(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871403
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】処理システムにおけるイオンの質量、エネルギー、および角度をモニターする技術および装置
(51)【国際特許分類】
H01J 49/40 20060101AFI20160216BHJP
G01N 27/62 20060101ALI20160216BHJP
H01J 49/46 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
H01J49/40
G01N27/62 E
H01J49/46
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-548620(P2013-548620)
(86)(22)【出願日】2012年1月10日
(65)【公表番号】特表2014-504782(P2014-504782A)
(43)【公表日】2014年2月24日
(86)【国際出願番号】US2012020780
(87)【国際公開番号】WO2012096959
(87)【国際公開日】20120719
【審査請求日】2014年11月21日
(31)【優先権主張番号】12/987,950
(32)【優先日】2011年1月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500324750
【氏名又は名称】バリアン・セミコンダクター・エクイップメント・アソシエイツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ゴデ、ルードビック
(72)【発明者】
【氏名】リービット、クリストファー、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】クー、ボン、ウーン
(72)【発明者】
【氏名】ルノー、アンソニー
【審査官】
桐畑 幸▲廣▼
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−529765(JP,A)
【文献】
特表2011−512627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/40
H01J 49/46
G01N 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に入射し、イオンエネルギーを保有するイオン種の角度分布をモニターする飛行時間(TOF)型イオンセンサーシステムであって、
前記イオン種から一パルスのイオンを受け取る第1端と、前記一パルスのイオンのうち重いイオンおよび軽いイオンがそれぞれパケットとして到達する第2端とを有するドリフト管と、
前記ドリフト管の前記第2端に配置され、前記一パルスのイオンから引き出され、かつ異なるイオン質量にそれぞれ対応するイオンの前記パケットを検出するイオン検出器と
を備え、
前記TOF型イオンセンサーシステムは、前記ドリフト管の角度を前記基板の平面に対して変化させる
TOF型イオンセンサーシステム。
【請求項2】
複数回のTOF測定において、対応する複数の前記ドリフト管の角度で、イオンを検出する請求項1に記載のTOF型イオンセンサーシステム。
【請求項3】
前記ドリフト管の角度を前記基板の平面に対して変化させる位置決め装置をさらに備える請求項1または2に記載のTOF型イオンセンサーシステム。
【請求項4】
前記異なるイオン質量は、前記パケットの異なる到達時間にそれぞれ対応する請求項1から3のいずれか1項に記載のTOF型イオンセンサーシステム。
【請求項5】
前記TOF型イオンセンサーシステムの筺体内に配置された一セットの電極をさらに備え、
前記一セットの電極は、
閉モードにおいて、逆電位を使用して、前記ドリフト管に入るイオンを阻止し、開モードにおいて、前記ドリフト管に向けてイオンを通過させるゲート電極と、
前記筺体に入るイオンに、前記イオンが前記ドリフト管に入る前に、減速電位を供給する減速電極と
を含み、
前記イオン検出器では、異なる質量を持つイオンを分解可能である
請求項1から4のいずれか1項に記載のTOF型イオンセンサーシステム。
【請求項6】
前記イオン種のエネルギーが閾値より高い場合、減速モードで動作する請求項5に記載のTOF型イオンセンサーシステム。
【請求項7】
所定のエネルギーを保有するイオンを第1検出器に向けて偏向させるエネルギー分析器をさらに備える請求項1から6のいずれか1項に記載のTOF型イオンセンサーシステム。
【請求項8】
