特許第5871329号(P5871329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871329
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】インダクタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20160216BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20160216BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20160216BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   H01F17/04 F
   H01F17/00 B
   H01F41/04 B
   H01F41/02 D
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-208401(P2013-208401)
(22)【出願日】2013年10月3日
(65)【公開番号】特開2014-183307(P2014-183307A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2013年10月3日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0027812
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パーク、ムーン ソー
(72)【発明者】
【氏名】チン、ソン ミン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ファン ソー
(72)【発明者】
【氏名】チャ、ヒエ イーオン
【審査官】 五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5048155(JP,B1)
【文献】 特開2005−268455(JP,A)
【文献】 特開2013−110171(JP,A)
【文献】 特許第5048156(JP,B1)
【文献】 特表2012−521649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 17/00
H01F 41/02
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に導電パターンが配されたコア基板と、
前記導電パターンが露出されないように、前記コア基板を覆う磁性層と、
を含み、
前記コア基板は、前記導電パターンが配されていない領域に配された貫通ホールを有し、
前記磁性層は、
金属−ポリマー複合材を含み、多層構造を有し、
前記磁性層は、
前記貫通ホール内に配された充填部と、
前記コア基板の両面上で前記導電パターンを覆うカバー部と、
を有し、
前記金属−ポリマー複合材は、異なる平均粒子大きさを有する少なくとも二つの金属粒子を含む、
ンダクタ。
【請求項2】
前記磁性層は、
複数の磁性体フィルムと、
前記複数の磁性体フィルムのうち、2つの磁性体フィルムの間に介在する接合層と、
を含む、
請求項1に記載のインダクタ。
【請求項3】
表面に導電パターンがされたコア基板と、
前記導電パターンが露出されないように、前記コア基板を覆う磁性層と、
を含み、
前記磁性層は、金属−ポリマー複合材を含む磁性体フィルムが複数積層された多層構造を有
前記磁性体フィルムの間に介在する接合層を含む、
インダクタ。
【請求項4】
前記コア基板は、前記導電パターンがされていない領域にされ貫通ホールを有し、
前記磁性層は、
前記貫通ホール内に配された充填部と、
前記コア基板の両面上で前記導電パターンを覆うカバー部と、
を有する、
請求項3に記載のインダクタ。
【請求項5】
前記金属−ポリマー複合材は、異なる平均粒子大きさを有する少なくとも二つの金属粒子を含む、
請求項3又は請求項4に記載のインダクタ。
【請求項6】
前記接合層は、前記金属−ポリマー複合材に使われた熱硬化性樹脂と同じ材質を含む、
請求項2から請求項5までの何れか一項に記載のインダクタ。
【請求項7】
前記接合層は、エポキシ樹脂を含む、
請求項2から請求項5までの何れか一項に記載のインダクタ。
【請求項8】
前記金属−ポリマー複合材は、
非晶質エポキシ樹脂と、
前記金属−ポリマー複合材に対して75wt%〜98wt%で前記非晶質エポキシ樹脂に含有された金属磁性体粉末と、
を含む、
請求項1から請求項7までの何れか一項に記載のインダクタ。
【請求項9】
表面に導電パターンが形成されたコア基板を準備するステップと、
