特許第5871524号(P5871524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871524
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】部品装着ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20160216BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   B25J15/06 Z
   H05K13/04 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-186826(P2011-186826)
(22)【出願日】2011年8月30日
(65)【公開番号】特開2013-49097(P2013-49097A)
(43)【公開日】2013年3月14日
【審査請求日】2014年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】特許業務法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河口 浩二
(72)【発明者】
【氏名】藤城 武史
【審査官】 佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−344627(JP,A)
【文献】 特開2010−253658(JP,A)
【文献】 特開2010−114108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を装着するための部品装着ヘッドであって、
部品を吸着して保持する吸着ノズルと、
その吸着ノズルの先端から空気を吸引するための吸気通路と、
その吸気通路内の一部において、吸引された空気に前記吸気通路の軸線周りに旋回する旋回流を発生させる旋回流発生手段と、
その旋回流発生手段によって旋回させられた空気中から遠心力によって分離して飛ばされた塵埃を集めて吸引された空気から塵埃を除去する集塵手段と
を備えた部品装着ヘッド。
【請求項2】
前記集塵手段が、
前記吸気通路の内面に固定され、前記旋回流発生手段によって旋回させられた空気中から遠心力によって飛ばされた塵埃を捕らえる捕塵部材を含んで構成された請求項1に記載の部品装着ヘッド。
【請求項3】
前記旋回流発生手段が、前記吸気通路の軸線周りに螺旋を描く旋回流を発生させるものとされた請求項1または請求項2に記載の部品装着ヘッド。
【請求項4】
前記旋回流発生手段が、
外周面に螺旋状の溝が形成されて前記吸気通路内に挿入された螺旋溝形成部材を含んで構成され、その溝に沿って空気が流れるようにすることで、前記吸気通路の軸線周りに螺旋を描く旋回流を発生させるものとされた請求項3に記載の部品装着ヘッド。
【請求項5】
当該部品装着ヘッドが、
前記螺旋溝形成部材が嵌入されるとともに、自身の壁部の一部に開口が形成された筒体と、
その筒体の開口に対向して設けられ、前記吸気通路の一部を区画形成するとともに取り外し可能とされた着脱可能部と
を備えた請求項4に記載の部品装着ヘッド。
【請求項6】
前記集塵手段が、
前記吸気通路の内面に固定され、前記旋回流発生手段によって旋回させられた空気中から遠心力によって飛ばされた塵埃を捕らえる捕塵部材を含んで構成され、
その捕塵部材が、前記着脱可能部の内面に固定された請求項5に記載の部品装着ヘッド。
【請求項7】
前記集塵手段が、
前記旋回流発生手段によって遠心力によって飛ばされて前記吸気通路の内面に衝突した後に落下する塵埃を集積させる塵埃集積部を含んで構成され、
前記筒体が、上下方向に延びる状態で配設されるとともに、前記着脱可能部が、自身と前記筒体の外周面との間に隙間がある状態で設けられ、
前記着脱可能部と前記筒体との間の隙間の下端が、前記塵埃集積部として機能する請求項5または請求項6に記載の部品装着ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、部品を吸着保持してその保持した部品を基板に装着するための部品装着ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
