特許第5871281号(P5871281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871281
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】容量制御弁
(51)【国際特許分類】
   F04B 27/18 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
   F04B27/18 A
   F04B27/18 B
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-547748(P2012-547748)
(86)(22)【出願日】2011年11月4日
(86)【国際出願番号】JP2011075460
(87)【国際公開番号】WO2012077439
(87)【国際公開日】20120614
【審査請求日】2014年5月20日
(31)【優先権主張番号】特願2010-274162(P2010-274162)
(32)【優先日】2010年12月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100116506
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 義宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116757
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 英雄
(74)【代理人】
【識別番号】100123216
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 祐一
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(72)【発明者】
【氏名】二口 雅行
(72)【発明者】
【氏名】福留 康平
(72)【発明者】
【氏名】森脇 研児
(72)【発明者】
【氏名】葉山 真弘
(72)【発明者】
【氏名】神崎 敏智
(72)【発明者】
【氏名】長 亮丞
【審査官】 田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/114841(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/090760(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/119380(WO,A1)
【文献】 特開2003−322086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を吐出する吐出室と流体の吐出量を制御する制御室とを連通させる吐出側通路と、
前記吐出側通路の途中に形成された第1弁室と、
流体を吸入する吸入室と前記制御室とを連通させる吸入側通路と、
前記吸入側通路の途中に形成された第2弁室と、
前記第1弁室にて前記吐出側通路を開閉する第1弁部及び前記第2弁室にて前記吸入側通路を開閉する第2弁部を一体的に有しその往復動によりお互いに逆向きの開閉動作を行う弁体と、
前記吸入側通路の途中において前記第2弁室よりも前記制御室寄りに形成された第3弁室と、
前記第3弁室内に配置されてその伸長により前記第1弁部を開弁させる方向に付勢力を及ぼすと共に周囲の圧力増加に伴って収縮する感圧体と、
前記感圧体の伸縮方向の自由端に設けられて環状の座面を有するアダプタと、
前記第3弁室にて前記弁体と一体的に移動すると共に前記アダプタの座面との係合及び離脱により前記吸入側通路を開閉する環状の係合面を有する第3弁部と、
前記弁体に対して前記第1弁部を閉弁させる方向に電磁駆動力を及ぼすソレノイドを備え、
前記アダプタと前記第3弁部との間には、前記アダプタ及び前記第3弁部を開弁させる方向に作用する付勢手段を設けることを特徴とする容量制御弁。
【請求項2】
付勢手段がコイルスプリングからなることを特徴とする請求項1記載の容量制御弁。
【請求項3】
付勢手段が前記アダプタの内周側に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の容量制御弁。
【請求項4】