前記ドリフト管の前記第2端を出射し、前記エネルギー分析器によって軌跡を変更されていない粒子を検出するインライン検出器をさらに備える請求項7に記載のTOF型イオンセンサーシステム。
【請求項9】
基板平面に入射する、プラズマから受け取ったイオン種を測定する方法であって、
前記プラズマと、ドリフト管および検出器を有する飛行時間(TOF)型センサーとの間に第1電位差を印加する段階と、
指定されたイオンエネルギーで、前記イオン種を前記TOF型センサーに引き付ける段階と、
第1角度走査を実行する段階と
を備え、
前記第1角度走査を実行する段階は、
前記基板平面に対して第1の角度で前記TOF型センサーを一つの基板領域に位置付ける段階と、
前記第1の角度で、前記イオン種のイオン質量を検出する段階と、
前記TOF型センサーを前記基板平面に対して一つ以上のさらなる角度で位置付ける段階と、
前記一つ以上のさらなる角度のそれぞれで、前記イオン種のイオン質量を検出する段階と
を有する
方法。
【請求項10】
容量性プローブとして動作する前記TOF型センサーの電極にRFバイアス電圧を供給する段階と、
前記TOF型センサーの抽出開口に蓄積した材料の堆積厚さをモニターする段階と、
前記TOF型センサーの動作パラメータを、前記堆積厚さにしたがって調整する段階と
をさらに備える請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ドリフト管と前記検出器との間にエネルギー分析器を設ける段階と、
所望のエネルギーにしたがって、前記ドリフト管から受け取ったイオンを前記検出器に送るよう前記エネルギー分析器を設定する段階と、
をさらに備える請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記イオン種は、正イオンであり、
前記第1の角度または前記一つ以上のさらなる角度のそれぞれで前記イオン質量を検出する段階は、
前記TOF型センサーの第1電極に、プラズマ電圧に対して負の電圧パルスを供給する段階と、
イオン種が前記ドリフト管を通過する飛行時間を前記検出器で記録する段階と
をさらに含む
請求項9から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記指定されたイオンエネルギーよりも低いイオンを、前記イオンが前記ドリフト管に入る前に減速させる減速電位を第2電極に供給する段階をさらに備える請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1電極は、閉モードにおいて、前記TOF型センサーに入るイオンを阻止し、前記第1電極に対する前記電圧パルスの持続期間に対応する開モードにおいて、前記ドリフト管に向けてイオンを送るゲート電極を含む請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1電位差は、一連のDCパルスとして印加され、
前記開モードは、前記電圧パルスの間、一回以上トリガされる
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
プラズマチャンバにおいてプラズマ電位でプラズマを生成するプラズマ源と、
基板領域の基板平面に基板を位置付け、基板電位を受け取る基板ホルダーと、
前記基板ホルダーの近くに配置された飛行時間(TOF)型イオンセンサーシステムと
を備え、
前記プラズマチャンバは、前記プラズマの電位と前記基板の電位との差によって決まるエネルギーで、ある範囲の角度で入射するイオンを含むイオンビームを前記基板領域に供給し、
前記TOF型イオンセンサーシステムは、
前記基板領域でイオンを受け取る第1端を有し、前記基板の電位を受け取るTOF型センサーと、
前記基板平面に対する前記TOF型センサーの角度を変化させる位置決め装置と
を有し、
複数の角度を含む前記範囲の角度で分散したイオンが、連続した複数のTOF測定において、対応する複数の前記TOF型センサーの角度で、前記TOF型イオンセンサーシステムに受け取られる
イオン打ち込みシステム。
【請求項17】
前記プラズマチャンバは、前記範囲の角度で前記基板平面にイオンを供給する開口を含むプラズマシース変更器を有する請求項16に記載のイオン打ち込みシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースの打ち込みに関し、特に、イオン打ち込みをモニターする方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理は、たとえば、多様なドーパントをウェハに打ち込み、または、薄膜の堆積もしくはエッチングを実行するべく、半導体製造で広く用いられる。プラズマドープ処理(PLAD)等のプラズマイオン打ち込み処理では、イオンを高圧シースを介して抽出し、ターゲットに向けて加速する。
