(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
各種電気機器内部の回路基板におけるソルダーレジストパターンは、半田付け不要な配線パターンに半田が付着しないようにするために、半田付けする部分以外の部分全面に被覆形成され、また、導体の酸化防止、電気絶縁及び外部環境からの保護という役割を果たしている。
【0003】
回路基板上に半導体チップ等の電子部品を搭載した半導体パッケージにおいて、フリップチップ接続による搭載は、高速化、高密度化を実現する上で有効な手段である。フリップチップ接続では、回路基板の導体配線の一部をフリップチップ接続用の接続パッドとし、例えば、この接続パッド上に配設した半田バンプと半導体チップの電極端子とを接合する。
【0004】
図1〜
図5は、回路基板上の半田付けする部分(例えば、接続パッド)以外をソルダーレジスト層で覆ったソルダーレジストパターンの概略断面構造図である。
図1は、Solder Mask Defined(SMD)構造の概略断面構造図であり、ソルダーレジスト層3の開口部が接続パッド6よりも小さいことを特徴としている。
図2〜
図5は、Non Solder Mask Defined(NSMD)構造の概略断面構造図であり、ソルダーレジスト層3の開口部が接続パッド6以上であることを特徴としている。
【0005】
ソルダーレジストパターンを形成する方法としては、フォトリソグラフィー方式が一般に知られている。フォトリソグラフィー方式では、絶縁性基板1上に接続パッド6と導体配線2を有する回路基板上にソルダーレジスト層3を形成した後、露光、現像することで、接続パッド6周辺のソルダーレジスト層3を完全に除去して開口部を設ける。このフォトリソグラフィー方式では、これまで、
図1、
図2及び
図3の構造しか作製することができていない。
【0006】
図2のように、接続パッド6間にソルダーレジスト層が全く存在しない場合、接続パッド間が狭ピッチ化すると、半田付けに先だって行われる無電解ニッケル/金めっきの際に、接続パッド間でめっきの短絡が発生する。接続パッド6間にソルダーレジスト層3が存在する場合であっても、
図1及び
図3のように、ソルダーレジスト層3が厚い場合には、それらが障害になって電子部品を正しく搭載できないという不具合が生じる。また、近年の電子機器の小型化、多機能化に伴い、接続パッド間が50μm未満になると、
図1及び
図3の構造をフォトリソグラフィー方式で作製することは、露光の位置ずれの点から、非常に困難であった。このような理由から、
図4及び
図5のように、接続パッド6間のソルダーレジスト層3の厚みが接続パッド6の厚み以下である構造が求められている。
【0007】
図4の構造は、ウェットブラスト法により、スリット状の開口を有するソルダーレジストパターンが形成されていて、複数並設された接続パッド6を露出させるとともに、スリット状の開口内に露出した互い隣接する接続パッド6間に、接続パッド6と同じ高さのソルダーレジスト層3が充填されている構造である。この構造は、絶縁性基板1上に接続パッド6と導体配線2を有する回路基板上にソルダーレジスト層3を塗工したのち、紫外線硬化、加熱硬化を実施したソルダーレジスト層3上に、ウェットブラスト用マスクを形成するための樹脂層を設けたのち、露光、現像することで、パターン状のウェットブラスト用マスクを形成し、次いで、ウェットブラストを行うことでソルダーレジスト層にスリット状の開口を形成し、ウェットブラスト用マスクを除去することで形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、接続パッドと接続パッドより高さの低い導体配線を有する回路基板に対して、接続パッドが露出し、導体配線はソルダーレジスト層によって覆われており、接続パッド間に接続パッドと同じ高さのソルダーレジスト層が充填されている構造も開示されている(例えば、特許文献2参照)。この構造は、接続パッドと接続パッドより高さの低い導体配線を有する回路基板上にソルダーレジスト層を塗工したのち、接続パッドの上面が露出するまで研磨することで形成されている。研磨方法としては、機械的研磨方法やレーザスクライブ法が採用可能とされている。
【0009】
図5の構造では、接続パッド6間にソルダーレジスト層3が存在しているが、接続パッド6の外周面が露出している。
図5の構造は、接続パッド6全体を無電解ニッケルめっきしてニッケル層で被覆し、導体配線上にソルダーレジスト層3を塗工した後、紫外線硬化、加熱硬化を実施し、ソルダーレジスト層3をブラスト研磨することで、ニッケル層の上面を露出させ、その後に、ニッケル層をエッチングによって除去することで形成されている(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
特許文献1〜3の方法では、ソルダーレジスト層の開口部を形成するために、ウェットブラスト、機械的研磨等の研磨方法を使用しているが、この方法では、面内の研磨量を均一にするのが難しく、さらに、接続パッド上にソルダーレジスト層の残渣を残さず、その上面を完全に露出させるような精度の高い加工は極めて困難であった。また、ソルダーレジスト層と接続パッドとの高さを同じにすることは容易であるが、ソルダーレジスト層の高さを接続パッドよりも低くしようとすると、研磨処理では、接続パッドを含めた他の部分に傷が付いたり、欠損が生じるといった問題が発生する場合があった。
【0011】
ソルダーレジスト層を除去する方法として、レーザー照射によって不要なソルダーレジストを分解させる方法もあるが、工程が煩雑である、生産性が悪い等の問題があった(例えば、特許文献2及び4参照)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のソルダーレジストパターンの形成方法について詳細に説明する。
【0022】
図6は、本発明のソルダーレジストパターンの形成方法(1)の一例を示す断面工程図である。絶縁性基板1上に接続パッド6が形成された回路基板を準備する。接続パッド6の形成には、サブトラクティブ法、セミアディティブ法、アディティブ法等を用いればよい。工程(A1)では、基板全面を覆うようにしてソルダーレジスト層3を形成する。工程(B1)では、アルカリ水溶液によって、ソルダーレジスト層3を薄膜化する。
図10は、本発明のソルダーレジストパターンの形成方法(1)によって作製された回路基板の接続パッド近傍の概略を示す立体説明図であり、接続パッド6がソルダーレジスト層3から露出した形状のレジストパターンが形成されている。なお、本発明におけるソルダーレジスト層3の厚みとは、絶縁性基板1の表面を基点として、ソルダーレジスト層表面までの厚みを測定した値である。
【0023】
図7は、本発明のソルダーレジストパターンの形成方法(2)の一例を示す断面工程図である。絶縁性基板1上に接続パッド6と導体配線2が形成された回路基板を準備する。工程(A2)では、基板全面を覆うようにしてソルダーレジスト層3を形成する。工程(C)では、ソルダーレジスト層の厚みが接続パッドの厚み以下になるまで薄膜化される領域以外の部分を活性光線5により露光する。
図7では、フォトマスク4を介して露光しているが、直接描画方式で行ってもよい。工程(B2)では、アルカリ水溶液によって、非露光部のソルダーレジスト層3を薄膜化する。
図11は、本発明のソルダーレジストパターンの形成方法(2)によって作製された回路基板の接続パッド近傍の概略を示す立体説明図であり、接続パッド6がソルダーレジスト層3から露出した形状のソルダーレジストパターンが形成されている。
【0024】
図8は、本発明のソルダーレジストパターンの形成方法(3)の一例を示す断面工程図である。絶縁性基板1上に接続パッド6と導体配線2が形成された回路基板を準備する。工程(A2)では、基板全面を覆うようにしてソルダーレジスト層3を形成する。工程(D)では、アルカリ水溶液によって、接続パッド6の厚みより厚い範囲内でソルダーレジスト層3を所望の厚みまで薄膜化する。ソルダーレジスト層3を所望の厚みまで薄膜化した後に露光するため、露光時の光散乱が軽減され、より高精細なパターニングが可能になる。工程(C)では、ソルダーレジスト層の厚みが接続パッドの厚み以下になるまで薄膜化される領域以外の部分を活性光線5により露光する。工程(B2)では、アルカリ水溶液によって、非露光部のソルダーレジスト層3を薄膜化する。
図12は、本発明のソルダーレジストパターンの形成方法(3)によって作製された回路基板の接続パッド近傍の概略を示す立体説明図であり、導体配線2はソルダーレジスト層3で覆われ、接続パッド6がソルダーレジスト層3から露出した形状のソルダーレジストパターンが形成されている。
