(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスク等で用いられる磁気メディアにおいては、磁気粒子を微細化し、磁気ヘッド幅を極小化し、情報が記録されるデータトラック間を狭めて高密度化を図るという手法が用いられてきた。その一方で、この磁気メディアは高記録密度化がますます進み、隣接記録トラック間あるいは記録ビット間の磁気的影響が無視できなくなっている。そのため、従来手法だと高密度化に限界がきている。
【0003】
近年、新しく、パターンドメディアという、新しい磁気メディアが提案されている。このパターンドメディアは、隣接する記録トラックまたは記録ビットを溝または非磁性体からなるガードバンドで磁気的に分離して、磁気的に分離して、磁気的干渉を低減して信号品質を改善し、より高い記録密度を達成しようとするものである。
【0004】
このパターンドメディアを量産する技術として、マスターモールド(原盤ともいう)、又はこのマスターモールドを元のモールドとして一回または複数回転写して複製したコピーモールドが有する凹凸パターンを被転写体(ここでは、磁気メディア)に転写してパターンドメディアを作製する技術である、インプリント法(またはナノインプリント法)が知られている。
【0005】
ところで、ここで挙げたインプリント法においては、最終的な被転写体(生産物)にパターン転写して量産するには、通常、マスターモールドは用いられない。上述のとおり、その代わりに、ナノインプリント法により、マスターモールドの微細な凹凸パターンを別の被転写体に転写形成して複製した2次モールドや、この2次モールドの微細なパターンをさらに別の被転写体に転写複製した3次モールド、あるいはより高次のコピーモールドが用いられる。
【0006】
また、例えば上述のパターンドメディアを実際に大量に生産するには、複数のインプリント装置を並列に配備して稼働させる。従って、これら複数のインプリント装置のために、所定同一の微細な凹凸パターンが形成されたコピーモールドを複数枚作製して用意する必要がある。
【0007】
ここで、ナノインプリント法では、被転写体(即ち、コピーモールド作製用基板)からモールドを円滑に離型するために、モールド表面(即ち、凹凸パターンの表面)には、予め離型剤組成物を塗布して離型層を形成する。
一方、上記コピーモールド作製用基板の表面(即ち、凹凸パターンを転写複製する面)には密着補助剤組成物からなる密着補助層を予め塗布形成する。その後、当該密着補助層上にナノインプリント用レジスト(例えば、UV硬化性樹脂)を回転塗布法あるいはインクジェット法により塗布して、レジスト層を形成する。
【0008】
そうして、レジスト層とコピーモールド作製用基板との密着力が、レジスト層とモールドとの密着力よりも大きくなるようにして、モールドの凹凸パターンが転写複製されたレジスト層(即ち、レジストパターン)をコピーモールド作製用基板上に得る。
これによって、モールドとコピーモールド作製用基板との離型を円滑かつ低い離型圧で行うことが出来る。
その結果、離型不良あるいは密着不良に起因する転写形成されたレジストパターンの損傷(剥がれ、消失等)、モールド上のパターンの損傷、または、モールドの汚染(剥がれたレジストパターンの移着等)、あるいはまた、モールドあるいはインプリント装置への損傷を抑制低減できる。
【0009】
ところが、基板とレジスト層との間の密着性が十分でない場合、モールドをコピーモールド作製用基板から離型する最中に、凹凸パターンが転写形成されたレジスト層の一部が剥離消失してしまうおそれがある。また、剥離しなくとも、レジストパターンが倒れたり、レジストパターンにうねり等の変形が生じたりする。
【0010】
ところでまた、上記コピーモールドの原盤であるマスターモールドを作製する手法としては、フォトリソグラフィ技術によって基板そのものに所定の凹凸パターンを有するようにエッチング加工を施し、それをモールドとする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。例を挙げると、石英基板の主表面上に形成されたエッチング用ハードマスク層の上に(または、石英基板の主表面上に)レジスト層を設け、エネルギービーム(例えば電子線)によるパターン描画をこのレジスト層に対して行う。その後、描画されたレジスト層を現像処理することによって所定のレジストパターンを形成し、最終的には基板に所定の凹凸パターンを形成してマスターモールドとする。
【0011】
ところが、コピーモールドの場合と同様に、前記のハードマスク層(あるいは石英基板)とレジスト層との間の密着性が十分でない場合、レジストパターンを形成しようとしても、現像処理中に剥離消失してしまう。または、レジストパターンが倒壊したり、レジストパターンにうねり等の変形を生じたりする。
【0012】
このように、マスターモールド及びコピーモールドの製造において、レジストパターンに異常が発生してしまうと、最終的に完成するマスターモールドあるいはコピーモールドに形成されているべき所定の凹凸パターンに欠陥(欠損)や変形を生じ、また、パターンの精度(形状、寸法の精度等)が低下する(これらを総じて、パターン不良ともいう)。
また、マスターモールドに生じたパターン不良はコピーモールドに転写複製される。さらに、元のモールドに存在し転写複製されたパターン欠陥に加えて、コピーモールド作製時に新たにパターン不良が生じて、順次複製されるコピーモールドの凹凸パターンの欠陥はさらに増化し、また、パターンの精度はますます劣化して行く。
さらには、インプリント法により製造される最終製品(例えば磁気メディア)の品質および精度が劣化する、あるいは製造歩留に関わる問題となる。
【0013】
ここで、この基板とレジスト層との間の密着性を向上すべく、シランカップリング剤による表面処理により密着層を基板とレジスト層との間に介在させることにより、高圧噴射による現像によっても、パターンの倒壊や剥離、変形などが有効に防止できる技術について、特許文献2には記載されている。
【0014】
また、特許文献3には、感光性レジストとの密着性を高めるために、基板の表面にHMDS(ヘキサメチルジシラザン)を構成材料に用いた密着層を形成する技術が記載されている。
【0015】
さらに特許文献4には、金属薄膜と熱可塑性高分子との接着性に優れたナノインプリント用接着剤として、ベンゾフェノンからなる光硬化性樹脂を光硬化させた硬化膜層を用い、金属膜上に上記ナノインプリント用接着剤と熱可塑性高分子の膜層とをこの順に設けることで、パターンの消失、変形を抑制でき、設計どおりの微細な金属薄膜パターンを有する基板を製造する技術が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
近年、パターンに対する微細化の要請は益々高まっている。特に、磁気メディアの高記録密度化を例に取ると、1テラビット/平方インチの記録密度を達成するためのパターン(1個のビット)の占有綿面積は625nm平方である(非特許文献1)。ビット間隔を25nmとすると、トラックピッチも25nmとなり、隣接ビット間と隣接トラック間にそれぞれ10nmの溝を形成すると、極めて微少な、1辺が15nmの正方形パターンを形成することになる。また、磁気メティアの面記録密度は年率60%から100%で増加してきており、今後も同様な高記録密度化が込まれている。