付勢手段が前記アダプタの外周側に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の容量制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体の容量又は圧力を可変制御する容量制御弁に関し、特に、自動車等の空調システムに用いられる容量可変型圧縮機等の吐出量を圧力負荷に応じて制御する容量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の空調システムに用いられる斜板式容量可変型圧縮機は、エンジンの回転力により回転駆動される回転軸、回転軸に対して傾斜角度を可変に連結された斜板、斜板に連結された圧縮用のピストン等を備え、斜板の傾斜角度を変化させることにより、ピストンのストロークを変化させて冷媒ガスの吐出量を制御するものである。
この斜板の傾斜角度は、冷媒ガスを吸入する吸入室の吸入圧力、ピストンにより加圧した冷媒ガスを吐出する吐出室の吐出圧力、斜板を収容した制御室(クランク室)の制御室圧力を利用しつつ、電磁力により開閉駆動される容量制御弁を用いて、制御室内の圧力を適宜制御し、ピストンの両面に作用する圧力のバランス状態を調整することで連続的に変化させ得るようになっている。
【0003】
このような容量制御弁としては、図6に示すように、吐出室と制御室とを連通させる吐出側通路73、77、該吐出側通路の途中に形成された第1弁室82、吸入室と制御室とを連通させる吸入側通路71、72、吸入側通路の途中に形成された第2弁室(作動室)83、第1弁室82内に配置されて吐出側通路73、77を開閉する第1弁部76と第2弁室83内に配置されて吸入側通路71、72を開閉する第2弁部75とが一体的に往復動すると同時にお互いに逆向きに開閉動作を行うように形成された弁体81、吸入側通路71、72の途中において制御室寄りに形成された第3弁室(容量室)84、第3弁室内に配置されて伸長(膨張)する方向に付勢力を及ぼすと共に周囲の圧力増加に伴って収縮する感圧体(ベローズ)78、感圧体の伸縮方向の自由端に設けられ環状の座面を有する弁座体(係合部)80、第3弁室84にて弁体81と一体的に移動すると共に弁座体80との係合及び離脱により吸入側通路を開閉し得る第3弁部(開弁連結部)79、弁体81に電磁駆動力を及ぼすソレノイドS等を備えたものが知られている(以下、「従来技術1」という。例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
そして、この容量制御弁70では、容量制御時において容量可変型圧縮機にクラッチ機構を設けなくても、制御室圧力を変更する必要が生じた場合には、吐出室と制御室とを連通させて制御室内の圧力(制御室圧力)Pcを調整できるようにしたものである。また、容量可変型圧縮機が停止状態において制御室圧力Pcが上昇した場合には、第3弁部(開弁連結部)79を弁座体(係合部)80から離脱させて吸入側通路を開放し、吸入室と制御室とを連通させるような構成となっている。
【0005】
ところで、斜板式容量可変型圧縮機を停止して、長時間放置した後に起動させようとした場合、制御室(クランク室)には液冷媒(放置中に冷却されて冷媒ガスが液化したもの)が溜まるため、この液冷媒を排出しない限り冷媒ガスを圧縮して設定とおりの吐出量を確保することができない。
起動直後から所望の容量制御を行うには、制御室(クランク室)の液冷媒をできるだけ素早く排出させる必要がある。
【0006】
従来技術1の容量制御弁70では、先ず、ソレノイドSがオフとされ、第2弁部75が連通路(吸入側通路)71、72を閉塞した状態で容量可変型圧縮機が長時間停止状態に放置されると、容量可変型圧縮機の制御室(クランク室)には液冷媒が溜まった状態となっている。容量可変型圧縮機の停止時間が長い場合には、容量可変型圧縮機の内部は均圧となり、制御室圧力Pcは、容量可変型圧縮機の駆動時における制御室圧力Pc及び吸入圧Psよりも遙かに高い状態となる。
この状態で、ソレノイドSがオンとされて弁体81が起動し始めると、第1弁部76が閉弁方向に移動すると同時に第2弁部75が開弁方向に移動するとともに、容量可変型圧縮機の制御室の液冷媒が排出される。そして、制御室圧力Pcが感圧体78を収縮させて、第3弁部79を弁座体80から離脱させて開弁させる。そのとき、第2弁部75が開弁して連通路(吸入側通路)72、71を開放した状態にあるため、制御室内の液冷媒が連通路(吸入側通路)74、72、71から容量可変型圧縮機の吸入室に排出される。そして、制御室圧力Pcが所定レベル以下になると、感圧体78は弾性復帰して伸長し、弁座体80は第3弁部79と係合して閉弁し、連通路(吸入側通路)74、72、71を閉塞するようになっている。
