程度の低いイオン導電率しか示さなかった。尚、xCHS(100−x)Bz複合体中において硫酸水素セシウムのモル比が40以下の場合は、特に100℃以下における高い導電率は達成できなかった。
【0132】
実施例5および比較例1,5について、イオン導電率により評価を行った結果を
図11に示す。
【0133】
図11は、実施例5において作製したxCHS(100−x)Tez複合体および比較例1,5で調製した試料(硫酸水素セシウム、テトラゾール)のイオン導電率を示している。
図11においては、横軸は温度を、縦軸は導電率を示している。xCHS(100−x)Tez複合体、硫酸水素セシウム、およびテトラゾールのイオン導電率が温度に対してプロットされている。
【0134】
図11において、白丸、黒逆三角、白三角、黒四角のプロットは、それぞれ、xCHS(100−x)Tezのxが、90、80、70、60である複合体のイオン導電率を示している。また、
図11において、黒丸のプロットは硫酸水素セシウムのイオン導電率を示しており、黒菱形のプロットはテトラゾールのイオン導電率を示している。
【0135】
図11からも解るように、xCHS(100−x)Tez複合体は、硫酸水素セシウムのモル比が60〜80の範囲では、少なくとも100℃近傍から140℃の温度範囲において、硫酸水素セシウム、ベンジイミダゾールよりも、イオン導電率が向上し、140℃で10
−3Scm
−1を上回る高いイオン導電率を示した。
【0136】
実施例6および比較例2,6について、イオン導電率により評価を行った結果を
図12に示す。
【0137】
図12は、実施例6において作製したxCDP(100−x)Tz複合体および比較例2,6で調製した試料(トリアゾール、リン酸二水素セシウム)のイオン導電率を示している。
図12においては、横軸は温度を、縦軸は導電率を示しており、xCDP(100−x)Tz複合体、リン酸二水素セシウム、およびトリアゾールのイオン導電率が温度に対してプロットされている。
【0138】
図12において、白丸、黒逆三角、白三角、黒四角、白四角のプロットは、それぞれ、xCDP(100−x)Tzのxが、90、80、70、60、50である複合体のイオン導電率を示している。また、
図12において、黒丸のプロットはリン酸二水素セシウムのイオン導電率を示しており、黒菱形のプロットはトリアゾールのイオン導電率を示している。
【0139】
図12からも解るように、xCDP(100−x)Tz複合体は、120℃を越え180℃に至っても良好なイオン伝導性を有しており、イオン導電率は、リン酸二水素セシウムよりも大きく向上した。特に、50CDP50Tz複合体および60CDP40Tz複合体は、140℃で10
−3Scm
−1に達する高いプロトン伝導性を示した。
【0140】
実施例7および比較例4,6について、イオン導電率により評価を行った結果を
図13に示す。
【0141】
図13は、実施例7において作製したxCDP(100−x)Bz複合体および比較例4,6で調製した試料(ベンジイミダゾール、リン酸二水素セシウム)のイオン導電率を示している。
図13においては、横軸は温度を、縦軸は導電率を示している。xCDP(100−x)Bz複合体、リン酸二水素セシウム、およびベンジイミダゾールのイオン導電率が温度に対してプロットされている。
【0142】
図13において、白丸、黒逆三角、白三角、黒四角、白四角のプロットは、それぞれ、xCDP(100−x)Bzのxが、90、80、70、60、50である複合体のイオン導電率を示している。また、
図13において、黒丸のプロットはリン酸二水素セシウムのイオン導電率を示しており、黒菱形のプロットはベンジイミダゾールのイオン導電率を示している。
【0143】
図13からも解るように、xCDP(100−x)Bz複合体のイオン導電率は、リン酸二水素セシウム、ベンジイミダゾールのいずれよりも高くなった。具体的には、ベンジイミダゾールでは、180℃で10
−6Scm
−1程度の低いイオン導電率であり、リン酸二水素セシウムも180℃で10
−5Scm
−1程度の低いイオン導電率であった。しかし、xCDP(100−x)Bz複合体においてリン酸二水素セシウムのモル比が50以上となると、60℃から180℃の範囲で、リン酸二水素セシウム、ベンジイミダゾールのいずれよりも高いイオン導電率が得られ、50CDP50Bz複合体、60CDP40Bz複合体、70CDP30Bz複合体は、180℃で10
−4Scm
−1を越えるプロトン伝導性を示した。
【0144】
比較例7,8について、イオン導電率により評価を行った結果を
図14に示す。
【0145】
図14は、比較例7において作製した混合物a、比較例8において作製した混合物b、実施例1の80CHS20Tz複合体、比較例1の硫酸水素セシウム、比較例2のトリアゾールそれぞれのイオン導電率を示している。
図14は、横軸に温度を、縦軸に導電率を示している。実施例1の80CHS20Tz複合体、混合物a、混合物b、硫酸水素セシウム、トリアゾールのイオン導電率が、温度に対してプロットされている。
【0146】
図14において、白丸、黒逆三角、白三角のプロットは、それぞれ、混合物a、混合物b、80CHS20Tz複合体のイオン導電率を示している。また、
図14において、黒丸のプロットは硫酸水素セシウムのイオン導電率であり、黒菱形のプロットはトリアゾールのイオン導電率である。
【0147】
図14からも解るように、混合物a、混合物bは、80CHS20Tz複合体に比べ、いずれも低いイオン導電率であった。従って、単純に無機固体酸塩とアゾール化合物とを混合しただけでは、両者の複合体を形成させるには不十分あるいは不能であることが示された。また、両者が複合体を形成することにより、中温領域で高いプロトン伝導性と、100℃以下の低温側のプロトン伝導性の向上とを実現できることが示された。
【0148】
以上の結果から、オキソ酸化合物の酸性塩とアゾール化合物とを複合化した複合体により、中温無加湿の条件下で10
−3Scm
−1という高いイオン導電率を実現できることが示された。その上、100℃以下の低温から高いイオン導電率を発現させることができることが示された。つまり、中温無加湿の条件下で良好なプロトン伝導性を有すると共に、低温から動作させることのできるプロトン伝導体を実現できることが示された。その上、プロトン伝導体中を移動する対イオンを低減できるので、プロトン輸率を上昇させて発電効率を向上できることが示された。