【0025】
図9は、本発明のソルダーレジストパターンの形成方法(4)の一例を示す断面工程図である。まず、絶縁性基板1上に接続パッド6と接続パッド6より高さの低い導体配線2が形成された回路基板を準備する。工程(A3)では、基板全面を覆うようにしてソルダーレジスト層3を形成する。工程(B3)では、アルカリ水溶液によって、ソルダーレジスト層3の厚みが接続パッド6の厚み以下で、導体配線2の厚みよりも厚くなるところまでソルダーレジスト層3を薄膜化する。
図13及び14は、本発明のソルダーレジストパターンの形成方法(4)によって作製された回路基板の接続パッド近傍の概略を示す立体説明図であり、接続パッド6より高さの低い導体配線2はソルダーレジスト層3で覆われ、接続パッド6がソルダーレジスト層3から露出した形状のソルダーレジストパターンが形成されている。
【0026】
本発明における接続パッドを有する回路基板とは、絶縁性基板上に銅等の金属からなる半導体チップ等の電子部品を接続するための接続パッドが形成された回路基板である。本発明における基板上に接続パッドと導体配線を有する回路基板とは、絶縁性基板上に銅等の金属からなる半導体チップ等の電子部品を接続するための接続パッドと導体配線が形成された回路基板である。基板上に接続パッドや導体配線が形成された基板を作製する方法は、例えばサブトラクティブ法、セミアディティブ法、アディティブ法が挙げられる。サブトラクティブ法では、例えば、ガラス基材エポキシ樹脂に銅箔を張り合わせた銅張積層板にスルーホールと呼ばれる貫通孔を開け、貫通孔内壁を含む表面に電解銅めっき処理によって、めっき銅を析出させる。次いで、回路部にエッチングレジスト層を形成し、エッチング処理により非回路部の銅を除去する。その後、回路部のエッチングレジスト層を除去して回路基板が作製される。また、セミアディティブ法では、例えば、ガラス基材エポキシ樹脂に極薄い銅箔を張り合わせた銅張積層板にスルーホールを開け、貫通孔内壁を含む表面に無電解銅めっき層を設ける。次いで、非回路部にめっきレジスト層を形成し、電解銅めっき処理により無電解銅めっき層が露出する部分の表面に電解銅めっき層を形成する。その後、非回路部のめっきレジスト層を除去し、めっきレジスト層下部の無電解銅めっき層をフラッシュエッチング除去して回路基板が作製される。
【0027】
本発明における、基板上に接続パッドと接続パッドより高さの低い導体配線を有する回路基板とは、絶縁性基板上に銅等の金属からなる半導体チップ等の電子部品を接続するための接続パッドと接続パッドより高さの低い導体配線が形成された回路基板である。基板上に接続パッドと接続パッドより高さの低い導体配線を有する基板を作製する方法は、例えばセミアディティブ法、アディティブ法が挙げられる。セミアディティブ法では、例えば、ガラス基材エポキシ樹脂に銅箔を張り合わせた銅張積層板にスルーホールと呼ばれる貫通孔を開け、貫通孔内壁を含む表面に無電解銅めっき層を設ける。次いで、非回路部にめっきレジスト層を形成し、電解銅めっき処理により無電解銅めっき層が露出する部分の表面に電解銅めっき層(接続パッド前駆体と導体配線)を形成する。続いて、接続パッド前駆体部分が露出するようにめっきレジスト層を再度形成させ、電解銅めっき処理により露出した接続パッド前駆体部分の表面に電解銅めっき層を形成する。その後、めっきレジスト層を除去し、めっきレジスト層下部の無電解銅めっき層をフラッシュエッチング除去して回路基板が作製される。
【0028】
回路基板は、片面板、両面板、多層板のいずれであってもよく、ソルダーレジストパターンを形成させる必要があるものであれば、どんな回路基板に対しても本発明のソルダーレジストパターンの形成方法を適用できる。
【0029】
本発明に係わるソルダーレジストとしては、アルカリ水溶液によってソルダーレジスト層表面を溶解もしくは膨潤させ、ソルダーレジスト層を除去することができるものであればいかなるものでも使用できる。また、1液性、2液性、どちらの液状レジストであってもよく、ドライフィルム状レジストであってもよい。ソルダーレジストは、例えば、アルカリ可溶性樹脂、多官能アクリルモノマー、光重合開始剤、エポキシ樹脂、無機フィラー等を含有する。アルカリ可溶性樹脂としては、光硬化性と熱硬化性の両方の特性をもつアルカリ可溶性樹脂が挙げられ、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂にアクリル酸を付加させてエポキシアクリレート化した樹脂の2級の水酸基に酸無水物を付加させた樹脂が挙げられる。多官能アクリルモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。光重合開始剤としては、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が挙げられる。エポキシ樹脂は、硬化剤として用いられる。アルカリ可溶性樹脂のカルボン酸と反応させることで架橋させ、耐熱性や耐薬品性の特性の向上を図っているが、カルボン酸とエポキシは常温でも反応が進むために、保存安定性が悪く、アルカリ現像型ソルダーレジストは一般的に使用前に混合する2液性の形態をとっている場合が多い。無機フィラーとしては、例えば、タルク、シリカ、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0030】
工程(A1)では、接続パッドを有する回路基板の表面にソルダーレジスト層を形成する。工程(A2)では、接続パッドと導体配線を有する回路基板の表面にソルダーレジスト層を形成する。工程(A3)では、接続パッドと接続パッドより高さの低い導体配線を有する回路基板の表面にソルダーレジスト層を形成する。ソルダーレジスト層の形成には、例えば、液状レジストであれば、スクリーン印刷法、ロールコート法、スプレー法、浸漬法、カーテンコート法、バーコート法、エアナイフ法、ホットメルト法、グラビアコート法、刷毛塗り法、オフセット印刷法を用いることができる。また、ドライフィルム形状のものであれば、ラミネート法や真空ラミネート法が用いられる。
【0031】
工程(C)では、薄膜化される領域以外の部分のソルダーレジスト層に選択的に活性光線を照射し硬化させる。露光方式としては、キセノンランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、UV蛍光灯を光源とした反射画像露光方式、フォトマスクを用いた片面あるいは両面密着露光方式、プロキシミティ方式、プロジェクション方式やレーザー走査露光方式等が挙げられる。「薄膜化される領域」とは、例えば、接続パッド上や接続パッド間を含む接続パッド周囲の領域である。「薄膜化される領域以外の領域」とは、例えば、導体配線上や導体配線間を含む導体配線周囲の領域である。
【0032】
工程(B1)、(B2)、(B3)では、アルカリ水溶液によって、接続パッドの厚み以下になるまでソルダーレジスト層の薄膜化処理を行う。工程(D)では、アルカリ水溶液によって、接続パッド6の厚みより厚い範囲内でソルダーレジスト層の薄膜化処理を行う。詳しくは、アルカリ水溶液によって、ソルダーレジスト層表面を溶解もしくは膨潤させ、非露光部のソルダーレジスト層表面を除去する。ドライフィルム形状の場合でソルダーレジスト層上に支持層フィルムが設けられている場合には、支持層フィルムを剥がしてから薄膜化処理を実施する。
【0033】
本発明のソルダーレジストパターンの形成方法では、ソルダーレジスト層形成後の厚みとアルカリ水溶液処理によって非露光部のソルダーレジスト層が薄膜化された量とによって、接続パッド周囲のソルダーレジスト層の厚みが決定される。また、本発明のソルダーレジストパターンの形成方法では、0.01〜500μmの範囲で薄膜化量を適宜調整することができる。薄膜化後のソルダーレジスト層表面から接続パッド表面までの高さは、後で必要な半田量に応じて適宜調整する。
【0034】
工程(B1)、(B2)、(B3)では、薄膜化処理後のソルダーレジスト層の厚みが、接続パッドの厚みと同じか、それよりも薄くなるまで薄膜化処理を行うが、薄膜化後のソルダーレジスト層の厚みが薄すぎると、接続パッド間の電気絶縁が不十分になり、無電解ニッケル/金めっきの短絡が発生する場合や、接続パッド間で半田による短絡が発生する場合がある。そのため、薄膜化後のソルダーレジスト層の厚みは、接続パッドの厚みの
1/2以上
であることが好ましく、より好ましくは
2/3以上
であるのがよい。
【0035】