金属−ポリマー複合材を含む磁性体フィルムを製造するステップと、
前記コア基板上に、複数の前記磁性体フィルムを積層するステップであって、前記磁性体フィルム間にフィルム状の接合層を介在させるステップと、
前記コア基板に対して前記複数の磁性体フィルムを圧着して、多層構造を有する磁性層を形成するステップと、
を含む、
インダクタの製造方法。
【請求項10】
前記磁性体フィルムを積層するステップは、前記磁性体フィルムの相対する面に接合物質をコーティングするステップを含む、
請求項9に記載のインダクタの製造方法。
【請求項11】
前記磁性体フィルムを積層するステップは、前記磁性体フィルム間にエポキシ樹脂材質を含む接合層を介在するステップを含む、
請求項9又は請求項10に記載のインダクタの製造方法。
【請求項12】
前記磁性層を形成するステップは、温度170℃〜200℃、面圧0.05kgf〜20kgf、真空度0.1torr以下の工程条件にて行われる、
請求項9から請求項11までの何れか一項に記載のインダクタの製造方法。
【請求項13】
前記コア基板に貫通ホールを形成するステップをさらに含み、
前記磁性層を形成するステップは、前記貫通ホールを充填するステップを含む、
請求項9から請求項12までの何れか一項に記載のインダクタの製造方法。
【請求項14】
表面に導電パターンが形成されたコア基板の両面に配された磁性体フィルムを圧着して、前記コア基板の両面上で前記導電パターンを覆う磁性層を形成するステップを有し、
前記磁性体フィルムは、金属−ポリマー複合材を含み、
前記金属−ポリマー複合材は、異なる平均粒子大きさを有する少なくとも二つの金属粒子を含み、
前記コア基板は、前記導電パターンが配されていない領域に配された貫通ホールを有し、
前記磁性層を形成するステップは、前記コア基板に対して前記磁性体フィルムを圧着して、前記コア基板の前記貫通ホールの内部に前記磁性体フィルムを充填するステップを含む、
インダクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ及びその製造方法に関し、特に、インダクタンス特性を向上させることができるインダクタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、薄膜型パワーインダクタは、コイルの形成されたコア基板を所定の磁性物質でカバーする方法によって製造された。詳しくは、通常の薄膜型パワーインダクタは、磁性体粉末及び樹脂などから成る金属−ポリマー複合材と、巻線が設けられ、中央に貫通ホールの形成された基板とを各々準備の後、該金属−ポリマー複合材を該貫通ホールに充填させながら、前記基板の両面を覆うようにして製造された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−159654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、そのようなインダクタの製造方法では、別途のモールドやジグなどの設備が必要になり、生産単価が増加するという不都合がある。また、金属−ポリマー複合材を利用する場合、該金属−ポリマー複合材の加工性を確保するためには、金属磁性体粉末の含量を高めることに限界があり、高いインダクタンス値を有するインダクタの製造に限界があった。また、前記金属−ポリマー複合材は、半硬化状態で前記基板に対して加圧及び加熱し、該基板をカバーするようにするものである。この場合、前記貫通ホールに前記金属−ポリマー樹脂複合材が完全に充填されない現象が発生した。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みて成されたものであって、その目的は、インダクタンス特性を向上させたインダクタ及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、インダクタの素子本体を成す磁性層における金属磁性体粉末の含量を高めることができるような構造のインダクタ及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、金属−樹脂複合材の充填率を向上させたインダクタの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決するために、本発明の一実施形態によるインダクタは、表面に導電パターンが形成されたコア基板と、前記導電パターンが露出されないように、前記コア基板を覆う磁性層とを含み、前記磁性層は、金属−ポリマー複合材から成り、多層構造を有する。
【0009】
本発明の実施形態によれば、前記磁性層は、複数の磁性体フィルム及び前記磁性体フィルム間に介在する接合層を含む。
【0010】