【0007】
図7は、図6における第3弁部79の流路面積の要因を説明するための図であって、図6を時計回りに90゜回転させた状態を示している。
図7に示すように、従来技術1において、第3弁部79の流路面積には、第3弁部シール径D、弁座体テーパ角度θ、第3弁部球半径r及び第3弁部ストロークstが要因となっている。
そこでまず、図8を参照しながら第3弁部シール径Dについて検討すると、第3弁部79の力のつり合いは、ベローズ有効面積Aと第3弁部シール面積BがA>Bの場合、
(A−B)Pc+BPs−Fb=0→Pc=(Fb−BPs)/(A−B)
となり、制御室圧力Pcがこれ以上になると第3弁部79が開弁し、制御不可となることから、制御室圧力Pcに依存しないようにするため、ベローズ有効径と第3弁部79のシール径Dを同じに設定しなければならず、結局、シール径Dはベローズ有効径からの制約で変更することはできなかった。
次に、図9を参照しながら第3弁部79のストロークstについて検討すると、第3弁部79がストロークした場合の力のつり合いは、
k・st=(A−B)Pc+BPs−Fbから、A=Bの場合、
st=(BPs−Fb)/k
となる。この式においてベローズのばね力Fbは、
Fb=(A−C)Pc+CPs+(Fsol−Fspr1)
C:第1弁部76のシール面積
Fsol:ソレノイド推力
Fspr1:ソレノイドに装着されたコイルスプリングの開弁ばね力
となり、ベローズのばね力Fbは制御室圧力Pc、吸入室圧力Ps及びソレノイド特性で決まるから、これらの制御弁特性を変更せずに第3弁部79のストロークstを変更できないと考えられていた。
これらのことから、従来、第3弁部79の流路面積の改善は、もっぱら、第3弁部79の半径r及び弁座体80のテーパ角度θを最適化することに傾注されていたが、第3弁部79を開弁できる構造でない旧来の容量制御弁(制御室と吸入室とを直接連通する固定オリフィスのみを介して排出する容量制御弁)よりは早く液冷媒を排出できるものの、その排出能力については限界があった。
【0008】
そこで、図10に示すように、第3弁部79の側面に補助連通路85を設けたものが本出願人により提案されている(以下、「従来技術2」という。例えば、特許文献2参照。)。
従来技術2のものは、液冷媒の排出を早めることは可能であるが、運転中において、常に、制御室(クランク室)と吸入室とが連通した状態となるため、制御室(クランク室)から吸入室への流れが発生し、容量可変型圧縮機の制御時において、斜板の制御速度に対し悪影響を及ぼすという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2006/090760号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007/119380 号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術1及び2の有する問題点を解決するためになされたものであって、容量制御弁の制御弁特性を変化させることなく、容量可変型圧縮機の起動時における制御室の液冷媒の排出機能を増大させるとともに、通常制御時(最大容量運転時と最小容量運転時の間)及び最小容量運転時における斜板の制御速度の向上を図ることができる容量制御弁を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明の容量制御弁は、第1に、
流体を吐出する吐出室と流体の吐出量を制御する制御室とを連通させる吐出側通路と、
前記吐出側通路の途中に形成された第1弁室と、
流体を吸入する吸入室と前記制御室とを連通させる吸入側通路と、
前記吸入側通路の途中に形成された第2弁室と、
前記第1弁室にて前記吐出側通路を開閉する第1弁部及び前記第2弁室にて前記吸入側通路を開閉する第2弁部を一体的に有しその往復動によりお互いに逆向きの開閉動作を行う弁体と、
前記吸入側通路の途中において前記第2弁室よりも前記制御室寄りに形成された第3弁室と、
