(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る留置部位確認装置(以下、装置100と称する)の概略全体構成を示す概略図である。
図2は、装置100の一部を拡大して示す概略拡大図である。
図1及び
図2に基づいて、装置100について説明する。なお、
図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、
図2では、バレル40の目盛り44の図示を省略している。
【0015】
装置100は、医療用チューブ10を経口的又は経鼻的に挿入し、その先端部10aを胃や十二指腸等の消化管に留置して栄養を投与したり、消化管から内容物を排出したりする際に用いられる医療機器である。この装置100は、医療用チューブ10の挿入時や栄養剤等の投与時に際して、気泡音を聴診して確認するための空気を注入でき、体液の検出確認、及び、二酸化炭素の検出確認の少なくとも2つの確認方法を、1つの装置で実現可能にしたものである。すなわち、確認作業が多いほど、先端部10aの誤挿入、誤留置に気付く可能性が高まるため、装置100は、複数の確認作業を1つの装置で実行可能にし、先端部10aの留置位置判断の確実性を高めるようにしている。
【0016】
<装置100の構成>
装置100は、
図1に示すように、医療用チューブ10と、シリンジ部50と、二酸化炭素検出部60(以下、単に検出部60と称する)と、アダプター70と、接続部75と、を有している。なお、以下の説明において、先端側とは患者に挿入される側(患者側)を称しており、基端側とは術者に操作される側(操作側)を称している。
【0017】
[医療用チューブ10]
医療用チューブ10は、可撓性を有する管状部材であって、たとえばポリウレタンやポリ塩化ビニル等の合成樹脂で形成するとよい。医療用チューブ10は、先端部10a及び基端部10bを有し、先端部10aが胃や十二指腸等の消化管に留置され、基端部10bがアダプター70に接続されるようになっている。なお、先端部10aは、その形状を特に限定するものではないが、医療用チューブ10の挿入部分を傷つけないような形状にしておくとよい。また、先端部10aは、医療用チューブ10を蠕動運動によって挿入しやすくする錘としての役割を果たしている。さらに、先端部10aには、栄養剤を供給したり、内容物を吸引したりする際に流体を通過させる開口部が形成されている。基端部10bは、アダプター70に接続できるような形状(たとえば
図1に示すようなアダプター70に挿入可能な形状)であればよい。
【0018】
また、医療用チューブ10の内腔には、消化管への挿入を容易に行うためのガイドワイヤーを挿抜可能に挿入しておくとよい。このガイドワイヤーを医療用チューブ10の内腔に挿入すると、ガイドワイヤーの先端部は、医療用チューブ10の先端部10aの内側に位置することになる。ガイドワイヤーは、医療用チューブ10を胃や十二指腸等の消化管への挿入を補助する機能を果たす。なお、ガイドワイヤーは、アダプター70を介して医療用チューブ10の内腔に挿入するとよい。ガイドワイヤーの基端部は、アダプター70で固定してもよいし、アダプター70から突出していてもよい。
【0019】
なお、実施の形態1では、医療用チューブ10が栄養チューブである場合を例として説明するが、医療用チューブを栄養チューブに限定するものではなく、医療用チューブ10が栄養チューブ以外の消化管に留置されるチューブ(たとえば排液チューブ等)であってもよい。排液チューブと栄養チューブとは、径の大きさが異なるものの、消化管への留置の仕方は同様である。
【0020】
[シリンジ部50]
シリンジ部50は、先端部41に接続部75が取り付けられ、基端側から第1プランジャー20が押し引きされるバレル40と、バレル40内に押し引き可能に設けられる第1プランジャー20と、第1プランジャー20の内部(詳しくは胴部21の内部)に押し引き可能に設けられる第2プランジャー30と、第1プランジャー20の先端側に設けられ、バレル40内部と第1先端部22との間に所定容積の空間を確保する空間形成部材26と、を少なくとも有している。
【0021】
(第1プランジャー20)
