特許第5871380号(P5871380)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871380
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/54 20060101AFI20160216BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20160216BHJP
   B60G 15/06 20060101ALI20160216BHJP
   B60G 11/16 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   F16F9/54
   F16F9/32 B
   F16F9/32 J
   B60G15/06
   B60G11/16
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-44684(P2012-44684)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-181581(P2013-181581A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】群馬 英人
(72)【発明者】
【氏名】石橋 朱実
(72)【発明者】
【氏名】近松 聡
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−206975(JP,A)
【文献】 特開2007−263324(JP,A)
【文献】 特開平02−142939(JP,A)
【文献】 特表2002−540352(JP,A)
【文献】 特開平10−281207(JP,A)
【文献】 特開2001−130233(JP,A)
【文献】 特開2001−001729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/54
B60G 11/16
B60G 15/06
F16F 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪側に連結されるアウターシェルと、車体側に連結されるピストンロッドとを備え、
上記アウターシェルは、上記ピストンロッドが出没可能に挿入される筒状本体と、この筒状本体の外周に取り付けられるばね受けとを備え、このばね受けで懸架ばねを担持する緩衝器において、
上記ばね受けは、上記筒状本体と合成樹脂で一体形成されるとともに、上記筒状本体の周方向に沿って起立するリブからなるシート部と、このシート部の車体側のシート面に連設されるとともに上記筒状本体の軸方向に沿って起立し上記筒状本体から放射状に延びる複数のリブからなるガイド部とを備え、このガイド部の外周に上記懸架ばねが嵌合されることを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
上記シート面の外周縁に沿って円弧状の溝が形成されるとともに、この溝は、上記ガイド部に連なる内周端から外周端にかけて徐々に深くなるよう湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
上記溝は、始端から終端にかけて徐々に浅くなるよう形成されていることを特徴とする請求項2に記載の緩衝器。
【請求項4】
上記ガイド部を構成する上記各リブの反筒状本体側端部が上記懸架ばねの内周面に沿って湾曲することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器の改良に関し、特に、筒状本体とばね受けが合成樹脂で一体形成されてなるアウターシェルの強度を確保するとともに軽量化を図る構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、緩衝器は、自動車や自動二輪車等の輸送機器や、建築物等において振動を抑制するために使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1の緩衝器は、自動車の車体と車輪との間に介装されており、車体を弾性支持する懸架ばねとユニット化されてストラット式サスペンションを構成し、懸架ばねとともに路面凹凸による衝撃が車体に伝達されることを抑制している。
【0004】
そして、図6に示すように、上記緩衝器おいて、車輪側に連結されるアウターシェル8は、図中二点鎖線で示す筒状本体80と、この筒状本体80外周に取り付けられるばね受け9(特許文献1のスプリングシート30,30a)とを備えている。
【0005】
また、このばね受け9は、筒状本体80の外周側に張り出して懸架ばねの車輪側端部が当接するシート部90と、このシート部の外側端部に連設されるガイド部91(同つば部19〜22,19a〜22a)とを備えており、このガイド部91でシート部91上に懸架ばねを保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−001729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上記従来の緩衝器においては、筒状本体80及びばね受け9を鉄等の金属でそれぞれ形成し、強度を確保することが一般的であるが、サスペンションの重量が重くなる。このため、筒状本体80とばね受け9を合成樹脂で一体形成して軽量化することが好ましい。しかしながら、この場合、以下の不具合を指摘される虞がある。
