特許第5871267号(P5871267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5871267比重の異なる異種材料を一体化した複合材から比重の大きい粉体を分離回収する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871267
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】比重の異なる異種材料を一体化した複合材から比重の大きい粉体を分離回収する方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20160216BHJP
   B29B 17/02 20060101ALI20160216BHJP
   B29B 17/04 20060101ALI20160216BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20160216BHJP
   B07B 1/24 20060101ALI20160216BHJP
   B07B 4/08 20060101ALI20160216BHJP
   B07B 7/01 20060101ALI20160216BHJP
   B02C 18/14 20060101ALI20160216BHJP
   B07B 9/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   B09B3/00 Z
   B29B17/02ZAB
   B29B17/04
   B09B5/00 Z
   B07B1/24
   B07B4/08 Z
   B07B7/01
   B02C18/14 A
   B07B9/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-61349(P2012-61349)
(22)【出願日】2012年3月19日
(65)【公開番号】特開2013-193011(P2013-193011A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】512025975
【氏名又は名称】株式会社遠山紙業
(74)【代理人】
【識別番号】100081709
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴若 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】遠山 一弥
(72)【発明者】
【氏名】横堀 範行
【審査官】 増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−78980(JP,A)
【文献】 特開昭52−80374(JP,A)
【文献】 特開昭52−80375(JP,A)
【文献】 特開昭52−100589(JP,A)
【文献】 特開昭52−100590(JP,A)
【文献】 特開昭58−8613(JP,A)
【文献】 特開昭48−102178(JP,A)
【文献】 特開2002−370080(JP,A)
【文献】 特開2010−241074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00
B02C 18/14
B07B 1/24
B07B 4/08
B07B 7/01
B07B 9/00
B09B 5/00
B29B 17/02
B29B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重の異なる異種材料を一体化した複合材から比重の大きい粉体を分離回収する方法において、
一)ケーシングに回転自在に支持された回転刃と、前記ケーシング側に固定され前記回転刃と協働して被粉砕物をせん断する固定刃と、前記回転刃の先端軌跡に沿うように円弧状に前記ケーシングに設けられたパンチング直径が1.0mm以上2.0mm以下であるパンチングスクリーンを備えてなるせん断式粉砕装置を用いて、前記被粉砕物である粗破砕された比重の異なる異種材料を一体化した複合材のチップを前記回転刃と前記固定刃間に作用するせん断力によって粉砕し直径が1.0mm以上2.0mm以下の範囲の所定の粒度を有する粉砕物とする粉砕工程と、
二)前記粉砕物に含まれる比重の大きい粉体と比重の小さい粉体を分離する第一分離工程であって、
a)円筒型の回転篩を備える回転篩式分離装置と当該回転篩式分離装置外の吸引装置を用いて、
b)前記粉砕物を前記回転篩で回転撹拌しながら、前記回転篩式分離装置外の吸引装置により比重の小さい粉体を吸引除去し、比重の大きい粉体を当該回転篩の篩目を通過させる工程と、
三)前記回転篩の篩目を通過した比重の大きい粉体から当該比重の大きい粉体に付着する比重の小さい粉体を分離する第二分離工程であって、
a)ケーシング内に傾斜して設置された網状振動体と当該網状振動体の下方に設置したファン装置を備えた比重分離装置であって前記回転篩式分離装置の下方に配設した比重分離装置と当該比重分離装置外の吸引装置を用いて、
b)前記網状振動体を振動すると共に前記ファン装置から空気を当該網状振動体面に吹き上げた状態で、前記回転篩の篩目を通過した比重の大きい粉体を自然落下により当該振動している網状振動体の面上に投入し、
c)前記比重の大きい粉体から当該比重の大きい粉体に付着する比重の小さい粉体を分離し、前記比重分離装置外の吸引装置により当該比重の小さい粉体を吸引除去し、当該比重の小さい粉体が分離した比重の大きい粉体を前記網状振動体の上端方向に移動せしめ当該網状振動体から排出する工程と、
四)前記網状振動体の上端方向に移動し当該網状振動体から排出された比重の大きい粉体から当該比重の大きい粉体に付着する比重の小さい粉体を分離する第三分離工程であって、
a)第一風力分離装置と当該第一風力分離装置外の吸引装置を用いて、
