(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水底若しくは岸壁に固定される、又は水中に係留される構造体と、前記構造体に係動され波により揺動される浮体と、前記浮体の揺動をエネルギーに変換するエネルギー変換手段と、前記浮体の揺動により生ずる変位に対し前記変位が増すに従い更に前記変位を助長する方向に力が働く負ばね効果を生成する負ばね効果生成手段とを備え、前記負ばね効果生成手段は、前記変位が増すに従いモーメントが増すモーメント機構であり、前記モーメント機構が、前記浮体の揺動を回動運動に変換する回動機構部と、前記回動機構部に前記モーメントを作用させるアーム部とからなり、前記回動機構部が、ラックとピニオンから成り、前記ピニオンの軸に前記アーム部を固定して設けて構成され、前記負ばね効果生成手段により前記浮体の揺動の固有周期を長くしたことを特徴とする負ばね効果を利用した波力利用装置。
前記磁力機構は、前記浮体の揺動を直線運動として取り出す直線運動機構部と、前記直線運動機構部に磁力を作用させる直線運動機構磁石部とからなることを特徴とする請求項2に記載の負ばね効果を利用した波力利用装置。
【背景技術】
【0002】
波力発電装置等の波力利用装置の一つの形式として、海洋に設置した浮体(ブイ)の揺動(上下動)をエネルギー変換する機構を利用するものがある。その場合、ブイの上下動の固有周期は、ブイの浮力ばね作用とブイの質量で決まるが、一般的には波周期より短い。一方、エネルギー変換効率を上げる観点からは、ブイの上下動の固有周期と波周期が一致していることが望ましい。例えば、波浪エネルギーをブイの上下動による運動エネルギーに変換し、それを発電機の駆動エネルギーとして発電する機構においては、次のような状況になる。
1)ブイ上下動の固有周期より十分に短い周期の波に対しては、ブイが上下運動をしないため発電ができない。
2)ブイ上下動の固有周期より十分に長い周期の波に対しては、ブイが上下運動をするため発電ができる。
3)ブイ上下動の固有周期とほぼ等しい波周期に対しては、共振状態となって波の水面上下量以上の振幅でブイが上下運動をするため、上記2)より大きな発電ができる。
従って、到来が予想される波周期に対してブイ上下動の固有周期をほぼ等しく設定することが望ましい。
ここで、特許文献1には、偏心回転体を内蔵する浮体の固有振動数を一定の条件のもとに波浪の振動数に近づける波浪エネルギー変換装置が開示されている。また、特許文献2には、通常の波に対する揺動応答特性が鈍い長周期ブイと、通常の波に対する応答特性を有する短周期ブイとの組み合わせた波力発電ブイに関し、通常の波に対して長周期ブイは発電作用を担う短周期ブイの振幅を助長し、波に同期した振動を行わせることが開示されている。
【0003】
また、負ばね効果を生成する手段として、例えば特許文献3には、通常のばね特性を有する第1のばねと、これとはほぼ逆のばね特性を有する座屈ばねを成す第2のばねと、これらをそれぞれ支持する手段と、第1、第2のばねに同一方向の変位を与える手段を設け、第1、第2のばねの変位によってばね支持手段のばね支持部間に生じる力を出力する倍力装置が開示されている。また、特許文献4には、磁性体でなる被吸着体に対して対接される本体フレームに対して、被吸着体に作用する磁気吸引力に抗するばね機構で永久磁石を支持し、ばね機構を永久磁石による吸引力に平衡する状態に設定した磁気吸着装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、負ばね効果を生成する手段を備え、負ばね効果によりブイの固有周期を長くして波周期と一致させる波力利用装置は未だ提案されていない。
特に、波力利用装置に用いる負ばねは大きな可動範囲を要するが、先行技術によっては波力利用装置に必要な可動範囲が得られない。
ここで、負ばね効果とは、ばね定数が負である「負のばね」が奏する効果をいい、
図7に示すように、普通のばねは、ばねを伸ばす(変位を大きくする)と元に戻そうとする力が働き、ばねを縮める(変位を小さくする)と元に戻そうとする力が働くのに対し、「負のばね」は、ばねを伸ばすと益々ばねを伸ばそうとする力が働き、ばねを縮めると益々ばねを縮めようとする力が働く。
浮体(ブイ)の固有周期は、Tを浮体の固有周期、mを浮体の質量(付加質量を含む)、k
1を浮体の浮力ばね作用、k
2を付加ばねとすると、次式(1)で表されるので、k
