(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エンジン回転速度制御部は、前記増加制御において、エンジン回転速度が増加する増加速度を設定増加速度よりも遅くしてエンジン回転速度を増加させる形態で、前記目標回転速度と前記増加用回転速度とのうち、高回転速度側の回転速度にエンジン回転速度を制御するように構成されている請求項1に記載の作業車。
斜板角度を変更調整することで変速自在な走行用の油圧無段変速装置を備え、前記車速保持手段は、前記油圧無段変速装置における前記斜板角度を制御することで、前記走行車体の車速を保持するように構成されている請求項3に記載の作業車。
前記作業装置は、走行車体の前方に備えられるフロントローダであり、そのフロントローダを操作する操作レバーを備え、その操作レバーのグリップ部に前記増加指令操作部としてのスイッチが備えられている請求項1〜4の何れか1項に記載の作業車。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業車では、走行車体に作業装置を連結し、油圧ポンプをエンジンの出力軸に連結する等により、エンジンを油圧ポンプの駆動源として用い、油圧ポンプにて作業油を作業装置に供給して所望の作業を行うようにしている。そして、エンジン回転速度については、アクセル操作部の操作に応じたエンジンの目標回転速度を求め、その求めた目標回転速度にエンジン回転速度を制御している。
【0003】
しかしながら、エンジンを油圧ポンプの駆動源としていることから、アクセル操作部の操作に応じた目標回転速度にエンジン回転速度を制御するだけでは、油圧ポンプの回転速度として、作業装置を適切に作動させるために必要な作動油を供給できるだけ十分な高回転速度を得ることができず、作業装置を適切に作動させることができない場合がある。
【0004】
そこで、従来、エンジン回転速度について、目標回転速度とは別に予め設定回転速度を設定しておき、作業内容によって、アクセル操作部の操作に応じた目標回転速度にエンジン回転速度を制御するか、設定回転速度にエンジン回転速度を制御するかを切り換えているものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、別の作業車では、アクセル操作部とは別に燃料増量スイッチを備え、その燃料増量スイッチが操作された場合に、アクセル操作部の操作に応じた目標回転速度から所定回転速度だけエンジン回転速度を増加させるようにしているものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の作業車では、アクセル操作部の操作に応じた目標回転速度にエンジン回転速度を制御する状態に切り換えた場合に、依然として、目標回転速度にエンジン回転速度を制御することから、油圧ポンプの回転速度として十分な高回転速度を得ることができない場合がある。
【0008】
また、上述のような作業車では、走行車体を走行するための駆動源と油圧ポンプの駆動源とをエンジンにて兼用していることから、走行車体を走行させるための目標回転速度と作業装置を作動させるための油圧ポンプの回転速度との両者を考慮することで、エンジン回転速度を適切な回転速度に制御することができる。しかしながら、上記特許文献1に記載の作業車では、単に、設定回転速度にエンジン回転速度を制御しているだけであるので、目標回転速度と油圧ポンプの回転速度との両者を考慮できておらず、結局、油圧ポンプの回転速度として十分な高回転速度を得ることができない場合がある。
【0009】
上記特許文献2に記載の作業車では、燃料増量スイッチが操作させた場合に、目標回転速度から所定回転速度だけエンジン回転速度を増加させるので、油圧ポンプの回転速度として十分な高回転速度を得ることができる。しかしながら、目標回転速度が元々高回転速度であっても、燃料増量スイッチが操作されると、その高回転速度の目標回転速度から更に所定回転速度だけエンジン回転速度を増加させることになる。よって、エンジンに対して過剰な負荷を与えてしまうことになり、エンジンの損傷等の問題を生じることになる。