b)前記網状振動体の上端方向に移動し当該網状振動体から排出された比重の大きい粉体から当該比重の大きい粉体に付着する比重の小さい粉体を風力分離し、前記第一風力分離装置外の吸引装置により当該比重の小さい粉体を吸引除去し、当該比重の小さい粉体が分離した比重の大きい粉体を当該第一風力分離装置の下方に自然落下させる工程と、を有することを特徴とする比重の異なる異種材料を一体化した複合材から比重の大きい粉体を分離回収する方法。
【請求項2】
前記第一風力分離装置の下方に自然落下した比重の大きい粉体から当該比重の大きい粉体に付着する比重の小さい粉体を分離する第四分離工程であって、
a)第二風力分離装置と当該第二風力分離装置外の吸引装置を用いて、
b)前記第一風力分離装置の下方に自然落下した比重の大きい粉体から当該比重の大きい粉体に付着する比重の小さい粉体を風力分離し、前記第二風力分離装置外の吸引装置により当該比重の小さい粉体を吸引除去し、当該比重の小さい粉体が分離した比重の大きい粉体を当該第二風力分離装置の下方に自然落下させる工程と、を更に有することを特徴とする請求項1記載の比重の異なる異種材料を一体化した複合材から比重の大きい粉体を分離回収する方法。
【請求項3】
a)第三分離工程に使用する第一風力分離装置が、上下方向に伸びる筒状体と、当該筒状体の下部側壁に開口する流入開口と、当該流入開口と対向する前記筒状体の内側壁に上部よりも下部が当該流入開口に近づくように傾斜して設けられた傾斜板と、前記筒状体の上部に開口する流出開口と、前記筒状体の下部に開口する排出開口と、を備える風力分離装置であり、
b)第三分離工程が、前記流入開口から前記傾斜板に対して、前記網状振動体の上端方向に移動し当該網状振動体から排出された比重の大きい粉体を空気と共に供給して衝突させ、当該比重の大きい粉体から当該比重の大きい粉体に付着する比重の小さい粉体を分離し、前記流出開口から前記第一風力分離装置外の吸引装置により当該比重の小さい粉体を吸引除去し、当該比重の小さい粉体が分離した比重の大きい粉体を当該第一風力分離装置の下方に自然落下させ、当該自然落下した比重の大きい粉体を前記排出開口から排出する工程である、ことを特徴とする請求項1記載の比重の異なる異種材料を一体化した複合材から比重の大きい粉体を分離回収する方法。
【請求項4】
a)第四分離工程に使用する第二風力分離装置が、上下方向に伸びる筒状体と、当該筒状体の下部側壁に開口する流入開口と、当該流入開口と対向する前記筒状体の内側壁に上部よりも下部が当該流入開口に近づくように傾斜して設けられた傾斜板であって前記第一風力分離装置の傾斜板よりも傾斜が急勾配である傾斜板と、前記筒状体の上部に開口する流出開口と、前記筒状体の下部に開口する排出開口と、を備える風力分離装置であり、
b)第四分離工程が、前記流入開口から前記傾斜板に対して、前記第一風力分離装置の排出開口から排出された比重の大きい粉体を空気と共に供給して衝突させ、当該比重の大きい粉体から当該比重の大きい粉体に付着する比重の小さい粉体を分離し、前記流出開口から前記第二風力分離装置外の吸引装置により当該比重の小さい粉体を吸引除去し、当該比重の小さい粉体が分離した比重の大きい粉体を当該第二風力分離装置の下方に自然落下させ、当該自然落下した比重の大きい粉体を前記排出開口から排出する工程である、ことを特徴とする請求項記載の比重の異なる異種材料を一体化した複合材から比重の大きい粉体を分離回収する方法。
【請求項5】
前記第一風力分離装置の傾斜板が内側壁となす角は、50〜40°であることを特徴とする請求項3記載の比重の異なる異種材料を一体化した複合材から比重の大きい粉体を分離回収する方法。
【請求項6】
前記第二風力分離装置の傾斜板が内側壁となす角は、20〜10°であることを特徴とする請求項4記載の比重の異なる異種材料を一体化した複合材から比重の大きい粉体を分離回収する方法。
【請求項7】
前記回転篩の篩目開きは、1.0mm〜2.0mmであることを特徴とする請求項1記載の比重の異なる異種材料を一体化した複合材から比重の大きい粉体を分離回収する方法。
【請求項8】
前記比重の異なる異種材料を一体化した複合材は、塩化ビニル樹脂系廃棄物であって、比重の大きい塩化ビニル樹脂と比重の小さい有機繊維材料を一体化した塩化ビニル樹脂系廃棄物であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の比重の異なる異種材料を一体化した複合材から比重の大きい粉体を分離回収する方法。
【請求項9】
前記塩化ビニル樹脂系廃棄物は、基材としての裏打紙の表面に塩化ビニル樹脂が被覆した構造となっている塩化ビニル樹脂系壁紙またはポリエステル平織物の基布の両面に塩化ビニル樹脂が積層した構造となっているターポリンであることを特徴とする請求項8記載の比重の異なる異種材料を一体化した複合材から比重の大きい粉体を分離回収する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターポリン、塩化ビニル樹脂系壁紙など比重の異なる異種材料を一体化した複合材を個々の材料の粉体からなる混合粉とし、比重の差を利用して混合粉から比重の大きい粉体を分離回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル樹脂系壁紙は、基材としての裏打紙の表面に可塑剤や顔料等を配合した塩化ビニル樹脂層がコーティング法あるいはカレンダー法などで被覆された構造となっている。代表的なターポリンは、ポリエステル平織物等の基布の両面に塩化ビニルやエチレン−酢酸ビニル共重合体等の樹脂に可塑剤や顔料等を配合した樹脂組成物層をカレンダー加工等の製膜技術により積層した構造となっている。
【0003】
製造工程から発生する不具合品、デザイン等の変更品、長期在庫の処分品などの事情により発生する商品に適さないターポリン、塩化ビニル樹脂系壁紙などは、再資源化することが望ましい。しかしながら、このような異種材料を一体化した複合材は、それぞれの材料間の接着は強固であり、それぞれの層を分離することは非常に難しいため、再資源化できず、大部分が埋め立て処理、焼却処理等で処理されている。埋め立て処理の場合、例えば壁紙の場合は、基材が紙であるため管理型処分場でなくてはならないので埋め立て処理スペースが限られるなどの問題がある。またターポリン、塩化ビニル樹脂系壁紙は、樹脂成分として塩化ビニル樹脂を含むので焼却処理は回避される傾向にある。