部品装着ヘッドは、部品供給装置によって供給される部品を保持し、その部品を、搬送装置によって装着位置に搬送された回路基板に装着するためのものである。そして、その部品装着ヘッドは、部品を吸着して保持するための吸着ノズルを有し、その吸着ノズルの先端から空気を吸引するための吸気通路が設けられている。そして、部品を保持する際、吸着ノズルの先端が部品に当接する前に吸引が開始されるため、空気中の塵埃を吸気通路内に吸い込んでしまう場合がある。吸気通路には、空気の吸引を制御するためのバルブが設けられており、そのバルブに吸い込んでしまった塵埃が達することは望ましくない。そこで、部品装着ヘッドには、例えば、下記引用文献1,2のように、バルブに到達するまでの間に、吸引された空気から塵埃を除去するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−46959号公報
【特許文献1】特開平2−170600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、上記特許文献1に記載の部品装着ヘッドのように、空気を通過させるとともに塵埃の通過を禁止するようなフィルタを吸気通路の途中に配設した場合を考える。そのフィルタを、吸気通路の断面積を変えずに、吸引時に必要な空気の流量,吸着に必要な圧力を確保しようとすると、メッシュの粗いフィルタしか採用できず、微細な粒子まで除去することができない。一方、微細な粒子まで除去するように、メッシュの細かいフィルタを採用してしまうと、吸引時に必要な空気の流量が低下するとともに、フィルタによる圧力損失が大きく十分な負圧を供給できない。換言すれば、吸引時に必要な空気の流量,吸着に必要な圧力を確保するためには、吸気通路の断面積およびフィルタを大きくしなければならない。
【0005】
また、上記特許文献2に記載の部品装着ヘッドは、吸気通路内に吸引時の空気が衝突するように仕切板を設け、その空気の仕切板への衝突により生じる乱流によって、異物を空気と分離するように構成される。しかしながら、そのような構成の部品装着ヘッドでは、空気の流れが一様ではないため、仕切板の手前の空間に全ての塵埃を留まらせるのは難しいと考えられる。つまり、部品装着ヘッドが有する吸引時の空気中の塵埃を除去する機能である除塵機能には、改良の余地が残されており、何らかの改良を施すことにより、部品装着ヘッドの実用性を向上させることが可能である。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用的な部品装着ヘッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願発明の部品装着ヘッドは、吸気通路内の一部において吸引された空気に吸気通路の軸線周りの旋回流を発生させる旋回流発生手段と、旋回流発生手段によって旋回させられた空気中から遠心力によって飛ばされた塵埃を集める集塵手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本願発明の部品装着ヘッドにおいては、旋回流によって塵埃を分離するため、その塵埃は、吸気通路の壁面に向かって飛ばされることになる。本願発明の部品装着ヘッドによれば、吸気通路の壁面に向かって飛ばされる塵埃を、集塵手段によって容易に集めることが可能であり、吸引時の空気中から塵埃を確実に取り除くことが可能である。そのような利点を有することから、本願発明の部品装着ヘッドは、実用性の高いものとなる。
【発明の態様】
【0008】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0009】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、その請求項1に(2)項の技術的特徴を付加したものが請求項2に、請求項1または請求項2に(5)項の技術的特徴を付加したものが請求項3に、請求項3に(6)項の技術的特徴を付加したものが請求項4に、請求項4に(7)項の技術的特徴を付加したものが請求項5に、請求項5に(8)項の技術的特徴を付加したものが請求項6に、請求項5または請求項6に、(9)項の技術的特徴を付加したものが請求項7に、それぞれ相当する。
【0010】
(1)部品を装着するための部品装着ヘッドであって、
部品を吸着して保持する吸着ノズルと、
その吸着ノズルの先端から空気を吸引するための吸気通路と、
その吸気通路内の一部において、吸引された空気に前記吸気通路の軸線周りに旋回する旋回流を発生させる旋回流発生手段と、
その旋回流発生手段によって旋回させられた空気中から遠心力によって飛ばされた塵埃を集める集塵手段と