【0008】
すなわち、従来の緩衝器の筒状本体80及びばね受け9の形状をそのまま合成樹脂で再現した場合には、強度不足となる虞がある。また、強度を確保するため、筒状本体80やばね受け9の肉厚を全て厚くした場合には、重量が増し、材料を合成樹脂に変更したことによる軽量化の効果を充分に得られない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、筒状本体とばね受けを合成樹脂で一体形成したとしても、アウターシェルの強度を確保するとともに、軽量化することが可能な緩衝器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段は、車輪側に連結されるアウターシェルと、車体側に連結されるピストンロッドとを備え、上記アウターシェルは、上記ピストンロッドが出没可能に挿入される筒状本体と、この筒状本体の外周に取り付けられるばね受けとを備え、このばね受けで懸架ばねを担持する緩衝器において、上記ばね受けは、上記筒状本体と合成樹脂で一体形成されるとともに、上記筒状本体の周方向に沿って起立するリブからなるシート部と、このシート部の車体側のシート面に連設されるとともに上記筒状本体の軸方向に沿って起立し上記筒状本体から放射状に延びる複数のリブからなるガイド部とを備え、このガイド部の外周に上記懸架ばねが嵌合されることである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、筒状本体とばね受けを合成樹脂で一体形成したとしても、アウターシェルの強度を確保するとともに、軽量化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態に係る緩衝器の取り付け状態を示す分解斜視図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る緩衝器のアウターシェルを示す斜視図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る緩衝器のアウターシェルを示す右側面図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る緩衝器のアウターシェルを示す正面図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る緩衝器のアウターシェルを示す平面図である。
図6】従来の緩衝器のアウターシェルを部分的に示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の一実施の形態を示す緩衝器について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品か対応する部品を示す。
【0014】
図1,2に示すように、本実施の形態に係る緩衝器Dは、車輪側に連結されるアウターシェル1と、車体側に連結されるピストンロッド2とを備えている。
【0015】
そして、上記アウターシェル1は、上記ピストンロッド2が出没可能に挿入される筒状本体3と、この筒状本体3の外周に取り付けられるばね受け4とを備え、このばね受け4で懸架ばねを担持している。
【0016】
また、上記ばね受け4は、上記筒状本体3と合成樹脂で一体形成されるとともに、上記筒状本体3の周方向に沿って起立するリブ4aからなるシート部40と、このシート部40の車体側のシート面40aに連設されるとともに上記筒状本体3の軸方向に沿って起立し上記筒状本体3から放射状に延びる複数のリブ4b〜4eからなるガイド部41とを備え、このガイド部41の外周に上記懸架ばねSが嵌合される。
【0017】
以下、詳細に説明すると、本実施の形態に係る緩衝器Dは、図1に示すように、ストラット式サスペンション用の緩衝器であり、懸架ばねSとユニット化されている。そして、緩衝器Dのピストンロッド2がアッパーマウント20を介して車体に連結されるとともに、緩衝器Dのアウターシェル1が挟持片6L,6Rを介して車輪を支持するナックル10に締結用のボルトB,Bで連結されている。
【0018】
他方、上記懸架ばねSは、上記ピストンロッド2の車体側端部に取り付けられる図示しないばね受けと、上記アウターシェル1の外周に形成されるばね受け4との間に介装されている。
【0019】
また、図示しないが、上記アッパーマウント20には、上記ピストンロッド2を操舵方向に回転可能に軸支するボールベアリングが取り付けられている。このため、ナックル10に連結されるタイロッドで車輪の向きを変更するとき、この回転方向に従って緩衝器Dを回転することができる。
【0020】
さらに、緩衝器Dのアウターシェル1には、スタビライザリンク11を介して車体のロールを抑制するスタビライザ12が取り付けられている。