アルカリ水溶液による薄膜化処理において、前処理として水洗処理を実施してもよい。前処理水洗によって、ソルダーレジスト層中のカルボキシル基等の親水基が再配向し、層表面の親水性が均一化される。さらに、ソルダーレジスト層上に存在する汚染物や異物を取り除くことができる。前処理水洗に用いられる水としては、工業用水、水道水、イオン交換水、蒸留水等が挙げられる。前処理水洗の方法としては、浸漬処理、パドル処理、スプレー処理、ブラッシング、スクレーピング等があるが、ソルダーレジスト層上の汚染物や異物の除去性を考慮するとスプレー処理が好ましい。スプレー条件(温度、スプレー圧、時間)は、適宜調整することが可能であるが、具体的には、温度は15〜30℃が好ましく、より好ましくは20〜25℃である。また、スプレー圧は0.02〜0.5MPaが好ましく、より好ましくは0.05〜0.3MPaである。
【0036】
さらに、前処理水洗水に界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤の使用により、ソルダーレジスト層表面をより迅速に安定して親水化させることができる。界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩等のアニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体(いわゆる、プルロニック系界面活性剤)、脂肪酸ペンタエリスリトールエステル、アセチレングリコール等のノニオン系界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤;アルキルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。前処理水洗処理は、ソルダーレジスト層の品質を損なわないものであれば、どの種類の界面活性剤を用いても問題ないが、アニオン系、カチオン系及び両性界面活性剤は、レジスト表面に特異的に吸着する場合や、種類によってはレジスト表面を部分的に侵害する場合があるので、ノニオン系の界面活性剤を用いることが好ましい。ノニオン系界面活性剤のより好ましい具体的例としては、アセチレングリコールが挙げられ、日信化学工業(株)製のサーフィノール(登録商標)465、サーフィノール(登録商標)485、サーフィノール(登録商標)82等を用いることができる。
【0037】
前処理水洗水に添加する界面活性剤量は、各種の界面活性剤の特性により変わるが、ソルダーレジスト層表面の親水化に加え、前処理水洗中に発泡が少ないこと、さらに、界面活性剤によるソルダーレジスト層上に付着した汚染物や異物の除去効率を考慮すると、0.001〜0.1質量%の範囲が好ましく、0.001〜0.05質量%の範囲がより好ましく、0.01〜0.05質量%の範囲がさらに好ましい。
【0038】
本発明に係わるアルカリ水溶液は、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アンモニウムリン酸塩、アンモニウム炭酸塩等の無機アルカリ性化合物の水溶液;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキサイド(コリン)等の有機アルカリ性化合物の水溶液が挙げられる。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。上記無機アルカリ性化合物及び有機アルカリ性化合物は、単独で用いてもよいし、複数組み合わせて用いてもよい。無機アルカリ性化合物と有機アルカリ性化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
無機アルカリ性化合物のアルカリ金属としてナトリウム塩を用いる場合、カリウム塩を混在させるのがよい。例えば、炭酸ナトリウムやメタケイ酸ナトリウムを用いる場合、成分中の炭酸イオンやケイ酸イオンが水に含まれるカルシウムやマグネシウムと不溶性の塩を形成し、アルカリ水溶液中に凝集分離することがある。カリウムは、ナトリウムに比べ水に対する溶解性が大きく、また他の化合物との反応性が高いため、炭酸イオンやケイ酸イオンがカルシウムやマグネシウムと反応するよりも、優先的にカリウムと反応することにより不溶性の塩の形成が妨げられると考えられる。
【0040】
また、ソルダーレジスト層表面をより均一に薄膜化するために、アルカリ水溶液に、硫酸塩、亜硫酸塩を添加することもできる。硫酸塩又は亜硫酸塩としては、リチウム、ナトリウム又はカリウム等のアルカリ金属硫酸塩又は亜硫酸塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属硫酸塩又は亜硫酸塩が挙げられる。
【0041】
アルカリ水溶液が無機アルカリ性化合物を含有してなる水溶液である場合、無機アルカリ性化合物が、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩から選ばれる少なくともいずれか1種であることが好ましい。また、無機アルカリ性化合物の含有量は、3〜25質量%が好ましい。無機アルカリ性化合物の含有量が3質量%未満のアルカリ水溶液は、従来のフォトリソグラフィー方式による露光後の現像に使用される液であり、露光されていないソルダーレジスト層を完全に除去する場合には有効であるが、ソルダーレジスト層を完全に除去せずに、面内均一な厚みで薄膜化する処理では、厚みのムラが発生しやすくなる場合がある。また、25質量%を超えると、無機アルカリ性化合物の析出が起こりやすく、液の経時安定性、作業性に劣る場合がある。無機アルカリ性化合物の含有量は、5〜20質量%がより好ましく、7〜15質量%がさらに好ましい。また、界面活性剤、消泡剤、溶剤等を適宜添加することもできる。
【0042】
ソルダーレジスト層の薄膜化処理においては、ソルダーレジスト層中に含まれるアルカリ水溶液に不溶な無機フィラーの存在が無視できない。無機フィラーのサイズはその種類にもよるが、ナノフィラーと呼ばれるサブミクロンオーダーのものから大きいものでは数十ミクロンのものまで、ある程度の粒度分布をもって、層中に30〜70質量%の含有量で存在している。薄膜化処理はアルカリ性化合物がソルダーレジスト層中に浸透した後、溶解拡散することによって進行するが、不溶性の無機フィラーの存在により、アルカリ性化合物の浸透が抑制され、薄膜化速度が遅くなることがある。
【0043】
このような無機フィラーによる浸透抑制に対し、アルカリ水溶液のpHは12.5以上とするのがよく、13.0以上とするのがさらに好ましい。アルカリ水溶液のpHが高いほど、アルカリ性化合物が浸透した際のソルダーレジスト層の膨潤が大きくなり、無機フィラーによる浸透抑制の影響を受けにくくなる。
【0044】
工程(B1)、(B2)、(B3)では、薄膜化処理によって、接続パッド表面を露出させる。通常、接続パッドと導体配線を有する回路基板にソルダーレジスト層を形成させる場合、導体配線とソルダーレジスト層の密着性を考慮し、導体配線と同じく接続パッド表面も各種研磨処理によって粗面化される。粗面化によるアンカー効果によって導体配線とソルダーレジスト層の密着性が向上し、長時間に渡って高い絶縁信頼性が維持される。従来、ソルダーレジスト層を除去して接続パッド表面を露出する際、分散能力に優れた低濃度の炭酸ナトリウム水溶液を現像液として用いるのが一般的であり、接続パッド表面にはソルダーレジストの残渣残りはほとんど発生しない。しかし、低濃度の炭酸ナトリウム水溶液を用いて薄膜化処理を行うと、ソルダーレジスト層表面を均一に処理することができず、面内ムラが発生する。
【0045】
