【実施例】
【0033】
実施例の部品装着ヘッド10を含んで構成される電子部品装着機20は、
図1に示すように、大まかには、(a) ベース22と、(b) ベース22に立設された4つのポスト(支柱)24を有するフレーム26(図では、全体の図示は省略されている)と、(c) ベース22上に配設され、回路基板S(以下、単に「基板S」という場合がある)の搬入・搬出を行うとともに、その基板を定められた位置に固定するコンベア装置28と、(d) そのコンベア装置28を挟んでベース22上の前方側および後方側のそれぞれに一列に並んで配設され、それぞれがフィーダ型の部品供給装置として機能する複数の部品フィーダ30(前方側の列のものは一部しか図示されていない)と、(e) フレーム26に支持され、それら複数の部品フィーダ30の各々から供給される電子部品P(以下、単に「部品P」という場合がある)をコンベア装置28によって固定された基板Sに装着する部品装着装置32とを含んで構成されている。ちなみに、以下の説明において、図において矢印で示すように、当該装着機の左右方向をX方向,前後方向をY方向,上下方向をZ方向と呼ぶ場合がある。
【0034】
部品装着装置32は、部品Pを保持してその部品を装着するための部品装着ヘッド10と、その部品装着ヘッド10を移動させるヘッド移動装置40とを含んで構成される。そのヘッド移動装置40は、XYロボット型の移動装置であり、部品装着ヘッド10を、水平面に沿って任意の位置に移動させるものである。部品装着ヘッド10は、インデックス型のヘッドであり、後に詳しく説明する8つの吸着ノズル42を備えている。8つの吸着ノズル42の各々は、負圧の供給(大気圧より圧力を低くすること)によって、部品を吸着保持し、負圧の供給の停止により、吸着保持した部品を自身から離脱させる。なお、
図2に示すように、8つの吸着ノズル42の各々は、本部品装着ヘッド10が有するノズルホルダ50によって保持されており、部品装着ヘッド10は、特定の位置にある1つの吸着ノズル42を、ノズル昇降機構(図示省略)によって昇降させることで、吸着ノズル42をZ方向に移動させるように構成されている。
【0035】
つまり、部品装着装置32によって部品Pを保持する際には、まず、部品装着ヘッド10が、ヘッド移動装置40により部品フィーダ30の上方に位置させられる。そして、8つの吸着ノズル42のうちの特定位置にある吸着ノズル42がノズル昇降機構によって下降させられる。その吸着ノズル42に負圧が供給されて、その部品フィーダ30から供給される部品Pが吸着保持される。この吸着保持動作を、順次各吸着ノズル42について繰り返し行うことで、8つの吸着ノズル42の各々によって部品Pが吸着保持される。
【0036】
次いで、部品装着装置32によって部品Pを装着する際には、部品装着ヘッド10が、ヘッド移動装置40により、コンベア装置28によって固定された基板Sにおけるその部品Pが装着位置の上方に位置させられる。そして、特定位置にある吸着ノズル42がノズル昇降機構によって下降させられ、その吸着ノズル42への負圧の供給が断たれて、その部品が装着位置に装着される。この装着動作を、順次各吸着ノズル42について繰り返し行うことで、8つの吸着ノズル42の各々によって吸着保持された部品Pが基板Sに装着される。
【0037】
次に、吸着ノズル42について、
図3の断面図をも参照しつつ説明する。吸着ノズル42は、ノズルホルダ50の下端に設けられた取付部52に取り付けられ、着脱可能とされている。そのノズルホルダ50は、装着位置の調整のために部品装着ヘッド10が有するノズル回転機構(図示省略)によって軸線回りに回転させられるように構成されており、吸着ノズル42は、取付部52によって、そのノズルホルダ50に対して相対回転不能に保持される。つまり、吸着ノズル42は、ノズルホルダ50と一体的に回転するように構成されている。なお、そのノズルホルダ50は、概して筒状に形成されたものであり、その内部が、負圧を供給するための通路、つまり、エアを吸引するための吸気通路54を形成するものとされている。
【0038】