を備えた部品装着ヘッド。
【0011】
本項に記載の部品装着ヘッドは、吸引の際に空気中に含まれる塵埃を除去する手法に特徴を有しており、遠心力を利用して空気中に含まれる塵埃を吸気通路の壁面に向かって飛ばし、その飛ばした塵埃を集塵手段によって集めるように構成される。つまり、本項の部品装着ヘッドは、旋回流発生手段によって吸気通路の壁面に向かって飛ばすものであるため、本項の部品装着ヘッドによれば、塵埃を容易に集めることができる。
【0012】
塵埃を集める上記「集塵手段」には、例えば、吸気通路の壁面に凹所等を設けて塵埃を集積させるもの、吸気通路の内面に固定して塵埃をキャッチするもの等を採用することができる。したがって、その集塵手段が、いわゆるフィルタのように吸引した空気(以下、「吸引空気」と呼ぶ場合がある)を通過させるような構成とはされていないため、その吸引空気の流れを妨げることがなく、本項の部品装着ヘッドによれば、吸引時に必要な空気の流量を確保すること、吸着に必要な圧力を確保することが可能である。
【0013】
本項に記載の「旋回流発生手段」は、その構成,構造が、特に限定されるものではない。例えば、後に詳しく説明するが、吸気通路内に、その吸気通路の軸線を中心とした円形状の通路が形成されて、その通路内を空気が流れることで旋回流が生じる構成のものとすることができる。また、例えば、気流が吸気通路の軸線回りに旋回するように、吸気ノズルから吸引した空気の流れを変化させる構成のものとすることができる。詳しく言えば、旋回流発生手段は、吸引空気の流れを、吸気通路の軸線方向から吸気通路の内面に沿う方向に変化させることで、旋回流を発生させるような構成とすることができる。具体的に言えば、例えば、吸引空気を、吸気通路内に設けられた内筒に一旦集め、その内筒の側面に設けられた吹出口から吸気通路の内周面に向かって(径方向に対して傾斜した方向に向かって)吹き出すようにすることで、旋回流を発生させるような構成とすることができる。
【0014】
なお、それら旋回流発生手段および集塵手段は、吸気通路内であれば、それらが設けられる位置は、特に限定されない。つまり、吸気ノズルの先端からバルブまでの間のどの位置に設けられてもよい。ただし、集塵手段によって集めた塵埃を、吸気通路内から取り除く必要があるため、その作業が容易に行えるように、吸着ノズルに近い位置であることが望ましい。
【0015】
ちなみに、本項に記載の「吸気通路」は、通路自体のみを意味する概念ではなく、通路を区画形成する部材等をも含む概念である。
【0016】
(2)前記集塵手段が、
前記吸気通路の内面に固定され、前記旋回流発生手段によって旋回させられた空気中から遠心力によって飛ばされた塵埃を捕らえる捕塵部材を含んで構成された(1)項に記載の部品装着ヘッド。
【0017】
本項に記載の態様は、集塵手段として、塵埃をキャッチできるものを採用した態様である。本項に記載の「捕塵部材」には、必ずしも、吸引時の空気を通過させることが可能な、いわゆるフィルタに用いられる部材を採用する必要はなく、例えば、塵埃を静電気によって吸着させるもの,粘着性を有するもの等を採用することが可能である。なお、捕塵部材には、上述のように、いわゆるフィルタに用いられる部材を採用可能であるが、本部品装着ヘッドにおいては、捕塵部材が吸気通路を塞いでいないため、メッシュの細かいものを採用することが可能である。したがって、本項に記載の部品装着ヘッドは、微細な粒子まで分離可能な優れた除塵性能を有するものとなる。
【0018】
(3)前記吸気通路が、前記捕塵部材が内面に固定された部分の少なくとも一部を取り外し可能に構成された(2)項に記載の部品装着ヘッド。
【0019】
本項に記載の態様は、吸気通路を区画形成する部材の一部を、取り外すことが可能とされており、その内側に設けられた捕塵部材を、容易に交換することが可能である。
【0020】
(4)前記集塵手段が、
前記旋回流発生手段によって遠心力によって飛ばされて前記吸気通路の内面に衝突した後に落下する塵埃を集積させる塵埃集積部を含んで構成された(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の部品装着ヘッド。
【0021】
本項に記載の「塵埃集積部」は、例えば、吸気通路の内面に凹所を設けてその内部に塵埃が入り込むような構成のものや、上方に延びる吸気通路の内面に凸所を設けてその凸所の上に塵埃が集積するような構成ものとすることができる。本項の態様においては、その集積した塵埃が、吸引空気に再び混入しないような構成とすることが望ましい。
