特許第5871467号(P5871467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5871467優れたMVSS接着性を得るためのコーティング組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871467
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】優れたMVSS接着性を得るためのコーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/06 20060101AFI20160216BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20160216BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20160216BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20160216BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   C09D201/06
   B05D7/24 302S
   C09D5/00
   C09D7/12
   C09D175/04
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2010-539418(P2010-539418)
(86)(22)【出願日】2008年11月14日
(65)【公表番号】特表2011-508005(P2011-508005A)
(43)【公表日】2011年3月10日
(86)【国際出願番号】US2008012802
(87)【国際公開番号】WO2009082423
(87)【国際公開日】20090702
【審査請求日】2011年11月14日
【審判番号】不服2014-10008(P2014-10008/J1)
【審判請求日】2014年5月29日
(31)【優先権主張番号】11/960,815
(32)【優先日】2007年12月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【復代理人】
【識別番号】100116975
【弁理士】
【氏名又は名称】礒山 朝美
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】ドナルド エイチ キャンベル
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー ジー メノブチック
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー エス. ディッセンバー
【合議体】
【審判長】 豊永 茂弘
【審判官】 國島 明弘
【審判官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−514992(JP,A)
【文献】 特表2008−511739(JP,A)
【文献】 特表2005−511850(JP,A)
【文献】 特表2009−508982(JP,A)
【文献】 特表2003−523424(JP,A)
【文献】 特表2008−514781(JP,A)
【文献】 特表2008−514785(JP,A)
【文献】 特開平11−199803(JP,A)
【文献】 特開平11−70620(JP,A)
【文献】 特開平9−3399(JP,A)
【文献】 特開平7−2944(JP,A)
【文献】 特開平4−219177(JP,A)
【文献】 米国特許第6203913(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0119320(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0176592(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0044165(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D201/06
C09D7/12
C09D175/04
C09D5/00
B05D7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルバメート化アクリル樹脂及びカルバメート化ポリウレタンから選択される少なくとも1つの架橋可能なカルバメート官能性樹脂と、
アルデヒドとメラミンとの反応生成物を含むアミノプラストと、
を含むコーティング組成物であって、
前記アミノプラストが、イミノ基含有量が1%以下であり、アルキロール基含有量が少なくとも7%であり、かつ残りの基はアルコキシアルキル基である(全て、反応前メラミン中に存在する反応部位の総数に対して)、コーティング組成物。
【請求項2】
前記コーティング組成物が、少なくとも1個のエポキシド基を含む成分をさらに含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
カルバメート化アクリル樹脂及びカルバメート化ポリウレタンから選択される少なくとも1つの架橋可能なカルバメート官能性樹脂と、
アルデヒドとメラミンとの反応生成物を含むアミノプラストと、
の反応生成物
を含むクリアコート層であって、
前記アミノプラストが、イミノ基含有量が1%以下であり、アルキロール基含有量が少なくとも7%であり、かつ残りの基はアルコキシアルキル基である(全て、反応前メラミン中に存在する反応部位の総数に対して)、クリアコート層を含む、多層コーティング系。
【請求項4】
サブクリアコート樹脂と第2の架橋剤との反応生成物を含む少なくとも1つのサブクリアコート層をさらに含む、請求項3に記載の多層コーティング系。
【請求項5】
