(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5871417
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】二重管の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21C 37/06 20060101AFI20160216BHJP
B21C 37/08 20060101ALI20160216BHJP
B21D 22/26 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
B21C37/06 C
B21C37/08 A
B21D22/26 Z
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-237034(P2015-237034)
(22)【出願日】2015年12月4日
【審査請求日】2015年12月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211857
【氏名又は名称】中川産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】中川 敬章
【審査官】
石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−202521(JP,A)
【文献】
特開昭53−138967(JP,A)
【文献】
特開昭60−213310(JP,A)
【文献】
特開2009−220182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 37/00−43/04
B21D 22/00−26/14
B21D 5/00− 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲した外管の形状を展開した所定の平面形状に成形した板体を、湾曲した略U字断面に絞り成形して半管体となし、当該半管体の略U字断面の空間内に、前記外管と同様の湾曲形状とした内管を挿入位置させた後、前記内管と半管体を長手方向の一端部で溶接し、この後、前記半管体を前記内管の外方を囲む略円形断面をなすように曲げ成形して半管体の衝合端を溶接して外管とすることを特徴とする二重管の製造方法。
【請求項2】
絞り成形に先だって、前記板体を前記湾曲方向へ所定の山形に湾曲させた請求項1に記載の二重管の製造方法。
【請求項3】
外管の端部でこれを縮径させて当該外管の内周を内管の外周に当接させた請求項1又は2に記載の二重管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二重管の製造方法に関し、特に、湾曲した二重管を簡易に製造できる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排気管等においては、所定温度以上で働く浄化触媒に流入させる排気ガスの温度低下を避けるために、浄化触媒に至る排気管を、空気層を介在させた内外二重管とする場合が多い。ところで、排気管は他の部材との干渉を避けて狭い車両空間を通す必要があるため一般に湾曲形状となる。この場合、直管の二重管をそのまま曲げ成形すると湾曲部が扁平となって内管と外管の間に所定の空間が形成されない。そこで、特許文献1にあるように、直管二重管内に水を封入した後、これを加圧液体窒素中に浸漬して二重管内に氷を生成させ、この状態でドロー曲げ等によって全体を曲げ成形する。曲げ成形後は氷を融解し流出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−79417
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の製造方法では、氷の生成を迅速に行う必要があるため、加圧液体窒素を使用する等、設備費を要するとともに液体窒素の管理取り扱いも煩雑であるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、設備費を抑えることができ管理取り扱いの煩雑さもない簡易な二重管の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本第1発明では、湾曲した外管(4)の形状を展開した所定の平面形状に成形した板体(1)を、湾曲した略U字断面に絞り成形して半管体(2)となし、当該半管体(2)の略U字断面の空間内に、前記外管(4)と同様の湾曲形状とした内管(3)を挿入位置させた後、前記内管(3)と半管体(2)を長手方向の一端部で溶接し、この後、前記半管体(2)を前記内管の外方を囲む略円形断面をなすように曲げ成形して半管体(2)の衝合端(22)を溶接して外管(4)とする。
【0007】
