(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ジョグダイヤルと、このジョグダイヤルの回転量および回転方向を検出する回転検出手段と、前記ジョグダイヤルを、溶接トーチから溶接ワイヤを送給するための送給操作手段として設定する割付手段とを有する操作部と、
前記溶接ワイヤを送給する送給機構部と、
前記送給機構部へ送給制御信号を出力する送給制御手段を有する制御部と、を含むアーク溶接装置であって、
前記ジョグダイヤルが前記送給操作手段として設定されている間は、前記操作部は、前記回転検出手段が検出した回転量および回転方向を前記制御部へ通知し、
前記送給制御手段は、前記制御部から通知された前記回転量に基づいて前記溶接ワイヤの送給速度を算出するとともに前記回転方向に基づいて送給方向を算出して前記送給制御信号を生成し、該送給制御信号を前記送給機構部へ出力することを特徴とするアーク溶接装置。
前記送給制御手段は、前記溶接ワイヤの送給が行われていない状態で前記回転量および回転方向が通知されたときは、予め定めた初期送給速度で且つ通知された回転方向と対応する方向へ前記溶接ワイヤの送給を開始し、前記溶接ワイヤの送給中に前記通知された回転方向と同一方向へ前記ジョグダイヤルが回転されたことが通知されたときは、予め定めた速度変化値に前記回転量を乗じて現在の送給速度に加算する一方、前記溶接ワイヤの送給中に前記通知された回転方向とは逆方向へ前記ジョグダイヤルが回転されたことが前記制御部から通知されたときは、前記速度変化値に前記回転量を乗じて現在の送給速度から減算する送給制御信号を生成して前記送給機構部へ出力することを特徴とする請求項1記載のアーク溶接装置。
前記ジョグダイヤルが前記送給操作手段として機能することを許可する送給イネーブルスイッチを備え、前記送給イネーブルスイッチがオンの場合にのみ前記ジョグダイヤルを前記送給操作手段として機能させることを特徴とする請求項1または請求項2記載のアーク溶接装置。
前記溶接ワイヤの送給負荷を検出する送給負荷検出手段をさらに備え、この送給負荷検知手段が所定値以上の送給負荷を検出した場合は、前記溶接ワイヤの送給を停止することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のアーク溶接装置。
前記操作部は前記溶接トーチが搭載されたマニピュレータを操作するためのティーチペンダントであり、前記制御部は前記マニピュレータを駆動制御するためのロボットコントローラであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のアーク溶接装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、溶接電源装置やこれに付属した遠隔操作器、あるいはアーク溶接ロボットの可搬式操作装置に備えた操作キーを用いて、溶接トーチの先端から溶接ワイヤを繰り出すための操作(以下、手動送りという)が可能になっている(例えば、特許文献1参照)。一般的に、溶接トーチの先端から突き出す方向への手動送りを正送やインチングといい、逆の引っ込める方向への手動送りを逆送やリトラクトという表現を用いることが多い。
【0003】
上記した正送や逆送の操作は、専用の操作キーを用いて行われる。すなわち、正送のための正送キー、および逆送のための逆送キーが個別に設けられており、どちらかのキーを押下することにより、正送または逆送が行われる。例えば、正送キーを押下している間、ワイヤ送給装置に指令信号が所定間隔で継続して出力されることにより、押下時間に応じた長さだけ、溶接ワイヤが正送される。溶接ワイヤの手動送りを行う場面としては、(1)最適な突き出し長に調整する場合や(2)新たな溶接ワイヤを補充する場合等である。上記(1)の場合は、溶接ワイヤを溶接トーチの先端(正確には溶接チップの先端)から、規定長さだけきっちり突き出るように調整を行う必要がある。このことから、送給速度は低い方が好ましく、いわゆる低速送給が行われる。より具体的には、低速送給モードを選択した状態で正送キーを押下すると、調整に適した、予め定めた低速度で溶接ワイヤが送給される。
【0004】
