(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら一般に鞍乗型の車両においてシートは、側方視で後輪の上方付近に配置されているので、走行中には後輪の上下動に伴って上下方向に大きく振動する。このため、前記従来例のようにシートの下方に設けた物品収納箱の中では物品が上下に飛び跳ねてしまい、乗員が違和感を感じやすい。
【0006】
この点、収納スペース内にフックを設けて、ゴムバンドによって物品を固定することも考えられるが、この場合は狭い収納スペース内に物品を収納した後に、フックに引っ掛けたゴムバンドによって固定するという煩わしい作業が必要になる。
【0007】
かかる点に鑑みて本発明の目的は、鞍乗型車両のシート下のスペースに収納した物品の飛び跳ねを抑えるとともに、そのための煩わしい作業は必要としないシート下収納構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために本発明は、鞍乗型の車両において、乗員が騎乗するシートの下の収納スペースを上下に仕切る仕切部材を開閉可能に設けたものである。ここで開閉可能というのは、仕切部材の下方のスペースを開放して、上方から物品を収納したり取り出したりすることができるようにする、という意味である。そのために仕切部材は取り外し可能に設けてもよい。
【0009】
この収納構造では、シート下の収納スペースが仕切部材によって上下に仕切られているので、その下方に収納した物品の飛び跳ねを抑制できる。物品の収納作業は、仕切部材を開いてその下方に物品を収納した後に、再び閉じるだけでよく、収納スペース内で物品にゴムバンドをかけるような煩わしい作業は必要ない。しかも、仕切部材の上方のシートとの間にも物品を収納でき、この物品の跳び跳ねも抑制できる。
【0010】
前記仕切部材を形成するために比較的柔らかな樹脂材料を用いれば、仕切部材に適度な弾性を与えることが容易であり、この仕切部材によって物品を上方から押さえるようにしてもよい。こうすれば仕切部材の略全体で、すなわちゴムバンドよりも広い範囲において物品を安定的に押さえることができる。なお、仕切部材自体は比較的硬い樹脂材料で成形したり鉄の薄板などで形成し、これにクッション材を貼設してもよい。
【0011】
好ましくは前記仕切部材に、上方に突出してシートに当接し、当該シートから下方に押圧される被押圧部を設けてもよい。こうすれば、シートから被押圧部を介して仕切部材が下方に押圧され、その下方の物品を押さえ付けるようになるので、その物品の跳び跳ねをより確実に抑えることができる。被押圧部は互いに離間させて、シートの下部若しくは側部に当接するよう3箇所以上に配置するのが好ましく、こうすれば仕切部材の略全体を安定的に下方に押圧することができる。
【0012】
また、仕切部材の下方に収納する物品が一例として工具等の車載装備品であり、その大きさや形状が既定のものであれば、これらの物品の形状に対応する凹凸形状を前記仕切部材に形成してもよい。こうすれば、物品をより安定的に押さえ付けることができる上に、収納スペースの利用効率も高くなる。
【0013】
また、下方に収納スペースを設けるシートは、鞍乗型車両の前後方向に並んで騎乗する複数の乗員のうち、最後尾の乗員が騎乗するリヤシートであってもよい。この場合、収納スペース内の物品が特に上下に跳び跳ねやすいので、その飛び跳ねを抑えるという発明の効果が特に有効なものとなる。
【0014】
また、その場合に前記仕切部材は、その前部の支軸の周りに上下方向に揺動して、下方のスペースを後方に向かって開放させるように配設してもよい。リヤシートの下方の収納スペースはリヤフェンダの形状に合わせて、前方ほど低くなるように傾斜したスペースになることが多いので、そのスペースを後方に向かって開放させるようにすれば、物品の収納および取り出しの作業が容易に行える。
【0015】
さらに、仕切部材の上方のスペースにも車載電装品を収納できるように、その仕切部材の上面に車載電装品を保持する保持部を設けてもよい。一例としてETC車載器を収納する場合、前記の保持部を仕切部材とは別体の保持部材として、ETC車載器を、ETCカードの挿入口が前後または左右方向のいずれかの方向の一側に開口するように保持するとともに、その反対の他側寄りの支軸の周りに上下方向に揺動可能に設けてもよい。こうすれば、保持部材を上方に揺動させることで、ETCカードの挿入や取り出しを容易に行える。