従って、シランカップリング剤あるいはHMDSからなる密着補助層を用いることで十分な密着力が得られているレジスト層と基板との組み合わせであっても、上記のレジストパターンと下地層(基板)との接触面積の激減に起因する密着力低下が、レジストパターンの剥離や倒れ、変形などのパターン不良を引き起こし、最終製品の精度と品質あるいは製造歩留に限界を与えるおそれがある。
【0019】
また、特許文献4のような光硬化性樹脂を接着剤として使用した場合、紫外線照射を行わなければ密着層として機能しない。そのため、レジストパターンを形成する前に別途密着層形成のための紫外線照射工程が必要となり、製品の製造コストが増大するおそれがある。
【0020】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、十分な密着力を有し、精度良くパターンを形成することができる密着補助層付き基板、モールドの製造方法及びマスターモールドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1の態様は、
基板上に密着補助層が設けられており、前記密着補助層を介して有機化合物層が設けられるべき密着補助層付き基板において、
前記密着補助層に含まれる化合物一分子中には吸着官能基と密着促進官能基とが含まれ、
前記吸着官能基は、主として基板に対して結合している変性シラン基からなり、
前記密着促進官能基は、主として前記有機化合物層に対する密着を促進向上させることを特徴とする密着補助層付き基板である。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の発明において、
前記有機化合物層はレジスト層であり、
前記密着促進官能基は、前記レジスト層に対して光ラジカル反応を行う官能基であることを特徴とする。
本発明の第3の態様は、第1の態様に記載の発明において、前記密着促進官能基は、前記有機化合物層の元となる薬剤を前記密着補助層上に塗布した際、前記薬剤の接触角が30°以下となる官能基であることを特徴とする。
本発明の第4の態様は、第1又は第2の態様に記載の発明において、
前記密着促進官能基はメルカプト基であることを特徴とする。
本発明の第5の態様は、第1又は第3の態様に記載の発明において、
前記密着促進官能基はメタクリル基又はエポキシ基であることを特徴とする。
本発明の第6の態様は、第1ないし第5のいずれかの態様に記載の発明において、前記密着促進官能基は分子鎖の少なくとも一方の末端に設けられていることを特徴とする。
本発明の第7の態様は、第1ないし第6のいずれかの態様に記載の発明において、前記変性シラン基は分子鎖の少なくとも一方の末端に設けられていることを特徴とする。
本発明の第8の態様は、第1ないし第7のいずれかの態様に記載の発明において、前記変性シラン基はアルコキシシラン基であることを特徴とする。
本発明の第9の態様は、第8の態様に記載の発明において、前記アルコキシシラン基はトリメトキシシラン基であることを特徴とする。
本発明の第10の態様は、第1ないし第9のいずれかの態様に記載の発明において、前記有機化合物層はレジスト層であり、前記レジスト層は光硬化性樹脂からなることを特徴とする。
本発明の第11の態様は、第1ないし第9のいずれかの態様に記載の発明において、前記有機化合物層はレジスト層であり、前記レジスト層は紫外線域に実質的な感度を持たない電子線描画露光用レジストからなることを特徴とする。
本発明の第12の態様は、
基板上に密着補助層が設けられており、前記密着補助層を介してレジスト層が設けられるべき密着補助層付き基板において、
前記密着補助層に含まれる化合物一分子中の分子鎖の一方の末端にはトリメトキシシラン基が設けられており、もう一方の末端にはメルカプト基、メタクリル基又はエポキシ基が設けられていることを特徴とする密着補助層付き基板である。
本発明の第13の態様は、
所定のパターンに対応する凹凸が設けられたインプリント用のモールドから別のコピーモールドを製造する方法であって、
前記別モールド用の基板上にハードマスク層を形成し、前記ハードマスク層上に密着補助層を形成し、前記密着補助層の上にパターン形成用のインプリント用レジスト層(以降、レジスト層ともいう)を形成する工程と、
インプリントにより、前記モールドが有するパターンを前記レジスト層に転写する工程と、
前記レジスト層から前記モールドを離型した後、所定のパターンが転写された前記レジスト層をマスクとして、前記ハードマスク層に対してエッチングを行う工程と、
を有し、
前記密着補助層に含まれる化合物一分子中には吸着官能基と密着促進官能基とが含まれ、
前記密着補助層を形成する際にベークを行うことにより、
変性シラン基からなる前記吸着官能基が、主として基板に対して結合し、
前記密着促進官能基が、主として前記レジスト層に対する密着を促進向上させることを特徴とするモールドの製造方法である。
本発明の第14の態様は、第13の態様に記載の発明において、
光インプリント法により、前記モールドが有する凹凸パターンを前記レジスト層に転写する工程において、
前記光インプリント法において用いられる照射光によって、前記レジスト層に対して前記密着促進官能基を光ラジカル反応させることを特徴とする。
本発明の第15の態様は、
インプリント用のマスターモールドを製造する方法であって、
基板上にハードマスク層を形成し、前記ハードマスク層上に密着補助層を形成し、前記密着補助層の上にパターン形成用の電子線描画露光用レジスト層(電子線レジスト層ともいう)を形成する工程と、
光照射装置により、前記のハードマスク層、密着補助層、電子線レジスト層を順に形成した基板を光照射する工程と、
電子線描画(露光)装置により、前記電子線レジスト層に所定のパターンを描画露光し、その後現像して、所定のレジストパターンを形成する工程と、
所定のパターンが形成された前記電子線レジスト層(レジストパターン)をマスクとして、前記ハードマスク層に対してエッチングを行う工程と、
を有し、
前記密着補助層に含まれる化合物一分子中には吸着官能基と密着促進官能基とが含まれ、
前記密着補助層を形成する際にベークを行うことにより、
前記吸着官能基が変性シラン基からなり、主として基板に対して結合し、
前記密着促進官能基が、主として前記レジスト層に対する密着を促進向上させることを特徴とするマスターモールドの製造方法である。
本発明の第16の態様は、
第15の態様に記載の発明において、
