(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
処理槽内に貯留されたフッ酸(HF)、リン酸(H
3PO
4)あるいは硫酸(H
2SO
4)、アンモニア過酸化水素水(NH
3,H
2O
2)等の薬液や純水といった処理液中に基板を浸漬させて、洗浄、エッチング等の処理を行う基板処理装置においては、基板保持具(リフタ)によって複数枚の基板を保持した状態で、その基板保持具を処理槽の内部と上方位置との間で移動可能となっている。まず、基板保持具を処理槽内へ配置させることにより、処理槽内の処理液中に基板を浸漬させて基板を処理し、処理液による基板への浸漬処理が終了すると、基板保持具を処理槽の内部から上方位置へ引き上げ、IPA(イソプロピルアルコール)、窒素(N
2)ガス等の乾燥ガスを基板に供給して、基板に対する乾燥を行う。この一連の処理で使用される基板保持具は、複数枚の基板(例えば、50枚)を互いに接触させることなく起立姿勢で水平方向に配列させて保持することができる構成を有している
。
【0003】
従来からの基板保持具は、鉛直方向に配設され処理槽の内部と外部との間で移動可能に支持された移動部材と、それぞれ一端部が移動部材の下端部分に固着され水平方向に配設された複数の基板保持枠(例えば、3本)と、これらの基板保持枠のそれぞれの他端部に固着され鉛直方向に配設された固定枠と、各基板保持枠にそれぞれ固設され基板の下端縁と係合する複数の基板保持溝を有し、複数枚の基板を相互に僅かな間隔をあけて、それぞれの基板を起立姿勢で水平方向に配列させて保持する保持部材とを備えている。そして、これらの複数の基板保持枠には、移動部材の下端部分の中央に固設された中央の基板保持枠、および、リフタ部材の下端部分の左・右にそれぞれ固設された左・右の基板保持枠の合計3本の基板保持枠がある。
【0004】
従来から、これら複数の基板支持枠のうち、各々の基板支持枠には左右2つの保持部材が固定具(ボルトおよびナット)によって固定されている。つまり、1つの基板保持具では6つの保持部材があり、これら保持部材が基板の下端部を6箇所で保持している。なお、基板保持枠及び保持部材には、固定具のボルトを挿通させるためのねじ孔が水平方向に形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の基板保持具では、複数枚の基板を保持した基板保持具を処理槽に貯留された処理液中に浸漬させた際に、基板支持枠に対して固定具により固定されている保持部材のねじ孔に処理液が入り込んでしまう。そして、基板保持具を処理槽の内部から上方位置へ引き上げ、乾燥ガスを基板に供給して基板を乾燥させると、保持部材のねじ孔に入り込んだ処理液の液滴が、例えば基板保持枠と保持部材との間等から出てきて、この処理液の液滴等が原因で、基板表面の保持部材近傍で、乾燥ムラが発生してしまうという問題がある。特に、基板の乾燥処理を減圧下で行った場合、ねじ孔と処理雰囲気との圧力差から処理液の液滴が基板表面に出てきやすくなる。
【0007】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、複数枚の基板を乾燥させる際に、基板表面における乾燥ムラの発生を防止できる基板保持具、および当該基板保持具を備える基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数枚の基板を起立姿勢で配列させて保持する基板保持具において、処理液が貯留されている処理槽の内部と前記処理槽の上方位置との間で移動可能である移動部材と、前記移動部材に固着され、複数枚の基板の配列方向に沿って水平方向に配置された複数の基板保持枠と、基板の下端部に接触して基板を保持する保持部材と、前記基板保持枠に形成された第1の孔と前記保持部材に形成された第2の孔とを挿通させて、前記基板保持枠に前記保持部材を取り付ける固定具と
、前記保持部材と前記固定具との間にワッシャーとを備え、前記保持部材には、処理液を前記第2の孔よりも下側に流すための直線の切欠部が前記第2の孔から連続形成され
、前記ワッシャーの下部に処理液が流れる切欠部が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、
複数枚の基板を起立姿勢で配列させて保持する基板保持具において、処理液が貯留されている処理槽の内部と前記処理槽の上方位置との間で移動可能である移動部材と、前記移動部材に固着され、複数枚の基板の配列方向に沿って水平方向に配置された複数の基板保持枠と、基板の下端部に接触して基板を保持する保持部材と、前記基板保持枠に形成された第1の孔と前記保持部材に形成された第2の孔とを挿通させて、前記基板保持枠に前記保持部材を取り付ける固定具と、前記保持部材と前記固定具との間にワッシャー
