特許第5871633号(P5871633)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5871633ビス(1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871633
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】ビス(1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 43/12 20060101AFI20160216BHJP
   C07C 41/22 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   C07C43/12CSP
   C07C41/22
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-11936(P2012-11936)
(22)【出願日】2012年1月24日
(65)【公開番号】特開2013-151435(P2013-151435A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2014年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000157119
【氏名又は名称】関東電化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(72)【発明者】
【氏名】岡本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 千瑞子
【審査官】 緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−351751(JP,A)
【文献】 米国特許第3080428(US,A)
【文献】 特開2001−064228(JP,A)
【文献】 特開2011−093808(JP,A)
【文献】 特開昭61−033139(JP,A)
【文献】 特表2004−506597(JP,A)
【文献】 社団法人日本化学会編,第4版実験化学講座21,丸善株式会社発行,1990年,pp.179-181
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 43/12
C07C 41/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式 [1] で表されるビス(1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテル。
【化1】
【請求項2】
下記式 [2] で表されるビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルを塩素化することを特徴とする請求項1記載のビス(1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルの製造方法。
【化2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビス(1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、非特許文献1〜3には本発明のエーテル化合物に類似の1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基を有するエーテル化合物が開示されている。しかしながら、これらの文献には、本発明のエーテル化合物のように、α位が塩素化された対称エーテル化合物の開示はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society 71, 2432 (1949)
【非特許文献2】Journal of the American Chemical Society 72, 1860 (1950)
【非特許文献3】Polish Journal of Chemistry 52 (1), 71-85 (1978)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、医薬・農薬の中間体として、また含フッ素化合物の製造原料または合成中間体として有用な、α位が塩素化された対称エーテル化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、新規な「α位が塩素化された対称エーテル化合物」の合成に成功し、該エーテル化合物が上記目的を達成する化合物であることを知見し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は、下記式 [1] で表されるビス(1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルを提供するものである。
【0006】
【化1】
【0007】
また、本発明は、上記式 [1] で表されるビス(1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルを製造する方法として、下記式 [2] で表されるビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルを塩素化することを特徴とするビス(1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルの製造方法を提供するものである。
【0008】
【化2】
【発明の効果】
【0009】
本発明のビス(1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルは、医薬・農薬の中間体として、また末端にトリフルオロメチル基を有する含フッ素化合物等の製造原料として極めて重要な化合物である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のビス(1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルおよびその製造方法の好ましい一実施形態について以下に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
【0011】
[1.構造]
本発明のビス(1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルは、下記式 [1] で表されるα位が塩素化された対称エーテル化合物である。
【0012】
【化3】
【0013】
[2.性質]
本発明のエーテル化合物は、無色透明液体状の化合物であり、単体では安定である。
【0014】
[3.用途]
本発明のエーテル化合物は、加水分解をすることによりα位をカルボニルに変換することが可能である。安定性が高いため、危険性も低く、これまで報告されてきた含フッ素合成中間体やフッ素化剤よりも取り扱いが容易である。その加水分解により得られるカルボニル化合物は医薬・農薬の原料・中間体として有用であり、したがって、本発明のエーテル化合物も合成中間体として有用である。
