(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の義手は、DCモータ(直流モータ)を駆動源とする電動機器によって作動される指などを有する義手であって、使用者の生活レベルを格段に向上することができるようにしたことに特徴を有している。
【0014】
とくに、本発明の義手は、指によって物体を適切に把持できるようにしつつ、指などに加わる力を検出する力覚センサーなどを不要としたこと、および、小型の充電式バッテリーのみで長時間連続して使用することが可能となるようにしたこと、に特徴を有している。とくに、適切な使用を前提とすれば、バッテリーが劣化するまではバッテリー交換や外部からの充電をすることなく連続して使用できるようにしたことに特徴を有している。このため、本発明の義手では、装置の構造を簡単にでき、装置を軽量にでき、しかも、メンテナンスを簡単にできるので、本発明の義手を使用する人の生活レベルを格段に向上することができるのである。
【0015】
以下、本実施形態の義手1を図面に基づいて説明する。
本実施形態の義手1は、義手本体10と、この義手本体10を操作する入力部20と、義手本体10と入力部20を電気的に接続する配線35と、を備えている。
【0016】
(義手本体10)
まず、義手本体10を説明する。
図1に示すように、義手本体10は、本体部11と、本体部11に設けられた一対の把持アーム13,13と、を備えている。なお、一対の把持アーム13,13が特許請求の範囲にいう把持部に相当する。
【0017】
本体部11は、使用者の腕に取り付けられるものである。例えば、使用者の不自由な腕に取り付けることができる構成になっていればよく、その形状や構造はとくに限定されない。
【0018】
一対の把持アーム13,13は、本体部11の先端に設けられており、互いに接近離間することによって、物体を把持したり離したりすることができるようになっている。例えば、
図1に示すように、各把持アーム13をそれぞれ略棒状(または長尺な板状)の部材で形成し、各把持アーム13の基端を本体部11の先端に揺動可能に取り付ける。すると、両把持アーム13または一方の把持アーム13を、その基端を支点としてその先端を揺動させることができる。かかる構造とすれば、両把持アーム12の先端を接近させれば物体を把持できるし、両把持アーム13の先端を離間させれば把持していた物体を離すことができる。
【0019】
また、本体部11には、従動側DCモータ12が設けられている。この従動側DCモータ12は、一対の把持アーム13,13を揺動させるものであり、一対の把持アーム13,13と伝達機構によって連結されている。
【0020】
したがって、従動側DCモータ12が作動すると、伝達機構を介して、従動側DCモータ12の駆動力が一対の把持アーム13,13に供給され、その駆動力によって一対の把持アーム13,13を揺動させることができるのである。
【0021】
(入力部20)
つぎに、入力部20を説明する。
図1に示すように、入力部20は、使用者の腕に取り付けられるものである。具体的には、義手本体10が取り付けられた腕(
図1では右腕)と逆の腕(
図1では左腕)に取り付けられるものである。
【0022】
図1に示すように、入力部20は、使用者の腕に取り付けられる駆動部21を備えている。この駆動部21は、使用者の上腕に取り付けられるベース部21aを備えている。このベース部21aは、例えば、板状または棒状の固定部cと固定バンドbとから構成されたものを使用することができる。
【0023】
また、駆動部21は、使用者の前腕に取り付けられる可動部21bを備えている。この可動部21bは、ベース部21aと実質的に同等の構造のものを使用することができる。例えば、可動部21bも、板状または棒状の固定部cと固定バンドbとから構成されたものを使用することができる。
【0024】
この可動部21bは、その固定部cの基端がベース部21aの固定部cの先端に揺動可能に連結されている。このため、ベース部21aと可動部21bの連結部分が腕の肘に位置するように駆動部21を腕に取り付ければ、腕を曲げ伸ばしすると、可動部21bをベース部21aに対して相対的に揺動させることができるのである。
以下、可動部21bの固定部cの基端とベース部21aの固定部cの先端とが連結された部分を、駆動部21の関節部21jという。また、可動部21bがベース部21aに対して相対的に揺動する状態を、以下では、関節部21jが作動するという。