第1プランジャー20は、内部に第2プランジャー30が押し引き可能に設けられる中空の胴部21と、胴部21の先端に設けられ、外部(詳しくはバレル40の内腔)と胴部21の内腔とを連通する孔23を有する第1先端部22と、で構成されている。この第1プランジャー20は、術者の力が胴部21を介して伝達されてバレル40内部を押し引きされ、バレル40内部の圧力を変化させるものである。つまり、第1プランジャー20は、術者に引かれることによってバレル40内に流体(液体(胃液等の消化液)、気体(二酸化炭素等の気体)又はそれらの混合物)を吸引でき、術者に押されることによってバレル40内の流体を排出できるものである。
【0022】
胴部21は、術者の力が伝達されるものであり、たとえば透明性の合成樹脂を用い、断面形状が円形状や多角形状(たとえば、六角形状や八角形状)となるように形成されている。なお、本実施の形態1では、胴部21の断面形状が円形状であるものを例示的に示している。また、
図2に示すように、胴部21の外壁に目盛り24を設けておくとよい。目盛り24を設けておけば、胴部21内に吸引された流体(気体)の量の目安とすることができる。さらに、第1プランジャー20の押し引き操作を補助する操作部25を胴部21の基端側外周に設けられている状態を図示しているが、操作部25は必要に応じて用いるようにすればよく、必須というものではない。
【0023】
第1先端部22は、胴部21の先端外周部に嵌合、螺合、接着又は溶着することで取り付けられており、外周面がバレル40の内壁面に接触するものである。つまり、第1プランジャー20に術者からの力が伝達されると、第1先端部22の外周面がバレル40の内壁面に摺動するように第1プランジャー20が押し引きされることになる。第1先端部22としては、たとえばガスケット等を利用するとよい。また、第1先端部22の略中央部には、バレル40の内部と第1プランジャー20の内部とを連通するための孔23が形成されている。この孔23に疎水性フィルターを設けておけば、液体が胴部21に流通してしまうことを抑制することができる。
【0024】
なお、後述する第2プランジャー30が胴部21内を気密にすることにより、第1先端部22に孔23を形成したとしても、バレル40内部を気密状態にすることができるようになっている。
【0025】
また、第1先端部22で胴部21の先端を覆ってもよいし、第1先端部22に形成した孔23を貫通する筒状部を胴部21の先端に設けておいてもよい。筒状部を形成する場合、胴部21は、胴部21の先端部を貫通穴が形成された筒状部を有する有底形状である必要がある。そして、この底部の中心部に、筒状部を突出するように形成するとよい。なお、第1先端部22は、胴部21と一体的に成形されるようにしてもよい。また、第1先端部22の構成材料を特に限定するものではないが、バレル40の内壁面との接触性を考慮し、弾力のある材料、たとえばゴムや合成樹脂等のエラストマーを材料として用いるとよい。
【0026】
(第2プランジャー30)
第2プランジャー30は、第1プランジャー20の胴部21の内部に押し引き可能に設けられる棒状部31と、先端側に設けられた第2先端部32と、で構成されている。この第2プランジャー30は、術者の力が棒状部31を介して伝達され、第1プランジャー20の胴部21内部を押し引きされるようになっている。つまり、第2プランジャー30は、術者に引かれることによって第1プランジャー20の胴部21内に流体(気体)を吸引でき、術者に押されることによって第1プランジャー20の胴部21内の流体を排出できるものである。
【0027】
棒状部31は、術者の力が伝達されるものであり、たとえば合成樹脂を用いて形成するとよい。なお、棒状部31の断面形状を特に限定するものではないが、第1プランジャー20の胴部21のように内部が中空になっている必要はない。また、第2プランジャー30の押し引き操作を補助する操作部35を棒状部31の基端側外周に設けられている状態を図示しているが、操作部35は必要に応じて用いるようにすればよく、必ずしも必須というものではない。
【0028】