【0003】
典型的なPLAD処理では、ファラデーカップ電流に基づいて打ち込みドーズ量を測定することにより、プラズマをモニターする。しかし、ファラデーカップは、全電荷の測定に限られるので、多様に帯電した粒子間が区別されず、プラズマについて何らの洞察も得られない。さらに、プラズマがオン状態とオフ状態とを交互するパルスプラズマ処理では、プラズマを時間分解して測定することがしばしば求められる。
【0004】
上記の懸案に対処するべく、プラズマ中のイオンをモニターするための飛行時間型のイオンセンサー技術が開発されている。特に、2009年1月13日に発行され、本明細書にその全体を参照として組み込む米国特許第7,476,849号は、基板に衝突するイオンを含むプラズマ種を固定角度でモニターする飛行時間型センサーの使用を開示する。
【0005】
多様なドーパントをウェハに打ち込む別の方法では、ビームライン器具を用いたイオン打ち込みを用いる。たとえば、従来のビームライン器具(および、新たに開発されたプラズマに基づくイオンビームシステム)では、イオンは広範な角度でワークピースに衝突する。
図1は、基板上に広範な角度分布でイオンを打ち込むための周知の集束プレート構成の断面図である。集束プレート11は、プラズマシース242の中で電界を変動させて、プラズマ14とプラズマシース242との間の境界241の形状を制御する。したがって、プラズマ14からプラズマシース242内へと引き付けられたイオン102は、広範な入射角度(たとえば、イオン軌跡269〜271を参照)でワークピース10に打ち込まれる。
【0006】
イオン種をサンプリングするのに加え、このようなイオンビームシステムでは、イオンの角度分布を測定するのが望ましい。たとえば、イオンの角度、エネルギー、および質量の正確な分布は、このような処理によって形成されるデバイスに結果として与えられる特性を判定するのに重要である。しかし、上記の技術のいずれによっても、イオン種の質量、イオンエネルギー、および角度分布に関する情報が与えられない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記を考慮すると、イオン打ち込みの処理結果を予測可能かつ再現可能なものとするには、イオンのエネルギー、角度分布、および質量等のイオンのパラメータを綿密にモニターして制御する必要があることは明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態では、基板に入射し、イオンエネルギーを保有するイオン種の角度分布をモニターする飛行時間(TOF)型イオンセンサーシステムは、イオン種から一パルスのイオンを受け取る第1端を有するドリフト管を備え、一パルスのイオンのうち、重いイオンおよび軽いイオンは、それぞれパケットとしてドリフト管の第2端に到達し、イオンセンサーシステムは、基板の平面に対するドリフト管の角度を変化させる。イオンセンサーシステムは、イオンセンサーの第2端に配置されたイオン検出器を備え、イオン検出器は、一パルスのイオンから引き出され、かつ異なるイオン質量にそれぞれ対応するイオンのパケットを検出する。
【0009】
別の実施形態では、基板平面に入射する、プラズマから受け取ったイオン種を測定する方法は、プラズマと、ドリフト管および検出器を有する飛行時間(TOF)型センサーとの間に第1電位を印加する段階と、第1角度走査を実行する段階とを備え、イオン種は、指定されたイオンエネルギーでTOF型センサーに引き付けられる。第1角度走査は、基板平面に対して第1の角度、基板領域にTOF型センサーを位置付ける段階と、第1の角度でイオン種のイオン質量を検出する段階とを有する。第1角度走査は、基板平面に対して一つ以上のさらなる角度で飛行時間型センサーを位置付ける段階と、一つ以上のさらなる角度でイオン種のイオン質量を検出する段階とをさらに有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明のより良好な理解を促進するべく、本明細書に参照として組み込む添付の図面を参照する。
【
図2a】典型的なTOFシステムを備える処理システムの概略図である。
【
図2b】典型的なTOFシステムを備える処理システムの概略図である。
【
図4】別の典型的なTOFセンサーの概略図である。
【