前記第2の架橋剤が前記アミノプラストを含む、請求項4に記載の多層コーティング系。
【請求項6】
前記クリアコート層が、少なくとも1個のエポキシド基を含む成分をさらに含む、請求項3、4又は5に記載の多層コーティング系。
【請求項7】
前記多層コーティング系が、ウェットオンウェット系である、請求項4、5又は6に記載の多層コーティング系。
【請求項8】
前記クリアコート層上に配置されるシーラントをさらに含む、請求項3、4、5、6又は7に記載の多層コーティング系。
【請求項9】
前記クリアコート層と前記シーラントとの間に配置された反応性プライマーを含まない、請求項8に記載の多層コーティング系。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の多層コーティング系の前記シーラントの反対側に、前記多層コーティング系に結合された下地を含む物品。
【請求項11】
前記シーラントに結合されたガラスをさらに含む、請求項10に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してコーティング組成物と、該コーティング組成物から形成されたクリアコート層を含むコーティング系とに関する。より具体的には、本発明は、該コーティング系を介して結合されたガラスと下地との間に限界接着強度(threshold adhesion strength)を達成することを可能にするコーティング組成物に関する。
【0002】
車両組立プロセスにおいて、フロントガラスなどの固定ガラスの車体への結合は、多くの品質および安全性の問題を自動車製造業者に提示する。例えば、米国自動車安全基準(motor vehicle safety standards:MVSS)、例えばMVSS 212などは、ガラスと車体との間の限界接着強度を要求している。これは特に衝突事故および転倒事故が発生した場合に、確実にガラスの車体との結合を維持して、ガラスが車体から脱離することに起因する乗車している人の負傷の発生を最小限に抑えることを目的としている。実際に、衝突事故および転倒事故では、ガラスが車両の屋根を付加的に支持することがあり、それによって車両の屋根が圧縮されることに起因する負傷を防ぐのに役立つことがある。したがって、ガラスが車両に結合したままである事が好ましい。
【0003】
車両組立プロセスでは、このプロセスにおいてガラスが車体に結合される時点の前に、車体上にコーティング系が形成される。コーティング系は、典型的には、クリアコート層と、ベースコート層と、当該技術分野で既知のその他のサブクリアコート層とを含む。ガラスは、シーラントによって車体のコーティング系に結合される。このシーラントは、典型的にはビードの形態でクリアコート層に塗布される。したがって、ガラスと車体との間の接着強度は、シーラントとコーティング系内のクリアコート層との間の相互作用に依存する。
【0004】
ガラスと車体との間の結合の強固性には多くの要因が寄与しうる。これらの要因には、シーラントの配合、車体上のコーティング系内のクリアコート層、ベースコート層、およびその他のサブクリアコート層の配合、またこれらの層の間の層間接着性、コーティング系内のシーラント、クリアコート層、ベースコート層、およびサブクリアコート層に使用されている配合物の相溶性、コーティング系内のクリアコート層、ベースコート層、およびその他のサブクリアコート層の膜厚、ならびにコーティング系内のクリアコート層、ベースコート層、およびその他のサブクリアコート層が通常の時間および温度未満で硬化する能力などが含まれる。
【0005】
限界接着強度を達成するために数々の方法が過去に用いられてきたが、接着強度の限界を達成すると、一般にそれに付随してコーティング系の美的品質(例えば、外観)および/または物理的性質に有害な影響が与えられたり、あるいは反応性プライマーの手作業での塗布や、またはクリアコート層とシーラントとの間のテープでのマスキングが必要とされる。
【0006】
クリアコート層を形成するために使用するコーティング組成物は、一般的に、得られるコーティング系に一定の美的品質および/または物理的性質、例えば許容できる外観、耐久性、引っかき耐性、紫外線や環境腐食による劣化に対する耐性などを達成したいという要望に基づいて配合される。例えば、架橋可能なカルバメート官能性ポリマーは、環境腐食に対する耐性に関して、コーティング系に特に望ましい特性を与えることがわかっている。このような架橋可能なカルバメート官能性ポリマーは、当該技術分野で既知である。
【0007】
ガラスと車体との間の接着強度を最大にするために過去に用いられてきた戦略の1つは、クリアコート層を形成するために使用するコーティング組成物を改質すること、またはコーティング組成物に付加的な添加剤を加えて、シーラントと反応させるための官能基を与えることであった。コーティング組成物は、改質または添加剤の添加の影響を受けやすく、改質または添加剤の添加は、得られるクリアコート層の美的品質のうちの1つまたは複数に悪影響を与える可能性がある。コーティング組成物に対する添加剤または改質の影響は予測不可能であり、またコーティング組成物の種類によっても異なる。コーティング組成物の改質、または添加剤の添加は、コーティング組成物の低温硬化要件を満たす能力にも影響することがあり、それによって規格外のコーティング系の発生率の上昇をもたらす可能性がある。
【0008】
シーラントとクリアコート層との間に反応性プライマーを手作業で塗布することに関しては、既知の反応性プライマーは、シーラントおよびクリアコート層と反応する反応性基を有するため、特に注意して、車体上のガラスを結合すべき特定の範囲以外のクリアコート層に反応性プライマーを塗布することを避けるようにしなければならない。反応性プライマーの自動塗布は一般に実行不可能であり、反応性プライマーを塗布するためには、典型的には労働者が必要とされ、そのため車両組立プロセスの費用と時間とが増加する。
【0009】
