(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記平面から受光強度と、前記凹部の底部からの受光強度とが、反射率の入射角依存性を示す近似式関数又は参照テーブルを用いて算出されている請求項2に記載の膜厚測定装置。
前記平面から受光強度と、前記凹部の底部からの受光強度とが、反射率の入射角依存性を示す近似式関数又は参照テーブルを用いて算出されている請求項7に記載の膜厚測定方法。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。本実施の形態では、測定の基本的な原理として、反射分光式の膜厚測定法を利用する。本実施の形態に係る測定装置は、光源、光学系、検出器等を有しており、光学的に膜厚を測定する。例えば、測定装置の光学系は、特許文献1と同様の構成を有している。
【0027】
[絶対反射率の理論計算]
まず、試料の構造について、
図1、及び
図2を用いて説明する。
図1は、トレンチを有する試料の構造を示す断面図である。
図2は、トレンチ部分を拡大して示す断面図である。
図1に示すように、試料30は、Si基板31と、SiO
2膜32とを備えている。
【0028】
Si基板31は、例えば、シリコン等の半導体基板である。Si基板31には、複数のトレンチ34が形成されている。例えば、Si基板31であるシリコンウェハをエッチングすることで、トレンチ34が形成される。トレンチ34は、Si基板31の表面に対して垂直に形成されている。そして、トレンチ34の底部には、透明なSiO
2膜32が形成されている。
【0029】
ここで、トレンチ34の幅(開口幅)をW、深さをdとする。さらに、SiO
2膜32の膜厚をtとする。したがって、トレンチ34の底部の構造は、上から順に空気(Air)/SiO
2/Siとなる。
【0030】
ここで、空気/SiO
2/Si構造の光学モデルを
図3に示す。空気/SiO
2/Siの複素屈折率をそれぞれ、N
0、N
1,N
2とする。同様に、空気/SiO
2/Siの屈折率をn
0、n
1、n
2とし、消衰係数をk
0、k
1、k
2とする。なお、上記の複素屈折率、屈折率、消衰係数は、照明光の波長λに対する値である。なお、空気では、n
0=1、k
0=0となる。複素屈折率N
0、N
1,N
2は、それぞれ以下の式(1)〜式(3)で表される。
【0032】
次に、Si基板31上のSiO
2膜32による薄膜干渉強度について考える。波長λの光がSiO
2膜32に対して垂直に入射するものとして説明する。なお、
図3では、対物レンズのNA(開口数)を考慮して、照明光が斜めに入射する様子を示している。また、
図3では、空気とSiO
2との界面を界面Aとし、SiO
2膜32とSi基板31との界面を界面Bとしている。
【0033】
試料30に入射した光の一部は、界面Aで反射する。また、試料30に入射した光の一部は、SiO
2膜32を透過して、界面Bで反射する。界面Bで反射した反射光の一部は、SiO
2膜32を透過して、界面Aを透過する。また、界面Bで反射した反射光の一部は、界面Bで反射され、再度、界面AでSi基板31側に反射する。一般に、薄膜では、
図3の点線に示すような多重反射が起きる。
【0034】
ここで、界面Aの振幅反射率r
0と界面Bの振幅反射率r
1をそれぞれ式(4)、(5)で示す(垂直入射とみなす)。
【数4】
【数5】
【0035】
このとき、厚さtのSiO
2膜32を1回透過する光の位相変化δと振幅変化γは、それぞれ、式(6)、(7)のようになる。
【数6】
【数7】
【0036】
多重反射を考慮した膜構造全体の振幅反射率rは、式(8)となる。
【数8】
【0037】
反射率Rは振幅反射率rの絶対値の自乗となるので、式(9)となる。
【数9】
【0038】
従って、複素屈折率N
1,N
2が既知であれば、垂直入射の反射率Rは波長λと膜厚tから計算することができる。ここで、対物レンズのNAによる斜入射効果の補正を考える。
図4に示すように、光軸に対して、角度θ
0で入射する入射光について説明する。入射光の一部は、界面Aで反射する(反射光E
0)。また、入射光の一部は、式(10)で示されるスネルの法則に従って、界面Aで角度θ
1だけ屈折する。
【数10】
【0039】
さらに、界面Aで角度θ1だけ屈折した入射光は、界面Bで反射して、再び界面Aで屈折する(反射光E
1)。したがって、界面Aで反射した反射光E
0と、界面Bで反射した反射光E
1との間で、多重反射による干渉が起こる。
【0040】
垂直入射の場合と異なり、反射光E
0と反射光E
1との光路差が式(11)のようになる。
【数11】
【0041】
入射光の入射角θ0が大きくなるに従い、見かけ上の膜厚tは小さくなる。照明光には、対物レンズのNAによる角度θ
NA〜0度までの様々な入射角の光が含まれている。このため、厳密には、反射光の干渉を全ての角度で計算する必要がある。しかしながら、振幅反射率rと光路差の角度依存性を全て扱うとすると、計算負荷が大きくなってしまう。そこで、垂直入射の振幅反射率rと平均光路差を使って近似を行う。
【0042】
入射光は無偏光なので、反射率Rの角度依存よりも光路差の角度依存が支配的と考える。すると、NAと屈折角の関係は式(12)のようになる。
【数12】