図5】別の典型的なTOFセンサーの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に開示する発明の実施形態は、改良された処理システムを提供し、特に、基板に広範な角度から入射するイオンを供給する場合を含むイオンビームおよびプラズマ処理を、現場でモニターして制御するのに適した改良された飛行時間型(TOF)イオンセンサーシステムを提供する。一般的に、イオンのエネルギー、質量、および角度分布は、本発明のTOFセンサー構成にしたがって測定される。各TOFイオンセンサーは、処理チャンバに多様な方法で設置され、たとえば、現場での処理制御、処理準備度の検証、障害検出、打ち込みドーズ量補正、および打ち込み均一性の測定等の多くの機能に向けて配備される。特に、イオンの質量、エネルギー、および角度分布は、基板をプラズマからのイオンに暴露するときにリアルタイムに測定され、それにより、とりわけ、基板の打ち込みプロファイルの作成および/またはプラズマパラメータの調整によるリアルタイムでの打ち込みプロファイルの補正等のために用いられるモニター器具が提供される。
【0012】
図2aは、本発明の実施形態に係るTOFセンサーシステムを備える典型的なイオン処理システム(または「処理システム」)200の要素を示す概略図である。処理システム200は、プラズマ206を内包するプラズマチャンバ202を備える。プラズマは、コイル204を使用してRF誘導により形成してよく、または、その他の周知の方法により形成してよい。さらに、プラズマ206は、周知の方法にしたがって、連続プラズマ、またはパルスプラズマとして形成してよい。
【0013】
イオン処理システム200を用いて、基板ホルダー230にイオンを供給し、基板234を処理してよい。このような処理としては、とりわけ、基板へのイオン打ち込み、およびフォトレジスト構造等のパターニングによる表面特徴物の処理がある。プラズマと基板ホルダーとの間にバイアスを印加し、プラズマ中のイオンを所望のエネルギーで基板ホルダー230に向けて移動させる。一例では、正のパルスDCバイアス208をプラズマ206に供給し、プラズマ206中の正イオンを、接地電位にある基板ホルダー230に向けて加速する。プラズマ境界(
図1の要素241を参照)を出射して基板ホルダー230に衝突するイオンは、幅のある入射角度を形成する。
図2aおよび
図2bに示す実施形態では、プレート210をプラズマチャンバ202の一方に設け、これにより、開口212から抽出されて多様な入射角度で現れるイオンビームを供給する。
【0014】
プレート(またはプラズマシース変更器)210は、プラズマシースの形状を変更してイオンが多様な角度でプラズマチャンバ202から出射されるようにする点で、プレート11(
図1に示す)と同様に構成してよい。プラズマ206のイオンが基板ホルダー230に衝突するとき、その運動エネルギーは、特に、プラズマ206とワークピース234との間に無衝突シース(collisionless sheath)が存在する場合は、プラズマ境界(
図1の241)と基板ホルダー230との電位差によって一次(first order)に決まる。しかし、エネルギー伝達、運動量(momentum)、および、様々な処理の中でも、基板へのイオン打ち込みの範囲は、同じ運動エネルギーを保有するが、基板への入射角度が異なる各々のイオン間で、実質的に異なる。
【0015】
処理システム200は、イオン種、イオンエネルギー、およびプラズマ206から抽出されるイオンの角度分布を調べるために使用されるTOFシステム220をさらに備える。さらに、システム200は、とりわけ、処理モニター機能、処理パラメータを調整してイオンプロファイルを測定する機能、および、イオンドーズ量モニター機能を提供する。
【0016】
本発明の実施形態によると、システム200は、多様なモードで動作してよい。第1モードでは、システム200は、所望の方法または一セットの動作パラメータにしたがって、ワークピースまたは一セットのワークピースにイオンを供給する「製造」装置として動作してよい。この製造モードでは、TOFセンサーシステム220は、イオンのモニターをせず、
図2aに示すように、イオンに暴露されないように配置される。プラズマチャンバ202から抽出されたイオンは、処理チャンバ216に入り、製造モードでは通常、基板ホルダー230が内部に配置されるチャンバ216の基板領域214全体に拡散する。次に、イオンは、設計にしたがって、基板234に衝突し、打ち込まれる。製造モードでは、基板ホルダー230を、たとえばx方向に沿って走査して、基板234の全体が、開口212を通じてプラズマ206を出射したイオンによるイオン衝撃に暴露されるようにしてよい。
【0017】
図2bに示す交換モードでは、TOFセンサーシステム220を基板領域214内に配置して、製造モードにおいて基板が置かれるのと同様の環境でイオンを収集させるようにし、他方で基板ホルダー230を製造モードでのその通常位置230aから移動させて、イオン測定の利便性を図ってよい。
【0018】