そこで、面内均一に薄膜化しつつ、粗面化された接続パッド表面にソルダーレジスト残渣を残さないアルカリ水溶液として、アルカリ金属ケイ酸塩を含むアルカリ水溶液が挙げられる。アルカリ金属ケイ酸塩は他の無機アルカリ性化合物に比べ、ソルダーレジスト層の溶解拡散能力に優れており、接続パッド表面に残渣残りが発生しにくい。アルカリ金属ケイ酸塩の一般式を下記式(i)に示す。アルカリ金属ケイ酸塩は3種の成分が種々の比率で連続的に変化して成り立つ化学薬品の総称であり、モル比から算出される質量比(ナトリウム塩の場合の質量比=モル比×1.032、カリウム塩の場合の質量比=モル比×1.568)によって名称が変わる。例えば、ナトリウム塩の場合、質量比が0.5のものをオルソケイ酸ナトリウム、質量比が1.0のものをメタケイ酸ナトリウム、質量比が1.3〜4のものを一般的にケイ酸ナトリウムと呼ぶ。質量比が1以下のものは、結晶性ケイ酸ナトリウムと呼ばれ、質量比が1より大きいものは非結晶性で、質量比を連続的に変化させることができる。また、ケイ酸ナトリウムの溶液は、質量比、濃度、温度等によって粘度が著しく変化する。即ち、質量比が大きくなるほど、濃度が高くなるほど、又は、温度が低くなるほど、溶液の粘度は高くなる。ケイ酸ナトリウムの溶液には、ケイ酸イオンモノマー、ポリケイ酸イオン、コロイド状のケイ酸イオンミセル等が含まれ、質量比と濃度とによって様々な形態をとる。質量比が1以下のものでは、主としてケイ酸イオンモノマーが存在し、高質量比の溶液では、ケイ酸イオンモノマーの他にダイマーやポリケイ酸イオンミセルが含まれ、質量比の増加に伴ってポリケイ酸イオンミセルの濃度が増加する。このポリケイ酸イオンミセルの増加によって、溶液の質量平均分子量が増加し、粘度が上昇する。一般的に、質量比は2より大きくなると、粘度の上昇に注意が必要である。このようなことから、ナトリウム塩の場合、水溶液の安定性、作業性の点から、メタケイ酸ナトリウムが最も好適に用いられる。また、カリウム塩は、ナトリウム塩に比べ、水に対する溶解性が高いため、水溶液が容易に凝固、分離することはなく、各種のものが使用できる。アルカリ金属ケイ酸塩の含有量は、5〜25質量%がより好ましく、7〜20質量%がさらに好ましい。
【0046】
M
2O・nSiO
2・xH
2O (i)
[M:ナトリウム又はカリウム、n:モル比(SiO
2/M
2O)]
【0047】
アルカリ金属ケイ酸塩に次ぐ、ソルダーレジスト層の溶解拡散能力を有する無機アルカリ性化合物として、アルカリ金属リン酸塩を含むアルカリ水溶液が挙げられる。アルカリ金属リン酸塩としては、アルカリ金属が3原子配位したアルカリ性の強いリン酸三ナトリウム又はリン酸三カリウムが好適に用いられる。アルカリ金属リン酸塩の含有量は、5〜20質量%がより好ましく、7〜15質量%がさらに好ましい。
【0048】
また、無機アルカリ性化合物として炭酸カリウムを含む水溶液も、ソルダーレジスト層をほどよく溶解拡散させることができる。炭酸塩は、ケイ酸塩やリン酸塩に比べると、水和力が大きいが、アルカリ金属として、カリウムは、ナトリウムに比べ、水溶液中におけるイオン化傾向が大きく、ソルダーレジスト層の溶解拡散に有利に作用する。炭酸カリウムの含有量は、3〜15質量%がより好ましく、5〜10質量%がさらに好ましい。
【0049】
アルカリ水溶液が
有機アルカリ性化合物を含有してなる水溶液である場合、アルカリ水溶液に含まれる有機アルカリ性化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキサイド(コリン)から選ばれる少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。また、有機アルカリ性化合物の含有量が5〜25質量%のアルカリ水溶液を好適に使用できる。5質量%未満では、薄膜化処理で面内ムラが発生しやすくなる場合がある。また、25質量%を超えると、薄膜化速度が遅くなる場合がある。有機アルカリ性化合物の含有量は、7〜20質量%がより好ましく、10〜20質量%がさらに好ましい。また、界面活性剤、消泡剤、溶剤等を適宜添加することもできる。アルカリ金属塩を含有してなるアルカリ水溶液を用いた場合、使用するソルダーレジストの組成によっては、ソルダーレジスト層中にアルカリ金属イオンが取り込まれ、絶縁信頼性が低下する場合があるが、有機アルカリ性化合物を含有してなるアルカリ水溶液を用いた場合、絶縁信頼性低下が抑制されるという効果が得られる。
【0050】
アルカリ水溶液の温度は、15〜35℃が好ましく、さらに好ましくは20〜30℃である。温度が低すぎると、ソルダーレジスト層へのアルカリ性化合物の浸透速度が遅くなる場合があり、所望の厚みを薄膜化するのに長時間を要する。一方、温度が高すぎると、ソルダーレジスト層へのアルカリ性化合物の浸透と同時に溶解拡散が進行することにより、面内で膜厚ムラが発生しやすくなる場合があるため好ましくない。
【0051】
ソルダーレジスト層の薄膜化処理において、アルカリ水溶液の液管理方法として、中和滴定法を用いるのがよい。つまり、アルカリ水溶液の薄膜化能力を一定に保つために、液管理の指標として、濃度による管理を行うのがよい。液管理の指標として、pHによる管理も考えられるが、ソルダーレジスト層に含まれるカルボン酸基等の酸基末端を持つアルカリ可溶性樹脂と高濃度のアルカリ水溶液とが接触、反応して、pHが実際の濃度で測定される値よりも低く観測されるため、pHで厳密に液管理することは困難である。また、中和滴定法による濃度管理では、補充液として初期濃度と同濃度のアルカリ水溶液を補充するのがよい。通常、フォトリソグラフィー法によるソルダーレジストパターン形成における低濃度アルカリ水溶液による現像処理等では、初期濃度より高濃度の処理液を補充するのが一般的であるが、本発明に係わるソルダーレジスト層の薄膜化では、アルカリ水溶液の濃度変化が薄膜化に及ぼす影響が大きく、より厳密な濃度管理が必要となる。詳しくは、フォトリソグラフィー法によるソルダーレジストパターン形成における低濃度アルカリ水溶液による現像処理の場合、ソルダーレジスト層が全て溶出される時間よりも1.5〜2.0倍程度の時間で現像処理が実施されるのに対し、本発明に係わるソルダーレジスト層の薄膜化では、所望の量だけ面内均一に薄膜化することが重要となる。そのために、より厳密な濃度管理が必要とされる。また、高濃度のアルカリ水溶液を補充する際には、槽内の液濃度を瞬間的に目標とする濃度になるように機械的な攪拌等の操作を行うのが一般的であるが、アルカリ水溶液が発泡し、膜厚不均一が発生する場合があるため、この点からも、初期濃度と同濃度のアルカリ水溶液を補充することが好ましい。
【0052】
中和滴定法による濃度管理の方法として、具体的には、連続稼働している薄膜化処理装置から所定量のアルカリ水溶液を採取し、pHを測定しながら塩酸又は硫酸を滴下し、中和点に達するまでに添加した酸の量からアルカリ性化合物の濃度を求める。得られた滴定曲線よりアルカリ性化合物の濃度を算出するが、酸性領域ではソルダーレジスト層中に含まれる酸基の影響で滴定曲線がシフトするため、正確な濃度が見積もれない場合がある。そのため、アルカリ領域で濃度を算出する必要がある。この濃度がアルカリ水溶液の所定の範囲外にずれていた場合、初期濃度と同じ濃度のアルカリ水溶液を添加補充する。「所定の範囲」とは、初期濃度に対して、−5%〜+5%の濃度範囲をいい、以下、「目標濃度」ともいう。このような中和滴定によるアルカリ性化合物濃度の測定及びアルカリ水溶液の添加補充という操作を所定時間毎に行うことで、薄膜化能力を一定範囲内に保持することが可能になる。
【0053】
中和滴定からアルカリ水溶液の添加補充までを自動で行うこともできる。自動システムとしては、例えば、少なくとも自動的に所定時間毎にアルカリ水溶液を計量しながらサンプリングする機能(定量ポンプ、計量管等)、pHメータ、液を撹拌する機能(マグネチックスターラー等)、滴定液(酸性液)を滴下する機能(パルスモータ駆動のポンプ等)、推定中和点pHを設定し、該pHになったら滴定液の滴下を停止する機能、滴定液の滴下量を算出する機能、該滴下量からアルカリ性化合物の濃度を算出する機能、目標濃度を設定する機能、[(目標濃度−測定濃度)×アルカリ水溶液タンク容積/目標濃度]で計算される量の初期濃度と同濃度のアルカリ水溶液を供給する機能(定量ポンプ等)、一連の滴定測定完了後、滴定容器等を洗浄する機能を含むシステムが挙げられる。液を補充する場合の計算式は上記を基本とするが、実際のプロセスを見ながら種々の補正をするのが好ましい。
【0054】
上記の例では推定中和点pHを設定し、そのpHになるまでに滴下した酸の量からアルカリ性化合物の濃度を算出したが、測定精度を高めるためには、滴定終了pHとして、中和点pHを過ぎたpH(中和点がpH8ならば、7〜6程度)に設定し、酸滴下開始から滴下終了までの間でpH変化率が最も大きくなる酸滴下量を求め、その点をもって中和点とし、それまでに滴下した酸の量からアルカリ性化合物の濃度を算出するのが好ましい。
【0055】
アルカリ水溶液による薄膜化処理は、浸漬処理、パドル処理、スプレー処理、ブラッシング、スクレーピング等の方法を用いることができるが、浸漬処理が好ましい。浸漬処理以外の処理方法は、アルカリ水溶液中に気泡が発生しやすく、その発生した気泡が薄膜化処理中にソルダーレジスト層表面に付着して、膜厚が不均一となる場合がある。スプレー処理等を使用する場合には、気泡が発生しないように、スプレー圧をできるだけ小さくすることが好ましい。
【0056】