【0016】
また、前記保持部には、前記車載電装品の近傍において上方に突出し、前記シートの下部に当接するようにストッパを設けてもよい。こうすれば、シートに乗員が騎乗したとき、その体重を受けるシートから直接、車載電装品に加わる荷重を軽減でき、車載電装品の信頼性を向上する上で有利になる。換言すれば、ストッパを設ける車載電装品の近傍というのは、シートの下部からの荷重を受け止めて、車載電装品への荷重を効果的に軽減できるような範囲を指す。
【発明の効果】
【0017】
以上、説明したように、本発明に係る鞍乗型車両のシート下収納構造によると、収納スペースを上下に区分する仕切部材を開閉可能に設けたので、収納した物品の飛び跳ねを抑制できるとともに、そのために物品にゴムバンドをかけるような手間が要らず、利便性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る鞍乗型輪車のシート下収納構造について、図面を参照して説明する。本実施形態では鞍乗型車両の一形態である自動二輪車1について説明し、その説明において左右方向は、自動二輪車に騎乗するライダーの見る方向を基準とする。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る自動二輪車1の左側面図である。
図1に表れているように自動二輪車1は、従動輪である前輪2と、駆動輪である後輪3とを備えている。前輪2は、やや後傾しながら上下方向に延びるフロントフォーク4の下端部において回転自在に支持されており、フロントフォーク4の上部は上下一対のブラケット4aを介して、ステアリングシャフト(図示せず)に支持されている。このステアリングシャフトは車体側のヘッドパイプ5によって回転自在に支持されている。
【0021】
そうしてフロントフォーク4の上部を車体側に連結するブラケット4aやステアリングシャフト、ヘッドパイプ5等を前方から左右両側にかけて取り囲むように、本実施形態の自動二輪車1はフルカウル6を備えている。フルカウル6は樹脂製で、ウインドシールドやヘッドランプの取付けられる車体の前部からエンジンEの左右両側までを覆うように設けられている。
【0022】
また、フロントフォーク4の上端に位置する上側のブラケット4aには、左右へそれぞれ延びるようにセパレートタイプのハンドル7が取り付けられており、このハンドル7によって運転者は、フロントフォーク4および前輪2をヘッドパイプ5(ステアリングシャフト)の周りに操舵することができる。さらに、フロントフォーク4の下端部には、前輪2と一体に回転するブレーキディスクを備えた前輪ブレーキ8が配設されている。
【0023】
図示はしないが右側のハンドル7には、運転者の右手により把持されるスロットルグリップが設けられており、手首のひねりによってスロットルグリップを回転させることで、エンジンEの出力を調整することができる。また、スロットルグリップの前方には前輪ブレーキ7を動作させるためのブレーキレバーが設けられている。一方、左側のハンドル7には、運転者の左手によって把持されるグリップの前方にクラッチレバー9が設けられている。
【0024】
図1に破線で示すように、前記ヘッドパイプ5から後方へ向かって若干下方に傾斜しながらメインフレーム10が延びている。本実施形態ではメインフレーム10の前部は、ヘッドパイプ5の上部から後方に延びるセンターフレーム部材と、ヘッドパイプ5の下部から二股状に左右に分かれて後方に延びる左右一対のサイドフレーム部材とからなる。この左右のサイドフレーム部材は、後方に延びる途中で若干、上方に傾斜するように緩やかに湾曲し、その後、再び下方に傾斜するように折れ曲がっている。
【0025】
そうして折れ曲がった後に左右のサイドフレーム部材は、それぞれ直線状に後方斜め下向きに延びていて、その後端部から下方に延びるようにピボットフレーム11が連設されている。左右のピボットフレーム11の間には、概ね前後方向に延びるスイングアーム12の前端部が揺動可能に支持されており、このスイングアーム12の後端部には後輪3が回転自在に支持されている。後輪3のスプロケット13には仮想線で示すようにチェーン14が巻き掛けられており、エンジンEからの出力が伝達される。