【0010】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、エンジンに過剰な負荷を与えることなく、油圧ポンプの回転速度として、作業装置を作動させるために必要な作動油を供給できるだけ十分な高回転速度を得ることができる作業車を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明に係る作業車の特徴構成は、エンジンと、前記エンジンにて駆動されて走行車体に連結された作業装置に作動油を供給する油圧ポンプとを備えた作業車において、
アクセル操作部の操作に応じた前記エンジンの目標回転速度を求める目標回転速度演算部と、
エンジン回転速度について増加用回転速度を予め設定し
記憶可能な増加用回転速度設定部と、
エンジン回転速度を制御するエンジン回転速度制御部と、
エンジン回転速度の増加指令を行う人為操作式の増加指令操作部とを備え、
前記エンジン回転速度制御部は、前記増加指令操作部にて前記増加指令が指令されていない場合には、前記目標回転速度にエンジン回転速度を制御するアクセル制御を行い、前記増加指令操作部にて前記増加指令が指令された場合には、前記目標回転速度と予め設定され
記憶された前記増加用回転速度とのうち、高回転速度側の回転速度にエンジン回転速度を制御する増加制御を行うように構成され、
変速操作部の操作に応じて変速自在な走行用の変速装置と、前記変速装置の変速領域が高速領域に切り換えられている場合に、前記エンジン回転速度制御部による前記増加制御の実行を牽制する牽制部とを備えている点にある。
【0012】
本特徴構成によれば、作業装置を作動させる場合には、運転者が増加指令操作部の操作を行うことで、増加指令操作部にて増加指令を行うことができる。このように増加指令が指令されている場合には、エンジン回転速度制御部が増加制御を行うので、目標回転速度の方が増加用回転速度よりも高回転速度であると、その目標回転速度にエンジン回転速度を制御し、逆に、増加用回転速度の方が目標回転速度よりも高回転速度であると、その増加用回転速度にエンジン回転速度を制御することができる。これにより、エンジン回転速度を過剰に増加させずに、エンジンに対して過剰な負荷を与えることなく、目標回転速度と増加用回転速度とのうち、高回転速度側の回転速度にエンジン回転速度を制御して、油圧ポンプの回転速度として十分な高回転速度を得ることができる。
【0013】
そして、増加指令操作部にて増加指令が指令されていない場合には、エンジン回転速度制御部がアクセル制御を行うので、目標回転速度よりも増加させずにエンジン回転速度を制御することができる。これにより、エンジン回転速度をむやみに増加させることなく、エンジンに対して過剰な負荷を与えることを適切に防止することができる。
【0015】
さらに、運転者が変速操作部を操作することで変速装置が高速領域に切り換えられている場合には、増加指令操作部により増加指令を行っても、牽制部によってエンジン回転制御部による増加制御の実行を牽制して、エンジン回転制御部による増加制御が行われない。これにより、変速装置を高速領域に切り換えている場合には、エンジン回転速度を増加させて、走行車体の速度が過剰な高速となるのを防止することができる。
【0016】
本発明に係る作業車の更なる特徴構成は、前記エンジン回転速度制御部は、前記増加制御において、エンジン回転速度が増加する増加速度を設定増加速度よりも遅くしてエンジン回転速度を増加させる形態で、前記目標回転速度と前記増加用回転速度とのうち、高回転速度側の回転速度にエンジン回転速度を制御するように構成されている点にある。
【0017】
エンジン回転速度制御部が増加制御を行う場合に、エンジン回転速度を増加させる増加速度が速いと、エンジンから排出される粒子状物質(PM)の排出量が増加する傾向にある。そこで、増加制御を行う場合に、エンジン回転速度が増加する増加速度を設定増加速度よりも遅くしてエンジン回転速度を増加させることで、粒子状物質(PM)の排出量を極力少量に抑えることができる。
【0018】
本発明に係る作業車の更なる特徴構成は、前記エンジン回転速度制御部による前記増加制御が行われる場合に、走行車体の車速を保持する車速保持手段を備えている点にある。
【0019】