【0021】
つづいて、上記緩衝器Dの構成は、周知であるため詳細に図示しないが、緩衝器Dは、その外殻をなすアウターシェル1と、このアウターシェル1内に出没可能に挿入されるピストンロッド2と、このピストンロッド2に保持されてアウターシェル1内を軸方向に移動可能なピストン(図示せず)と、このピストンで区画されて作動流体で満たされる二つの部屋(図示せず)とを備えている。
【0022】
そして、上記アウターシェル1内に形成される上記二つの部屋の作動流体は、液体または気体からなり、図示しない流路を介して二つの部屋の間を移動することができる。また、同じく図示しないが、上記流路には、この流路を通過する作動流体に抵抗を与えるリーフバルブやオリフィス等の減衰力発生手段が設けられている。
【0023】
このため、ピストンロッド2がアウターシェル1内に出没する緩衝器Dの伸縮時には、ピストンで加圧された一方の部屋の作動流体が上記流路を介して他方の部屋に移動するため、緩衝器Dは上記減衰力発生手段の抵抗に起因する減衰力を発生することができる。
【0024】
尚、緩衝器Dにおいて、上記作動流体が水や油等の液体からなる場合には、ピストンロッド2出没分のアウターシェル1内容積変化を補償するため、緩衝器Dは周知のリザーバまたは気室を備えている。
【0025】
つづいて、本実施の形態に係るアウターシェル1は、図2〜5に示すように、ピストンロッド2が出没可能に挿入される筒状本体3と、筒状本体3の外周に軸方向や周方向に沿って起立する複数のリブ(6a〜6s,5a,5b,4a〜4e)とを備えており、筒状本体3と上記各リブは、合成樹脂で一体形成されている。
【0026】
尚、本実施の形態において、筒状本体3と各リブ(6a〜6s,5a,5b,4a〜4e)は、射出成型により同一の合成樹脂で同時且つ一体的に形成されているが、筒状本体3と各リブを一体形成するための方法はこの限りではなく、筒状本体3と各リブが溶接や接着、インサート成型等により一体形成されていても良い。
【0027】
また、筒状本体3及び各リブ(6a〜6s,5a,5b,4a〜4e)を形成する合成樹脂の種類も適宜選択することが可能であり、緩衝器Dに入力される曲げ荷重に耐えられる強度と、緩衝器Dの作動(伸縮)に伴う発熱に耐えられる耐熱性とを備えていることが求められ、例えば、ポリアミドに補強材としてカーボン繊維を組み合わせたものが使用される。
【0028】
さらに、上記アウターシェル1においては、車輪側を支持するナックル10の取り付け部(ナックルアーム)10aを挟持する一対の挟持片6L,6Rと、スタビライザリンク11が取り付けられるスタビライザ連結部5と、懸架ばねSを担持するばね受け4が上記リブ(6a〜6s,5a,5b,4a〜4e)で形成されている。つまり、本実施の形態において、挟持片6L,6R、スタビライザ連結部5及びばね受け4が上記筒状本体3に一体形成されている。
【0029】
上記各挟持片6L,6Rは、共通の構成を備えるとともに、上記筒状本体3の外周から軸方向に沿って起立し相対向しており、各挟持片6L,6Rの対向面に配置されるメインのリブ6a,6aと、このメインのリブ6a,6aの間に架設される補強用の架橋リブ6b,6cと、このメインのリブ6aの背面に起立する補強用の背面リブ(6d〜6s)とをそれぞれ備えている。
【0030】
また、上記背面リブ(6d〜6s)は、図3に示すように、筒状本体の軸心線Xに垂直に交わる水平線Yに対して平行に配置される複数の背面横リブ6d〜6gと、この背面横リブから車体側若しくは車輪側に延びる複数の背面縦リブ6h〜6sとからなる。
【0031】
そして、メインのリブ6aの背面には、車体側端部から車輪側端部にかけて、第一〜第四の背面横リブ6d〜6gが所定の間隔を持って起立しており、本実施の形態の各挟持片6L,6Rにおいて、第一の背面横リブ6dから第二の背面横リブ6eまでが補強部60、第二の背面横リブ6eから第三の背面横リブ6fまでが車体側ボルト保持部61、第三の補強横リブ6fよりも車輪側が車輪側ボルト保持部62である。また、上記第一〜第四の背面横リブ6d〜6gは、上記メインのリブ6aの筒状本体側端部から反筒状本体側端部にかけて延びている。
【0032】
つづいて、上記補強部60には、第一、第二の背面横リブ6d,6eの間に架設される第一〜第四の背面縦リブ6h〜6kが筒状本体側から順に設けられている。
【0033】
そして、第一の背面縦リブ6hは、上記メインのリブ6aの筒状本体側端部に沿って配置され、筒状本体3の軸心線Xと平行に配置されているが、第二、第三、第四の背面縦リブ6i,6j,6kは、筒状本体3の軸心線Xに対して図中左右方向に傾斜しており、第二〜第四の背面縦リブ6i〜6kにおける車体側端部が車輪側端部よりも筒状本体側に位置する。
【0034】
また、傾斜する第二〜第四の背面縦リブ6i〜6kのうち、最も筒状本体側に配置される第二の背面縦リブ6iの車体側端部は、第一の背面横リブ6dと第一の背面縦リブ6hとの交点にかけて延びている。
【0035】