上記(2)の場合においては、溶接ワイヤが充填されたワイヤパックから溶接ワイヤを引き出して送給ケーブル内に通し、最終的に溶接トーチの先端まで通す作業が必要となる。この送給経路は非常に長いため、上述した低速送給では溶接トーチの先端に溶接ワイヤを導くまでに時間を要してしまう。そこで、溶接ワイヤの高速送給を可能にしている。より具体的には、高速送給モードを選んだ状態で正送キーを押下すると、上記低速度の10倍程度の速度で溶接ワイヤが送給されるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、新たな溶接ワイヤを補充する場合は、送給経路の入口から出口までの範囲に溶接ワイヤを通す作業となる。一般的に、送給経路の入口付近においては、溶接ワイヤが挫屈しないように低速送給モードで正送キーを押下することにより低速送給を行い、経路の途中では高速送給モードに切り替えて高速送給を行い、最終的に出口付近では、再度、低速送給モードに切り替える。このように、送給速度を変更するためには、低速送給モードと高速送給モードを送給中に切り替える操作が必要となり、操作が煩雑であるという課題を有している。また、従来の送給速度は調整に適した任意の速度を予め定めておくことができるものの、低速値か高速値かの切り替えしかできないため、送給環境(ケーブル長、ロボットの姿勢等)に適した送給速度を柔軟に設定することができないという課題をも有している。
【0007】
そこで、本発明は、溶接ワイヤの送給速度を簡単な操作で変更することができるアーク溶接装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、
ジョグダイヤルと、このジョグダイヤルの回転量および回転方向を検出する回転検出手段と、前記ジョグダイヤルを、溶接トーチから溶接ワイヤを送給するための送給操作手段として設定する割付手段とを有する操作部と、
前記溶接ワイヤを送給する送給機構部と、
前記送給機構部へ送給制御信号を出力する送給制御手段を有する制御部と、を含むアーク溶接装置であって、
前記ジョグダイヤルが前記送給操作手段として設定されている間は、前記操作部は、前記回転検出手段が検出した回転量および回転方向を前記制御部へ通知し、
前記送給制御手段は、前記制御部から通知された前記回転量に基づいて前記溶接ワイヤの送給速度を算出するとともに前記回転方向に基づいて送給方向を算出して前記送給制御信号を生成し、該送給制御信号を前記送給機構部へ出力することを特徴とするアーク溶接装置である。
【0009】
請求項2の発明は、前記送給制御手段は、前記溶接ワイヤの送給が行われていない状態で前記回転量および回転方向が通知されたときは、予め定めた初期送給速度で且つ通知された回転方向と対応する方向へ前記溶接ワイヤの送給を開始し、前記溶接ワイヤの送給中に前記通知された回転方向と同一方向へ前記ジョグダイヤルが回転されたことが通知されたときは、予め定めた速度変化値に前記回転量を乗じて現在の送給速度に加算する一方、前記溶接ワイヤの送給中に前記通知された回転方向とは逆方向へ前記ジョグダイヤルが回転されたことが前記制御部から通知されたときは、前記速度変化値に前記回転量を乗じて現在の送給速度から減算する送給制御信号を生成して前記送給機構部へ出力することを特徴とする請求項1記載のアーク溶接装置である。
【0010】
請求項3の発明は、前記ジョグダイヤルが前記送給操作手段として機能することを許可する送給イネーブルスイッチを備え、前記送給イネーブルスイッチがオンの場合にのみ前記ジョグダイヤルを前記送給操作手段として機能させることを特徴とする請求項1または請求項2記載のアーク溶接装置である。
【0011】
請求項4の発明は、前記溶接ワイヤの送給中に前記送給イネーブルスイッチがオフにされた場合は、前記溶接ワイヤの送給を停止することを特徴とする請求項3記載のアーク溶接装置である。
【0012】
請求項5の発明は、前記溶接ワイヤの送給負荷を検出する送給負荷検出手段をさらに備え、この送給負荷検知手段が所定値以上の送給負荷を検出した場合は、前記溶接ワイヤの送給を停止することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のアーク溶接装置である。
【0013】
請求項6の発明は、前記操作部は前記溶接トーチが搭載されたマニピュレータを操作するためのティーチペンダントであり、前記制御部は前記マニピュレータを駆動制御するためのロボットコントローラであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のアーク溶接装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ジョグダイヤルの回転操作によって溶接ワイヤの手動送りの際の送給速度を簡単に切り替えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態1]