増加用回転速度の方が目標回転速度よりも高回転速度である場合に、エンジン回転速度制御部が増加制御を行うと、エンジン回転速度が増加されるので、その増加に伴って走行車体の車速も増加して急加速される場合がある。特に、増加用回転速度と目標回転速度との差が大きい場合には、急加速という問題が顕著になる。そこで、車速保持手段を備えることで、エンジン回転速度制御部による増加制御の実行によりエンジン回転速度が増加された場合でも、エンジン回転速度制御部による増加制御が実行される前の走行車体の車速を保持して急加速という問題が生じるのを防止することができる。
【0020】
本発明に係る作業車の更なる特徴構成は、斜板角度を変更調整することで変速自在な走行用の油圧無段変速装置を備え、前記車速保持手段は、前記油圧無段変速装置における前記斜板角度を制御することで、前記走行車体の車速を保持するように構成されている点にある。
【0021】
本特徴構成によれば、斜板角度を変更調整することで変速自在な走行用の油圧無段変速装置を備えているので、車速保持手段は、油圧無段変速装置における斜板角度を制御するという簡易な構成によって、走行車体の車速の保持を適切に行うことができる。
【0022】
本発明に係る作業車の更なる特徴構成は、前記作業装置は、走行車体の前方に備えられるフロントローダであり、そのフロントローダを操作する操作レバーを備え、その操作レバーのグリップ部に前記増加指令操作部としてのスイッチが備えられている点にある。
【0023】
運転者は操作レバーを操作することで、フロントローダを操作することができる。そして、その操作レバーのグリップ部に増加指令操作部としてのスイッチが備えられているので、運転者は操作レバーの操作を行いながら、押圧操作等のスイッチの操作を行うことができる。よって、運転者に対する負担を軽減することができながら、増加指令を適切なタイミングにて指令することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る作業者の実施形態について図面に基づいて説明する。
本発明に係る作業車は、
図1に示すように、例えば、農用のトラクタ1に適応されており、作業装置として、走行車体2の前方にフロントローダ3が連結されている。このトラクタ1は、フロントローダ3を用いて、例えば、土砂を掘削したり、その土砂をトラック等の所望箇所まで搬送して移載する作業等を行うようにしている。
【0026】
トラクタ1には、
図2に示すように、主クラッチ4を介して伝達されるエンジン5からの動力を変速する変速装置として、推進用の主変速装置として機能する静油圧式無段変速装置(HST)6(走行用の油圧無段変速装置に相当する)と推進用の副変速装置として機能するギヤ式変速装置7とが備えられている。ギヤ式変速装置7の前輪用出力軸8から取り出した変速後の動力を、前輪駆動用の動力として前輪用変速装置9や前輪用差動装置10等を介して左右の前輪11に伝達している。ギヤ式変速装置7の後輪用出力軸12から取り出した変速後の動力を、後輪駆動用の動力として後輪用差動装置13や左右の後車軸14等を介して左右の後輪15に伝達している。これにより、トラクタ1は、左右の前輪11及び後輪15を駆動する4輪駆動型に構成されている。
【0027】
また、静油圧式無段変速装置6のポンプ軸16からの非変速動力を、補助クラッチ17や補助変速装置18等を介して動力取出軸19に伝達して、フロントローダ3に作動油を供給する油圧ポンプ20を駆動させている。このようにして、フロントローダ3に作動油を供給する油圧ポンプ20は、エンジン5からの動力を駆動源として駆動されるように構成されている。
【0028】
静油圧式無段変速装置6は、エンジン5からの動力を受ける斜板式可変吐出型の油圧ポンプ21とその油圧ポンプ21からの油圧によって回転して動力を出力する油圧モータ22とを備えて構成されている。この静油圧式無段変速装置6では、エンジン5からの動力がポンプ軸16に入力されることにより、油圧ポンプ21から油圧モータ22に圧油が供給され、油圧モータ22が油圧ポンプ21からの油圧によって回転駆動されてモータ軸を回転させる。静油圧式無段変速装置6は、HST操作部23(例えば、中立状態に復帰付勢されたHSTペダル)の操作に基づいて、油圧ポンプ21の斜板角度の変更が行なわれる。静油圧式無段変速装置6は、正回転状態、逆回転状態、及び正回転状態と逆回転状態の間に位置する中立状態に変速されるとともに、正回転状態に変速された場合においても逆回転状態に変速された場合においても、油圧ポンプ21の回転速度を無段階に変更して油圧モータ22の回転速度(時間当たり回転数)を無段階に変更する。