つづいて、上記車体側ボルト保持部61には、第二、第三の背面横リブ6e,6fの間に配置されてメインのリブ6aの肉厚を貫通する孔(符示せず)の縁に沿って起立するとともに内側に車体側のボルト挿通孔61aが形成される筒状の第一ホルダ61bと、第二、第三の背面横リブ6e,6fの間に架設される第五〜第七の背面縦リブ6l〜6nと、上記第一ホルダ61bの車体側端から第二の背面横リブ6eにかけて延びる第八の背面縦リブ6oと、上記第一ホルダ61bの車輪側端から第三の背面横リブ6fにかけて延びる第九の背面縦リブ6pとが設けられている。
【0036】
そして、上記第五、第六の背面縦リブ6l,6mは、上記第一ホルダ61bよりも筒状本体側に配置されるが、上記第七の背面縦リブ6nは、上記第一ホルダ61bの反筒状本体側に連なって配置されている。
【0037】
また、上記車輪側ボルト保持部62には、上記第三、第四の背面横リブ6f,6gの間に配置されてメインのリブ6aの肉厚を貫通する孔(符示せず)の縁に沿って起立するとともに内側に車輪側のボルト挿通孔62aが形成される筒状の第二ホルダ62bと、この第二ホルダ62bの反筒状本体側に連なって配置されて第三、第四の背面横リブ6f,6gに架設される第十の背面縦リブ6qと、上記第二ホルダ62bの車体側端から第三の背面横リブ6fにかけて延びる第十一の背面縦リブ6rと、上記第二ホルダ62bの車輪側端から第四の背面横リブ6gにかけて延びる第十二の背面縦リブ6sとが設けられている。
【0038】
そして、上記各挟持片6L,6Rにおいて、補強部60及び車体側ボルト保持部61に設けられる第一〜第三の背面横リブ6d〜6f、第一〜第九の背面縦リブ6h〜6p及び第一ホルダ61bがメインのリブ6aから起立する高さが均一であるとともに、車輪側ボルト保持部62に設けられる第四の背面横リブ6g、第十〜第十二の背面縦リブ6q〜6s及び第二ホルダ62bがメインのリブ6aから起立する高さよりも高くなるよう設定されている。つまり、各挟持片6L,6Rにおける補強部60と車体側ボルト保持部61の肉厚は、車輪側ボルト保持部62の肉厚よりも厚くなるように設定されている。
【0039】
また、上記第一ホルダ61b及び第二ホルダ62bの内周には、金属製の筒61c,62cが保持されており、第一ホルダ61b及び第二ホルダ62bを補強している。尚、これら筒61c,62cの取り付け方法は、適宜選択することが可能であるが、加工工数を減らすためインサート成形によりアウターシェル1に取り付けることが好ましい。
【0040】
もどって、筒状本体3に一体形成されてスタビライザリンク11が取り付けられるスタビライザ連結部5は、上記一方の挟持片6Rにおける第一の背面縦リブ6hの車体側に連設されるとともに筒状本体3の軸方向に沿って起立するメインのリブ5aと、このメインのリブ5aから起立する補強用のリブ5bとを備えている。
【0041】
そして、上記メインのリブ5aには、このメインのリブ5aの肉厚を貫通する孔(符示せず)の縁に沿って起立するとともに内側にスタビライザ取り付け孔50aが形成される第三ホルダ50bが設けられており、上記スタビライザ取り付け孔50aを介してスタビライザリンク11が取り付けられている。
【0042】
また、上記第三ホルダ50bには、上記第一ホルダ61b及び第二ホルダ62bと同様に金属製の筒50cが保持されており、第三ホルダ50bを補強している。また、上記補強用のリブ5bは、上記第三ホルダ50bから放射状に延びており、第三ホルダ50cを支えている。
【0043】
さらに、筒状本体3に一体形成されて懸架ばねSを担持するばね受け4は、上記スタビライザ連結部5のメインのリブ5aの車体側に連設されており、筒状本体3の周方向に沿って起立するリブ4aからなるシート部40と、このシート部40の車体側のシート面40aに連設されるとともに筒状本体3の軸方向に沿って起立し筒状本体3から放射状に延びる複数のリブ4b〜4eからなるガイド部41とを備えている。
【0044】
そして、図5に示すように、上記シート面40aには外周縁に沿って円弧状に形成される溝42が形成されており、この溝42は、上記ガイド部41に連なる内周端42aから外周端42bにかけて徐々に低くなるよう湾曲し(図3,4)、この溝42上に懸架ばねSの車輪側端部が当接している。さらに、この溝42の始端42cは、最も深く形成されるとともに、終端42dにかけて徐々に浅くなっており、上記溝42の始端42cに懸架ばねSの端部が当接する。
【0045】
また、上記シート面42は、車輪との連結側(挟持片側)が車体側に接近するように傾斜しており、懸架ばねSを傾斜した状態に支えている。このため、路面凹凸より緩衝器Dに作用する曲げ荷重を懸架ばねSで軽減することができる。
【0046】
つづいて、上記ばね受け4のガイド部41は、そのシート部側(車輪側)の端部に懸架ばねSの車輪側端部が嵌合しており、懸架ばねSの抜け止めをしている。また、このガイド部41を構成する各リブ4b,4c,4d,4eにおいて、懸架ばねSの内周が当接する反筒状本体側端部43は、上記懸架ばねSの内周面に沿って湾曲している。
【0047】