【0004】
このような問題を解決するために、異種材料を一体化した複合材の再利用方法、再利用の価値のある塩化ビニル樹脂粉体の分離回収方法が検討、開発されてきた。例えば、特許文献1は、長期在庫品の廃壁紙を、再生材料としてパルプと塩化ビニル樹脂を低コスト且つ高精度に分離回収することを課題として、その解決手段として次のような技術を開示している。この技術は、廃壁紙をストレーナー設置の衝撃粉砕機を用い、基材の切断を抑え綿状の紙繊維に解し被覆PVC層と剥離、粉砕して縦円筒形で中心部に円形板を配した風力分離装置の分離塔内を流れる上昇気流に乗せて上部排出口から紙成分を排出回収する、被覆PVCは、円形板周囲から落下せしめ下部空気補給口から排出回収する方法において、粉砕と分離を一回以上繰り返し行いパルプと塩化ビニル樹脂粉体を回収するものである。また、特許文献2には特許文献1の改良技術として、特許文献1の技術で分離した塩化ビニル樹脂粉体を撹拌機にて撹拌する工程を付加した技術が開示されている。
【0005】
特許文献3は、塩化ビニル樹脂壁紙、石膏ボードなどの紙と樹脂または無機素材との積層物、タイルカーペット、防音シート、防水シート、工事用安全ネット、フレキシブルコンテナー等の樹脂層と繊維層との積層物または繊維層に樹脂層を含有した積層物等の複合材料の粉体化物を分離する粉体分離装置とこの粉体分離装置を用いた粉体分離システムに関する技術を開示している。粉体分離装置は、上下方向に延びる筒状体と、筒状体の下部側壁に開口し混合粉がガスと一緒に流入する流入開口と、筒状体内に流入開口と対向する位置に設けられ、上部よりも下部が流入開口に近づくように傾斜された傾斜板と、筒状体の上部に開口し一部の粉体をガスと一緒に流出させる流出開口と、筒状体における流入開口よりも下部に設けられた、粉体を選択的に排出する弁と、を備えるものである。
【0006】
特許文献4は、特許文献3に開示される粉体分離装置を用いた粉体分離システムに好ましく用いられる粉体化装置を開示する文献である。この粉体化装置は、中心軸回りに回転される内筒と、前記内筒と略同軸に配置されて前記内筒を取り囲む外筒と、前記内筒の外周面上に設けられた打撃部材と、外周面に突起が形成されると共に前記内筒の中心軸と平行な軸周りを回転されるロールと、を備え、前記外筒における前記内筒の外周面と対向する位置に、前記外筒の軸方向に伸びるように開口部が設けられ、前記ロールは、前記ロールの外周面の一部が前記開口部を通って前記内筒の外周面と向き合うように前記外筒の外に配置され、前記内筒と前記ロールとは互いに向かい合う外周面同士が互いに異なる方向に移動するようにそれぞれ回転される、というものである。
【0007】
特許文献5は、塩化ビニル樹脂系廃棄物から塩化ビニル樹脂を回収する方法を開示する。その方法は、塩化ビニル樹脂系廃棄物に含有される塩化ビニル樹脂を塩化ビニル樹脂の良溶媒で溶解する溶解工程(A)と、溶解工程(A)で良溶媒に溶解しなかった不溶解物を回収する不溶解物回収工程(B)と、不溶解物回収工程(B)で回収された不溶解物を塩化ビニル樹脂の良溶媒で洗浄する洗浄工程(C)と、を備えるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−262093号公報
【特許文献2】特開2006−272241号公報
【特許文献3】特開2010−142731号公報
【特許文献4】特開2009−101315号公報
【特許文献5】特開2008−62186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1および特許文献2に開示された技術では、回収された塩化ビニル樹脂にはパルプ成分が含まれており、床材などの再生資源として実用化するには十分ではないという問題がある。再生された塩化ビニル樹脂を床材などの再資源として実用化するためには、再生された塩化ビニル樹脂の嵩比重(粉体の質量(g)÷粉体の体積(cc))は0.5以上が必要であるが、特許文献2に開示された技術のベストモードでも嵩比重は0.42程度である。
【0010】
特許文献4に記載の粉体化装置により得られる粉体は、特許文献3の段落番号0092〜0095に記載されているように、2,000μmを境界として粒径の相対的に小さい粉体と粒径の相対的に大きい粉体とが混在している。
【0011】
本発明者等は、特許文献3の図3に示される粉体分離システムを参考にして、特許文献4に記載されるような粉体化装置を用いて略10mm角に粗破砕した塩化ビニル樹脂系壁紙を粉体化し、次いで、粉体化装置の後段に直列に接続した4基の粉体分離装置により塩化ビニル樹脂粉体とパルプとを分離したが、床材などの再生資源として実用化に耐える塩化ビニル樹脂粉体を得ることができなかった。
【0012】
特許文献5に記載の技術の難点は、塩化ビニル樹脂の良溶媒であるメチルエチルケトン(MEK)を使用することである。MEKは、揮発性で引火性の高い液体であり、この物質の蒸気は空気より重く、床に沿って移動することがあり遠距離引火の可能性がある。また、短期暴露の影響として、眼、皮膚、気道を刺激する、許容濃度をはるかに超えると意識を喪失することがある、反復暴露の影響として人の生殖に毒性影響を及ぼす可能性がある、など、できれば使用したくない物質である。