【0025】
図1に示すように、駆動部21の関節部21jには、駆動側DCモータ22が設けられている。この駆動側DCモータ22は、関節部21jが作動すると、その主軸が回転するように設けられている。
【0026】
したがって、駆動部21が取り付けられている腕を曲げ伸ばしすると、関節部21jが作動され、駆動側DCモータ22の主軸が回転するのである。すると、駆動側DCモータ22は発電機として機能し、主軸の回転に対応した電力を発生するのである。
【0027】
(配線35)
そして、
図1に示すように、本実施形態の義手1は、入力部20と本体部11とを電気的に接続する配線35を備えている。具体的には、配線35は、入力部20の駆動側DCモータ22と本体部11の従動側DCモータ12とを、電気的に接続している。つまり、配線35は、駆動側DCモータ22と従動側DCモータ12と配線35とによって、一つの閉回路が形成されるように設けられているのである。
【0028】
以上のごとき構造であるので、入力部20が取り付けられた腕(
図1では左腕)を動かして関節部21jが作動すると、駆動側DCモータ22の主軸が回転し、駆動側DCモータ22によって腕の運動エネルギーが電気的エネルギーに変換される。この電気的エネルギー、つまり、電流が配線35を通して本体部11の従動側DCモータ12に供給される。
【0029】
すると、従動側DCモータ12が作動するので、一対の把持アーム13,13を作動させることができる。つまり、一対の把持アーム13,13によって、物体を把持したり把持していた物体を離したりすることができる。
【0030】
そして、駆動側DCモータ22で発生した電気的エネルギーによって従動側DCモータ12を作動させているので、外部から電力を供給しなくても、従動側DCモータ12、つまり、一対の把持アーム13,13を作動させることができる。
詳細は後述するが、本実施形態の義手1では、基本的には、従動側DCモータ12は駆動側DCモータ22と同一の角度(あるいは比例する角度)となるように2つのモータの回転角、あるいは回転角速度をフィードバックして制御している。角度をフィードバックする場合はPD制御、角速度をフィードバックする場合にはPI制御が行われる。そして、本実施形態の義手1を一つの機械系システムとすると、PD制御の場合には、比例ゲイン(Pゲイン)がばね定数、微分ゲイン(Dゲイン)が減衰定数に対応する。また、PI制御の場合は、積分ゲイン(Iゲイン)がばね定数、Pゲインが減衰定数に対応する。したがって、これらのゲインを調整すれば、一対の把持アーム13,13によって物体を把持する場合のばね定数など(本実施形態の義手1を一つの機械系システムとみなした場合)を調節することが可能となるので、柔軟なものや壊れやすいものを把持しやすい条件を選ぶこともできる。なお、フィードバックして制御するには電力が必要であるが、必要な電力は少ないので、小型バッテリ―、とくに小型の充電式バッテリ−で対応可能である。
【0031】
以上のごとく、本実施形態の義手1は、駆動側DCモータ22で発生した電気的エネルギーによって従動側DCモータ12を作動させているので、外部電源を必ずしも設ける必要がない。そして、電源を設ける場合でも、充電式の小型バッテリーを内蔵するだけでよいので、装置を軽量かつ簡単な構造とすることができる。
【0032】
そして、本実施形態の義手1を適切に使用すれば、充電式バッテリ―が劣化するまではバッテリーの交換や充電等の作業が不要になるので、本実施形態の義手1はメンテナンスも容易になる。適切ではない使用とは、例えば、非常に重いものを一対の把持アーム13,13によって把持したり、非常に速く一対の把持アーム13,13を動かしたりする場合などのように、通常の使用状況を越えるような使用する場合を意味している。
【0033】
また、一対の把持アーム13,13が物体に接触すると、一対の把持アーム13,13は物体から反力を受ける。このため、物体を把持する場合には、従動側DCモータ12は、一対の把持アーム13,13を移動させる場合よりも大きな駆動力(回転トルク)を発生する必要がある。従動側DCモータ12の主軸の回転トルクは従動側DCモータ12に供給される電流量に比例するので、従動側DCモータ12を回転させるために必要な電流量が大きくなる。
【0034】