次に、本実施の形態に係る緩衝器Dの作用効果について説明する。本実施の形態において、懸架ばねSを担持するばね受け4は、筒状本体3と合成樹脂で一体形成されるとともに、筒状本体3の周方向に沿って起立するリブ4aからなるシート部40と、このシート部40の車体側のシート面40aに連設されるとともに筒状本体3から放射状に延びる複数のリブ3b〜4eからなるガイド部41とを備え、このガイド部41の外周に懸架ばねSが嵌合される。
【0048】
したがって、上記ガイド部41で筒状本体3を補強してアウターシェル1の強度を確保することが可能となる。また、上記ガイド部41がリブ4b〜4eからなることから、サスペンションを軽量化することが可能となる。特に、車輪側から入力される力により、アウターシェル1が曲げ変形することに対して、上記リブ4d〜4eはその抑制に効果的である。
【0049】
また、アウターシェル1を補強するためのガイド部41即ち、リブ4b〜4eが懸架ばねSをシート部40上に保持するため、従来のようにシート部90の外周にガイド部91を設ける必要がなく、アウターシェル1の形状を簡易にしてアウターシェル1を成形し易くすることが可能となる。つまり、上記リブ4d〜4eは、曲げ変形の抑制とスプリングガイドを兼ねる。
【0050】
また、本実施の形態においては、シート面40aの外周縁に沿って円弧状の溝42が形成されるとともに、この溝42は、上記ガイド部41に連なる内周端42aから外周端42bにかけて徐々に深くなるよう湾曲していることから、水捌けが良く、泥や雨水等がシート面40aに溜まることを抑制することができる。
【0051】
また、本実施の形態においては、上記溝42が始端42cから終端42dにかけて徐々に浅くなるよう形成されていることから、上記始端42aで懸架ばねSの端部を支えることが可能となる。
【0052】
また、本実施の形態において、上記ガイド部41を構成する各リブ4b〜4eの反筒状本体側端部が懸架ばねSの内周面に沿って湾曲するため、懸架ばねSをガイド部41に嵌合し易くすることが可能となる。
【0053】
また、本実施の形態において、各挟持片6L,6Rの車体側ボルト挿通孔61aが形成される車体側ボルト保持部の肉厚が、車輪側のボルト挿通孔62aが形成される車輪側ボルト保持部62の肉厚よりも厚く形成されている。
【0054】
このため、アウターシェル1に入力される曲げ荷重をより多く受ける車体側ボルト保持部61の肉厚を厚くしてアウターシェル1の強度を確保するとともに、上記荷重があまりかからない車輪側ボルト保持部62の肉厚を薄くして軽量化することができる。
【0055】
また、本実施の形態における各挟持片6L,6Rの補強部40には、メインのリブ6aの背面に起立する第一、第二の背面横リブ6d,6e(一対の背面横リブ)の間に傾斜しながら架設される第二〜第三の背面縦リブ6i〜6kを備えていることから、路面凹凸により車輪側から入力される曲げ荷重が上記背面縦リブ6i〜6kを介して車体側に伝達されるため、応力が集中し難い。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。
【0057】
例えば、上記実施の形態においては、筒状本体3、挟持片6L,6R、スタビライザ連結部5及びばね受け4が合成樹脂で一体形成されているが、本発明においては、少なくとも筒状本体3とばね受け4が合成樹脂で一体形成されていれば良い。
【0058】
また、上記実施の形態においては、筒状本体3の外周に起立する複数のリブ(6a〜6s,5a,5b,4a〜4e)で、挟持片6L,6R、スタビライザ連結部5及びばね受け4が形成されているが、リブ間の一部が埋まり、挟持片6L,6Rの一部や全てがブロック状に形成されていても良い。
【0059】
また、挟持片6L,6Rにおける補強用の架橋リブ(6b,6c)や背面リブ(6d〜6s)の形状や数は、上記の限りではなく、適宜変更することが可能である。
【0060】
また、上記実施の形態において、スタビライザ連結部5が一方の挟持片6Rとばね受け4との間に配置されているが、他の部分にスタビライザ連結部5が設けられるとしても良い。
【0061】
また、上記実施の形態のばね受け部4において、ガイド部41を構成するリブ4b〜4eの形状や数は、適宜変更することが可能であり、シート面40aに形成される溝42の位置や形状も適宜選択することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
D 緩衝器
S 懸架ばね
1 アウターシェル
2 ピストンロッド
3 筒状本体
4 ばね受け
5a,6a メインのリブ
4a〜4e リブ
5 スタビライザ連結部
6L,6R 挟持片
6b,6c 架橋リブ
6d〜6g 第一〜第三の背面横リブ
6h〜6s 第一〜第十二の背面縦リブ
10 ナックル
10a 取り付け部(ナックルアーム)
11 スタビライザリンク
12 スタビライザ
20 アッパーマウント
40 シート部
40a シート面
41 ガイド部
42 溝
50a スタビライザ取り付け孔
50b 第三ホルダ
50c,61c,62c 筒
60 補強部
61 車体側ボルト保持部
61a,62a ボルト挿通孔
61b 第一ホルダ
62 車輪側ボルト保持部
62b 第二ホルダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6