モニターモードでは、基板ホルダー230およびTOFセンサーシステム220の両方を同時に、プラズマ206から抽出されたイオンに暴露して、「製造用」基板に打ち込みが実行され、基板にイオン打ち込みが実行されているのと同時に、TOFセンサーによってイオンが収集され分析されるようにしてよい。
【0019】
イオンを受け取るセンサ
ー222
の端を、製造モードで使用されるワークピース230の平面を表すワークピース230の平面またはその近傍で、基板領域214内に配置してよい。このようにセンサー222を配置することで、製造モードでワークピースが被るイオンプロファイルの正確な測定が促進される。モニターモードでは、基板ホルダー230およびTOFセンサーシステム220の両方を、プラズマ206から抽出されたイオンを受け取る位置に配置してよい。たとえば、基板ホルダー230の中間領域に、開口212と位置を揃えて開口を形成し、TOFシステム220にイオンが供給されるようにしてよい。しかし、TOFセンサー222を基板ホルダー230とプレート210との間に配置する等の、その他のモニターモード構成も可能である。
【0020】
図2aおよび
図2bの例では、TOFシステム220は、TOFセンサー222と、x方向およびz方向において回転運動および並進運動を与え、y方向(紙面から出る方向)においても運動を与えるTOFセンサー位置決め装置(またはホルダー)224を有する。しかし、TOFセンサー222を位置決めするためのその他のメカニズムも可能である。本明細書で使用する「TOFセンサー」、「TOFイオンセンサー」、および「イオンセンサー」という用語は、互換的に用いられ、とりわけ、抽出電極、TOFドリフト管、およびイオン検出器を有する装置を指す。TOFセンサーホルダー224は、それ自体がチャンバ216に取り付けられ、またはその一部を形成してよい。TOFセンサーホルダーは、一例では、基板ホルダー230等のホルダーまたはステージに取り付けられるように構成されてよく、別の例では、チャンバ216の外部に設けられたメカニズムに取り付けられ、制御されてよい。
【0021】
本発明の実施形態によると、TOFシステム220は、入射角度の関数としてイオン種およびイオンエネルギーを測定する機能を提供してよい。TOFセンサー222の多くの部材は、米国特許第7,476,849号に開示された構成にしたがって構成してよい。
図3を参照すると、センサー222の一実施形態にかかる典型的なイオンセンサー100が示されている。イオンセンサー100は、処理チャンバ216の別の部分、たとえばホルダー224に取り付けられるように適合させうる筺体102を有してよい。筺体102には、所望の電位V
housingで個別にバイアスをかけてよい。たとえば、モニターモードまたは交換モードでは、V
housingを、製造モードまたはモニターモードでホルダー230に印加される電位と等しい電位に設定して、プラズマ206からのイオンが、基板230に衝突するのと同様な態様でセンサー222に向けて引き付けられるようにしてよい。
【0022】
イオンセンサー100は、筺体102内に、たとえば、所望の電位V
L3で個別にバイアスをかけてよいドリフト管104も有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、イオンセンサー100を包囲する圧力は、プラズマチャンバの圧力、典型的には、1〜3000mTorrと同等であってよく、他方で、ドリフト管は、典型的には、2×10
−6Torr以下で動作される。したがって、圧力差を吸収するべく差動排気を行ってよい。しかし、その他の実施形態では、イオンセンサー100を包囲する圧力は、約10
−6Torr以下であってよく、差動排気は必要でなくなる。
【0024】
センサー100は、適切な電位V
extractorでバイアスされてプラズマから正または負のイオンを引き付ける抽出電極106と、それぞれV
L1およびV
L2でバイアスしてよい付加的なレンズ108および110とを有してよい。V
L3でバイアスされるドリフト管104は、これらの続きとして第3の静電レンズとして機能してよい。センサー100は、検出器アセンブリ112を用いてイオンの飛行時間型測定を実行するべく、ドリフト管104にパルス状にイオンを受け入れるよう配置してよい。
【0025】
イオンセンサーのいくつかの実施形態では、エネルギー分析器114を
図4に示すように設けてよい。電極106〜110のうち一つがゲートとして動作してよく、ゲートが開放されて、イオンがドリフト管104に引き入れられたとき、イオンがドリフト管104の他方端へと、さらにはエネルギー分析器114へとドリフトするようにしてよい。エネルギー分析器114は、指定されたイオンエネルギーでイオンを検出器112に向けて偏向させる機能を有する周知の分析器であってよい。したがって、指定されたエネルギーを保有するイオンだけが検出器112に向かうよう偏向される。