【0026】
メインフレーム10の下部にはエンジンEが搭載され、このメインフレーム10からピボットフレーム11にかけて前傾状態で支持されている。エンジンEの上部のシリンダヘッドの後面には吸気ポートが開口し、これに接続されるようにスロットルボディ15が配設されて、その後方のエアクリーナボックス16に接続されている。また、エンジンEの下部のクランクケースの後部にはミッションケースが一体化されており、このミッションケースがピボットフレーム11に支持されている。
【0027】
一方、メインフレーム10の上部には燃料タンク17が配設され、その後方には運転者(ライダー)の騎乗するシート18が配設され、さらにその後方には同乗者(タンデムライダー)の騎乗するリヤシート19が配設されている。燃料タンク17の下方から後方のシート18の下方にかけてサイドカウル20が取付けられ、このサイドカウル20の後方にはリヤカウル21が取付けられている。また、リヤシート19の後方にはテールランプ22が、その下方にはリヤフラップ23が、それぞれ配設されている。
【0028】
また、
図1に破線で示すように後輪3の上方には、ピボットフレーム11の上部から後方斜め上向きに前記リヤフラップ23まで延びるように、リヤフェンダ25が配設されている。このリヤフェンダ25の上部は種々の車載電装品が搭載されるスペースとされ、本実施形態では一例としてエアクリーナボックス16の後方に近接して車載バッテリ26が配置され、その後方に離間してECU27が配設されている。そして、ECU27の後部、即ちリヤシート19の下方には物品の収納スペースSが設けられている。
【0029】
−リヤシート下の収納構造−
以下に
図2〜9を参照して、本実施形態の自動二輪車1におけるリヤシート下の収納構造について説明する。
図2は、リヤシート下の収納構造を破線で概略的に示す拡大図であり、
図3は収納された工具等のレイアウトを上方から見て破線で示す。
図4および
図5はそれぞれ
図2のV−V線および
図3のIV−IV線における断面図である。また、
図6は、リヤシート19を取り外して示す斜視図であり、
図7は同平面図である。さらに
図8は、カバー40を単体で示す斜視図であり、
図9はカバー40を開いて下方に収納された物品を示す斜視図である。
【0030】
図2〜5に示すように収納スペースSは、リヤフェンダ25の後端部付近に一体成形された収納枠25aの上方に設けられており、リヤフェンダ25の形状に沿って前方ほど低くなるように傾斜している。収納枠25aの上方に位置するリヤシート19の底板190との間には、収納スペースSを上下に仕切るように樹脂製のカバー40(仕切部材)が配設されている。
図5に示すように収納スペースSの左右両側には、丸パイプ材からなる左右一対のリヤフレーム28が位置し、その外側はそれぞれリヤカウル21によって覆われている。
【0031】
一例としてリヤシート19は、樹脂の成型品である底板190と、その上面に貼設されたウレタンフォームなどのクッション材191(
図4、5にのみ符号を付す)と、このクッション材191を上面から左右両側面および前後両面にかけて覆うシート表皮192とからなる。
図5に示すように底板190の左右両側にはそれぞれ、側面部190aの上端から折れ曲がって斜め下向きに延びる庇部190bが設けられて、左右のリヤカウル21の上部を覆っている。
【0032】
また、左右の両側面部190aのやや内側において底板190の下面には、左右一対の突条190cがそれぞれ前後方向に延びるように設けられており、これらの突条190cの外側が、詳しくは後述するようにカバー40の左右の拡幅部43b,44b(被押圧部)を押圧する押圧部190dとされている。一方、左右の突条190cよりも内側において底板190には上方への膨出部190eが形成されており、その分、収納スペースSの拡大が図られている。
【0033】
図4に示すようにリヤシート19の底板190の前端部には、車体フレーム側のロック機構29に係合されるピン190fが配設されている一方、底板190の後端部には、詳しくは後述するがカバー40の後端の延出部45b(被押圧部)を上方から押圧するように押圧部190gが形成されている。