【0043】
したがって、式(11)の位相変化δについて、0〜+θ
maxの範囲における角度分布の平均を求めることで、平均光路差を算出することができる。平均光路差δは、以下の式(13)によって算出することができる。
【数13】
【0044】
よって、光路差δを式(6)から式(13)に置き換えて、式(9)の反射率Rを計算すれば、任意のNAに対する反射率Rを簡便に算出することができる。NA=0.3の場合について、可視光領域(400〜700nm)における反射率Rの膜厚依存性を計算した例を
図5に示す。
図5では、横軸が照明光の波長λを示し、縦軸が反射率Rを示している。さらに、
図5では、SiO
2膜32の膜厚tを0nm、100nm、300nm、500nm、1000nmと変化させた場合のそれぞれの反射率Rの波長依存性について図示している。
【0045】
[平面の膜厚解析のNA依存の検証]
まず、トレンチ34ではない平面の膜厚解析のNA依存性について説明する。ここでは、照明光の波長λとして、436nm、486nm、514nm、546nm、578nm、633nmを選択した場合について説明する。もちろん、選択する波長λについては、上記の値に限られるものではない。
【0046】
反射率Rは、キャプチャーした画像の輝度値Isampleか
ら求めることができる。そして、各波長の反射率Rの測定値から、膜厚tを求める。具体的には、式(9)の反射率Rに各波長λでの測定値を用いて、膜厚tをパラメータとする最小二乗法でフィッティングさせることで、膜厚tを求めることができる。
【0047】
試料30の反射率Rを測定する場合、反射率が既知である基準試料の反射率を測定することができる。基準試料を用いることで、測定に使用している光学系の特性や光源の特性を補正することができる。例えば、Siや、石英ガラスを基準試料とすることができる。Siを基準試料とする場合、測定装置で、各波長でのSiの反射画像を撮像する。ここで、カラーバランス、ゲインコントロールなどの撮像条件は一定とする。このSiの輝度値I
Siに対する相対値として、試料30の反射率Rを計算する。さらに、Siの反射率の波長依存データR
Si(λ)は既知となっている。そして、反射率を波長依存データR
Si(λ)で補正する。したがって、試料30の反射率R
sample(λ)は式(14)で求めることができる。なお、I
0は、照明光のシャッタを閉じた場合に受光される暗輝度値である。
【0049】
ここで、本実施の形態にかかる膜厚測定装置について、
図6を用いて説明する。測定装置100は、共焦点光学系101を有する共焦点顕微鏡である。測定装置100は、波長選択が可能な光源部10を備えている。光源部10は、光源11と干渉フィルター12とを備えている。光源11としては、水銀キセノンランプのような連続スペクトルに複数の輝線を含む白色光源が用いられる。なお、例えば、紫外から赤外域(185nm〜2000nm)に幅広い連続スペクトルを有するキセノンランプを用いてもよい。もちろん、光源11としては、キセノンランプに限らず、白色ダイオード、白色レーザ等を用いてもよい。後述するように、波長が選択できればどのような光源を用いてもよい。
【0050】
光源11からの光によって、試料30を観察するための光学系について説明する。光源11から出射した光は、干渉フィルター12を通過し、特定の波長の光に変換される。干渉フィルター12としては、例えば、特定波長の光を選択的に透過させる複数のバンドパスフィルタを用いることができる。これにより、複数の単一波長の照明光を選択的に透過させる。例えば、照明光の波長として、436nm、488nm、515nm、546nm、578nm、633nmを選択することができる。水銀キセノンランプを用いる場合、輝線に対応する波長の光を選択することが可能である。また、輝線に対応する波長以外の波長の光をフィルターで選択することも可能である。輝線の波長以外の光は強度が小さいため、干渉フィルターの半値幅を広くすることによりバランスを取ることができる。なお、波長の切替は連続的でもよいし、断続的でもよく、例えば、400nm〜650nmの間で5〜7波長を選択してもよい。
【0051】
なお、光源11として単波長のレーザ光を出射するレーザ光源を用い、波長変換素子を設けてもよい。例えば、第二高調波発生により、波長変換素子に入射する単波長の光の波長変換を行うことができる。また、光源11として、可変波長レーザを用いることも可能である。さらに、異なる波長のレーザ光を出射する複数のレーザ光源を設けて、複数のレーザ光源のうちの所望の波長の光を選択するようにしてもよい。
【0052】
そして、干渉フィルター12を透過した単一波長の照明光はレンズ13aを透過して、スリット14に入射する。照明光は、スリット14を通してX方向のライン状に整形される。そして、ライン状の照明光は、ビームスプリッタ15に入射する。ビームスプリッタ15は、偏光状態によらずに、反射光と透過光の光量が略1:1になるように、光を分岐する。従って、照明光の略半分がビームスプリッタ15を透過する。
【0053】
その後、
図1中右方向に進む光は、振動ミラー16に入射する。振動ミラー16により、X方向のライン状の照明光で試料30上をY方向に走査する。これにより、試料30面上をXYに走査することができる。振動ミラー16としては、例えばガルバノミラー、ポリゴンミラー等を用いることができる。