ここで、従動側DCモータ12と駆動側DCモータ22は、配線35によって接続されており、これらによって実質的に一つの閉回路が形成されている。このため、従動側DCモータ12を回転させるために必要な電流量が大きくなると、駆動側DCモータ22に要求される電流量が大きくなる。言い換えれば、駆動側DCモータ22を回転させるために必要な回転トルクが大きくなり、関節部21jを作動させるために必要な力が大きくなる。
【0035】
つまり、一対の把持アーム13,13が物体を掴む際の反力が、駆動側DCモータ22のトルクとなり、腕を動かすために必要な駆動力となる。すると、一対の把持アーム13,13が物体を掴んだり操作したりする際の反力が、駆動側DCモータ22のトルクとして腕に加わるので、前記反力を使用者が把握することができる。
【0036】
したがって、特別なセンサーを設けなくても、一対の把持アーム13,13が物体を掴んだり操作したりする際の反力を使用者が把握することができるので、装置を軽量かつ簡単な構造とできる。
【0037】
(駆動側DCモータ22と従動側DCモータ12が異なる場合)
ところで、駆動側DCモータ22と従動側DCモータ12は、同じ特性を有するモータ(つまり同じDCモータ)を使用してもよいし、異なる特性を有するモータを使用してもよい。
【0038】
同じモータを使用した場合には、回路内での電力ロスがなければ、駆動側DCモータ22と従動側DCモータ12を同じ回転速度で作動させることができる。つまり、入力部20の駆動部21とほぼ同じ動き(つまり同じ角度および同じ速度)で、義手本体10の一対の把持アーム13,13を動かすことができる。
【0039】
なお、実際には、回路内の抵抗を電流が流れるときには必ず電力ロスが発生するので、従動側DCモータ12の回転速度は駆動側DCモータ22よりも低下する。従動側DCモータ12と駆動側DCモータ22を同一の回転角度、同一の角速度にするためにはフィードバック制御が必要である。そして、フィードバック制御の際に、従動側DCモータ12と駆動側DCモータ22を同一の回転角度、同一の角速度とするためには、PWM制御により、電力不足分を補うために、バッテリー(後述する蓄電部)からエネルギー供給を行うことが必要である。
【0040】
一方、異なる特性を有するモータを使用した場合には、回路内での電力ロスによる減速を考慮する必要はあるが、基本的には、従動側DCモータ12の回転速度を入力駆動側DCモータ22の回転速度に対して増速または減速することができる。言い換えれば、義手本体10の一対の把持アーム13,13を、入力部20の駆動部21と異なる作動量または作動速度で動かすことができる。
【0041】
例えば、従動側DCモータ12として、同じ電流が供給された際に、駆動側DCモータ22よりも発生するトルクが小さいものを使用する。つまり、従動側DCモータ12のトルク係数が駆動側DCモータ22のトルク係数よりも小さいものを使用すれば、駆動部21の作動量または作動速度よりも、一対の把持アーム13,13の作動量や作動速度を大きくすることができる。
【0042】
回路内の電力消費による従動側DCモータ12の速度低下を考慮しても、従動側DCモータ12の速度が駆動側DCモータ22の速度よりも大きくなれば、上述したように、両者の速度を同一にするためには、エネルギーを供給するのではなく、ブレーキをかけることになる。すると、チョッパ回路を用いれば、ブレーキをかけるときにエネルギーを充電式バッテリー(後述する蓄電部)に蓄えることができる。
【0043】
エネルギーを充電式バッテリーに蓄える原理を説明すると、以下のようになる。
なお、以下では、簡単化のためにメカロスの影響と慣性力を無視して説明している。
【0044】
回路の電流iは、従動側DCモータ12のトルクT
2(近似的にT
2=把持トルクF
2)とトルク定数A
2よりi=T
2/A
2となる。従動側(つまり一対の把持アーム13,13)の仕事のパワーP
2は、両モータ12,22の回転速度(従動側DCモータ12と駆動側DCモータ22の速度は制御されて等しいとする)を用いて、以下の数1のよう表すことができる。
【数1】
【0045】
電気抵抗での損失パワーP
Rは、P
R=Ri
2となる。駆動側DCモータ22のトルク定数A
1=nA
2とすれば、駆動側のトルクはT
1=A
1=nT
2となるので、駆動側での入力パワーP
1は以下の数2のようになる。
【数2】
【0046】
両モータ12,22の回転速度、把持トルクは使用条件により異なるが、入力パワーP
1が、出力パワーP