図3に示すようにリヤシート19は、車体中心線Xを挟んで左右対称形状で、左右の幅が後方に向かって徐々に狭くなる台形状であるが、その前縁が左右の中央付近で前方に突出する一方、後縁は左右の中央付近で後方に突出していて、全体として盾のような六角形状になっている。
【0034】
そのリヤシート19を取り外して、
図6に示すように上方斜め後から見ると、収納スペースSは、前方のシート18および後方のテールランプ22と左右のリヤカウル21とに囲まれて上方に開口していて、内部を上下に仕切るカバー40が左右のリヤフレーム28の間に載置されている。
図7に示すように上方から見るとカバー40は概略矩形状であり、その前縁は、左右のリヤフレーム28同士を繋ぐ鋼板等の連結板部材30に沿うよう、概略直線的に形成されている一方、カバー40の後縁は、左右のリヤフレーム28の後端を繋ぐ後端板部材31の形状に合わせて概略円弧状に湾曲している。
【0035】
一例としてカバー40は、ポリプロピレンのような柔軟性を有する樹脂材料の成型品であって、
図8に単体で示すように底壁部41と、その外周縁、即ち前縁、後縁および左右両側縁からそれぞれ上方に延びる壁部42〜45と、を有するトレイ状である。
図8に拡大して示すように、カバー40の前壁部42の左右両端がそれぞれ左壁部43および右壁部44に連続する隅部には、上方に突出する二股状のピン配設部46が形成されており、ここに配設されるピン47(
図6を参照)を介してカバー40は車体側の連結板部材30に回転自在に支持されている。
【0036】
すなわち、カバー40は、その前縁の左右両端部に互いに略同軸に配設された一対のピン47(支軸)の周りを上下方向に揺動するように配設されており、
図6のように下方のスペースを閉じる状態と、
図9のように下方のスペースを開放する状態とに切り替る。一方、カバー40の後壁部45における左右の中央部には、
図9に示すように矩形状の開口45aが設けられるとともに、その上辺から後方に延びる延出部45bが形成されている。延出部45bの下部には車体フレームの後端板部材31の前縁に係止される係止爪部45cが突設されている。
【0037】
図4に示すようにカバー40が下方のスペースを閉じている状態では、その後端の延出部45bが後端板部材31の上に重なって、この後端板部材31の前縁の左右方向の中央部に係止爪部45cが係止される。ここからカバー40を持ち上げると係止爪部45cは弾性変形して後端板部材31の前縁から離脱する。カバー40が柔軟性を有することと延出部45bの下方に開口45aが形成されていることとの相乗的な効果で、係止爪部45cは弾性変形しやすく、後端板部材31との係合および解除を容易に行うことができる。
【0038】
また、前記の延出部45bは、
図4に示すように後端板部材31の上に重なった状態で、リヤシート19の底板190の後端部の押圧部190gによって押圧される被押圧部であり、同様にカバー40の左右には、リヤシート19の底板190の左右の押圧部190dによって押圧される被押圧部が形成されている。すなわち、
図6〜8に示すようにカバー40の左右の壁部43,44の上縁に沿って縁部43a,44aが形成されており、そのうちの前後方向の中央付近の幅が特に拡げられて、
図5に示すようにリアシート19の左右の押圧部190gに押圧される拡幅部43b,44bとされている。
【0039】
つまり、本実施形態では、柔軟性のある樹脂材料によって成形されたトレイ状のカバー40を前壁部42の左右両端部の2箇所で車体側の連結板部材30に枢支するとともに、左右の壁部43,44の上縁の拡幅部43b,44bと、後壁部45の上縁の延出部45bとを、リヤシート19の底板190によって下方に押圧するようにしている。こうして、互いに離間した都合3箇所でカバー40を下方に押圧することで、その下方の物品をカバー40全体で安定的に押さえ付けることができる。
【0040】
一例として
図3および
図9に示すように、カバー40の下方のスペースには車載工具を収容したツールケース50と、盗難防止のためのU字ロック51,52とが収納されている。すなわち、