第2先端部32は、棒状部31の先端外周部に嵌合、螺合、接着又は溶着することで取り付けられており、外周面が第1プランジャー20の胴部21の内壁面に接触することで、第1プランジャー20の胴部21内部を気密状態にする。つまり、第2プランジャー30に術者からの力が伝達されると、第2先端部32の外周面が第1プランジャー20の胴部21の内壁面に摺動するように第2プランジャー30が押し引きされることになる。第2先端部32としては、たとえばガスケット等を利用するとよい。なお、第2先端部32は、棒状部31と一体的に成形されるようにしてもよい。また、第2先端部32の構成材料を特に限定するものではないが、第1プランジャー20の胴部21の内壁面との接触性を考慮し、弾力のある材料、たとえばゴムや合成樹脂等のエラストマーを材料として用いるとよい。
【0029】
(バレル40)
バレル40は、内部が視認可能な筒体であって、先端部41が貫通穴を有した有底形状となっており、接続部75及びアダプター70を介して着脱自在に取り付けられる医療用チューブ10と連通するものである。バレル40は、たとえば透明性の合成樹脂を用い、断面形状が円形状や多角形状(たとえば、六角形状や八角形状)となるように形成されている。なお、本実施の形態1では、バレル40の断面形状が円形状であるものを例示的に示している。
【0030】
また、バレル40の先端部41の中心部には、接続部75が嵌合又は螺合することにより着脱自在に取り付け可能な筒状部42が突出するように形成されている。なお、本実施の形態1では、筒状部42が、先端部41の中心部に形成されている状態を例示的に示しているが、筒状部42の形成位置を特に限定するものではなく、筒状部42を先端部41の中心部から偏心した位置に形成するようにしてもよい。
【0031】
また、
図1に示すように、バレル40の外壁に目盛り44を設けておくとよい。目盛り44を設けておけば、バレル40内に吸引された流体(気体、液体又はそれらの混合物)の量の目安とすることができる。さらに、バレル40の先端部41とは反対側の基端部の周縁には、操作部43が外周方向に突出するように形成されている。この操作部43は、操作部25及び操作部35と協働して術者の操作に寄与するようになっている。ただし、操作部43は必要に応じて用いるようにすればよく、必ずしも必須というものではない。
【0032】
(空間形成部材26)
空間形成部材26は、第1プランジャー20の先端側、詳しくは第1先端部22の先端面に先端側に更に突出するように設けられ、バレル40の先端側の内壁面(以下、内壁面41aと称する)と第1先端部22の先端面との間に所定の容積を有する空間部55を形成するものである。空間形成部材26は、第1プランジャー20の先端側への移動を所定位置(第1先端部22がバレル40の先端側の内壁面41aと当接しない位置、つまり吸引した流体のうち液体を貯留できる程度の所定容積を確保できる位置)で規制させるストッパーとしての機能も果たすようになっている。空間形成部材26を設けたことにより、バレル40内に吸引された流体のうち液体を空間部55内に貯留することができ、気体のみを第1プランジャー20の胴部21に取り込むことが可能になる。
【0033】
空間部55は、吸引した流体のうち液体を貯留できる程度の所定容積、つまりバレル40の先端側の内壁面41aと第1先端部22の先端面とが当接した状態よりも大きな容積を有している。装置100では、空間形成部材26を第1先端部22の先端面に先端側に更に突出するように設け、空間部55を確保するようにしている。空間部55は、バレル40内に吸引された流体のうち液体を貯留し、気体を第1プランジャー20の胴部21に取り込みやすくするものである。空間部55がないと、バレル40内に吸引された流体の全部が第1プランジャー20の胴部21に吸引されることになってしまう可能性が高く、液体に接触した結果、二酸化炭素が検出できないということが考えられる。なお、空間形成部材26は、筒状部42、バレル40の内部及び第1先端部22の孔23を閉塞するものではない。
【0034】
この空間形成部材26は、上記機能を発揮できるような形状であればよく、特に形状を限定するものではない。たとえば、第1先端部22の孔23を周状に囲むような壁面を有した筒状体で構成してもよく、軸方向を長手方向とした複数本の脚部を有したような形状で構成してもよい。また、
図2に示すように、空間形成部材26の先端側に、バレル40の先端側の内壁面41aに突き当たる当接部26aを設けておいてもよい。空間形成部材26及び当接部26aの構成材料を特に限定するものではなく、たとえば合成樹脂などを構成材料にするとよい。