工程(B1)、(B2)、(B3)及び(D)の後には、水によって十分に回路基板を洗浄するのがよい。この水による回路基板洗浄により、除去すべきソルダーレジスト層を完全に溶解除去させる。水洗処理の方法として、浸漬処理、パドル処理、スプレー処理等があり、ソルダーレジスト層の溶解拡散速度と液供給の均一性の点から、スプレー処理が最も適している。また、水洗水の温度は、25〜45℃がより好ましく、27〜40℃がさらに好ましい。
【0057】
本発明のソルダーレジストパターンの形成方法(15)のように、ソルダーレジスト層を薄膜化する工程(B1)、(B2)、(B3)又は(D)の後に、(E)アルカリ性化合物を含有し、該アルカリ性化合物の含有量がアルカリ水溶液よりも少なく、pH5.0〜10.0、温度22〜50℃の水溶液で処理する工程を含むことが好ましい。なお、工程(E)は、水による洗浄の前に行う。工程(E)において、アルカリ性化合物を含有する水溶液はアルカリ領域に優れた緩衝能力を有するため、急激なpH上昇を防止することができ、優れた面内均一性を維持するのに役立つ。また、pH5.0〜10.0の水溶液を使用することにより、ソルダーレジスト層の溶解拡散性を一定に保つことができ、安定した連続薄膜化処理が可能になる。さらに、水溶液の温度を22〜50℃とすることで、粗面化された接続パッド表面にソルダーレジスト残渣を残さずに処理できるという効果が得られる。
【0058】
工程(E)の水溶液におけるアルカリ性化合物としては、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩等の無機アルカリ性化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキサイド(コリン)等の有機アルカリ性化合物が挙げられる。工程(E)の前に行われる工程(B1)、(B2)、(B3)又は(D)で使用されるアルカリ水溶液中のアルカリ性化合物と、工程(E)で使用されるアルカリ性化合物とは、同じものであっても違うものであってもよいが、通常、2つの工程が連続的に行われ、前の工程から後の工程への移行の際に、アルカリ性化合物の混入があることを考えると、同じアルカリ性化合物が含まれるのが一般的である。
【0059】
工程(E)の水溶液におけるアルカリ性化合物の含有量は、工程(B1)、(B2)、(B3)又は(D)で使用されるアルカリ水溶液における含有量よりも少ない。すなわち、工程(B1)、(B2)、(B3)又は(D)で使用されるアルカリ水溶液よりも希薄な水溶液を工程(E)で使用する。工程(E)の水溶液が、工程(B1)、(B2)、(B3)又は(D)で使用されるアルカリ水溶液よりも濃い場合、ソルダーレジスト層の薄膜化量の制御が困難になるという問題が発生する。
【0060】
工程(E)の水溶液のpHが5.0未満の場合、水溶液中に溶け込んだソルダーレジスト成分が凝集し、不溶性のスラッジとなって薄膜化後のソルダーレジスト層表面に付着する恐れがある。一方、工程(E)の水溶液のpHが10.0を超えると、ソルダーレジスト層の溶解拡散が促進され、面内で膜厚ムラが発生しやすくなることがある。また、水溶液のpHは、硫酸、リン酸、塩酸等を用いて調整することができる。
【0061】
なお、アルカリ水溶液及び工程(E)の水溶液のpHは、温度依存性があるが、本発明に係わるpHは、液温22℃における値を指す。pHガラス電極の温度特性に対応した温度補償機能(pHガラス電極の温度による性質の変化を補正する機能)と水溶液の温度特性に対応した温度換算機能(一定の温度でのpH値に換算する機能)を備えたpHメータを用いて測定を行うことにより、22℃における水溶液のpH値を調べることができる。
【0062】
工程(E)において、水溶液の温度は、25〜45℃がより好ましく、27〜40℃がさらに好ましい。工程(E)における水溶液の温度は、ソルダーレジスト層の溶解拡散効率に影響し、22℃未満ではソルダーレジスト層成分の溶解不良が起こり、粗面化された接続パッド表面にソルダーレジスト残渣が残りやすい場合がある。一方、50℃を超えると、水溶液の蒸発や連続運転での温度管理の問題、装置設計上の制約が発生する場合があり好ましくない。
【0063】
さらに、工程(E)の水溶液に消泡(抑泡、破泡)に効果的な消泡剤を添加することができる。ソルダーレジスト層の薄膜化処理を連続的に実施し、水溶液中にソルダーレジスト成分が大量に溶け込むと、発泡が激しくなり、連続運転ができない状態になる。消泡剤はこのような発泡を抑制するものであるが、大別するとシリコーン系消泡剤と有機系消泡剤がある。
【0064】
シリコーン系消泡剤は、消泡の速効性に優れるが、消泡能力の持続性や相溶性、濡れ性の点で劣っており、はじきやクレーターといった欠陥を引き起こしやすい。一方、有機系消泡剤は、界面活性剤系、パラフィン系、鉱物油系等があるが、水性の発泡液の消泡において、シリコーン系消泡剤に比べて優れた持続性を示す。界面活性剤系消泡剤としては、乳化剤を用いてHLBの低い界面活性剤をエマルジョン分散させたものが多く用いられるが、このタイプの消泡剤は、比較的持続性があるものの、消泡効果が他に比べて小さいものが多い。その中で、アセチレン基を中央にもち左右対称の非常に安定な分子構造を有する下記式1又は式2で表される界面活性剤は、分子量も小さく、表面張力を大きく下げる効果があり、消泡性や分散性といった働きだけでなく、濡れ性や相溶性にも優れた性能を発揮する。
【0066】
式1及び式2において、m及びnは0又は1以上の整数で、かつ、0≦m+n≦30である。
【0067】
このような界面活性剤としては、例えば、日信化学工業社製のサーフィノール(登録商標)104、サーフィノール(登録商標)DF110D、サーフィノール(登録商標)MD−20、サーフィノール(登録商標)420、サーフィノール(登録商標)440、サーフィノール(登録商標)465、サーフィノール(登録商標)485、オルフィン(登録商標)AF−103、オルフィン(登録商標)E1004等が挙げられる。特に、消泡性の点からは、サーフィノール(登録商標)104、オルフィン(登録商標)AF−103が好ましく、水溶性の点からは、サーフィノール(登録商標)465、サーフィノール(登録商標)485、オルフィン(登録商標)E1004等が好ましいが、これらに加え、相溶性、消泡効果の持続性、溶け込み量の増加に伴う油状スカムの分散性を考慮すると、サーフィノール(登録商標)MD−20の使用が最も好ましい。
【0068】
これらの界面活性剤は、溶解分散するソルダーレジスト量1gあたり、0.01〜5.0g添加するのが好ましく、さらに好ましくは0.05〜2.0gである。0.01g未満では、発泡に対する消泡効果が不十分となる場合がある。5.0gを超えると、界面活性剤の層分離が発生する可能性がある。また、界面活性剤は、水溶液に分散させた状態で添加することにより、速やかに拡散し消泡効果を発揮する。
【0069】
さらに、パラフィン系消泡剤は、乳化剤を用いてパラフィンワックスあるいはその変性物をエマルジョン分散させたものであるが、成分として鉱物油を含む消泡剤であり好適に用いられる。鉱物油の含有量、その他含まれる成分により、消泡効果と持続性を両立させることが可能となる。用いられる鉱物油としては、石油原油あるいはその加工物から得られる主としてパラフィン系やナフテン系の飽和炭化水素、例えば、流動パラフィン、潤滑油、ガソリン、灯油、軽油、重油、マシン油などが挙げられる。鉱物油系消泡剤は、鉱物油を主要な消泡成分とするものであり、消泡効果を高めるために金属石鹸、二酸化珪素などを混合したものもある。鉱物油を主要な消泡成分とする消泡剤は、水への分散性が極めて悪く、水面に分離した油分が浮遊したり、その分離した油分がソルダーレジスト層表面に付着したり、さらには浴槽を著しく汚染するという問題がある。
【0070】
鉱物油を含む消泡剤は、鉱物油の含有量が20質量%以下であるものがよい。鉱物油は一般的に、抑泡効果が大きいものの持続性がないとされているが、鉱物油を20質量%以下で含有させ、他の成分で持続性を補わせることにより、抑泡効果と持続性が両立される。消泡剤に含まれる鉱物油の含有量は、10〜20質量%がより好ましく、15〜20質量%がさらに好ましい。鉱物油の含有量が20質量%以下である消泡剤としては、一般に市販のものを使用することができるが、具体的には、栗田工業(株)製のクリレス(登録商標)505、514、521などを挙げることができる。消泡剤の添加量は特に制限はないが、濃度として1〜10000ppmが好ましく、10〜1000ppmがより好ましい。
【0071】