【0013】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、比重の異なる異種材料を一体化した複合材を個々の材料の粉体からなる混合粉とし、比重の差を利用して混合粉から比重の大きい粉体を分離回収するに際して、再資源として実用化に耐える程度に比重の小さい粉体が混在しない比重の大きい粉体を得ることができる分離回収方法を提供することを目的とする。また、本発明は、塩化ビニル樹脂を含む複合材から塩化ビニル樹脂粉体を分離回収するに際して、床材などの再生資源として実用化に耐え得る塩化ビニル樹脂粉体を得ることができる分離回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、鋭意検討した結果、比重の異なる異種材料を一体化した複合材を個々の材料の粉体からなる混合粉とし、比重の差を利用して混合粉から比重の大きい粉体を分離回収するに際して、再資源として実用化に耐える程度に比重の小さい粉体が混在しない比重の大きい粉体を得るためには、粗破砕された比重の異なる異種材料を一体化した複合材のチップを個々の材料の粉体からなる混合粉に粉砕するに際して、粒度の相対的に小さい粉体と粒度の相対的に大きい粉体とが混在している状態をなくすことが重要であること、また、分離方法の異なる複数の工程を採用して徐々に比重の大きい粉体に付着する比重の小さい粉体を分離除去することが必要ではないかと考え、本発明を想起するに至った。
【0015】
本発明に係る比重の異なる異種材料を一体化した複合材から比重の大きい粉体を分離回収する方法は、
一) ケーシングに回転自在に支持された回転刃と、前記ケーシング側に固定され前記回転刃と協働して被粉砕物をせん断する固定刃と、前記回転刃の先端軌跡に沿うように円弧状に前記ケーシングに設けられたパンチング直径が1.0mm以上2.0mm以下であるパンチングスクリーンを備えてなるせん断式粉砕装置を用いて、前記被粉砕物である粗破砕された比重の異なる異種材料を一体化した複合材のチップを前記回転刃と前記固定刃間に作用するせん断力によって粉砕し直径が1.0mm以上2.0mm以下の範囲の所定の粒度を有する粉砕物とする粉砕工程と、
二) 前記粉砕物に含まれる比重の大きい粉体と比重の小さい粉体を分離する第一分離工程であって、
a)円筒型の回転篩を備える回転篩式分離装置と当該回転篩式分離装置外の吸引装置を用いて、
b)前記粉砕物を前記回転篩で回転撹拌しながら、前記回転篩式分離装置外の吸引装置により比重の小さい粉体を吸引除去し、比重の大きい粉体を当該回転篩の篩目を通過させる工程と、
三) 前記回転篩の篩目を通過した比重の大きい粉体から当該比重の大きい粉体に付着する比重の小さい粉体を分離する第二分離工程であって、
a)ケーシング内に傾斜して設置された網状振動体と当該網状振動体の下方に設置したファン装置を備えた比重分離装置であって前記回転篩式分離装置の下方に配設した比重分離装置と当該比重分離装置外の吸引装置を用いて、
b)前記網状振動体を振動すると共に前記ファン装置から空気を当該網状振動体面に吹き上げた状態で、前記回転篩の篩目を通過した比重の大きい粉体を自然落下により当該振動している網状振動体の面上に投入し、
c)前記比重の大きい粉体から当該比重の大きい粉体に付着する比重の小さい粉体を分離し、前記比重分離装置外の吸引装置により当該比重の小さい粉体を吸引除去し、当該比重の小さい粉体が分離した比重の大きい粉体を前記網状振動体の上端方向に移動せしめ当該網状振動体から排出する工程と、
四) 前記網状振動体の上端方向に移動し当該網状振動体から排出された比重の大きい粉体から当該比重の大きい粉体に付着する比重の小さい粉体を分離する第三分離工程であって、
a)第一風力分離装置と当該第一風力分離装置外の吸引装置を用いて、
b)前記網状振動体の上端方向に移動し当該網状振動体から排出された比重の大きい粉体から当該比重の大きい粉体に付着する比重の小さい粉体を風力分離し、前記第一風力分離装置外の吸引装置により当該比重の小さい粉体を吸引除去し、当該比重の小さい粉体が分離した比重の大きい粉体を当該第一風力分離装置の下方に自然落下させる工程と、を有することを特徴とするものである。
【0016】
本発明においては、前記第三分離工程の後工程として、前記第一風力分離装置の下方に自然落下した比重の大きい粉体から当該比重の大きい粉体に付着する比重の小さい粉体を分離する第四分離工程を採用することが好ましい。第四分離工程は、
a)第二風力分離装置と当該第二風力分離装置外の吸引装置を用いて、
b)前記第一風力分離装置の下方に自然落下した比重の大きい粉体から当該比重の大きい粉体に付着する比重の小さい粉体を風力分離し、前記第二風力分離装置外の吸引装置により当該比重の小さい粉体を吸引除去し、当該比重の小さい粉体が分離した比重の大きい粉体を当該第二風力分離装置の下方に自然落下させる工程と、を更に有するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、再資源として実用化に耐える程度に比重の小さい粉体が混在しない比重の大きい粉体を得ることができる分離回収方法を提供することができた。また、複合材が塩化ビニル樹脂系廃棄物である場合には、床材などの再生資源として実用化に耐える塩化ビニル樹脂粉体を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態に係る比重の異なる異種材料を一体化した複合材から比重の大きい粉体を分離回収する工程を示す図である。
図2】粉砕工程に用いることができるせん断式粉砕装置の概念図である。
図3図2に示すせん断式粉砕装置の要部断面図である。
図4】実施の形態に係る第一分離工程と第二分離工程を説明する図であり、回転篩式分離装置を正面から見た概略図である。
図5図4を側面から見た概略図である。
図6】実施の形態に係る第三分離工程と第四分離工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る比重の異なる異種材料を一体化した複合材から比重の大きい粉体を分離回収する方法は、次のような特徴のある工程を有するものである。即ち、粉砕工程が、パンチング直径が1.0mm以上2.0mm以下であるパンチングスクリーンを備えるせん断式粉砕装置を用いて、直径が1.0mm以上2.0mm以下の範囲の所定の粒度を有する粉砕物とすること、比重の大きい粉体と比重の小さい粉体に分離するために、方式の異なる三つの分離工程を採用すること、しかも、第一分離工程である回転篩式分離装置から第二分離工程である比重分離装置への被分離粉体である比重の大きい粉体の供給は、自然落下による投入であること、である。
【0020】
