(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
移動可能な無線通信端末と、該無線通信端末と通信する基地局と、前記無線通信端末毎に基地局によって計測された無線品質値をログとして収集するログ蓄積装置とを有し、前記無線通信端末が所定の登録場所に位置する場合にのみ所定のサービスを提供するシステムであって、
前記ログ蓄積装置から受信したログを用いて、当該無線通信端末の移動を判定し、その判定結果を送信する位置移動判定装置と、
前記位置移動判定装置から前記判定結果を受信し、当該無線通信端末に対して前記サービスを提供するか否かを制御するサービス提供制御装置と
を更に有し、
前記位置移動判定装置は、
前記無線通信端末が前記登録場所に位置する際に、前記ログ蓄積装置から前記無線通信端末毎の履歴としての複数の無線品質値を取得する無線品質取得手段と、
前記無線通信端末の履歴としての複数の無線品質値から、無線品質分布範囲を算出する分布範囲算出手段と、
前記無線通信端末のログの無線品質値を受信した際に、当該無線通信端末の無線品質値が、前記無線品質分布範囲に属するか否かを判定する位置判定手段と、
前記位置判定手段における判定結果を、前記サービス提供制御装置へ送信する判定結果送信手段と
を有することを特徴とするシステム。
前記位置移動判定装置について、前記分布範囲算出手段及び前記位置判定手段は、無線通信端末−各基地局間の距離を算出するために、ToA(Time of Arrival)方式、TDoA(Time Difference of Arrival)方式、AoA(Angle of Arrival)方式、又は、Cell ID+RTD(Round Trip Delay)方式を用いることを特徴とする請求項3に記載のシステム。
前記基準信号受信品質値は、RSRP(Reference Signal Received Power)又はRSRQ(Reference Signal Received Quality)であることを特徴とする請求項6又は7に記載のシステム。
移動可能な無線通信端末と、該無線通信端末と通信する基地局と、前記無線通信端末毎に接続可能な基地局に対する無線品質値をログとして収集するログ蓄積装置とを有するシステムについて、前記無線通信端末が登録場所に位置する場合にのみ所定のサービスを提供する方法であって、
前記システムは、
前記ログ蓄積装置から受信したログを用いて、当該無線通信端末の移動を判定し、その判定結果を送信する位置移動判定装置と、
前記位置移動判定装置から前記判定結果を受信し、当該無線通信端末に対して前記サービスを提供するか否かを制御するサービス提供制御装置と
を更に有し、
前記位置移動判定装置が、前記無線通信端末が登録場所に位置する際に、前記ログ蓄積装置から前記無線通信端末毎の履歴としての複数の無線品質値を取得する第1のステップと、
前記位置移動判定装置が、前記無線通信端末の履歴としての複数の無線品質値から、無線品質分布範囲を算出する第2のステップと、
前記位置移動判定装置が、前記無線通信端末から前記サービスの開始要求に基づくログの無線品質値を受信した際に、当該無線通信端末の無線品質値が、前記無線品質分布範囲に属するか否かを判定する第3のステップと、
前記位置移動判定装置が、第3のステップの判定結果を、前記サービス提供制御装置へ送信する第4のステップと、
前記サービス提供装置が、前記位置移動判定装置の判定結果を受信し、当該無線通信端末に対して前記サービスを提供するか否かを制御する第5のステップと
を有することを特徴とする方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術によれば、無線通信端末が、常に、GPSの測位電波を受信可能な場所に位置するとは限らない。例えば宅内の場合、無線通信端末が、窓際から一定距離以上離れた場合、GPSの測位電波を受信できなくなる。
【0007】
また、悪意の利用者が、無線通信端末から、疑似ロケーション(偽の位置情報)をセンタ装置へ送信することもできる。この場合、その利用者は、登録場所とは異なる場所から、登録場所でしか受けられないサービスを受けることが可能となる。これは、社会的信頼性の確保を難しくするリスクとなる。
【0008】