本発明の実施形態によれば、前記接合層は、前記金属−ポリマー複合材に使われた熱硬化性樹脂と同じ材質から成る。
【0011】
本発明の実施形態によれば、前記接合層は、エポキシ樹脂を含む。
【0012】
本発明の実施形態によれば、前記磁性層は、前記コア基板に対して前記金属−ポリマー複合材をから成る複数の磁性体フィルムを圧着して形成される。
【0013】
本発明の実施形態によれば、前記コア基板は、前記導電パターンの形成されない領域に形成された貫通ホールを有し、前記磁性層は、前記貫通ホールに充填された充填部及び前記基板の両面上で前記導電パターンを覆うカバー部を有する。
【0014】
本発明の実施形態によれば、前記金属−ポリマー複合材は、非晶質エポキシ樹脂と、前記金属−ポリマー複合材に対して75wt%〜98wt%で前記非晶質エポキシ樹脂に含有された金属磁性体粉末とを含む。
【0015】
本発明の実施形態によれば、前記金属−ポリマー複合材は、異なる平均粒子大きさを有する少なくとも二つの金属粒子を含む。
【0016】
本発明の他の実施形態によるインダクタの製造方法は、表面に導電パターンの形成されたコア基板を準備するステップと、金属−ポリマー複合材から成る磁性体フィルムを製造するステップと、前記コア基板上に前記磁性体フィルムを積層するステップと、前記コア基板に対して前記磁性体フィルムを圧着し、多層構造を有する磁性層を形成するステップとを含む。
【0017】
本発明の実施形態によれば、前記磁性体フィルムを積層するステップは、前記磁性体フィルム間にフィルム形態の接合層を介在するステップを含む。
【0018】
本発明の実施形態によれば、前記磁性体フィルムを積層するステップは、前記磁性体フィルムの相対する面に接合物質をコーティングするステップを含む。
【0019】
本発明の実施形態によれば、前記磁性体フィルムを積層するステップは、前記磁性体フィルム間にエポキシ樹脂材質を含む接合層を介在するステップを含む。
【0020】
本発明の実施形態によれば、前記磁性層を形成するステップは、170℃〜200℃、面圧0.05kgf〜20kgf、真空度0.1torr以下の工程条件で行われる。
【0021】
本発明の実施形態によれば、前記コア基板に貫通ホールを形成するステップをさらに含み、前記磁性層を形成するステップは、前記貫通ホールを充填するステップを含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、コア基板を覆う磁性層の金属磁性体粉末の充填率を非常に増加させることによって、インダクタのインダクタンス値をより一層向上させることができる。
【0023】
また、本発明によれば、コア基板を覆う磁性層が複数の磁性体フィルムと接合層とを含む多層構造を有することによって、前記磁性体フィルム間の接合力の不足によって生じる浮き現象などを防止することができる。
【0024】
また、本発明によれば、インダクタの素子本体を成す磁性層の金属磁性体粉末の充填率を高め、インダクタンス値をより一層向上させたインダクタを提供することができる。
【0025】
また、本発明によれば、素子本体を成す磁性層が複数の磁性体フィルムと接合層とを含む多層構造を有することによって、前記磁性体フィルム間の接合力の不足によって生じる浮き現象などが防止されたインダクタを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態によるインダクタを示す図面である。
図2】本発明の実施形態によるインダクタの製造方法を示す手順図である。
図3a】本発明の実施形態によるインダクタの製造過程を説明するための図面である。
図3b】本発明の実施形態によるインダクタの製造過程を説明するための図面である。
図3c】本発明の実施形態によるインダクタの製造過程を説明するための図面である。
図3d】本発明の実施形態によるインダクタの製造過程を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施の形態は図面を参考にして詳細に説明する。次に示される各実施の形態は当業者にとって本発明の思想が十分に伝達されることができるようにするために例として挙げられるものである。従って、本発明は以下示している各実施の形態に限定されることなく他の形態で具体化されることができる。そして、図面において、装置の大きさ及び厚さなどは便宜上誇張して表現されることができる。明細書全体に渡って同一の参照符号は同一の構成要素を示している。
【0028】
本明細書で使われた用語は、実施形態を説明するためのものであって、本発明を制限しようとするものではない。本明細書において、単数形は文句で特別に言及しない限り複数形も含む。明細書で使われる「含む」とは、言及された構成要素、ステップ、動作及び/又は素子は、一つ以上の他の構成要素、ステップ、動作及び/又は素子の存在または追加を排除しないことに理解されたい。