【0026】
したがって、一つのゲートパルスの後、検出器112は、エネルギー分析器114によって判定されたイオンエネルギーを保有し、イオン質量によって時間差で検出器112に到達する一連のイオン群を検出する。ゲートをパルシングし、各パルスの後に検出器112でイオン群を収集することにより、測定を連続的に実行してよい。一実施形態によると、電極110(つまり、ゲート電極)は、極短いゲーティング期間を除いては、プラズマ電位と同等の正電圧で順方向にバイアスしてよい。たとえば、ゲートパルス幅は、約100nsであってよい。
【0027】
プラズマモニターモードまたは交換モードでは、センサー100は、プラズマ206等のプラズマからイオンが加速される期間、またはその近辺でだけ、ゲートを開放するようにしてよい。たとえば、DC正電圧パルス208をプラズマ206に印加してよく、それにより、接地されてよいワークピース230(およびセンサー100)は、プラズマ206に対して、たとえば、−10V〜−50kVの負電位となる。イオンは、プラズマ境界(
図1の241)から加速され、開口212を出射し、その後、センサー100およびワークピース234(ワークピース234が定位置にある場合)に、印加されたDCプラズマ電位によって決まるエネルギーで衝突する。いくつかの実施形態では、イオンセンサーでイオンをサンプリングするためのゲートパルシングは、たとえば、100nsのゲートパルスを、200μsおきに発生するプラズマ206のDCパルスごとに印加することにより、僅かな時間の間だけ実行してよい。
【0028】
その他の実施形態では、DCパルスの印加の前、間、および/または後の多様な時点で、イオンセンサーゲートパルスを連続的に供給することにより、時間分解測定を実行してよい。1ミリ秒の約10分の1の間持続するDCパルスでは、所望により、一つのDCプラズマの間に、複数の100nsゲートパルスを印加して複数回のTOF測定を実行してよい。
【0029】
図2bを再び参照すると、システム200の所定の動作条件セット下でワークピースが受けるイオンの分布を正確に測定するための情報を取得するべく、センサーシステム220を、基板230の平面に対して様々な角度(たとえば、θ
1およびθ
2を参照)に回転させて、各角度で1回以上の
TOF測定を実行してよい。さらに、x方向に沿ったTOFセンサーの位置を変化させ、位置の関数としてTOF測定を実行してよい。たとえば、
図1をさらに参照すると、システム200は、ワークピースにイオンを供給するのに使用される抽出プレート11と同様の抽出プレートを備えてよい。センサー100として実施してよいセンサー220を、
図2aおよび
図2bに示すように、プレート11の開口の中心に位置合わせするべく、ホルダー224を指標化してよい。一例では、開口は、x方向に沿った幅Gが、開口の下の基板平面に対するイオンの幅および角度広がりを決定するのに役立つスリットである。したがって、センサー100の抽出側が開口の中心232付近にある間に、多様な配置角度θにおいて、TOF測定を連続的に実行してよい。一例では、TOFセンサーの電極システムは、約1度程度のイオン受け入れ角度を提供してよい。したがって、各測定または一セットの測定ごとに少なくとも1度、センサー100を回転させると利便性がよい。所望の角度範囲における離散的な角度でTOF測定を連続的に実行した後、寸法が小さい開口に対してホルダー224を走査してよく、つまり、ホルダー224を+x方向または−x方向に移動させてよく、その後、ある角度範囲で次のセットの測定を連続的に実行してよい。
【0030】
したがって、システム220等の典型的なTOFセンサーシステムは、多様な角度で収集した質量種のスペクトルを表す一セットのTOF質量スペクトルを生成してよい。スペクトルセットに含まれる情報は、入射角度に応じて、各イオン種の相対量に開き(つまり、質量の差)を含むことがある。
【0031】
さらに、エネルギー分析器114等のエネルギー分析器を用いて、所望の入射角度で一種類以上のイオンエネルギーにおける一つ以上のTOFスペクトルを収集してよい。ドリフト管におけるイオンの速度、したがってイオンの飛行時間は、イオンの質量およびエネルギーの両方に依存するので、エネルギーに開きがあるイオンがドリフト管に進行して、エネルギー分析されないで直接に検出器に通されると、検出される信号は、イオンの質量およびエネルギーの両方が合成されている。したがって、エネルギー分析器114は、所定の測定において、指定されたエネルギーを保有するイオンだけを検出器112に向けて偏向するように設定される。このようにすると、所定の測定で検出されるイオンのエネルギーが固定されるので、所定の質量を持つイオンの全てが検出器に同時に到達するはずであり、したがって、TOFスペクトルにおける各ピークが固有の質量(または、質量/電荷の比)を有することが保証される。