そこで、本発明は、GPSのような測位機能を用いることなく、無線通信端末が、所定の登録場所に位置する場合にのみ、所定のサービスを提供することができるシステム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、移動可能な無線通信端末と、該無線通信端末と通信する基地局と、無線通信端末毎に基地局によって計測された無線品質値をログとして収集するログ蓄積装置とを有し、無線通信端末が所定の登録場所に位置する場合にのみ所定のサービスを提供するシステムであって、
ログ蓄積装置から受信したログを用いて、当該無線通信端末の移動を判定し、その判定結果を送信する位置移動判定装置と、
位置移動判定装置から判定結果を受信し、当該無線通信端末に対してサービスを提供するか否かを制御するサービス提供制御装置と
を更に有し、
位置移動判定装置は、
無線通信端末が登録場所に位置する際に、ログ蓄積装置から無線通信端末毎の履歴としての複数の無線品質値を取得する無線品質取得手段と、
無線通信端末の履歴としての複数の無線品質値から、無線品質分布範囲を算出する分布範囲算出手段と、
無線通信端末
のログの無線品質値を受信した際に、当該無線通信端末の無線品質値が、無線品質分布範囲に属するか否かを判定する位置判定手段と、
位置判定手段における判定結果を、サービス提供制御装置へ送信する判定結果送信手段と
を有することを特徴とする。
【0010】
本発明のシステムにおける他の実施形態によれば、
サービスは、無線通信端末に対する通信接続サービスであり、
サービス提供制御装置は、判定結果が偽である場合、無線通信端末の位置が移動した可能性が高いとして、無線通信端末に対する通信接続サービスを拒否するべく制御することも好ましい。
【0011】
本発明のシステムにおける他の実施形態によれば、
各無線通信端末におけるログの無線品質値は、当該無線通信端末−各基地局間で計測された遅延時間であり、
位置移動判定装置について、
分布範囲算出手段は、
遅延時間から、当該無線通信端末−各基地局間の距離を算出し、
当該無線通信端末から見た1つ以上の基地局に対する1つ以上の距離から、当該無線通信端末の位置情報を推定し、
複数の位置情報の平均位置を中心とした所定半径の範囲を、無線品質分布範囲とするものであり、
位置判定手段は、
サービスの開始要求時に無線通信端末−各基地局間で計測された遅延時間から、無線通信端末−各基地局間の距離を算出し、
当該無線通信端末から見た1つ以上の基地局に対する1つ以上の距離から、当該無線通信端末の現在位置情報を推定し、
現在位置情報が、無線品質分布範囲の位置範囲に含まれているか否かを判定することも好ましい。
【0012】
本発明のシステムにおける他の実施形態によれば、
位置移動判定装置について、分布範囲算出手段及び位置判定手段は、無線通信端末−各基地局間の距離を算出するために、ToA(Time of Arrival)方式、TDoA(Time Difference of Arrival)方式、AoA(Angle of Arrival)方式、又は、Cell ID+RTD(Round Trip Delay)方式を用いることも好ましい。
【0013】
本発明のシステムにおける他の実施形態によれば、
位置移動判定装置について、
分布範囲算出手段は、無線品質分布範囲を、複数の位置情報の平均位置を中心とした、各推定位置との距離誤差に対する累積分布関数とし、
位置判定手段は、推定された当該無線通信端末の現在位置情報を、累積分布関数に入力した際の出力値が所定閾値に満たない場合、判定結果を偽とする
ことも好ましい。
【0014】
本発明のシステムにおける他の実施形態によれば、
各無線通信端末におけるログの無線品質値は、当該無線通信端末−各基地局間で計測された基準信号受信品質値であり、
位置移動判定装置について、
分布範囲算出手段は、当該無線通信端末−各基地局間で計測された基準信号受信品質値から、無線品質分布範囲を算出し、
位置判定手段は、サービスを開始要求する当該無線通信端末−各基地局間で計測された基準信号受信品質値が、無線品質分布範囲に含まれているか否かを判定する
ことも好ましい。
【0015】
本発明のシステムにおける他の実施形態によれば、
位置移動判定装置について、
分布範囲算出手段は、基準信号受信品質値に基づく無線品質分布範囲を、平均及び不偏分散を用いた予測区間から、所定割合の信頼区間として算出したものである
ことも好ましい。
【0016】
本発明のシステムにおける他の実施形態によれば、