少なくとも前記電子線レジスト層の現像より前に、前記光照射によって前記電子線レジスト層に対して密着促進官能基を光ラジカル反応させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、十分な密着性を有し、精度良くパターンを形成することができる密着補助層付き基板、モールドの製造方法及びマスターモールドの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明者らは、基板とレジスト等の有機化合物層との間に設ける密着補助層であって、基板及び有機化合物層の双方と十分な密着性を有し、基板に対する有機化合物層の密着力を補助して、精度良くパターンを形成することができる密着補助層について種々検討した。この検討に際し、本発明者らはまず、基板に対して十分な密着力を提供するシランカップリング剤に焦点を当てた。
【0025】
そして本発明者らは、このシランカップリング剤を構成する化合物一分子中において、この変性シラン基以外に、主として前記有機化合物層に対する密着力を促進向上させる密着促進官能基を設けることに思い至った。
【0026】
この構成ならば、一つの分子で基板とレジスト層との密着力を向上させることが可能となる。さらには、密着補助層の厚さを一つの分子の長さ程度(即ちナノオーダー)に設定することも可能となる。
【0027】
さらに、密着促進官能基の種類に応じ、密着性を良好にしたり、密着性はある程度としつつも表面粗さを低下させたりして、パターン精度を向上させ得ることを見出した。
【0028】
<実施の形態1>
以下、本発明の実施形態を、インプリント用モールドの製造工程、特にコピーモールドの製造方法を説明するための断面概略図である
図1に基づいて説明する。
【0029】
(モールド製造工程の概要)
本実施形態においては、コピーモールドを作製するためにブランクスを用いる。このブランクスの概要としては、
図1(b)に示すように、基板1の上にハードマスク層7を設けたものがある。
【0030】
そして、このハードマスク層7の上に、本実施形態に係る密着補助層5を形成し、さらにその密着補助層5の上にレジスト層4を設ける。
【0031】
そして将来的には、所定のパターンが形成された元型モールド30がこのレジスト層4上に押し当てられ、コピーモールド作製用ブランクスにパターン転写が行われる。そしてこのパターン転写の際、ここで挙げた密着補助層5によって、ハードマスク層7とレジスト層4との間の密着力を促進向上させることができる。
【0032】
その結果、インプリント法(工程)における、特に離型時の、レジストパターンの欠損あるいは変形等を抑制して、レジスト層4に形成されたレジストパターンを精度良く形成することができ、ハードマスク層7、ひいては基板1に設計どおりの所定のパターンを複製することを可能とする。
【0033】
上述の基板1、ハードマスク層7、密着補助層5及びレジスト層4について、以下に詳述する。
【0034】
(基板の準備)
まず、コピーモールド20の製造のための基板1を用意する(
図1(a))。
この基板1は、コピーモールド20として用いることができるのならば構わない。一例を挙げるとすれば、シリコンウエハ、石英基板などのガラス基板などが挙げられる。なお、後述するように、基板材料とのエッチング選択比の高い材料からなるハードマスク層7を基板上に設けても良い。
【0035】
また、基板1の形状は、円盤形状であっても良く、矩形、多角形、半円形状であっても良い。
本実施形態においては、円盤形状(ウェハ形状)の石英基板1を用いて説明する。以降、この石英基板1を単に基板1ともいう。
【0036】
(ハードマスク層の形成)
次に、
図1(b)に示すように、前記石英基板1をスパッタリング装置に導入する。そして本実施形態においては、タンタル(Ta)とハフニウム(Hf)の合金からなるターゲットをアルゴンガスでスパッタリングし、タンタル−ハフニウム合金からなる導電層2を成膜し、さらにクロム(Cr)からなるターゲットをアルゴンガス及び窒素ガスでスパッタリングすることで、窒化クロム層3を成膜した。
【0037】
こうして
図1(b)に示すように、タンタル−ハフニウム合金からなる導電層2を下層とし、窒化クロム層3を上層としたハードマスク層7を、石英基板1上に形成する。
【0038】
なお、本実施形態における「ハードマスク層」は、単一又は複数の層からなってもよい。また、基板1にエッチング加工を施す際に、後で形成されるレジストパターンの凹凸に対応する凸部(突起部)が形成される予定の部分を十分に保護すること、即ち、基板1のエッチング加工に対して、基板1とのエッチング選択性が十分であれば、いずれの材料であってもよい。また、ハードマスク層7は、導電性を備えているのが好ましい。当該ハードマスク層7を電気的に接地することで、インプリント工程(転写時)、特に離型時において、発生する可能性のある静電気及びそれに起因する欠陥(静電破壊)を防止することができるからである。
このように、基板上にハードマスク層7を設けたものを、本実施形態においてはコピーモールド作製用ブランクス(又は単にブランクス)という。
【0039】
なお、このブランクスに対し、必要に応じて静電気除去のための真空紫外線照射(Vacuum Ultra Violet:VUV)を行っても良い。
【0040】
(ブランクスへの密着補助層の設置)
そして本実施形態においては、ブランクスにおけるハードマスク層7に対して適宜洗浄・ベーク処理を行った後、
図1(c)に示すように、ハードマスク層7上に密着補助剤を塗布することにより密着補助層5を設ける。
【0041】
その際、密着補助剤において脱水縮合を起こさせるために、密着補助剤の塗布後、ベークを行う。このベーク温度は100℃以上とするのが好ましい。なぜなら、ハードマスク層7上で変性シラン基が脱水縮合を起こし、この変性シラン基がハードマスク層7と結合し、その結果、密着補助層5をハードマスク層7に十分密着させることができるためである。
本実施形態においては、このベークが重要な処理となる。本実施形態のベークの意義、ハードマスク層7に対する変性シラン基の「吸着」と「結合」との違いについて、吸着官能基及び密着促進官能基の説明を行った後、詳述する。
【0042】
(密着補助層の化合物組成の概要)
まず、本実施形態に係る密着補助層5に含まれる化合物一分子中には、主としてハードマスク層7に対して結合する変性シラン基からなる吸着官能基と、主としてレジスト層4に対する密着を促進向上させる密着促進官能基と、が含まれる。
【0043】
(吸着官能基)
この吸着官能基は、変性シラン基であれば良い。この変性シラン基としては、アルコキシシラン基が好ましい。具体的には、トリメトキシシランやトリエトキシシラン、ジメトキシシランやジエトキシシラン、メトキシシランやエトキシシランなどが挙げられる。ハードマスク層7への結合能力や密着性の高さという点から、トリメトキシシランが好ましい。以降、吸着官能基のことを変性シラン基とも呼称する。また、変性シラン基とは、基板に対して変性シラン基が結合している状態も含むこととする。
【0044】
なお、この変性シラン基は分子鎖の少なくとも一方の末端に設けられているのが好ましい。変性シラン基が末端にあれば、トリメトキシシランのように、結合に寄与するメトキシ基を多く有することができるためである。
【0045】