【0035】
なお、ここでは、空間形成部材26を設けて空間部55を形成した場合を例に示したが、バレル40の先端側の内壁面41aと第1先端部22の先端面との間に所定容積の空間部55が形成、つまり第1プランジャー20の第1先端部22をバレル40の先端側の内壁面41aに当接させなければよく、空間形成部材26を設けることに限定するものではない。たとえば、胴部21の基端側にストッパーを設け、バレル40の先端側の内壁面41aと第1先端部22の先端面との間に所定容積の空間を確保するようにしてもよい。この場合、たとえば操作部25をストッパーとして機能させ、操作部25をバレル40の基端に当接することで第1プランジャー20の先端側への移動を停止させるとよい。
【0036】
[検出部60]
検出部60は、第1プランジャー20の胴部21内であって第2プランジャー30の第2先端部32よりも先端側に配置され、二酸化炭素に反応して変色するようになっている。つまり、検出部60は、第1プランジャー20の胴部21内に吸引された流体(気体)が二酸化炭素であるとき、この二酸化炭素に反応して変色するようになっている。検出部60は、従来から知られている公知の技術を用いて、二酸化炭素を検出できればよい。たとえば、二酸化炭素に接触することで変色するようなシート状部材を用いて検出部60を構成するとよい。なお、検出部60は、胴部21内に配置されていればよいが、胴部21の吸引口の近傍、つまり第1先端部22の孔23の近傍に配置しておけば、少量の二酸化炭素であっても検出することが可能になる。
【0037】
[アダプター70]
アダプター70は、先端部が医療用チューブ10の基端部10bに、基端部が接続部75に、それぞれ接続され、医療用チューブ10を接続部75を介してシリンジ部50に接続する機能を有している。また、アダプター70は、接続部75に着脱可能に接続されている。よって、アダプター70を介して医療用チューブ10を容易に着脱できる構成になっている。なお、
図1では、アダプター70が先端に向かって縮径するような形状に構成されている状態を例に示している。また、
図1では、アダプター70の基端側にキャップ71が設けられている形状を示している。
【0038】
なお、アダプター70は、流体の流れを確認しやすいように透明性の合成樹脂を用いて形成するとよい。また、
図1では、アダプター70の先端に医療用チューブ10の基端部10bが接続されている状態を例に示しているが、医療用チューブ10を着脱自在に接続可能にしておいてもよい。また、医療用チューブ10とアダプター70との接続方法を特に限定するものではない。さらに、アダプター70は、装置100に必須ではないが、設けた方が操作性の向上に寄与することができる。アダプター70を設けない場合、医療用チューブ10を接続部75の先端に接続するようにすればよい。キャップ71は、アダプター70を接続部75から取り外した際にアダプター70からの液だれ等を防止する機能を果たす。なお、キャップ71は、必須のものではない。また、ここでは、アダプター70が医療用チューブ10と別体として説明したが、アダプター70が医療用チューブ10と一体となっていてもよい。
【0039】
[接続部75]
接続部75は、先端がアダプター70に、基端がバレル40の筒状部42に、それぞれ接続され、医療用チューブ10をシリンジ部50に接続する機能を有している。また、
図1に示すように、接続部75の先端側をカテーテルチップ形状にしておけば、更に容易にアダプター70を着脱できることになる。加えて、誤接続を防止することも可能になる。さらに、
図1では、接続部75の基端側がバレル40の筒状部42の外周に螺合されている状態を例に示している。ただし、接続部75の先端及び基端を
図1に示すような形状に限定するものではなく、ルアー形状等としてもよい。この場合、アダプター70の基端及び筒状部42も雄ルアー形状又は雌ルアー形状とする必要がある。
【0040】
なお、接続部75は、流体の流れを確認しやすいように透明性の合成樹脂を用いて形成するとよい。接続部75は、装置100に必須ではないが、設けた方が操作性の向上に寄与することができる。接続部75を設けない場合、アダプター70を筒状部42に接続するようにすればよい。また、アダプター70及び接続部75の双方を設けない場合、医療用チューブ10の基端部10bを筒状部42に直接的に接続すればよい。