基準信号受信品質値は、RSRP(Reference Signal Received Power)又はRSRQ(Reference Signal Received Quality)であることも好ましい。
【0017】
本発明のシステムにおける他の実施形態によれば、
位置移動判定装置について、
位置判定手段は、無線通信端末の位置が移動した可能性が高い(偽)との判定が所定回数以上判定された際に、判定結果を偽とすることも好ましい。
【0018】
本発明によれば、移動可能な無線通信端末と、該無線通信端末と通信する基地局と、無線通信端末毎に接続可能な基地局に対する無線品質値をログとして収集するログ蓄積装置とを有するシステムについて、無線通信端末が登録場所に位置する場合にのみ所定のサービスを提供する方法であって、
システムは、
ログ蓄積装置から受信したログを用いて、当該無線通信端末の移動を判定し、その判定結果を送信する位置移動判定装置と、
位置移動判定装置から判定結果を受信し、当該無線通信端末に対してサービスを提供するか否かを制御するサービス提供制御装置と
を更に有し、
位置移動判定装置が、無線通信端末が登録場所に位置する際に、ログ蓄積装置から無線通信端末毎の履歴としての複数の無線品質値を取得する第1のステップと、
位置移動判定装置が、無線通信端末の履歴としての複数の無線品質値から、無線品質分布範囲を算出する第2のステップと、
位置移動判定装置が、無線通信端末からサービスの開始要求に基づくログの無線品質値を受信した際に、当該無線通信端末の無線品質値が、無線品質分布範囲に属するか否かを判定する第3のステップと、
位置移動判定装置が、第3のステップの判定結果を、サービス提供制御装置へ送信する第4のステップと、
サービス提供装置が、位置移動判定装置の判定結果を受信し、当該無線通信端末に対してサービスを提供するか否かを制御する第5のステップと
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のシステム及び方法によれば、GPSのような測位機能を用いることなく、無線通信端末が、所定の登録場所に位置する場合にのみ、所定のサービスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明におけるシステム構成図である。
【0023】
図1によれば、ユーザは、移動可能な無線通信端末2を所持する。ここで、本発明によれば、無線通信端末2が所定の登録場所(所定の設置場所)に位置する場合にのみ、所定のサービスが提供される。無線通信端末2は、従来の固定電話サービスで利用される電話機のようなものであるが、有線で接続されたものではなく、無線を介して基地局10と通信する。基地局10は、例えば3G(3 Generation)又はLTE(Long Term Evolution)のような移動通信網(例えば携帯電話網)に設置されたものである。
【0024】
各無線通信端末2には、通信事業者から、所定の登録場所に応じた電気通信番号(電話番号)が割り当てられる。その電話番号は、地理的識別性を有し、一定の社会的信頼性を確保するものである。
【0025】
本発明における移動通信網には、複数の基地局10が設置されていると共に、ログ蓄積装置11、位置移動判定装置12及びサービス提供制御装置13が設置されている。
【0026】
[ログ蓄積装置11]
ログ蓄積装置11は、各基地局10から、各無線通信端末2の通信毎のログを受信する。そして、ログ蓄積装置11は、当該無線通信端末毎に、接続可能な基地局に対する無線品質値をログとして蓄積する。蓄積されたログ情報は、位置移動判定装置12へ送信される。
【0027】
図2は、ログ蓄積装置によって収集されたログ情報テーブルである。
【0028】
図2によれば、ログ情報は、1通信毎に、1レコードとして記録される。1レコードは、「通信日時」「利用者識別子」「ログ情報」を含む。「利用者識別子」は、無線通信端末の識別子(例えば電話番号)である。また、「ログ情報」は、「接続先基地局」と「隣接基地局」とに区分される。例えば、当該無線通信端末a123が、3つの基地局bs11,bs12,bs13と通信可能である場合、1つは「接続先基地局」となり、他の2つは「隣接基地局」となる。
【0029】