前記第3弁室内に配置されてその伸長により前記第1弁部を開弁させる方向に付勢力を及ぼすと共に周囲の圧力増加に伴って収縮する感圧体と、
前記感圧体の伸縮方向の自由端に設けられて環状の座面を有するアダプタと、
アダプタ内に移動可能に設けられた液冷媒排出用弁体と、
前記第3弁室にて前記弁体と一体的に移動すると共に前記アダプタの座面及び液冷媒排出用弁体との係合及び離脱により前記吸入側通路を開閉する環状の係合面を有する第3弁部と、
前記弁体に対して前記第1弁部を閉弁させる方向に電磁駆動力を及ぼすソレノイドを備え、
前記アダプタと第3弁部との間に開弁方向に作用する付勢する付勢手段を設けることを特徴としている。
【0012】
第1の特徴により、容量制御弁の制御弁特性を変化させることなく、アダプタと第3弁部との間の開口面積を増大させるとともに吸入圧力がより低下するまで開弁状態を維持させることができ、容量可変型圧縮機の起動時における制御室の液冷媒の排出機能を増大させるとともに、通常制御時(最大容量運転時と最小容量運転時の間)及び最小容量運転時における斜板の制御速度の向上を図った容量制御弁を提供することができる。
【0013】
また、本発明の容量制御弁は、第2に、第1の特徴において、付勢手段がコイルスプリングからなることを特徴としている。
第2の特徴により、付勢手段の製造及び付勢力設定が容易であり、また、コイルのピッチを大きくすることで液冷媒の流れを阻害することもない。
【0014】
また、本発明の容量制御弁は、第3に、第1または第2の特徴において、付勢手段が前記アダプタの内周側に配置されていることを特徴としている。
第3の特徴により、アダプタの内部空間を効率良く利用でき、アダプタ及び第3弁部をコンパクトに形成できる。
【0015】
また、本発明の容量制御弁は、第4に、第1または第2の特徴において、付勢手段が前記アダプタの外周側に配置されていることを特徴としている。
第4の特徴により、付勢手段の取付け及び交換作業を容易におこなうことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
(1)アダプタと第3弁部との間に開弁方向に作用する付勢する付勢手段を設けることにより、容量制御弁の制御弁特性を変化させることなく、アダプタと第3弁部との間の開口面積を増大させるとともに吸入圧力がより低下するまで開弁状態を維持させることができ、容量可変型圧縮機の起動時における制御室の液冷媒の排出機能を増大させるとともに、通常制御時(最大容量運転時と最小容量運転時の間)及び最小容量運転時における斜板の制御速度の向上を図った容量制御弁を提供することができる。
【0017】
(2)付勢手段がコイルスプリングから形成されることにより、付勢手段の製造及び付勢力設定が容易であり、また、コイルのピッチを大きくすることで液冷媒の流れを阻害することもがない。
【0018】
(3)付勢手段が前記アダプタの内周側に配置されていることにより、アダプタの内部空間を効率良く利用でき、アダプタ及び第3弁部をコンパクトに形成できる。
【0019】
(4)付勢手段が前記アダプタの外周側に配置されていることにより、付勢手段の取付け及び交換作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る容量制御弁を備えた斜板式容量可変型圧縮機を示す概略構成図である。
図2】本発明に係る容量制御弁の実施形態1を示す正面断面図である。
図3】実施形態1の容量制御弁の要部を拡大し、時計方向に90゜回転させた要部拡大断面図であって、第3弁部がストロークした場合の力のつり合いを説明する図である。
図4】実施形態1の容量制御弁の第3弁部における開口状態を説明する説明図である。
図5】本発明に係る容量制御弁の実施形態2を示す正面断面図である。
図6】従来技術1の容量制御弁を示す正面断面図である。
図7】従来技術1における第3弁部の流路面積の要因を説明するための図であって、図6を時計回りに90゜回転させた状態を示している。
図8】従来技術1における第3弁部のシール径を説明する図である。
図9】従来技術1における第3弁部のストロークを説明する図である。
図10】従来技術2の容量制御弁を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る容量制御弁を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加えうるものである。