【0029】
ギヤ式変速装置7は、複数の変速操作位置に操作保持可能な変速操作部24(例えば、変速レバー)の操作に基づいて、静油圧式無段変速装置6による変速後の動力を有段変速するように構成されている。ここで、ギヤ式変速装置7の変速領域としては、低速領域と中速領域と高速領域との3段階に設定されており、変速操作部24の変速操作位置に基づいて、低速領域と中速領域と高速領域との何れかの変速領域に変速される。
【0030】
また、トラクタ1には、各種センサ類が備えられているが、エンジン5からの出力軸の回転速度を検出してエンジン回転速度を検出する回転速度センサ25と、ギヤ式変速装置7における後輪用出力軸12の回転速度を検出して走行車体2の車速を検出する車速センサ26とが備えられている。
【0031】
フロントローダ3は、
図1に示すように、走行車体2の左右両側部に着脱可能に連結される左右一対の支柱27と、対応する支柱27の上端部に上下揺動可能に連結された左右一対のブーム28と、それらのブーム28の遊端部に上下揺動可能に連結されたバケット29と、左右の支柱27に対して対応するブーム28を上下方向に揺動駆動する油圧式の左右一対のブームシリンダ30と、左右のブーム28に対してバケット29を上下方向に揺動駆動する油圧式の左右一対のバケットシリンダ31とを備えている。
【0032】
また、フロントローダ3については、
図3に示すように、左右のブームシリンダ30に対する作動油の流動を制御するブーム用の制御弁32と、左右のバケットシリンダ31に対する作動油の流動を制御するバケット用の制御弁33と、ブーム用の制御弁32とバケット用の制御弁33とに連係された十字揺動式で中立復帰型の操作レバー34(
図4参照)と、動力取出軸19からの動力で作動油を各制御弁32,33に向けて圧送する油圧ポンプ20等が備えられている。このようにして、フロントローダ3は、操作レバー34の操作に連動した各制御弁32,33による作動油の流動制御でブーム28及びバケット29が上下揺動する油圧式に構成されている。
【0033】
ここで、
図3及び
図4に基づいて説明すると、左右のブーム28は、操作レバー34の下方への揺動操作で上昇揺動し、操作レバー34の上方への揺動操作で下降揺動するように構成されている。バケット29は、操作レバー34の左方への揺動操作で上昇揺動し、操作レバー34の右方への揺動操作で下降揺動するように構成されている。ちなみに、図示は省略するが、フロントローダ3には、ブーム28の揺動角を検出する回転式のポテンショメータからなるブームセンサや、バケット29の揺動角を検出する回転式のポテンショメータからなるバケットセンサ等が備えられている。
【0034】
また、
図3に示すように、トラクタ1には、エンジン回転速度を設定したり、静油圧式無段変速装置6における斜板の角度を制御するメイン制御部35と、そのメイン制御部35にて設定された制御目標のエンジン回転速度にエンジン5の回転速度を制御するエンジン制御部36とが備えられている。
【0035】
メイン制御部35には、アクセル操作部37の操作に応じたエンジン5の目標回転速度を求める目標回転速度演算部38と、回転速度設定用操作部39による操作に応じてエンジン回転速度について増加用回転速度を設定する増加用回転速度設定部40と、目標回転速度演算部38にて求めた目標回転速度と増加用回転速度設定部40にて設定された増加用回転速度のいずれかを制御目標のエンジン回転速度として設定するエンジン回転速度設定部41と、HST操作部23の操作に応じて静油圧式無段変速装置6の斜板角度を制御する斜板制御部42とが備えられている。
【0036】
アクセル操作部37は、所定の操作範囲内で操作位置を変更自在であり、例えば、アクセルペダル或いはハンドアクセル操作部にて構成されており、図示は省略するが、アクセル操作部37の操作位置を検出するセンサの検出情報がメイン制御部35に入力される。アクセル操作部37の操作位置と目標回転速度との関係はマップ等により予め設定されており、目標回転速度演算部38は、予め設定されているマップを用いて、アクセル操作部37の操作位置に応じて目標回転速度を求めている。
【0037】