2を負にすることによって、浮体の固有周期を増大させることができる。
【0006】
【数1】
【0007】
そこで、本発明は、負ばね効果により浮体揺動の固有周期を長くして、到来が予想される波周期に対して浮体揺動の固有周期をほぼ等しく設定することで、効率よく波力エネルギーを利用できる、負ばね効果を利用した波力利用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載に対応した負ばね効果を利用した波力利用装置においては、水底若しくは岸壁に固定される、又は水中に係留される構造体と、構造体に係動され波により揺動される浮体と、浮体の揺動をエネルギーに変換するエネルギー変換手段と、浮体の揺動により生ずる変位に対し変位が増すに従い更に変位を助長する方向に力が働く負ばね効果を生成する負ばね効果生成手段とを備え、
負ばね効果生成手段は、変位が増すに従いモーメントが増すモーメント機構であり、モーメント機構が、浮体の揺動を回動運動に変換する回動機構部と、回動機構部にモーメントを作用させるアーム部とからなり、回動機構部が、ラックとピニオンから成り、ピニオンの軸にアーム部を固定して設けて構成され、負ばね効果生成手段により浮体の揺動の固有周期を長くしたことを特徴とする。請求項1に記載の本発明によれば、負ばね効果生成手段が、揺動による浮体の変位量に応じて浮体の変位を助長するので、浮体揺動の固有周期と波の周期とを概ね一致させることができ、浮体の揺動を大きくしてより大きなエネルギーを得ることができる。
また、モーメントを付与することによって負ばね効果を生成し、浮体の変位を助長することができる。また、浮体の揺動を回動運動に変換し、アーム部によって回動機構部にモーメントを付与することで、負ばね効果を生成しやすくなる。また、ピニオンの軸にアーム部を固定することで、アーム部から回動機構部に対し円滑にモーメントを作用させ、回動運動を上下運動に変換することができる。
【0009】
請求項
2記載
に対応した負ばね効果を利用した波力利用装置においては、
水底若しくは岸壁に固定される、又は水中に係留される構造体と、構造体に係動され波により揺動される浮体と、浮体の揺動をエネルギーに変換するエネルギー変換手段と、浮体の揺動により生ずる変位に対し変位が増すに従い更に変位を助長する方向に力が働く負ばね効果を生成する負ばね効果生成手段とを備え、負ばね効果生成手段は、変位が増すに従い磁力による吸引力が増す磁力機構であ
り、負ばね効果生成手段により浮体の揺動の固有周期を長くしたことを特徴とする。請求項
2に記載の本発明によれば、磁力によって負ばね効果を生成し、浮体の変位を助長することができる。
【0010】
請求項
3記載の本発明は、磁力機構は、浮体の揺動を回動運動に変換する回動機構部と、回動機構部に磁力を作用させる回動機構磁石部とからなることを特徴とする。請求項
3に記載の本発明によれば、浮体の揺動を回動運動に変換し、回動機構磁石部によって回動機構部に磁力を作用させることで、負ばね効果を生成しやすくなる。
【0011】
請求項
4記載の本発明は、磁力機構は、浮体の揺動を直線運動として取り出す直線運動機構部と、直線運動機構部に磁力を作用させる直線運動機構磁石部とからなることを特徴とする。請求項
4に記載の本発明によれば、浮体の揺動を取り出した直線運動を利用して、負ばね効果を生成することができる。
【0012】
請求項
5記載の本発明は、エネルギー変換手段は、浮体の揺動を直接的又は間接的に電気エネルギーに変換することを特徴とする。請求項
5に記載の本発明によれば、波力エネルギーを利用して発電を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、負ばね効果生成手段が、揺動による浮体の変位量に応じて浮体の変位を助長するので、浮体揺動の固有周期と波の周期とを概ね一致させることができ、浮体の揺動を大きくしてより大きなエネルギーを得ることができる。
【0014】
また、負ばね効果生成手段は、変位が増すに従いモーメントが増すモーメント機構である場合には、モーメントを付与することによって負ばね効果を生成し、浮体の変位を助長することができる。
【0015】
また、モーメント機構は、浮体の揺動を回動運動に変換する回動機構部と、回動機構部にモーメントを作用させるアーム部とからなる場合には、浮体の揺動を回動運動に変換し、アーム部によって回動機構部にモーメントを付与することで、負ばね効果を生成しやすくなる。