本発明において、比重の異なる異種材料を一体化した複合材としては、比重の大きい塩化ビニル樹脂成分(塩化ビニル樹脂に可塑剤、炭酸カルシウム等の顔料が含有されている。)と比重の小さい有機繊維材料を一体化した塩化ビニル樹脂系廃棄物が挙げられる。塩化ビニル樹脂系廃棄物の例としては、例えば、基材としての裏打紙の表面に塩化ビニル樹脂層(塩化ビニル樹脂に可塑剤、炭酸カルシウム等の顔料が含有されている。)が被覆された構造となっている塩化ビニル樹脂系壁紙、ポリエステル平織物の基布の両面に塩化ビニル樹脂層(塩化ビニル樹脂に可塑剤、炭酸カルシウム等の顔料が含有されている。)が積層した構造となっているターポリン等が挙げられる。本発明において、塩化ビニル樹脂粉体という場合、塩化ビニル樹脂に可塑剤、炭酸カルシウム等の顔料が含有されているものをいう。また、本明細書においては、塩化ビニル樹脂粉体が比重の大きい粉体であることを明確にするために、比重の大きい粉体である塩化ビニル樹脂粉体ということもある。同様に、パルプが比重の小さい粉体であることを明確にするために、比重の小さい粉体であるパルプということもある。
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1は、実施の形態に係る比重の異なる異種材料を一体化した複合材から比重の大きい粉体を分離回収する工程を示す図である。ここでは、比重の異なる異種材料を一体化した複合材としては、塩化ビニル樹脂系廃棄物である塩化ビニル樹脂系壁紙を例にとって説明する。本発明に係るせん断式粉砕装置を用いた粉砕を効率よく行うためには、塩化ビニル樹脂系廃棄物は最大長さが10〜20mm程度の大きさに粗破砕されていることが好ましい。
【0022】
図1中、符号1は供給装置、符号2は配管、符号3は吸引ファン、符号20はせん断式粉砕装置、符号4は配管、符号5はサイクロン、符号6は配管、符号30は回転篩式分離装置、符号7は配管、符号40は比重分離装置、符号8は配管、符号9は配管、符号10は吸引ファン、符号11は配管、符号50は第一風力分離装置、符号12は配管、符号13は吸引ファン、符号14は配管、符号60は第二風力分離装置、符号16は比重の大きい粉体である塩化ビニル樹脂粉体を回収する塩化ビニル樹脂粉体回収タンク、符号17は吸引装置を備えるバグフィルター、符号18は比重の小さい粉体であるパルプを回収するパルプ回収タンクである。
【0023】
供給装置1は、粗破砕された塩化ビニル樹脂系壁紙(以下、壁紙チップともいう。)をストックし、壁紙チップをせん断式粉砕装置20に供給するものである。供給装置1とせん断式粉砕装置20の間の配管2を通って吸引ファン3の吸引力により空気と共に壁紙チップがせん断式粉砕装置20に供給される。壁紙チップは、最大長さが10〜20mm程度の大きさに粗破砕されていることが好ましい。壁紙チップは、ロール状あるいはシート状の壁紙を、例えば1軸破砕機を搭載した破砕装置を利用して細片化することにより得られる。本実施の形態においては、破砕装置は前段の処理として供給装置1の前段に接続してもよいし、或いは、破砕装置は、この工程とは異なる敷地内に独立に設置されていてもよい。
【0024】
最大長さが10〜20mm程度の大きさに粗破砕されている壁紙チップは、せん断式粉砕装置20により直径が1.0mm以上2.0mm以下の範囲の所定の粒度を有する塩化ビニル樹脂粉体とパルプの混合粉に粉砕される。粉砕工程の詳細については、後で図2、3を参照して説明する。所定の粒度に粉砕された粉砕物である混合粉は空気と共に、せん断式粉砕装置20から配管4を通ってサイクロン5の吸気口5−1から吸い込まれ、排出口5−2から回転篩式分離装置30に供給される。回転篩式分離装置30に供給された混合粉は回転撹拌されながら塩化ビニル樹脂粉体とパルプに分離される。比重の小さい粉体であるパルプは、配管6を通って吸引装置を備えるバグフィルター17に吸引され、パルプ回収タンク18に回収される。
【0025】
一方、比重の大きい粉体である塩化ビニル樹脂粉体は、回転篩式分離装置30の篩目を通過して、回転篩式分離装置30の下方に配設されている比重分離装置40に供給される。篩目を通過した塩化ビニル樹脂粉体は、回転篩式分離装置30の下方に配設されている比重分離装置40に自然落下により供給される(便宜上、図1中で回転篩式分離装置30から比重分離装置40に向う一点鎖線の矢で表す。)が、詳細については後で図4、5を参照して説明する。


【0026】
比重分離装置40に投入された比重の大きい粉体である塩化ビニル樹脂粉体には、比重の小さい粉体であるパルプが付着している。比重分離装置40で分離された比重の小さい粉体であるパルプは、配管6に接続する配管7を通って吸引装置を備えるバグフィルター17に吸引され、パルプ回収タンク18に回収される。ここまでの工程では、比重の小さい粉体であるパルプが分離除去されてはいるが、依然として床材などの再生資源として実用化に耐える塩化ビニル樹脂粉体としては不十分である。したがって、更に比重の大きい粉体である塩化ビニル樹脂粉体に付着する比重の小さい粉体であるパルプを除去するために、塩化ビニル樹脂粉体は、配管8を通って吸引ファン10の吸引力により空気と共に第一風力分離装置50に供給される。比重分離装置40で比重の大きい粉体である塩化ビニル樹脂粉体から比重の小さい粉体であるパルプを分離する工程の詳細については、後で図4、5を参照して説明する。
【0027】
第一風力分離装置50に空気と共に供給される塩化ビニル樹脂粉体は、比重の小さい粉体であるパルプと比重の大きい粉体である塩化ビニル樹脂粉体に分離される。分離されたパルプは、空気の流れにより第一風力分離装置50の上方に舞い上がり、配管6に接続する配管11を通って吸引装置を備えるバグフィルター17に吸引され、パルプ回収タンク18に回収される。一方、比重の小さい粉体であるパルプが分離除去された塩化ビニル樹脂粉体は、自重により第一風力分離装置50の下方に落下する。第一風力分離装置50で得られる塩化ビニル樹脂粉体は、床材などの再生資源として実用化に耐えるが、更に、第二風力分離装置60で微量に付着する比重の小さい粉体であるパルプを分離除去することにより、床材などの再生資源として品質の優れた塩化ビニル樹脂粉体を得ることができる。