ログ情報としては、基地局毎に、「基地局識別子」「遅延時間(μ秒)」「RSRP(Reference Signal Received Power)(dBm)」「RSRQ(Reference Signal Received Quality)(dB)」を含む。RSRPは、基準信号受信パワーを表し、チャネル帯域幅全体にわたるダウンリンク基準信号(RS)のリニアな平均値である。RSRQは、基準信号受信品質を表し、RSRPと受信信号強度インジケータ(RSSI(Received Signal Strength Indicator))との比である。
【0030】
[位置移動判定装置12]
位置移動判定装置12は、ログ蓄積装置11からログ情報を取得し、無線通信端末2の移動を判定する。
【0031】
最も簡単な方法としては、位置移動判定装置12は、
図2のログ情報テーブルを用いて、登録場所に位置する際に電波を受信できる1つ以上の基地局の識別子と、現実に電波を受信できる1つ以上の基地局の識別子とを比較するだけでよい。即ち、これら識別子が異なるということは、当該無線通信端末2は、既に移動していると判定することができる。
【0032】
具体的には、基地局10からの電波到達距離が例えば半径5kmであって、無線通信端末2が登録場所から20km以上離れた場合、もはや、登録場所で電波を受信できる基地局の識別子と、現実に電波を受信できる基地局の識別子とは一致しない。この場合、位置移動判定装置12は、直ぐに、当該無線通信端末の位置が移動したものと判定することでき、これによって、サービス提供制御装置13も当該無線通信端末に対する当該サービスを直ぐに停止することができる。
【0033】
例えば、
図2の2000-01-06 10:10:10のタイムスタンプを持つログは、接続先基地局がbs100である。これは、先の接続先基地局bs11よりも、遠方に設置されているものであるため、当該無線通信端末の登録場所から移動したことは明確となる。
【0034】
しかしながら、登録場所に位置する際に電波を受信できる基地局と、現実に電波を受信できる基地局とが一致する範囲というのは、かなり広い。この技術によれば、例えばサービス提供基地局が同一となる2km離れた友人宅へ無線通信端末を持って行っても、登録場所に設置されていると判定されることとなる。そこで、本発明の位置移動判定装置12は、
図2のログ情報テーブルを用いて、登録場所で電波を受信できる基地局と、現実に電波を受信できる基地局とが同じとなるような比較的狭い所定範囲であっても、位置移動を判定することができる。
【0035】
そこで、本発明の位置移動判定装置12によれば、登録場所に位置する際に電波を受信できる基地局と、現実に電波を受信できる基地局とが一致する場合に、本発明の特徴ある位置移動判定を実行することとなる。本発明によれば、無線通信端末の登録場所(住所)の位置情報を用いることなく、当該無線通信端末が移動したか否かを判定することができる。
【0036】
図3は、本発明における位置移動判定装置の機能構成図である。
【0037】
図3によれば、位置移動判定装置12は、無線品質取得部121と、分布範囲算出部122と、位置判定部123と、判定結果送信部124とを有する。これら機能構成部は、装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。
【0038】
無線品質取得部121は、2通りの無線品質値を取得する。
(第1の無線品質値)無線通信端末が登録場所に位置する際に、ログ蓄積装置11から、無線通信端末毎の履歴としての複数の無線品質値を取得する。
(第2の無線品質値)現在時間における無線通信端末について、ログ蓄積装置11から、当該無線通信端末のログの無線品質値を受信する。
第1の無線品質値は、無線通信端末が登録場所に位置する際に収集すべき学習データのようなものである。無線品質取得部121によれば、第1の無線品質値は分布範囲算出122へ出力し、第2の無線品質値は位置判定部123へ出力する。尚、位置判定部123について、当該無線通信端末の第2の無線品質値が、無線品質分布範囲に属するか否かを判定した後、当該無線品質値を第1の無線品質値として分布範囲を更新することも好ましい。
【0039】
分布範囲算出部122は、無線通信端末の履歴としての複数の無線品質値から、無線品質分布範囲を算出する。分布範囲算出部122は、後述するように、以下の2つの実施形態を有する。
(第1の実施形態)遅延時間から導出した位置を用いて、無線通信端末の移動を判定