【0022】
〔実施形態1〕
この斜板式容量可変型圧縮機Mは、図1に示すように、吐出室11、制御室(クランク室とも称す)12、吸入室13、複数のシリンダ14、シリンダ14と吐出室11とを連通させ吐出弁11aにより開閉されるポート11b、シリンダ14と吸入室13とを連通させ吸入弁13aにより開閉されるポート13b、外部の冷却回路に接続される吐出ポート11c及び吸入ポート13c、吐出室11と制御室12とを連通させる吐出側通路としての連通路15、前述の吐出側通路としての役割及び制御室12と吸入室13とを連通させる吸入側通路としての役割を兼ねる連通路16、吸入側通路としての連通路17等を画定するケーシング10、制御室(クランク室)12内から外部に突出して回動自在に設けられた回転軸20、回転軸20と一体的に回転すると共に回転軸20に対して傾斜角度を可変に連結された斜板21、各々のシリンダ14内に往復動自在に嵌合された複数のピストン22、斜板21と各々のピストン22を連結する複数の連結部材23、回転軸20に取り付けられた被動プーリ24、ケーシング10に組み込まれた本発明の容量制御弁V等を備えている。
また、斜板式容量可変型圧縮機Mには、制御室(クランク室)12と吸入室13とを直接連通する連通路18が設けられており、該連通路18には固定オリフィス19が設けられている。
さらに、この斜板式容量可変型圧縮機Mには、吐出ポート11c及び吸入ポート13cに対して冷却回路が接続され、この冷却回路には、コンデンサ(凝縮器)25、膨張弁26、エバポレータ(蒸発器)27が順次に配列して設けられている。
【0023】
容量制御弁Vは、図2に示すように、金属材料又は樹脂材料により形成されたボデー30、ボデー30内に往復動自在に配置された弁体40、弁体40を一方向に付勢する感圧体50、ボデー30に接続されて弁体40に電磁駆動力を及ぼすソレノイド60等を備えている。
【0024】
ソレノイド60は、ボデー30に連結されるケーシング62、一端部が閉じたスリーブ63、ケーシング62及びスリーブ63の内側に配置された円筒状の固定鉄芯64、固定鉄芯64の内側において往復動自在にかつその先端が弁体40に連結されて連通路44を形成する駆動ロッド65、駆動ロッド65の他端側に固着された可動鉄芯66、第1弁部41を開弁させる方向に可動鉄芯66を付勢するコイルスプリング67、スリーブ63の外側にボビンを介して巻回された励磁用のコイル68等を備えている。
【0025】
ボデー30は、吐出側通路として機能する連通路31、32、33、後述する弁体40の連通路44と共に吸入側通路として機能する連通路33、34、吐出側通路の途中に形成された第1弁室35、吸入側通路の途中に形成された第2弁室36、弁体40をガイドするガイド通路37、吐出側通路及び吸入側通路の制御室12寄りに形成された第3弁室38等を備えている。また、ボデー30には、第3弁室38を画定すると共にボデー30の一部を構成する閉塞部材39が螺合により取り付けられている。
【0026】
すなわち、連通路33及び第3弁室38は、吐出側通路及び吸入側通路の一部を兼ねるように形成され、連通路32は、第1弁室35と第3弁室38とを連通させると共に弁体40を挿通させる(流体が流れる隙間を確保しつつ弁体40を通す)弁孔を形成している。なお、連通路31、33、34は、それぞれ周方向に放射状に配列して複数(例えば、90度の間隔をおいて4個)形成されている。
そして、第1弁室35において、連通路(弁孔)32の縁部には、後述する弁体40の第1弁部41が着座する座面35aが形成され、又、第2弁室36において、後述する固定鉄芯64の端部には、後述する弁体40の第2弁部42が着座する座面36aが形成されている。
【0027】
弁体40は、略円筒状に形成されて一端側に第1弁部41、他端側に第2弁部42、第1弁部41を挟んで第2弁部42と反対側に後付けにより連結された第3弁部43、その軸線方向において第2弁部42から第3弁部43まで貫通し吸入側通路として機能する連通路44等を備えている。
第3弁部43は、第1弁室35から第3弁室38に向かって縮径した状態から末広がり状に形成されて連通路(弁孔)32を挿通すると共に、その外周縁において後述するアダプタ53と対向する環状の係合面43aを備えている(図3も参照。)。
