【実施例1】
【0038】
以下、この発明の実施例1を図に基づいて説明する。
図1はこの発明の溶剤回収装置の概略構成図である。
【0039】
まず、この発明に使用する溶剤回収装置の構成について説明する。溶剤を混ぜた塗布材Aを被処理物Bに塗布した後、当該被処理物Bの塗布材Aを乾燥させるために溶剤乾燥室1が設けられている。
【0040】
当該溶剤乾燥室1は前室1a,乾燥室1b及び冷却室1cが順に設けられており、シート状の被処理物Bは、塗布材Aを塗布された後、ローラーを介して溶剤乾燥室1の前室1a、乾燥室1b及び冷却室1cに順に入り、乾燥、冷却後これらの部屋から出て、ドラムに巻かれる。各室は前記シート状の被処理物Bが通過できる最小限の大きさの開口部が設けられている。
【0041】
また、前記前室1aでは乾燥はしないが、若干の溶剤は気化する。また、室内に溶剤が漏れ出るのを防止する。また、前記乾燥室1bは、1室だけの場合と、複数室の場合とがある。また、前記冷却室1cでは乾燥で加熱された被処理物Aを冷却する。
【0042】
この溶剤乾燥室1の乾燥室1bには、乾燥空気の給気路2及び当該乾燥室1bにおいて気化した溶剤を含む排気ガスを排気する排気路3が接続されている。そしてこれらの給気路2及び排気路3を結ぶバイパス路4が設けられ、当該バイパス路4にはダンパー5が設けられている。
【0043】
そして、当該ダンパー5の開路により、排気路
3の排気ガスの一部が給気路2に戻ることが出来る。またこの排気路3のバイパス路4の分岐点以降に濃度センサ6が設けられ、当該濃度センサ6による濃度測定値により前記ダンパー5の開度を調整し、排気ガスの給気路2への風量を制御して、いわゆるリターン濃縮を行うことができ、かつ、排気ガスを所望の濃度にすることが出来る。
【0044】
また、前記排気路3には濃度センサ6の後方に、予冷器7が設けられている。当該予冷器7には冷凍機7aが設けられ、当該予冷器7を通過する排気ガスの温度を冷却することが出来る。さらに当該予冷器7の後方の排気路3に熱交換器8が設けられ、当該熱交換器8の冷却部で、排気ガスをさらに冷却し、排気ガス中の水分を凝縮し、ドレインとして分離、除去する。また、前記熱交換器8の冷却部が第1冷却部となっている。この熱交換器8では熱の回収はできるが温度制御が出来ないため、前記予冷器7で温度調整する。
【0045】
また、当該熱交換器8の後方の排気路3に排気ガスの温度を測る第1温度センサ9が設けられ、当該第1温度センサ9による測定温度が所定の温度となるように、前記予冷器7の冷却を制御する。
【0046】
また、前記第1温度センサ9の後方の排気路3には凝縮器10が設けられている。当該凝縮器10には冷凍機10aが設けられ、これにより、凝縮器10内を冷却し、排気ガス中の溶剤を凝縮することが出来る。
【0047】
また、当該凝縮器10の後方の排気路3に排気ガスの温度を測る第2温度センサ11が設けられ、当該第2温度センサ11による測定温度が所定の温度となるように、凝縮器10の冷却を制御する。これにより、排気ガス中の溶剤が凝縮し、溶剤液となって排気ガスから分離され、回収される。
【0048】
また、前記第2温度センサ11の後方の排気路3には前記熱交換器8が設けられ、溶剤が除去された排気ガスは当該熱交換器8の他方の第1加熱部を通過し、当該箇所で加熱される。これにより排気ガスは乾燥空気となる。この熱交換器8から前記給気路2に接続された帰還路12が設けられている。この帰還路12は前記バイパス路4の分岐点で前記給気路と接続されている。この様に排気路3、帰還路12及び給気路2は循環路となっている。
【0049】
さらに、前記バイパス路4から溶剤乾燥室1に至る給気路2には第2加熱部である加熱器13が設けられ、乾燥空気を所定温度に加熱する構成となっている。また、前記給気路2及び排気路3には、乾燥空気又は排気ガスを送るブロアー14が適宜設けられている。