【0016】
また、回動機構部は、ラックとピニオンから成り、ピニオンの軸にアーム部を固定して設けた場合には、ピニオンの軸にアーム部を固定することで、アーム部から回動機構部に対し円滑にモーメントを作用させ、回動運動を上下運動に変換することができる。
【0017】
また、負ばね効果生成手段は、変位が増すに従い磁力による吸引力が増す磁力機構である場合には、磁力によって負ばね効果を生成し、浮体の変位を助長することができる。
【0018】
また、磁力機構は、浮体の揺動を回動運動に変換する回動機構部と、回動機構部に磁力を作用させる回動機構磁石部とからなる場合には、浮体の揺動を回動運動に変換し、回動機構磁石部によって回動機構部に磁力を作用させることで、負ばね効果を生成しやすくなる。
【0019】
また、磁力機構は、浮体の揺動を直線運動として取り出す直線運動機構部と、直線運動機構部に磁力を作用させる直線運動機構磁石部とからなる場合には、浮体の揺動を取り出した直線運動を利用して、負ばね効果を生成することができる。
【0020】
また、エネルギー変換手段は、浮体の揺動を直接的又は間接的に電気エネルギーに変換する場合には、波力エネルギーを利用して発電を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態による負ばね効果を利用した波力利用装置について説明する。
図1は本発明の一実施形態による負ばね効果を利用した波力利用装置の構成図である。また、
図2は同波力利用装置が備えるエネルギー変換手段と負ばね効果生成手段の要部構成図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の負ばね効果を利用した波力利用装置は、水底に固定された緊張係留索10によって水中に係留された構造体20と、構造体20に係動され波により揺動される浮体30を備えている。
構造体20は、機械室21、機械室21を囲繞する係繋体22、及び構造体20と浮体30とを接続する動揺棒23を備える。
動揺棒23の一端23aは浮体30に固定され、他端23bは係繋体22を貫通し機械室21内に固定せずに配置される。このように浮体30は、動揺棒23を介して上下動可能に構造体20と接続され係動している。
また、係繋体22は、波により揺動する浮体30が水底方向に変位し反力が加わったときにも緊張係留索10が弛まない程度の十分な浮力を有している。
なお、係留方式は緊張係留以外にも各種方式が選択可能である。
【0024】
図2に示すように、機械室21内には、浮体30の揺動をエネルギーに変換するエネルギー変換手段40と、浮体30の揺動により生ずる変位に対し変位が増すに従い更に変位を助長する方向に力が働く負ばね効果を生成する負ばね効果生成手段50とを備えている。
本実施形態においては、負ばね効果生成手段50は、浮体30の変位が増すに従いモーメントが増すモーメント機構であり、モーメントを付与することによって、浮体30の変位を助長することができる。モーメント機構は、浮体30の揺動を回転運動に変換する回動機構部60と、回動機構部60にモーメントを作用させるアーム部70とからなる。
また、回動機構部60は、ラック61とピニオン62から成り、ピニオン62の軸62Aにアーム部70を上向きに固定して設けている。なお、ラック61は動揺棒23の他端23b側に加工して形成したものである。浮体30の揺動を回動運動に変換し、アーム部70によって回動機構部60にモーメントを付与することで、負ばね効果を生成しやすくなる。また、ピニオン62の軸62Aにアーム部70を固定することで、アーム部70から回動機構部60に対し円滑にモーメントを作用させることができる。
さらに、アーム部70の先端70aには錘80を備えている。錘80は、アーム部70が回動機構部60にモーメントを大きくするために設けたものである。アーム部70の自重や形状によって十分にモーメントを付与することができる場合は、錘80は無くてもよい。
【0025】
また、エネルギー変換手段40は、ピニオン62と対称に設けた発電機駆動用歯車41を有する。発電機駆動用歯車41は、ラック61が形成された動揺棒23の上下動に伴って所定角度回動し、発電機駆動軸42を介して発電機(図示無し)を駆動する。つまり、浮体30の揺動を回転運動に変換して直接的に電気エネルギーに変換する。したがって、本実施形態の負ばね効果を利用した波力利用装置は、浮体式浮力発電装置として用いることができる。なお、ラック61は