ここで、第3弁部43のアダプタ53との係合面43aは、図3に示すように、外向きに凸状をなすと共に曲率半径Rをなす球面状に形成され、かつ、後述する付勢手段48の装着面である端面47は平面状に形成されている。
【0028】
図2において、感圧体50は、ベローズ51及びアダプタ53等を備えている。ベローズ51は、その一端が閉塞部材39に固定され、その他端(自由端)にアダプタ53を保持している。
アダプタ53は、図3に示すように、第3弁部43に先端が係合する断面が略コ字状をした中空円筒形部53aとベローズ51内に膨出する膨出部53cを有し、中空円筒形部53aの先端に第3弁部43の係合面43aと対向して係合及び離脱する環状の座面53bを備えている。そして、中空円筒形部53aの座面53bは、テーパ面状に形成されている。また、中空円筒形部53aの基部内面53dは略平面状をなしている。
感圧体50は、第3弁室38内に配置されて、その伸長(膨張)により第1弁部41を開弁させる方向に付勢力を及ぼすと共に周囲(第3弁室38及び弁体40の連通路44内)の圧力増加に伴って収縮して第1弁部41に及ぼす付勢力を弱めるように作動する。
【0029】
図3は、本実施形態1の容量制御弁の要部を拡大した要部拡大断面図であって、第3弁部がストロークした場合の力のつり合いを説明する図である。
第3弁部43の端面47とアダプタ53の中空円筒形部53aの基部内面53dとの間には、第3弁部43及びアダプタ53を開弁させる方向に作用する付勢手段48が設けられる。付勢手段48は、コイルスプリング等のばね手段から構成され、円周方向に等間隔に複数配置される。その場合、コイルスプリングは液冷媒の排出流路中に位置することから、コイルのピッチは大きく設定されることが望ましい。
【0030】
今、第3弁部43がストロークした場合の力のつり合いを考察するに、stをストークによる変位、kをベローズ51のばね定数とすると、
k・st=(A−B)Pc+BPs+Fspr2−Fb
A:ベローズ有効面積
B:第3弁部シール面積
Pc:制御室圧力
Ps:吸入圧力
Fspr2:付勢手段の開弁ばね力
Fb:ベローズばね力
となる。A=Bの場合、
st=(BPs+Fspr2−Fb)/k
となり、付勢手段48を設けない場合に比較し、同一のPsでは第3弁部43のストロークstが大きくなる。すなわち、付勢手段48を設けた分だけ、第3弁部の開口面積を大きくすることができる。
【0031】
ここで、ベローズ51のばね力Fbについて検討すると、
Fb−(A−C)Pc−CPs−(Fsol−Fspr1)−Fspr2+Fspr2=0
Fb=(A−C)Pc+CPs+(Fsol−Fspr1)
C:第1弁部41のシール面積
Fsol:ソレノイド推力
Fspr1:ソレノイドに装着されたコイルスプリングの開弁ばね力
となり、第3弁部43に付勢手段48を設けてもベローズ51のばね力に変化をもたらすものではないことが確認できた。すなわち、第3弁部43に付勢手段48を設けても、Pc,Psなどの制御特性及びFsol−Fspr1のソレノイド特性に影響を与えるものではないから、従来考えられていた制御弁特性及びソレノイド特性を変更せずに第3弁部79のストロークstを変更できないという考えを一新することができた。
【0032】
上記構成において、コイル68が非通電の状態では、感圧体50及びコイルスプリング67の付勢力により、弁体40は図2中の上側に移動して、第1弁部41が座面35aから離れて連通路(吐出側通路)31、32を開放すると同時に第2弁部42が座面36aに着座して連通路(吸入側通路)34、44を閉塞する。
連通路(吸入側通路)34、44を閉塞した状態で容量可変型圧縮機が長時間停止状態に放置されると、容量可変型圧縮機の制御室(クランク室)12には液冷媒が溜まった状態となり、容量可変型圧縮機の内部は均圧となり、制御室圧力Pcは、容量可変型圧縮機の駆動時における制御室圧力Pc及び吸入圧Psよりも遙かに高い状態となっている。