吸着ノズル42は、部品吸着時にその部品Pに下端が当接させられるノズル本体60と、そのノズル本体60をそれの下端部が突出した状態で保持するスリーブ62とを含んで構成されている。ノズル本体60は、円筒状のシャフト部材70と、そのシャフト部材70の下端に嵌入・固定されたノズル先端部材72とで構成されている。一方、スリーブ62は、ノズル本体60が嵌入される円筒状の円筒部74と、その円筒部74の外周面から径方向外側に突出するように形成され、吸着保持した部品Pを撮像する際の背景を形成する円盤状の円盤部76とで構成されている。
【0039】
スリーブ62の上端側には、スリーブ62の軸線に直交する方向に貫通する1対の貫通穴80が形成される。一方、ノズル本体60の上端側、詳しくは、シャフト部材70の上端には、それの軸線に平行に延びる1対の長穴82が形成されている。そして、ピン84が、スリーブ62の内部にノズル本体60のシャフト部材70が嵌入された状態で、ノズル本体60の長穴82を挿通しつつスリーブ62に形成された1対の貫通穴80に圧入されている。つまり、そのような構造により、ノズル本体60は、スリーブ62に保持されるとともに、スリーブ62に対して、軸線方向に摺動可能とされている。
【0040】
上記のように構成された吸着ノズル42は、先にも述べたように、ノズルホルダ50の下端に設けられた取付部52に取り付けられる。ノズルホルダ50は、概して筒状に形成されたノズル軸90を主体とするものであり、そのノズル軸90の下端には、L字形状の1対の切欠92が設けられている。吸着ノズル42は、ピン84の両端部の各々を1対の切欠92の各々に沿って係合させつつ、上端をノズル軸90内に嵌入させて取り付けられている。なお、取付部52は、コイルスプリング94によって下方に付勢される円筒状の可動部材96と、切欠92を形成する部分とで、ピン84を挟み込むように構成され、吸着ノズル42は、ノズルホルダ50に対して相対回転不能に保持されるようになっている。
【0041】
ノズルホルダ50のノズル軸90内には、チューブ100が挿入されている。そのチューブ100には、それの軸線に平行に延びる1対の長穴102が形成されている。一方、ノズル軸90には、ノズル軸90の軸線に直交する方向に貫通する1対の貫通穴104が形成される。そして、ピン106が、チューブ100の長穴102を挿通しつつ、ノズル軸90に形成された1対の貫通穴104に圧入されている。そのような構造により、チューブ100は、ノズル軸90に対して、軸線方向に摺動可能とされている。
【0042】
また、そのチューブ100は、圧縮コイルスプリング110によって下方に付勢されている。そのチューブ100の下端面は、吸着ノズル42のノズル本体60の上端面に接している。つまり、吸着ノズル42は、コイルスプリング110によって、ノズル本体60のスリーブ62内に入り込む方向(上方)の移動に対して、ノズル本体60を突出させる方向に付勢されるように構成されている。したがって、吸着ノズル42においては、ノズル本体60が、コイルスプリング110を収縮しつつスリーブ62内に進入することになり、そのコイルスプリング110によって、部品Pを吸着・装着する際にその部品Pに与える衝撃が緩和されるようになっている。
【0043】
上述のような構成により、部品Pを保持する際の吸気用の通路である吸気通路54は、ノズル本体60,チューブ100,ノズル軸90を含んで構成されている。本部品装着機20においては、作業の時間短縮のために、部品Pを保持する際に、吸着ノズル42が部品Pに当接する前に吸引が開始される。そのため、吸気された空気中には塵埃が含まれる場合がある。そこで、本部品装着ヘッド10においては、吸気通路54に、詳しく言えば、ノズル軸90に、空気中に含まれる塵埃を集める集塵手段である集塵装置130が設けられている。
【0044】
その集塵装置130について、
図4ないし
図6をも参照しつつ、詳しく説明する。
図4は、集塵装置130を拡大して示す断面図(
図5におけるB−B断面)であり、
図5は、集塵装置130の上方からの視点で示す断面図(
図4におけるA−A断面)であり、
図6は、集塵装置130を分解して示す斜視図である。
