(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871320
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】電子ビーム溶解炉およびこれを用いた電子ビーム溶解炉の運転方法
(51)【国際特許分類】
B22D 27/02 20060101AFI20160216BHJP
B22D 23/06 20060101ALI20160216BHJP
B22D 21/06 20060101ALI20160216BHJP
C22B 34/12 20060101ALI20160216BHJP
C22B 9/22 20060101ALI20160216BHJP
B22D 11/041 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
B22D27/02 C
B22D23/06
B22D21/06
C22B34/12 103
C22B9/22
B22D11/041 D
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-163550(P2012-163550)
(22)【出願日】2012年7月24日
(65)【公開番号】特開2014-24066(P2014-24066A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】小田 高士
(72)【発明者】
【氏名】田中 寿宗
(72)【発明者】
【氏名】新良貴 健
【審査官】
池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−124229(JP,A)
【文献】
特開昭62−248558(JP,A)
【文献】
特開平09−143718(JP,A)
【文献】
特開2007−064618(JP,A)
【文献】
特開昭62−161929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 9/22
B22D 11/041
B22D 27/02
F27D 11/08
H01J 37/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属を保持するハースおよび鋳型と、
前記溶融金属を溶融状態に保持する電子ビームを生成する電子銃と、
電子ビームの照射位置の制御信号を前記電子銃に出力する電子ビーム照射パターン出力装置と、
前記制御信号を入力して電子ビームの照射方向を制御する電子銃制御手段と
から構成された電子ビーム溶解炉であって、さらに、
前記ハースまたは鋳型内の溶融金属表面に電子ビームが照射されて形成される高輝度部位を測定するイメージセンサーと、
電子ビーム照射位置の時刻ごとの座標情報を前記電子ビーム照射パターン出力装置に事前に記憶させておき、ある時刻における前記座標情報と、その時刻における前記イメージセンサーによって検出された高輝度位置との差異を計算する演算装置と、
前記演算装置で演算された差異に基づき補正出力信号を生成する出力装置と、
前記補正出力信号を前記制御信号に付加させる装置を具備したことを特徴とする電子ビーム溶解炉。
【請求項2】
溶融金属を保持するハースおよび鋳型と、前記溶融金属を溶融状態に保持する電子ビームを生成する電子銃と、電子ビームの照射位置の制御信号を前記電子銃に出力する電子ビーム照射パターン出力装置と、前記制御信号を入力して電子ビームの照射方向を制御する電子銃制御手段と、前記ハースまたは鋳型内の溶融金属表面に電子ビームが照射されて形成される高輝度部位を測定するイメージセンサーと、電子ビーム照射位置の時刻ごとの座標情報を前記電子ビーム照射パターン出力装置に事前に記憶させておき、ある時刻における前記座標情報とその時刻における前記イメージセンサーによって検出された高輝度位置との差異を計算する演算装置と、前記演算装置で演算された差異に基づき補正出力信号を生成する出力装置と、前記補正出力信号を前記制御信号に付加させる装置を具備したことを特徴とする電子ビーム溶解炉の運転方法であって、
前記イメージセンサーで測定された前記高輝度部位の位置情報と、前記事前に記憶させておいた電子ビーム照射位置情報との差異が所定値以下となるように電子ビームの照射位置を制御することを特徴とする電子ビーム溶解炉の運転方法。
【請求項3】
前記高輝度部位座標を(x、y)とし、前記照射座標を(X,Y)とした場合、両者の平面座標のX座標およびY座標における差異の絶対値|X−x|および|Y−y|をそれぞれ1mm以下に制御することを特徴とする請求項2に記載の電子ビーム溶解炉の運転方法。