【0028】
自重により第一風力分離装置50の下方に落下する塩化ビニル樹脂粉体は、配管12を通って吸引ファン13の吸引力により空気と共に第二風力分離装置60に供給され、比重の小さい粉体であるパルプと比重の大きい粉体である塩化ビニル樹脂粉体に分離される。分離されたパルプは、空気の流れにより第二風力分離装置60の上方に舞い上がり、配管6に接続する配管14を通って吸引装置を備えるバグフィルター17に吸引され、パルプ回収タンク18に回収される。一方、比重の小さい粉体であるパルプが分離除去された塩化ビニル樹脂粉体は、自重により第二風力分離装置60の下方に落下する。落下した塩化ビニル樹脂粉体は、第二風力分離装置60の下方に設置する傾斜台を滑り落ちて(便宜上、図1中で第二風力分離装置60から塩化ビニル樹脂粉体回収タンク16に向う一点鎖線の矢で表す。)塩化ビニル樹脂粉体回収タンク16に回収される。第一風力分離装置50及び第二風力分離装置60による分離工程についての詳細は、後で図6を参照して説明する。
【0029】
図2は、図1に示す分離回収する工程に組み込まれたせん断式粉砕装置20の概念図であり、図3は、実施の形態に係るせん断式粉砕装置20の要部断面図である。図面を参照しながら、せん断式粉砕装置20により最大長さが10〜20mm程度の大きさに粗破砕されている壁紙チップが、直径が1.0mm以上2.0mm以下の範囲の所定の粒度を有する塩化ビニル樹脂粉体とパルプの混合粉になる工程について説明する。本発明に係るせん断式粉砕装置20は、壁紙チップを投入する投入口201と、粉砕されて得られた塩化ビニル樹脂粉体とパルプからなる混合粉を排出する排出口202を有するケーシング208により粉砕室209が形成される。粉砕室209内にローター203とブレード204から構成される回転刃205がケーシング208に回転自在に支持されている。固定刃206は、回転刃205と協働して壁紙チップをせん断するようにケーシング208側に固定配置されている。回転刃205の先端軌跡に沿うように円弧状にパンチングスクリーン207がケーシング208に設けられている。このようなせん断粉砕装置としては、市販のものを利用することができる。
【0030】
本発明においては、パンチングスクリーン207のパンチング直径は1.0mm以上2.0mm以下である。パンチング直径が2.0mmを超えると、床材などの再生資源として実用化に耐える塩化ビニル樹脂粉体を得るに適した塩化ビニル樹脂粉体とパルプからなる混合粉とすることができない。また、パンチング直径が1.0mmより小さいと粉砕処理能力が落ちるので好ましくない。
【0031】
投入口201から投入される壁紙チップは、粉砕室209内で回転刃205と固定刃206に作用するせん断力が粉砕力となって粉砕され、パンチング直径以下に粉砕された混合粉はパンチングスクリーン207の穴を通過して排出口202に排出される。パンチング直径を超える粉砕物は、パンチングスクリーン207に沿って回転刃205により連れ回され繰り返し回転刃205と固定刃206に作用するせん断力によって粉砕され、最終的に粒度のそろった混合粉の全量が排出される。混合粉の粒度はパンチング直径の大きさに規制される。したがって、パンチングスクリーン207のパンチング直径を1.0mm以上2.0mm以下の所定の直径とする場合、得られる塩化ビニル樹脂粉体とパルプからなる混合粉は、直径が1.0mm以上2.0mm以下の範囲の所定の粒度を有することになる。パンチング穴を通過した混合粉は、直径が1.0mm以上2.0mm以下の範囲の所定の粒度の塩化ビニル樹脂粉体と所定の粒度の塩化ビニル樹脂粉体にふわふわとした綿状のパルプが纏わりついている状態となっている。本発明においては、パンチングスクリーン207のパンチング直径を1.5mmとした場合、最も好ましい結果が得られている。
【0032】
本発明に係るせん断式粉砕装置20は、最大長さが10〜20mmに粗破砕された壁紙チップを投入口201から投入し、モーターMにより回転する回転刃205の回転数を1,500〜2,500rpm程度とし、パンチング直径が1.0mm以上2.0mm以下であるパンチングスクリーン207とした場合、150〜270kg/時程度の粉砕処理能力がある。排出口202から排出される塩化ビニル樹脂粉体とパルプからなる混合粉は、空気通路210から配管4を通ってサイクロン5に吸い込まれ回転篩式分離装置30に供給される。
【0033】
図4図5を参照しながら、第一分離工程である回転篩式分離装置30による分離工程と第二分離工程である比重分離装置40による分離工程について説明する。粉砕装置20から排出される塩化ビニル樹脂粉体とパルプからなる混合粉は、円筒型の回転篩31を備える回転篩式分離装置30に供給される。配管4を通ってサイクロン5の吸気口5−1から吸い込まれ、ロータリーバルブ5−2で概ね1秒間当たり2〜3回転程度の回転数で定量排出される混合粉は、排出口5−3を通って供給口33から回転篩31に供給される。回転篩31は、供給口33側が排出口34側より高い位置になるよう傾斜した状態で支柱36に支持されている。その傾きは水平に対して概ね25〜35°である。実施の形態における回転篩式分離装置30は、概ね150〜270kg/時間の処理能力となるように調整されている。
【0034】
回転篩31は駆動ローラ35により毎分25〜35回転の回転速度で回転し、回転篩31に供給される混合粉が回転撹拌される。混合粉は、直径が1.0mm以上2.0mm以下の範囲の所定の粒度の塩化ビニル樹脂粉体とこの塩化ビニル樹脂粉体にふわふわとした綿状のパルプが纏わりついた状態となっているので、回転撹拌されることにより、混合粉から比重の小さい粉体である綿状のパルプが分離し舞い上がる。回転篩31はその内壁に回転に伴い混合粉を持ち上げることができる撹拌板32を備えることが好ましい。回転篩31が概ね半回転したところで持ち上げられた混合粉が滑り落ちて、混合粉から綿状のパルプが分離して舞い上がり易くなる。舞い上がった比重の小さい粉体である綿状のパルプは、排出口34に連結する配管6を通って吸引装置を備えるバグフィルター17に吸引され、パルプ回収タンク18に回収される。吸引装置を備えるバグフィルター17の吸引能力は概ね1秒間当たり45〜50mに調整されている。混合粉の25〜35質量%のパルプを分離回収することができる。混合粉の65〜75質量%の塩化ビニル樹脂粉体が回転篩31の篩目を通過するが、この塩化ビニル樹脂粉体には比重の小さい粉体であるパルプが概ね10質量%程度付着している。