図2に示すような左右で同じピッチとしないでピッチを異ならせ、発電機駆動用歯車41の歯車ピッチを変えて、発電機の回転数をピニオン62の回転数と異ならせることもできる。
【0026】
ここで、浮体30は、平均水面を基準として上下動のバランス点が予め調整されている。
図2(a)は浮体30が上下動のバランス点にあるときのエネルギー変換手段40と負ばね効果生成手段50の状態を示し、
図2(b)は浮体30が水底方向に変位したときのエネルギー変換手段40と負ばね効果生成手段50の状態を示し、
図2(c)は浮体30が水底方向とは逆に変位したときのエネルギー変換手段40と負ばね効果生成手段50の状態を示している。
静水状態においては、エネルギー変換手段40と負ばね効果生成手段50は
図2(a)に示す状態にあり、アーム部70は垂直に立っていてモーメントがかからない状態となっている。
浮体30が水底方向に変位(下降)すると、動揺棒23も水底方向に変位する。このとき、
図2(b)に示すように、動揺棒23に形成したラック61と噛み合うピニオン62が反時計回りに回転する。ピニオン62には錘80を備えたアーム部70が固定されており、ピニオン62の回転に伴ってアーム部70も同じく反時計回りに回転するので、アーム部70によって回動機構部60にモーメントが次第に付与され、浮体30及び動揺棒23の変位は助長されて益々下方向に変位することとなる。
また、浮体30が水底方向とは逆に変位(上昇)すると、動揺棒23も水底方向とは逆に変位する。このとき、
図2(c)に示すように、ラック61と噛み合うピニオン62が時計回りに回転する。ピニオン62の回転に伴ってアーム部70も同じく時計回りに回転するので、アーム部70によって回動機構部60にモーメントが次第に付与され、浮体30及び動揺棒23の変位は助長されて益々上方向に変位することとなる。
なお、アーム部70はピニオン62の回転に従って回転していくので、浮体30及び動揺棒23の変位が増すに従い更にその変位を助長するモーメントが増していくこととなる。
【0027】
このように負ばね効果生成手段50が、揺動による浮体30の変位量に応じて浮体30の変位を助長するので、浮体30の上下動の固有周期を長くして波の周期と概ね一致させることができる。このとき浮体30は共振状態となって水面上下量以上の振幅で上下するため、エネルギー変換手段40を介して接続される発電機における発電量を大きくすることができる。
【0028】
なお、アーム部70の回転角度を、
図2(a)に示す垂直に立っている状態を基準として±90°以内とするため、それ以上の回転を規制するストッパーなどを設けることが好ましい。このストッパーは、荒天時における浮体30の過大な動揺を防ぐ点からも必要である。
また、アーム部70の長さを調節することにより、負ばね効果の生成を調節することも可能である。例えば、生産時点で波力利用装置の設置場所の波の状態に応じて調節して出荷する方法や、設置場所で日ごとに変わる波の状態に応じて自動的に変更する方法等を採用することができる。
また、本実施例においては、浮体30の揺動に伴う上下動を回転運動に変換する回動機構部60は、ラック61とピニオン62から成るものとして説明したが、クランク機構やリンク機構、又は摩擦機構等を用いてもよい。
【0029】
また、エネルギー変換手段40は、浮体30の揺動を空気圧に変換し、その空気圧を発電機のタービンを駆動する動力として使用してもよい。つまり、浮体30の揺動を空気圧に変換し、さらに回転運動に変換して間接的に電気エネルギーに変換することもできる。
また、発電機駆動用歯車41を無くし、ピニオン62の軸62Aを介して発電機を接続してもよい。
【0030】
図3は本発明の他の実施形態によるエネルギー変換手段と負ばね効果生成手段の要部構成図である。なお、上記した実施形態と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0031】
本実施形態は、負ばね効果生成手段50は、浮体30の変位が増すに従い磁力による吸引力が増す磁力機構であり、磁力によって、浮体30の変位を助長することができる。
図3に示すように、磁力機構は、浮体30の揺動を回転運動に変換する回動機構部60と、回動機構部60に磁力を作用させる回動機構磁石部170とからなる。