【0041】
<装置100を用いた手技>
ここで、装置100を使用した手技について説明する。
まず、術者は、装置100を用意する。そして、術者は、挿入すべき医療用チューブ10の大まかな長さ(すなわち胃までの距離)を測定する。ガイドワイヤーを使用する場合には、ガイドワイヤーの先端部が医療用チューブ10の先端部10aまで正しく挿入されていることを確認する。ガイドワイヤーを使用する場合は、医療用チューブ10とアダプター70を接続部75から取り外した状態で医療用チューブ10を挿入するとよい。なお、ガイドワイヤーの基端部は、アダプター70に内嵌させておけばよい。
【0042】
次に、術者は、麻酔及び潤滑剤(たとえばリドカインゼリー等)を医療用チューブ10の先端部10aから、たとえば15cm〜20cmの位置まで塗布し、医療用チューブ10の滑りをよくしてから、口腔内あるいは鼻腔内への挿入を開始する。医療用チューブ10の先端部10aを患者の胃や十二指腸等の目的とする消化管にまで到達させる。医療用チューブ10の先端部10aが患者の目的とする消化管にまで到達した後、医療用チューブ10からガイドワイヤーを抜去する。そして、術者は、アダプター70のキャップ71を外し、アダプター70の基端側に接続部75を介してシリンジ部50を接続する。
【0043】
医療用チューブ10の先端部10aが目的とする消化管に到達したかどうかを確認する場合、術者は、第1プランジャー20を押して空気を注入する。そして、術者は、聴診器を用いて気泡音の有無を確認する(第1の確認作業)。気泡音が確認できれば、術者は、医療用チューブ10の先端部10aが目的とする消化管に到達した可能性があると判断できる。このように、装置100は、第1の確認作業をする上で必要な空気注入を、別の装置を用いることなく実行できるようになっている。また、装置100は、空気注入を実行したままの状態、つまり医療用チューブ10に接続されたままの状態で第2の確認作業を実行できる。
【0044】
次に、術者は、第1プランジャー20を引き、バレル40内を減圧し、医療用チューブ10の先端部10aから体液を吸引する。そして、術者は、第1プランジャー20が引けたかどうか、つまり体液が吸引できたかどうかを確認する(第2の確認作業)。体液が吸引できれば、術者は、医療用チューブ10の先端部10aが目的とする消化管に到達した可能性が更に高まったと判断できる。このとき、術者は、体液が吸引できたかどうかということを目視することにもなる。ただし、この時点では吸引した体液が消化液であるかどうかは不明である。なお、たとえばリトマス紙やBTB液、pH測定器等を用いて、バレル40内に吸引した体液のpHを確認してもよい。そして、吸引した体液のpHがたとえば目的とする消化管から分泌される消化液の性質を示す値であれば、目的とする消化管に到達した可能性が更に高まったと判断できる。
【0045】
ただし、第1の確認作業によって気泡音が確認でき、第2の確認作業によって体液の吸引が確認できたとしても、医療用チューブ10の先端部10aが目的とする消化管に到達しているか確実とはいえない。そこで、装置100では、第1の確認作業をする上で必要な空気注入を実行でき、第2の確認作業に加え、第3の確認作業を実行できるように工夫されている。すなわち、確認作業が多いほど、先端部10aの誤挿入、誤留置に気付く可能性が高まるため、装置100では複数の確認作業を1つの装置で実行可能にしているのである。
【0046】
術者は、第2プランジャー30を引き、第1プランジャー20の胴部21内を減圧し、バレル40内に吸引された流体のうち気体だけを第1プランジャー20の胴部21に吸引する。そして、術者は、第1プランジャー20の胴部21に設置されている検出部60が反応するかどうかを確認する(第3の確認作業)。検出部60が反応すれば、術者は、吸引された気体が二酸化炭素であるということが容易に視認でき、医療用チューブ10の先端部10aが目的とする消化管ではなく、気管支や肺等の下気道に到達していると判断できる。一方、検出部60が反応しなければ、術者は、医療用チューブ10の先端部10aが目的とする消化管に到達した可能性が更に高まったと判断できる。
【0047】