【0029】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態によるインダクタ及びその製造方法について詳記する。
【0030】
図1は、本発明の実施形態によるインダクタを示す図面である。図1を参照して、本発明の実施形態によるインダクタ100は積層型パワーインダクタであって、コア基板110、導電パターン120、磁性層130及び外部電極140を備える。
【0031】
前記コア基板110は、前記インダクタ100の製造のためのベースである。前記コア基板110には、前記コア基板110を貫く少なくとも一つの貫通ホール112が形成される。前記貫通ホール112は、前記導電パターン120が形成されない前記コア基板110の略中央領域に設けられる。前記貫通ホール112は、前記インダクタ100内で前記磁性層140の占有面積を高めるために設けられるもので、所定の磁性体粉末で満たされる。
【0032】
前記導電パターン120は、前記コア基板110の両面に形成される。一例として、前記導電パターン120は、前記コア基板110の一面上に形成された第1のパターン122と、前記コア基板110の該一面の反対側の他面上に形成された第2のパターン124と、前記第1及び第2のパターン122、124を電気的に接続するように前記コア基板110を貫く接続体126とを含む。このような構造の導電パターン120は、前記コア基板110上で少なくとも一つのコイルを成す。前記導電パターン120は、多様な金属材質から成ってもよい。一例として、前記導電パターン120は、銀(Ag)または銅(Cu)から成ってもよい。
【0033】
前記磁性層130は、前記貫通ホール112を満たしながら、前記コア基板110の両面を覆うことができる。前記磁性層130は、前記貫通ホール112を満たす充填部及び前記コア基板110の両面を覆うカバー部を含む。このような構造の磁性層130は、略六面体状の前記インダクタ100の素子本体を構成する。
【0034】
前記外部電極140は、前記導電パターン120と電気的に接続されると共にも前記素子本体の外部両端部を覆うような構造を有する。前記外部電極140は、前記インダクタ100を外部電子機器(図示せず)と電気的に接続するための外部接続端子として利用される。
【0035】
前記磁性層130は、金属−ポリマー複合材材質から成る。例えば、前記金属−ポリマー複合材は、金属磁性体粉末136と未硬化状態の熱硬化性樹脂138から成る金属−ポリマー複合材によって形成される。前記金属磁性体粉末136には、多様な磁性付き金属粉末が挙げられる。前記熱硬化性ポリマー138には、非晶質エポキシ樹脂が挙げられる。前記非晶質エポキシ樹脂は、ビペニルタイプのエポキシのような結晶性エポキシに比べて、フィルム状での製作が容易くなる。特に、ノボラック系列のエポキシ樹脂または分子量15000以上のラバー系高分子エポキシ樹脂を使う場合、フィルム状での製作が非常に容易くなる。その他にも、前記熱硬化性樹脂には、ポリイミド(polyimide)または液晶クリスタルポリマー(Liquid Crystal Polymer:LCP)などが挙げられる。前記のような熱硬化性樹脂は、前記金属磁性体粉末の重さに対比にて略2.0wt%〜5.0wt%で含有される。
【0036】
前記金属磁性体粉末136は、前記金属−ポリマー複合材に対して略75wt%〜98wt%含量を有するように形成される。前記金属磁性体粉末136が前記複合材に対して略75wt%未満の場合、非磁性体である前記熱硬化性樹脂138の含量が相対的に多くなり、前記磁性層130が前記インダクタ100の特性具現のための磁束の流れを邪魔する要因として作用することがある。通常、他の条件が同じ状態にて、金属磁性体粉末136の含量のみを前記金属−ポリマー複合材に対して略75wt%未満で含ませた場合、インダクタのインダクタンス値が設計値より略30%が低くなることが認められた。これに反して、前記金属磁性体粉末136が前記複合材に対して略98wt%を超過の場合、前記金属−ポリマー複合材の物性が前記磁性層130を製造するための磁性体フィルム132を製作しにくい状態になり、前記磁性体フィルム132の歩留まりがさらに低くなることになる。
【0037】
前記金属磁性体粉末136は、異なる粒子大きさを有する金属粒子から成ることが望ましい。前記金属磁性体粉末136の粒子大きさが全て等しい場合、前記金属−ポリマー複合材内で前記金属磁性体粉末の高い分散度を確保しにくく、前記磁性層130内の磁性体粉末の分散性を確保しにくくなる。これを防止するため、前記金属磁性体粉末136は、略20μm〜100μmの平均直径を有する第1の金属粒子136aと10μm未満の平均直径を有する第2の金属粒子136bとを混合して使うのが望ましい。