回動機構部60は、ラック61とピニオン62とから成り、回動機構磁石部170は、揺動磁石171と上下に離間して設けた上部固定磁石172及び下部固定磁石173とを備える。また、ピニオン62の軸62Aにはロッド63がラック61とは反対方向に横向きに固定して設けられており、ロッド63の先端63aには揺動磁石171が設けられている。揺動磁石171は、上側がN極、下側がS極である。揺動磁石171の回動軌跡に沿って、上部側に上部固定磁石172、下部側に下部固定磁石173が離間配置されており、上部固定磁石172及び下部固定磁石173も、それぞれ上側がN極、下側がS極である。
このように、浮体30の揺動を回動運動に変換し、回動機構磁石部170によって回動機構部60に磁力を作用させることで、負ばね効果を生成しやすくなる。また、ピニオン62の軸62Aにロッド63を介して揺動磁石171を固定することで、回動機構磁石部170から回動機構部60に対し磁力を確実に作用させることができる。
【0032】
ここで、浮体30は、上記した実施例と同様に、平均水面を基準として上下動のバランス点が予め調整されている。
図3(a)は浮体30が上下動のバランス点にあるときのエネルギー変換手段40と負ばね効果生成手段50の状態を示し、
図3(b)は浮体30が水底方向に変位したときのエネルギー変換手段40と負ばね効果生成手段50の状態を示し、
図3(c)は浮体30が水底方向とは逆に変位したときのエネルギー変換手段40と負ばね効果生成手段50の状態を示している。
静水状態においては、エネルギー変換手段40と負ばね効果生成手段50は
図3(a)に示す状態にあり、ロッド63は水平方向を向いていて磁石の吸引力はバランスしている。
浮体30が水底方向に変位(下降)すると、動揺棒23も水底方向に変位する。このとき、
図3(b)に示すように、動揺棒23に形成したラック61と噛み合うピニオン62が反時計回りに回転する。ピニオン62にはロッド63を介して揺動磁石171が固定されており、ピニオン62の回転に伴って揺動磁石171も同じく反時計回りに回転して上部固定磁石172に近づいていき、揺動磁石171のN極が上部固定磁石172のS極に引きつけられることによって回動機構部60に磁力が次第に作用し、浮体30及び動揺棒23の変位は助長されて益々下方向に変位することとなる。
また、浮体30が水底方向とは逆に変位(上昇)すると、動揺棒23も水底方向とは逆に変位する。このとき、
図3(c)に示すように、ラック61と噛み合うピニオン62が時計回りに回転する。ピニオン62の回転に伴って揺動磁石171も同じく時計回りに回転して下部固定磁石173に近づいていき、揺動磁石171のS極が下部固定磁石173のN極に引きつけられることによって回動機構部60に磁力が次第に作用し、浮体30及び動揺棒23の変位は助長されて益々上方向に変位することとなる。
なお、揺動磁石171は上部固定磁石172又は下部固定磁石173との距離が縮まるにつれてより強く上部固定磁石172又は下部固定磁石173に引きつけられるので、浮体30及び動揺棒23の変位が増すに従い更にその変位を助長する磁力が増していくこととなる。
【0033】
図4は本発明の更に他の実施形態によるエネルギー変換手段と負ばね効果生成手段の要部構成図である。なお、上記した実施形態と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
図3では、磁力機構は、浮体30の揺動を回転運動に変換する回動機構部60を用いたが、本実施形態は、磁力機構は、浮体30の揺動を直線運動として取り出す直線運動機構部90と、直線運動機構部90に磁力を作用させる直線運動機構磁石部270とからなる。
また、直線運動機構部90は、発電機駆動用歯車41とは反対方向に横向きに突出するロッド91を備える。ロッド91の先端91aには揺動磁石271が設けられている。揺動磁石271は、上側がN極、下側がS極である。揺動磁石271が移動する軌跡に沿って、上部側に上部固定磁石272、下部側に下部固定磁石273が離間配置されており、上部固定磁石272及び下部固定磁石273も、それぞれ上側がN極、下側がS極である。
【0035】
ここで、浮体30は、上記した実施例と同様に、平均水面を基準として上下動のバランス点が予め調整されている。
図4(a)は浮体30が上下動のバランス点にあるときのエネルギー変換手段40と負ばね効果生成手段50の状態を示し、