と、を備え、前記保持部材には、処理液を前記第2の孔よりも下側に流すための直線の切欠部が前記第2の孔から連続形成され、前記ワッシャーの下部で、かつ前記保持部材側に処理液が流れる溝が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
さらに、請求項4に記載の発明は、処理液に浸漬させて基板を処理する基板処理装置において、処理液を貯留する処理槽と、前記処理槽に処理液を供給する処理液供給手段と、請求項1
または請求項
2のいずれかに記載の基板保持具とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る基板保持具及び基板処理装置によれば、固定具により基板保持枠に取り付けられた保持部材の第2の孔よりも下側に処理液が流れる切欠部が形成されているので、第2の孔に処理液の液滴がたまることがなく、複数枚の基板を乾燥させる際に、処理液の液滴が原因で基板表面に発生する乾燥ムラを防止できるという顕著な効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明に係る基板保持具及び基板処理装置の最良の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
<基板処理装置の構成>
まず、本発明の実施形態に係る基板処理装置について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る基板処理装置の概略構成の一例を示す模式的断面図であり、
図2は、この基板処理装置の構成要素である基板保持具の主要部を正面から見た拡大断面図であり、
図3は、基板保持具の主要部を部分的に破断した状態で示す側面図である。
【0015】
この基板処理装置は、
図1に示すように、ウエハ等の複数枚の基板を一括して処理するバッチ式の基板洗浄・乾燥装置である。この基板処理装置は、処理液を貯留する処理槽10、および、複数枚の基板W(例えば、50枚)を互いに接触させることなく、起立姿勢で水平方向に配列させて保持するリフタ12を備えている。リフタ12は、処理槽10の内部へ基板Wを搬入して処理槽10内の処理液中に基板Wを浸漬させるとともに、処理槽10内の処理液中から基板Wを引き上げて処理槽10の上方位置へ基板Wを搬出する。なお、このリフタ12は、本発明の基板保持具に相当する。
【0016】
処理槽10の下部には、一対の吐出管14が設けられており、この吐出管14には、処理槽10内に処理液を噴出する複数の噴出孔(図示省略)が、長手方向に沿って水平方向に形成されている。この吐出管14には、フッ酸(HF)、リン酸(H
3PO
4)あるいは硫酸(H
2SO
4)等の薬液や純水といった処理液の供給源(図示省略)に、処理液供給管16を介して連通接続されている。なお、この一対の吐出管14及び処理液供給管16は、本発明の処理液供給手段に相当する。
【0017】
処理槽10の底部には排液口18が設けられ、排液口18に排液管20が連通して接続されている。処理槽10の上部外周には、処理槽10の上部から溢れ出た処理液が流入する外槽22が設けられており、外槽22の底部に設けられた排液口に排液管24の上流側一端が連通して接続されている。
【0018】
処理槽10の上方位置には、乾燥ガスを処理槽10の上方位置に供給する一対の供給ノズル23が設けられている。この一対の供給ノズル23には、IPA(イソプロピルアルコール)、窒素(N2)ガス等の供給源(図示省略)に、ガス供給管25を介して連通して接続されている。
【0019】
リフタ12は、
図2および
図3に示すように、鉛直方向に配設された板状の移動部材26と、この移動部材26の下端部分にそれぞれ一端部が固着されて水平方向に配設された複数の基板保持枠28、30と、固定枠32を備える。
図2の図示例では、基板保持枠28が移動部材26の下端部分の中央に固設されており、一対の基板保持枠30、30が、移動部材26の下端部分の紙面向かって左・右にそれぞれ固設されている。これらの基板保持枠28、30のそれぞれの他端部には、一体的に固着され鉛直方向に配設された固定枠32、ならびに、各基板保持枠28、30にそれぞれ固設され基板Wの下端部に接触して基板Wの下端を保持する第1の保持部材34a、36a及び第2保持部材34b、36bが備えられている。なお、リフタ12を構成する移動部材26、基板保持枠28、30および固定枠32は、それぞれSiCで形成されている。また、第1の保持部材34a、36a及び第2保持部材34b、36bおよび固定具38は、それぞれ例えば、処理液に対する耐薬品性に優れたPTFE、PFA、PVDF、PCTFE、PEEK等のフッ素樹脂で形成されている。