なお、前記吸着官能基がハードマスク層7に結合すると説明したが、具体的には、ハードマスク層7上に存在する水あるいは水酸基と変性シラン基とが脱水縮合を起こして、吸着官能基とハードマスク層7との間に強固な共有結合が形成されていると考えられる。
【0046】
(密着促進官能基)
次に、密着補助層5の上に設けられるレジスト層4に対して活用される密着促進官能基について詳述する。先にも述べたように、この密着促進官能基は、密着補助層5を構成する化合物の分子内における分子鎖内に設けられている。
【0047】
ここで、レジスト層4に対する密着補助層の密着力促進及び向上は、大きく分けて2つの作用による。
【0048】
1つ目の作用は、この密着促進官能基そのものが、レジスト層4に対して化学的に反応することにより、密着補助層5とレジスト層4との密着力を向上させるという作用である。
【0049】
そして、2つ目の作用は、この密着促進官能基をレジスト層4の組成と類似させることにより、いわば密着補助層5をレジスト層4となじませ易くすることにより、密着補助層5とレジスト層4との密着力を向上させるという作用である。
【0050】
まず、1つ目の作用について説明する。この作用は、元型モールド30に設けられた凹凸パターンを被転写体であるコピーモールド作製用基板(即ち、コピーモールドに)転写する際のレジスト層の硬化に用いられる紫外光の露光を、ハードマスク層7とレジスト層4との間の密着補助層5の機能発現(即ち、密着力の促進向上)にも利用する。この場合、密着支促進官能基としてメルカプト基(チオール基とも言う)を用いるのが好ましい。
【0051】
密着補助層5を構成する化合物にメルカプト基が備えられていれば、紫外光の照射によって、有機化合物層であるレジスト層とメルカプト基とが光ラジカル反応であるエン・チオール反応を起こすことができる。従って、別途追加して密着性を向上させるための工程を設ける必要がなくなる。
【0052】
また、このメルカプト基を有する化合物を具体的に挙げるとするならば、下記化学式の化合物が挙げられる。
【化1】
【0053】
なお、メルカプト基以外であっても、紫外線照射によってレジスト層4との間の密着力が向上する官能基であれば、本実施形態の密着補助剤として使用することができる。
【0054】
次に、2つ目の作用について説明する。この作用は、密着補助層5とレジスト層4とをなじませるように密着促進官能基をレジスト層4の組成に類似させる。
【0055】
この「なじませ」の方法には、前記密着促進官能基を所定のものに設定し、密着補助層5によってレジスト層4をはじきにくくすることが挙げられる。
【0056】
即ち、レジスト層4を前記密着補助層5上に塗布するに際して滴下した際、レジスト層4を構成する組成物の溶液の液滴の接触角が30°以下となる官能基を設定するのが好ましい。
【0057】
上記の接触角が30°以下となることに寄与する官能基としては、メタクリル基が例として挙げられる。
このメタクリル基の化合物を具体的に挙げるとするならば、下記化学式の化合物が挙げられる。
【化2】
【0058】
なお、密着促進官能基をメタクリル基とすることにより、実施例にて詳述するが、密着補助層5とレジスト層4をなじませ易くできると同時に、密着補助層5の表面を平滑にすることができる(
図4及び
図5)。
【0059】
また、レジスト層4の組成の少なくとも一部と密着補助層5とを類似させるという方法について説明する。
【0060】
このレジスト層4としてはエポキシ樹脂を含むレジストが頻繁に用いられていることから、密着促進官能基をエポキシ基とするのも好ましい。
【0061】
また、このエポキシ基の化合物を具体的に挙げるとするならば、下記化学式の化合物が挙げられる。
【化3】
【0062】
ここで述べた密着促進官能基は、密着補助層5を形成する化合物一分子中の分子鎖の少なくとも一方の末端に設けられているのが好ましい。変性シラン基と同様に末端に設けられていれば、一方の末端をハードマスク層7とアンカリングし、もう一方の末端をレジスト層4とアンカリングすることができる。その結果、ハードマスク層7とレジスト層4との間の密着力を大きく促進させ向上させることができる。
【0063】
更に、密着補助層5を構成する化合物に設けられる密着促進官能基は、単数でも良いし複数でも良い。適度な個数の密着促進官能基を有していれば、ハードマスク層7と密着補助層5との間の密着力を向上させることができると考えられる。
【0064】
更に、一つの分子に吸着官能基と密着促進官能基とを有していれば、一つの分子で基板とレジスト層とを結びつけることが可能となる。そして、密着補助層5の厚さを一つの分子の長さ程度にも設定可能となる。
【0065】
また、この分子の分子鎖は分岐していても直鎖でも良いが、密着補助層5の内部を密にして密着力を向上させるという点では直鎖であるのが好ましい。なお、ここでは、一分子は一分子鎖によって構成され、一分子鎖には主鎖および主鎖から分岐した側鎖も含むものとする。
【0066】
なお、この密着補助剤には、上記のような分子を有する化合物を主成分とするのが好ましいが、密着補助剤に添加可能な従来の物質が含まれていても良い。もちろん、上記化合物のみから構成されていても良い。
【0067】
以上のように、密着補助層5は、ハードマスク層7とレジスト層4との間に位置し、密着補助層5を介して両者を密着させる役割を果たす。見方を変えると、レジスト層4を形成する前の段階では既に、密着補助層5における変性シラン基はハードマスク層7の方を主として向いており、その一方、密着促進官能基はレジスト層4が形成される方(即ち主表面側)に主として向いている。つまり、密着補助層5内において分子鎖の向きがほぼ一定となっている。これを実現するのが、密着補助剤の塗布後に行われるベークである。以下、分子鎖の向きをほぼ一定とするメカニズムについて説明する。
【0068】
まず、ハードマスク層7上に、密着補助剤を塗布する。このとき、密着補助剤の一分子中の分子鎖において、変性シラン基がハードマスク層7に吸着するのみならず、密着促進官能基がメルカプト基である場合、メルカプト基もハードマスク層7に吸着する可能性がある。つまり、この時点では、ハードマスク層7上の密着補助剤の分子鎖の向きは一定ではない。このように、ベークを行う前の密着補助剤の吸着官能基及び密着促進官能基がハードマスク層7そのものやその上の水分等と結びついている状態を、本実施形態においては「吸着」と呼んでいる。
【0069】
しかしながら、密着補助剤の塗布後、ベークを行うと、密着補助剤の変性シラン基とハードマスク層表面の水酸基とが脱水縮合を起こす。その結果、密着補助剤に含まれる官能基の中でも変性シラン基が選択的に、ハードマスク層7と共有結合で結ばれることになる。このように、ベークを行った後、密着補助剤の吸着官能基がハードマスク層7と共有結合で結びついている状態を、本実施形態においては「結合」と呼んでいる。
【0070】