コーティング組成物中に架橋剤を使用することは周知であるが、クリアコート層を形成するために使用されるコーティング組成物中での使用が知られており、またガラスと車体との間の限界接着強度をもたらすことが知られている一部の架橋剤には、付随する欠点がある。そのような架橋剤には、アミノプラストを形成するために使用されるメラミン中に反応前に存在する反応部位の総数に対して、10%を上回る高いイミノ基含有量を有するアミノプラストが含まれる。高いイミノ基含有量を有するアミノプラストは、コーティング系が、そのコーティング系を介して結合されるガラスと下地との間に閾値接着強度を達成するのを助けるが、高いイミノ基含有量を有するアミノプラストは、コーティング組成物の粘度とコーティング組成物中のVOCレベルおよび固形分レベルとのバランスを保つことに関して困難を与える。
【0010】
前述を考慮すると、自動車産業および塗装産業には、固定ガラスをコーティング系、特にカルバメート官能性樹脂から形成されたクリアコート層を有するコーティング系に結合することに関する問題の解決方法を提供することが望まれている。より具体的には、ガラスと車体との間にMVSS規格に基づく閾値接着強度を達成し、同時にコーティング系の美的品質への有害な影響を最小限に抑え、同時に10%を上回る高いイミノ基含有量を有するアミノプラストの高い粘度に関連する問題を最小限に抑えることが望まれている。
【0011】
本発明は、コーティング組成物と、クリアコート層および場合によっては少なくとも1つのサブクリアコート層を含むコーティング系とを提供する。コーティング組成物は、架橋可能なカルバメート官能性樹脂とアミノプラストとを含む。該アミノプラストは、アルデヒドとメラミンとの反応生成物を含む。該アミノプラストは、イミノ基含有量が約10%以下であり、アルキロール基含有量が少なくとも約7%であり、残りの基はアルコキシアルキル基である(全て、反応前にメラミン中に存在する反応部位の総数に対して)。
【0012】
クリアコート層は、架橋可能なカルバメート官能性樹脂とアミノプラストとの反応生成物を含む。場合によっては含まれるサブクリアコート層は、サブクリアコート樹脂と第2の架橋剤との反応生成物を含む。
【0013】
架橋可能なカルバメート官能性樹脂と上記に記載の特定のアミノプラストとを反応させてクリアコート層を形成したときに、コーティング系を介して結合されたガラスと下地との間に、MVSS規格に基づく閾値接着強度が達成され、同時にコーティング系の美的品質への有害な影響が最小限に抑えられる。さらに、この特定のアミノプラストを使用することで、10%を上回る高いイミノ基含有量を有するアミノプラストの高い粘度に関連する問題が最小限に抑えられる。
【0014】
本発明は、コーティング組成物と、クリアコート層および場合によっては少なくとも1つのサブクリアコート層を含むコーティング系とを提供する。このコーティング系は、ガラスをコーティング系を介して車体などの下地に結合させる適用例で有用である。より具体的には、このコーティング系は、コーティング系の一部として含まれるシーラントを介して、ガラスを下地に結合する適用例において有用である。このコーティング組成物およびコーティング系は、コーティング系を介して結合されたガラスと下地との間に、MVSS 212に基づく限界接着強度を達成することを可能にする。しかしながら、本発明のコーティング組成物およびコーティング系は塗装産業全般において有用であり、ガラスと下地との結合という特定の適用例に限定されないことは明らかである。
【0015】
コーティング組成物は、架橋可能なカルバメート官能性樹脂を含む。架橋可能なカルバメート官能性樹脂は当該技術分野で既知であり、硬化時に架橋可能なカルバメート官能性樹脂によってもたらされる優れた物理的性質により、車体上のコーティング系内にクリアコート層を形成するために使用されるコーティング組成物中で特に有用である。架橋可能なカルバメート官能性樹脂は、典型的には架橋可能なカルバメート官能性ポリマーを含むが、他の非ポリマーカルバメート官能性分子が、架橋可能なカルバメート官能性ポリマーと一緒に、または架橋可能なカルバメート官能性ポリマーの代わりに、架橋可能なカルバメート官能性樹脂中に含まれていてもよいことは明らかである。さらに、コーティング組成物中に、カルバメート官能性以外の別の官能性が含まれていてもよく、この別の官能性は、架橋可能なカルバメート官能性樹脂以外の材料によって導入してもよく、あるいは架橋可能なカルバメート官能性樹脂中の付加的な官能基として導入してもよい。例えば、架橋可能なカルバメート官能性樹脂以外の架橋可能な樹脂、例えば他の膜形成性活性水素含有樹脂が、架橋可能なカルバメート官能性樹脂と一緒にコーティング組成物中に含まれていてもよい。膜形成性活性水素含有樹脂は、当該技術分野で既知である。
【0016】
架橋可能なカルバメート官能性樹脂を含むあらゆる既知の配合物、特にクリアコート層を形成するための使用が知られるものを本発明の目的で使用することができる。架橋可能なカルバメート官能性樹脂を含む適切な配合物の具体例には、開示内容全体が参考として本明細書で援用される、米国特許第5,356,669号(Rehfuss等)、米国特許第5,639,828号(Briggs等)、米国特許第5,814,410号(Singer等)、米国特許第5,976,615号(Menovcik等)、米国特許第5,989,642号(Singer等)、および米国特許第6,103,816号(Swarup等)に記載されている配合物が含まれる。
【0017】
コーティング組成物はアミノプラストをさらに含むが、これはコーティング組成物の硬化時に、架橋可能なカルバメート官能性樹脂と架橋する。本明細書で使用する「アミノプラスト」または「特定のアミノプラスト」という用語は、以下のように説明される特定のアミノプラストを指す。このアミノプラストは、アルデヒドとメラミンとの反応生成物を含む。当該技術分野で既知のメラミンは、一般的に以下の構造:
【化1】