【0054】
振動ミラー16により、下方に反射された照明光は、レンズ13bを介して、対物レンズ17に入射する。対物レンズ17は、照明光を集光して、試料30に照射する。試料30は、ステージ18上に載置されている。そして、試料30からの反射光は、再度、対物レンズ17、及びレンズ13bを通過し、振動ミラー16により再び反射され、ビームスプリッタ15へ入射する。その後、入射した光の略半分がビームスプリッタ15で反射され、レンズ13cに入射する。レンズ13cは、光検出器19の受光面に合成光を結像させる。レンズ13cを透過した光は、光検出器19で受光される。
【0055】
本実施の形態では、光検出器19は、試料30のコンフォーカル画像を撮像するCCDラインセンサである。光源11からスリット14を透過した照明光が、試料30で反射して、CCDラインセンサにより検出される。振動ミラー16により、試料30上を走査することにより、スリットコンフォーカル画像が撮像される。なお、共焦点光学系101の方式が用いられていれば、走査方法等は異なってもよく、スリットや光検出器は方式に適応したものを適宜用いることができる。例えば、X方向とY方向にスキャンするための振動ミラーを用いてもよく、X方向に音響光学素子であるAODを用いることも可能である。
【0056】
ステージ18は、図示しないZ軸駆動モータを有しており、試料30を
図1の上下方向に移動させることができる。このステージ18は、Z軸方向(光軸方向)に移動することにより、試料面が焦点位置にくるように制御される。なお、ステージ18がZ方向に移動するかわりに、対物レンズ17を移動させて焦点位置調整を行うこともできる。すなわち、試料30と対物レンズ17との距離が変わるように、Zスキャンする。もちろん、基準試料の測定を行う場合、試料30の代わりにSi等の基準試料がステージ18に載置される。
【0057】
共焦点光学系101において、観察波長を変えると合焦点位置が変化することが考えられ、これによる輝度の変化が予想される。これは、各波長の合焦点位置のズレ分を予め測定してPCに記憶しておき、波長切り替えの際に、ズレ分だけ自動的に試料30あるいは対物レンズ17のZ位置を微調整することでキャンセルすることができる。あるいは、それぞれの波長において、全焦点画像をZスキャンにより作製してもよい。なお、観察光学系自身の波長依存性は、シリコンや石英ガラスなどの、反射スペクトルが既知のサンプルを予め測定しておくことで、計算により補正できる。
【0058】
処理装置20は、反射率測定部21と、膜厚計算部22とを備えている。反射率測定部21は複数の異なる波長の照明光を照射したときのそれぞれの光検出器19で得られた画像から反射率を測定する。
膜厚計算部22は、反射率の測定データを用いて、トレンチ34の底部に形成されたSiO
2膜32の膜厚を算出する。すなわち、処理装置20は、SiO
2膜32の膜厚を算出するために、ある波長の照明光による画像と、それと異なる波長の照明光による画像とに基づいて、それぞれの波長に対する反射率の測定データを求める。そして、処理装置20は、波長と反射率との関係がSiO
2膜32の膜厚毎にそれぞれ示されている計算データを参照して、測定データからSiO
2膜32の膜厚を近似して算出する。この膜厚の測定方法については、後に詳述する。
【0059】
本発明では、共焦点光学系101を用いて、照明波長を切り替えながら、反射率を測定する。これにより、トレンチ34のエッジからの散乱光やSi基板31上面からの反射光を除去し、トレンチ34の底部に設けられたSiO
2膜32の膜厚tを測定することができる。このように、SiO
2膜32の膜厚を非接触・非破壊で短時間に測定することができる。なお、高アスペクト比のトレンチ34底の膜厚測定が可能となる。波長による反射強度の相対変化による計測であるため、反射光焦点位置の検出による膜厚測定では問題となっていた擬似焦点にも影響されない。また、光学顕微鏡の焦点深度より大きな段差のある表面の膜厚測定にも対応できる。SiO
2膜32がないトレンチ34の底部の絶対反射率を測定することで、反射率の減衰からトレンチ底部の表面粗さを判定することも可能である。
【0060】
光検出器19等のゲイン調整を固定した状態で、基準試料であるSiと試料とについて、同一視野の画像を取得する。ここでは、測定装置100が、上記のように波長を変えて画像を撮像する。すなわち、436nm、486nm、514nm、546nm、578nm、633nmのそれぞれの照明波長について、基準試料と試料の画像を取得する。そして、画像上で指定したエリアに関する輝度値の平均値をI
Si、I
sampleとする。そして、平均の輝度値I
Si、I
sampleを式(14)に代入することで、試料30の絶対反射率R
sampleを求める。絶対反射率R
sampleは、照明波長毎に求める。
【0061】
なお、NA補正の計算方法の検証として、トレンチではなく、通常のシリコンウェハ上のSiO
2膜32を用いて、測定を行う。すなわち、平坦な表面全体にSiO
2膜32が形成された基板31を用いる。なお、分光エリプソメータで測定したSiO
2膜32の膜厚は、約505nmである。光学モデルは、