図2、4、5等にも示すようにリヤフェンダ25の後端部付近には、該リヤフェンダ25の上面から延びるように概略矩形状の収納枠25aが一体成形されており、この枠内において左右に並んでツールケース50とU字ロックのジョイント金具51とが収納されている。
【0041】
また、収納枠25aの左右両側方および後方においてリヤフェンダ25の上面には、U字ロックの金属製U字バー52が載置される複数の座部25bが、それぞれ上方に突出して形成されている。これら複数の座部25bに亘って載置された金属製U字バー52は、
図3に破線で示すようにツールケース50とジョイント金具51とを左右両側から後方にかけて取り囲む。こうして収納スペースSに収納された状態では、
図5に示すようにツールケース50とジョイント金具51の上部が概ね同じ高さに揃う一方で、それらを取り囲む金属製U字バー52の高さは一段、低くなっている。
【0042】
このことに対応してカバー40の底壁部41には、左右の両壁部43,44の内側近傍から後壁部45の内側近傍に亘って、上方から見るとU字状をなす溝部41aが形成されるように、当該底壁部41の左右方向の中央部から前縁にかけて一段、高くなる高床部41bを形成している。
図5に示すようにカバー40を閉じた状態で、前記の高床部41bの下面がツールケース50およびジョイント金具51の少なくとも一方の上部を押さえており、その周囲のU字状の溝部41aの下面は、金属製U字バー52の上部を上方から押さえている。
【0043】
つまり、本実施形態では、収納スペースSにおいてカバー40の下方に収納される物品がツールケース50およびU字ロック51,52であり、その大きさや形状が既定のものなので、それらに対応する凹凸形状をカバー40の底壁部41に形成している。こうすることで、それらの物品をより安定的に押さえ付けることができる上に、収納スペースSの利用効率も高くなる。
【0044】
−第1実施形態の作用効果−
以上、説明したように本実施形態の自動二輪車1では、リヤシート19の下方の収納スペースSを上下に区分するように樹脂製のカバー40を設けて、その下方に収納したツールケース50およびU字ロック51,52を上方から押さえ付けることで、その飛び跳ねを抑えることができる。ツールケース50等を収納する際は、カバー40を開いてその下方にツールケース50等を収納し、再びカバー40を閉じるだけでよく、収納スペースS内でツールケース50等にゴムバンドをかけるような手間は必要ない。
【0045】
しかも、適度な柔軟性を有する樹脂製のカバー40が、その左右両側の壁部43,44および後壁部45の被押圧部43b,44b,45bにおいて上方のリヤシート19から下方に押圧され、このカバー40によって収納スペースSの全体に亘る広い範囲でツールケース50等を安定的に押さえ付けることができるので、それらが跳び跳ねる心配はない。一方、カバー40の上部には一例としてウェスのような薄手の物品を収納することができる。
【0046】
また、本実施形態では、カバー40を収納スペースSから取り外せるようにはしていないので、誤ってカバー40を紛失する心配もない。リヤシート19の下方の収納スペースSはリヤフェンダ25の形状に沿って前方ほど低くなるように傾斜しているので、前記のようにカバー40の下方のスペースを後方に向かって開放させるようにすれば、物品の収納および取り出しを一層、容易に行える。
【0047】
(第2の実施形態)
次に、上述した第1の実施形態の収納スペースSにETC車載器53を収納するようにした第2の実施形態について
図10〜15Cを参照して説明する。なお、この実施形態では、カバー40によって区分された収納スペースSの上方のスペースにETC車載器53を保持するためのホルダー60(保持部材)を設けているが、それ以外の構造については第1実施形態と同じなので、同じ部材には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0048】
図10、11はそれぞれ前記第1の実施形態の
図4、6に相当し、
図12は同じく
図7に相当する。
図13は、
図10のホルダー60を起こした状態で示し、
図14は、カバー40にホルダー60およびETC車載器53を取付ける分解斜視図である。また、
図15A〜Cはそれぞれ、
図12のA線、B線およびC線における断面図である。