【0022】
(5)前記旋回流発生手段が、前記吸気通路の軸線周りに螺旋を描く旋回流を発生させるものとされた(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の部品装着ヘッド。
【0023】
本項に記載の態様によれば、吸引空気が旋回する経路が長いため、より確実に塵埃を分離することができる。本項の態様における「旋回流発生手段」は、例えば、チューブとその内部に嵌入されるシャフトとを有し、それらチューブの内周面とシャフトの外周面との少なくとも一方に螺旋状の溝が形成される構成のものとすることができる。
【0024】
(6)前記旋回流発生手段が、
外周面に螺旋状の溝が形成されて前記吸気通路内に挿入された螺旋溝形成部材を含んで構成され、その溝に沿って空気が流れるようにすることで、前記吸気通路の軸線周りに螺旋を描く旋回流を発生させるものとされた(5)項に記載の部品装着ヘッド。
【0025】
本項に記載の態様は、旋回流を螺旋状にするための構造が具体化された態様である。なお、本項の態様においては、螺旋溝形成部材の溝が形成されていない部分と吸気通路の壁面との間には、間隔が設けられていなくてもよく、間隔が設けられていてもよい。それらの間に間隔が設けられていない場合には、集塵手段として、先に述べた捕塵部材を採用することが望ましい。一方、螺旋溝形成部材の溝が形成されていない部分と吸気通路の壁面との間に間隔を設けた場合、その間隔を利用して、塵埃集積部を設けることが可能である。
【0026】
(7)当該部品装着ヘッドが、
前記螺旋溝形成部材が嵌入されるとともに、自身の壁部の一部に開口が形成された筒体と、
その筒体の開口に対向して設けられ、前記吸気通路の一部を区画形成するとともに取り外し可能とされた着脱可能部と
を備えた(6)項に記載の部品装着ヘッド。
【0027】
本項に記載の態様は、螺旋溝形成部材と筒体とによって螺旋状の通路が形成され、その通路の一部が開口するように構成されている。本項に記載の「着脱可能部」は、筒体の外周面に接して開口を塞ぐように設けられてもよく、後に詳しく説明するように、筒体の外周面から離れた位置に設けられてもよい。本項の態様においては、空気中の塵埃は、筒体の開口から外に向かって飛びだそうとするため、その開口から着脱可能部との間に設けられた集塵手段によって集められることになる。その集塵手段の具体的な構成については、後に詳しく説明する。なお、本項に記載の態様は、先に述べた吸気通路の一部を取り外し可能な態様の一態様となっており、集めた塵埃を容易に取り出すことが可能となっている。
【0028】
(8)前記集塵手段が、
前記吸気通路の内面に固定され、前記旋回流発生手段によって旋回させられた空気中から遠心力によって飛ばされた塵埃を捕らえる捕塵部材を含んで構成され、
その捕塵部材が、前記着脱可能部の内面に固定された(7)項に記載の部品装着ヘッド。
【0029】
(9)前記集塵手段が、
前記旋回流発生手段によって遠心力によって飛ばされて前記吸気通路の内面に衝突した後に落下する塵埃を集積させる塵埃集積部を含んで構成され、
前記筒体が、上下方向に延びる状態で配設されるとともに、前記着脱可能部が、自身と前記筒体の外周面との間に隙間がある状態で設けられ、
前記着脱可能部と前記筒体との間の隙間の下端が、前記塵埃集積部として機能する(7)項または(8)項に記載の部品装着ヘッド。
【0030】
上記2つの項に記載の態様は、先に述べた筒体の開口から飛び出す塵埃を手段に限定を加えた態様である。前者の態様は、先に述べた筒体の開口から飛び出す塵埃を捕塵部材でキャッチするように構成された態様であり、後者の態様は、筒体と着脱可能部との間の隙間に塵埃集積部を設けた態様である。なお、上記2つの項の各々に記載の技術的特徴の両者を有する態様においては、捕塵部材から離れた塵埃が、筒体の外周面と捕塵部材との間の隙間に落ちることになり、その塵埃が再び空気に混ざるのを防止することが可能となる。つまり、上記2つの項の両者の技術的特徴を有する態様は、優れた除塵性能を有するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】請求可能発明の実施例である部品装着ヘッドを含んで構成される電子部品装着機を示す斜視図である。
図2図1に示す装着ヘッドの一部を拡大して示す側面図である。
図3図1に示す吸着ノズルの正面断面図である。
図4図3に示す集塵装置を拡大して示す図(図5におけるB−B断面)である。