本発明に係わるソルダーレジスト層の薄膜化処理において、薄膜化によって除去されたソルダーレジスト成分の工程(E)の水溶液中への溶け込み濃度は、0.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.3質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下である。連続薄膜化処理によって、工程(E)の水溶液中へのソルダーレジスト成分の溶け込み量が多くなると、薄膜化処理したソルダーレジスト表面に曇りムラが発生し、その部分で膜厚不均一が発生する場合がある。曇りムラは、薄膜化処理において、ソルダーレジスト層の分散性が悪くなり溶解不良が発生し、それによる不溶解成分の析出が原因であると考えられるが詳細は不明である。また、工程(E)水溶液中に溶け込んだソルダーレジスト成分は、フィルターを循環させることで、随時、除去することができる。フィルターの種類は特に制限なく用いることができるが、例えば、アドバンテック東洋(株)製のデプスカートリッジフィルターやワインドカー
トリッジフィルター等を用いることができる。使用するフィルターの本数や孔径などは必要に応じて、自由に選択することができる。
【0072】
ソルダーレジスト成分の工程(E)の水溶液中へ溶け込み濃度の測定方法としては、絶乾質量からの差分として測定することができる。具体的には、例えば、ソルダーレジスト成分が溶け込んだ水溶液10gをシャーレに採取し、温度100℃の乾燥機に入れ、完全に水分を蒸発させる。次に、蒸発後の質量を測定することで、溶け込み液10g中に溶解していたソルダーレジスト成分の量(質量%)を計算することができる。
【0073】
工程(E)における液供給方法としては、ソルダーレジスト層の溶解拡散速度と液供給の均一性の点からスプレー処理が最も好ましい。また、スプレー圧は、0.01〜0.5MPaとするのが好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.3MPaである。さらに、スプレーの方法は、ソルダーレジスト層表面に効率よく液流れを作るために、ソルダーレジスト層表面に垂直な方向に対して傾いた方向から噴射するのがよい。
【0074】
工程(B1)、(B2)、(B3)又は(D)の終了から水による洗浄開始までの時間及び工程(B1)、(B2)、(B3)又は(D)の終了から工程(E)の開始までの時間は、6秒以下が好ましく、より好ましくは4秒以下がよい。ソルダーレジスト層の薄膜化量は、工程(B1)、(B2)、(B3)又は(D)の開始から水による洗浄又は工程(E)の開始直前までの合計時間によって決定される。つまり、工程(B1)、(B2)、(B3)又は(D)の終了から水による洗浄又は工程(E)の開始までの時間も薄膜化量に影響する。ここで、薄膜化処理装置を用いて薄膜化処理を行う場合、工程(B1)、(B2)、(B3)又は(D)から工程(E)に移行する時間をゼロにすることは、搬送速度を考えても実質不可能である。工程(B1)、(B2)、(B3)又は(D)の終了から工程(E)の開始までの時間が長くなると、ソルダーレジスト層へのアルカリ水溶液の膨潤、浸透の進行程度が不均一となり、面内で膜厚のムラが発生する場合がある。
【実施例】
【0075】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0076】
(実施例1)
<工程(A1)>
銅張積層板(面積170mm×200mm、銅箔厚18μm、基材厚み0.4mm)にサブトラクティブ法を用いて、配線幅50μm、配線幅間隔50μmの接続パッドを有する回路基板を作製した。次に、真空ラミネータを用いて、厚さ30μmのソルダーレジストフィルム(太陽インキ製造(株)製、商品名:PFR−800 AUS410)を上記回路基板上に真空熱圧着させた(ラミネート温度75℃、吸引時間30秒、加圧時間10秒)。これにより絶縁性基板表面からソルダーレジスト層表面までの膜厚が38μmのソルダーレジスト層を形成した。
【0077】
<工程(B1)>
表1記載のアルカリ水溶液(液温25℃)を用いて、絶縁性基板表面からのソルダーレジスト層の厚みが平均12μmになるように、浸漬方式により、表1に記載の時間で薄膜化処理を行い、十分な水洗処理(液温25℃)、冷風乾燥を経て、薄膜化されたソルダーレジスト層を得た。薄膜化処理後、薄膜化した部分のソルダーレジスト層の厚みを10点測定し、最大値及び最小値を調べた。結果を表1に示す。膜厚最大値と膜厚最小値の差は十分に小さく、良好な面内均一性が得られた。
【0078】
【表1】
【0079】
次に、ソルダーレジスト層を硬化させるため、露光量500mJ/cm
2で全面露光し、続いて、150℃で60分間熱硬化処理を実施し、ソルダーレジストパターンを形成した。形成されたソルダーレジストパターンは
図10に示される構造であり、これを光学顕微鏡で観察した結果、厚さ18μmの接続パッド6はその金属表面が露出していて、隣接する接続パッド6間に厚さ12μmのソルダーレジスト層3が埋め込まれていた。
【0080】
(実施例2)
<工程(A2)>
銅張積層板(面積170mm×200mm、銅箔厚18μm、基材厚み0.4mm)にサブトラクティブ法を用いて、配線幅50μm、配線幅間隔50μmの導体配線を有する回路基板を作製した。次に、真空ラミネータを用いて、厚さ30μmのソルダーレジストフィルム(太陽インキ製造(株)製、商品名:PFR−800 AUS410)を上記回路基板上に真空熱圧着させた(ラミネート温度75℃、吸引時間30秒、加圧時間10秒)。これにより絶縁性基板表面からソルダーレジスト層表面までの膜厚が38μmのソルダーレジスト層を形成した。
【0081】
<工程(C)>
導体配線の一部を接続パッドとして、その接続パッドの端部から50μm以外の領域のソルダーレジスト層を硬化させるため、露光量300mJ/cm
2でフォトマスクによる密着露光を実施した。
【0082】
<工程(B2)>
表1記載のアルカリ水溶液(液温25℃)を用いて、非露光部の絶縁性基板表面からのソルダーレジスト層の厚みが平均12μmになるように、浸漬方式により、表1に記載の時間で薄膜化処理を行い、十分な水洗処理(液温25℃)、冷風乾燥を経て、薄膜化されたソルダーレジスト層を得た。薄膜化処理後、薄膜化した部分のソルダーレジスト層の厚みを10点測定し、最大値及び最小値を調べた。結果を表1に示す。膜厚最大値と膜厚最小値の差は十分に小さく、良好な面内均一性が得られた。
【0083】
次に、ソルダーレジスト層を硬化させるため、露光量500mJ/cm
2で全面露光し、続いて、150℃で60分間熱硬化処理を実施した。形成されたソルダーレジストパターンは
図11に示される構造であり、これを光学顕微鏡で観察した結果、厚さ18μmの導体配線2が厚さ38μmのソルダーレジスト層3によって被覆され、厚さ18μmの接続パッド6はその金属表面が露出していて、隣接する接続パッド6間に厚さ12μmのソルダーレジスト層3が埋め込まれていた。
【0084】
(実施例3)
<工程(A2)>
銅張積層板(面積170mm×200mm、銅箔厚18μm、基材厚み0.4mm)にサブトラクティブ法を用いて、配線幅50μm、配線幅間隔50μmの導体配線を有する回路基板を作製した。次に、真空ラミネータを用いて、厚さ30μmのソルダーレジストフィルム(太陽インキ製造(株)製、商品名:PFR−800 AUS410)を上記回路基板上に真空熱圧着させた(ラミネート温度75℃、吸引時間30秒、加圧時間10秒)。これにより絶縁性基板表面からソルダーレジスト層表面までの膜厚が38μmのソルダーレジスト層を形成した。
【0085】
<工程(D)>
表1記載のアルカリ水溶液(液温25℃)を用いて、絶縁性基板表面からのソルダーレジスト層の厚みが平均28μmになるまで、浸漬方式により、薄膜化処理を行い、十分な水洗処理(液温25℃)、冷風乾燥を経て、薄膜化されたソルダーレジスト層を得た。
【0086】
<工程(C)>
導体配線の一部を接続パッドとして、その接続パッドの端部から50μm以外の領域のソルダーレジスト層を硬化させるため、露光量300mJ/cm
2でフォトマスクによる密着露光を実施した。
【0087】
<工程(B2)>
表1記載のアルカリ水溶液(液温25℃)を用いて、非露光部の絶縁性基板表面からのソルダーレジスト層の厚みが平均12μmになるように、浸漬方式により、表1に記載の時間で薄膜化処理を行い、十分な水洗処理(液温25℃)、冷風乾燥により薄膜化されたソルダーレジスト層を得た。薄膜化処理後、薄膜化した部分のソルダーレジスト層の厚みを10点測定し、最大値及び最小値を調べた。結果を表1に示す。膜厚最大値と膜厚最小値の差は十分に小さく、良好な面内均一性が得られた。