(第2の実施形態)無線品質の変化のみを用いて無線通信端末の移動を判定
【0040】
位置判定部123は、現在時間における無線通信端末のログの無線品質値を受信した際に、当該無線通信端末の無線品質値が、無線品質分布範囲に属するか否かを判定する。位置判定部123も、後述するように第1の実施形態と第2の実施形態とを有する。
【0041】
判定結果送信部124は、位置判定部123における判定結果を、サービス提供制御装置13へ送信する。ここで、判定結果送信部124は、判定結果が「位置移動の可能性有り」(偽:無線品質値が無線品質分布範囲に含まれない)となった場合にのみ、その旨を、サービス提供制御装置13へ送信するものであってもよい。後述するサービス提供制御装置13は、位置移動判定装置12から偽の判定結果を受信した場合にのみ、サービスを停止するべく制御する。
【0042】
[サービス提供制御装置13]
サービス提供制御装置13は、無線通信端末2からサービス開始要求を受信した際に、位置移動判定装置12から受信した判定結果に応じて、サービス提供の可否を制御する。ここで、その判定結果が偽である場合、サービス提供装置13は、無線通信端末2の位置が移動した可能性が高いとして、無線通信端末2に対する通信接続サービスを拒否するべく制御する。
【0043】
サービス提供制御装置13によって提供されるサービスとは、例えば呼接続のような、無線通信端末に対する通信接続サービスであってもよいし、その他、コンテンツ提供サービスであってもよい。即ち、ネットワークを介して提供される様々なサービスに適用できる。
【0044】
[遅延時間から導出した位置を用いて無線通信端末の移動を判定する第1の実施形態]
【0045】
各無線通信端末におけるログの無線品質値として、当該無線通信端末−各基地局間で計測された遅延時間を用いる。
分布範囲算出部122は、以下のステップを実行する。
(S21)遅延時間から、当該無線通信端末−各基地局間の距離を算出する。
(S22)無線通信端末から見た1つ以上の基地局に対する1つ以上の距離から、当該無線通信端末の位置情報を推定する。
(S23)複数の位置情報の平均位置を中心とした所定半径の範囲を、無線品質分布範囲とする。
また、位置判定部123は、以下のステップを実行する。
(S31)現在時間における無線通信端末−各基地局間で計測された遅延時間から、無線通信端末−各基地局間の距離を算出する。ここで、「現在時間」とは、無線通信端末がサービスを受けようとする前の一定の時間範囲である。即ち、サービス開始の直前の時のみに限定するものではない。
(S32)当該無線通信端末から見た1つ以上の基地局に対する1つ以上の距離から、当該無線通信端末の現在位置情報を推定する。
(S33)現在位置情報が、無線品質分布範囲の位置範囲に含まれているか否かを判定する。
【0046】
ここで、分布範囲算出部122及び位置判定部123は、無線通信端末−各基地局間の距離を算出するために、例えばToA(Time of Arrival)方式(例えば非特許文献2参照)、TDoA(Time Difference of Arrival)方式、AoA(Angle of Arrival)方式、又は、Cell ID+RTD(Round Trip Delay)方式を用いてもよい。ToA方式は、信号の滞空時間から算出した距離を用いて位置を推定する方式である。TDoA方式は、信号の受信時刻差を用いて位置を推定する方式である。AoA方式は、信号の到来方位を用いて位置を推定する方式である。
【0047】
図4は、遅延時間から位置を導出する具体例を表す説明図である。
【0048】
図4によれば、
図2の第1のレコードに対して測位した例を表している。このレコードによれば、以下のようになっている。
無線通信端末a123から基地局bs11までの遅延時間:1.234μ秒
無線通信端末a123から基地局bs12までの遅延時間:2.010μ秒
無線通信端末a123から基地局bs13までの遅延時間:2.564μ秒
これらを、光速度に基づいて距離に換算すると、以下のようになる。
無線通信端末a123から基地局bs11までの距離 :370m
無線通信端末a123から基地局bs12までの距離 :603m
無線通信端末a123から基地局bs13までの距離 :769m
そして、
図4に表すように、各基地局からその距離を半径として描いた円のおよその交点位置が、当該無線通信端末が位置するであろう推定位置となる。