【0045】
ノズル軸90は、他の部分に比較して外径の小さな小径部140を有している。その小径部140の内部に、外周面に螺旋状の溝142が形成された円柱状の螺旋溝形成部材144が、隙間無く嵌入されている。詳しく言えば、小径部140の内周面と、螺旋溝形成部材144の溝142が形成されていない外周面とが接する状態で、螺旋溝形成部材144が、小径部140の内部に嵌入されている。その螺旋溝形成部材144が嵌入されたノズル軸90の小径部140には、軸線に平行に延びる6つの開口146が設けられている。そして、塵埃を捕らえる捕塵部材148が、ノズル軸90の小径部140の上方側の大径の部分と下方側の大径の部分とに渡されるとともに、小径部140を覆うようにして巻かれている。なお、捕塵部材148は、微細な網目状のものであり、微細な粒子もその目に入り込ませて捕らえることが可能なものである。その捕塵部材148の上からシリコン樹脂で形成された伸縮性のあるカバーチューブ150が着脱可能に嵌められ、その捕塵部材148は、着脱可能部としてのカバーチューブ150の内周面に固定された状態となっている。ちなみに、そのような構成により、捕塵部材148と、ノズル軸90の小径部140の外周面との間には、隙間がある状態とされている。
【0046】
そのような構成とされた集塵装置130によって、吸着ノズル42の先端から吸引された空気から、塵埃が分離されるとともに集められるようになっている。詳しく言えば、まず、吸着ノズル42の先端から吸引された空気は、ノズル本体60の内部,チューブ100の内部を通って、ノズル軸90内の集塵装置130に達する。そして、ノズル軸の小径部140と螺旋溝形成部材144とによって形成された螺旋状の通路に流入し、溝142に沿って流れることになる。つまり、吸引された空気は、吸気通路54の軸線周りに螺旋を描く旋回流となる。したがって、集塵装置130は、吸気通路54内においてそれの軸線回りの旋回流を発生させる旋回流発生手段を有するものとなっており、その旋回流発生手段は、ノズル軸90の小径部140,螺旋溝形成部材144を含んで構成されている。
【0047】
吸引された空気が、旋回流発生手段によって吸気通路54の軸線周りに旋回することで、その空気中に含まれる塵埃は、遠心力によって、その空気の軌道の接線方向に飛ばされることになる。つまり、塵埃は、ノズル軸90の小径部140に形成された開口146から外に飛ばされ、捕塵部材148によってキャッチされるのである。なお、その捕塵部材148は、従来から用いられていたフィルタのように吸引時の空気を通過させる必要がないため、メッシュの細かいものとされており、微細な粒子まで捕らえることが可能なものとなっている。ちなみに、
図4および
図5において、吸引空気の流れを白抜きの矢印で示し、塵埃の飛ばされる方向を黒塗りの矢印で示している。
【0048】
また、捕塵部材148が捕らえられず、塵埃が下に落ちたとしても、上述したように、捕塵部材148と小径部140の外周面との間には、隙間が設けられているため、その捕塵部材148が捕らえることができなかった塵埃は、ノズル軸90の段差部160に溜まることになる。したがって、捕塵部材148が塵埃を捕らえることができなかった場合であっても、その塵埃が、吸引される空気に再び混入することが防止されるよいうになっている。なお、その捕塵部材148と小径部140の外周面との間の隙間,ノズル軸90の段差部160を含んで、集塵手段としての塵埃集積部が構成されている。
【0049】
さらに、ノズル軸の小径部140と螺旋溝形成部材144とによって形成された螺旋状の通路の断面積は、その手前のノズル軸90の断面積に比較して小さいため、空気がその螺旋状の通路に入ると、空気の流速が高くなる。それにより、塵埃に作用する遠心力も大きくなり、空気中の塵埃が分離し易くなっている。
【0050】
以上のように、本発明の部品装着ヘッド10は、集塵手段が吸引時の空気の流れを妨げることがなく、吸引時に必要な空気の流量を確保することができるとともに、微細な粒子まで分離することが可能とされており、優れた除塵機能を有するものとなっているのである。