【請求項4】
前記高輝度部位座標(x、y)と、前記照射座標(X,Y)との変位量{(Y−y)2+(X−x)2}1/2を1mm以下に制御することを特徴とする請求項2に記載の電子ビーム溶解炉の運転方法。
【請求項5】
溶融させる金属が、チタンまたはチタン合金であることを特徴とする請求項2に記載の電子ビーム溶解炉の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビーム溶解炉内に配置したハースまたは鋳型内に形成されている溶融金属プールへの電子ビーム照射技術に係り、特に、電子ビーム照射による加熱位置を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビーム溶解炉は、真空アーク溶解炉に比べて減圧度が低く設定できるため原料の精製効果が高く、純度の高い金属の溶製に好適であることが知られている。
【0003】
電子ビーム溶解炉の中でも、ハースと呼ばれる精製炉が併設されている場合が多く、同ハース内で原料を溶解することにより原料中に含まれている不純物を効果的に分離精製することができるという効果を奏するものである。
【0004】
電子ビーム溶解炉は、同溶解炉の天井部位に配設された電子銃から発せられた電子ビームを対象物に向けることで前記対象物の加熱溶解を行っている。電子銃から発せられた電子ビームは、直進性を有しているため、偏向コイルにより電子ビームを曲げるとともに電子ビームの強度を設定することにより、対象物を確実に加熱溶解することができるという特徴を有している。
【0005】
しかしながら、電子ビーム溶解炉のハース内部には、電子ビーム加熱された対象物が溶融状態に保持されており、同部位からの金属も蒸発しており、同蒸気が電子ビームの進行経路に侵入すると、電子ビームが前記金属蒸気と干渉し、その結果、電子ビームの進行方向が変えられる場合があり、必ずしも設定した方向に電子ビームが発っせられていない場合がある。また、前記した電子ビーム溶解炉の内部状況のみならず、外部から侵入するノイズにより電子ビームの照射方向が意図しない方向に変化する場合がある。さらに、電子ビームおよびビームを曲げる偏向コイルは、外部磁場の影響を受け易いことも知られており、そのような場合にも、電子ビームが予期せぬ方向に変位する場合があり、改善が求められている。
【0006】
前記したような電子ビームの進行方向が意図せぬ方向に散乱した場合には、例えば、溶融金属が保持されているハースの壁面が加熱される場合があり、これを長時間に放置しておくと、ハースが損傷を受けるおそれがあり、好ましくない。
【0007】
このような問題に対して、電子ビームが加熱された部位の温度分布を測定し、同測定値に基づき電子ビームの強度を調節するような技術が知られているが(例えば、特許文献1参照)、電子ビームの照射位置の意図しない変位の補正に関する記載は見当たらない。
【0008】
また、電子ビームから発せられた電子ビームが鋳型に誤って照射された場合に発生する特性X線を検出して、電子ビームの誤照射を検知する手段も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
しかしながら、当該方法においては、前記電子ビームが誤照射されて初めて誤動作を検出することができるものであり、鋳型への損傷を予防することはできず、少なからず損傷を招くことになり好ましくない。
【0010】
このように、電子銃から照射される電子ビームの意図しない変位を防止し、確実に加熱対象物に照射されるような技術が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平05−192747号公報
【特許文献2】特公平06−003727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、電子ビーム溶解炉内に配設されたハースや鋳型内に形成された溶融金属プールに対して、事前に予定されている位置に精度よく電子ビームを照射する技術の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる実情に鑑み前記課題について鋭意検討を進めたところ、イメージセンサーを用いて出力される電子ビーム溶解炉内に配設されたハースあるいは鋳型内の溶融プールに現に電子ビームが照射されている高輝度部位の位置情報と、電子ビームの制御手段に事前に記憶させた電子ビームを照射すべき領域の位置情報とを比較させ、前記両者の差異が最小となるように