発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明に係るアーク溶接装置をアーク溶接ロボット101に具体化したときのシステム構成図である。同図に示すように、アーク溶接ロボット101は、溶接ワイヤ1を送給する送給機構部としてのワイヤ送給モータWMを備えたロボットR、操作部としてのティーチペンダントTP、ロボットRを動作制御する制御部としてのロボットコントローラRC、および溶接電源WPから構成されている。ティーチペンダントTPには、ジョグダイヤル13と、このジョグダイヤル13の回転方向および回転量を検出する検出手段としてのロータリエンコーダ(図示せず)が設けられている。ジョグダイヤル13の取付位置は、作業者が操作しやすい位置であればどこでも良いが、本実施形態では、
図2に示すように、ティーチペンダントTPの右手把持部41および左手把持部42をそれぞれ両手で把持したときに、右手の親指によって操作可能な範囲であって、且つ、ジョグダイヤル13の回転中心軸がティーチペンダントTPの側面に垂直に交差するように取り付けている。
【0018】
図1に戻り、ロボットコントローラRCは、ティーチペンダントTPからの操作信号Tdに基づいて、ロボットRに配置された複数軸のサーボモータを動作制御するための動作制御信号Mcを出力したり、溶接電源WPに溶接指令信号Ws(溶接開始信号、ガス出力信号、送給制御信号、溶接電圧設定信号等)を出力する。溶接電源WPは、上記した各種信号を入力として、溶接電圧Vwおよび溶接電流Iwを供給したり、図示しないガスボンベに備えられた電磁弁を制御してシールドガスを出力したり、送給制御信号Fcを出力してワイヤ送給モータWMを回転駆動したりする。ロボットRは、ワイヤ送給モータWM、溶接トーチ4等を載置し、溶接トーチ4の先端位置を操作信号Tdに応じて移動させる。溶接ワイヤ1は、ワイヤ送給モータWMによって溶接トーチ4内を通って送給されて、作業対象物であるワーク2との間でアーク3が発生して溶接が行われる。
【0019】
図3は、本発明に係るアーク溶接ロボット101のブロック図である。ティーチペンダントTPには、キーボード11、ジョグダイヤル13、このジョグダイヤル13の回転方向と回転量を検出するロータリエンコーダ14、操作メニューやガイドメッセージ等が表示される液晶ディスプレイ18、およびロボットコントローラRCと通信を行うための通信インターフェース部12が設けられている。また、ティーチペンダントTPは、CPU15、ROM16およびRAM17を備えている。CPU15は、中央演算処理装置である。ROM16には、CPU15に読み込まれて実行される各種制御プログラム(入力監視部16aおよび表示制御部16b)やその制御定数が格納されている。RAM17は、CPU15のワーキングエリアとして用いられ、計算途中のデータが一時的に格納される。なお、上述した各部はバス19を介して接続されている。
【0020】
CPU15に読み込まれて実行される入力監視部16aは、キーボード11およびジョグダイヤル13からの入力を監視し、この監視結果に基づいて各種の操作信号およびロータリエンコーダ14が検出した検出信号を通信インターフェース部12を介してロボットコントローラRCに通知する。表示制御部16bは、操作メニューやガイドメッセージ等を液晶ディスプレイ18に出力する。
【0021】
ここで、ジョグダイヤル13およびロータリエンコーダ14について説明する。ジョグダイヤル13には、回転の単位であって、所定の回転角度毎に設けられた目盛(ノッチ)が設けられている。ロータリエンコーダ14は、ジョグダイヤル13が回転されると、回転方向と回転量を検出し、ジョグダイヤル13がどの方向に何目盛分操作されたかを示す信号をロボットコントローラRCに送信する。
【0022】
ジョグダイヤル13は、通常は、液晶ディスプレイ18に表示された操作メニューや設定パラメータ等の各項目間をポインタが移動するためのセレクタとして使用されるものであるが、一時的に溶接ワイヤ1の手動送り(正送/逆送)を行うための操作手段として割り当てることが可能になっている。すなわち、後述する設定操作によってジョグダイヤル13が溶接ワイヤ1の手動送りのための操作手段として設定され、実際にジョグダイヤル13が回転操作されると、ロータリエンコーダ14の検出信号が入力監視部16aによってロボットコントローラRCに出力される。そして、この結果、ワイヤ送給モータWMが正転または逆転して溶接ワイヤ1が正送または逆送されることになる(詳細は後述する)。