2と回路の損失パワーの和よりも大きければ、エネルギーをバッテリーに充電でき、逆であれば、バッテリーからエネルギーが放出されることになる。
【0047】
したがって、義手の使用パターンを考慮し、2つのモータのトルク定数を、一連の動作により、上記のエネルギー収支がマイナスにならない(放出にならない)ように選定すれば、エネルギーを充電式バッテリーに蓄えることができる。
【0048】
一般的に、手の把持力は肘や足首、膝などと比べて小さい。すなわち、手では、肘や足首、膝などと比べてより繊細な力で物を把持している。したがって、本実施形態の義手1において、入力部20を肘や足首、膝などに取り付けて一対の把持アーム13,13を作動させるようにすれば、肘や、足首、膝の力を縮小して手の把持力とすることになり、理にかなっている。そして、入力部20では手の把持力(つまり反力)が拡大されて感じることになり、手よりも力に対する感受性の粗い入力部20でも、手の反力を感覚として捉えやすくなる。
【0049】
(減速機および増速機を設ける場合)
なお、駆動部21を動かす人の動作は、一般的に、駆動側DCモータ22が力を発揮しやすい回転数よりも遅い。逆に、一対の把持アーム13,13を動かす速度は、一般的に、義手本体10を作動させる従動側DCモータ12が力を発揮しやすい回転数よりも遅いほうが望ましい。
【0050】
したがって、駆動側DCモータ22によって効果的に発電を行うには、駆動部21と駆動側DCモータ22との間に増速機を設けることが望ましい。
また、従動側DCモータ12によって適切に義手本体10を作動させるには、従動側DCモータ12と一対の把持アーム13,13の間に減速機を設けることが望ましい。
【0051】
(蓄電部)
そして、各DCモータ12,22は、電流が供給されると、その電流に応じてトルクを発生するが、従動側DCモータ12として、駆動側DCモータ22よりも発生するトルクが小さいものを使用する場合には、上述したように、回路に蓄電部(例えば充電式バッテリー)を設けておくことが望ましい。つまり、同じ電流が供給された際に、従動側DCモータ12のほうが駆動側DCモータ22よりも発生するトルクが小さい場合には、回路に蓄電部を設けておくことが望ましい。
【0052】
この場合、通常、駆動側DCモータ22で発生するエネルギー(入力パワー)が従動側DCモータ12において仕事として消費される単位時間当たりのエネルギー(出力パワー)よりも大きくなる。条件により異なるが、入力パワーが出力パワーと回路内抵抗での損失パワーの和よりも大きい場合には、その差だけエネルギーが余る。余ったエネルギーは、抵抗等を利用して熱エネルギーなどとして消費させる必要がある。しかし、蓄電部を設けておけば、余ったエネルギーを蓄電部に回収することができる。すると、上述の場合とは逆に、入力パワーが、出力パワーと回路内抵抗での損失パワーの和よりも小さい場合には、その差だけエネルギーが不足するので、そのような場合に蓄電部から電力を補充することができる。例えば、静止した状態で把持している場合には、入力パワー、出力パワーともゼロであるが、回路内には把持トルクに比例する電流が流れるので回路内の損失パワーが発生する。したがって、入力パワーが、出力パワーと回路内抵抗での損失パワーの和よりも小さくなるが、そのような場合でも、蓄電部から電力を補充すれば、義手本体10の作動を安定化させることができる。
そして、一連の動作で、トータルのエネルギー収支がプラス(余る側)であれば、蓄電部を交換したり、外部から充電する必要がなく、快適に、長時間の安定した義手1の使用が可能となる。
【0053】
蓄電部への電力の回収や蓄電部から回路への電力の補充は、蓄電部に制御部を設けて、その制御部によって制御すればよい(
図3(B)参照)。制御部が充放電を制御する方法はとくに限定されず、種々の方法を採用することができる。
【0054】
例えば、制御部として、Hブリッジ回路と昇圧チョッパを利用して、充放電を制御するものを使用することができる。蓄電部から回路に電力を補充する際には、Hブリッジ回路と昇圧チョッパを用いてPI制御を行えば、駆動側DCモータ22と従動側DCモータ21の相対角速度および角変位を一致させることができる。また、昇圧チョッパでは、H/V車などで用いられている場合と同様に、回路内のインダクタンスLの大きさに対応した十分短い周期で回路の切換えを行えば、蓄電部へのエネルギーを適切に回収することができる。
【0055】