電子ビームの照射位置を制御することにより、ハースあるいは鋳型内に形成された溶融プールの加熱領域を精度よく制御することができることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本願発明に係る電子ビーム溶解炉は、溶融金属を保持するハースおよび鋳型と、溶融金属を溶融状態に保持する電子ビームを生成する電子銃と、電子ビームの照射位置の制御信号を電子銃に出力する電子ビーム照射パターン出力装置と、制御信号を入力して電子ビームの照射方向を制御する電子銃制御手段とから構成された電子ビーム溶解炉であって、さらに、ハースまたは鋳型内の溶融金属表面に電子ビームが照射されて形成される高輝度部位を測定するイメージセンサーと、
電子ビーム照射位置の時刻ごとの座標情報を前記電子ビーム照射パターン出力装置に事前に記憶させておき、ある時刻における前記座標情報と、その時刻における前記イメージセンサーによって検出された高輝度位置との差異を計算する演算装置と、演算装置で演算された差異に基づき補正出力信号を生成する出力装置と、補正出力信号を制御信号に付加させる装置を具備したことを特徴とするものである。
【0015】
本願発明に係る電子ビーム溶解炉は、前記イメージセンサーが、高解像度のCCDカメラまたは温度センサーであることを好ましい態様とするものである。
【0016】
本願発明に係る電子ビーム溶解炉の運転方法は、溶融金属を保持するハースおよび鋳型と、溶融金属を溶融状態に保持する電子ビームを生成する電子銃と、電子ビームの照射位置の制御信号を電子銃に出力する電子ビーム照射パターン出力装置と、制御信号を入力して電子ビームの照射方向を制御する電子銃制御手段と、ハースまたは鋳型内の溶融金属表面に電子ビームが照射されて形成される高輝度部位を測定するイメージセンサーと、
電子ビーム照射位置の時刻ごとの座標情報を前記電子ビーム照射パターン出力装置に事前に記憶させておき、ある時刻における前記座標情報とその時刻における前記イメージセンサーによって検出された高輝度位置との差異を計算する演算装置と、演算装置で演算された差異に基づき補正出力信号を生成する出力装置と、補正出力信号を制御信号に付加させる装置を具備したことを特徴とする電子ビーム溶解炉の運転方法であって、イメージセンサーで測定された高輝度部位の位置情報と
、前記事前に記憶させておいた電子ビーム照射位置情報との差異が所定値以下となるように電子ビームの照射位置を制御することを特徴とするものである。
【0018】
本願発明に係る電子ビーム溶解炉の運転方法は、前記高輝度部位座標を(x、y)とし、前記照射座標を(X,Y)とした場合、両者の平面座標のX座標およびY座標における差異の絶対値|X−x|および|Y−y|をそれぞれ1mm以下に制御することを好ましい態様とするものである。
【0019】
本願発明に係る電子ビーム溶解炉の運転方法は、前記高輝度部位座標(x、y)と、前記照射座標(X,Y)との変位量{(Y−y)
2+(X−x)
2}
1/2を1mm以下に制御することを好ましい態様とするものである。
【0020】
本願発明に係る電子ビーム溶解炉の運転方法は、溶融させる金属が、チタンまたはチタン合金であることを好ましい態様とするものである。
【発明の効果】
【0021】
以上述べた本発明に従えば、電子ビーム溶解炉内に配設されたハースおよび鋳型内に形成された溶融金属プールを、ハースおよび鋳型を損傷させることなく精度よく加熱することができ、その結果、ハース全体を有効に利用することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の電子ビーム溶解装置の模式的な断面図である。
【
図2】本発明における電子ビーム照射状況の模式的な斜視図である。
【
図3】本発明におけるハース内への電子ビーム照射状況を示す平面図である。
【
図4】
図3において電子ビームが変位した部分を拡大した平面図である。
【
図5】本発明における鋳型内への電子ビーム照射状況を示す平面図である。
【
図6】本発明における電子ビーム照射位置の制御を示すフローチャート図である。
【
図7】本発明における電子ビーム照射位置の制御を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の最良の実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。
本発明に係る好ましい態様の説明に先立って、
図1を用いて本発明に用いる電子ビーム溶解炉の好ましい態様について以下に述べる。