一方、コイル68が所定電流値(I)以上に通電されると、感圧体50及びコイルスプリング67の付勢力と逆向きに作用するソレノイド60の電磁駆動力(付勢力)により、弁体40は図2中の下側に移動して、第1弁部41が座面35aに着座して連通路(吐出側通路)31,32を閉塞すると同時に第2弁部42が座面36aから離れ連通路(吸入側通路)34、44を開放する。この起動直後において、制御室内の液冷媒が排出されるが、制御室圧力Pcが所定レベル以上であるため、ベローズ51が収縮して、アダプタ53が第3弁部43から離脱して吸入側通路(33、44、34)を開放した状態となり、制御室12内に溜まった液冷媒等が連通路(吸入側通路)33、44、34を経由して吸入室13に排出される。この際、液冷媒等の排出通路の大きさは、固定オリフィス19の開口面積s1に第3弁部43の係合面43aとアダプタ53の座面53bとの開口面積s2を加えたものとなるが、従来技術1に比べ、開口面積s2は付勢手段48による開弁力の分だけ大きいから、排出通路面積を十分に確保することができる。
【0033】
図4は、第3弁部における開口状態を説明する説明図である。
図4において、横軸は吸入圧力Psを、縦軸は第3弁部の開口面積を示しており、Ps制御範囲MAXの左側が通常運転領域である。
制御室の液冷媒等が排出されて制御室圧力Pcが所定レベル以下となると、吸入圧力Psも低下していき、ベローズ51が伸張して、第3弁部43がアダプタ53の座面53bに着座する。
この場合、本発明では、従来技術1に比べ、第3弁部43に付勢手段48を設けたことにより、Fspr2/B だけ第3弁部43が閉弁されることを遅らすことができ、液冷媒の排出時間を長く保持することができる。
なお、付勢手段48のばね力は、第3弁部の閉弁が通常制御領域より安全幅αだけ高い圧力で行われるように設定され、通常制御時の制御速度が遅くならないように配慮されている。
また、上記したように、第3弁部43の開口面積はs2は、従来技術1に比べて、Fspr2の開弁力の分だけ大きくなる。
【0034】
次に、この容量制御弁Vを備えた斜板式容量可変型圧縮機Mが、自動車の空調システムに適用された場合の動作について説明する。
先ず、エンジンの回転駆動力により、伝達ベルト(不図示)及び被動プーリ24を介して回転軸20が回転すると、回転軸20と一体となって斜板21が回転する。斜板21が回転すると、斜板21の傾斜角度に応じたストロークでピストン22がシリンダ14内を往復動し、吸入室13からシリンダ14内に吸入された冷媒ガスが、ピストン22により圧縮されて吐出室11に吐出される。そして、吐出された冷媒ガスは、コンデンサ25から膨張弁26を介してエバポレータ27に供給され、冷凍サイクルを行いながら吸入室13に戻るようになっている。
ここで、冷媒ガスの吐出量は、ピストン22のストロークにより決定され、ピストン22のストロークは、制御室12内の圧力(制御室圧力Pc)により制御される斜板21の傾斜角度によって決定される。
ピストン22の圧縮の際、ピストン22とシリンダ14間のクリアランスからのブローバイガスが制御室12へ常時流れ込み、制御室12の圧力Pcを上昇させようとする。しかし、固定オリフィス19が設けられているため、連通路(吸入側通路)33、44、34が閉じているときでも、制御室12から吸入室に一定量の放圧が行われ、制御室12内の圧力を適正に維持することができる。
【0035】
先ず、ソレノイド60がオフとされ、第2弁部42が連通路(吸入側通路)34,44を閉塞した状態で容量可変型圧縮機が長時間停止状態に放置されると、制御室12には液冷媒が溜まった状態となり、容量可変型圧縮機の内部は均圧となり、制御室圧力Pcは、容量可変型圧縮機の駆動時における制御室圧力Pc及び吸入圧Psよりも遙かに高い状態となっている。
【0036】
この状態で、ソレノイド60がオンとされて弁体40が起動し始めると、第1弁部41が閉弁方向に移動すると同時に第2弁部42が開弁方向に移動する。この起動直後において、制御室内の液冷媒が排出されるが、制御室圧力Pcが所定レベル以上であるため、ベローズ51が収縮して、アダプタ53が第3弁部43から離脱するとともに液冷媒排出用弁体48も開弁して吸入側通路を開放した状態となり、制御室12内に溜まった液冷媒等が連通路(吸入側通路)44、34を経由して吸入室13に排出される。液冷媒排出過程において、吸入圧力Ps及び制御室圧力Pcも低下していく。
そして、制御室12内の液冷媒の排出が終了して、制御室圧力Pcが所定レベル以下になると、感圧体50は弾性復帰して伸長し、アダプタ53は第3弁部43と係合し閉弁する。
この排出過程において、第3弁部43に付勢手段48が設けられていることにより、第3弁部43の開口面積が大きくなり、また、閉弁の時期を遅れることから、液冷媒の排出を十分に行われる。
【0037】