それとは逆に、密着促進官能基であるメルカプト基は、変性シラン基と比較するとハードマスク層表面の水酸基との結合が弱く、結果的にハードマスク層7から離れる方(即ちレジスト層4が形成される主表面の方向)に向くことになる。もちろん、全ての分子鎖が上記の向きを有しているかは明らかでないが、変性シラン基が脱水縮合を起こす以上、十分な密着性を発揮する程度には、分子鎖の大半が上記の向きを有していると考えられる。
【0071】
(レジスト層の形成)
次に、
図1(d)に示すように、前記密着補助層5に対して光インプリント用のレジストを塗布してレジスト層4を形成する。上述のように、レジストの塗布の段階では、密着補助層5においてレジストと接触する部分には、密着促進官能基が主として存在している。
【0072】
本実施形態にて用いられるレジスト層4は、有機化合物層であれば良い。先にも述べたように、密着促進官能基と化学的に反応させたり、密着促進官能基となじませたりすることができれば良い。
【0073】
インプリント法については、本実施形態においては、元型モールド30のパターンを光インプリント法によりレジスト層4に転写する方法について述べる。それに伴い、有機化合物層として光インプリント用のレジストを用いた場合について述べる。
【0074】
このように光インプリント用のレジストを用いることにより、先に述べたように密着促進官能基としてメルカプト基を用いる場合、パターン転写の際の露光を利用することにより光ラジカル反応であるエン・チオール反応を起こさせ、ハードマスク層7とレジスト層4との間の密着力を向上させることができる。
【0075】
この時のレジスト層4の厚さは、窒化クロム層3のエッチングが完了するまでマスクとなる部分のレジストが残存する程度の厚さであることが好ましい。
【0076】
なお、この光インプリント用のレジストとしては、光硬化性樹脂とりわけ紫外線硬化性樹脂からなるものが挙げられるが、光硬化性樹脂の内、後で行われるエッチング工程に適するものであれば良い。
【0077】
以上がブランクスに密着補助層5を設け、その上にレジスト層4を設ける工程である。
以下、この密着補助層5付き基板1を用いて、光インプリントによりモールドを作製する工程について述べる。
【0078】
(インプリント工程)
以下、上記のブランクスに密着補助層5を形成し、その上にレジスト層4を形成した被転写基板(即ち、コピーモールド作製用基板)に、光インプリント法により、パターン転写するインプリント工程について述べる。
まず、
図1(e)に示すように、上記のようにレジスト層4の形成まで終えたコピーモールド用作製基板に、所定の凹凸パターンが形成され、かつ離型層が形成された元型モールド30を押し当て、上記レジスト層4を上記モールドの凹凸パターンに充填させる。
【0079】
上記モールドの凹凸パターンに充填されたレジスト層4に紫外線照射を行い、パターン転写されたレジスト層4を硬化させる。この時、紫外光の照射は元型モールド30の裏面側から行うのが通常であるが、基板1が透光性基板である場合は、基板1の裏面側から行っても良い。その後、元型モールド30と被転写基板であるモールド作製用基板1を引き離して離型する。
【0080】
なお、元型モールド30と上記モールド作製用基板1との間のパターン配置の位置ずれを防止するため、位置合わせ機構に応じた位置合わせ用パターン(アライメントマーク)を元型モールド30及び上記モールド作製用基板1上に別途設け、インプリント工程に先立って、上記モールド作製用基板1と元型モールド30と位置合わせを行っても良い。
【0081】
(第1のエッチング)
次に、上記レジストパターンが形成されたコピーモールド作製用の基板1を、ドライエッチング装置に導入する。そして、そして、凹凸パターンが形成されたレジスト層4の凹部の底部に位置する残膜部、及び前記密着補助層5を、酸素、フッ素系ガス、アルゴン等のガスのプラズマを用いた第1のエッチング処理工程(アッシングともいう)により除去し、ハードマスク層7を露出させる。
【0082】
こうして、
図1(g)に示すように、所望のパターンに対応するレジストパターンを形成する。なお、凹凸パターンが形成されたレジスト層4の凹部(即ち、残膜部が除去され、ハードマスク層7が露出した部位)に、最終的に、基板1上に溝が形成されることになる。
【0083】
(第2のエッチング)
次に、ハードマスク層7上にレジストパターンが形成されたコピーモールド作製用の基板1を、ドライエッチング装置に導入する。そして、塩素系ガスと酸素ガスを含む雰囲気下で上記のとおりに露出したハードマスク層7をエッチング除去する第2のエッチングを行う。なお、この時のエッチングの終点は、反射光学式等の終点検出器で判定し、その後、所定のオーバーエッチングを経て、エッチングを終える。
【0084】
こうして、
図1(h)に示すように、パターンを有するレジスト層4、密着補助層5及びハードマスク層7を形成する。
【0085】
(第3のエッチング)
続いて、第2のエッチングで用いられたガスを真空排気した後、同じドライエッチング装置内で、フッ素系ガスを用いた第3のエッチングを、石英基板1に対して行う。
【0086】
この際、前記ハードマスク層7をマスクとして石英基板1をエッチング加工し、
図1(i)に示すように、パターンに対応した溝を基板1に形成する。その前後において、アルカリ溶液や酸溶液等にてレジスト層4を除去する。
【0087】
ここで用いられるフッ素系ガスとしては、C
xF
y(例えば、CF
4、C
2F
6、C
3F
8)、CHF
3、これらの混合ガス又はこれらに添加ガスとして希ガス(He、Ar、Xeなど)を含むもの等が挙げられる。
【0088】
こうして
図1(i)に示すように、パターンに対応する凹凸加工が石英基板1に形成される。こうして残存ハードマスク層除去前モールド10を作製する。
【0089】
(第4のエッチング)
次に、このように作製された残存ハードマスク層除去前モールド10に対し、第1のエッチングと同様の手法で、残存ハードマスク層除去前モールド10上に残存する余剰なレジスト層4、密着補助層5及びハードマスク層7をドライエッチングガスにて除去する工程が行われ、それによりコピーモールド20が作製される(
図1(j))。
【0090】
なお、上記第1から第4のエッチングにおいては、いずれかのエッチングのみをウェットエッチングとし、他のエッチングにおいてはドライエッチングを行っても良いし、全てのエッチングにおいてウェットエッチング又はドライエッチングを行っても良い。また、パターンサイズがミクロンオーダーである場合など、ミクロンオーダー段階ではウェットエッチングを行い、ナノオーダー段階ではドライエッチングを行うというように、パターンサイズに応じてウェットエッチングを導入しても良い。
【0091】
なお、本実施形態においては、第1〜第4のエッチングを行ったが、コピーモールド作製用基板1の構成物質に応じて、別途エッチングを第1〜第2のエッチングの間に追加しても良い。
【0092】
(コピーモールドの完成)
以上の工程を経て、余剰なレジスト層4、密着補助層5及びハードマスク層7を除去した後、必要があれば基板1の洗浄等を行う。このようにして、
図1(j)に示すようなコピーモールド20を完成させる。
【0093】