第1の確認作業による気泡音の確認、第2の確認作業による体液の吸引確認、及び、第3の確認作業による二酸化炭素の検出確認のうちいずれか1つにでも先端部10aが適切な位置に留置されていると確認できない事項がある場合には、医療用チューブ10の先端部10aが目的とする消化管ではなく、気管支や肺等の下気道に到達、つまり誤留置である可能性が高いと判断できる。この場合には、直ちに医療用チューブ10を抜去し、再度、医療用チューブ10の挿入作業を行うようにする。第1の確認作業〜第3の確認作業の全部を実行することにより、先端部10aが適切な位置に留置されているかどうかという判断の確実性を高めることが可能になる。
【0048】
一方、第1の確認作業〜第3の確認作業の全部で先端部10aが適切な位置に留置されている可能性が高いことが確認できた場合には、医療用チューブ10の先端部10aが目的とする消化管に到達した可能性が非常に高いと判断できる。この場合には、医療用チューブ10をサージカルテープ等で固定し、医療用チューブ10の一連の挿入作業を終了する。
【0049】
そして、医療用チューブ10を介して栄養投与を行う場合には、アダプター70からシリンジ部50を接続部75とともに取り外し、アダプター70に栄養剤供給用チューブを接続すればよい。また、医療用チューブ10を介して消化管内に存在している内容物を排出する場合には、アダプター70からシリンジ部50を接続部75とともに取り外し、アダプター70に陰圧発生器等の吸引装置に接続されている排液用チューブを接続すればよい。なお、栄養投与や排液処置を行わない場合には、アダプター70にキャップ71を装着しておけばよい。
【0050】
以上のように、本実施の形態1に係る装置100によれば以下の優れた効果を奏する。
この装置100によれば、複数の確認作業を、一つの装置で、かつ、簡便な手技で実現することができる。よって、装置100によれば、複数の確認作業を経て医療用チューブ10の先端部10aの留置位置を確認するので、先端部10aが適切に留置されているかどうかという判断の確実性が非常に高くなる。また、装置100によれば、X線を用いたり、内視鏡を用いたりする方法とは異なり、簡便な手技で医療用チューブ10の先端部10aの留置位置を確認できるので、大掛かりな設備が必要になるわけでもなく、術者に高い専門性が要求されるわけでもない。よって、装置100は、汎用性及びコスト性の面でも非常に優れている。
【0051】
実施の形態2.
図3は、本発明の実施の形態2に係る留置部位確認装置(以下、装置100Aと称する)の概略全体構成を示す概略図である。
図3に基づいて、装置100Aについて説明する。装置100Aは、実施の形態1に係る装置100と同様に、医療用チューブ10を経口的又は経鼻的に挿入し、その先端部10aを胃や十二指腸等の消化管に留置して栄養を投与したり、消化管から内容物を排出したりする際に用いられる医療機器である。なお、実施の形態2では実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同一部分には、同一符号を付して説明を省略するものとする。
【0052】
この装置100Aは、医療用チューブ10の挿入時や栄養剤等の投与時に際して、気泡音を聴診して確認するための空気を注入でき、体液の検出確認、二酸化炭素の検出確認、及び、体液のpH確認の少なくとも3つの確認方法を、1つの装置で実現可能にしたものである。すなわち、装置100Aは、実施の形態1に係る装置100の第2の確認作業、第3の確認作業に加え、更に吸引した体液のpHを確認(第4の確認作業)できるようにしたものである。すなわち、確認作業が多いほど、先端部10aの誤挿入、誤留置に気付く可能性が高まるため、装置100Aは、複数の確認作業を1つの装置で実行可能にし、先端部10aの留置位置判断の確実性を高めるようにしている。
【0053】
<装置100Aの構成>
装置100Aの基本的な構成は、
図3に示すように実施の形態1に係る装置100と同様である。装置100Aは、バレル40に体液取出部80を取り付けている点、体液取出部80に接続チューブ85を接続している点で実施の形態1に係る装置100と相違している。装置100Aのそれ以外の構成については、実施の形態1に係る装置100と同様である。
【0054】