なお、昇圧チョッパを用いて充電する場合には、蓄電部からの放電を防ぐ上では、相対速度制御のために回路に与える電圧(具体的には、デューティー比により決まる平均電圧)が駆動側DCモータ22の誘導電圧と従動側DCモータ21の誘導電圧の差よりも小さくなる範囲で制御する必要がある。
【0056】
(義手本体10の他の例)
なお、義手本体10の本体部11に設けられる伝達機構は、従動側DCモータ12の主軸の回転運動を一対の把持アーム13,13の揺動運動に変換できるものであればよく、歯車伝達機構やリンク機構等を採用することができるが、とくに限定されない。例えば、従動側DCモータ12の主軸に駆動ギアを設け、一対の把持アーム13,13の基端に従動ギアを設け、両ギア間に伝達ギアを設ければ、従動側DCモータ12の主軸が回転させると、一対の把持アーム13,13を揺動させることができる。
【0057】
また、一対の把持アーム13,13は、上述したように両方が揺動するようにしてもよいが、一方の把持アーム13は移動を固定し、他方の把持アーム13のみが揺動するようにしてもよい。
【0058】
さらに、義手本体10において、物体を把持したり離したりする機構は、従動側DCモータ12によって駆動させることができる構造であればよく、上述したような機構に限られず、一対のアームが同時に開閉するような機構等を採用してもよい。
【0059】
(駆動部21の他の例)
上述した例では、腕が、特許請求の範囲にいう可動部位に相当する。可動部位は、腕に限らず、駆動側DCモータの主軸を回転させることができるような動きをする部位であればよい。例えば、脚や顎などを可動部位とすることができる。
【0060】
例えば、膝より下の脚を使用する場合には、駆動部21を以下のような構造とすることができる。
図3(A)に示すように、可動部位として、膝より下の脚を使用する場合には、駆動部21の可動部21bを靴などのように足に固定できるものとし、ベース部21aを下腿に固定できる構造とする。かかる駆動部21とすれば、足首を曲げ伸ばしすることによって、駆動側DCモータ22の主軸を回転させることができるから、義手本体10を作動することができる。
【0061】
そして、
図3(A)に示すような駆動部21を採用した場合には、両足に駆動部21を取り付けることができる。例えば、両手に義手本体10を設けて、各義手本体10を両足に取り付けた駆動部21とそれぞれ配線35によって電気的に接続すれば、両足によって両手の義手本体10をそれぞれ別々に作動することができる。すると、両手が不自由な人でも、両手に取り付けた義手本体10によって物体を掴んだり離したりできるようになる。
【0062】
(本実施形態の義手1を作動させる基本原理)
つぎに、従動側DCモータ12と駆動側DCモータ22を有する本実施形態の義手1の基本メカニズムを
図1(B)および
図2(A)に基づいて詳しく説明する。
【0063】
図1(B)に示すように、入力部20の駆動側DCモータ22と義手本体10の従動側DCモータ12は配線35で接続されており、駆動側DCモータ22に力学的エネルギーである仕事が加えられると、駆動側DCモータ22は発電機として働き、力学的エネルギーを電気エネルギーに変換する。その電気エネルギーで従動側DCモータ12が駆動されて、電気エネルギーは再び力学的エネルギーに変換される。
【0064】
なお、
図1(B)では、駆動側DCモータ22は発電機、従動側DCモータ12はアクチュエータとして機能するが、逆に従動側DCモータ12に仕事が加えられれば、両者の立場は逆転する。つまり、
図1(B)の基本メカニズムの場合、双方向のマスタースレーブとして使用することが可能である。つまり、義手本体10に力を入力し、入力部10の駆動部21を作動させることも可能である。
【0065】
図1(B)に示すように、本実施形態の義手1(マスタースレーブ)の基本原理は、
図2(A)のような形で表現することができる。つまり、系全体の挙動は、駆動側DCモータ22を含む入力部20の力学系の運動方程式、従動側DCモータ12を含む義手本体10の力学系の運動方程式、駆動側DCモータ22と従動側DCモータ12と配線35を構成要素とする電気回路の微分方程式、からなる連立微分方程式により以下のように表現することができる。
【0066】
まず、外部電源がなければ入力部20の運動方程式は数3のように表すことができ、義手本体10の運動方程式は数4のように表すことができる。
【数3】
【数4】