図1は、電子ビーム溶解炉の模式図である。符号4は、原料10を外部から供給するための原料フィーダであり、原料フィーダ4の下流側には、原料10およびその溶湯12を保持するハース3が設けられている。ハース3の下流側には、溶湯12を流し込み冷却凝固させるための鋳型5が設けられている。ハース3および鋳型5の上方には、原料を溶融させハース3内の溶湯12および鋳型5内の溶湯プール13とするための電子銃1aおよび1bがそれぞれ配置されている。鋳型5の下方には、溶湯12を冷却凝固して形成されたインゴット11を係合させる引き抜きベース6と、引き抜きベース6をインゴット11と共に下方に引くシャフト7および引き抜き動力8が接続されている。
【0024】
まず、スポンジチタンに代表されるような原料10をハース3の側壁より該ハース3の内部に形成されたハース溶湯12に投入する。ハース溶湯12に投入された原料10は、電子銃1aより電子ビーム2aを照射されてハース溶湯12と一体となり、ハース3の下流に配置された鋳型5に供給される。
【0025】
鋳型5に供給されたハース溶湯12は、浴面では電子銃1bより照射される電子ビーム2bにより溶融状態を保ち溶湯プール13を形成しているが、下方に行くほど鋳型5の水冷壁により冷却固化されて凝固シェルを形成する。鋳型5内の壁近傍に形成された凝固シェルは、鋳型5の引き抜き方向に沿ってその厚みを増し、最終的には、全体が固相となりインゴット11として抜き出される。
【0026】
インゴット11の底部には、引き抜きベース6が係合されており、上記引き抜きベース6に接合されたシャフト7を介して引き抜き動力8により鉛直下方に抜き出すことができる。
【0027】
図2は、
図1における電子銃1aと水冷銅ハース3およびその内部に溶融状態で保持されたハースプール12の部分を拡大して示している。本発明においては、更に、前記電子銃1aの近傍に、イメージセンサー20が配置されている。このイメージセンサー20により、ハースプール12内に照射された電子ビームの照射位置を以下に述べるようにして検出することができる。
【0028】
電子ビーム2aは、電子銃1aよりハースプール12の表面をライン状に走査しつつ照射されるように制御されている。すなわち、予めプログラム入力された始点30a〜32aから終点30b〜32bまでの、照射開始からの時刻ごとのXY座標が、図示しない電子ビーム照射パターン出力装置から制御信号として出力され、この制御信号が図示しない電子銃制御手段に入力され、制御信号が入力された電子銃制御手段により電子銃の偏向コイルの磁場をX方向およびY方向において制御して、電子銃は領域30上を始点30aから終点30bへビームを照射し、領域31を始点31aから終点31bへ照射し、続いて領域32を始点32aから終点32bへ、と順次定められた領域を高速で照射するという方式である。
【0029】
前記した電子ビーム2aの照射される位置を電子ビーム溶解炉の本体に設けた覗き窓より観察していると、電子ビーム自体は不可視であるが、電子ビームが照射されているハースプール12上の部位に高輝度を発する部位があり、前記高輝度部位を手掛かりにして現に電子ビームが照射されている領域を把握することができる。前記した高輝度部位は、
図2に示すように、電子ビームが照射されている領域と電子ビームが照射されていない部位との境界近傍に対して線状(30〜32等)に観察され、電子ビーム照射の始点および終点である端部30a/b、31a/b、32a/bにおいて特に高輝度に観察することができる。
【0030】
従って、これら高輝度部分から発せられる周囲より相対的に高温の熱をイメージセンサー20によって検出することにより、高輝度部分のXY座標を読み取ることができる。以上のようにして、電子ビーム照射位置の設定、電子ビームの照射、および照射された電子ビームの実際の位置の検出を行うことができる。なお、イメージセンサー20は、高解像度のCCDカメラを使用することが好ましいが、その他のイメージセンサーを使用して高輝度部分の光を検出するようにしてもよい。
【0031】
本発明の電子ビーム溶解炉の制御方法においては、最初に前記の電子ビーム照射位置の時刻ごとの座標の入力操作をマニュアルで行うことで、ハース3内に保持された溶融金属12の照射位置、即ち、平面座標を図示しない電子ビーム照射パターン出力装置に事前に記憶させ、制御信号として出力させる。ここで、「時刻ごとの座標」とは、照射開始から所定の時間経過後において照射されるべき座標を意味する。
【0032】