[体液取出部80]
体液取出部80は、ほぼ円筒状に形成されたケーシング81と、ケーシング81の先端側に突出して設置されている筒状接続部82と、ケーシング81の基端側に設置されている連結部83と、を備えている。
【0055】
ケーシング81は、合成樹脂等で構成されていてほぼ円筒状であり、軸方向先端側(バレル40側)及び後端側(接続チューブ85側)に開口部が形成されている。ケーシング81の先端には、ケーシング81とほぼ同軸に筒状接続管82が突出するように設けられている。この筒状接続管82を介してケーシング81の内腔とバレル40の内腔とが連通するようになっている。なお、体液取出部80は、筒状接続管82を介してバレル40に固定されていてもよく、着脱可能にしておいてもよい。
【0056】
筒状接続管82は、先端がバレル40に、基端がケーシング81に、それぞれ接続され、バレル40の内腔とケーシング81の内腔とを連通するものである。なお、筒状接続管82は、バレル40の内腔とケーシング81の内腔とを連通できればよく、径や長さを特に限定するものではない。また、バレル40の壁面の一部に形成した孔に筒状接続管82の先端を取り付けるようにしてもよいし、筒状接続管82をバレル40と一体的に形成してもよい。さらに、バレル40に接続された筒状接続管82の基端側にケーシング81を着脱自在に取り付けてもよいし、筒状接続管82とケーシング81とを一体的に形成してもよい。
【0057】
連結部83は、ケーシング81の基端側に設けられ、
図3に併せて図示している接続チューブ85の先端部と連結するものである。接続チューブ85が連結されていない状態においてバレル40の内腔がケーシング81の内腔を介して外気と連通してしまうのを防止するために、連結部83にはセプタム(ゴム等の弾性体)やキャップ等の閉塞部材を設けておくとよい。なお、
図3では、連結部83にセプタム83aが設けられている状態を例に示している。このようにセプタム83aを設ける場合には、連結部83又はケーシング81にセプタムを収容可能な空間を形成しておく必要がある。また、セプタム83aを設ける場合、ケーシング81と接続チューブ85とを連通させるスリットをセプタム83aに形成しておかなければならない。
【0058】
[接続チューブ85]
接続チューブ85は、連結部83と連結するための先端側連結部86と、先端側連結部86に接続されているチューブ本体87と、チューブ本体87の基端側に設けられた体液停止部88と、チューブ本体87の内腔に設けられたpH検出部材89と、を備えている。
【0059】
先端側連結部86は、チューブ本体87の先端側に設けられ、体液取出部80の連結部83に連結可能に構成されている。先端側連結部86は、体液取出部80の連結部83に連結可能な構成であればよく、具体的な構成を特に限定するものではない。たとえば、先端側連結部86を雄コネクター形状とし、体液取出部80の連結部83を雌コネクター形状とし、両者を嵌合又は螺合させて接続可能にしておくとよい。また、雄雌を逆にしてもよい。つまり、一般的な接続コネクターを使用して先端側連結部86を構成することができる。
【0060】
ただし、体液取出部80の連結部83も、先端側連結部86と連結可能な構成にしておく必要がある。また、
図3に示すように、体液取出部80の連結部83にセプタム83aを設ける場合には、セプタム83aに形成されているスリットに挿入可能な連結管86aを設ける必要がある。なお、体液取出部80と接続チューブ85との接続構造を
図3に示すものに限定するものではなく、一般に広く普及されているような接続構造を使用することができる。
【0061】
チューブ本体87は、体液取出部80により取り出された体液を導通させるものである。チューブ本体87は、可撓性管状部材であって、たとえばポリウレタンや可塑剤を含まないポリ塩化ビニル等の合成樹脂等で形成すればよい。なお、チューブ本体87の長さや径についても特に限定するものではなく、一般に広く普及されているようなチューブで構成することができる。また、
図3では、チューブ本体87にクランプ87aが設けられた状態を例に示している。クランプ87aは、チューブ本体87の内腔を開閉可能に閉塞するものである。クランプ87aは必須のものではなく、術者が指などでチューブ本体87の内腔の開閉を行うようにしてもよい。