を有し、それぞれの窒素結合水素原子、すなわちイミノ基は、架橋可能なカルバメート官能性樹脂との反応の前または後に、他の材料の官能基とさらなる反応が可能な反応部位を表わす。例えば、上述のように、アミノプラストは、アルデヒドとメラミンとの反応生成物を含む。アルデヒドはアミノプラストとイミノ基で反応して、トリアジン環から下がる窒素結合アルキロール基を生成する。下記にさらに詳しく記載するように、窒素結合アルキロール基をアルコールとさらに反応させて、窒素結合アルキロール基をアルキル化してもよい。本発明の目的で適切なアルデヒドの例には、トリアゼン環から下がる窒素原子と結合したC1〜C8アルコール基をもたらすものが含まれ、このC1〜C8アルコール基が窒素結合水素原子の代わりとなる。適切なアルデヒドの具体例には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
アルデヒドとメラミンとは、典型的には、アルデヒド対メラミンの化学量論比約5.4:1〜約6:1、あるいは約5.7:1〜約6:1、あるいは約5.9:1〜6:1で反応させる。つまり、メラミン中の反応部位、すなわちイミノ基は、アルデヒドとメラミンとの反応の結果として、部分的に反応しても、あるいは完全に反応してもよい。理論上は、アルデヒド対メラミンの比率5.4:1は、アルデヒドとメラミンとの反応後であるがアルコールなどとのさらなる反応の前に、アミノプラスト中に、反応前にメラミン中に存在する反応部位の総数に対して約90%のアルキロール基含有量をもたらすはずである。同様に、アミノプラスト中に、アルデヒド対メラミンの比率5.7:1は、約95%のアルキロール基含有量をもたらし、アルデヒド対メラミンの比率5.9:1は、約99%のアルキロール基含有量をもたらし、アルデヒド対メラミンの比率6:1は、約100%のアルキロール基含有量をもたらすはずである(全てアルコールなどとのさらなる反応の前であり、また全て反応前にメラミン中に存在する反応部位の総数に対する値である)。アルデヒドとメラミンとの反応後に未反応のメラミンに由来する反応部位は、アミノプラスト中にイミノ基として残る。したがって、アルデヒドとメラミンとの反応から生じたアミノプラストは、イミノ基含有量が、反応前にメラミン中に存在する反応部位の総数に対して、約10%以下(アルデヒド対メラミンの比率約5.4:1に対応)、あるいは約5%未満(アルデヒド対メラミンの比率約5.7:1に対応)、あるいは約1%未満(アルデヒド対メラミンの比率約5.9:1に対応)である。アミノプラストを作成する具体的な方法は、当該技術分野で既知である。コーティング組成物中に本明細書に記載されている特定のアミノプラストを含むことの利点は、下記にさらに詳しく記載する。
【0019】
上記で示唆したように、アミノプラスト中に存在するアルキロール基のうちの少なくともいくつかをアミノプラストとアルコールとのさらなる反応によってアルキル化して、窒素結合アルコキシアルキル基を生成することができる。具体的には、エーテル化反応によって窒素結合アルキロール基中のヒドロキシル基がアルコールと反応して、窒素結合アルコキシアルキル基を生成する。アルコキシアルキル基は、例えば架橋可能なカルバメート官能性樹脂のカルバメート官能基とのさらなる反応に使用できる。アルデヒド/メラミン反応後にアミノプラス中に存在する残りのイミノ基は、アルキル化に使用するアルコールと反応しない。残りのイミノ基のうちの一部は、別のメラミンに由来する窒素結合アルキロール基中のヒドロキシル基と反応して架橋単位を形成しうるが、残りのイミノ基のほとんどは、アミノプラスト中に未反応のまま残る。アミノプラストをアルキル化するために使用できる適切なアルコールには、C1〜C8アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが含まれる。
【0020】
アミノプラストがアルキル化される場合、アミノプラスト中のアルキロール基は、部分的にアルキル化されてもよい。「部分的にアルキル化された」とは、アルキロール基の不完全なアルキル化をもたらすべき反応条件下で、十分に少量のアルコールをアミノプラストと反応させて、アミノプラスト中にアルキロール基の一部を残すことを意味する。アミノプラストが部分的にアルキル化される場合、アミノプラストは、典型的には、反応前にメラミン中に存在する反応部位の総数に対して少なくとも約7%、あるいは約10%〜約50%、あるいは約15%〜約40%の量のアルキロール基をアミノプラスト中に残すのに十分な量のアルコールによってアルキル化される。典型的には、アミノプラストを部分的にアルキル化して、反応前にメラミン中に存在する反応部位の総数に対して約40〜約93%、あるいは約50%〜約90%、あるいは約60%〜約75%のアルコキシアルキル基を得る。したがって部分的にアルキル化される場合、アミノプラストは、典型的には、アルコール中のヒドロキシル基対アミノプラスト中のアルキロール基の約0.5:1.0〜約0.93:1.0、あるいは約0.60:1.0〜約0.9:1.0、あるいは約0.6:1〜約0.85:1.0の化学量論的量で、アルコールによってアルキル化される。下記の実施例に示すように、ガラスと下地との間の限界接着強度を達成することに関して、部分的にアルキル化されたアミノプラストは、完全にアルキル化されたアミノプラストに勝る利点を有しうる。
【0021】
アルキル化後のアミノプラストは、アルキロール基含有量が、反応前にメラミン中に存在する反応部位の総数に対して少なくとも約7%、あるいは約10%〜約50%、あるいは約15%〜約40%である。またアミノプラストは、イミノ基含有量が、反応前にメラミン中に存在する反応部位の総数に対して約10%以下、あるいは約5%以下、あるいは約1%以下である。アミノプラスト中に残りの基がある場合、それらの基はアルコキシアルキル基である。
【0022】