【0050】
また、前記凝縮器10で分離した溶剤液を回収するタンク型の溶剤回収槽15が設けられ、当該溶剤回収槽15において溶剤を溜め、必要に応じて当該溶剤回収槽15から溶剤を引き出す構成となっている。また、この溶剤回収槽15内の溶剤を常に零度以下の一定の温度、例えば、−18°Cに保持するための冷却装置16が設けられている。
【0051】
また、乾燥空気を前記給気路2に付加するドライエアユニット17が設けられている。このドライエアユニット17では、外気を取り入れてこれを冷却、除湿する冷却器18が設けられ、その出口側に回転式吸着除湿器19が設けられ、外気は、前記冷却器18で冷却、除湿され、さらに、回転式吸着除湿器19の上部で除湿され、乾燥空気としてブロアー20を介して前記給気路2に送られる構成となっている。
【0052】
また一方、外部から取り込んだ外気を脱着用加熱器21で加熱し、これを前記回転式吸着除湿器19の再生部に吹き付け、当該除湿器19に吸着された水分を脱着するようになっている。従って、前記回転式吸着除湿器19の除湿部は常に水分を除湿できる状態になっている。
【0053】
また、前記熱交換器8は、
図2に示すように、第1冷却部8aと第1加熱部8bをブラインが巡回する構成となっており、第1冷却部8aで排気ガスを冷却し、これにより温まったブラインが第1加熱部8bにおいて、冷却された排気ガスを温める。これによりブラインは熱を奪われて冷却される。そして、冷却されたブラインが第1冷却部8aで、上述のように、排気ガスを冷却する構成となっている。
【0054】
以上の構成の溶剤回収装置を用い、溶剤として酢酸エチルを用いた場合溶剤回収方法を説明する。
【0055】
給気路2から乾燥空気が供給され、溶剤乾燥室1内で被処理物Bの溶剤が気化する。そして当該溶剤乾燥室1の内の気化した溶剤を含む乾燥排気ガスは排気路3から排気される。そして、このうちの一部は排気路3からバイパス路4を通り、給気路2に戻る、いわゆるリターン濃縮とする。他は排気路
3の濃度センサ6の所を通過し、当該濃度センサ6で測定した濃度が、酢酸エチルの爆発限界下限値を超えない濃度、実用上は爆発限界下限値の1/4の濃度、酢酸エチルでは5000〜5500ppmとなるように、前記ダンパー5の開度を調整して濃度を所定の値に制御する。
【0056】
そして、排気路3を通った排気ガスは前記予冷器7において温度15°Cまで、冷却する。そして、さらに前記熱交換器8の第1冷却部8aで、排気ガス中の溶剤が凝縮しない温度で、かつ、水蒸気が凝縮する温度、例えば、−26.5°Cまで冷却する。これにより排気ガス中の水分のほとんどは凝縮し、分離され、ドレイン(水)及び霜(氷)となって熱交換器8の第1冷却部8aで除去される。また、前記の冷却は第1温度センサ9の測定温度により前記予冷器7を制御して行う。
【0057】
この様に熱交換器8を通過した排気ガスはほとんどの水分が除去され、さらに前記凝縮器10の冷凍機10aで冷却され、第2温度センサ11の温度測定により冷却温度を、例えば、−46°Cに制御される。この温度は、溶剤である酢酸エチルの飽和蒸気圧が1000ppmとなり、溶剤が凝縮する。
【0058】
これにより排気ガスから溶剤を分離し、分離された溶剤は液となって溶剤回収槽15に溜まる。当該溶剤回収槽15では、冷却装置16によって常に溶剤液の温度を−18°C以下に維持する。これにより、当該溶剤内の残っている水分は氷となる。そして、定期的に又は必要に応じて当該溶剤回収槽15内の氷を取り除く。
【0059】
また、前記凝縮器10を通過した排気ガスは溶剤が除去され、露点温度−46°Cの乾燥空気となり、前記熱交換器8の第1加熱部8bに達する。この第1加熱部8bで乾燥空気は加熱され、帰還路12を通り、前記給気路2に達する。そして、前記ドライエアユニット17からの乾燥空気及びバイパス路4からの排気ガスと合流して第2加熱器13に達し、当該第2加熱器13で、溶剤の乾燥に適した温度(60〜80°C)にて乾燥空気となり、前記溶剤乾燥室1に送られる。