以上のような本実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
まず、密着補助層5を構成する化合物として変性シラン基を有する化合物を用いることにより、ハードマスク層7に対して十分な密着性を提供することができる。
【0094】
そして、この変性シラン基と共に密着促進官能基を有する化合物を用いることにより、レジスト層4に対して十分な密着性を提供することができる。
【0095】
この密着性促進のためには、この密着促進官能基そのものがレジスト層4に対してエン・チオール反応により化学的に反応する構成(組成)である場合、元型モールド30に設けられた凹凸パターンを転写したレジスト層を光硬化させる際に用いられる紫外光の照射を利用することができる。
【0096】
つまり、別途密着性を向上させるため(密着補助層5を機能させるため)の紫外線照射工程を設ける必要がなくなる。
【0097】
以上の結果、本実施形態における密着補助層によって十分な密着性が得られ、設計どおりの所望のパターンを精度良くパターンを形成、即ち転写複製することができる。
【0098】
本実施形態に係る技術思想は、レジスト等の有機化合物層と他物質とを密着させる場合に適用可能である。特に、インプリント技術を用いて作製されるコピーモールドに本実施形態を好適に応用することができる。また、同様に、インプリント技術を用いて製造されるパターンドメディアに本実施形態を好適に応用することができる。
【0099】
<実施の形態2>
以下、前記実施の形態1に記載のコピーモールドを作製するための原盤であるナノインプリント用マスターモールドの製造工程を説明する。
【0100】
(マスターモールド製造工程の概要)
実施の形態2において、マスターモールドを作製するためには、実施の形態1と同様に、モールド作製用基板を用いる。このモールド作製用基板の概要は、実施の形態1で詳述した
図1(b)に示すような、基板1の上にハードマスク層7を設けたものがある。以降、実施の形態2においては、実施の形態1と同構成に対し同じ符号を付した上で更に「’」を付す。
【0101】
そして、このハードマスク層7’の上に、本実施形態に係る密着補助層5’を形成し、さらにその密着補助層5’の上に、電子線描画用レジストからなる電子線レジスト層4’を形成する。
【0102】
次に、密着補助層5’及び電子線レジスト層4’を形成した基板1’に対して、紫外光照射を行う。
【0103】
次に、形成されたレジスト層4’に対して、例えばスポット状に成形された電子線を照射して、設計どおりの所定のパターンの描画を行う。
【0104】
その後、電子線により所定のパターンの描画を経た電子線レジスト層4’を、所定の現像液で現像処理する。
【0105】
最後に、形成された密着補助層5’及び電子線レジストパターンの裾引き等の残渣の除去(第1のエッチング)、ハードマスク層7’のエッチング(第2のエッチング)、基板1’のエッチング(第3のエッチング)、そして、余剰なハードマスク層7’及びその上の電子線レジスト層4’のエッチング除去(第4のエッチング)を経て、設計どおりの所定のパターンに対応した凹凸パターンを基板表面に持つ、ナノインプリント用マスターモールドは完成する。
【0106】
次に、上述の基板1’、ハードマスク層7’、密着補助層5’及び電子線レジスト層4’について、以下に詳述する。
【0107】
(基板の準備)
まず、マスターモールド20’の製造のための基板1’を用意する(
図1(a))。
この基板1’は、マスターモールド20’として用いることができるのならば、いずれの材料でも構わない。一例を挙げるとすれば、シリコンウエハ、または、石英基板などのガラス基板などが挙げられる。
なお、光ナノインプリント用に限定すると、レジスト層4’を硬化させるための光照射を行うために、マスターモールドは当該照射光に対して透明である必要がある。
【0108】
また、基板1’の形状は、円盤形状であっても良く、矩形、多角形、半円形状であっても良いが、マスターモールドの使途であるナノインプリント法を考慮すれば、被転写体と全く同形状、あるいは、被転写体より大きな相似形が好ましい。また、基板1’の形状は、実質的なパターン形成領域をメサ構造としたものであってもよい。
本実施形態においては、円盤形状(ウエハ形状)の石英基板1’を用いて説明する。以降、この石英基板1’を単に基板1’ともいう。
【0109】
(ハードマスク層の形成)
次に、ハードマスク層7’の形成について述べるが、実施の形態1と同様である。
ただし、ハードマスク層7’は、導電性を備えているのが好ましい。当該ハードマスク層7’を電気的に接地することで、電子線で電子線レジスト層4’を描画する際のチャージアップの防止効果を得る。また、ナノインプリント工程において(転写時)、特に離型時において発生する可能性のある静電気及びそれに起因する欠陥(静電破壊)を防止することができるからである。
なお、後で、基板1’に対するエッチング選択比が十分に高い電子線レジスト層4’を用いる場合は、ハードマスク層7’を形成しなくともよい。
【0110】
(密着補助層の形成、及び、密着補助層の化合物組成の概要)
密着補助層5’の形成についても、実施の形態1と同様である。
また、密着補助層5’を構成する化合物の組成は、実施の形態1に記載の構成と全く同様である。即ち、本実施形態に係る密着補助層5’に含まれる化合物(即ち、密着補助剤)一分子には、主としてハードマスク層7’に対して結合する変性シラン基からなる吸着官能基と、主として電子線レジスト層4’に対する密着力を促進向上させる密着促進官能基と、が含まれる。
また、吸着官能基及び密着促進官
能基の化学的な組成、及び、化学的な機能発現についても、実施の形態1に準ずる。
【0111】
(電子線レジスト層の形成)
次に、
図1(d)に示すように、前記密着補助層5’を形成した基板1’に対して、電子線レジスト層4’を構成する電子線描画用レジストを回転塗布法等によって塗布し、その後ベーク処理して、電子線レジスト層4’を形成する。
【0112】
本実施形態にて用いられる電子線レジスト層4’は、前記密着補助層5’を構成する化合物の分子の密着促進官能基と、化学的に反応し、密着促進官能基となじむものであればよい。
【0113】
なお、本実施の形態で用いる電子線レジスト層4’を構成する電子線描画用レジストは、紫外光に対して実質的に感度を持たず(紫外光を吸収せず)、かつ、電子線に対しては必要十分な感度を持つものである。
【0114】
ここで言う「紫外光に対して実質的に感度を持たず」とは、紫外光が照射されてもレジストが感光しないことを指し、更には、仮に紫外光に対して感度を有していたとしても、紫外光による感光後、電子線が描画(露光)して現像を行えば設計通りの所定のパターンを得ることができる程度に感度が小さいことを指す。本実施形態のように電子線を描画(露光)する場合、電子線リソグラフィー法により、設計どおりの所定のパターンを前記電子線レジスト層に形成すべく、紫外光に対して実質的に感度を有さないレジストを用いる。
【0115】