なお、数3および数4において、Jは各モータの慣性モーメント、θは各モータの回転角変位、Tは各モータトルク、Fは外力トルク、Aはアクチュエータ係数(各モータのトルク係数に相当する)であり、添え字1は入力部20側、添え字2は義手本体10側であることを示している。また、iは電気回路を流れる電流である。なお、外力トルクとは、外部から(つまり腕などの可動部位)から加わるトルクである。
【0067】
また、電気回路の微分方程式は、以下の数5のように表すことができる。なお、eは、各モータの誘導電圧、Lは回路のインダクタンス、Rは回路の抵抗である。
【数5】
【0068】
電動義手は人間が操作する機器であるので、十分おそい現象として左辺第一項の影響を無視すれば、数5は以下の数6のように表現される。
【数6】
【0069】
ここで、説明を簡単にするために、駆動側DCモータ22と従動側DCモータ12が同じ特性と仮定して、A
1=A
2=Aとすると、数6は以下の数7のように表現される。
【数7】
【0070】
上式の関係を用いて、3変数の連立微分方程式より電流iを消去すれば、数8のような機械系2変数のみの運動方程式となる。
【数8】
【0071】
数8より、本実施形態の義手1の基本メカニズムは、
図2(B)に示すような2つの慣性モーメントが減衰定数C
0で結合された等価な力学系のみのモデルに置き換えることができることが確認される。
【0072】
簡単のために、メカロスの影響を無視し、入力部20と義手本体10の慣性力が十分に小さい場合であれば、近似的に、F1=F2、となる。つまり、義手本体10に加わる反力と入力部20で加える力が等しくなる。
【0073】
以上より、加速度のない定常状態や緩やかな現象でメカロスや慣性力が無視できる場合、つまり、本実施形態の義手1において駆動部21が取り付けられている可動部位をゆっくりと等速度で動かした場合には、力センサーを用いなくても入力部20(言い換えれば可動部位)で、義手本体10に加わる反力を直接感じながら(言い換えれば、力覚を有した状態で)、入力部20によって義手本体10を操作することが可能となるのである。
【0074】
(駆動側DCモータ22と従動側DCモータ12の動作を一致させる制御)
一方、数8で示すように、入力部20と義手本体10の間が減衰で結合されるため、入力部20の駆動側DCモータ22にトルクが加われば、駆動側DCモータ22と義手本体10の従動側DCモータ12の回転速度にずれが生じ、電気回路の電気抵抗によりエネルギーが消費される。つまり、電気系の抵抗におけるエネルギー消費は、等価な機械系では減衰による消費エネルギ―に対応する。
【0075】
また、数8に示されるように、減衰定数C
0は電気系の抵抗Rに反比例している。したがって、抵抗Rが大きくなれば減衰が低下し、アクチュエータ係数Aが大きいほど減衰は大きくなる。つまり、抵抗Rが大きくなれば駆動側DCモータ22と従動側DCモータ12の間の速度差が大きくなり、アクチュエータ係数Aが大きくなれば駆動側DCモータ22と従動側DCモータ12の間の速度差は小さくなる。
【0076】
そして、義手本体10に負荷が加わった場合にも、駆動側DCモータ22と従動側DCモータ12の間の速度差が大きくなる。
【0077】
本実施形態の義手1のようなマスタースレーブでは、駆動側DCモータ22と従動側DCモータ12が同一の動作をすること、すなわち、両者の速度や変位に差がないことが望ましい。
【0078】
したがって、両者の速度や変位に差をなくすために、駆動側DCモータ22と従動側DCモータ12の相対速度のPI制御(あるいは相対変位のPD制御)を行うことが望ましい。具体的には、
図3(B)のようなHブリッジ回路とPWM制御を行うことによって、回路内の電気抵抗Rで消費するエネルギー分を、蓄電部から回路に補充すれば、両者の速度や変位に差を小さくすることができる。
【0079】
例えば、相対速度フィードバックのPI制御を行う場合には、数5に示した電気回路の微分方程式は数9のようになる。なお、数7において、PおよびIは、PI制御における比例ゲインおよび積分ゲインをそれぞれ示している。
【数9】
【0080】
上式の比例ゲインは機械系としての減衰の負荷、積分ゲインはばねの負荷としての効果を発揮するので、これらのパラメータを調整すれば、把持しやすいようにばね定数の調整が可能となる。
また、相対速度をフィードバックするかわりに相対角度をフィードバックし、PD制御とすれば、同様の効果が得られる.