【0020】
移動部材26は、支持・移動機構(図示省略)により処理槽10の内部と処理槽10の上方位置との間で昇降可能である。処理槽10内で基板Wに対して処理液による洗浄・エ
ッチング等の処理を行うときは、支持・移動機構により、移動部材26は、処理槽10内に移動させられる。処理槽10の上方位置において、基板Wに対して乾燥を行うときは、支持・移動機構により、移動部材26は、処理槽10の上方位置に移動させられる。また、第1の保持部材34a、36a及び第2保持部材34b、36bは、
図3に示すように、基板Wの下端縁と係合する複数の基板保持溝40a、40b、42a、42bをそれぞれ有しており、第1の保持部材34a、36a及び第2保持部材34b、36bにより、複数枚の基板Wを相互に僅かな間隔をあけて一定ピッチで水平方向に配列させて保持することができる。
【0021】
<第1の実施形態>
次に、第1の実施形態に係る基板保持具について説明する。なお、3つある基板保持枠28、30は略共通の形態をしているので、第1の実施形態においては、
図2の図示方向からみて右側の基板保持枠30を一例に、以下説明する。
図4は、第1の実施形態に係る基板保持具の
図2の図示方向からみて右側の基板保持枠30の部分拡大図であり、
図5(a)(b)は、第1の実施形態に係る基板保持具の保持部材36a、36b、
図5(c)は、第1の実施形態に係る基板保持具のワッシャー37a(37b)の図である。
【0022】
基板保持枠30に固設された第1の保持部材36aおよび第2の保持部材36bは、細長い薄板材からなり、
図4に示すように基板保持枠30の左右両側面にそれぞれ固定具38のボルト38a及びナット38bによって固定されている。
図4紙面向かって左側の第1の保持部材36aとナット38bとの間には、第1のワッシャー37aが挟みこまれている。また、
図4紙面向かって右側の第2の保持部材36bとボルト38aとの間には、第2のワッシャー37bが挟みこまれている。つまり、一方向側(
図4では左側)から、第1のワッシャー37a、第1の保持部材36a、基板保持枠30、第2の保持部材36b、及び第2のワッシャー37bの順番で、ボルト38a及びナット38bにより固定されている。
【0023】
図4に示すように、基板保持枠30には、ボルト38a用の貫通孔30aが形成されている。この貫通孔30aは、基板保持枠30の長手方向に沿って、水平方向に4箇所形成されている(図示省略)。なお、この貫通孔30aは、本発明の第1の孔に相当する。
【0024】
図5(a)は、第1の実施形態に係る基板保持具の第1の保持部材36aの一部側面図を示している。この第1の保持部材36aの下部には、ボルト38a用の貫通孔36cが形成されている。この貫通孔36cは、第1の保持部材36aの長手方向に沿って、水平方向に4箇所形成されている(図示省略)。また、第1の保持部材36aにおける貫通孔36cよりも下側に直線の切欠部36eが形成されている。なお、この貫通孔36cは、本発明の第2の孔に相当する。
【0025】
図5(b)は、第1の実施形態に係る基板保持具の第2の保持部材36bの一部側面図を示している。第2の保持部材36bは、第1の保持部材36aより高さ方向にやや長い形状をしている。この第2の保持部材36bの下部には、ボルト38a用の貫通孔36dが形成されている。この貫通孔36dは、第2の保持部材36bの長手方向に沿って、水平方向に4箇所形成されている(図示省略)。また、第2の保持部材36bにおける貫通孔36dよりも下側に直線の切欠部36fが形成されている。なお、この貫通孔36dは、本発明の第2の孔に相当する。
【0026】
図5(c)はワッシャーの側面図である。第1のワッシャー37a及び第2のワッシャー37bはともに、共通の形状をしている。この第1のワッシャー37a及び第2のワッシャー37bは、円形のリング状の形状をしている。第1のワッシャー37aの下部に直線の切欠部37cが形成され、第2のワッシャー37bの下部に直線の切欠部37dが形成されている。
【0027】
上述したように、第1の実施形態では、第1の保持部材36aおよび第2の保持部材36bの下部には、ボルト38a用の貫通孔36c、貫通孔36dが複数箇所形成されており、しかも第1の保持部材36aにおける貫通孔36cよりも下側に直線の切欠部36eが形成されているとともに、第2の保持部材36bにおける貫通孔36dよりも下側に直線の切欠部36fが形成されているので、貫通孔36c、貫通孔36dに処理液の液滴がたまることがない。したがって、複数枚の基板Wを乾燥させる際に、処理液の液滴が原因で発生する基板W表面における乾燥ムラを防止できる。