次に、最大吐出量の運転状態では、ソレノイド60(コイル68)が所定電流値(I)で通電されて、可動鉄芯66及び駆動ロッド65は、感圧体50及びコイルスプリング67の付勢力に抗して、第1弁部41が座面35aに着座して連通路(吐出側通路)31,32を閉塞し、第2弁部42が座面36aから離れて連通路(吸入側通路)34,44を開放した状態となる位置に弁体40が移動する。
【0038】
また、通常制御時(最大容量運転と最小容量運転の間)では、ソレノイド60(コイル67)への通電の大きさを適宜制御して電磁駆動力(付勢力)を変化させる。すなわち、電磁駆動力で弁体40の位置を適宜調整して、所望の吐出量となるように第1弁部41の開弁量と第2弁部42の開弁量が制御される。この状態では、第3弁部43は閉弁状態にある。
【0039】
また、最小容量の運転状態では、ソレノイド60(コイル68)は非通電とされて、可動鉄芯66及び駆動ロッド65は、コイルスプリング67の付勢力により後退して休止位置に停止すると共に、第1弁部41が座面35aから離れて連通路(吐出側通路)31、32を開放し、第2弁部42が座面36aに着座して連通路(吸入側通路)34,44を閉塞した状態となる位置に弁体40が移動する。これにより、吐出流体(吐出圧力Pd)が連通路(吐出側通路)31,32,33を経て制御室12内に供給される。そして、斜板21の傾斜角度は最も小さくなるように制御され、ピストン22のストロークを最小にする。その結果、冷媒ガスの吐出量は最小になる。この状態では、第3弁部43は閉弁状態にある。
【0040】
上記のように、通常制御時においては、連通路(33、44、34)の開口面積を固定オリフィスの面積とほぼ同じ面積まで小さくでき、また、最小容量運転時においては、連通路(33、44、34)を遮断できるので、通常制御時及び最小容量運転時における斜板の制御速度を大きくすることができる。
【0041】
〔実施の形態2〕
図5は、本発明に係る容量制御弁の実施形態2を示す正面断面図である。
なお、図5において、図2と同じ符号は同じ部材を示しており、詳細な説明は省略する。
本実施形態2においては、第3弁部43の端面47からソレノイド60寄りに位置した外側面に全周にわたってフランジ45が設けられ、また、アダプタ53においても、中空円筒部53aの基部外側面に全周にわたってフランジ54が設けられている。付勢手段48は、アダプタ53の中空円筒形部53aの外周に沿うようにして、第3弁部43のフランジ45とアダプタ53のフランジ54との間に装着され、第3弁部43及びアダプタ53を開弁させる方向に作用する。
付勢手段48は、コイルスプリング等のばね手段から構成され、円周方向に等間隔に複数配置される。この場合も、コイルスプリングは液冷媒の排出流路に位置されることから、コイルのピッチは大きく設定されることが望ましい。
【符号の説明】
【0042】
10 ケーシング
11 吐出室
12 制御室(クランク室)
13 吸入室
14 シリンダ
15 連通路
16 連通路
17 連通路
18 連通路
19 固定オリフィス
20 回転軸
21 斜板
22 ピストン
23 連結部材
24 被動プーリ
25 コンデンサ(凝縮器)
26 膨張弁
27 エバポレータ(蒸発器)
30 ボデー
31、32 連通路(吐出側通路)
33 連通路(制御室側通路)
34 連通路(吸入側通路)
35 第1弁室
35a 座面
36 第2弁室
36a 座面
37 ガイド通路
38 第3弁室
39 閉塞部材
40 弁体
41 第1弁部
42 第2弁部
43 第3弁部
43a 係合面
44 連通路
45 フランジ
47 第3弁部の端面
48 付勢部材
50 感圧体
51 ベローズ
53 アダプタ
53a 中空円筒形部
53b 座面
53c 基底部
54 フランジ
60 ソレノイド
62 ケーシング
63 スリーブ
64 固定鉄芯
65 駆動ロッド
66 可動鉄芯
67 コイルスプリング
68 励磁用のコイル
M 斜板式容量可変型圧縮機
V 容量制御弁
Pd 吐出圧力
Ps 吸入圧力
Pc 制御室圧力
A ベローズ有効面積
B 第3弁部シール面積
C 第1弁部シール面積
Fb ベローズばね力
Fsol ソレノイド推力
Fspr1 ソレノイドに装着されたコイルスプリングの開弁ばね力
Fspr2 第3弁部に設けられた付勢手段の開弁ばね力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10