特許第5871593号(P5871593)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871593
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】車両用スライドドア
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/06 20060101AFI20160216BHJP
   E05F 11/54 20060101ALI20160216BHJP
   E05B 83/40 20140101ALI20160216BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   B60J5/06 A
   E05F11/54 A
   E05B83/40
   B60J5/00 M
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-266987(P2011-266987)
(22)【出願日】2011年12月6日
(65)【公開番号】特開2013-119278(P2013-119278A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2014年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087619
【弁理士】
【氏名又は名称】下市 努
(72)【発明者】
【氏名】福田 保和
(72)【発明者】
【氏名】井頭 健治
(72)【発明者】
【氏名】島 和久
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−191590(JP,A)
【文献】 特開2009−173142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/06
B60J 5/00
E05B 83/40
E05F 11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向にスライド可能に配設され、車体のドア開口を開閉するドア本体と、該ドア本体のスライド方向後端部に配設され、前記ドア開口の縁部に設けられた被係合部材に係脱可能のロック装置とを備えた車両用スライドドアであって、
前記ロック装置に延設部を前記スライド方向前方に延びるように設け、
該延設部に錘部を設け、
該錘部は、車両側面視で、前記ドア本体がドア閉状態にあるときに、シートに着座している乗員の一部とラップしており、
さらに前記錘部には、前記ドア本体に昇降可能に配設されたドアガラスが窓開側にあるときに該ドアガラスと対向する座面が突出形成されている
ことを特徴とする車両用スライドドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方向にスライドするドア本体と、該ドア本体を車体のドア開口部にロックするロック装置とを備えた車両用スライドドアに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアは、車体に形成されたドア開口を開閉するドア本体と、該ドア本体を、ドア開口に配設された被係合部材(ストライカ)に係合して閉状態にロックするロック装置とを備えたものが一般的である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−179209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用ドアとして、従来、ドア本体を車両前後方向にスライド可能に配設し、該ドア本体のスライド方向後端部に、ドア開口縁部の被係合部材と係合するロック装置を設けたものがある。この種のスライドドアでは、ドア閉時にある程度勢いをつけて閉めないとロック装置の係合が確実に行われない場合がある。
【0005】
ドア閉時に、スライドドアに勢いを付け、その慣性効果により前記係合を確実にする方法として、ドアに慣性マスとして機能する錘部を設けることが考えられる。この場合、錘部の配設位置の如何によっては、慣性効果が十分に得られない、あるいは錘部を設けたことによりドア閉時に不必要な回転モーメントが発生してしまい、ロック機構や錘部設定部位に回転方向の荷重が入力され、部品の耐久性が低下するといった問題が懸念される。
【0006】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、慣性効果が十分に得られ、かつ不要な回転モーメントが作用せず、部品耐久性を向上でき、さらに車両側面衝突時の乗員からドアへの入力によりドアが大きく変形するのを防止できる車両用スライドドアを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両前後方向にスライド可能に配設され、車体のドア開口を開閉するドア本体と、該ドア本体のスライド方向後端部に配設され、前記ドア開口の縁部に設けられた被係合部材に係脱可能のロック装置とを備えた車両用スライドドアであって、
前記ロック装置に延設部を前記スライド方向前方に延びるように設け、該延設部に錘部を設け、
該錘部は、車両側面視で、前記ドア本体がドア閉状態にあるときに、シートに着座している乗員の一部とラップしており、
さらに前記錘部には、前記ドア本体に昇降可能に配設されたドアガラスが窓開側にあるときに該ドアガラスと対向する座面が突出形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、ロック装置の延設部に錘部を設けたので、該錘部がドア閉時に慣性マスとして機能し、ドアのスライド移動に勢いが付き、その慣性効果により、ドアを軽い操作力で容易確実に閉めることができる。また、前記錘部は、スライド方向に延びるように形成された延設部に設けられているので、つまり前記錘部がロック装置から上方又は下方に離間していないので、ドア閉時に錘部により不要な回転モーメントが作用することがなく、錘部の追加によりドアの耐久性が低下するのを回避できる。
【0009】
また、錘部と乗員の一部がラップしているので、車両の側面衝突時には、乗員が錘部に当接することにより、乗員からの入力を直接ロック装置に伝えることができ、ロック部を支点としたドアの無用の回動変位を抑えることができ、乗員保護性能を高めることができる。さらに錘部に窓開側にあるドアガラスと対向する座面を突出形成したので、ドアガラス組み付け時や車両側面衝突時のドアガラスの欠け,割れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例1によるスライドドアを備えた自動車の左側面図である。