【0015】
[4.製造方法]
本発明のビス(1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルは、下記反応式1に示すように、公知の方法で合成可能な式 [2] で表されるビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルを原料にして、そのα位を塩素化することで得ることができる。
式[2]で表されるビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルを合成する公知の方法としては、例えば、Journal of Organic Chemistry 28, 492 (1963)に記載されている方法が挙げられる。
【0016】
【化4】
【0017】
上記の塩素化反応は、特に限定されず、例えば、液相または気相において、ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルを、ラジカル開始剤を用いて塩素を反応させる方法や紫外線照射下で塩素を反応させる方法等により行うことができる。これらの方法のうち、紫外線照射下で塩素を反応させる方法がより好ましい。
即ち、ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルに紫外線照射下、塩素を反応させることにより、本発明のビス(1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルを製造することができる。
【0018】
本発明のビス(1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルの製造方法を、ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルを紫外線照射下で塩素を反応させる方法につて以下に詳しく説明する。
本反応で用いられる塩素は、濃度10〜100%のものが好ましく、濃度90〜100%のものがより好ましい。その使用量は、基質1モルに対して、4〜10モルが好ましく、4〜5モルがより好ましい。
【0019】
本反応の反応温度は、−20〜50℃であることが好ましく、0〜20℃であることがより好ましい。70℃以上ではビス(1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルが、副生する塩化水素によって分解するため好ましくない。
【0020】
本反応では、塩素化反応の効率を高める観点から、基質と塩素とを、紫外線照射下に液相反応させる方法が好ましい。用いられる反応器は、例えば、光源を備えたガラス容器を使用することができる。光源は、反応器外部に設置しても反応は進行するが、光の利用効率の面から内部挿入型の光源が望ましい。光源には、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯および紫外線LED等を挙げることができる。
本反応に用いる紫外線としては、波長312〜577nmのものが好ましく、波長312〜493nmのものがより好ましい。
【0021】
本反応に、反応溶媒は必要ないが、反応に関与しないものであれば溶媒を用いてもよい。溶媒として使用可能なものとしては、例えば、水、四塩化炭素、ジクロロメタンが挙げられ、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0022】
本反応では、反応が進行するのに伴い、塩化水素が発生する。発生した塩化水素は、反応系内から放出させ、水、アルカリ性水溶液などで吸収することが望ましい。
【0023】
反応後の処理に関しては、反応後、まず反応液に残留する塩素を窒素バブリングなどで追い出す。その後、水酸化カリウム水溶液等の塩基性水溶液を加えて副生した塩化水素を除き、さらに亜硫酸ナトリウム水溶液を加えて、残留塩素を還元する。その後、下層液を分液して目的物を得ることができる。その後に、蒸留をすることで精製することができる。
【0024】
また、上記の塩素化反応を、ラジカル開始剤を用いて塩素を反応させる方法により行う場合には、ラジカル開始剤を用いた従来の塩素化反応方法に準じて行えばよく、また反応後の処理は、上記の紫外線照射下で塩素を反応させる方法の場合と同様に行えばよい。
上記ラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等が挙げられる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0026】
実施例1
(ビス(1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルの合成)
撹拌子、温度計、100W高圧水銀灯、ジムロート冷却管および塩素導入管を備えたガラス製200mL光反応装置に、ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテル210g(1.00mol)を仕込み、氷水浴を用いて冷却した。高圧水銀灯(理工科学産業株式会社製のUVL−100HA)を点灯して光(波長312〜577nmの紫外線)を照射し、マグネチックスターラーで撹拌しながら、反応液中に塩素5.10molを流速480mL/ minで、5時間かけて導入した。その際、反応熱によって塩素化反応温度は20〜30℃まで到達した。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、原料のビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルは検出されず、ビス(1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルのガスクロマトグラフフィー面積は83.0% であった。
【0027】
反応液に窒素フローをしたのちに水を加え、氷水浴下で撹拌しながら10%亜硫酸ナトリウム水溶液と48%水酸化カリウム水溶液とを用いて残留塩素を還元・除去した。分液をして目的物を取り出し、硫酸ナトリウムを加えて脱水した。乾燥剤をろ過した後に減圧蒸留によって分留し、沸点70〜71℃(1kPa)の留分を集めてビス(1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルを得た。収量は230.75g、収率は65%であった。留分のガスクロマトグラフフィー面積は98.1%であった。
得られたビス(1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピル)エーテルのスペクトルデータを下記に示す。
【0028】
1H−NMRスペクトル(500MHz,CDCl ) δ(ppm):3.39(4H,q,J=9.0Hz).
19F−NMRスペクトル(470MHz,CDCl ) δ(ppm): −62.0 (6F,t,J=9.0Hz).
MSスペクトル(m/z):165(CF CH CCl) ,111(CF CH CO),83(CF CH ),69(CF ).