【0023】
ロボットコントローラRCは、ワーク2に対してアーク溶接を自動で行うようにロボットRを制御するものである。ロボットコントローラRCは、制御手段としてのCPU21、ROM22、RAM23、記憶手段としてのハードディスク25、駆動指令部15および通信インターフェース部24の各部を備えている。上記ROM22には、ロボットRの制御を実行するための各種制御プログラム(解釈実行部22a、機能割付部22b、溶接指令生成部22c、データ設定部22d)とその制御定数が格納されている。各種制御プログラムの詳細については、後述する。RAM23は、CPU21のワーキングエリアとして用いられ、計算途中のデータが一時的に格納される。溶接インターフェース部26は、溶接電源WPを介してワイヤ送給モータWMに溶接ワイヤ1の送給制御信号Fcを出力する。駆動指令部15は、ティーチペンダントTPからの操作信号Tdに基づいて、ロボットRに配置された複数軸のサーボモータを動作制御するための動作制御信号Mcを出力する。なお、上述した各部はバス29を介して接続されている。
【0024】
ハードディスク25には、ロボットRの作業が教示されたデータや各種制御変数等に加えて、機能割付テーブル、初期送給速度値および速度変化値が格納される。機能割付テーブルとは、ジョグダイヤル13の機能が割り付けられているデータのことである。なお、本実施形態では記憶手段としてハードディスクにて構成しているが、ハードディスクに限定するものではなく、メモリカード等の他の記憶装置を採用してもよい。初期送給速度値および速度変化値については、後述する。
【0025】
以下、CPU21に読み込まれて実行される解釈実行部22a、機能割付部22b、および溶接指令生成部22cの構成について説明する。
【0026】
解釈実行部22aは、ティーチペンダントTPから入力されるロータリエンコーダ14の検出信号と上述した機能割付テーブルの設定内容とに基づいて、溶接ワイヤ1の正送または逆送の処理を必要とするか否かを判断する。そして処理を必要とする場合は、上記検出信号に基づいてジョグダイヤル13の回転方向および回転量を解釈し、解釈結果を溶接指令生成部22cに通知すると共に送給制御信号Fcの生成を依頼する。
【0027】
機能割付部22bは、ジョグダイヤル13に与える機能を機能割付テーブルに設定する。本実施例では、ジョグダイヤル13が溶接ワイヤ1の手動送り手段として設定されるものとする。
【0028】
溶接指令生成部22cは、溶接ワイヤ1の送給が行われていない状態でジョグダイヤル13の回転量および回転方向が通知されたときは、予め定めた初期送給速度で、且つ、通知された回転方向と対応する方向へ溶接ワイヤ1の送給を開始する。すでに溶接ワイヤ1の送給中であれば、それまでに通知されていた回転方向と同一方向へジョグダイヤル13が回転されたことが通知されたときに、予め定めた速度変化値にジョグダイヤル13の回転量を乗じて現在の送給速度に加算する加速送給制御を行う。さらに、それまでに通知されていた回転方向とは逆方向へジョグダイヤル13が回転されたことが通知されたときは、上記速度変化値にジョグダイヤル13の回転量を乗じて現在の送給速度から減算する減速送給制御を行う。これらの制御により生成される送給制御信号Fcは、適宜、溶接インターフェース部26を介して溶接電源WPに出力され、最終的にワイヤ送給モータWMへと出力される。
【0029】
以下、本実施形態の作用について説明する。
【0030】
(1.ジョグダイヤル13への機能割付)
作業者がジョグダイヤル13の機能割付メニューを呼び出すと、機能割付部22bは
図4に示すような画面をティーチペンダントTPの液晶ディスプレイ18に出力表示する。同図に示す画面では、ジョグダイヤル13に与える機能として、「メニューの選択」「速度の変更」「溶接ワイヤの正送/逆送」「ロボットのジョグ送り」等が選択項目として表示されている様子を示している。作業者は、「溶接ワイヤの正送/逆送」を選択し、エンターキー11aを押下する。この操作により、ジョグダイヤル13が「溶接ワイヤの正送/逆送」を行う送給操作手段に変更される(機能割付テーブルに設定される)。ただし、送給イネーブルスイッチ11bがオンの場合にのみ、ジョグダイヤル13が送給操作手段として機能するようにインターロックが取られている。すなわち、作業者は、送給イネーブルスイッチ11bを押下した状態でないと、ジョグダイヤル13による溶接ワイヤ1の送給操作ができないようになっている。