これらの量のイミノ基およびアルキロールもしくはアルコキシアルキル基を含む特定のアミノプラストの使用は、多くの利点をもたらす。具体的には、本明細書に記載のアミノプラストよりも高いイミノ基含有量を有するアミノプラストは、典型的にはガラスと下地との間に限界接着強度を達成することを可能にするが、そのようなアミノプラストを使用した場合、粘度とVOCレベルと固形分レベルとの許容できるバランスを達成することは困難であった。本明細書に記載の特定のアミノプラストは、高いイミノ含有量を有するアミノプラストに関連する問題を回避すると同時に、特定のアミノプラストをコーティング系に使用して、それを介してガラスと下地とを結合するときに、依然として限界接着強度を達成する。
【0023】
当然ながら、コーティング組成物は、上記に記載した特定のアミノプラスト以外の架橋剤も含んでよい。上記に記載した特定のアミノプラスト以外の、コーティング組成物に含まれていてもよい適切な「その他」の架橋剤には、活性水素受容基が含まれる。本発明の目的で、活性水素受容基を含む架橋剤の例には、上記に記載したものとは異なるその他のアミノプラスト、尿素樹脂、ポリ無水物、フェノール/ホルムアルデヒド付加物、ポリシロキサン、およびそれらの組み合わせが含まれる。その他のアミノプラストには、場合によってはさらにアルキル化された、アルデヒドと活性化アミンとの反応生成物を含みうる。活性化アミンの非限定的な例には、ベンゼン、メラミン、およびベンゾグアナミンなどの芳香環と結合したアミン、第1級カルバメート、尿素、アミド、ビニルアミン、およびそれらの組み合わせがある。アミノプラストの例には、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、および尿素−ホルムアルデヒド樹脂が含まれる。当然ながら、「その他」の架橋剤がメラミン−ホルムアルデヒド樹脂である場合、これは、イミノ基およびアルキロールもしくはアルコキシアルキル基の量に関して、上記に記載の特定のアミノプラストと区別できる。活性水素含有樹脂を架橋可能なカルバメート官能性樹脂に加えて使用する場合、イソシアネートを「その他」の架橋剤として使用してウレタン結合を形成してもよい。イソシアネートは、ブロックされていても、ブロックされていなくてもよい。本発明の目的で適切な「その他」の架橋剤に関するさらなる詳細は、米国特許第5,356,669号(Rehfuss等)、米国特許第5,639,828号(Briggs等)、米国特許第5,814,410号(Singer等)、米国特許第5,976,615号(Menovcik等)、米国特許第5,989,642号(Singer等)、および米国特許第6,103,816号(Swarup等)において開示されている。
【0024】
架橋可能なカルバメート官能性樹脂および上記に記載の特定のアミノプラストは、典型的には、コーティング組成物の硬化後の総架橋密度に対して少なくとも約10%、あるいは約50%〜約100%の量で、アミノプラストによるカルバメート硬化の結果として生じるウレタン結合を生成するのに十分な量で、コーティング組成物中に含まれる。当業者には、コーティング組成物総質量に対するパーセンテージとしての、コーティング組成物中の架橋可能なカルバメート官能性樹脂およびアミノプラストの実際の量が、架橋可能なカルバメート官能性樹脂およびアミノプラストの分子量などのいくつかの要因の中でも、特に架橋可能なカルバメート官能性樹脂中のカルバメート基の数によって異なりうることは明らかである。しかしながら、架橋可能なカルバメート官能性樹脂は、典型的には、コーティング組成物中に、コーティング組成物の総質量に対して少なくとも約10質量%、あるいは約40〜約90質量%の量で含まれる。さらに、架橋可能なカルバメート官能性樹脂は、典型的には、コーティング系内に含まれる全ての架橋可能な樹脂の総量に対して、少なくとも約12質量%、あるいは約50〜約100質量%の量で存在する。同様に、上記に記載の特定のアミノプラストは、典型的には、コーティング組成物中に、コーティング組成物の総質量に対して少なくとも約10質量%の量で含まれる。コーティング組成物中にその他の架橋剤が含まれる場合、上記に記載の特定のアミノプラストは、コーティング組成物中に含まれる全ての架橋剤の総量に対して、典型的には少なくとも約50質量%、より典型的には約70〜約100質量%の量で含まれる。
【0025】
好ましくは、コーティング組成物の硬化前に、1つ以上のエポキシド基を含む成分をコーティング組成物に含ませる。エポキシド基を含む成分は、本質的には、エポキシ環の形態で保護されたヒドロキシル基をもたらし、これは開環時に反応に使用できるようになる。コーティング組成物をクリアコート層の形成に使用する場合、開環時に使用できるようになる保護されたヒドロキシル基は、典型的には、シーラントを形成するために使用されるイソシアネートと反応させるための反応部位をクリアコート層内に提供するためのものであるが、このことは下記にさらに詳しく説明する。
【0026】
エポキシド基を含む成分は、典型的には、架橋可能なカルバメート官能性樹脂よりもゆっくりと反応する。すなわちエポキシド基を含む成分は、架橋可能なカルバメート官能性樹脂、その他のあらゆる架橋可能な樹脂、アミノプラスト、およびその他のあらゆる架橋剤の間の反応よりも速度が遅い。しかしながら、状況によっては、エポキシド基を含む成分が、架橋可能なカルバメート官能性樹脂、その他のあらゆる架橋可能な樹脂、アミノプラスト、およびその他のあらゆる架橋剤のうちの1つまたは複数と反応しうることは明らかである。したがって、本質的には本発明の実施にいかなるエポキシド基を含む成分を使用してもよいが、エポキシド基を含む成分は、好ましくはコーティング組成物中の他のどの成分と反応する基も実質的には含まない。そのような基を「実質的に含まない」とは、コーティング組成物中のいかなる成分とエポキシド基上のいかなる反応性成分との間の反応度も、コーティング系のコート間接着性へのあらゆる望ましくない悪影響を避けるのに十分なだけ低いこと意味する。望ましくない悪影響は、典型的には、エポキシド基を含む成分が、架橋可能なカルバメート官能性樹脂、その他の架橋可能な樹脂、特定のアミノプラスト、またはその他の架橋剤と反応する基を分子1個につき平均して約2個未満有する場合に回避される。