【実施例】
【0022】
以下、本発明のアクリルゴム組成物について、実施例を挙げて更に具体的に説明するが、これらは、本発明の実施の一例であって、これらに限定されるものではない。
表1に記載の配合にて、密封式混練機またはオープンロールを用いて混練し、得られた混合物を170℃×10分間圧縮成形し、さらに170℃×4時間後加硫して、厚さ2mmの加硫シートを得た。これにより得られた加硫シートを試験片として、JIS規格に準じて各物性測定を以下のようにして行った。
【0023】
【表1】
【0024】
(実施例1)
カルボキシル基含有のアクリルゴム・・・100重量部
板状クレー(箔状充填材)・・・70重量部
クレー(充填材)・・・30重量部
ステアリン酸(滑剤)・・・2重量部
オクチル化ジフェニルアミン(老化防止剤)・・・3重量部
ヘキサメチレンジアミンカーバメート・・・1重量部
ジオルトトリルグアニジン・・・2重量部
(実施例2)
実施例1において、板状クレーの代わりにタルクを50重量部、クレーの代わりにシリカを30重量部用いた。
(実施例3)
実施例1において、板状クレーを25重量部、セリサイトを50重量部、クレーの代わりにシリカを20重量部用いた。
(実施例4)
実施例1において、酢酸ビニル含有率25重量%のエチレン酢酸ビニル共重合物(ウルトラセン640:東ソー株式会社製)を5重量部さらに添加した。
(実施例5)
実施例1において、酢酸ビニル含有率6重量%のエチレン酢酸ビニル共重合物(ウルトラセン530:東ソー株式会社製)を20重量部さらに添加した。
(比較例1)
実施例1において、板状クレーのみを100重量部用い、クレーを使用しなかった。
(比較例2)
実施例1において、板状クレーを使用せず、クレーのみ100重量部用いた。
【0025】
(1)常態物性:JIS K6253、6251準拠
JIS K6253に準じて所定サイズの試験片の硬さを測定した。
JIS K6251に準じて所定サイズの試験片の引張強さ及び伸びを測定した。
引張強さは値が大きいほど破断しにくく、機械的強度が強いことを示している。
(2)空気加熱老化試験:JIS K 6257準拠
試験片を空気加熱老化試験機を使用して、175℃168時間熱処理を行った後、該試験片を取り出し、硬さ、引張強さ及び伸びを測定した。測定値の変化が小さいほど耐熱性に優れているといえる。なお、表1に記載の硬さ変化、引張強さ変化率及び伸び変化率は(1)常態物性での測定値を基準として算出した値である。
(3)耐油試験:JIS K 6258準拠(オートマティックフルード、175℃×168h)
試験片をオートマティックフルード油に175℃×168h浸漬した後、硬さ、引張強さ及び伸びを測定した。測定値の変化が小さいほど耐油性に優れているといえる。なお、表1に記載の硬さ変化、引張強さ変化率及び伸び変化率は(1)常態物性での測定値を基準として算出した値である。
(4)耐グリース試験:JIS K 6258準拠(ウレア系グリース、175℃×168h)
試験片をウレア系グリースに175℃×168h浸漬した後、硬さ、引張強さ、伸び及び体積を測定した。変化が小さいほど耐グリース性に優れているといえる。なお、表1に記載の硬さ変化、引張強さ変化率、伸び変化率及び体積変化率は(1)常態物性での測定値を基準として算出した値である。
【0026】
[結果]
表1の試験結果からわかるように、実施例1〜実施例5の配合により得られたものによれば、耐熱性、耐油性、耐グリース性に優れたアクリルゴム組成物とすることができる。
具体的には以下のとおりである。
(1)常態物性の試験結果から、実施例1〜実施例5においては良好な結果が得られたことがわかる。この結果から、これらアクリルゴム組成物を加硫成形してなる成形品はOリング、オイルシール、パッキン、ガスケット、ワッシャーシール、ベアリングシールなどの各種シール材に用いることができる物性を備えているものといえる。比較例1は引張強さと伸びの数値が悪く、所望の物性を備えているものとはいえず、上述の各種シール材とすることができないものといえる。比較例2は常態物性においては実施例1〜実施例5と変わらない結果がでている。しかしながら、比較例2が耐熱性、耐油性、耐グリース性に劣るものであることは後述のとおりである。
【0027】
(2)空気加熱老化試験の結果から実施例1〜実施例5においては良好な結果が得られたことがわかる。
比較例1は数値のみを実施例1〜実施例5と比較すると遜色のない結果が得られたようにみえるが、比較例1については、(1)の常態物性の試験結果の数値が非常に悪く、以下(2)空気加熱老化試験〜(4)耐グリース試験の表1の数値はこれに基づいて算出した値である。よって、比較例1は耐熱性、耐油性、耐グリース性に優れたものとはいえない。
また比較例2は硬さ変化、引張強さ変化率、伸び変化率のいずれもが悪く、この結果から、もともと耐熱性を備えた材料として認知されているカルボシル基含有のアクリルゴムであっても、配合する充填材によっては望む耐熱性が得られないことがわかる。
【0028】
(3)耐油試験の結果から実施例1〜実施例5においては良好な結果が得られたことがわかる。実施例1〜実施例5のいずれも硬さ変化が小さく、総合的に判断して耐油性に優れたものということができる。比較例1については上述のとおりである。比較例2は硬さ変化、引張強さ変化率、伸び変化率のいずれも数値が大きく、耐油性に優れたものとはいえない。
この結果から、箔状充填材をカルボシル基含有のアクリルゴム組成物に混合されると、箔状充填材の箔状片(鱗片状または板状片)が同じ方向に板状(層状)に配向され、積み重ねられるため、油の中に浸漬した際にアクリルゴム組成物内部への油の侵入、透過を防ぐ役割をしていることが考えられる。とはいえ、比較例1の結果から充填材として箔状充填材のみを配合しても、常態物性面で所望の引張強さ、伸びが得られず、成形品としても各種シール材として使用することが難しいことがわかる。すなわちこの結果から、箔状充填材をただ配合すればいいというものではなく、充填材と箔状充填材とをそれぞれ混合することが重要であることがわかる。
【0029】
(4)耐グリース試験の結果から実施例1〜実施例5においては良好な結果が得られたことがわかる。いずれも、硬さ変化、引張強さ変化率及び伸び変化率ともに、問題になる数値はなく、耐グリース性に優れたものということができる。比較例1については上述のとおりである。比較例2は硬さ変化、引張強さ変化率、伸び変化率のいずれも数値が大きく、特に伸び変化率が大きいため、耐グリース性に優れたものとはいえない。
この結果からも、耐油試験と同様に箔状充填材がカルボシル基含有のアクリルゴムに混合される箔状充填材の箔状片が同じ方向に配向されるため、グリースの中に浸漬した際にアクリルゴム組成物内部へのグリースの侵入、透過を防ぐ役割をしていることが考えられる。とはいえ、比較例1の結果から充填材として箔状充填材のみを配合しても、常態物性面で所望の引張強さ、伸びが得られず、箔状充填材をただ配合すればいいというものではないことは上述と同様である。