【実施例1】
【0012】
図において、1は、本実施例1に係るスライドドア4を備えた自動車である。この自動車1は、車体2と、該車体2の前部ドア開口2aを開閉する左,右一対のフロンドドア3と、後部ドア開口2bを開閉するスライドドア4と、フロントシート(図示せず)と、リヤシート5とを備えている。
【0013】
前記フロントドア3は、前端部に配設されたドアヒンジ3a,3aを中心に車幅方向に回動可能となっている。また、前記スライドドア4は、前記車体2の側面の後部に設けられたスライドレール2cに沿って車体前後方向にスライド可能となっている。
【0014】
前記スライドドア4は、前記後部ドア開口2bを開閉するドア本体6と、該ドア本体6を、前記後部ドア開口2bを閉じた状態にロックするロック装置7とを備えている。
【0015】
前記ドア本体6は、アウタパネル6aとインナパネル6bとを中空の最中状をなすように結合したものである。このドア本体6内には、ドアガラス8を、
図4に実線で示す全閉位置と二点鎖線で示す全開位置との間で昇降させる昇降機構(図示せず)が配設されている。
【0016】
前記ロック装置7は、前記ドア本体6の後端部に配置され、該ドア本体6の高さ方向中途部を前記後部ドア開口2bに対してロックするように構成されている。なお、
図1中、9,9は前記ドア本体6の前端部の上端部及び下端部をロックする前部ロック機構である。
【0017】
前記ロック装置7は、前記ドア本体6のインナパネル6b側に配設された支持ブラケット(図示せず)に固定された基板7aと、該基板7aに固定されたロック本体7bとを有する。該ロック本体7bは、前記ドア本体6を、前記後部ドア開口2bを全閉する全閉位置にスライドさせると車体側のストライカ(被係合部材)11に係合するように構成されている。前記ストライカ11は、前記後部ドア開口2bの後縁部に取り付けられている。なお、7cは、前記ロック本体7bと前記ドア本体6に設けられたドアハンドル6cとを連結するロック解除ケーブルであり、前記ドアハンドル6cを回動させることにより前記ロック本体7bのロックが解除される。
【0018】
前記ロック装置7の基板7aには、延設部7eが前記ドア本体6のスライド方向前方に延びるように一体形成されている。そして前記延設部7eには、錘部10が、車室外側に位置するように、かつ前記ロック本体7bの前記ストライカ11との係合部7fから略水平に前方に延長した延長線H上に位置するように配置され、複数のボルト10dによって固定されている。換言すれば、本実施例の錘部10は、少なくともその大部分が前記延設部7eの前方延長線h1〜h2間の領域A内に位置するように配設されている。
【0019】
前記錘部10は、ベースプレート10aと、これにボルト等で固定されたカバープレート10bとからなり、概ね箱状をなすように構成されている。そして前記カバープレート10bには、略円形の丸座面10cが車外側に滑らかに突出するように形成されている。この丸座面10cは、横断面で見て滑らかな台形状に形成され、ドアガラス8が開側に下降したとき該ドアガラス8の車室内側面と対向するように配設されている。
【0020】
ここで、車両側方から見たとき、前記ロック装置7は、その全体が、前記リヤシート5に着座している乗員M の腰部分とラップしている。なお、本発明では、前記ロック装置7のうち、前記錘部10が乗員Mとラップすれば良く、必ずしもロック装置7全体がラップする必要はない。
【0021】
本実施例では、ロック装置7の延設部7eに錘部10を設けたので、車両ユーザーが手動でスライドドア4を閉方向(前方)にスライドさせると、前記錘部10が慣性マスとして機能し、スライドドア4のスライド移動に勢いが付き、その慣性効果により、スライドドア4を軽い操作力で容易確実に閉めることができる。
【0022】
また、前記錘部10は、ロック本体7bのストライカ11との係合部7fの略水平延長線H上で、かつその大部分が前記領域A内に位置するように、つまりロック本体7bから上方又は下方に離間することのないよう配設されている。そのためドア閉時に錘部10により不要な回転モーメントが発生することがなく、従って錘部10を追加したことによりロック本体7bや錘設定部に回転力が作用するのを防止できその結果、各部品の耐久性が低下するのを防止できる。
【0023】
また、車両側面衝突時には、乗員Mが慣性により車室外方向に相対的に移動し、ドアに比較的大きな荷重が入力されることとなる。本実施例では、車両側方視で、錘部10と乗員Mの腰部付近がラップしているので、車両の側面衝突時には、乗員Mが錘部10に当接することにより、乗員Mからの入力を直接ロック装置7に伝えることができる。その結果、ロック本体7bとストライカ11との係合部7fを支点としたドアの無用の回動変位を抑えることができ、乗員保護性能を高めることができる。ちなみに、乗員Mからの入力がドア本体に直接伝わると、前記係合部7fを中心としてドアが回動変位し、該変位によりドアと車体との間に隙間が生じるおそれがあり、乗員保護性能が損なわれる。
【0024】
また前記錘部10に、丸座面10cを窓開位置にあるドアガラス8の車室内側面に対向するように設けたので、ドアガラス組付け時や車両の側面衝突時のドアガラス8の欠け,割れを抑制できる。即ち、ドアガラス組付け時においては、前記丸座面10cにより、ドアガラス8の下端が例えば前記錘部10の上端エッジ部10fに当たらないようガイドする機能が得られ、ガラスの欠けや割れを抑制できる。また側面衝突時においては、ドアガラス8が、
図4に符号8′で示すように上部を中心に車室内側に回動した場合に、例えば前記錘部10の下端エッジ部10eに衝突するとガラスの割れが生じ易いが、本実施例では、下端エッジ部10eより先に滑らかな形状の丸座面10cに当たるので、ガラスの割れを抑制できる。
【0025】
なお、上記実施例では、錘部10が、ベースプレート10aとカバープレート10bとを概ね箱状をなすように結合したものである場合を説明したが、本発明の錘部はこれに限られるものではなく、例えば、鉄などの金属の塊で構成しても良い。