【0038】
また、前記磁性層130は、多層構造を有してもよい。例えば、前記磁性層130は、前記基板10上に積層された複数の磁性体フィルム132及び前記磁性体フィルム132間に介在する接合層134を含む。前記磁性体フィルム132は、金属−ポリマー複合材材質から成る薄板形態のシートである。前記接合層134は、前記磁性体フィルム132間の接合力を付与するためのものである。前記接合層134は、多様な種類の樹脂材質から成ってもよい。例えば、前記接合層134には、前記磁性層130を成す金属−ポリマー複合材に使われるものと同じ材質の樹脂が使われてもよい。一例として、前記エポキシ樹脂には、非晶質エポキシ樹脂が挙げられる。この場合、前記接合層134は、前記磁性体フィルム132間の接合力を付与すると共に前記磁性層130の機能を低下させない。
【0039】
前記インダクタ100のインダクタンス特性は、前記磁性層130内の金属磁性体粉末の充填率が高いほど優秀になる。これは、前記金属−ポリマー複合材内で相対的に樹脂の含量を最小化することが、前記インダクタンス特性上から有利であるということを意味する。しかし、前記樹脂の含量が極めて少なくなると、前記磁性体フィルム132間の接合力が確保されなくなり、前記樹脂の含量は前記金属−ポリマー複合材に対して最小限略5wt%までは確保されなければならない。これに対して、本発明の実施形態によるインダクタ100では、前記磁性体フィルム132の材料である金属−ポリマー複合材において、前記金属磁性体の含量を最大化して、これにより低下される前記磁性体フィルム132間の接合力は別途の接合層134を前記磁性体フィルム132間に提供することで確保することができる。よって、前記インダクタ100は、前記磁性層130が前記磁性体フィルム132とこれらを接合させる接合層134とから成る多層構造を有する。前記のような接合層134によって、前記磁性体フィルム132間の浮き現象を防止すると共に前記磁性体フィルム132への金属磁性体粉末の含量を最大化する。
【0040】
前述のように、本発明の実施形態によるインダクタ100は、表面に導電パターン120の形成されたコア基板110と、前記コア基板110を覆う磁性層130と、前記磁性層130の外部両端部を覆う外部電極140とを備える。前記磁性層130は、磁性体フィルム132と、前記磁性体フィルム132との間に介在して前記磁性体フィルム132間を接合させる接合層134とから成る多層構造を有する。この場合、前記磁性体フィルム132の前記金属磁性体粉末の含量を前記金属−ポリマー複合材に対して略98wt%まで増加させることによって生じる前記磁性体フィルム132間の接合力の低下を前記接合層134が補強することになる。これによって、本発明によるインダクタは、表面に導電パターンの形成されたコア基板を覆う磁性層の金属磁性体粉末の含量をさらに増加させることによって、インダクタのインダクタンス値をより一層向上させることができる。また、本発明によるインダクタは、コア基板を覆う磁性層が複数の磁性体フィルムと接合層とから成る多層構造を有し、前記接合層が前記磁性体フィルムを接合させることによって、前記磁性体フィルム間の接合力の不足によって生じる浮き現象などを防止することができる。
【0041】
次に、本発明の他の実施形態によるインダクタの製造方法について詳記する。前述の実施形態によるインダクタ100と重複する説明は省略することにする。
【0042】
図2は、本発明の他の実施形態によるインダクタの製造方法を示す手順図で、図3a〜図3dは各々本発明の実施形態によるインダクタの製造過程を説明するための図面である。
【0043】
図2及び図3aを参照して、表面に導電パターン120の形成されたコア基板110を準備する(S110)。前記コア基板110としては、両面に導電パターン120がコイルを成すように形成され、前記導電パターン120が形成されない領域に貫通ホール112が形成された回路基板が使われる。前記導電パターン120は第1のパターン122及び第2のパターン124と、これらの前記第1及び第2のパターン122、124によって接続される接続体126とで構成される。前記コア基板110は、所定の絶縁板上に前記導電パターン120を形成の後、前記コア基板110にパンチング工程によって前記貫通ホール112を形成して用意される。
【0044】