先に述べたように、密着促進官能基にメルカプト基を用いる場合、紫外光照射によって、光ラジカル反応であるエン・チオール反応を起こさせ、密着補助層5’と電子線レジスト層4’との間の密着力を促進して向上させ、結果として、ハードマスク層7’(あるいは石英基板1’)と電子線レジスト層4’の密着力を促進向上させることができる。
【0116】
そこで、前記密着補助層5’上に形成した電子線レジスト層4’が紫外光に対して透明であれば、電子線レジスト層4’を形成した後に紫外光照射することによって、密着補助層5’と電子線レジスト層4’との間の密着力を促進して向上させることでできる。一方で、パターン形成においては、電子線レジスト層4’は紫外光照射の影響を全く受けない。
【0117】
ここで、電子線レジスト層4’の厚さは、ハードマスク層7’(あるいは石英基板1’)のエッチングが完了するまで、マスクとなる部分(レジストパターンの凸部)のレジストが十分に残存する程度の厚さであることが好ましい。また、現像工程の最終処理である乾燥時(一般に、回転乾燥)に起こる毛管現象に起因するパターン倒壊が生じないよう、形成すべきパターンの寸法と高さの比(即ち、アスペクト比)を考慮した厚さであることが好ましい。
【0118】
(紫外光照射の工程)
上記のとおり、基板1’に密着補助層5’を形成し、その上に電子線レジスト層4’を形成した後に、少なくとも実質的なパターン形成領域に対し、紫外光を照射する。
これによって密着補助層5’ の機能が発現され、密着補助層5’と電子線レジスト層4’との間の、即ち、ハードマスク層7’と電子線レジスト層4’との間の密着力を促進向上させ得る。
また、紫外光の照射は基板1’に形成された電子線レジスト層4’側から行うのが通常であるが、ハードマスク層7’を含む基板1’が透光または半透明である場合は、基板1’の裏面側から行っても良い。
【0119】
(電子線描画)
次には、前記電子線レジスト層4’に対して、例えばスポット状に成形された電子線を照射して、設計どおりの所定のパターンの描画を行う。
【0120】
(現像)
次には、電子線により所定のパターンの描画を経た電子線レジスト層4’を、所定の現像液で現像処理する。
特にこの現像処理において、前記の密着補助層5’の機能によるところの、ハードマスク層7とレジスト層4’との間の密着力を促進向上の効果を得ることができる。
【0121】
即ち、特に現像時に発生する危険のあるレジストパターンの剥がれ、消失、あるいは、変形等々、これらを抑制して、電子線レジストパターンを精度良く形成することができ、ハードマスク層7’、ひいては基板1’に設計どおりの所定のパターンを形成することを可能とする。
【0122】
(第1のエッチング)
次に、上記の電子線レジストパターンが形成された基板1’を、ドライエッチング装置に導入する。そして、凹凸パターンが形成されたレジスト層4’の凹部の底部に存在する裾引き状の残渣、及び、前記密着補助層5’を、酸素、フッ素系ガス、アルゴン等のガスのプラズマを用いた第1のエッチング処理工程(デスカム処理ともいう)により除去し、レジスト層4’の凹部に対応するハードマスク層7’を露出させる。
【0123】
こうして、
図1(g)に示すように、設計どおりのパターンに対応する電子線レジストパターンを形成する。なお、凹凸パターンが形成されたレジスト層4’の凹部の残渣(即ち、裾引く、残渣)を除去し、ハードマスク層7’が露出した部位に、最終的には、溝が形成される。
【0124】
(第2〜第4のエッチング)
次に、レジストパターンが形成され、ハードマスク層7’が一部露出した基板1’を、ドライエッチング装置に導入する。
そして、実施の形態1に準ずる第2のエッチングから第4のエッチングまでを行う。
【0125】
(マスターモールドの完成)
以上の第4のエッチングまでを経て、必要があれば基板1の洗浄等を行い、このようにして、
図1(j)に示すようなマスターモールド20’を完成させる。
【0126】
以上のような本実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
まず、密着補助層5’を構成する化合物として変性シラン基と密着促進官能基とを有する化合物を用いることにより、レジスト層4’とハードマスク層7’(あるいは基板1’)との十分な密着力を提供することができる。
【0127】
この密着力の促進と向上のためには、この密着促進官能基がレジスト層4に対してエン・チオール反応により化学的に反応する構成(組成)である場合、密着補助層5’上にレジスト層4’を形成した後に、紫外光照射する必要がある。ここで、当該レジスト層4’を紫外光波長域に吸収あるいは実質的な感度を持たない電子線レジストからなる電子線レジスト層とすることで、これを可能とする。
【0128】
以上の結果、本実施形態における密着補助層によって十分な密着性が得られ、設計どおりの所望のパターンを精度良く形成すること、即ち、精度良くマスターモールドを作製することができる。
【0129】
本実施形態に係る技術思想は、レジスト層等の有機化合物層と他物質とを密着させる場合に適用可能である。特に、ナノインプリント技術を用いて作製されるコピーモールドに本実施形態を好適に応用することができる。
また同様に、電子線リソグラフィー技術を用いて製造されるフォトマスクにも本実施形態を好適に応用することができる。
【0130】
なお、本発明における「基板」とは、主表面に密着補助層を形成することができるものであれば良く、いわゆる基板そのもの、そして、その基板の上にハードマスク層が設けられたものを含む。
【0131】
また、本実施形態におけるレジストは、エネルギービームを照射して露光したときに反応性を有するものであれば良い。具体的には、現像剤による現像処理を行う必要のあるレジストであれば良く、紫外線、X線、電子線、イオンビーム、荷電粒子ビーム、プロトンビーム等に感度を持つレジストであっても良い。また、同様に、使用するレジストの種類に応じて、紫外線、X線、電子線、イオンビーム、荷電粒子ビーム、プロトンビーム照射装置をレジストに対する露光に用いても良い。
【実施例】
【0132】
次に実施例を示し、本発明について具体的に説明する。もちろんこの発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0133】
<実施例1>
本実施例のコピーモールド20を作製するための基板1として、合成石英からなるウエハ(外径150mm、厚み0.7mm)を用いた(
図1(a))。この石英ウェハ(基板1)をスパッタリング装置に導入した。
【0134】
そして、タンタル(Ta)とハフニウム(Hf)の合金(Ta:Hf=80:20原子比)からなるターゲットをアルゴンガスでスパッタリングし、実施例でも用いた基板上に7nmの厚みのタンタル−ハフニウム合金からなる導電層2を成膜した。
【0135】
次に、クロムターゲットをアルゴンと窒素の混合ガスでスパッタリングし、窒化クロム層3を2.5nmの厚みに成膜した(
図1(b))。
【0136】