次いで、前記した電子ビームの照射領域を記憶させた後、その制御信号を電子銃制御手段に入力して稼動させて、設定した領域内に上述のように走査させつつ電子ビームを照射して、ハース3に保持された溶融金属12を均一に加熱することができる。
【0033】
本発明においては、ハース3の上方空間に配設した電子銃1aの近傍にイメージセンサー20が配設されており、前記したイメージセンサー20にて、現に溶解している部位の温度情報に基づき高輝度部位の座標情報を得、図示しない演算手段にて、予めプログラムされたその時刻における照射されるべき座標と、実際の高輝度部位座標から別個にその差異を演算させて、現に電子ビーム2aが照射されている領域を把握することができるという効果を奏するものである。
【0034】
前記した温度情報に基づき得られた高輝度部位(加熱領域)の位置情報と、事前に電子銃制御手段に記憶させた位置情報を比較演算させて得られた位置情報の差異が上限を越えた場合には、電子ビームの照射位置を修正することができる。
【0035】
その方法を
図3および4を用いて具体的に説明する。
図3および4において実線部分は、予めプログラムされた電子ビーム照射対象の領域である。始点30aより電子ビーム照射を開始し、仮に金属蒸気の干渉や外部磁場等の影響で電子ビームが変位し始め、破線で示すコースに電子ビームが照射された場合、ある時刻において、予めプログラムされた座標情報によれば電子ビームは30c(座標x
c、y
c)に照射されるべきところ、イメージセンサーによって検出された高輝度位置は30d(座標x
d、y
d)となり、両者の座標に差異が生じる。
【0036】
この両座標が演算手段に入力され、その変位量{(y
d−y
c)
2+(x
d−x
c)
2}
1/2が演算で求められ、変位量が所定の値を超えた場合に、電子銃制御手段に対して変位のX成分ΔX=|x
d−x
c|およびY成分ΔY=|y
d−y
c|の情報がフィードバックされ、このX成分およびY成分だけ電子ビームの照射方向を修正して、30dと30cの座標の間に生じた差異を解消することができる。
【0037】
図6に示すように、電子ビームの照射位置の修正は、両者の位置情報を入力として比較演算器10よりそれらの差異、すなわち両座標のズレを修正するような電子ビームの照射位置制御用の信号を出力して、これを電子銃制御装置に入力して、電子ビームの照射位置を自動制御することができる。
【0038】
図7は、
図6の内容を具体的に示した電子ビーム制御システムを表している。
図7に示した高解像度CCDとは、本願発明に係るイメージセンサーの好ましい一態様であり、電子銃の照射状況を撮像した結果に基づき、電子ビームの照射によって加熱されたハースまたは鋳型内プールの高輝度部位が検出できるような装置で構成することが好ましい。
【0039】
前記装置で検出された高輝度部位により電子ビームの照射位置を検出することができる。前記照射位置情報を演算装置に入力し、電子ビームの照射目標位置および実績位置を計算からのずれを計算させて、補正信号を生成し、これを、電子ビーム照射パターン出力装置から電子銃に照射される信号に付加させることで、電子ビームの照射位置に近づけることがでできるという効果を奏するものである。
【0040】
図7に示したHは、ハースまたは鋳型内に形成されているプールの表面に照射する電子ビーム幅を意味している。前記した電子ビームの幅Hも電子ビーム照射信号の幅(H)として出力させることができるという効果を奏するものである。
【0041】
なお、
図7の破線で囲んだ高解像度CCDカメラと演算装置および補正信号の出力装置は、個別のユニットとして構成し既存のEB照射パターン出力装置に増設する形で本願発明を実施することができる。
【0042】
あるいは、電子ビーム照射パターン出力装置に対して初めから高解像度CCDカメラと演算装置および補正信号の出力装置に組み込む形でも本願発明を実施することができる。
【0043】
図3および4において電子ビーム照射によって加熱された点の平面座標(x
d、y
d)と、本来電子ビームを照射したい点の平面座標(x
c、y
c)は、両者の平面座標の差異の絶対値が、所定の値以下になるように制御することを好ましい態様とするものである。
【0044】
本発明においては、特に両者の平面座標の差異の絶対値の差異が1mm以下に制御することを好ましい態様とするものである。
【0045】
即ち、
図4の状況においてこれを定式化すると、式(1)および(2)として表現することができる。
|x
d−x
c| < 1mm …(1)
|y
d−y
c| < 1mm …(2)
【0046】