【0049】
図5は、無線通信端末について推定された理想的な複数の位置の分布範囲を表す説明図である。
図6は、無線通信端末について推定された現実的な複数の位置の分布範囲を表す説明図である。
【0050】
図5によれば、当該無線通信端末について、通信毎に推定された複数の位置に基づいて、無線品質分布範囲が描かれている。ここで、本発明によれば、無線通信端末の登録場所の住所(住所から変換した位置情報)を中心とした所定範囲に、当該無線通信端末の推定位置が存在するか否かを比較することはしない。即ち、以下のような判定はしない。
|推定位置−登録住所情報| < 所定閾値 : 移動無しと判定
|推定位置−登録住所情報| ≧ 所定閾値 : 移動有りとの判定
【0051】
図6によれば、実際の無線通信端末の現実位置と、その推定位置に基づく分布範囲とに差がある。この理由としては、遅延時間のような無線通信品質値は、同じ距離であっても、異なって計測される場合がある(TOA方式の場合、例えば非特許文献2参照)。例えば、見通しの良い郊外と、様々な建造物が建ち並ぶ都会とでは、同じ遅延時間であっても、各距離は異なって計測される。即ち、|推定位置−登録住所情報|から所定閾値を用いて一意に決定することが難しい。
【0052】
前述したように、
図5によれば、無線通信端末の設置場所付近に、推定位置の分布範囲がある。しかしながら、周辺環境によっては、
図6のように、推定位置の分布範囲に一定のオフセットがかかってずれる場合がある。ここで、もし、遅延時間による推定位置と、無線通信端末の登録場所に基づく位置とを比較することよって、無線通信端末の移動を判定した場合、当該無線通信端末に対しては、頻繁にサービス停止となるという状態が発生する。
【0053】
そこで、第1の実施形態に基づく分布範囲算出部122は、当該無線通信端末について、通信毎に推定された複数の位置に基づいて、無線品質分布範囲を算出する。無線品質分布範囲は、複数の位置情報の平均位置を中心とし、各推定位置との距離誤差に対する累積分布関数の出力値が所定閾値未満となる範囲で表される。
【0054】
図7は、ログ情報テーブルにおける1レコード(通信)毎に推定した複数の位置(緯度・経度)を表すテーブルである。
【0055】
分布範囲算出部122は、最初に、1通信毎に、ログ情報テーブルにおける1つ以上の基地局の遅延情報を用いて、位置(緯度・経度)(推定現在位置)を推定する。また、過去に推定された複数の位置から、緯度・経度の平均値を算出すると共に、その平均値と複数の位置との距離の分散値を算出する。ここで、平均値・分散値の算出に用いる位置情報の個数には、最大値を設定することも好ましい。また、位置情報の個数が最大値に達した場合、時系列にみて、過去の古い推定位置情報を削除することも好ましい。また、後述する位置判定部123における判定処理の後、推定現在位置を過去に推定された複数の位置の一つに加えることも好ましい。
【0056】
推定位置の誤差は、漸近的に正規分布に従うものとする。そして、無線通信端末毎に、以下の推定位置の誤差に関する累積分布関数を算出する。
F(e)=1−exp(−e
2/2σ
2)
F(e):推定位置が平均値からe以下の距離となる確率
e:距離
σ
2:分散値
【0057】
次に、位置判定部123も同様に、無線通信端末からサービスの開始要求が送信された際に、1つ以上の基地局の遅延情報を用いて位置を推定する。当該無線通信端末のその推定現在位置と平均位置との差となる距離を、累積分布関数に入力した際の出力値が所定閾値を超える場合、判定結果を偽とする。例えば、以下のように判定する。
1−F(e)=exp(−e
2/2σ
2)
1−F(e) < 所定閾値Th
e:位置移動の可能性有り
1−F(e) ≧ 所定閾値Th
e:位置移動の可能性無し
【0058】
例えば、以下の場合を想定する。
分散値σ
2=7650
所定閾値Th
e=0.001
例えば
図2の2000-01-03
22:22:22のタイムスタンプを持つログについては、以下のように判定される。
e=100m
1−F(e)=0.52 > 所定閾値Th
e :判定「位置移動の可能性無し」
また、例えば
図2の2000-01-04 08:07:06のタイムスタンプを持つログについては、以下のように判定される。
e=350m
1−F(e)=0.0003 < 所定閾値Th