【0028】
また、第1のワッシャー37aの下部に直線の切欠部37cが形成され、第2のワッシャー37bの下部に直線の切欠部37dが形成されているので、貫通孔36c及び貫通孔36dから切欠部37c及び切欠部37dを通って、スムーズに処理液の液滴を排出することができる。
【0029】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る基板保持具について説明する。なお、3つある基板保持枠28、30は略共通の形態をしているので、第2の実施形態においては、
図2の図示方向から見て右側の基板保持枠30を一例に、以下説明する。
図6は、第2の実施形態に係る基板保持具の
図2の図示方向から見て右側の基板保持枠30の部分拡大図であり、
図7(a)(b)は、第2の実施形態に係る基板保持具の保持部材36a、36b、
図7(c)は、第2の実施形態に係る基板保持具のワッシャー37a(37b)の図である。
【0030】
基板保持枠30に固設された第1の保持部材36aおよび第2の保持部材36bは、細長い薄板材からなり、
図6に示すように基板保持枠30の左右両側面にそれぞれ固定具38のボルト38a及びナット38bによって固定されている。
図6紙面向かって左側の第1の保持部材36aとナット38bとの間には、第1のワッシャー37aが挟みこまれている。また、
図6紙面向かって右側の第2の保持部材36bとボルト38aとの間には、第2のワッシャー37bが挟みこまれている。つまり、一方向側(
図6では左側)から、第1のワッシャー37a、第1の保持部材36a、基板保持枠30、第2の保持部材36b、及び第2のワッシャー37bの順番で、ボルト38a及びナット38bにより固定されている。
【0031】
図6に示すように、基板保持枠30には、ボルト38a用の貫通孔30aが形成されている。この貫通孔30aは、基板保持枠30の長手方向に沿って、水平方向に4箇所形成されている(図示省略)。なお、この貫通孔30aは、本発明の第1の孔に相当する。
【0032】
図7(a)は、第2の実施形態に係る基板保持具の第1の保持部材36aの一部側面図を示している。この第1の保持部材36aの下部には、ボルト38a用の貫通孔36cが形成されている。この貫通孔36cは、第1の保持部材36aの長手方向に沿って、水平方向に4箇所形成されている(図示省略)。また、第1の保持部材36aにおける貫通孔36cよりも下側に直線の切欠部36eが形成されている。なお、この貫通孔36cは、本発明の第2の孔に相当する。
【0033】
図7(b)は、第2の実施形態に係る基板保持具の第2の保持部材36bの一部側面図を示している。第2の保持部材36bは、第1の保持部材36aより高さ方向にやや長い形状をしている。この第2の保持部材36bの下部には、ボルト38a用の貫通孔36dが形成されている。この貫通孔36dは、第2の保持部材36bの長手方向に沿って、水平方向に4箇所形成されている(図示省略)。また、第2の保持部材36bにおける貫通孔36dよりも下側に直線の切欠部36fが形成されている。なお、この貫通孔36dは、本発明の第2の孔に相当する。
【0034】
図7(c)はワッシャーの側面図である。第1のワッシャー37a及び第2のワッシャー37bはともに、共通の形状をしている。この第1のワッシャー37a及び第2のワッシャー37bは、円形のリング状の形状をしている。第1のワッシャー37aの下部に直線の溝37eが形成され、第2のワッシャー37bの下部に直線の溝37fが形成されている。
【0035】
上述したように、第2の実施形態では、第1の保持部材36aおよび第2の保持部材36bの下部には、ボルト38a用の貫通孔36c、貫通孔36dが複数箇所形成されており、しかも第1の保持部材36aにおける貫通孔36cよりも下側に直線の切欠部36eが形成されているとともに、第2の保持部材36bにおける貫通孔36dよりも下側に直線の切欠部36fが形成されているので、貫通孔36c、貫通孔36dに処理液の液滴がたまることがない。したがって、複数枚の基板Wを乾燥させる際に、処理液の液滴が原因で発生する基板W表面における乾燥ムラを防止できる。
【0036】
また、第1のワッシャー37aの下部に直線の溝37eが形成され、第2のワッシャー37bの下部に直線の溝37fが形成されているので、貫通孔36c及び貫通孔36dから溝37e及び溝37fを通って、スムーズに処理液の液滴を排出することができる。