エポキシド基を含む成分は、典型的には、シーラントを形成するために使用されるイソシアネートと反応させるための反応部位をクリアコート層内に提供するためのものであることから、エポキシド基を含む成分は、クリアコート層内を移動して、クリアコート層の表面付近に集中することが好ましい。架橋可能なカルバメート官能性樹脂、その他の架橋可能な樹脂、特定のアミノプラスト、またはその他の架橋剤と直接反応するエポキシドを含む成分上の基を最小限にする、または排除することによって、硬化の初期段階においてこの移動が可能になる。その後の硬化時には、エポキシド基は典型的には反応して、シーラントとの反応に使用できるヒドロキシル基を形成する。エポキシド基を含む成分は、エポキシドを含む成分がクリアコート層の表面付近に集中することができるように、クリアコート層内でのエポキシド基を含む成分の移動を促進する脂肪鎖をさらに含んでもよい。脂肪鎖は、典型的には約1〜約25個の炭素原子を含む。
【0027】
本発明の目的で適切なエポキシド基を含む成分は、当該技術分野で既知である。エポキシド基を含む成分は、一般式:
【化2】
[式中、R1、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立して、H、ポリマーまたは非ポリマーでよく、また不飽和および/またはヘテロ原子を含有していてもよい有機基であるか、あるいはR1もしくはR2のうちの1つがR3もしくはR4のうちの1つと一緒に、不飽和および/またはヘテロ原子を含有していてもよい環を形成してもよく、ただしR1〜R4のうちの少なくとも1個は、H以外である]のものでよい。有用なエポキシド基を含む成分は、アルコール、例えばブタノールまたはトリメチロールプロパンから、エピハロヒドリン(例えば、エピクロロヒドリン)との反応によって、またはアリル基と過酸化物との反応によって製造することができる。オリゴマーもしくはポリマーポリエポキシド基、例えばグリシジルメタクリレート、またはエポキシ末端ポリグリシジルエーテル、例えばビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBPA)を含有するアクリルポリマーまたはアクリルオリゴマーも使用することができる。エポキシド化ポリウレタン樹脂もしくはポリエステル樹脂は、当該技術分野で既知のOH基含有ポリウレタンもしくはポリエステルをエピハロヒドリンと反応させることによって製造することができる。また、エポキシド基を含む成分は、イソシアネート末端成分、例えばモノマー、ポリマー、もしくはオリゴマーポリイソシアネートをグリシドールと反応させることによって製造することもできる。また、その他の既知のポリエポキシド基、例えばエポキシノボラックを使用してもよい。本発明の目的で特に適切なものは、脂肪族グリシジルメタクリレートである。これは脂肪族グリシジルメタクリレートがクリアコート層内を移動して、クリアコート層の表面に集中することを可能にする脂肪鎖を含んでいる。エポキシド基を含む成分は、好ましくは、架橋可能なカルバメート官能性樹脂100g当たり、エポキシ当量約0.0001〜約0.05の量で使用される。
【0028】
また、当然ながら、本発明のコーティング組成物中にはその他の成分も含まれていてよく、本発明のコーティング組成物は上記に記載した成分のみに限定されない。そのような他の成分は、当該技術分野で既知である。
【0029】
上記に記載したように、本発明のコーティング系は、クリアコート層と、場合によっては少なくとも1つのサブクリアコート層とを含む。少なくとも1つのサブクリアコート層は、ベースコート層、プライマー層、および/または当該技術分野で既知のその他のサブクリアコート層を含みうる。一実施形態では、コーティング系は、シーラントと、クリアコート層と、サブクリアコート層とを含んでもよい。別の実施形態では、コーティング系はクリアコート層のみを含んでもよく、場合によってはサブクリアコート層も含んでよい。例えば、このコーティング系を車体上に使用する場合、コーティング系は、典型的には、ガラスを車体に結合したい位置にシーラントを含む。しかしながら、車体上のガラスを結合したくない別の位置では、コーティング系にシーラントを含まなくてよい。さらに、別の適用例では、コーティング系はクリアコート層のみを含んでもよい。
【0030】
クリアコート層は、架橋可能なカルバメート官能性樹脂と上記に記載の特定のアミノプラスト、すなわちアルデヒドとメラミンとの反応生成物を含むアミノプラストとの反応生成物を含み、このアミノプラストは、上記に特定した含有量のイミノ基と、アルキロール基と、アルコキシアルキル基とを有する。言い換えると、クリアコート層は、典型的には、上記に詳細に記載したコーティング組成物から形成される。したがって、クリアコート層が、上記に記載したその他の架橋可能な樹脂またはその他の架橋剤の反応生成物をさらに含んでもよいことは明らかである。
【0031】
架橋可能なカルバメート官能性樹脂と特定のアミノプラストとから形成されたクリアコート層は、アミノプラストによるカルバメート硬化の結果として生じる少なくともいくつかの架橋を含む。典型的には、クリアコート層内の総架橋密度の少なくとも約10%は、アミノプラストによるカルバメート硬化の結果として生じるウレタン結合である。当然ながら、上記に記載のその他の特定の架橋剤もアミノプラストとともに含まれていてよく、またその他の架橋剤によるカルバメート硬化の結果として生じるウレタン結合が、クリアコート層内の架橋密度のバランスを形成してもよい。あるいは、アミノプラストによるカルバメート硬化の結果として生じるウレタン結合のほかに、別の種類の架橋が、クリアコート層内の架橋密度の一部を形成していてもよい。
【0032】