図3と同様になる。また、対物レンズ17のNAは0.3としている。
【0062】
式(14)から求めた反射率を測定反射率Rmとする。また、式(9)から求めた反射率を計算反射率Rcとする。
図7に測定反射率Rmと計算反射率Rcをプロットしたグラフを示す。
図7において、横軸が照明光の波長λ、縦軸が反射率Rとなっている。また、
図7では、測定反射率Rmを黒塗りの四角でプロットしている。さらに、
図7では、膜厚tが490nm、504nm、515nmの場合の計算反射率Rcをそれぞれ点線、実線、一点鎖線で示している。
【0063】
測定反射率Rmと計算反射率Rcの残差Σを式(15)のように定義する。
【数15】
【0064】
膜厚tに応じて計算した残差Σを
図8に示す。
図8において、横軸が膜厚、縦軸が残差Σである。
図8に示すグラフからt=504nmで残差Σが最小となるため、膜厚tを504nmと決定することができる。このように、残差Σが最小となる膜厚をSiO
2膜32の膜厚(解析膜厚)と推定することができる。6波長で照明した場合、誤差±2nm程度で膜厚測定できると推定される。このように、式(13)を用いて、対物レンズ17のNAによる照明光の角度分布を補正することで、正確に膜厚を測定することができる。
【0065】
NAの異なる対物レンズ17を使った場合の膜厚解析結果を
図9に示す。
図9のグラフでは横軸が対物レンズ17のNA、縦軸が解析膜厚を示している。また、
図9のグラフでは、NA補正前のデータを白抜きでプロットし、NA補正後のデータを黒塗りでプロットしている。レンズの倍率に関わらず、補正前の解析膜厚は、NAが大きくなるにつれて減少している。すなわち、NAが大きくになるにつれて、照明光の角度分布の影響が大きくなるため、実際の膜厚(505nm)から解析膜厚が小さくなってしまう。それに対して、NA補正後の解析膜厚は、約505nm付近で一定となっている。よって、NA補正は有効に作用することを確認することができる。
【0066】
なお、上記と同様の方法で、画像の各画素に対して膜厚を求めることができるので、膜厚分布を表示することも可能である。
【0067】
[トレンチ形状の絶対反射率の測定]
次に、トレンチ34の底部に設けられたSiO
2膜32の絶対反射率の測定について説明する。トレンチ底のSiO
2膜32の絶対反射率を測定する場合、トレンチ34のアスペクト比によって入射光量が制限される。したがって、平面試料の場合の式(14)では、反射画像の輝度値を反射率に換算することができない。
【0068】
図10を用いて、トレンチ構造による反射光の制限について説明する。
図10は、試料に入射する入射光と、試料で反射する反射光を簡略化して示す図である。
図10では、左側に平面構造での反射を示し、右側にトレンチ構造での反射を示している。平面構造の場合、入射光の全てが反射光として、光検出器19に受光される。
【0069】
一方、トレンチ構造の場合、入射光の一部だけが反射光として、光検出器19に受光されることになる。すなわち、入射光がトレンチの底部まで到達しなくなるため、光検出器19での輝度値が低下する。したがって、トレンチ構造の表面が平面構造と同じ反射率を有していたとしても、反射強度(輝度値)は小さくなる。従って、式(14)をそのまま使用すると、絶対反射率が小さくなってしまう。すなわち、実際の反射率よりも低く見積もってしまう。
【0070】
そこで、トレンチ構造での反射強度を絶対反射率に換算する係数を導入する。この係数をトレンチ係数Trとする。トレンチ係数Trは、トレンチの形状に応じた値を取る補正係数となる。例えば、トレンチ係数Trは、主にトレンチ34のアスペクト比βと、対物レンズ17のNAに依存する。トレンチ係数Tr、及びアスペクト比βはそれぞれ、以下の式(16)、式(17)で表すことができる。
【0072】
図11(a)に示すように、フラットな基準試料40の絶対反射率をR
refとし、反射強度をI
refとする。
図11(b)に示すように、SiO
2膜32がないトレンチ34の底部の絶対反射率をR
Tr_0とし、反射強度をI
Tr_0とする。
図11(c)に示すように、SiO
2膜32が設けられたトレンチ34の絶対反射率をR
Tr_tとし、反射強度をI
Tr_tとする。
【0073】
底部にSiO
2膜32がないトレンチ34の絶対反射率R
Tr_0と、SiO
2膜32があるトレンチ34の絶対反射率R
Tr_tは、それぞれ、式(18)、式(19)のように書けるとする。
【数18】
【数19】
【0074】
膜無のトレンチ34の反射強度を実測することができれば、絶対反射率の理論値を使い、トレンチ係数Trを式(18)から逆算することができる。しかしながら、膜無のトレンチ34が常に用意されているわけではない。
【0075】
式(18)は、トレンチ34の底部がSiの場合の反射でもある。よって、式(20)のように、トレンチ34の反射強度と平面の反射強度の比をモデルから計算することで、トレンチ係数Trを求めることができる。
【数20】
【0076】
[トレンチ係数の計算]
図10では、トレンチ34の断面の入射と反射の関係を示していたが、入射と反射の関係を定量的に計算するには、3次元的に取り扱う必要がある。そこで、入射と反射の座標系を
図12に示すような球座標として、原点に関する反射を考える。