e :判定「位置移動可能性有り」
【0059】
遅延時間を用いた推定位置の測位精度は、周辺環境によって大きく異なるが、無線通信端末の登録場所に応じて累積分布関数が作成されるために、周辺環境に依存することなく、所定の確率での位置移動を判定することができる。
【0060】
[無線品質の変化のみを用いて無線通信端末の移動を判定する第2の実施形態]
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と比較して、緯度・経度の位置を推定する測位処理までは実行しない。第2の実施形態によれば、遅延時間ではなく、接続/隣接基地局から受信する電波の基準信号受信品質値を用いる。具体的には、RSRP及びRSRQを用いる。
【0061】
分布範囲算出部122は、当該無線通信端末−各基地局間で計測されたRSRP及びRSRQから、無線品質分布範囲を算出する。この無線品質分布範囲は、平均及び不偏分散を用いた所定割合の予測区間として算出したものである。
【0062】
図8は、当該無線通信端末における平均位置及び分散値を表すテーブルである。
【0063】
分布範囲算出部122は、位置判定を行う度に、ログ情報テーブルにおける基地局の過去の複数のRSRP及びRSRQから、基地局毎の平均値及び不偏分散μ
2を算出する。ここで、平均値・不偏分散の算出に用いるRSRP及びRSRQの個数には、最大値を設定することも好ましい。また、RSRP及びRSRQの個数が最大値に達した場合、時系列にみて、過去の古いRSRP及びRSRQを削除することも好ましい。更に、位置判定部123における判定処理の後、今回対象とするRSRP及びRSRQを過去の複数のRSRP及びRSRQの一つに加えることも好ましい。
【0064】
そして、平均値Xから不偏分散μ
2から、以下の式を用いて予測区間を算出する。
下限:X−t×sqrt(μ
2(1+1/n))
上限:X+t×sqrt(μ
2(1+1/n))
n:RSRP及びRSRQそれぞれの個数
t:t分布表(例えばn=30で信頼区間99%とした場合、t=2.756)
【0065】
次に、位置判定部123は、現在時間における当該無線通信端末−各基地局間で計測されたRSRP及びRSRQ(基準信号受信品質値)が、予測区間の上限値と下限値との間(無線品質分布範囲)に含まれているか否かを判定する。
RSRP及びRSRQのいずれかが、予測区間に入っていない場合 ->
「位置移動の可能性有り」
RSRP及びRSRQの両方とも、予測区間に入っている場合 ->
「位置移動の可能性無し」
【0066】
図9は、当該無線通信端末毎に、基地局に対する予想区間を表すテーブルである。
【0067】
図9における第1のレコードによれば、当該無線通信端末が登録場所に位置している場合、基地局bs11に対するRSRPの範囲が、-87dBm〜-81dBmであるとする。この場合、この場合、
図2の2000-01-03 21:00:12 のタイムスタンプを持つレコードのRSRPは、-85dBmで予測区間内にあるため、「位置移動の可能性無し」と判定される。
一方で、
図2の2000-01-03 22:22:22のタイムスタンプを持つレコードのRSRPは、-88dBmで予測区間外にあるため、「位置移動の可能性有り」と判定される。
【0068】
尚、前述した第1の実施形態及び第2の実施形態に共通して、位置判定部123は、無線通信端末の位置が移動した可能性が高い(偽)との判定が所定回数(複数回)以上判定された際に、判定結果を偽とすることも好ましい。判定結果が頻繁にぶれることを避けるためである。
【0069】
以上、詳細に説明したように、本発明のシステム及び方法によれば、GPSのような測位機能を用いることなく、無線通信端末が、所定の登録場所に位置する場合にのみ、所定のサービスを提供することができる。
【0070】
具体的には、本発明によれば、基地局によって取得される無線通信端末からの通信毎のログ情報を用いることによって、無線通信端末の設置場所を特定することなく、即ち、無線通信端末に位置情報を送信させることなく、登録場所からの位置移動の可否を検出することができる。また、これによって、位置移動の可能性有りと判定された場合、位置依存のサービスの提供を停止することができる。
【0071】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。