【0062】
体液停止部88は、チューブ本体87の基端側に設けられ、チューブ本体87を導通してきた体液を接続チューブ85から流出させないようにするものである。この体液停止部88は、気体のみを通過させる疎水性フィルター等で構成するとよい。なお、体液停止部88に他の接続構造を備えた部材を接続してもよい。この場合、たとえばバルーンやシリンジ、陰圧発生器等を接続して、バレル40内に吸引された体液を体液取出部80側に吸引するようにしてもよい。
【0063】
pH検出部材89は、チューブ本体87に導かれた体液に反応して、その体液のpHを検出するものである。pH検出部材89は、チューブ本体87内に収納でき、pHを検出できるものであればどんなもので構成してもよい。たとえば、リトマス紙を用いてpH検出部材89を構成するとよい。
【0064】
<装置100Aを用いた手技>
ここで、装置100Aを使用した手技について説明する。なお、第1の確認作業〜第3の確認作業の手技については、実施の形態1に係る装置100と同様である。
【0065】
第2の確認作業によって体液が吸引できたことを確認した場合、術者は、たとえば重力や吸引力を利用してバレル40内に吸引された体液を体液取出部80に取り出す。そして、術者は、体液取出部80に接続チューブ85を接続する。体液取出部80に接続チューブ85を接続したら、チューブ本体87の内腔を開放し、体液取出部80に取り出した体液を接続チューブ85側に移動させる。それから、術者は、チューブ本体87に設けたpH検出部材89に体液を供給し、pH検出部材89の作用によって体液のpHを確認する(第4の確認作業)。
【0066】
pH検出部材89の検出したpHがたとえば目的とする消化管から分泌される消化液の性質を示す値であれば、術者は、医療用チューブ10の先端部10aが目的とする消化管たとえば胃に到達した可能性が更に高まったと判断できる。第4の確認作業は、実施の形態1で説明した第3の確認作業と並行に行ってもよいし、第3の確認作業の後に行ってもよいし、第3の確認作業の前に行ってもよい。すなわち、確認作業が多いほど、先端部10aの誤挿入、誤留置に気付く可能性が高まるため、装置100Aでは複数の確認作業を1つの装置で実行可能にしているのである。
【0067】
第1の確認作業による気泡音の確認、第2の確認作業による体液の吸引確認、第3の確認作業による二酸化炭素の検出確認、及び、第4の確認作業による体液のpH確認のうちいずれか1つにでも先端部10aが適切な位置に留置されていると確認できない事項がある場合には、医療用チューブ10の先端部10aが目的とする消化管ではなく、気管支や肺等の下気道に到達、つまり誤留置である可能性が高いと判断できる。第1の確認作業〜第4の確認作業の全部を実行することにより、先端部10aが適切な位置に留置されているかどうかという判断の確実性を高めることが可能になる。一方、第1の確認作業〜第4の確認作業の全部で先端部10aが適切な位置に留置されている可能性が高いことが確認できた場合には、医療用チューブ10の先端部10aが目的とする消化管に到達した可能性が非常に高いと判断できる。この場合には、医療用チューブ10をサージカルテープ等で固定し、医療用チューブ10の一連の挿入作業を終了する。
【0068】
以上のように、本実施の形態2に係る装置100Aによれば以下の優れた効果を奏する。
この装置100Aによれば、複数の確認作業を、一つの装置で、かつ、簡便な手技で実現することができる。つまり、装置100Aによれば、実施の形態1に係る装置100で実現できる2つの確認作業に加え、更に1つの確認作業を実現できるので、先端部10aが適切に留置しているかどうかという判断の確実性がより高くなる。また、装置100Aによれば、X線を用いたり、内視鏡を用いたりする方法とは異なり、簡便な手技で医療用チューブ10の先端部10aの留置位置を確認できるので、大掛かりな設備が必要になるわけでもなく、術者に高い専門性が要求されるわけでもない。よって、装置100Aは、汎用性及びコスト性の面でも非常に優れている。
【0069】
実施の形態では、ガイドワイヤーを用いて医療用チューブ10を挿入した場合を一例として説明したが、これに限定するものではなく、ガイドワイヤーを使用せずに医療用チューブ10を挿入してもよい。