【0077】
入射光は一様な角度分布を持っているとし、微小立体角dΩに関する反射強度を立体角範囲内で積分する。すなわち、以下の式(21)を用いて、受光強度(受光量)P
totを求めることができる。
【数21】
【0078】
(平面の場合)
試料30が平面の場合の反射、すなわち、基準試料40での反射について、
図13を用いて説明する。
図13は、平面試料(基準試料40)の場合を説明するためのXY平面図、XZ断面図、YZ断面図を示している。なお、Z方向は光軸方向であり、X方向、及びY方向は、Z方向に垂直な方向である。
図13に示すように、半径Lで高さdの円錐の範囲で角度分布を計算する。ここで、式(22)に示すように、対物レンズ17のNAが与える最大入射角をθmとする。
【数22】
【0079】
すると、±θmの範囲で反射を受光することができる。このとき、Φは、0〜2πの範囲になる。受光強度P
Flattotは、式(23)で表すことができる。
【数23】
【0080】
(トレンチの場合)
幅Wで深さdのトレンチ34の場合について,
図14を参照して説明する。
図14は、トレンチ場合を説明するための、XY平面図、XZ断面図、YZ断面図を示している。また、
図14では、Y方向をトレンチの長手方向とする。そして、Y方向におけるトレンチ34の大きさは、円錐の半径Lに比べて十分に長いものとなっているとする。X方向におけるトレンチの大きさが幅Wとなる。
【0081】
半径Lで高さdの円錐の分布のうち、トレンチ34の底部で反射できる角度範囲を考える。
図14のXY平面図のように、入射角θmは、方位角Φに依存して変化する。0<Φ<90°の範囲に着目すると、円錐とトレンチ34のエッジが接する限界がΦcとなる。したがって、0<Φ<Φc°までは、入射角はトレンチ開口に制約されるため、θmは式(24)のようになる。一方、Φc<Φ<90°では入射角の開口の制約を受けないので、θmは式(25)のようになる。但し、Φcは、円錐とトレンチ34の大きさによって、以下の式(26a)、(26b)のように示される。
【数24】
【数25】
【数26】
【0082】
トレンチ34での受光強度P
Trtotは、式(27)で表すことができる。
【数27】
【0083】
(VIAの場合)
次に、試料30に形成されている凹部がトレンチ34ではなく、円形のVIA35の場合について、
図15を用いて説明する。入射角は、VIA35の開口によって決まる。ここで、VIA35の開口は、半径Wの円形であり、深さdとなっているとする。入射角θmを式(28)のように定義すると、VIA35での受光強度P
VIAtotは、式(29)で表すことができる。
【数28】
【数29】
【0084】
[反射率の角度依存性R(θ)の見積もり]
トレンチ34の底部のSiの反射率の入射角依存性について説明する。反射率Rの入射角依存性は、斜入射の場合の振幅反射率rの公式から計算することができる。斜入射の場合、
図16に示すように、紙面と平行な振動方向のs偏光と、垂直な振動方向のp偏光に分けて計算される。無偏光の反射率として、s偏光とp偏光の反射率の平均を求める。すなわち、s偏光の反射率をRs、p偏光の反射率をRpとすると、無偏光の場合の反射率Rav=(Rs+Rp)/2となる。
【0085】
一例として、波長546nmの場合における、Siの反射率の入射角依存性を計算した結果を
図17に示す。
図17において、横軸は、入射角、縦軸は反射率を示している。また、
図17では、Rs,Rp,Ravをそれぞれ示している。RsとRpとの平均値である反射率Ravは、緩やかに変化している。
【0086】
反射率の平均値Ravを波長毎に計算した結果を
図18に示す。
図18では、波長436nm、546nm、633nmについて計算した反射率Ravを示している。
図18では、横軸が入射角、縦軸が反射率Ravを示している。このように、波長に応じて反射率Ravが変化する。よって、測定波長に対して、それぞれ反射率Rの入射角依存性を計算したデータを参照テーブルとして使用する。すなわち、436nm、486nm、514nm、546nm、578nm、633nmの各々について、入射角と反射率Ravの関係を示す参照テーブルを用意する。
【0087】
このように、
図18の反射率Ravの入射角依存性は、解析的に扱うのが困難である。このため、式(30)を数値計算して、参照テーブルを作成することができる。あるいは、反射率Ravの入射角依存性を多項式近似関数で表してもよい。
【数30】
【0088】
[トレンチ係数の計算]
式(30)の数値計算結果を使って、式(23)のP
Flattot、及び式(27)のP
Trtotをそれぞれ計算する。そして、式(31)のように、受光強度の比P
Trtot/P
Flattotを求める。受光強度の比P
Trtot/P
Flattotがトレンチ係数Trとなる。
【数31】
【0089】
式(31)において、角度刻みを1°に設定した数値計算を行った計算例を
図19の表に示す。ここでは、トレンチ34の幅Wを5μm、対物レンズ17のNAを0.8としている。さらに、深さdを1μm、2μm、5μm、10μm、25μm、50μm、75μm、100μmと変えたときのトレンチ係数Trを示している。トレンチ係数Trは照明波長毎に計算している。
【0090】