回転速度設定用操作部39は、例えば、運転席の前方に配設されたメータ内に備えたタッチパネル式のスイッチ部等により構成されており、そのスイッチ部を操作することで、増加用回転速度設定部40が、増加用回転速度を所望の回転速度に変更設定自在に構成されている。例えば、メータ内には、現在設定されている増加用回転速度を表示する表示部が備えられており、スイッチ部を所定時間以上長押しすることで、その表示部の画面が変更設定画面に切り換わる。そして、表示部を変更設定画面に切り換えた状態において、スイッチ部を押し操作するたびに増加用回転速度を所望量だけ増加させる形態で、増加用回転速度を設定範囲内の所望の回転速度に変更設定できるようになっている。例えば、増加用回転速度については、800〜2600rpmの設定範囲内で200rpmごとに設定できるようになっている。
【0038】
HST操作部23については、上述の如く、例えば、中立状態に復帰付勢されたHSTペダルにて構成されており、図示は省略するが、HST操作部23の操作位置を検出するセンサの検出情報がメイン制御部35に入力される。ちなみに、HST操作部23については、HSTペダルに限らず、アクセルペダルに連動したものでもよい。HST操作部23の操作位置と静油圧式無段変速装置6の斜板角度との関係はマップ等により予め設定されている。斜板制御部42は、予め設定されているマップを用いて、HST操作部23の操作位置に応じた目標の斜板角度を求め、静油圧式無段変速装置6の斜板角度を検出する斜板センサ43の検出情報に基づいて、静油圧式無段変速装置6の斜板角度が求めた目標の斜板角度になるように、静油圧式無段変速装置6の斜板角度を制御している。
【0039】
エンジン5は、例えば、コモンレール式のディーゼルエンジンであり、燃料の噴射量や噴射タイミングを電子制御できるように構成されている。エンジン制御部36は、エンジン回転速度設定部41にて設定された制御目標のエンジン回転速度の指令を受けると、回転速度センサ25の検出情報に基づいて、燃料の噴射量や噴射タイミングを制御することで、その設定された制御目標のエンジン回転速度にエンジン5の回転速度を制御するように構成されている。
【0040】
上述の如く、運転席の近傍には、フロントローダ3のブーム28やバケット29を上下揺動させるために操作レバー34が備えられており、この操作レバー34には、
図4に示すように、エンジン回転速度の増加指令を行う人為操作式の増加指令操作部44が備えられている。この増加指令操作部44は、操作レバー34のグリップ部34aに備えられており、運転者により押し操作されている間だけ増加指令を行うモーメンタリ式のスイッチにて構成されている。このように、増加指令操作部44がグリップ部34aに備えられているので、運転者は操作レバー34を操作する手を操作レバー34から離すことなく、増加指令操作部44を操作できるようになっている。ちなみに、増加指令操作部44については、モーメンタリ式のスイッチに限らず、オルタネイト式のスイッチにて構成することもでき、その他各種のスイッチを用いることができる。
【0041】
以下、
図5のフローチャートに基づいて、メイン制御部35及びエンジン制御部36によりエンジン回転速度を制御する動作について説明する。
まず、目標回転速度演算部38は、アクセル操作部37の操作位置に応じて目標回転速度を求めており、この目標回転速度演算部38による目標回転速度の演算は、常時繰り返し行われている。増加用回転速度設定部40は、回転速度設定用操作部39の操作により増加用回転速度を所望の回転速度に設定している。そして、増加用回転速度設定部40は、一度、増加用回転速度を設定すると、キーOFF操作されても、その増加用回転速度が記憶保持されており、再度、キーON操作された場合には、その記憶保持している増加用回転速度を用いるようにしている。また、増加用回転速度設定部40は、回転速度設定用操作部39の操作により増加用回転速度が変更設定されると、変更後の増加用回転速度を記憶保持するようにしている。
【0042】
目標回転速度演算部38による目標回転速度の演算、及び、回転速度設定用操作部39の操作に基づく増加用回転速度設定部40による増加用回転速度の設定が行われた場合に、増加指令操作部44にて増加指令が指令されていないと(ステップ#1のNoの場合)、エンジン回転速度設定部41が、目標回転速度演算部38にて求めた目標回転速度を制御目標の回転速度に設定し、エンジン制御部36がその制御目標の回転速度になるようにエンジン回転速度を制御するアクセル制御を行う(ステップ#2)。