【0035】
比重の大きい粉体である塩化ビニル樹脂粉体は回転篩31の篩目を通過する。本発明においては、比重の大きい粉体である塩化ビニル樹脂粉体の粒度は、直径が1.0mm以上2.0mm以下の範囲の所定の粒度であることが必須である。せん断式粉砕装置20からサイクロン5を経て回転篩式分離装置30に供給される混合粉の粒度は、基本的には直径が1.0mm以上2.0mm以下の範囲の所定の粒度を有するので、回転篩31の篩目開きは2.0mmを多少超えてもよいが、安全を期するために、回転篩31の篩目開きは1.0mm〜2.0mmであることが好ましい。
【0036】
回転篩31の篩目を通過した比重の大きい粉体である塩化ビニル樹脂粉体は、回転篩31の下に設けられた粉体受け容器37に一時的に収容される。粉体受け容器37の底部には、回転篩31の篩目を通過して落ちてきた比重の大きい粉体である塩化ビニル樹脂粉体を粉体受け容器37の中央部に集めるスクリューコンベア38が配置されている。スクリューコンベア38は中央部に塩化ビニル樹脂粉体を集めるように構成されている。符号39は円筒状のガイド管であり、後記する比重分離装置40の粉体投入口43に連結している。粉体受け容器37の中央部に集められた塩化ビニル樹脂粉体は、円筒状のガイド管39を通って粉体投入口43から網状振動体42の面上のほぼ中央に自然落下するようになっている。第一分離工程である回転篩式分離装置30から第二分離工程である比重分離装置40に供給される塩化ビニル樹脂粉体の単位時間当たりの量は、スクリューコンベア38の回転速度に依存する。スクリューコンベアの回転速度は概ね5〜10回転/秒に調整されており、80〜180kg/時の塩化ビニル樹脂粉体が回転篩式分離装置30から 比重分離装置40に供給される。
【0037】
第二分離工程で使用する比重分離装置40は、図5に示すように網状振動体42が適宜の傾き(上端方向は図面向かって右側であり、下端方向は図面向かって左側である。)をもってケーシング41内に設置されている。傾斜の程度は、水平に対して概ね30〜35°である。網状振動体42は、偏心クランク(図示せず)の偏心運動により図5に矢印で示すように上端及び下端方向に振動可能とされている。網状振動体42の振動周期は特に制限はないが概ね40〜50サイクル/秒である。図4においては、ケーシング41内に傾斜して設置された網状振動体42は図面手前側が下端方向で、図面奥側が上端方向である。網状振動体42の下方にファン装置46が設置されている。ファン装置46は上方に設けられた網状振動体42の下面に空気を送る作用をなし、空気の風量は概ね1.5〜2.5m/秒に調整されている。網状振動体42としては、網目の細かい軟質網状体によって形成したものでもよいが、この軟質網状体の下面に、この軟質網状体よりも網目が粗く、例えば網目の直径が1〜2mm程度、かつ腰の強い網状体を設置したものであれば、下方から吹き上げられる空気流の整流を行うとともに軟質網状体の補強を行うことができる。
【0038】
図4及び図5で示すように、第二分離工程で使用する比重分離装置40は第一分離工程で使用する回転篩式分離装置30の下方に配設されている。これは、第一分離工程において回転篩31の篩目を通過した比重の大きい粉体である塩化ビニル樹脂粉体を自重による自然落下により網状振動体42の面上に投入するためである。網状振動体42の下方に設置されているファン装置46から空気を網状振動体42面に吹き上げた状態で、回転篩31の篩目を通過した比重の大きい粉体である塩化ビニル樹脂粉体を自然落下により振動している網状振動体42の面上に投入する。自然落下で投入することにより、下方から吹き上げる空気流により比重の小さい粉体であるパルプが分離しやすくなる。
【0039】
前記したように、回転篩式分離装置30から比重分離装置40に供給される塩化ビニル樹脂粉体には比重の小さい粒子であるパルプが付着している。網上振動体42面に自重により自然落下した塩化ビニル樹脂粉体は、網上振動体42の振動により振動力を受け、塩化ビニル樹脂粉体に付着している比重の小さい粉体であるパルプは分離し、更に網状振動体42面に吹き上げられる空気流によって浮遊せしめられる。分離、浮遊せしめられた比重の小さい粉体であるパルプは、第一排出口44に連結する配管7を通って吸引装置を備えるバグフィルター17に吸引され、パルプ回収タンク18に回収される。
【0040】
一方、比重の小さい粉体であるパルプが分離した比重の大きい粉体である塩化ビニル樹脂粉体は、網状振動体42の振動力をより大きく伝達されることによって上端方向に移動して、網状振動体42の上端に設けられている第二排出口45から排出される。第二分離工程で得られる塩化ビニル樹脂粉体は、混合粉の60〜70質量%である(混合粉を100とした場合の回収率。)。この塩化ビニル樹脂粉体には比重の小さい粉体であるパルプが5質量%程度付着している。また、パルプが分離しない塩化ビニル樹脂は、パルプが分離した塩化ビニル樹脂に比べて比重が小さいので、空気流の影響を受け、網状振動体42の影響を受けにくく網状振動体42の下端方向に移動して配管8を通って配管4を通る混合粉と合流して再び回転篩式分離装置30に戻されるようになっている。
【0041】
第二分離工程で得られる塩化ビニル樹脂粉体は、第二排出口45から排出され、第二排出口45に連結する配管8を通って第三分離工程である第一風力分離装置50に供給される。図6を参照しながら、第一風力分離装置50を用いた第三分離工程について説明する。本実施形態に係る第一風力分離装置50は、主として筒状体51、流入開口52、傾斜板53、流出開口54、排出開口55を備えている。
【0042】
