【実施例】
【0028】
次に本発明の実施例について説明する。
表1にめっき母材となる鋼板の化学成分を示す。D鋼は一般的な鋸・刃物用鋼であるJIS炭素工具鋼のSK85である。
【0029】
【表1】
【0030】
表1の鋼板を素材とし,銅めっき厚さが3〜40μm、板厚0.4〜2.3mmの範囲にある幅600mmの銅めっき鋼板コイルを製造した。このコイルから、1)異形断面圧延,2)表面研削,3)エッチングのいずれかの方法により、凸凹の高低差を6〜80μm、積層材のひとつの接合面の面積あたり凸部の面積率を
5〜30%となるように凹凸を形成した。銅めっき鋼板の板厚、銅めっき厚さ、凹凸部の形成方法、凹凸部の高低差、凸部の面積率は、表2に示してある。
【0031】
【表2】
【0032】
異形断面圧延には,直径が400mm,一方はフラットロールで、他方は胴部の円周方向にその頂部がフラットな縦断面台形状の凸部が形成されて成る一対のワークロールが設置されている2段圧延機を使用した。この圧延機のワークロールの間に素材の銅めっき鋼板を1回通板し,
図1に示したとおり、山部は幅3mm、溝部は幅5mmの繰り返し凹凸パターンを持つ異形断面帯板を製造した。高低差は、80μmである。
銅めっき鋼板を異形断面圧延により加工したので、めっき鋼板の表面に凹凸が形成されているものの、凹部(溝部)にも銅めっきは残っている。
【0033】
表面研削による溝の作成は,幅が5mm,直径が200mmの♯3000および♯8000の研削砥石を装着したNCマシンを用いて、銅めっき鋼板の表面に
図1と同様の凹凸パターンを形成した。溝部の深さは、150μmに設定した。
銅めっき鋼板を表面から研削したので、凹凸パターンの凹部(溝部)は鋼板の素地が露出しており、この部分には銅めっきは残っていない。
【0034】
エッチングによる溝の作成は,フォトエッチング法にて実施した。鋼板の表面に幅5mmの凸部が形成できるようにマスキングしたフィルムを貼付した後,酸性塩化第二鉄を主体とした薬品を50℃に加熱し,鋼板を数分浸漬して銅めっきを溶解除去した。
【0035】
上記コイルを長さ600mmに切断後,積層枚数を2〜6とし,コイルの長手方向と幅方向が交互になるように積層したものを,真空加熱下のホットプレス炉を用いて面圧1〜5MPaの負荷を付与しながら加熱温度750〜1100℃で10分間保持し,拡散接合による積層体を得た。
【0036】
その後,幅100mm×長さ200mmに切り出し,780〜850℃で10分間加熱保持後,60℃油中で焼入れ,200〜550℃で30min加熱保持後,空冷の焼戻しを行い,ロックウエル硬さ40〜55HRCに調質した。積層数、積層後のトータル板厚、加熱温度、負荷した面圧、調質硬さは、表2に示したとおりである。なお,非接触部の割合は断面を超音波探傷により測定した。
【0037】
得られた積層材について、制振性と土砂に対する耐摩耗性を評価した。
制振性の評価は、
図5に示す装置を用いて行った。積層材を制振性測定対象物2としてフレーム1に糸3により懸垂保持しておいて、回転自在なハンマー4を水平状態から回転落下させてその打撃音をマイクロホン5にて受音し,アンプ6で音圧レベルを測定した。その結果を表2に示してある。
また,耐摩耗性については、
図6に示す土砂摩耗試験を用いて試験前後の重量比を測定した。供試材から60mm四方となる試験片を切り出した後,回転方向に対して30°傾斜した試験ホルダーに固定し,φ20mm以下の玉砂利を摩耗相手材とし,回転速度100rpm,乾式雰囲気にて行った。試験前後の試料重量差から摩耗により消失した材料の重量差を摩耗量とした。摩耗量も表2に示してある。
上記の評価では、比較材としてD,E鋼の組成を有する単板を用いて制振性および耐摩耗性について同様に試験を行った。それぞれ、No.15とNo.24である。
【0038】
No.1〜15は一般的な鋸・刃物用鋼であるJIS炭素工具鋼のSK85が鋼の母材である。その中で本発明例であるNo.1〜9は凸凹部の高低差が6〜40μm、非接合部の界面面積率が50〜85%,音圧レベルが88〜103dBであった。比較例であるNo.10〜14及び単板のNo.15は、音圧レベル115dBであり、本発明例の積層材は音圧レベルが10dB以上低下している。
また,No.16〜23は鋼の化学成分に関わらず,凸凹の高低差が15〜30μm,非接合部の界面面積が70〜85%であり,いずれも音圧レベルが90〜99dBと低い。比較例No.24の高炭素鋼(E鋼)の単板113dB及び比較例No.15の単板115dBに比べて10dB以上の音圧低減が認められる。
【0039】
比較例であるNo.10は、凸部の面積率が30%と大きいことから,非接合部の面積率が40%となり,音圧レベルが109dBと高い。また,No.13は、拡散接合時の加熱温度が1100℃と高かったため,非接合部の面積率が15%と小さく,音圧レベルが112dBと高い。
【0040】
比較例であるNo.11は、めっき厚が40μmと厚いことから,摩耗試験においてめっき層の摩耗が著しく、鋸・刃物用鋼として不適切である。
【0041】
比較例であるNo.12は、凸凹部の高低差が80μmであり,非接合部の面積率が90%と隙間が大きく,共振を起こしてしまい音圧レベルが高かった。また,接合面積が小さく,摩耗試験において積層材の剥離が生じており,鋸・刃物用鋼としては不適切である。
【0042】
比較例であるNo.14は、拡散接合時の加熱温度が低いことから,非接合部の界面面積が95%となり,共振を起こしてしまい音圧レベルが高かった。また,接合面積が小さく,摩耗試験後に積層材の剥離が生じており,鋸・刃物用鋼としては不適切である。
【0043】
耐摩耗性の評価に至らなかったNo.12,14およびめっき層の摩耗が著しかったNo.11を除く各積層材については,調質硬さが高いほど摩耗減量が少なく,摩耗試験後の本発明例の積層部分の剥離も認められない。
【0044】
以上の結果から、本発明による積層材は良好な制振性と耐摩耗性を有している。