対物レンズ17のNAを0.8とすると、アスペクト比が1以上のトレンチ34では、トレンチ係数Trが無視できなくなる。すなわち、Siの反射では、アスペクト比が1以上となると、トレンチ係数Trが1よりもかなり大きくなる。従って、平面反射での受光強度P
Flattotに比べて、トレンチ構造での受光強度P
Trtotが大きく低下してしまう。よって、トレンチ係数Trでの補正が必要となることが分かる。
【0091】
式(31)の計算結果をより詳細に確認するために、アスペクト比とトレンチ係数Trの関係を
図20に示す。
図20では、横軸がトレンチ34のアスペクト比、縦軸がトレンチ係数Trとなっている。ここでは、NA=0.8で計算している。なお、照明波長436nm、486nm、514nm、546nm、578nm、633nmのそれぞれについて、アスペクト比とトレンチ係数を計算している。だだし、照明波長による差が小さいため、
図20ではグラフが重なっている。
【0092】
Siの場合、波長による差は小さいが、いずれの照明波長でもアスペクト比1程度から、トレンチ係数Trが急激に大きくなり、無視できなくなる。トレンチ係数Trが1よりも大きいということは、光検出器19で検出した反射強度をそのまま絶対反射率に換算しても、見かけ上小さくなることを意味する。したがって、トレンチ係数Trでの補正が必要となる。
【0093】
次に、照明波長546nmの場合について、対物レンズ17のNAを変えた場合のトレンチ係数Trの変化を
図21に示す。
図21では横軸がトレンチ34のアスペクト比、縦軸がトレンチ係数Trとなっている。また、
図21では、NAが0.13、0.3、0.46、0.55、0.8、0.95の場合に計算結果を示している。このように、対物レンズ17のNAが大きくなるほど、トレンチ係数Trが大きくなる。さらに、NAが大きくなるほど、アスペクト比が小さい場合でも、トレンチ係数Trによる補正が無視できなくなることが分かる。
【0094】
アスペクト比5のトレンチ34の底部に厚さ500nmのSiO
2膜32を設けた場合の膜厚の解析例について、説明する。まず、測定装置100で取得した画像の指定エリアの輝度値から、式(14)を用いて算出した絶対反射率の膜厚測定結果を
図22、
図23に示す。
図22、
図23は、トレンチ係数Trでの補正を行わずに、平面反射として反射率Rを換算した場合の解析結果を示す図である。なお、ここでは、対物レンズ17のNA=0.3での計算結果である。
【0095】
図22において、横軸が照明波長、縦軸が反射率を示している。
図22では、測定値を黒塗りの四角でプロットしており、計算値を実線で示している。
図23において、横軸が膜厚t、縦軸が残差Σを示している。
図23に示すように、残差Σが最小となるときの膜厚tは、87nmとなる。
図22は、膜厚t=87nmの時の計算値が示されている。
【0096】
次に、同じ条件(アスペクト比5、SiO
2膜32の膜厚500nm、NA=0.3)について、トレンチ係数Trでの補正を行った場合の膜厚解析結果を
図24、
図25に示す。
図24では、測定値をトレンチ係数Tr(=2.53)で補正したグラフを示している。すなわち、
図24では、トレンチ係数Trで補正された測定値を示すグラフである。なお、光検出器19で検出された実際の受光強度にトレンチ係数Trを乗じることで、トレンチ係数Trで補正された測定値を求めることができる。このようにトレンチ係数Trを導入することで、トレンチ34によって光検出器19が受光できなくなる受光強度を補正することができる。よって、光検出器19の輝度値から反射率Rを正確に推定することができる。
【0097】
図25に示すように、残差Σが最小となる膜厚は502nmとなる。実際のSiO
2膜32の膜厚は500nmであるので、膜厚の測定誤差は2nm程度となる。さらに、残差Σの最小値がほぼ0となり、フィッティングの誤差を抑制することができる。このように、アスペクト比が大きいトレンチ34であっても、底部のSiO
2膜32の膜厚を精度よく測定することができる。
【0098】
このように、トレンチ係数Trを用いた補正によって、フィッティングの当てはまりが桁違いに良くなる。すなわち、トレンチ係数Trを用いることで、残差Σが小さくなる。よって、想定される膜厚を解析結果として正確に算出することができる。なお、上記では、トレンチ34の底部のSiO
2膜32の膜厚を測定したが、
図15に示すようにVIA35の底部のSiO
2膜32の膜厚を測定することも可能である。この場合、上記したトレンチ係数Trではなく、VIA形状に応じた係数を用いる。この場合、式(31)のP
Trtotの代わりに、式(28)のP
VIAtotを用いて、係数を算出する。このように、トレンチ34やVIA35等の凹部に応じた補正係数を用いて補正することで、正確に膜厚を測定することができる。補正係数はトレンチ34やVIA35などの凹部の形状に基づいて設定することができる。
さらには、複数のピラーが設けられた試料上において、ピラー間の隙間についても、補正係数を設定することができる。すなわち、ピラーを凸部とし、ピラー間の隙間を凹部とする。このように、ピラーで囲まれた領域を凹部として、ピラーの高さや間隔や形状に応じた幾何学的な配置を用いて、補正係数を設定することができる。これにより、ピラーで囲まれた領域に設けられた薄膜の膜厚を測定することができる。