少なくとも1つのサブクリアコート層は、サブクリアコート樹脂と第2の架橋剤との反応生成物を含む。少なくとも1つのサブクリアコート層は、典型的には、ベースコート層、プライマー層、およびそれらの組み合わせの群から選択される。一実施形態において、少なくとも1つのサブクリアコート層がベースコート層を含む場合、サブクリアコート樹脂は、クリアコート層が架橋可能なカルバメート官能性樹脂から形成されるコーティング系での使用が知られているベースコート樹脂を含んでいてもよい。さらに、少なくとも1つのサブクリアコート層がベースコート層を含む場合、第2の架橋剤は、典型的には、クリアコート層を形成するために使用されるものと同じ特定のアミノプラストを含む。しかしながら、第2の架橋剤中に、追加の架橋剤または異なる架橋剤が含まれていてもよいことは明らかである。少なくとも1つのサブクリアコート層は、ベースコート層に加えて、またはベースコート層の代わりに、プライマー層を含んでいてもよい。複数のサブクリアコート層を含むコーティング系の場合、各サブクリアコート層を形成するために使用される種々のサブクリアコート樹脂および第2の架橋剤は、同じであっても異なってもよい。種々のサブクリアコート層、例えばベースコート層およびプライマー層などを形成するために使用される樹脂および架橋剤は、当該技術分野で既知である。
【0033】
架橋可能なカルバメート官能性樹脂を用いてクリアコート層を形成する場合に、ベースコート層、プライマー層、またはその他のサブクリアコート層を形成するのに適していることが当該技術分野で知られているいかなる化学的構成を用いて、本発明のコーティング系中のベースコート層、プライマー層、またはその他のサブクリアコート層を形成してもよい。クリアコート層を含む、コーティング系内の種々の層を形成するために使用する化学的構成は、溶剤型または水性の構成であってよく、あるいは粉体または粉体/スラリーの形態で塗布してもよい。化学的構成は、典型的には溶剤型の構成であるが、これはこのような化学的構成においてはコーティング組成物の固形分が問題となりがちであるため、また10%を上回る高いイミノ含有量を有するアミノプラストをこのような化学的構成で使用することは、そのようなアミノプラストに付随する高い粘度により特に難しいためである。
【0034】
クリアコート層およびサブクリアコート層は、典型的には、下地上にウェットオンウェットで形成される。例えば、典型的にはプライマー層が下地上に形成され、プライマー層の硬化が完了する前に、すなわちプライマー層がまだ濡れている間に、プライマー層上にベースコート層が形成され、典型的には、プライマー層およびベースコート層の硬化が完了する前に、すなわちプライマー層およびベースコート層の双方がまだ濡れている間に、ベースコート層上にクリアコート層が形成される。各層が配置されたあと、当該技術分野で既知の方法によって、これらの層を完全に硬化させる。
【0035】
シーラントは、典型的には、クリアコート層とベースコート層(存在する場合)とが完全に硬化したあと、クリアコート層上に形成される。しかしながら、場合によっては、シーラントをベースコート層上に形成してもよい。これは例えば、クリアコート層の規格外の膜厚が生じた場合などである。あるいは、場合によっては、クリアコート層の完全な硬化の前に、クリアコート層上にシーラントを形成してもよい。
【0036】
シーラントは、当該技術分野で周知である。本発明の目的で適切なシーラントには、イソシアネート成分とイソシアネート反応性成分との水活性化反応生成物を含むものがある。本発明の目的で、ポリウレタンを形成することで当該技術分野で知られているあらゆるイソシアネート、例えば典型的なジイソシアネートは、シーラント成分のイソシアネート成分に適している。また、本発明の目的で、イソシアネート反応性成分は、典型的にはポリアミン、すなわち分子1個につき平均少なくとも2個のアミン基を有する成分を含む。水を使用して、イソシアネート成分と反応させることによって、イソシアネート成分とイソシアネート反応性成分との反応を活性化する。活性化に必要な量の水は、典型的には、シーラントの周囲空気中の水分によって提供されるが、この水は、イソシアネート反応性成分によって導入してもよく、あるいはイソシアネート成分とイソシアネート反応性成分との反応時に、イソシアネート成分および/またはイソシアネート反応性成分と混合してもよい。本発明の目的で適切なシーラントの具体的な例は、Dow Automotiveから市販されているBetaseal 57302フロントガラス用ウレタン接着剤である。
【0037】
コーティング系を介して、特にコーティング系中のシーラントを介してガラスを下地に結合させて、本発明による物品を形成する。シーラントと、クリアコート層と、場合によってはサブクリアコート層とを含むコーティング系を介して、特にコーティング系に特定のアミノプラストが含まれる場合に、ガラスと下地との間に限界接着強度を達成することができる。限界接着強度とは、MVSS 212を満たす、ガラスと下地との間の接着性を意味する。限界接着強度は、典型的には、クリアコート層の厚さ少なくとも0.7ミルで達成される。注目すべき点は、シーラントとクリアコート層との間に塗布する反応性プライマーを含まずに、限界接着強度を達成することができることである。このような系は、当技術分野において、一般にプライマーレス系と称され、そのようなプライマーを使用せずに達成されるMVSS接着性は、一般にプライマーレスMVSS接着性と称される。実験室での研究では、典型的には、シーラント、クリアコート層、およびベースコート層を有するコーティング系を含む板状試験片を製造する。クリアコート層は、徐々に厚みが減少するV字状に形成する。ガラスとシーラントとの間の接着強度は典型的には既知であり、これは、典型的にはガラスと下地との間の結合の最も弱い点である、シーラントとクリアコート層との間の接着性である。したがって、クリアコート層からシーラントを引きはがし、もはや手でシーラントをクリアコート層から引きはがすことができない、「最低合格厚」とみなされる地点でクリアコート層の厚みを観察することによって、シーラントとクリアコート層との間の結合をテストする。より低いクリアコート層の最低合格厚は、シーラントとクリアコート層との間のより良好な接着強度に対応し、限界接着強度は、典型的には、約0.8ミルの厚さのクリアコート層でもはや手でシーラントをクリアコート層から引きはがすことができない場合に達成される。目標とするクリアコート層の厚みは2.0ミルであるが、0.5ミルの薄さのクリアコートで十分な接着強度が達成されることが望ましい。目標とするサブベースコートの厚みは0.5〜1.0ミルであるが、2.0ミルの薄さのベースコートで十分な接着強度が達成されることが望ましい。最も望ましいのは、2.0ミルのサブクリアコート層と0.5ミルのクリアコート層とで十分な接着強度が達成される場合である。