【数10】
【0081】
ここで、駆動側DCモータ22と従動側DCモータ12のモータの特性が等しい場合において、上述したような制御を行い、駆動側DCモータ22と従動側DCモータ12の速度が等しい状態で、速度一定でかつメカロスの影響を無視した場合を例にとり、系のエネルギー収支について調べてみる。
【0082】
上述したような仮定をおけば、F
1=F
2=T
1=T
2=F=A
iとなる。このため、抵抗で消費される単位時間当たりのエネルギーD
Rは回転速度に無関係で、負荷Fにより決まる(数11)。
【数11】
【0083】
一方、有効な仕事である義手本体10での単位時間あたりの負荷への仕事(義手本体10の仕事率W
2)、操作者が入力部20対して加える単位時間当たりの仕事(入力部20の仕事率W
1)は等しくなる(数12)。
【数12】
【0084】
そして、系全体のエネルギー収支から、蓄電部(
図3(B)のDCバッテリー)から補充される単位時間当たりのエネルギー(蓄電部の仕事率WE)は、抵抗で消費される仕事率WRに等しいことがわかる。ここで有効な仕事率Pに対する補充エネルギーの仕事率PEあるいは消費エネルギーDRをエネルギー消費率εとして定義すれば以下の数13のようになる。
【数13】
【0085】
数13より、エネルギー消費率εは負荷が大きいほど、角速度が小さいほど大きくなることがわかる。つまり、負荷が大きくなったり、角速度が小さくなったりすれば、蓄電部から電気回路に供給するエネルギーを増やさなければならないことがわかる。例えば、極端な場合として、停止中で負荷が加わっている状態では、回生エネルギーも有効仕事もないが、エネルギーは消費される。このため、数13より、エネルギー消費率εの大きさは無限大となり、蓄電部のエネルギーだけが消費される状況となる。
【0086】
(モータ特性が異なる場合)
つぎに、駆動側DCモータ22と従動側DCモータ12のアクチュエータ係数が異なる場合に、蓄電部を設けておけば、蓄電部の交換が不要になることを確認する。
【0087】
駆動側DCモータ22および従動側DCモータ12のアクチュエータ係数をそれぞれA
1、A
2とし、A
1=nA
2となる関係があるとする。定常状態を考えメカロスは無視し、また従動側DCモータ12のトルクは駆動側DCモータ22のトルクと比例するが小さくてもよいとして、n>1とする。すると、電流と外部トルクの関係は以下の数14のようになる。
【数14】
【0088】
すると、F
2はF
1の1/nになる。したがって、したがって、回路内にエネルギーロスがなければ、外部からエネルギーを補充しなくても、あたかも増速機が挿入されたような働きをすることになる(数15)。
【数15】
【0089】
ただし、実際には、電気回路内には電気抵抗が存在し、エネルギー補充を行わなければ、負荷が大きくなるに従って、従動側DCモータ12の速度は低下する。
ここで、相対速度フィードバックにより、駆動側DCモータ22と従動側DCモータ12の速度が等しく定常回転している状態におけるエネルギー収支を確認する。
【0090】
入力部20の仕事率W
1、義手本体10の仕事率W
2の間には数16の関係があるので、入出力の仕事率の差W
12は数17のようになる。
【数16】
【数17】
【0091】
一方、電気回路内での単位時間当たりの消散エネルギーD
Rは数18のようになるので、両者を加えた総合的なエネルギー収支は数19のようになる。
【数18】
【数19】
【0092】
もし、ΔW≧0、すなわち以下の数20を満たす場合には、エネルギーは余っているので、駆動側DCモータ22と従動側DCモータ12の速度を一致させる制御を行う場合、蓄電部から電気回路にエネルギーを補充する必要はなく、逆にエネルギーをさらに消費する必要がある。
【数20】
【0093】
一方、ΔW≦0ならば、駆動側DCモータ22と従動側DCモータ12の速度を一致させるには、駆動側DCモータ22で発生させるエネルギーが不足しているので、電気回路にエネルギーを補充する必要がある。
【0094】
したがって、駆動側DCモータ22で発生したエネルギーが余っている条件のときに、エネルギーを蓄電部に回収し、不足する場合に蓄電部からエネルギーを放出させて、トータルとして収支がマイナスにならなければ、蓄電部の交換は不要になる。
【0095】
例えば、t=0〜t
0の間、本実施形態の義手1が一連の作業を行った結果、以下の数21を満たせば理論上は蓄電部の交換なしで連続使用できることになる。
【数21】
【0096】
そして、数20に基づけば、使用条件から義手本体10の負荷トルクと従動側DCモータ12の回転速度が条件として与えられた場合には、義手1は、nが大きいほど、アクチュエータ係数A
2が大きいほど、また、Rが小さいほど、エネルギーが余りやすくなる。
逆に、n、A