【0032】
一例では、10keVの電位をプラズマチャンバ202と基板230との間に印加し、その間、固定角度でのTOF測定を連続的に、エネルギー分析器114のイオンエネルギー設定を変化させて実行する。エネルギー分析器114のエネルギーは、当初は10keVに設定して、公称イオンエネルギーを保有するイオンを記録して調べるようにしてよい。その後、エネルギー分析器を10keV付近の他のエネルギーに設定してよく、これにより、所定の公称イオンエネルギーにおけるイオンエネルギーおよびイオン質量の広がりに関する有益な情報が得られる。したがって、本発明の実施形態は、イオン種、エネルギー、および入射角度を含む多次元的なパラメータ分析を、基板に入射するエネルギーイオンに行うことができる。
【0033】
実施形態は、実際の製造システムがコンパクトである場合にも、高エネルギーイオン処理をモニターする性能を高める。TOFセンサーを回転可能として、有利に位置決めして処理チャンバとともに回転させることができるようにするべく、TOFセンサーを比較的に短寸法に構成して、ドリフト管を短い設計にすることが望ましいかもしれない。しかし、イオンパルスを10keV以上の高イオンエネルギーでドリフト管に向けて入射させたとき、イオンパルスは検出器に到達しても、様々な質量を持つイオンが近接していて、検出システムによって的確に別々の信号またはピークに分解できないかもしれない。これは、パルス内の高エネルギーイオンの全てが、イオンエネルギーにしたがって非常に速い速度でドリフト管に入射し、フィールドフリー領域での飛行時間が短くなりすぎ、異なる質量を持つイオンの飛行時間の継続長の差が小さすぎて、イオン検出に用いられるカウンターで分解できないからである。
【0034】
本発明の実施形態によると、TOFセンサーにおける少なくとも一つの電極は、TOFセンサーに入る入射イオンのエネルギーを、イオンがドリフト管部に入射する前に、弱める減速電位を受け取るよう動作する。減速電位の大きさは、入射イオンのエネルギーを、イオンがフィールドフリー領域に入って、その領域の長さによりイオン質量ごとの飛行時間が決まってしまう前に、所望のレベルにまで低下させるように選択してよい。これにより、入射イオンのTOF測定の質量分解がより良好になる。
図3を参照すると、センサー100によって所望の質量分解が実現されるレベルにまでイオンエネルギーを低下させるべく、電極108および110、ドリフト管104、ならびに検出器アセンブリ112等のセンサー100の部材にバイアスを印加してよい。
【0035】
一例では、+25kVの逆電位(retarding potential)をセンサー100の様々な部材に印加して、30keVのエネルギーを保有する正イオンを減速させてよい。一例では、電極106は、上記のようにゲート電極として動作してよく、ゲートが開放されると、30keVのイオンがドリフト管104に向けて入射できるようにする。次に、イオンは、電極108、110、および104に印加された+25keVの電位により減速され、〜5keVのイオンの減速パルスがドリフト管104に入る。様々な質量を持つ5keVのイオンにおける飛行時間の差は、検出器が別々のパケットとして検出して質量スペクトルにおいて別々のピークを生成するのに十分である。
【0036】
一実施形態では、入射イオンエネルギーが、たとえば10keV超等の所定の指定範囲内である場合には、電極に印加する減速電位を用いてセンサー100を動作させ、イオンが保有する入射エネルギーがそれより低い場合には、減速電位を印加しないようにしてよい。たとえば、2keVのイオン等の低エネルギー正イオンの場合、電極108を閉ゲートモードで+2keVでバイアスし、開ゲートで−1keVでパルス化し、上記のようにイオンをドリフト管に向けて加速させてよい。
【0037】
さらなる実施形態では、センサー100等のTOFセンサーをRFバイアスで構成して、TOFセンサーが長時間のイオンへの暴露により導入されうるエラーを回避できるようにしよい。一例では、抽出電極106に無線周波数(RF)(1〜300MHz、典型的には13.56MHz)バイアスを供給してよい。RFバイアスされた抽出電極106は、堆積処理が主流の環境(deposition−dominant environment)では、イオンを抽出して、抽出開口から堆積物を除去する等の多様な機能を果たす。多くの製造プロセスは、導電性であるか絶縁性であるかにかかわらず、薄膜材料をプラズマチャンバで堆積させる堆積処理が主流の環境で実行される。厚い絶縁膜によって抽出開口が遮蔽された場合、抽出電極106へのDCバイアスが無効となってしまう。