図4(b)は浮体30が水底方向に変位したときのエネルギー変換手段40と負ばね効果生成手段50の状態を示し、
図4(c)は浮体30が水底方向とは逆に変位したときのエネルギー変換手段40と負ばね効果生成手段50の状態を示している。
静水状態においては、エネルギー変換手段40と負ばね効果生成手段50は
図4(a)に示す状態にあり、ロッド91は、上部固定磁石272と下部固定磁石273の中間位置にある。
浮体30が水底方向に変位(下降)すると、動揺棒23も水底方向に変位する。このとき、
図4(b)に示すように、ロッド91の先端91aに設けた揺動磁石271は下部固定磁石273に近づいていき、揺動磁石271のS極が下部固定磁石273のN極に引きつけられることによって直線運動機構部90に磁力が次第に作用し、浮体30及び動揺棒23の変位は助長されて益々下方向に変位することとなる。
また、浮体30が水底方向とは逆に変位(上昇)すると、動揺棒23も水底方向とは逆に変位する。このとき、
図4(c)に示すように、ロッド91の先端91aに設けた揺動磁石271は上部固定磁石272に近づいていき、揺動磁石271のN極が上部固定磁石272のS極に引きつけられることによって直線運動機構部90に磁力が次第に作用し、浮体30及び動揺棒23の変位は助長されて益々上方向に変位することとなる。
このように、浮体30の揺動を取り出した直線運動を利用して、負ばね効果を生成することができる。なお、揺動磁石271は上部固定磁石272又は下部固定磁石273との距離が縮まるにつれてより強く上部固定磁石272又は下部固定磁石273に引きつけられるので、浮体30及び動揺棒23の変位が増すに従い更にその変位を助長する磁力が増していくこととなる。また、揺動磁石271、上部固定磁石272、下部固定磁石273は、電磁石を持って構成することも可能であり、直線運動に合わせてリニア型とすることもできる。
【0036】
図5は本発明の他の実施形態による負ばね効果を利用した波力利用装置の構成図である。なお、上記した実施形態と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
図1では、構造体20は、緊張係留索10によって水底に係留したが、本実施形態では、構造体20は、海底支持構造体110によって水底に固定して支持されている。
本実施形態においても
図2〜
図4で説明したエネルギー変換手段と負ばね効果生成手段を備えることができ、本実施形態の負ばね効果を利用した波力利用装置は、着底式浮力発電装置として用いることができる。
【0038】
図6は本発明の更に他の実施形態による負ばね効果を利用した波力利用装置の構成図である。なお、上記した実施形態と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0039】
本実施形態では、構造体20は、岸壁210に固定されている。
上下が反転するが、本実施形態においても
図2〜
図4で説明したエネルギー変換手段と負ばね効果生成手段を備えることができ、本実施形態の負ばね効果を利用した波力利用装置は、岸壁設置式浮力発電装置として用いることができる。
【0040】
なお、上記各実施形態において、負ばね効果生成手段50としてはモーメント機構を利用したもの、磁力機構を利用したものを例に挙げたが、可動範囲が大きく取れるばね機構を用いたもの等、負ばね効果を生成できる他の機構であってもよい。負ばね効果生成手段50を機械的な機構で構成することにより、負ばね効果生成手段50は、電力等のエネルギーを使用することなく動作できる。したがって、特別に動作用のエネルギー供給手段を設けることなく、負ばね効果を生成することが可能となる。また、負ばね効果生成手段50は、負ばね効果の生成レベルを波の周期に応じて変更することも可能である。
【課題】負ばね効果により浮体揺動の固有周期を長くして、到来が予想される波周期に対して浮体揺動の固有周期をほぼ等しくすることができる、効率のよい波力利用装置を提供すること。
【解決手段】水底若しくは岸壁に固定される、又は水中に係留される構造体20と、構造体20に係動され波により揺動される浮体30と、浮体30の揺動をエネルギーに変換するエネルギー変換手段40と、浮体30の揺動により生ずる変位に対し変位が増すに従い更に変位を助長する方向に力が働く負ばね効果を生成する負ばね効果生成手段50とを備え、負ばね効果生成手段50により浮体30の揺動の固有周期を長くした。