【0049】
図10、11に示すように、本実施形態のカバー40の上部にはホルダー60によって保持された状態でETC車載器53が収納されている。ETC車載器53は扁平な直方体形状であり、
図12に示すように上方から見ると前後方向の長さが左右の幅よりも少しだけ長い。一例としてETC車載器53の前面には、図示しないETCカードの挿入口が開口しており、一方、後面にはコネクタ54を介してワイヤハーネス55が接続されている。ワイヤハーネス55は、カバー40の後壁部45の開口45aを通ってその下方に引き回されている。
【0050】
図14にはカバー40とホルダー60とETC車載器53とを分けて示すように、ホルダー60は、矩形板状の本体部61の後縁の左右両端部にそれぞれ下方に向かって斜め後方に傾斜して延びる一対の取付脚62を有し、この取付脚62において上下に揺動可能にカバー40に取付けられる。すなわち、取付脚62の下端部には、左右方向に延びるピン62aが形成されている一方、カバー40の底壁部41の後部には高床部41bの後部から後方に向かって延びる左右一対の延出壁部41cが形成され、
図15Cにも示すように、延出壁部41cの挿入孔41dにホルダー60の取付脚62の下端部のピン62aが挿入される。
【0051】
これによりホルダー60をその後端部の取付脚62の周りに上下方向に揺動させることができ、ホルダー60の上面に貼設されたETC車載器53を、その後縁(カード挿入口の開口する前面とは反対の他側縁)の支軸(ホルダー62のピン62)の周りに上下方向に揺動させることができる。よって、
図13に示すようにETC車載器53を、その前面のカード挿入口が前方斜め上を向くように持ち上げることができ、ETCカードの挿入や抜き取りがしやすい。
【0052】
また、本実施形態ではホルダー60の本体部61の上面における左右の両側縁のやや内側に、左右一対の突条63がそれぞれ前後方向に延びるように設けられている。この左右の突条63同士の間隔はETC車載器53の横幅に対応しているので、ETC車載器53は左右の突条63の間に挟むように安定して装着できる。なお、ホルダー60の本体部61の後縁には前記左右の取付脚62のそれぞれの内側に近接して突起64が形成され、ETC車載器53の後面に当接するようになっている。
【0053】
さらに、前記左右の突条63の前半部の外側に近接してホルダー60の本体部61を貫通するスリット61aが形成されるとともに、このスリット61aの外側に近接して本体部61の下面には下方に延びる左右一対の係合爪部65が形成される一方、本体部61の上面には上方に延びる左右一対の把持部66が形成されている。
図15Aにも示すようにホルダー60の係合爪部65は、カバー40の底壁部41における高床部41bの左右両側をそれぞれ切り欠いてなる矩形状の係合口41eに係合するように位置している。
【0054】
図15Aに示す状態で、ホルダー60の左右の把持部66を互いに近づくように掴んで上方に持ち上げると、左右の係合爪部65が互いに離れるようにホルダー60の本体部61を撓ませて、カバー40の係合口41eとの係合を解除することができる。係合爪部65および把持部66がいずれも本体部61のスリット61aに近接して設けられているので、このスリット61aの近傍で本体部61が撓みやすく、把持部66の操作によって容易に係合爪部65と係合口41eとの係合を解除することができる。
【0055】
さらに、本実施形態では前記左右の突条63の後半部の外側に近接して、ホルダー60の本体部61左右両側縁がそれぞれ外方に延出しており、その上面から上方に延びるように左右一対の円柱部67が形成されている。
図15Bに示すように円柱部67は、ホルダー60に貼設されたETC車載器53の左右両側において上方に突出し、膨出部190eを左右両側から挟んでリヤシート19の底板190の下面に当接するように設けられている。
【0056】
すなわち、左右一対の円柱部67は、その上面をそれぞれリヤシート19の底板190の下面に当接させて、リヤシート19のそれ以上の沈み込みを阻止するストッパとして機能する。この状態では、
図15Bに示すようにETC車載器53の上方には底板190の膨出部190eが位置し、両者は接触していないので、乗員が騎乗しているとしてもリヤシート19から直接、ETC車載機53に荷重が加わることはなく、その信頼性を確保する上で有利になる。