【0031】
(2.操作結果の通知)
上記機能割付がなされ、且つ、上記送給イネーブルスイッチ11bがオンの状態でジョグダイヤル13が回転操作されると、ティーチペンダントTPの入力監視部16aは、ロータリエンコーダ14の検出信号(ジョグダイヤル13の回転方向および回転量)をロボットコントローラRCに出力する。この検出信号は解釈実行部22aに通知される。
【0032】
(3.操作結果の解釈)
解釈実行部22aは、上記検出信号と機能割付テーブルの設定内容とに基づいて、溶接ワイヤ1の正送または逆送の処理を必要とするか否かを判断する。ジョグダイヤル13は、溶接ワイヤ1の手動送り手段として機能しているので、ジョグダイヤル13の操作結果に基づく溶接ワイヤ1の手動送りが必要と判断し、回転方向および回転量の情報を溶接指令生成部22へ通知する。
【0033】
(4.送給方向の決定および送給量の算出)
溶接指令生成部22cでは、回転方向に基づく送給方向および回転量に基づく送給速度を算出し、これらを送給制御信号Fcとして出力する。
【0034】
まず、通知された回転方向に基づき溶接ワイヤ1の送給方向を決定する。初期設定では、ジョグダイヤル13がティーチペンダントTPの底面側(
図2の+方向側)へ回転された場合は、溶接ワイヤ1を溶接トーチ4の先端から突き出す(正送する)方向を送給方向とする。逆に、ジョグダイヤル13がティーチペンダントTPの頂面側(
図2の−方向側)へ回転された場合は、溶接ワイヤ1を引っ込める(逆送する)方向を送給方向とする。溶接ワイヤ1の送給速度については、以下のように算出する。
【0035】
(4.1 初期送給速度)
溶接ワイヤ1の送給が行われていない状態で回転量が通知されたときは、回転量に基づいた送給速度の算出は行わずに、予め定められた初期送給速度をハードディスク25から読み出すようにする。この理由は、ジョグダイヤル13が一気に大きく回転されると、送給速度が0の状態から急激に大きくなるため、溶接ワイヤ1が送給経路内で挫屈する恐れがあるからである。上記初期送給速度を用いずに回転量に応じた送給速度を算出する場合は、後述する方法で算出する。
【0036】
(4.2 同一方向へ回転をさらに検出したとき)
溶接ワイヤ1の送給中に、それまでに通知されていた回転方向と同一方向へジョグダイヤル13が回転されたことが通知されたときは、予め定めた速度変化値に通知された回転量を乗じて現在の送給速度に加算する。すなわち、送給速度現在値をFnとし、速度変化値をFdとし、回転量をJcとし、これらに基づいて算出される送給速度目標値をFtすると、
送給速度目標値Ft=送給速度現在値Fn+速度変化値Fd×回転量Jc
により算出する。具体的には、送給速度現在値Fnが100cm/分、速度変化値Vdが50cm/分の場合に、ジョグダイヤル13がそれまでに通知されていた回転方向と同一方向へ1目盛回転されると、送給速度目標値Ftは、100+50×1により150cm/分となる。さらに続けて同方向に1目盛回転されると、送給速度目標値Ftは、150+50×1により200cm/分となる。この算出例は、ジョグダイヤル13の回転量の通知を、1目盛回転する毎に行う場合を示している。回転量の通知を、所定の通知周期、あるいはジョグダイヤル13の停止が所定時間なされたことを検出したときに行う場合は、例えば3目盛回転されたときに3目盛分の回転量の通知が行われることもある。この場合は、送給速度目標値Ftは、100+50×3により250cm/分となる。
【0037】
(4.3 逆方向への回転を検出したとき)
それまでに通知されていた回転方向とは逆方向へジョグダイヤル13が回転されたことが通知されたときは、まず、送給方向をそれまでの回転方向とは逆にし、さらに、上述した速度変化値にジョグダイヤル13の回転量を乗じて現在の送給速度から減算する。すなわち、送給速度現在値をFnとし、速度変化値をFdとし、回転量をJcとし、これらに基づいて算出される送給速度目標値をFtすると、
送給速度目標値Ft=送給速度現在値Fn−速度変化値Fd×回転量Jc