【0060】
以上のように、この発明の実施例1では、前記溶剤乾燥室1の給気、排気の温度及び風量は基本的に一定で行う。その一定風量の乾燥排気の排気ガスの一部を排気路3からバイパス路4を経て給気路2に戻し、その風量を、前記ダンパー5を調節することで溶剤回収部に行く排気ガスの風量が変わり、濃度調整が可能となる。
【0061】
また、この様なドライエアを循環することにより水分の濃度上昇がなく、高温に成らないので溶剤の酸化がなく、排気中の溶剤を爆発に対して安全な範囲でできるだけ高濃度まで濃縮(酢酸エチルの場合は5000ppm)した排気を溶剤回収装置で冷却して行く過程で、排気中の水分をできる限り取り除いてから溶剤を回収する。そのため、溶剤回収用の冷却器の前に、排気中の水分を取り除く別の冷却器を置く。溶剤濃度に応じて冷却温度を決めることで前段では溶剤を含まない水分だけが取り除かれ、最小の水分しか含まれない溶剤が回収できる。
【0062】
回収した溶剤には最小限の水分が含まれる。排気ガス中の水分(ガス)は溶剤回収用の第2冷却部である凝縮器10で排気ガスから取り除かれる際、低温(酢酸エチルの場合、−46°C)で冷却されるため排気中又は前記凝縮器10の冷却面で凝縮して微細な氷となり回収された溶剤中に氷として取り込まれる。
【0063】
その溶剤を溶剤回収槽15に集める過程、及び溶剤回収槽15に集められてからも低温(−18°C)に維持することで、氷の比重(0.9168)に比べ溶剤の比重(酢酸エチル0.902)が小さいので、溶剤回収槽15内に微細な氷が沈んだ状態で集まる。溶剤に水が溶け込んだ状態ではなく、氷と溶剤に分離しているので、溶剤だけを容易に取り出すことが出来、ほとんど水分を含まない溶剤が回収できる。なお、酢酸エチル以外で、印刷でよく使用される溶剤の比重は、トルエンでは0.8623、MEKでは0.806、IPAは0.786といずれも氷の比重より小さい。
【0064】
前記凝縮器10で低温に冷却された排気は低水分のドライエアとなっている。そのドライエアを乾燥空気として戻して使用すると乾燥から回収までがドライエアで循環することとなる。従って、前記予冷器7や凝縮器10等の凝縮回収装置に行く乾燥排気ガスをドライエア(回収の際の冷却で水分が凝縮しない程度の水分量の空気)にしているため、前記凝縮回収装置での冷却部で水分が霜や氷になることがほとんどなくなる。
【0065】
また例えば、塗布材Aを乾燥する被処理物Bが樹脂をコーティングしたシート状のもので連続して溶剤乾燥室1に送られてくる場合など、シート出入り口が開放になり気密が保てない場合、循環ドライエア(乾燥空気)には外部の空気が混入し、その結果水分が増加し、元の低水分含有のドライエアではなくなる。
【0066】
この様に気密を保てない場合に、外部の空気が混入することを軽減するため、上記実施例1のように、別途、ドライエアを作る装置、ドライエアユニット17を設け、溶剤乾燥室1に給気する乾燥空気にドライエアユニットからの乾燥空気を供給、補充し、気密を保てない部分(外部に開放している部分)からはドライエアが排出し、外部空気がドライエア循環路に入らないようにすることもできる。
【0067】
また、出来る限り気密な状態やリーク部分からの外気の侵入防止を図っても、なお、排気風量の大きい場合には、ブロアー14及び20等の吸い込み側のダクト接続部やダンパー5の軸貫通部などから微量の水分が侵入することが想定される。この水分量が微細な場合は、最も温度が低い前記凝縮回収装置での冷却部部分で微細な氷の粒子となって回収溶剤に取り込まれる。それよりさらに水分が多い場合、前段の第1冷却部で水分が凝縮、捕集されることとなる。