図2】前記スライドドアの断面平面図である。
図3】前記スライドドアのロック装置と乗員との関係を示す左側面図である。
図4】前記スライドドアの、図3におけるIV-IV線断面図である。
図5】前記スライドドアのロック装置の斜視図である。
図6】前記スライドドアのロック装置を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
図において、1は、本実施例1に係るスライドドア4を備えた自動車である。この自動車1は、車体2と、該車体2の前部ドア開口2aを開閉する左,右一対のフロンドドア3と、後部ドア開口2bを開閉するスライドドア4と、フロントシート(図示せず)と、リヤシート5とを備えている。
【0013】
前記フロントドア3は、前端部に配設されたドアヒンジ3a,3aを中心に車幅方向に回動可能となっている。また、前記スライドドア4は、前記車体2の側面の後部に設けられたスライドレール2cに沿って車体前後方向にスライド可能となっている。
【0014】
前記スライドドア4は、前記後部ドア開口2bを開閉するドア本体6と、該ドア本体6を、前記後部ドア開口2bを閉じた状態にロックするロック装置7とを備えている。
【0015】
前記ドア本体6は、アウタパネル6aとインナパネル6bとを中空の最中状をなすように結合したものである。このドア本体6内には、ドアガラス8を、図4に実線で示す全閉位置と二点鎖線で示す全開位置との間で昇降させる昇降機構(図示せず)が配設されている。
【0016】
前記ロック装置7は、前記ドア本体6の後端部に配置され、該ドア本体6の高さ方向中途部を前記後部ドア開口2bに対してロックするように構成されている。なお、図1中、9,9は前記ドア本体6の前端部の上端部及び下端部をロックする前部ロック機構である。
【0017】
前記ロック装置7は、前記ドア本体6のインナパネル6b側に配設された支持ブラケット(図示せず)に固定された基板7aと、該基板7aに固定されたロック本体7bとを有する。該ロック本体7bは、前記ドア本体6を、前記後部ドア開口2bを全閉する全閉位置にスライドさせると車体側のストライカ(被係合部材)11に係合するように構成されている。前記ストライカ11は、前記後部ドア開口2bの後縁部に取り付けられている。なお、7cは、前記ロック本体7bと前記ドア本体6に設けられたドアハンドル6cとを連結するロック解除ケーブルであり、前記ドアハンドル6cを回動させることにより前記ロック本体7bのロックが解除される。
【0018】
前記ロック装置7の基板7aには、延設部7eが前記ドア本体6のスライド方向前方に延びるように一体形成されている。そして前記延設部7eには、錘部10が、車室外側に位置するように、かつ前記ロック本体7bの前記ストライカ11との係合部7fから略水平に前方に延長した延長線H上に位置するように配置され、複数のボルト10dによって固定されている。換言すれば、本実施例の錘部10は、少なくともその大部分が前記延設部7eの前方延長線h1〜h2間の領域A内に位置するように配設されている。
【0019】
前記錘部10は、ベースプレート10aと、これにボルト等で固定されたカバープレート10bとからなり、概ね箱状をなすように構成されている。そして前記カバープレート10bには、略円形の丸座面10cが車外側に滑らかに突出するように形成されている。この丸座面10cは、横断面で見て滑らかな台形状に形成され、ドアガラス8が開側に下降したとき該ドアガラス8の車室内側面と対向するように配設されている。
【0020】
ここで、車両側方から見たとき、前記ロック装置7は、その全体が、前記リヤシート5に着座している乗員M の腰部分とラップしている。なお、本発明では、前記ロック装置7のうち、前記錘部10が乗員Mとラップすれば良く、必ずしもロック装置7全体がラップする必要はない。
【0021】
本実施例では、ロック装置7の延設部7eに錘部10を設けたので、車両ユーザーが手動でスライドドア4を閉方向(前方)にスライドさせると、前記錘部10が慣性マスとして機能し、スライドドア4のスライド移動に勢いが付き、その慣性効果により、スライドドア4を軽い操作力で容易確実に閉めることができる。
【0022】
また、前記錘部10は、ロック本体7bのストライカ11との係合部7fの略水平延長線H上で、かつその大部分が前記領域A内に位置するように、つまりロック本体7bから上方又は下方に離間することのないよう配設されている。そのためドア閉時に錘部10により不要な回転モーメントが発生することがなく、従って錘部10を追加したことによりロック本体7bや錘設定部に回転力が作用するのを防止できその結果、各部品の耐久性が低下するのを防止できる。
【0023】
また、車両側面衝突時には、乗員Mが慣性により車室外方向に相対的に移動し、ドアに比較的大きな荷重が入力されることとなる。本実施例では、車両側方視で、錘部10と乗員Mの腰部付近がラップしているので、車両の側面衝突時には、乗員Mが錘部10に当接することにより、乗員Mからの入力を直接ロック装置7に伝えることができる。その結果、ロック本体7bとストライカ11との係合部7fを支点としたドアの無用の回動変位を抑えることができ、乗員保護性能を高めることができる。ちなみに、乗員Mからの入力がドア本体に直接伝わると、前記係合部7fを中心としてドアが回動変位し、該変位によりドアと車体との間に隙間が生じるおそれがあり、乗員保護性能が損なわれる。
【0024】
また前記錘部10に、丸座面10cを窓開位置にあるドアガラス8の車室内側面に対向するように設けたので、ドアガラス組付け時や車両の側面衝突時のドアガラス8の欠け,割れを抑制できる。即ち、ドアガラス組付け時においては、前記丸座面10cにより、ドアガラス8の下端が例えば前記錘部10の上端エッジ部10fに当たらないようガイドする機能が得られ、ガラスの欠けや割れを抑制できる。また側面衝突時においては、ドアガラス8が、図4に符号8′で示すように上部を中心に車室内側に回動した場合に、例えば前記錘部10の下端エッジ部10eに衝突するとガラスの割れが生じ易いが、本実施例では、下端エッジ部10eより先に滑らかな形状の丸座面10cに当たるので、ガラスの割れを抑制できる。
【0025】
なお、上記実施例では、錘部10が、ベースプレート10aとカバープレート10bとを概ね箱状をなすように結合したものである場合を説明したが、本発明の錘部はこれに限られるものではなく、例えば、鉄などの金属の塊で構成しても良い。
【符号の説明】
【0026】
1 自動車
2 車体
2b ドア開口
4 スライドドア
6 ドア本体
7 ロック装置
7e 延設部
10 錘部
11 ストライカ(被係合部材)
M 乗員
図1
図2
図3
図4
図5
図6