筒状体51は、その軸が上下方向に伸びており断面形状は円形が好ましいが、楕円や正方形であってもよい。流入開口52から流入する空気が傾斜板53に衝突し安定した上昇気流となるためには、筒状体51の縦横比は5以上が好ましい。例えば、内径が300〜1200mmとすれば高さは1500〜8000mm程度とすることができる。筒状体51の下部には、内径が50〜200mm程度の流入開口52が設けられ、流入開口52には流入管52aが接続されている。流入管52aはその先端が配管8に連結している。流入管52aには風量を調整するダンパD1が設けられている。
【0043】
筒状体51の底部は排出開口55となっている。排出開口55の下には、落下してくる比重の大きい粉体である塩化ビニル樹脂粉体を受ける受け皿56が据えられている。排出開口55と受け皿56の間には、後工程である第二風力分離装置60に接続する配管12が嵌め込まれている。筒状体51の上部には内径が50〜200mm程度の流出開口54が設けられている。流出開口54には流出管54aが接続されている。流出管54aはその先端が配管11に接続している。流入開口52と対向する筒状体51の内側壁には、上部よりも下部が流入開口52に近づくように傾斜した傾斜板53が設けられている。傾斜板53が筒状体51の内側壁となす角θ1は50〜40°(傾斜板53が水平方向とのなす角は40〜50°)で好ましい結果が得られる。パルプと塩化ビニル樹脂粉体が最も効率よく分離し、且つ塩化ビニル樹脂粉体が流出開口54から流出しないように調整して決める。
【0044】
第二分離工程で得られる塩化ビニル樹脂粉体は、第二排出口45から排出され、第二排出口45に連結する配管8を通って空気と共に第一風力分離装置50に供給される。塩化ビニル樹脂粉体は、吸引ファン10と流入管52aに設けられたダンパD1により25〜35m/秒程度の流量に調整されて、流入開口52から筒状体51内に流入する。空気と共に筒状体51内に流入する塩化ビニル樹脂粉体は、傾斜板53に衝突し、比重の小さい粉体であるパルプが塩化ビニル樹脂粉体から分離する。分離したパルプは、空気の流れにより第一風力分離装置50の上方に舞い上がり、流出開口54から流出し流出管54aに接続している配管11、配管6を通って吸引装置を備えるバグフィルター17に吸引され、パルプ回収タンク18に回収される。
【0045】
一方、比重の小さい粉体であるパルプが分離除去された塩化ビニル樹脂粉体は、自重により第一風力分離装置50の下方の受け皿56に落下する。第三分離工程で得られる塩化ビニル樹脂粉体は、混合粉の55〜65質量%である(混合粉を100とした場合の回収率。)。塩化ビニル樹脂粉体には比重の小さい粉体であるパルプが約1質量%程度付着しているが、嵩比重は0.5〜0.6であり、床材などの再生資源として実用化に耐える。更に、第二風力分離装置60で塩化ビニル樹脂粉体に付着する比重の小さい粉体であるパルプを分離除去することにより、床材などの再生資源として品質の優れた塩化ビニル樹脂粉体を得ることができる。
【0046】
第四分離工程で使用する第二風力分離装置60の構造は、傾斜板63が筒状体61の内側壁となす角θ2を除いては実質的に第二風力分離装置50と同じ構造である。第一風力分離装置50の受け皿56に落下する塩化ビニル樹脂粉体は、配管12を通って空気と共に第二風力分離装置60に供給される。塩化ビニル樹脂粉体は、吸引ファン13と流入管62aに設けられたダンパD2により25〜35m/秒程度の流量に調整されて、流入開口62から筒状体61内に流入する。空気と共に筒状体61内に流入する塩化ビニル樹脂粉体は、傾斜板63に衝突し、比重の小さい粉体であるパルプが塩化ビニル樹脂粉体から分離する。傾斜板63が筒状体61の内側壁となす角θ2は20〜10°(傾斜板63が水平方向とのなす角は70〜80°)で好ましい結果が得られる。
【0047】
分離したパルプは、空気の流れにより第二風力分離装置60の上方に舞い上がり、流出開口64から流出し流出管64aに接続している配管14、配管6を通って吸引装置を備えるバグフィルター17に吸引され、パルプ回収タンク18に回収される。一方、比重の小さい粉体であるパルプが分離除去された比重の大きい粉体である塩化ビニル樹脂粉体は、自重により第二風力分離装置60の下方の受け皿66に設置された傾斜台15上を滑り落ちて塩化ビニル樹脂粉体回収タンク16に回収される。第四分離工程で得られる塩化ビニル樹脂粉体は、混合粉の約54〜64質量%である(混合粉を100とした場合の回収率。)。したがって、36〜46質量%のパルプが回収されることになる。回収タンク16に回収された塩化ビニル樹脂粉体を倍率200倍の顕微鏡で観察しても、塩化ビニル樹脂成分の表面にパルプの存在は確認できない。嵩比重は0.7を超えており、床材などの再生資源として品質の優れた塩化ビニル樹脂粉体を得ることができる。
【0048】
本発明においては、嵩比重は、JISK−6721に準じて測定する値である。塩化ビニル樹脂粉体に酸化カルシウムなどの顔料を添加調整して床材などに利用することができる。また、回収したパルプは猫砂として利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、製造工程から発生する不具合品、デザイン等の変更品、長期在庫の処分品などの事情により発生する、塩化ビニル樹脂系廃棄物を床材などの再資源化に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
20・・・せん断式粉砕装置、201・・・投入口、202・・・排出口、205・・・回転刃、206・・・固定刃、207・・・パンチングスクリーン、208・・・ケーシング、209・・・粉砕室、30・・・回転篩式分離装置、31・・・回転篩、40・・・比重分離装置、41・・・ケーシング、42・・・網状振動体、46・・・ファン装置、50・・・第一風力分離装置、60・・・第二風力分離装置、51、61・・・筒状体、52、62・・・流入開口、53、63・・・傾斜板、54、64・・・流出開口、55,65・・・排出開口、17・・・吸引装置を備えるバグフィルター
図1
図2
図3
図4
図5
図6