【0043】
また、運転者が増加指令操作部44を操作することで増加指令操作部44にて増加指令が指令されており(ステップ#1のYesの場合)、しかも、ギヤ式変速装置7の変速領域が高速領域以外の速度領域である場合(ステップ#3のNoの場合)には、エンジン回転速度設定部41が、目標回転速度演算部38にて求めた目標回転速度と増加用回転速度設定部40にて設定された増加用回転速度とのうち、高回転速度側の回転速度を制御目標の回転速度に設定し、エンジン制御部36がその制御目標の回転速度になるようにエンジン回転速度を制御する増加制御を行う(ステップ#4)。
【0044】
つまり、増加制御では、エンジン回転速度設定部41は、目標回転速度演算部38にて求めた目標回転速度と増加用回転速度設定部40にて設定された増加用回転速度とを比較して、どちらが高回転速度であるかを判別して、高回転速度側の回転速度を制御目標の回転速度に設定する。そして、エンジン回転速度設定部41は、制御目標の回転速度を設定すると、その制御目標の回転速度をエンジン制御部36に指令し、エンジン制御部36がその制御目標の回転速度になるようにエンジン回転速度を制御する。
【0045】
メイン制御部35及びエンジン制御部36は、上述のステップ#1〜#4の動作を繰り返し行っており、増加制御の実行中に、増加指令が指令されなくなると、増加制御を停止してアクセル制御を行うようにしている。逆に、メイン制御部35及びエンジン制御部36は、アクセル制御の実行中に、増加指令が指令されると、アクセル制御を停止して増加制御を行うようにしている。これにより、増加指令操作部44をモーメンタリ式のスイッチにて構成した場合には、そのモーメンタリ式のスイッチが運転者にて押し操作されている間のみ、増加制御を行うことができる。
【0046】
このようにして、増加指令操作部44にて増加指令が指令されていない場合に、アクセル制御を行い、増加指令操作部44にて増加指令が指令されている場合に、増加制御を行うエンジン回転速度制御部46が、エンジン回転速度設定部41及びエンジン制御部36から構成されている。
また、
図3に示すように、変速操作部24の変速位置については、図示は省略したセンサにて検出しており、そのセンサの検出情報がメイン制御部35に入力されている。これにより、メイン制御部35では、変速操作部24の変速位置によってギヤ式変速装置7の変速領域が、高速領域、中速領域、低速領域のうち、どの変速領域であるかを把握できるようになっている。そこで、メイン制御部35には、ギヤ式変速装置7の変速領域が高速領域に切り換えられている場合に、エンジン回転速度制御部46による増加制御の実行を牽制する牽制部47が備えられている。
図5に示すように、この牽制部47によって、増加指令操作部44にて増加指令が指令されている場合(ステップ#1のYesの場合)に、変速操作部24の操作位置が高速領域であると、増加制御を行わずにアクセル制御を行い、逆に、変速操作部24の操作位置が高速領域以外であると(ステップ#3のNoの場合)、増加制御を行うようにしている。
【0047】
このように、通常の走行等、運転者が増加指令操作部44を操作せずに、増加指令操作部44にて増加指令が指令されていない場合には、アクセル制御を行うことで、アクセル操作部37の操作位置に応じた目標回転速度にエンジン回転速度を制御して、走行車体2の車速をアクセル操作部37の操作に応じた車速に制御することができる。
また、フロントローダ3を用いた作業を行う場合には、運転者が増加指令操作部44を操作して増加指令操作部44にて増加指令が指令されている場合には、ギヤ式変速装置7の変速領域が高速領域以外に切り換えられていないことを確認した上で、増加制御を行うようにしている。増加制御では、目標回転速度と増加用回転速度とのうち、高回転速度側の回転速度にエンジン回転速度を制御して、フロントローダ3に作動油を供給する油圧ポンプ20の回転速度として十分な高回転速度を得ることができる。これにより、エンジン回転速度を過剰に増加させずに、エンジン5に対して過剰な負荷を与えることなく、フロントローダ3に供給する作動油が不足するのを防止でき、フロントローダ3を用いた作業を適切に行うことができる。