図5図3に示す集塵装置の上方からの視点における断面図(図4におけるA−A断面)である。
図6図3に示す集塵装置を分解して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、請求可能発明の代表的な実施形態を、実施例として、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。また、〔発明の態様〕の各項の説明に記載されている技術的事項を利用して、下記の実施例の変形例を構成することも可能である。
【実施例】
【0033】
実施例の部品装着ヘッド10を含んで構成される電子部品装着機20は、図1に示すように、大まかには、(a) ベース22と、(b) ベース22に立設された4つのポスト(支柱)24を有するフレーム26(図では、全体の図示は省略されている)と、(c) ベース22上に配設され、回路基板S(以下、単に「基板S」という場合がある)の搬入・搬出を行うとともに、その基板を定められた位置に固定するコンベア装置28と、(d) そのコンベア装置28を挟んでベース22上の前方側および後方側のそれぞれに一列に並んで配設され、それぞれがフィーダ型の部品供給装置として機能する複数の部品フィーダ30(前方側の列のものは一部しか図示されていない)と、(e) フレーム26に支持され、それら複数の部品フィーダ30の各々から供給される電子部品P(以下、単に「部品P」という場合がある)をコンベア装置28によって固定された基板Sに装着する部品装着装置32とを含んで構成されている。ちなみに、以下の説明において、図において矢印で示すように、当該装着機の左右方向をX方向,前後方向をY方向,上下方向をZ方向と呼ぶ場合がある。
【0034】
部品装着装置32は、部品Pを保持してその部品を装着するための部品装着ヘッド10と、その部品装着ヘッド10を移動させるヘッド移動装置40とを含んで構成される。そのヘッド移動装置40は、XYロボット型の移動装置であり、部品装着ヘッド10を、水平面に沿って任意の位置に移動させるものである。部品装着ヘッド10は、インデックス型のヘッドであり、後に詳しく説明する8つの吸着ノズル42を備えている。8つの吸着ノズル42の各々は、負圧の供給(大気圧より圧力を低くすること)によって、部品を吸着保持し、負圧の供給の停止により、吸着保持した部品を自身から離脱させる。なお、図2に示すように、8つの吸着ノズル42の各々は、本部品装着ヘッド10が有するノズルホルダ50によって保持されており、部品装着ヘッド10は、特定の位置にある1つの吸着ノズル42を、ノズル昇降機構(図示省略)によって昇降させることで、吸着ノズル42をZ方向に移動させるように構成されている。
【0035】
つまり、部品装着装置32によって部品Pを保持する際には、まず、部品装着ヘッド10が、ヘッド移動装置40により部品フィーダ30の上方に位置させられる。そして、8つの吸着ノズル42のうちの特定位置にある吸着ノズル42がノズル昇降機構によって下降させられる。その吸着ノズル42に負圧が供給されて、その部品フィーダ30から供給される部品Pが吸着保持される。この吸着保持動作を、順次各吸着ノズル42について繰り返し行うことで、8つの吸着ノズル42の各々によって部品Pが吸着保持される。
【0036】
次いで、部品装着装置32によって部品Pを装着する際には、部品装着ヘッド10が、ヘッド移動装置40により、コンベア装置28によって固定された基板Sにおけるその部品Pが装着位置の上方に位置させられる。そして、特定位置にある吸着ノズル42がノズル昇降機構によって下降させられ、その吸着ノズル42への負圧の供給が断たれて、その部品が装着位置に装着される。この装着動作を、順次各吸着ノズル42について繰り返し行うことで、8つの吸着ノズル42の各々によって吸着保持された部品Pが基板Sに装着される。
【0037】
次に、吸着ノズル42について、図3の断面図をも参照しつつ説明する。吸着ノズル42は、ノズルホルダ50の下端に設けられた取付部52に取り付けられ、着脱可能とされている。そのノズルホルダ50は、装着位置の調整のために部品装着ヘッド10が有するノズル回転機構(図示省略)によって軸線回りに回転させられるように構成されており、吸着ノズル42は、取付部52によって、そのノズルホルダ50に対して相対回転不能に保持される。つまり、吸着ノズル42は、ノズルホルダ50と一体的に回転するように構成されている。なお、そのノズルホルダ50は、概して筒状に形成されたものであり、その内部が、負圧を供給するための通路、つまり、エアを吸引するための吸気通路54を形成するものとされている。