【0099】
図26に、トレンチ係数Trによる補正を行う場合の、膜厚解析の計算モデルを概念的に示す。トレンチ係数Trによる補正を行う場合、絶対反射率の測定値、及び絶対反射率の理論値を用いる。
【0100】
絶対反射率の測定値は、基準試料の反射強度I
Si、トレンチ底部(酸化膜)の反射強度I
sample、及びバックグラウンドの反射強度I
0から求めることができる。すなわち、式(14)のように、基準試料40での輝度値I
Si、トレンチ底部での輝度値I
Sample、バックグラウンドでの輝度値I
0に基づいて、反射率測定部21が絶対反射率R
Sampleを算出する。さらに、反射率測定部21は、基準試料40の反射率の波長依存性R
Si(λ)を参照して、絶対反射率R
Sampleを算出する。なお、基準試料40は、絶対反射率の波長依存性が既知のものを用いる。これらの照明波長を変えて輝度値を測定することで、照明波長毎に絶対反射率R
Sampleが算出される。
【0101】
さらに、反射率測定部21は、絶対反射率R
Sampleの測定値をトレンチ係数Trで補正する。トレンチ係数Trは、トレンチ34の形状に応じて、反射率測定部21に予め記憶させておくことができる。トレンチ係数Trで補正することが、トレンチの形状によらない絶対反射率を求めることができる。換言すると、トレンチ底部での絶対反射率が、トレンチ係数Trによって、平面での絶対反射率に置き換えられる。このようにして、絶対反射率R
Sampleの測定値Rmが求められる。
【0102】
また、絶対反射率の理論値Rcは、平面での光学モデル、既知の光学定数、酸化膜厚を決定することで求めることができる。ここで、光学モデルは、
図3に示すように、空気/SiO
2/Siが形成されている光学モデルを用いている。光学モデルの材質における光学定数を用いる。光学定数としては、複素屈折率、屈折率、消衰係数が用いられる。したがって、SiO
2膜32の膜厚tを決定すれば、絶対反射率R
Sampleの理論値Rcが決定する。
【0103】
そして、膜厚tをパラメータとして、絶対反射率の測定値と絶対反射率の理論値とのパラメータフィッティングを行う。すなわち、残差Σが収束するように、膜厚tを変えていく。例えば、最小二乗法により、絶対反射率の測定値Rmと理論値Rcとの残差Σが最小となる膜厚tを求める。膜厚測定部22は、残差Σが最小となる膜厚tをSiO
2膜32の解析膜厚と決定する。このように、絶対反射率の測定値と理論値とから、膜厚を推定することができる。もちろん、最小二乗法以外の回帰分析を行ってもよい。このように、残差Σが最小となるように曲線あてはめを行う。
【0104】
次に、トレンチ係数Trの計算モデルについて、
図27を用いて説明する。トレンチ係数Trは、理論値と、入射角の積分範囲の設定により求めることができる。例えば、入射強度を一定として、反射率の入射角依存性R(θ)を求める。ここでは、Siの光学定数を用いている。例えば、反射率の入射角依存性R(θ)は、式(30)に基づく参照テーブルを用いてもよく、多項式近似式を用いてもよい。そして、反射強度の角度分布を計算する。立体角範囲内で反射強度の角度分布を積分することで、反射強度の積算値を求めることができる(式(21)参照)。
【0105】
さらに、入射角の積分範囲を設定することで、平面の受光強度P
Flattotとトレンチでの受光強度P
Trtotを求める。積分範囲は、式(23)〜式(27)により設定される。平面とトレンチの受光強度の比(P
Trtot/P
Flattot)から、トレンチ係数Trを決定することができる。
【0106】
トレンチTrを計算する場合、トレンチ34のアスペクト比が既知であることが必要となる。予めアスペクト比が既知の場合は、その数値を用いることができる。しかし、アスペクト比が未知の場合、共焦点光学系101を用いた共焦点顕微鏡で3次元計測を行う。これにより、トレンチ34の幅W、及び深さdを求めることができる。
【0107】
なお、トレンチ34の幅Wと深さdが精密に測定できない場合、トレンチ係数Trを膜厚解析のパラメータとして取り込むことができる。すなわち、
図26のパラメータフィッティングにおいて、膜厚tだけでなくトレンチ係数Trをパラメータとする。こうすることで、トレンチ係数Trを最適化することができる。トレンチ34の幅Wを測定すれば、トレンチ深さdを決定することができる。
【0108】
図15に示すようなVIA35の場合、同様の計算処理を行い、VIA係数を求めることができる。VIA開口を半径とした円錐範囲の角度分布を計算すればよいので、平面の場合の計算でのNAをVIA35の見かけのNAに置き換えるだけで計算することができる。もちろん、円形のVIA34やトレンチ34に限らず、様々な形状の凹部の底部に設けられたSiO
2膜32の膜厚を算出することができる。開口が矩形の場合や、ハニカム形状の場合でも、膜厚tを求めることができる。もちろん、Si基板31やSiO
2膜32に限らず、その他の材料の構造についても膜厚を算出することができる。例えば、透明な薄膜がトレンチ34の底部に形成されている構成において、透明な薄膜の厚さを測定することができる。
【0109】