電子ビーム2aの照射位置は、電子銃1a内に装備された偏向コイル内に流す電流を制御することにより、コイルに形成される磁場を変更することで制御することができる。偏向コイルに何も入力が無い場合の電子銃からの電子ビーム照射方向を初期位置とすると、X方向の偏向コイルに電流を流すことで電子ビームの照射方向をX軸方向に沿って初期位置から変化させることができ、同様に、Y方向の偏向コイルにX方向とは独立に電流を流すことで電子ビームの照射方向をY軸方向に沿って初期位置から変化させることができる。
【0047】
本発明においては、上記前記平面座標(x
c、y
c)と平面座標(x
d、y
d)および(1)式および(2)式の値を演算手段で演算させ、その結果を電子銃1aにフィードバックすることにより、ハースプール12に対して、現に加熱すべき領域を精度よく制御することができるという効果を奏するものである。
【0048】
本発明は、前記したようなハース3のみならず、鋳型5内に形成された溶融プール13に対しても好適に適用することができる。その様子を
図5に示す。
図5に示すように、鋳型5内の電子ビームを照射すべき領域として、始点33aから終点33bに至る領域33、同様にして領域34等の座標をプログラムし、上記と同様にして電子ビーム照射、高輝度部分の検出および照射位置の修正を行なうことができる。
【0049】
また、本発明を有する機構を具備した電子ビーム溶解炉は、純チタンの溶解のみならず、チタン合金の溶解に対しても好適に適用することができるという効果を奏するものである。更に、純チタンやチタン合金以外のモリブデンや二オブ等の高融点金属に対しても好適に適用することができるという効果を奏するものである。
【実施例】
【0050】
以下、実施例および比較例によって本発明をより詳細かつ具体的に説明する。
1)電子銃の出力:400KA
2)ハース
材質:水冷銅
寸法:0.5m(長さ)×0.3m(幅)
3)鋳型
材質:水冷銅
鋳型断面形状:丸型
4)溶解原料:スポンジチタン、合金スクラップ
5)イメージセンサー:高解像度CCDカメラ
6)演算装置:CCDカメラで測定された温度情報から高輝度領域の位置情報を演算させ、次いで、電子ビームを照射すべき位置と比較し、電子ビームの照射位置の修正信号を出力する装置。
7)電子ビーム照射位置制御装置:偏向コイルにより電子ビームの照射方向を制御する。また、加えて、演算装置から出力された修正信号に基づき、電子ビームの照射方位を制御する装置。
【0051】
[実施例1]
上記した装置を使用して、ハースにスポンジチタンを供給して溶解させて溶湯となしこれを鋳型に排出させてインゴットを生成させた。上記したインゴットの生成終了後、電子ビーム溶解炉内に配設したハース壁を肉眼で観察したが、ハースが損傷されている様子は検出されなかった。
【0052】
[比較例1]
本発明に係るイメージセンサーおよび電子ビーム照射位置制御装置を使用せず、電子ビームの照射位置を修正しない以外は、実施例1と同じ条件で初期プログラムのまま電子ビームを照射してインゴットを生成した。インゴットの溶製後、電子ビーム溶解炉を解体して、ハースの損傷状況を肉眼で観察したところ、1箇所に電子ビームが照射された軽微な痕跡が観察された。
【0053】
[実施例2]
実施例1において、原料をスポンジチタンから合金スクラップに変更した以外を同じ条件でインゴットを溶製した。溶製されたインゴット中の合金成分の分布を調査したところ、長手方向及び半径方向のいずれも、インゴットの平均値の絶対値に対して、相対誤差で、3%〜8%のばらつきに収まることが確認された。
【0054】
[比較例2]
比較例1において、実施例2の原料を使用した以外は同じ条件下で合金インゴットを溶製した。溶製された合金インゴット中の長手方向を半径方向の合金成分の偏析状況を調査したところ、平均値の絶対値に対して相対誤差で、6%〜17%のばらつきが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、電子ビーム溶解炉において使用するハースや鋳型の寿命を延長することができ、また、均一な組成のインゴットを製造しうる装置および方法を提供するものである。
【符号の説明】
【0056】
1a、1b…電子銃、
2a、2b…電子ビーム、
3…ハース、
4…原料フィーダ、
5…水冷銅鋳型、
6…引き抜きベース、
7…シャフト、
8…引き抜き動力、
10…原料、
11…インゴット、
12…溶融金属プール、
13…溶融金属プール、
20…イメージセンサー、
30〜34…プログラムされた照射領域、
30a〜34a…端部(照射始点)、
30b〜34b…端部(照射終点)、
30c…プログラムされた照射位置、
30d…変位した照射位置。