【0038】
吸着ノズル42は、部品吸着時にその部品Pに下端が当接させられるノズル本体60と、そのノズル本体60をそれの下端部が突出した状態で保持するスリーブ62とを含んで構成されている。ノズル本体60は、円筒状のシャフト部材70と、そのシャフト部材70の下端に嵌入・固定されたノズル先端部材72とで構成されている。一方、スリーブ62は、ノズル本体60が嵌入される円筒状の円筒部74と、その円筒部74の外周面から径方向外側に突出するように形成され、吸着保持した部品Pを撮像する際の背景を形成する円盤状の円盤部76とで構成されている。
【0039】
スリーブ62の上端側には、スリーブ62の軸線に直交する方向に貫通する1対の貫通穴80が形成される。一方、ノズル本体60の上端側、詳しくは、シャフト部材70の上端には、それの軸線に平行に延びる1対の長穴82が形成されている。そして、ピン84が、スリーブ62の内部にノズル本体60のシャフト部材70が嵌入された状態で、ノズル本体60の長穴82を挿通しつつスリーブ62に形成された1対の貫通穴80に圧入されている。つまり、そのような構造により、ノズル本体60は、スリーブ62に保持されるとともに、スリーブ62に対して、軸線方向に摺動可能とされている。
【0040】
上記のように構成された吸着ノズル42は、先にも述べたように、ノズルホルダ50の下端に設けられた取付部52に取り付けられる。ノズルホルダ50は、概して筒状に形成されたノズル軸90を主体とするものであり、そのノズル軸90の下端には、L字形状の1対の切欠92が設けられている。吸着ノズル42は、ピン84の両端部の各々を1対の切欠92の各々に沿って係合させつつ、上端をノズル軸90内に嵌入させて取り付けられている。なお、取付部52は、コイルスプリング94によって下方に付勢される円筒状の可動部材96と、切欠92を形成する部分とで、ピン84を挟み込むように構成され、吸着ノズル42は、ノズルホルダ50に対して相対回転不能に保持されるようになっている。
【0041】
ノズルホルダ50のノズル軸90内には、チューブ100が挿入されている。そのチューブ100には、それの軸線に平行に延びる1対の長穴102が形成されている。一方、ノズル軸90には、ノズル軸90の軸線に直交する方向に貫通する1対の貫通穴104が形成される。そして、ピン106が、チューブ100の長穴102を挿通しつつ、ノズル軸90に形成された1対の貫通穴104に圧入されている。そのような構造により、チューブ100は、ノズル軸90に対して、軸線方向に摺動可能とされている。
【0042】
また、そのチューブ100は、圧縮コイルスプリング110によって下方に付勢されている。そのチューブ100の下端面は、吸着ノズル42のノズル本体60の上端面に接している。つまり、吸着ノズル42は、コイルスプリング110によって、ノズル本体60のスリーブ62内に入り込む方向(上方)の移動に対して、ノズル本体60を突出させる方向に付勢されるように構成されている。したがって、吸着ノズル42においては、ノズル本体60が、コイルスプリング110を収縮しつつスリーブ62内に進入することになり、そのコイルスプリング110によって、部品Pを吸着・装着する際にその部品Pに与える衝撃が緩和されるようになっている。
【0043】
上述のような構成により、部品Pを保持する際の吸気用の通路である吸気通路54は、ノズル本体60,チューブ100,ノズル軸90を含んで構成されている。本部品装着機20においては、作業の時間短縮のために、部品Pを保持する際に、吸着ノズル42が部品Pに当接する前に吸引が開始される。そのため、吸気された空気中には塵埃が含まれる場合がある。そこで、本部品装着ヘッド10においては、吸気通路54に、詳しく言えば、ノズル軸90に、空気中に含まれる塵埃を集める集塵手段である集塵装置130が設けられている。
【0044】
その集塵装置130について、図4ないし図6をも参照しつつ、詳しく説明する。図4は、集塵装置130を拡大して示す断面図(図5におけるB−B断面)であり、図5は、集塵装置130の上方からの視点で示す断面図(図4におけるA−A断面)であり、図6は、集塵装置130を分解して示す斜視図である。
【0045】