補正係数は、平面からの受光強度と凹部の底部からの受光強度との比の計算値となっている。このため、凹部の底部の絶対反射率の測定データを平面の絶対反射率の測定データに変換することができる。反射率の入射角依存性を示す近似式関数又は参照テーブルを用いて、補正係数を算出することが好ましい。こうすることで簡便に、補正係数を求めることができる。さらに、照明波長毎に補正係数を算出することで、より正確に膜厚を測定することができる。この場合、反射率の入射角依存性を示す近似式関数又は参照テーブルを照明波長毎に用意する。
【0110】
このように、共焦点光学系101を用いることにより、トレンチ34の開口のエッジからの散乱光やSi基板31上面からの反射光を除去することができる。これにより、トレンチ34の底部の正味の反射光を正確に測定することができる。さらに、トレンチ底部の薄膜の膜厚を非接触・非破壊で短時間に測定できる。また、波長による反射強度の相対変化による計測であるため、反射光焦点位置の検出による膜厚測定では問題となっていた擬似焦点にも影響されない。
【0111】
波長と反射率との関係がSiO
2膜32の膜厚毎にそれぞれ示されている計算データを参照して、測定データからSiO
2膜32の膜厚を近似して算出する。そして、SiO
2膜32の膜厚を求めるための、近似において、トレンチ34の形状に応じた補正係数が導入される。よって、正確に膜厚を測定することができる。
【0112】
また、本実施の形態では、分光膜厚計のように反射光を分光する代わりに、照明光を単色光として試料の反射強度を測定している。そして、照明波長を変えるごとに、反射強度を同一視野に対して測定する。したがって、反射率の波長依存性、すなわち、反射スペクトルを得ることができる。さらに、照明波長によって焦点位置がずれる光学系でも、いずれの照明波長でも合焦点位置での測定を行うことができる。よって、正確に膜厚を測定することができる。
【0113】
共焦点光学系101を用いることで、トレンチ等の凹部の形状を3次元計測することができる。底部の薄膜の膜厚は凹部の深さに対して、十分に小さいとすると、おおよそのアスペクト比を見積もることができる。反射率測定に使用した対物レンズ17のNAとトレンチ34のアスペクト比とから、絶対反射率に換算する係数を各波長に対して算出することができる。
【0114】
観察画像の各画素に対して、分光スペクトルを得ることができる。光検出器19が検出した輝度値を絶対反射率に換算する。検出した輝度値に基づく絶対反射率の測定値Rmと、絶対反射率の計算値Rcとを用いて、膜厚をパラメータとするフィッティングを行う。こうすることで、1μm以下の膜厚を精度よく求めることができる。また、アスペクト比をパラメータとするフィッティングを行うことも可能である。
【0115】
なお、照明波長の切替は、連続的ではなくてもよい。例えば、400〜700nmの間に数波長でもよい。100nmのエッチング残渣の有無の判定であれば、1波長も測定可能である。この場合、例えば、パラメータフィッティングにおける残差Σの最小値が閾値より大きいか否かを判定すればよい。
【0116】
共焦点光学系101において、照明波長を切り替えると、合焦点位置が変化することが考えられるので、これにより輝度値の変化が予想される。各波長による合焦点位置のずれ分を予め処理装置20に記憶させておく。そして、波長切替の際に、ずれ分だけ自動で試料30あるいは対物レンズ17のz位置を調整する。こうすることで、合焦点位置のずれをキャンセルすることができる。あるいは、それぞれの照明波長において、zスキャンにより、全焦点画像を形成してもよい。
【0117】
絶対反射率の基準試料40としては、シリコンや石英ガラスなどを用いることができる。すなわち、反射スペクトルが既知のサンプルを予め測定装置100で測定しておくことで、測定装置100の光学系自身の波長依存性は計算により補正される。
【0118】
なお、共焦点光学系101を用いている。従って、試料30の表面で反射し、内部への透過率の低い照明波長を選択することにより、表面形状も独立に測定することができる。膜厚分布と表面形状分布を独立に測定することにより、基板表面形状(基板と膜の界面)を求めることができる。
【0119】
また、膜厚が数μm以上あるような場合は、共焦点顕微鏡で合焦点位置の違いを検出できるので、焦点位置の読みとりにより従来どおり膜厚測定ができる。すなわち、本発明によれば、膜厚が1μm以下の場合には上述のように照明光の波長を切替えながら反射強度を測定することができ、膜厚が厚い場合には従来どおりの膜厚測定を切替えて行うことができる。さらに、表面に焦点深度を超える起伏がある場合でも、共焦点顕微鏡により全焦点画像を作成することにより、全表面の反射率を測定することができる。
【0120】
なお、上述の例では、断続的に複数の波長について反射率を測定したが、連続的に波長を切替えるようにしてもよい。連続波長の光源を用いることにより、測定する波長を多数選択することができる。この場合、計算した反射データと測定データを完全に一致させる近似を使わずとも、連続したカーブが得られる場合は、反射率の極大や極小の位置を合わせる近似を行う一般的な方法で膜厚を算出できる。すなわち、連続波長による方法を使う場合は、ピーク波長だけを使って膜厚計算できるので、反射率既知の基準試料で正確に補正する必要がない。