【0048】
ここで、エンジン回転速度制御部46が増加制御を行うことで、エンジン5に過剰な負荷を与えることなく、エンジン回転速度を増加させるわけであるが、エンジン回転速度制御部46は、増加制御において、エンジン回転速度を増加する増加速度を設定増加速度よりも遅くしてエンジン回転速度を増加させる形態で、目標回転速度と増加用回転速度とのうち、高回転速度側の回転速度にエンジン回転速度を制御している。設定増加速度については、ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質(PM)の排出量が設定許容量を超えないように設定されている。これにより、例えば、エンジン回転速度制御部46は、増加制御において、増加速度が設定増加速度よりも遅い予め設定された遅延用設定増加速度にてエンジン回転速度を増加させて、粒子状物質(PM)の排出量が設定許容量を超えないようにしている。
【0049】
上述の如く、エンジン回転速度制御部46が増加制御を行うことで、エンジン回転速度が増加されるので、その増加に伴って走行車体2の車速も増加して急加速される場合がある。そこで、
図3に示すように、エンジン回転速度制御部46が増加制御を行うに当たり、走行車体2の車速を保持する車速保持手段48が備えられている。この車速保持手段48は、斜板制御部42にて構成されており、静油圧式無段変速装置6の斜板角度を制御することで、走行車体2の車速を増加制御が行われる前の車速に保持する車速保持制御を行うように構成されている(
図5のステップ#4)。
【0050】
この車速保持制御について、
図6のグラフに基づいて説明する。この
図6のグラフでは、横軸を経過時間とし、縦軸をエンジン回転速度としたものを
図6(a)とし、縦軸を静油圧式無段変速装置6の斜板角度としたものを
図6(b)とし、縦軸を車速としたものを
図6(c)としている。
【0051】
斜板制御部42は、車速センサ26の検出情報に基づいて、走行車体2の車速を監視しており、エンジン回転速度制御部46が増加制御を行うに当たり、その増加制御の開始時点T1における走行車体2の車速を保持するように、静油圧式無段変速装置6の斜板角度を制御している。つまり、エンジン回転速度制御部46が増加制御を行うことで、エンジン回転速度が増加するので、斜板制御部42は、車速センサ26にて検出した車速が増加制御の開始時点T1における車速となるように、静油圧式無段変速装置6の斜板角度を減少させている。このようにして、斜板制御部42が車速保持制御を行うことで、
図6(c)に示すように、走行車体2の車速を増加制御の開始時点T1における走行車体2の車速に保持している。
【0052】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、エンジン回転速度制御部46が増加制御を行うに当たり、走行車体2の車速を保持する車速保持手段48を備えている。これに代えて、例えば、牽制部47は、静油圧式無段変速装置6の斜板角度が中立状態以外の角度に制御されている場合に、エンジン回転速度制御部46による増加制御の実行を牽制するように構成することもできる。
【0053】
(2)上記実施形態では、増加用回転速度について、設定範囲内の所望の回転速度に変更設定できるようにしているが、例えば、増加用回転速度を、エンジン5として許容可能な最大回転速度の一定の回転速度とすることもできる。
【0054】
(3)上記実施形態において、増加制御においてエンジン回転速度を増加させるときの増加速度については、例えば、アクセル操作部37の操作や増加制御を停止してアクセル制御を行う場合等、エンジン回転速度を減少させるときの減少速度よりも増加速度を遅くなるように設定することもできる。
【0055】
(4)上記実施形態では、変速装置として、静油圧式無段変速装置(HST)6とギヤ式変速装置7とを備えるものを例示したが、この構成に限らず、例えば、静油圧式無段変速装置(HST)と遊星ギヤ機構を組み合わせて構成されたHMTを用いることも可能であり、その他各種の変速装置を適応することができる。
【0056】
(5)上記実施形態では、作業車として、農用のトラクタ1を例示したが、その他、各種の作業車に適応することができる。