ノズル軸90は、他の部分に比較して外径の小さな小径部140を有している。その小径部140の内部に、外周面に螺旋状の溝142が形成された円柱状の螺旋溝形成部材144が、隙間無く嵌入されている。詳しく言えば、小径部140の内周面と、螺旋溝形成部材144の溝142が形成されていない外周面とが接する状態で、螺旋溝形成部材144が、小径部140の内部に嵌入されている。その螺旋溝形成部材144が嵌入されたノズル軸90の小径部140には、軸線に平行に延びる6つの開口146が設けられている。そして、塵埃を捕らえる捕塵部材148が、ノズル軸90の小径部140の上方側の大径の部分と下方側の大径の部分とに渡されるとともに、小径部140を覆うようにして巻かれている。なお、捕塵部材148は、微細な網目状のものであり、微細な粒子もその目に入り込ませて捕らえることが可能なものである。その捕塵部材148の上からシリコン樹脂で形成された伸縮性のあるカバーチューブ150が着脱可能に嵌められ、その捕塵部材148は、着脱可能部としてのカバーチューブ150の内周面に固定された状態となっている。ちなみに、そのような構成により、捕塵部材148と、ノズル軸90の小径部140の外周面との間には、隙間がある状態とされている。
【0046】
そのような構成とされた集塵装置130によって、吸着ノズル42の先端から吸引された空気から、塵埃が分離されるとともに集められるようになっている。詳しく言えば、まず、吸着ノズル42の先端から吸引された空気は、ノズル本体60の内部,チューブ100の内部を通って、ノズル軸90内の集塵装置130に達する。そして、ノズル軸の小径部140と螺旋溝形成部材144とによって形成された螺旋状の通路に流入し、溝142に沿って流れることになる。つまり、吸引された空気は、吸気通路54の軸線周りに螺旋を描く旋回流となる。したがって、集塵装置130は、吸気通路54内においてそれの軸線回りの旋回流を発生させる旋回流発生手段を有するものとなっており、その旋回流発生手段は、ノズル軸90の小径部140,螺旋溝形成部材144を含んで構成されている。
【0047】
吸引された空気が、旋回流発生手段によって吸気通路54の軸線周りに旋回することで、その空気中に含まれる塵埃は、遠心力によって、その空気の軌道の接線方向に飛ばされることになる。つまり、塵埃は、ノズル軸90の小径部140に形成された開口146から外に飛ばされ、捕塵部材148によってキャッチされるのである。なお、その捕塵部材148は、従来から用いられていたフィルタのように吸引時の空気を通過させる必要がないため、メッシュの細かいものとされており、微細な粒子まで捕らえることが可能なものとなっている。ちなみに、図4および図5において、吸引空気の流れを白抜きの矢印で示し、塵埃の飛ばされる方向を黒塗りの矢印で示している。
【0048】
また、捕塵部材148が捕らえられず、塵埃が下に落ちたとしても、上述したように、捕塵部材148と小径部140の外周面との間には、隙間が設けられているため、その捕塵部材148が捕らえることができなかった塵埃は、ノズル軸90の段差部160に溜まることになる。したがって、捕塵部材148が塵埃を捕らえることができなかった場合であっても、その塵埃が、吸引される空気に再び混入することが防止されるよいうになっている。なお、その捕塵部材148と小径部140の外周面との間の隙間,ノズル軸90の段差部160を含んで、集塵手段としての塵埃集積部が構成されている。
【0049】
さらに、ノズル軸の小径部140と螺旋溝形成部材144とによって形成された螺旋状の通路の断面積は、その手前のノズル軸90の断面積に比較して小さいため、空気がその螺旋状の通路に入ると、空気の流速が高くなる。それにより、塵埃に作用する遠心力も大きくなり、空気中の塵埃が分離し易くなっている。
【0050】
以上のように、本発明の部品装着ヘッド10は、集塵手段が吸引時の空気の流れを妨げることがなく、吸引時に必要な空気の流量を確保することができるとともに、微細な粒子まで分離することが可能とされており、優れた除塵機能を有するものとなっているのである。
【符号の説明】
【0051】
10:部品装着ヘッド 20:電子部品装着機 42:吸着ノズル 50:ノズルホルダ 54:吸気通路 60:ノズル本体 62:スリーブ 90:ノズル軸 100:チューブ 130:集塵装置 140:小径部〔筒体〕 142:溝 144:螺旋溝形成部材〔旋回流発生手段〕 146:開口 148:捕塵部材〔集塵手段〕 150:カバーチューブ〔着脱可能部〕 160:段差部〔塵埃集積部,集塵手段〕 S:回路基板 P:電子部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6