RFバイアスによって、抽出開口をスパッタクリーニングして、堆積した材料を除去してよい。つまり、RFバイアスによって、イオンセンサー300に、「自浄」能力を与えてよい。イオン抽出には、RFバイアスは、プラズマ電位に対して負の平均電位を有してよい。スパッタクリーニングには、RFセルフバイアスは、スパッタ閾値より大きくてよく、ピーク・トゥ・ピーク値は、100〜1000V以上であってよい。RFバイアスされた電極は、周知の技術によって堆積厚さに関する情報を提供する容量性プローブとして動作することもできる。この情報は、たとえば、センサー100の動作パラメータ、たとえば電極電位を調整して、電極周囲への材料の蓄積によってTOF測定が影響されないようにするために使用することができる。
【0038】
図5は、イオンセンサーのさらなる実施形態を示す。センサー500は、イオンセンサー100に関して上記したように、イオンの抽出、ゲーティング、および/または、減速を行う開口セット502を有する。さらに、センサー500は、ドリフト管504、エネルギー分析器506、ならびに検出器508および510を備える。いくつかの実施形態では、センサー500は、イオンだけでなく、エネルギー中性子(energetic neutrals)もモニターしてよい。たとえば、センサー500を、エネルギービーム520を受け取るように構成してよい。センサー500を、センサーシステム220に関して上記したように、ある範囲の角度にわたってビームを収集するように構成してよい。エネルギービーム520は、所望のイオンエネルギーまで加速されるエネルギーイオンと、抽出および/または減速の後に中性化したイオンから生じるエネルギー中性子とを含みうる。エネルギー中性子は、典型的には、所望のイオンエネルギーに近いエネルギー、または所望のイオンエネルギーよりも低いエネルギーを保有する。ビーム520がドリフト管504を通過するとき、イオンおよび中性子は、ドリフト管を一緒に移動する。イオン512は、エネルギー分析器506を通ると、図示のように偏向され、イオンセンサー500の側部に配置された検出器508に検出される。エネルギー分析器506は、たとえば正イオン等の帯電種を図示の方向に偏向させるBフィールド(B−field)を形成する、たとえば磁気分析器であってよい。しかし、エネルギー中性子514は電荷を担持していないので、エネルギー中性子514は、図示のように真っ直ぐな軌跡を継続し、「インライン」検出器510に検出される。したがって、イオンセンサー500は、
図1〜
図4に示す上記の実施形態によって提供されたのと同様のエネルギーイオンに関する情報だけでなく、エネルギー中性子の量および角度分布に関する情報を提供するべく使用しよてい。
【0039】
上記の本発明に係るイオンセンサーシステムは、典型的に、入力データの処理と、ある程度の出力データの生成とを伴う。この入力データ処理および出力データ生成は、ハードウェアまたはソフトウェアで実装してよい。たとえば、イオンビーム処理器等、または上記の本発明に係るイオン種の現場でのモニタリングに関連する機能を実行する関連回路において、特定の電子コンポーネントを用いてよい。または、格納された命令にしたがって動作する一つ以上のプロセッサによって、上記の本発明に係るイオン種の現場でのモニタリングに関する機能を実行してよい。この場合、このような命令を一つ以上のプロセッサ読み出し可能な媒体(carriers)(たとえば、磁気ディスク)に格納し、または、一つ以上の信号により一つ以上のプロセッサに送信することは、本発明の範囲に含まれる。
【0040】
本発明は、本明細書に記載した特定の実施形態にその範囲を限定されない。事実、本明細書に記載したものに加え、本発明のその他の多様な実施形態および変更が、当業者には上記の記載および添付の図面から明らかとなるであろう。たとえば、イオンビームシステムが抽出プレートを使用してイオンビームを形成する本発明の実施形態を記載したが、本発明のTOFセンサーシステムは、このような抽出プレートを備えない装置を含む、イオンを生成する多くの種類の装置で有利に配備しうる。さらに、TOFセンサーシステムは、モニターモードだけ、または交換モードだけを実行可能な処理システムで動作することができる。
【0041】
したがって、このようなその他の実施形態および変更は、本発明の範囲に含まれることが意図されている。さらに、本発明は、本明細書に、特定の目的用の特定の環境における特定の実施例を背景として記載されたが、本発明の有用性は、これらに限定されず、本発明は、任意の数の目的用の任意の数の環境において有利に実行しうることは、当業者には理解されよう。したがって、以下に定義される特許請求の範囲は、本明細書に記載された開示内容の全範囲および全趣旨に鑑みて解釈されるべきである。