により算出する。具体的には、送給速度現在値Fnが500cm/分、速度変化値Vdが50cm/分の場合に、ジョグダイヤル13がそれまでに通知されていた回転方向とは逆の方向へ1目盛回転されると、送給速度目標値Ftは、500−50×1により450cm/分となり、さらに続けて同方向に1目盛回転されると、送給速度目標値Ftは、450−50×1により400cm/分となる。なお、算出の結果、送給速度目標値Ftが0以下になった場合は、それ以上の減算は行わない(送給速度目標値Ftは0にする)。
【0038】
(5.ワイヤ送給)
溶接電源WPは、上記算出の結果、得られた送給制御信号Fcをワイヤ送給モータWMに出力する。以上により、ジョグダイヤル13の回転量に応じた送給速度で、且つ、回転方向に応じた送給方向へ、溶接ワイヤ1が送給される。
(6.ワイヤ送給の停止)
溶接ワイヤ1の送給中に前記送給イネーブルスイッチ11bがオフにされた場合は、ティーチペンダントTPの入力監視部16aは、送給イネーブルスイッチ11bの状態信号(オフ)をロボットコントローラRCに出力する。この信号は解釈実行部22aに通知される。次いで、解釈実行部22aは、送給を停止するための指令を溶接指令生成部22へ通知する。そして、溶接指令生成部22は、送給を停止させる送給制御信号Fcを生成して溶接電源WPに出力する。この結果、溶接ワイヤ1の送給が停止する。
【0039】
図5は、ジョグダイヤル13によって溶接ワイヤ1の送給速度を変更する一例を示すタイミングチャートである。同図(a)は送給イネーブルスイッチ11bのオンオフタイミングを示し、同図(b)はジョグダイヤル13の回転量を示し、同図(c)は溶接ワイヤ1の送給速度を示している。以下、同図のt1〜t5の各時刻および期間において、送給速度がどのように変化するかを説明する。なお、同図(b)で示したジョグダイヤル13の回転量は、現在の回転位置から相対的に回転させた目盛数で表しており、+方向へ1目盛回転されたことを「+1」で、−方向へ1目盛回転されたことを「−1」で表記している。
【0040】
(時刻t1)
時刻t1において、同図(a)に示すように送給イネーブルスイッチ11bがオンされる。この状態では、ジョグダイヤル13は回転されていないので、溶接ワイヤ1は送給されない。
【0041】
(時刻t2)
時刻t2において、送給イネーブルスイッチ11bがオンされたまま、同図(b)に示すようにジョグダイヤル13が+方向へ1目盛回転される。このとき、送給速度は、同図(c)に示すように初期送給速度Fiとなる。
【0042】
(時刻t2〜t3)
時刻t3までの期間において、送給イネーブルスイッチ11bがオンされたまま、ジョグダイヤル13が同方向へ2目盛回転される。この結果、初期送給速度Fiに速度変化値Fdが2回加算され、時刻t3のタイミングにおける送給速度はFv1となる。
【0043】
(時刻t3〜t4)
送給速度がFv1のまま、溶接ワイヤ1が送給される。そして、時刻t4において、送給イネーブルスイッチ11bがオンされたまま、ジョグダイヤル13がそれまでとは逆の方向へ1目盛回転される。この結果、現在の送給速度Fv1から速度変化値Fdが減算され、時刻t4における送給速度はFv2となる。
【0044】
(時刻t4〜t5)
送給速度がFv2のまま、溶接ワイヤ1が送給される。そして、時刻t5において、同図(a)に示すように、送給イネーブルスイッチ11bがオフされる。この結果、送給速度は、0になる(溶接ワイヤ1の送給が停止される)。
【0045】
以上説明したように、本発明によれば、ジョグダイヤル13の回転操作によって溶接ワイヤ1の手動送りの際の送給速度を簡単に切り替えることができる。
【0046】
また、ジョグダイヤル13は、作業者が無意識のうちに触ってしまったり、周囲にぶつけたりすることで回転してしまうことが想定される。このようなことが起きると、意図しない状態で溶接ワイヤ1が送給されてしまうことになる。そこで、送給イネーブルスイッチ11bがオン状態でジョグダイヤル13が回転された場合に送給操作手段として機能させるようにしている。こうすることによって、上述した効果に加えて、安全性を高めることができる。
【0047】
また、溶接ワイヤ1の送給中に上記送給イネーブルスイッチ11bがオフになった場合は、溶接ワイヤ1の送給を停止するようにしている。こうすることによって、上述した効果に加えて、より安全性を高めることができる。
【0048】
なお、上記した実施形態において、安全面への配慮から、溶接ワイヤ1の送給負荷を検出する送給負荷検出手段(図示せず)をさらに備え、この送給負荷検知手段が所定値以上の送給負荷を検出した場合は、溶接ワイヤ1の送給を停止するように構成すると、安全面への配慮から、より好ましい実施形態となる。