【0088】
次に、ソルダーレジスト層を硬化させるため、露光量500mJ/cm
2で全面露光し、続いて、150℃で60分間熱硬化処理を実施した。形成されたソルダーレジストパターンは
図12に示される構造であり、これを光学顕微鏡で観察した結果、厚さ18μmの導体配線2が厚さ28μmのソルダーレジスト層3によって被覆され、厚さ18μmの接続パッド6はその金属表面が露出していて、隣接する接続パッド6間に厚さ12μmのソルダーレジスト層3が埋め込まれていた。
【0089】
(実施例4)
<工程(A3)>
銅張積層板(面積170mm×200mm、基材厚み0.4mm)にセミアディティブ法を用いて、厚み25μm、配線幅50μm、配線幅間隔50μmの接続パッドと厚み15μm、配線幅50μm、配線幅間隔50μmの導体配線を有する回路基板を作製した。次に、真空ラミネータを用いて、厚さ30μmのソルダーレジストフィルム(太陽インキ製造(株)製、商品名:PFR−800 AUS410)を上記回路基板上に真空熱圧着させた(ラミネート温度75℃、吸引時間30秒、加圧時間10秒)。これにより絶縁性基板表面からソルダーレジスト層表面までの膜厚が38μmのソルダーレジスト層を形成した。
【0090】
<工程(B3)>
表1記載のアルカリ水溶液(液温25℃)を用いて、絶縁性基板表面からのソルダーレジスト層の厚みが平均20μmになるように、浸漬方式により、表1に記載の時間で薄膜化処理を行い、十分な水洗処理(液温25℃)、冷風乾燥を経て、薄膜化されたソルダーレジスト層を得た。薄膜化処理後、薄膜化した部分のソルダーレジスト層の厚みを10点測定し、最大値及び最小値を調べた。結果を表1に示す。膜厚最大値と膜厚最小値の差は十分に小さく、良好な面内均一性が得られた。
【0091】
次に、ソルダーレジスト層を硬化させるため、露光量500mJ/cm
2で全面露光し、続いて、150℃で60分間熱硬化処理を実施した。形成されたソルダーレジストパターンは
図13に示される構造であり、厚さ15μmの導体配線2は厚さ20μmのソルダーレジスト層3に完全に被覆され、厚さ25μmの接続パッド6はその金属表面が露出していて、隣接する接続パッド6間に厚さ20μmのソルダーレジスト層3が埋め込まれていた。
【0092】
(実施例5)
<工程(A3)>
銅張積層板(面積170mm×200mm、基材厚み0、4mm)にセミアディティブ法を用いて、配線幅50μm、配線幅間隔50μmで、各配線に厚み25μmの接続パッドと厚み15μmの導体配線が階段状に形成された回路基板を作製した。次に、真空ラミネータを用いて、厚さ30μmのソルダーレジストフィルム(太陽インキ製造(株)製、商品名:PFR−800 AUS410)を上記回路基板上に真空熱圧着させた(ラミネート温度75℃、吸引時間30秒、加圧時間10秒)。これにより絶縁性基板表面からソルダーレジスト層表面までの膜厚が38μmのソルダーレジスト層を形成した。
【0093】
<工程(B3)>
表1記載のアルカリ水溶液(液温25℃)を用いて、絶縁性基板表面からのソルダーレジスト層の厚みが平均20μmになるように、浸漬方式により、表1に記載の時間で薄膜化処理を行い、十分な水洗処理(液温25℃)、冷風乾燥を経て、薄膜化されたソルダーレジスト層を得た。薄膜化処理後、薄膜化した部分のソルダーレジスト層の厚みを10点測定し、最大値及び最小値を調べた。結果を表1に示す。膜厚最大値と膜厚最小値の差は十分に小さく、良好な面内均一性が得られた。
【0094】
次に、ソルダーレジスト層を硬化させるため、露光量500mJ/cm
2で全面露光し、続いて、150℃で60分間熱硬化処理を実施した。形成されたソルダーレジストパタは
図14に示される構造であり、厚さ15μmの導体配線2は厚さ20μmのソルダーレジスト層3に完全に被覆され、厚さ25μmの接続パッド6はその金属表面が露出していて、隣接する接続パッド6間に厚さ20μmのソルダーレジスト層3が埋め込まれていた。
【0095】
(比較例1)
銅張積層板(面積170mm×200mm、銅箔厚18μm、基材厚み0.4mm)にサブトラクティブ法を用いて、配線幅50μm、配線幅間隔50μmの導体配線を有する回路基板を作製した。次に、真空ラミネータを用いて、厚さ30μmのソルダーレジストフィルム(太陽インキ製造(株)製、商品名:PFR−800 AUS410)を上記回路基板上に真空熱圧着させた(ラミネート温度75℃、吸引時間30秒、加圧時間10秒)。これにより絶縁性基板表面からソルダーレジスト層表面までの膜厚が38μmのソルダーレジスト層を形成した。
【0096】
導体配線の一部を接続パッドとして、その接続パッドの端部から50μm以外の領域のソルダーレジスト層を硬化させるため、露光量300mJ/cm
2でフォトマスクによる密着露光を実施した。
【0097】
次に、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温30℃)を用いて、非露光部のソルダーレジスト層を現像処理によって全て除去し、150℃で60分間熱硬化処理を実施した。形成されたソルダーレジストパターンは
図15に示される構造であり、厚さ18μmの導体配線2が厚さ38μmのソルダーレジスト層3によって被覆されていた。
図15に示される構造では、隣接する接続パッド6間にソルダーレジスト層3がないため、実装工程において、半田ブリッジによる接続不良が発生した。
【0098】
(比較例2)
銅張積層板(面積170mm×200mm、銅箔厚18μm、基材厚み0.4mm)にサブトラクティブ法を用いて、配線幅50μm、配線幅間隔50μmの導体配線を有する回路基板を作製した。次に、真空ラミネータを用いて、厚さ30μmのソルダーレジストフィルム(太陽インキ製造(株)製、商品名:PFR−800 AUS410)を上記回路基板上に真空熱圧着させた(ラミネート温度75℃、吸引時間30秒、加圧時間10秒)。これにより絶縁性基板表面からソルダーレジスト層表面までの膜厚が38μmのソルダーレジスト層を形成した。
【0099】
導体配線の一部を接続パッドとして、その接続パッドの端部から50μm以外の領域と、隣接する接続パッド間の中間点から幅20μmの領域のソルダーレジスト層を硬化させるため、露光量300mJ/cm
2でフォトマスクによる密着露光を実施した。
【0100】
次に、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温30℃)を用いて、非露光部のソルダーレジスト層を現像処理によって全て除去し、150℃で60分間熱硬化処理を実施した。形成されたソルダーレジストパターンは
図16に示される構造であり、厚さ18μmの導体配線2が厚さ38μmのソルダーレジスト層3によって被覆され、隣接する接続パッド6間の中間点から幅20μmの部分に厚さ38μmのソルダーレジスト層3があった。しかし、観察箇所によっては、露光工程における位置ずれによって、絶縁性基板1上のソルダーレジスト層3が接続パッド6と接触してしまっていた。このような状態なので、電極端子と接続パッドの電気的な接続を確実にするための半田量を確保できなくなり、接合時に接続不良を引き起こし、位置ずれしたソルダーレジスト層3が部品実装の邪魔になった。
【0101】
(比較例3)
銅張積層板(面積170mm×200mm、銅箔厚18μm、基材厚み0.4mm)にサブトラクティブ法を用いて、配線幅50μm、配線幅間隔50μmの導体配線を有する回路基板を作製した。次に、真空ラミネータを用いて、厚さ30μmのソルダーレジストフィルム(太陽インキ製造(株)製、商品名:PFR−800 AUS410)を上記回路基板上に真空熱圧着させた(ラミネート温度75℃、吸引時間30秒、加圧時間10秒)。これにより絶縁性基板表面からソルダーレジスト層表面までの膜厚が38μmのソルダーレジスト層を形成した。
【0102】
ソルダーレジスト層全面に露光量1000mJ/cm
2で露光し、その後、150℃で60分間熱硬化処理を実施した。熱硬化処理後のソルダーレジスト層表面にウェットブラスト用のパターンを形成し、それをマスクとして接続パッド表面が露出するまでウェットブラスト処理を行った。その後、マスクパターンを除去した。形成されたソルダーレジストパターンは
図11に示される構造であり、これを光学顕微鏡で観察した結果、厚さ18μmの導体配線2が厚さ38μmのソルダーレジスト層3によって被覆され、厚さ18μmの接続パッド6はその金属表面が露出していて、隣接する接続パッド6間にソルダーレジスト層3が埋め込まれていた。しかし、隣接する接続パッド6間に埋め込まれたソルダーレジスト層の厚みにばらつきがあり、接続パッド6の金属表面が完全に露出されずに、ソルダーレジスト層が残っている箇所があった。また、表面が露出された接続パッド6にはブラスト処理によって付けられた傷が多数確認された。