2、Rが与えられている場合には、従動側DCモータ12に加わる負荷トルクが小さいほど、従動側DCモータ12の回転速度が大きいほどエネルギーが余りやすくなる。
【0097】
(減速機および増速機を設ける場合)
ところで、駆動部21を動かす人の動作は、一般的に、駆動側DCモータ22が力を発揮しやすい回転数よりも遅い。逆に、一対の把持アーム13,13を動かす速度は、一般的に、義手本体10を作動させる従動側DCモータ12が力を発揮しやすい回転数よりも遅いほうが望ましい。
【0098】
したがって、駆動側DCモータ22によって効果的に発電を行うには、駆動部21と駆動側DCモータ22との間に増速機を設けることが望ましい。
また、従動側DCモータ12によって適切に義手本体10を作動させるには、従動側DCモータ12と一対の把持アーム13,13の間に減速機を設けることが望ましい。
【0099】
かかる増速機や減速機を設けた場合でも、以下に示すように、駆動部21や一対の把持アーム13,13の慣性モーメントの値は変化するだけであり、上述した機能は維持される。
以下、上述した機能が維持されることを説明する。
【0100】
駆動側DCモータ22と駆動部21の間に増速比n
1(n
1≧1)の増速機を設け、従動側DCモータ12と一対の把持アーム13,13の間に減速比n
2(n
2≧1)の減速機を設けたと仮定する。そして、増速機から駆動側DCモータ22に加わるトルクをτ
1、減速機から一対の把持アーム13,13に加わるトルクをτ
2とすると、以下の数22関係が成り立ち、運動方程式は数23のようになる。
【数22】
【数23】
【0101】
また、駆動側DCモータ22の誘導電圧e
1、従動側DCモータ12の誘導電圧e
2は以下の数24ようになる。
【数24】
【0102】
そして、A
1’=n
1A
1、A
2’=n
2A
2と定義すれば、数24は、以下の数25ようになり、誘導電圧e
1,e
2は以下の数26のようになる。
【数25】
【数26】
【0103】
そして、上記数26において、θのかわりにφ、A
iのかわりにA
i’を用いて、数25、数26の関係を電気回路の微分方程式に適用すれば、増速機および減速機のない系で、アクチュエータ係数A
1’の駆動側DCモータ22、および、アクチュエータ係数A
2’の従動側DCモータ12を用いた場合の式と同形となる。
したがって、増速機や減速機を設けた場合でも、上述した機能は維持されるのである。
【実施例】
【0104】
本発明の義手に採用したシステムについて、基礎的な実験を行って、従動側DCモータのアクチュエータ係数を駆動側DCモータのアクチュエータ係数よりも小さくすれば増速効果があるかどうか、また、充電式バッテリーを電源として用い、従動側DCモータの速度を駆動側DCモータの速度と一致させる制御が可能かどうか、さらに、駆動側DCモータに不規則な動きをさせても従動側DCモータが追従できるか否か、を確認した。
【0105】
実験では、一対のDCモータをPI制御が可能な回路を介して接続した装置を用い、一方のDCモータ(駆動側DCモータ)を回転させたときに、一方のDCモータの回転数と、他方のDCモータ(従動側DCモータ)の回転数を測定した。
【0106】
以下、実験結果を説明する。
図4(A)には、増速機・減速機を使用せず相対速度制御を行わない状態で同一のモータを使用した場合と、従動側DCモータのアクチュエータ係数が駆動側DCモータのアクチュエータ係数の1/2の場合の実験結果を示している。
なお、
図4(A)では、横軸は駆動側DCモータの回転数であり、縦軸は従動側DCモータの回転数である。
【0107】
無負荷で駆動側DCモータの速度を数種類変化させて実験を行ったが、同じアクチュエータ係数の場合には、無負荷でもメカロスなどの影響で、従動側DCモータの速度が駆動側DCモータよりも若干低めになっている。
一方、異なったアクチュエータ係数の場合には、従動側DCモータの速度のほうが駆動側DCモータの速度よりも大きくなっていることがわかる。
したがって、従動側DCモータのアクチュエータ係数を駆動側DCモータのアクチュエータ係数よりも小さくすれば、従動側DCモータを増速する効果が得られることが確認できる。
【0108】
また、
図4(B)は、相対速度フィードバック(PI制御)を行った状態で、駆動側DCモータを動かした場合において、駆動側DCモータの主軸および従動側DCモータの主軸の角変位を示している。
図4(B)に示すように、両者の波形はよく一致し、従動側DCモータが駆動側DCモータに良好な精度で追従していることがわかる。
つまり、相対速度フィードバック(PI制御)により、従動側DCモータの速度を駆動側DCモータの速度と一致させることができ、しかも、駆動側DCモータの速度変化に追従して従動側DCモータの速度も変化することが確認できた。