【0057】
したがって、この第2の実施形態によると、前記した第1の実施形態による作用効果に加えて、収納スペースSを上下に区分するカバー40の上にETC車載器53をホルダー60によって好適に保持した状態で収納できる。ETC車載器53の使用時にはETCカードを挿入しなくてはならず、また、使用しないときには防犯のためにETCカードを抜き取ることが望ましいが、本実施形態ではホルダー60を上下に揺動させて、ETCカードの挿入口を上向きにし、ETCカードの抜き挿しを容易に行うことができる。
【0058】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態について種々、説明したが、本発明に係るシート下収納構造は前記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更、追加、または削除することができる。例えば、前記第1および第2の各実施形態では、収納スペースSをリヤシート19の下方に設けているが、これに限らず、運転者の騎乗するシート18の下方に設けてもよい。
【0059】
但し、自動二輪車1において前後方向に並んで設けられたシート18およびリヤシート19について比べると、リヤシート19の方が上下に大きく振動しやすく、その下方に収納スペースSを設けた場合の方が物品が上下に跳び跳ねやすい。よって、収納した物品の飛び跳ねを抑えるという効果はリヤシート下の収納スペースにおいて特に有効なものとなる。
【0060】
前記の各実施形態ではカバー40をその前縁の支軸(ピン47)の周りに上下方向に揺動させるようにしているが、支軸の位置はカバー40の前縁でなく、前縁よりも少し後寄りであってもよいし、カバーの前部にも限らず、その後部の支軸周りに揺動させる構造としてもよいし、左右いずれか寄りの部位に設けた前後方向の支軸の周りに揺動させる構造としてもよい。また、カバーを取り外し可能にしてもよい。
【0061】
また、前記各実施形態ではカバー40の底壁部41に、ツールケース50やU字ロック51,52に対応する凹凸形状を設けているが、これにも限らず、カバーの底壁部は概ね平坦な形状としてもよい。カバー40はポリプロピレンのような柔軟な樹脂材料を用いて成形する必要もなく、例えばABS樹脂のような比較的硬い樹脂材料によって形成してもよいし、鉄の薄板などで形成してもよい。この場合、必要に応じてカバーの底壁部の上面および下面の少なくとも一方にクッション材を配設してもよい。
【0062】
さらに、前記各実施形態ではカバー40をトレイ形状とし、その左右両側の壁部43,44および後壁部45の上縁にそれぞれ被押圧部(拡幅部43b,44bおよび延出部45b)を形成して、これらを上方のリヤシート19で押圧するようにしているが、これにも限定されず、被押圧部は壁部43〜45の上縁でなくても、例えば底壁部41から上方に突出してリヤシート19に当接し、下方に押圧されるものであればよい。
【0063】
また、前記第2の実施形態ではカバー40の上部にホルダー60を取付けてETC車載器53を保持するようにしているが、ETC車載器53以外の車載電装品を保持するようにしてもよいし、別体のホルダー60を取付けるのではなく、カバー40の上面に保持部を一体成形してもよい。
【0064】
また、前記第2の実施形態ではホルダー60の後縁(ピン62)をカバー40に対し上下方向に揺動可能に取付けて、これとともにETC車載器53の前面を上向きに持ち上げれば、ETCカードの挿入、抜き取りが容易に行えるようにしているが、ピン62の位置はカバー40の後縁でなく、後縁よりも少し前寄りであってもよいし、カバーの後部にも限定されない。すなわち、ETC車載器においてカード挿入口の開口する側を、前後または左右方向のいずれかの方向の一側とし、その反対側の他側をカバー40に対し上下方向に揺動可能に取付ければよい。
【0065】
さらにまた、前記実施形態では自動二輪車1について説明しているが、本発明のシート下収納構造を適用する車両は自動二輪車に限らず、3輪車、4輪車の何れであってもよく、不整地走行車両のような他の鞍乗り型車両にも適用することができる。