本第1発明においては、略U字断面に成形された湾曲した半管体の空間内に、同様に湾曲させた内管を挿入し、その後、半管体を内管の外方を囲むように曲げ成形して略円形断面にし外管としたので、湾曲した二重管を、氷や液体窒素を使用することなく、簡易に製造することが可能である。
【0008】
本第2発明では、絞り成形に先だって、前記板体(1)を前記湾曲方向へ所定の山形に湾曲させる。
【0009】
本第2発明によれば、絞り成形が容易になる。
【0010】
本第3発明では、外管(4)の端部(41)でこれを縮径させて当該外管(4)の内周を内管(3)の外周に当接させる。
【0011】
本第3発明においては、二重管をその端部で他の管体に容易に溶接連結することができる。
【0012】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の二重管の製造方法によれば、水や液体窒素を使用する必要が無いから設備費を抑えることができるとともに管理取り扱いの煩雑さもなく、簡易に湾曲した二重管を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】二重管の製造過程を示す、打抜き成形後の板体の斜視図である。
【
図2】二重管の製造過程を示す、湾曲成形した板体の側面図である。
【
図3】二重管の製造過程を示す、前段の絞り成形後の板体の斜視図である。
【
図4】二重管の製造過程を示す、後段の絞り成形後の板体の斜視図である。
【
図5】二重管の製造過程を示す、トリミング前の板体の端面図である。
【
図6】二重管の製造過程を示す、空間内に内管を挿入した状態の半管体の斜視図である。
【
図7】二重管の製造過程を示す、略円形断面に曲げ成形された半管体の斜視図である。
【
図8】二重管の製造過程を示す、外管内に内管が位置ずる内外二重管の斜視図である。
【
図9】二重管の製造過程を示す、端部を縮径成形した内外二重管の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0016】
本発明の製造方法では、最初にブランキング(打抜き成形)によってステンレスやチタンの金属製板体1を所定形状に打ち抜く(
図1)。この打抜き形状は、以降の加工によって所定の湾曲形状の外管が得られるように試行して決定される。なお、この形状決定は、量産に先立って一度行えば良い。
【0017】
続いて
図2に示すように、ドローイング(絞り成形)に先だって、ドロー型に沿うように、すなわち成形後の外管の曲がり方向(
図1の矢印方向)に、板体1を所定の山形にベンディング(曲げ成形)する。その後、ドローイングを行うが、絞り深さが深い場合には
図3、
図4に示すように複数回(本実施形態では2回)に亘って行う。この過程で、板体1は深い逆U字断面に成形される。なお、上記ベンディングを絞り成形と同時に行うこともできる。
【0018】
絞り成形の後は、
図5に示すように、絞り成形された板体1の両側縁に残ったフランジ部11をトリミングで除去し、長手方向へ湾曲する逆U字断面の半管体2を得る。その後、半管体2の上下を逆にしてそのU字断面空間内に、同様の方向へ同程度に湾曲させた小径の内管3を挿入位置させ(
図6)、内管3と半管体2をこれらの長手方向の一端部でスポット溶接(符号21)して互いに固定する。
【0019】
そしてこの状態でプレスによって半管体2をベンディング(湾曲成形)することにより、
図7に示すように、長手方向へ延びる半管体2の開口を閉じるように左右の開口縁を衝合させて(
図7の符号22)、半管体2のU字断面を円形断面とし管体にする。この際、内管3と半管体2をこれらの一端部でスポット溶接していることにより、ベンディング中に内管3が移動することが防止されて、内管3の外方で所定の隙間を保って半管体2が湾曲成形される。続いて長手方向へ延びる半管体2の開口衝合端22をこれに沿って溶接して(
図8の破線)外管4とする。これにより、湾曲した内外二重管が完成する。
【0020】
この後、外管4の長手方向の端部41をプレスでスウェージング(縮径成形)させてこの部分で外管4の内周を内管3外周に当接させる(
図9)。これにより、二重管と他の管体等とを連結する際に三枚全周溶接等によって簡易に行うことができる。さらに必要な場合は、リストライクによって外管4の細かい形状を形成するとともに全体を整形する。
【符号の説明】
【0021】
1…板体、2…半管体、22…衝合端、3…内管、4…外管、41…一端部。
【要約】
【課題】設備費を抑えることができ管理取り扱いの煩雑さもない簡易な二重管の製造方法を提供する。
【解決手段】湾曲した外管4の形状を展開した所定の平面形状に成形した板体1を、湾曲した略U字断面に絞り成形して半管体2となし、当該半管体2の略U字断面の空間内に、外管4と同様の湾曲形状とした内管3を挿入位置させた後、前記内管3と半管体2を長手方向の一端部で溶接し、この後、前記半管体2を前記内管の外方を囲む略円形断面をなすように曲げ成形して半管体2の衝合端22を溶接して外管4とする。
【選択図】
図6