こうして、基板1上に形成された導電層2及び窒化クロム層3からなるハードマスク層7に真空紫外線照射(Vacuum Ultra Violet:VUV)を2分間行った。該基板上に、スピンコート法により変性シラン基とメルカプト基を有する密着補助剤(ダウコーニング社製 製品名:Z6062)を塗布した。この塗布の際の回転数は3000rmpとし、30秒間回転させた(
図1(c))。その後、100℃にて1分間ベークを行い、レジスト(東洋合成工業社製 製品名:PAK01)を塗布した。この塗布の際の回転数は1500rmpとし、30秒間塗布した。
このようにして、本実施例に係る密着補助層付き基板にレジスト層を形成したコピーモールド用基板を作製した。
【0137】
<実施例2>
実施例1においては変性シラン基とメルカプト基を有する密着補助剤を用いたが、その代わりに実施例2においては変性シラン基とメタクリル基を有する密着補助剤(ダウコーニング社製 製品名:Z6030)を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして密着補助層付き基板にレジスト層を形成したコピーモールド作製用基板を作製した。
【0138】
<実施例3>
実施例3においては、窒化クロムのみをハードマスク層7に用いた以外は、実施例1と同様にして、密着補助層付き基板にレジスト層を形成したコピーモールド作製用基板を作製した。このとき、窒化クロム層の厚さは5nmとした。
【0139】
<比較例1〜3>
上述の実施例と比較するために、比較例1においては密着補助剤として変性シラン基のみを有する化合物(HMDS)(AZエレクトロニックマテリアルズ社製)を用いた。
比較例2においては密着補助剤としてアクリル基を有する化合物を用いた。
比較例3においては密着補助剤を用いなかった。
上記の点以外については、実施例と同様にして密着補助層付き基板にレジスト層を形成したコピーモールド作製用基板を作製した。
【0140】
<評価>
実施例及び比較例により得られた密着補助層付き基板にレジスト層を形成したコピーモールド作製用基板について、種々の評価を行った。
【0141】
1)密着力
密着力の評価方法の具体例について
図6に示す。
図6(a)に示すように、ハードマスク層7の上に密着補助層5を設けたものに対し、カンチレバー8を接触させ、その後引き上げるという動作を行った。この際、カンチレバー8にかかる力(下方向にかかる力をy軸としたもの)と、カンチレバー8先端と密着補助層5との間の距離との関係を記載したものが
図6(b)である。
【0142】
図6(a)の(1)に示すように、評価試験前だとカンチレバー8は密着補助層5に対して非接触状態である。そのため、カンチレバー8にかかる力は一定のままである(
図6(b)の(1))。
【0143】
その後、
図6(a)の(2)に示すように、カンチレバー8が密着補助層5に対して接触する。そして、ハードマスク層7に接触するまで(
図6(a)の(3)の状態になるまで)カンチレバー8にかかる力は増大する(
図6(b)の(2)〜(3))。
【0144】
今度はカンチレバー8を引き離すべく、
図6(a)の(4)に示すように、カンチレバー8に上方向に力がかかることになる(
図6(b)の(4))。
カンチレバー8を再び密着補助層5に対して非接触の状態(
図6(a)の(1)の状態)に戻すためには、
図6(a)の(1)から(3)の時にカンチレバー8に係る力に比べて、上向きの力が余分に必要になる(
図6(b)の矢印A)。
本実施例においてはこの力の値を、密着補助層5の密着力を示す値としている。なお、カンチレバー8にかかる力については、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)を用いて調べた。
【0145】
実施例及び比較例により得られた密着補助層付き基板についての密着性の結果を示す
図2を見ると、実施例1(メルカプト基)は比較例1に匹敵する密着性を有していることがわかった。
図2には示していないが、実施例3についても実施例1と同様の結果を得た。なお、実施例2(メタクリル基)においても実用に堪えられる密着力を有することがわかった。
【0146】
2)表面自由エネルギー
次に、表面自由エネルギーについて、接触角測定法を用いて評価した。その結果を
図3に示す。なお、参考として、基板1及びハードマスク層7の表面自由エネルギーについても評価した。
図3より、実施例1(メルカプト基)については高い表面自由エネルギーを得ることができ、有機化合物に対して良好な濡れ性を示すことが分かった。
図3には示していないが、実施例3についても実施例1と同様の結果を得た。なお、実施例2(メタクリル基)においても有機化合物に対して良好な濡れ性を示すことが分かった。
【0147】
3)表面粗さ
次に、実施例及び比較例に係る密着補助層付き基板にレジスト層4を形成したコピーモールド作製用基板について、表面粗さを評価した。
【0148】
ここで表面粗さを評価した理由は、以下の通りである。
レジスト層4として光硬化性樹脂を用いた場合、この光硬化性樹脂が光照射により硬化すると、通常、収縮する。
もしレジスト層4と密着補助層5との間の密着力が足りない場合、光照射により硬化したレジスト層4は密着補助層5から剥離してしまう。
その結果、レジスト層4の表面に粗さが発生する。
つまり、表面粗さが密着性を示す指標の一つと成りうると、本発明者らは考えた。
【0149】
この表面粗さに関し、実施例及び比較例により得られた密着補助層付き基板について、AFMを用いて観察した結果を
図4に示す。また、これを数値化した結果について
図5に示す。実施例1の
図4(a)及び実施例2の
図4(b)に示すように、実施例においては総じて平滑な表面であった。
図4には示していないが、実施例3についても実施例1と同様の結果を得た。
その中でも特に
図4(b)に示す実施例2(メタクリル基)においては、表面粗さが相当小さく良好な表面を得ることができた。
一方比較例1〜3においては、各々対応する
図4(c)〜(e)に示すように、粗い表面となっている。そのため、比較的密着力に劣る上、粗い表面であることを考慮すると精度の高いパターンを作製することが困難であると考えられる。
【0150】
<実施例4>
実施例1で変性シラン基とメルカプト基を有する密着補助層付き基板にレジスト層4を形成したコピーモールド作製用基板を作製した後、この密着補助層付き基板に対して、80℃で20分間、露光前ベークを行った。
そして、当該基板に対して光インプリント装置にて(明祥製UV露光装置にて120秒照射)圧力2.2MPa、紫外光照射時間120秒として、トラックピッチ120nmのディスクリートトラックレコーディング型パターンドメディアの凹凸パターンを形成した元型モールド30を用いてパターン転写を行った。なお、この元型モールド30には離型剤DDOH(松村石油研究所製)を塗布し、予め離型層を形成した。
上記のとおりにパターン転写し、レジスト層4にパターンを形成した後、光学顕微鏡による観察を行って、レジスト層4に剥がれを生じた部位の全体に占める面積を求めた。その結果、面積は全体の1%未満であり、良好な密着性を有することがわかった。