【0038】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであり、制限するものではない。
【実施例】
【0039】
コーティング系内のクリアコート層とシーラントとの間の接着性を明らかにする目的で、クリアコート層とベースコート層とを含むコーティング系を下塗りしたスチールパネル上に製造することができる。使用できるベースコート組成物は、ブルーメタリックのハイソリッド溶剤型ベースコートをベースとするものであってよい。以下の実施例においてベースコート層を形成するために使用できる具体的なベースコート組成物を下記の第1表にまとめる。特記しない限り、量は全てそれぞれのベースコート組成物の総質量に対する質量パーセントである。
【表1】
【0040】
第1のアミノプラストは、アミノプラストの形成前にメラミン中に存在する反応部位の総数に対する基のパーセンテージとして、イミノ基約1%未満と、メチロール基約4%と、ブトキシメチル基とメトキシメチル基の組み合わせ約95%とを有する。第1のアミノプラストは、Ineos(米国ミズーリ州セントルイス)から市販されている。
【0041】
第2のアミノプラストは、アミノプラストの形成前にメラミン中に存在する反応部位の総数に対する基のパーセンテージとして、イミノ基約1%未満と、メチロール基約17%とを有し、このメチロール基のうち約83%はメタノールでメチル化されている。第2のアミノプラストは、Cytec Industries, Inc.(米国ニュージャージー州ウェストパターソン)から市販されている。
【0042】
UVA溶液Aは、Ciba Specialty Chemicals(米国ニューヨーク州タリータウン)から市販されているTinuvin 400(登録商標)である。
【0043】
以下の実施例においてクリアコート層を形成するために使用できる具体的なクリアコート組成物は、米国特許第5,639,828号に記載されているものを本発明による特定のアミノプラストを加えることによって改質したものであり、これは下記の第2表にまとめる。
【表2】
【0044】
UVA溶液Bは、Ciba Specialty Chemicals(米国ニューヨーク州タリータウン)から市販されているTinuvin(登録商標) 928の30質量%溶液である。
【0045】
第3のアミノプラストは、アミノプラストの形成前にメラミン中に存在する反応部位の総数に対する基のパーセンテージとして、イミノ基約1%未満と、メチロール基約6%と、メチルメトキシ基約93%とを含む。第3のアミノプラストは、Cytec Industries, Inc.から市販されている。
【0046】
コーティング系を製造するために、ベースコート組成物を下塗りしたスチールパネルに塗布して、乾燥膜厚1.5ミルの厚さを有するベースコート層を形成し、ベースコート層上にクリアコート組成物を塗布する前に、室温で少なくとも5分間フラッシュする。クリアコート組成物をベースコート層にV字状に塗布して、乾燥膜厚0.1〜2.0ミルの厚さを有するクリアコート層を形成する。その後、クリアコート層とベースコート層とを室温で少なくとも10分間フラッシュし、スチールパネルのメタル温度275°Fで、炉内で10分間焼き付ける。
【0047】
ベースコート層とクリアコート層とを含むパネルを炉内から取り出したあと、シーラントを塗布する前にパネルを一晩おく。シーラントは、Dow Automotiveから市販されている、Betaseal 57302フロントガラス用ウレタン接着剤とする。シーラントのビードをクリアコートのV字の方向に沿って塗布する。シーラントを相対湿度50%、75°Fで72時間硬化させる。硬化後、シーラントをパネルから引きはがす。シーラントは、クリアコート膜厚が低い地点で接着性が弱く、クリアコート厚のV字に沿ったある地点で良好な接着性が達成される。本明細書において、良好な接着性とは、破壊することなくパネルからもはや手でシーラントを引きはがすことができないだけの十分な高さの接着性である。良好な接着性を達成するために必要とされる最低クリアコート厚を記録し、第3表に示す。クリアコート層の厚みのより低い値は、より良好な接着性を表わしている。
【表3】
【0048】
上記の表から明らかなように、ベースコート組成物またはクリアコート組成物のいずれかに、特定のアミノプラストを含む本発明による組成物を使用したときに、限界接着強度を達成するための最低クリアコート膜厚のより低い値が達成され、クリアコート組成物およびベースコート組成物の双方に、特定のアミノプラストを含む本発明による組成物を使用したときに、限界接着強度を達成するための最低クリアコート膜厚の最も低い値が達成される。したがって、実施例は、コーティング系とシーラントとの間の限界接着強度を達成するための最低クリアコート膜厚に対する、本発明の組成物に使用される特定のアミノプラストの効果を明らかに示している。
【0049】
本発明は例示的に記載されており、使用されている用語は、限定的な言葉としてではなくむしろ説明的な言葉としての性質を有するものと理解すべきである。当然ながら、上記の教示を踏まえて、本発明の多くの修正形態および変形形態が可能である。したがって、本発明の特許請求の範囲内で、明確に記載されているような形以外でも本発明を実施することができることは明らかである。