続いて、磁性体フィルム132を準備する(S120)。前記磁性体フィルム132を準備するステップは、金属−ポリマー複合材を製造した後、前記金属−ポリマー複合材をキャスティング(casting)してシート状で製作して行われる。前記磁性体フィルム132の機械的強度が増加すると工程性をさらに向上させることができる。このため、前記金属−ポリマー複合材にラバー系強化剤(toughening agent)をさらに添加する。前記ラバー系強化剤の含量は、前記非晶質エポキシ樹脂の略1〜30PHR(Part Perspective view Hundred Resin)に調節することが望ましい。前記ラバー系強化剤の含量が略1PHR未満の場合、その含量が極めて少なく前記磁性体フィルム132の機械的強度を向上させるという効果が奏さないこともある。これに対して、30PHR超の場合、前記磁性体フィルム132の硬化工程の後、機械的物性が低くなるという問題が生じる。
【0045】
図2及び図3bを参照して、コア基板110上に接合層134を介在して磁性体フィルム132を積層する(S130)。詳しくは、前述の磁性体フィルム132を前記コア基板110の両面上に順次積層する。この時、前記磁性体フィルム132間に接合層134を介在させてもよい。一例として、前記接合層134は、前記磁性体フィルム132各々にスプレーコーティング方式で所定の接合物質をコーティングして形成されてもよい。他の例として、前記接合層134は、フィルム状に製作され、前記磁性体フィルム132間に位置させることによって提供されてもよい。前記接合層134は、前記金属−ポリマー複合材において使われるポリマー樹脂と同じ材質から成ってもよい。
【0046】
図2及び図3cを参照して、コア基板110に対して磁性体フィルム132と接合層134とから成る積層物を圧着及び硬化させ、磁性層130を形成する。前記積層物を圧着及び硬化させる工程は、所定の温度、面圧、真空度の条件を満たすように調節される。詳しくは、前記硬化温度は略170℃〜200℃に調節される。前記硬化温度が170℃未満の場合は、前記積層物の完全硬化が難しくなり、200℃超の場合は、前記磁性体フィルム132の樹脂に劣化が発生することになる。前記面圧は、略0.05kgf〜20kgfに調節される。前記面圧が0.05kgf未満の場合、前記積層物への加圧力が低く、略数百μm位の深みを有する前記貫通ホール112内に前記磁性体フィルム132が完全に満たさないことがある。また、前記面圧が20kgf超の場合、過度な加圧による前記コア基板110の変形が生じる。そして、前記真空度は、前記磁性層130の形成時、前記磁性体フィルム132内の残留溶剤を除去するために必要な条件である。このため、前記真空度は、1torr以下に調節される。
【0047】
これによって、前記コア基板110の両面を覆うと共に、前記磁性体フィルム132とこれらの間に介在する接合層134から成る多層構造を有する磁性層130が形成される。前記磁性層130は、前記コア基板110の貫通ホール112内に效果よく充填されることができる。前記磁性体フィルム132自らの金属磁性体粉末の含量が高いので、前記貫通ホール112に充填された前記磁性層130の充填部における金属磁性体粉末の充填率も高くなる。
【0048】
続いて、前記磁性層130が形成されたデバイス本体の表面の両端部に外部電極140を形成する(S140)。前記外部電極140を形成するステップは、前記磁性層130から成るインダクタの素子本体の外部両端部に金属電極を形成することによって行われる。前記外部電極140を形成する前に、前記磁性層130の形成されたコア基板110を複数切断するダイシング(dicing)工程が行われる。
【0049】
前述のように、本発明の実施形態によるインダクタの製造方法は、コア基板110を覆う磁性層130を複数の磁性体フィルム132と接合層134を挟む積層物を前記コア基板110の両面に圧着して形成する。この場合、前記磁性体フィルム132の金属磁性体粉末136の含量を高め、これにより前記磁性体フィルム132間の接合力が低くなることを防止することができる。これによって、本発明によるインダクタの製造方法は、インダクタの素子本体を成す磁性層の金属磁性体粉末の充填率を高め、インダクタンス値をより一層向上させたインダクタを提供することができる。また、本発明によるインダクタの製造方法によれば、素子本体を成す磁性層が複数の磁性体フィルムと接合層とから成る多層構造を有することによって、前記磁性体フィルム間の接合力の不足によって生じる浮き現象などが防止されたインダクタを製造することができる。
【0050】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、前記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0051】
100 インダクタ
110 コア基板
120 導電パターン
130 磁性層
132 磁性体フィルム
134 接合層
136 金属磁性体粉末
138 熱硬化性樹脂
140 外部電極
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d