【0103】
(実施例6〜27)
表1記載のアルカリ水溶液を用いて、実施例2と同じ方法で、ソルダーレジストパターンの形成を行った。薄膜化処理後、薄膜化した部分のソルダーレジスト層の厚みを10点測定し、最大値及び最小値を調べた。結果を表1に示す。実施例2、6〜27において、無機アルカリ性化合物の含有量が3〜25質量%の水溶液を用いた場合(実施例2、7〜27)には、膜厚最大値と膜厚最小値の差は十分に小さく、薄膜化後の面内均一性が非常に良好なソルダーレジストパターンが形成されていた。無機アルカリ性化合物の含有量が1質量%である実施例6においては、膜厚最大値と膜厚最小値の差がやや大きく、薄膜化後の面内均一性が悪化する傾向が確認された。薄膜化速度については、実施例2、6〜12の比較では濃度7質量%の場合、実施例13〜18の比較では濃度20質量%の場合に、薄膜化速度が最大となり、それよりも高濃度では、薄膜化速度が低下する傾向があった。また、無機アルカリ性化合物の種類によって、薄膜化処理に要する時間は異なり、特に、メタケイ酸ナトリウムを用いた場合に非常に速い薄膜化速度が得られた。
【0104】
(実施例28〜41)
銅張積層板にサブトラクティブ法を用いて導体配線を有する回路基板を作製した後、化学研磨処理によって導体回路表面を粗面化し、アルカリ水溶液としてそれぞれ表2に記載のアルカリ水溶液を用いた以外は、実施例2と同じ方法でソルダーレジストパターンの形成を行った。薄膜化処理によって露出された接続パッドの粗面化表面におけるソルダーレジスト残渣の有無を調べるため、露出した銅表面に対して無電解ニッケルめっき処理を行った。また、必要に応じてめっき前処理を行い、残渣がある場合には、その除去性についても調査を行った。評価基準は以下の通りである。結果を表2に示す。特に、メタケイ酸ナトリウムを含むアルカリ水溶液を用いた場合、粗面化表面上においてもソルダーレジスト成分の残渣が確認されなかった。
【0105】
○:ソルダーレジスト成分の残渣なし
△:極微量の残渣があるが、めっき前処理によって容易に除去されるレベル
×:多量の残渣があり、めっき前処理によって容易に除去されないレベル
【0106】
【表2】
【0107】
(実施例42〜55)
表3に記載のアルカリ水溶液を用いた以外は、実施例2と同じ方法でソルダーレジストパターンの形成を行った。薄膜化処理後、薄膜化した部分のソルダーレジスト層の厚みを10点測定し、最大値及び最小値を調べた。結果を表3に示す。有機アルカリ性化合物の含有量が5〜25質量%の水溶液を用いた場合には、膜厚最大値と膜厚最小値の差は十分に小さく、薄膜化後の面内均一性が非常に良好なソルダーレジストパターンが形成されていた。有機アルカリ性化合物の含有量が3質量%以下である実施例42、実施例43においては、膜厚最大値と膜厚最小値の差がやや大きく、薄膜化後の面内均一性が悪化する傾向が確認された。
【0108】
【表3】
【0109】
(実施例56〜63)
銅張積層板にサブトラクティブ法を用いて導体配線を有する回路基板を作製した後、化学研磨処理によって導体回路表面を粗面化し、アルカリ水溶液としてそれぞれ表4に記載のアルカリ水溶液を用いた以外は、実施例2と同じ方法でソルダーレジストパターンの形成を行った。薄膜化処理によって露出された接続パッドの粗面化表面におけるソルダーレジスト残渣の有無を調べるため、露出した銅表面に対して無電解ニッケルめっき処理を行った。また、必要に応じてめっき前処理を行い、残渣がある場合には、その除去性についても調査を行った。評価基準は以下の通りである。結果を表4に示す。有機アルカリ性化合物を用いた場合でも、粗面化表面上のソルダーレジスト成分の残渣はめっき前処理によって容易に除去できるレベルであり、実用上問題になるものはなかった。
【0110】
【表4】
【0111】
<ナトリウムイオン濃度の測定>
実施例1、実施例2、実施例19、実施例47、実施例53、比較例1において作製したソルダーレジストパターンをそれぞれ100℃の熱水でイオン抽出した後、抽出液からイオンクロマトグラフィー法によりナトリウムイオン濃度を測定した。結果を表5に示す。有機アルカリ性化合物を含有するアルカリ水溶液を用いた場合、ソルダーレジスト層中へのナトリウムイオンの混入はほとんどなかった。一方、無機アルカリ性化合物を含有するアルカリ水溶液を用いた場合には、比較例1における現像処理と同等程度のソルダーレジスト層中へのナトリウムイオンの混入が認められた。ただ、実施例1において、無機アルカリ性化合物を用いてソルダーレジスト層全面を薄膜化処理した場合には、ナトリウムイオンの混入量は少なかった。このことから、ナトリウムイオンの混入は、主にソルダーレジスト層の露光部が存在した場合に多くなる傾向があることが分かった。
【0112】
【表5】
【0113】
(実施例64〜91)
ソルダーレジスト層の薄膜化処理において、表6記載のアルカリ水溶液(液温25℃)を使用し、かつ、水洗処理の前に、表7に示す工程(E)の水溶液を使用してスプレー処理(スプレー圧0.20MPa)を行った以外は、実施例28と同じ方法で、ソルダーレジストパターンの形成を行った。また、工程(E)の水溶液のpHは、希薄濃度の硫酸を添加することによって調整した。薄膜化処理後、薄膜化した部分のソルダーレジスト層の厚みを10点測定し、最大値及び最小値を調べた。結果を表7に示す。工程(E)の水溶液のpHが5.0〜10.0では、膜厚最大値と膜厚最小値の差は小さく、薄膜化後の面内均一性は良好だった。工程(E)の水溶液のpHが10.3である実施例67では、膜厚最大値と膜厚最小値の差がやや大きく、薄膜化後の面内均一性が悪化する傾向が確認された。
【0114】
さらに、薄膜化処理によって露出された接続パッドの粗面化表面におけるソルダーレジスト残渣の有無を調べるため、露出した銅表面に対し無電解ニッケルめっき処理を行った。また、必要に応じてめっき前処理を行い、残渣がある場合には、その除去性についても調査を行った。結果を表7に示す。工程(E)の水溶液の液温が22〜50℃の場合、温度上昇ととともにソルダーレジスト成分の残渣残りが発生しにくくなる傾向があり、27℃以上では残渣残りは確認されなかった。工程(E)の水溶液の液温が20℃である実施例68、実施例76、実施例86では、ソルダーレジスト成分の残渣が残りやすくなる傾向が確認された。
【0115】
【表6】
【0116】
【表7】
【0117】
(実施例92〜93)
連続薄膜化処理の安定性を調べるため、ソルダーレジスト層の薄膜化処理において、表8記載の示すアルカリ水溶液(25℃)を使用し、かつ、水洗処理の前に、表8に示す工程(E)の水溶液を使用してスプレー処理(スプレー圧0.20MPa)を行った以外は、実施例2と同じ方法で、ソルダーレジストパターンの形成を行った。連続薄膜化処理中、1枚処理毎に工程(E)の水溶液のpHは調整せず、薄膜化処理1枚目と薄膜化処理10枚目において、薄膜化した部分のソルダーレジスト層の厚みを10点測定し、最大値及び最小値を調べた。工程(E)の水溶液のpHの値とともに結果を表9に示す。アルカリ水溶液による処理の後、水洗処理によって薄膜化を行った実施例2、実施例20では、薄膜化処理枚数の増加とともに膜厚最大値と膜厚最小値の差が大きくなり、薄膜化後の面内均一性が悪化する傾向があった。水洗処理の前に工程(E)を行った実施例92、実施例93では、工程(E)の水溶液が緩衝能力を有するため、10枚薄膜化処理後における該水溶液のpHは10未満であり、膜厚最大値と膜厚最小値の差も小さく、薄膜化後の面内均一性は良好だった。
【0118】
【表8】
【0119】
【表9】
【0120】
(実施例94)
ソルダーレジスト層の薄膜化処理において、アルカリ水溶液をスプレー圧0.1MPaで噴射するスプレー処理で行った以外は、実施例2と同じ方法でソルダーレジストパターンの形成を行った。薄膜化後のソルダーレジスト層の厚みが平均12μmになるように、スプレー噴射時間を調整した。アルカリ水溶液をスプレー噴射によって供給する際、アルカリ水溶液中に大量に発生した気泡が薄膜化すべきソルダーレジスト層表面に付着し、局所的に薄膜化されない厚膜部分が膜厚ムラとして確認された。そこで、気泡が発生しないようにスプレー圧を0.03MPaまで低くし、アルカリ水溶液噴射後の液の回収経路にも泡トラップ用のフィルターを配置したところ、上記で発生したような局所的な膜厚ムラは実用上問題にならないレベルまで低減した。